【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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準決勝 第1試合
229話


「じゃあ今日もよろしくね」

「ええ。責任をもって預からせて貰うわ」

 

 1回戦が終わって2日後の今日。2回戦が行われる当日になったので、ボクたちはシュートスタジアムの裏口から会場入りして、控え室までの長い廊下の途中で固まっていた。していたことはユウリのほしぐもちゃんをヒカリに預けるというもの。1回戦の時にもしていたけど、原則としてバトルコートに連れて行っていいポケモンは6人までだ。それ以上のボールを持ち込むことは、少なくともこのガラル地方では禁止されている。理由としては単純で、7人以上のポケモンを出させないためだ。

 

 ポケモンバトルの戦術のひとつとして交代というのがあるけど、この交代自体に制限は無い。何回交代したとしても基本的には許される。しかし、場に出て戦える累計ポケモン数は6以下にしないとダメだ。ボクで例えるなら、今のボクの手持ち全員を1度場に出して、そのうえで交代してグライオンを出す感じだ。たとえグライオン以外のポケモンが誰も戦闘不能になっていなかったとしても、1度場に出てしまったら記録されてしまうので、そのポケモン以外は場に出すことを許されない。

 

 そんなことはわかりきっているし、7人目を出したらその瞬間すぐわかるのだから、わざわざする人なんていない。普通の人はそう思うけど、ここに来て少し厄介なのが、ゾロアークのような見た目を変えるポケモンだ。彼らが関わってしまうと、見た目は一緒だから規約を守っているように見えても、実は戦っているポケモンは7人いたなんてことが起きる可能性がグンと上がってしまう。そういったトラブルを予め防ぐために、そもそもアクティブ状態のボールを6つまでしか持ち込めないようにするという規則が生まれた。

 

 こういう規則が出来たということは、残念ながら過去にこういう手を使った人が居るということなのだろう。

 

 ちなみに、ボクもアクティブ状態のモンスターボールは、今回戦うみんな以外は全部誰かしらに預けている。例えば、シンオウ地方からの仲間は、ヨノワール以外はシロナさんに預けているし、カバンの中に入っているもう1つのボールはジュンに渡してある。まぁ、このカバンの中にあるボールに関しては、登録こそされているけど、中身は空っぽだからどっちにしろバトルでは力を借りられないんだけどね。

 

 そんなことを考えている間に、「ピュピュイ……」と寂しそうな声を発しながらも、ユウリのことをしっかりと理解しているほしぐもちゃんの譲渡が完了し、ヒカリの腕の中に収まっていた。人前に出す訳には行かないから、この後ボールの中に戻されることにはなるのだろうけど、お見送りはこのまましたいらしい。ユウリの好かれ具合が本当によくわかって、思わず頬が緩んでしまいそうになるほどだ。

 

 しかし、こうしている間にも時間はしっかりと進んでいる。

 

「さて、じゃあ行こうか」

「うん」

「おう!」

 

 あと少しで2回戦が始まるので、ボクたちは控え室に行って準備をしなければいけない。

 

「じゃあわたしたちは観客席に」

「だな!みんな頑張れよ!!今日も期待してっからな!!」

「しっかり見て勉強させてもらうと。変な試合したら、許さんけんね!!」

 

 そんなボクたちの背中を押して激励するヒカリ、ホップ、マリィの声。3人の声に頷きを返したボクたちは、3人並んで控え室の方へと歩いていく。その間はホップを中心に会話が回っていき、なんでもない雑談をして歩いていく。

 

 ただ、この間にポケモンバトルについての話は一切しない。

 

 少しでも情報を漏らさないようにするために。

 

 そういう意味では、バトルはもう始まっているのかもしれない。

 

 ちなみに今ここに最後の2回戦進出者であるセイボリーさんはいない。どうやらボクたちよりも先に控え室に行っているみたいだ。

 

 そうやってしばらく、パッと見は和やかだけど、その実少しピリピリしたような空気感の中しばらく歩いていたボクたちは、ひとつの分かれ道に到達する。

 

「じゃあ2人とも。私はこっちだから」

「おう!!次はバトルコートで会うぞ!!」

「またね。ユウリ」

 

 ここでボクたちの中で1人だけ待つ場所の違うユウリが分かれ道を左に行って、ボクとホップは右に行く。人数が一人減ったとしても、ホップの口数が減るなんてことは特になく、ボクが聞きに回る形で会話が続いていく。そうこうすれば、いつの間にかそこそこの距離を歩いていたみたいで、程なくして今日ボクたちが待つこととなる控え室にたどり着いた。

 

「よ~し、準備するぞ!!」

「だね」

 

 控え室にあるロッカーに自分の荷物を置き、白色のユニフォームを取り出して着替えていく。もちろんこの間もホップとの会話が切れることは無い。「今日の調子はどう?」とか、「昨日はよく眠れた?」とか、なんてことの無い雑談をしながら準備を進めていくボクとホップ。

 

 そう、やっていることは一昨日と同じ。ただ、準備をしながら会話をしているだけ。

 

「なぁ……フリア」

「……何?」

「……控え室ってさ、こんなに狭かったかな……」

「……どうだろうね」

 

 だけど、そんなボクたちの心は、少しずつ早鐘を打ちながら、ちょっとした圧迫感を感じ始める。

 

 今この控え室にはボクとホップしかいない。人数だけで言えば、昨日よりも2人少ないからむしろ伸び伸びと控え室を利用できるはずだ。けど、実際にはホップの言う通り、この控え室の広さを感じることが全然できない。むしろ、檻の中に閉じ込められたかのような圧迫感さえ感じてしまうほど。

 

 昨日からたった1回戦進んだだけ。それなのにボクたちにかかるプレッシャーは、昨日とは比べ物にならないくらい大きなものとなっていた。

 

「フリアはさ、この感覚は初めてじゃないんだろ?」

「まぁね……でも、正直シンオウリーグの時よりも……うん、緊張してる」

 

 ホップの言う通り、この大会特有の緊張感は、ボクに関しては初めてじゃない。大会を勝ち上がる度に襲いかかるこの緊張は、たしかに重いし簡単に慣れるわけじゃないけど、1度経験しているというのはそれだけでちょっとした余裕には繋がってくれる。そのおかげで取り乱したりなんてことはしないけど、それでもボクは、間違いなくあの頃よりも強い重さを感じていた。理由は多分、出場者全体のレベルが高いことと、あの時よりも観客が多いこと。そして何よりも、ボクがコウキに近づくための、一番の山場だからということ。……だと思う。

 

「そっか……なんか、それを聞いてちょっと安心したぞ」

「全く、ボクをなんだと思っているのさ」

「オレたちの目標だぞ」

「……」

 

 そんな、いつの日よりか強いプレッシャーを感じていると、ホップが少し表情を和らげながら答える。相変わらずボクを持ち上げる発言に、いつも通りの謙遜を加えながら返答すると、今度はちょっと真面目な顔を浮かべながら言葉を返してきた。

 

「あの日、初めてフリアと戦った時から、お前はずっとそうなんだ」

 

 準備を終えたボクとホップは、真っ白なユニフォームに身を包んで向かい合う。

 

「オレの夢の存在はアニキだ。オレのライバルはユウリだ。それは何があっても変わらない。でも……あの日、あんなすごいバトルを見せられて、その上でずっと前を走っていたお前は、オレたちの中で一番身近な目標だったんだ」

 

 マグノリア博士の家の前で戦ったあの日からという短期間で、ホップはここまで来るほどの成長していた。その成長速度はすさまじく、下手をすればボクなんてあっという間に追い抜いてしまいそうなほどの勢いだ。

 

「あの日あの場所で、画面越しじゃない凄い戦いを見たおかげで、明確な目標っていうのがちゃんと見えた。途中で一回、すっごいつまずきもしちゃったけど……その時だってフリアのおかげで乗り越えられたんだ」

 

 けど、この成長速度は1人で得られるものじゃなかったと言いたいんだと思う。

 

 ここまで来られたのは、ボクが前にいたから。ボクが手を引っ張ったから。

 

 相変わらずボクに何かをしたという実感は無い。けど、ユウリ然り、次に戦うセイボリーさん然り、みんなからのボクに対する評価というのはかなり高い。ボク自身の自己評価がいくら低くても、この事実に変わりは無い。

 

「ホント、サンキューだぞ。お前がいなかったら、オレは絶対にここまでこれなかった。いわば恩人みたいな人だな!!」

「大袈裟だよ……」

「大袈裟じゃないぞ!本気だ!……でも、そんなフリアでもちゃんと沢山緊張はするんだなって思うと、ちょっと安心したぞ」

「緊張くらい、ボクだってするよ」

 

 過去を振り返りながらどんどん持ち上げてくるホップに、こっちが恥ずかしくなってくる。

 

「けど、それでもオレたちにとってお前が絶対的な壁であることに変わりはない」

「うん……」

 

 いろんな人からそんな視線を向けられてしまえば、さすがのボクも自覚する。だから最近は少しずつその考えを持つように心を作っているつもりではあるけど、やっぱりこうやって真正面から言われるとその意識の大きさに少しだけびっくりしてしまう。

 

「そんな目標だからこそ……オレはその壁を越えたいって燃えるんだ。それは少なくとも、今残っているやつらはみんな思っているはずだぞ」

「セイボリーさんも……ユウリも……」

 

 ホップの言う通りだろう。だからこそ、ユウリはあの夜にあんな約束を残し、逆にセイボリーさんはボクと戦うことに集中するために顔を合わせに来なかったんだ。

 

『フリア選手。次の試合の準備が整いました。準備の方をお願いします』

 

「……はい」

 

 ホップに言われ、改めて自分の立ち位置を理解する。

 

 みんなに狙われ、挑まれ、目標にされている。

 

 スパイクタウンで、クララさんの叫びを聞いたときから徐々にのしかかって来る、別のプレッシャーが更に大きくなった気がした。

 

 このガラル地方に来て、マクワさんとバトルをした一昨日までは、公式の場で戦った相手はボクの前を行く人、もしくは、ボクの前に壁として立ちはだかってきた人ばかりだった。けど、今日闘うセイボリーさんからは、明確にボクを追いかけ、目標にしてきた人たちとぶつかることになる。

 

(こういう場で、むしろ挑まれる側の人間になるなんて、そういえば初めてだ……)

 

「だから、絶対勝つんだぞ!!オレも、お前に挑みたい……!!だから、先に決勝に行って待っててくれよな!!」

 

 満面の笑顔を浮かべながらボクの背中を叩くホップ。

 

 背中の中心に紅葉がつくんじゃないかという勢いで叩かれた背中は、そこを中心にじんじんとした温かさを広げていく。その熱が、ボクの背中にのしかかった重みを少しずつ溶かしていく。

 

「……ありがと。ホップ」

「ん?おう!!」

 

 そのおかげでボクの緊張が程よく解れたので、そのことに関してお礼を述べると、お礼を言われた理由にピンと来ていないホップが、それでもとりあえず返事はしようという気持ちからお礼を返してくる。それを背に受けて、手をあげて返事をしながら、ボクはゆっくりとバトルコートへと足を進めていく。

 

(行くよセイボリーさん……!!)

 

 その速度は、バトルへの楽しみからかだんだん早くなっていっている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おじゃましま~す……あ、やっぱり、先に来てたんですね」

「……ユウリさんですか。気づきませんでした。すいません」

「いえいえ、私も今来たところでしたから。それよりも、私の方こそ瞑想を邪魔してすいません」

「大丈夫ですよ、そろそろ呼ばれる時間でしょうしね」

 

 フリアとホップと別れて、2人とは反対側にある控室に辿り着いた私は、おそらく先客がいることを予想して中をのぞく。すると、その予想通り控室の中心には、目を閉じて瞑想し、自身の周りに6つのモンスターボールを浮かばせているセイボリーさんがいた。そのセイボリーさんに、反射的に声をかけてしまい、結果的に私に気づいたセイボリーさんが瞑想をやめる。それを、セイボリーさんの邪魔したと思った私はすぐさま謝罪するけど、セイボリーさんは特に気にした風を見せずに立ち上がる。そんなセイボリーさんの言葉につられてスマホロトムの時計を確認すると、確かに試合開始予定時間に大分迫った時間となっていた。ほどなくすれば、ここのスタジアムスタッフが呼びに来るだろう。私が来たタイミングとしては、ちょっと微妙と言わざるを得ない。

 

「でも、ギリギリまで集中していたかったんじゃ……」

「良いですよ。あまり詰めてもいけませんし、むしろ適度に会話した方が、緊張はほぐせていい気がします」

「あ……」

 

 そう言いながら立ち上がるセイボリーさんの手を見てみると、目に見えて震えていた。

 

「……ふふ、情けないですよね。ここに来て、ワタクシは少し怯えているみたいです」

「……」

 

 震える右腕を何とか左手で抑え込もうとしているセイボリーさんだけど、収まる気配はない。けど、どうも私には、その震えが怯えから来ているようには見えなくて……

 

「本当に怯えからの震えですか?」

「え……?」

「だってセイボリーさん、表情が嬉しそうですよ」

「ワタクシが……嬉しそう……?」

 

 そう言葉を零すセイボリーさんは、控室内においてある鏡の方に視線を向ける。すると、そこには少し頬を緩めたセイボリーさんの姿が映っていた。

 

「……本当に、笑ってる」

 

 そんな姿を見て信じられないと言った言葉を零すセイボリーさん。そんな彼に対して、私は言葉を続けていく。

 

「その震えは怖さではなく、フリアと戦える嬉しさからくる武者震いみたいですね」

「武者震い……これが……」

 

 セイボリーさんの過去を聞く限り、おそらくここまで本気になって挑んだのは初めてなのだろう。そしてそのきっかけを作ってくれたのは他でもないフリアだ。私とホップがフリアに目標を設定しているのと同じように、セイボリーさんにとってもフリアは大きな目標の一つになっているだろう。

 

(だって、あの時悔しかったもんね……)

 

 思い出されるダイマックスウルガモスとの戦い。

 

 私とセイボリーさんは相手に怖気づいてしまい、サイトウさんとフリアに守られる瞬間を作ってしまったという、共通の悔しい過去を持つ。だからこそ、あの時守られることしかできなかったフリアに挑むというのは、それ相応の意味を持っている。

 

(……羨ましい)

 

 故に、私よりも一足先にそれを実現できるセイボリーさんが、ちょっと羨ましい。

 

『セイボリー選手。次の試合の準備が整いました。準備の方をお願いします』

 

「来ましたか……」

 

 自身の震えの正体を理解し、落ち着きを取り戻したセイボリーさんがスタッフの人に呼ばれる。

 

 立ち上がって、バトルコートの方に視線を向けた彼の腕はもう、震えは収まっていつもの姿に戻っていた。

 

「では、行ってまいりますね」

 

 頭にかぶったトレードマークのシルクハットを触り、その周辺にボールを浮かばせながら、ニヒルな笑みを浮かべるセイボリーさん。そんな彼に、私は声をかける。

 

「セイボリーさん!!頑張ってください!!」

 

 正直フリアが勝つと思っているし、フリアが勝ってくれないと、私が決勝戦で闘えないというのがあるため、少し残酷なことを言ってしまうのならフリアが勝ってほしいという気持ちが半分以上はある。でも、私と同じ悔しい気持ちをしてきたセイボリーさんの想いが、フリアに届いて欲しいという気持ちも確かに存在する。そう思うと、『勝ってください』とは口が動かなかったけど、応援はしたいという気持ちからこのような言葉が出てきた。セイボリーさんもそんな私のジレンマを理解しているのか、少しだけ苦笑いを浮かべ、しかしその表情をすぐに微笑みに変えながらこちらに言葉を返す。

 

「無理して応援しなくても大丈夫ですよ。あなたの気持ちも理解はしていますので……ですが、残念ながら、今回はワタクシが勝ってしまいますので、あなたのやりたいことは次回に取っておいてください。出会うことの無かったトーナメント運を呪うのですね!!はーっはっはっはっは!!」

 

 いつも通りのテンションに戻ったセイボリーさんが、ゆっくりとバトルコートに向かって歩いて行く。その背中を見送る私は、いつも通りの姿にちょっとだけ呆れたため息を零しながらも、これがセイボリーさんらしいと思いながら、着替えや準備を進めていく。

 

(頑張れ……!!)

 

 改めて心の中で応援の声を零しながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暗い道を歩ききり、一気に明るくなる外。目に入る光に少しだけ目を閉じると、視界が黒で染まると同時に、ボクの身体に大声援が叩きつけられる。相変わらずのその声量びっくりしそうになるけど、それでもここまで来たらちょっと慣れる。昨日と同じ観客席にジュンとヒカリ、そして今日はマリィも一緒にいるのが見えたので、軽く手を振っておくと、向こうも気づいて返してくれていた。

 

 控え室にいた時は凄いプレッシャーを感じていたけど、今こうしてジュンたちを見つける余裕があるということは、だいぶ身体は解れてくれているらしい。ホップに感謝だ。

 

(さて、セイボリーさんは……っと)

 

 少し落ち着いた足取りでバトルコートの中心に向かいながら、今回の相手であるセイボリーさんが、反対側からくる姿を確認する。

 

 足取りはしっかりとしており、こちらを真っすぐ見つめる瞳からは、このバトルにかける思いをくみ取ることが出来た。心なしか、シルクハットの周りを周回する6つのモンスターボールも、速度が速まっているような気がする。

 

「こんにちは。セイボリーさん」

「ええ、こんにちは」

 

 真ん中に到着し、お互い向かい合ったところで挨拶を交わすボクたち。けど、ただ挨拶を交わしただけで、空気がちょっと張り詰める。

 

「ようやく、あなたに挑めるのですね……」

「……本当に、みんなボクを目標にしてくれているんですね」

「当り前ですよ」

 

 少しだけ表情を緩めながら答えるセイボリーさんは、本当に心から今日という日を待ち望んでいたということがよく分かる。

 

「一番身近で、一番わかりやすいく、そして一番憧れた相手ですから……だからこそ、今回は絶対に勝たせていただきます!!そのために、いろいろ考えましたからね……!!」

 

 意気揚々と答えるセイボリーさんは本当に楽しそうで、今まで見てきた中で一番の笑顔を浮かべる。それを見るのがボクも嬉しくて、つい笑顔で返す。

 

「ボクも、セイボリーさんに勝つためにいろいろ考えました。だから、凄く楽しみにしています!!」

 

 お互いに試合に対する意気込みを口にして、すぐに定位置に移動していく。

 

 もう、言葉は必要ない。

 

 

『では両者!!準備をお願いします!!』

 

 

 定位置につき、振り向いたと同時に実況者から合図がかかったので、ボクとセイボリーさんは同時にボールを構える。

 

 

「さぁ!!このワタクシの歴史一番の大勝負!!過去最高のエレガントをお見せしましょう!!」

「負けない。ボクだって先に行く理由がある!!だから、絶対に乗り越えさせないよ!!」

 

 

ポケモントレーナーの セイボリーが

勝負を しかけてきた!

 

 

「行きなさい!!ヤドラン!!」

「頼むよエルレイド!!」

 

 お互いの初手はガラル地方のヤドランとエルレイド。セイボリーさんはアーカイブで見た時と同じ初手で、ボクは初戦とは変えた形になる。

 

「エルレイド!!『サイコカッター』!!」

「ヤドラン!!『サイコキネシス』!!」

 

 まずは挨拶代わりのエスパー技のぶつけ合い。お互いの中心でぶつかり合った虹色の刃と波動は綺麗に相殺し、白い土煙をあげて一瞬だけお互いの姿を隠す。

 

「もう一回!!」

「エルッ!!」

 

 その土煙ごとヤドランを攻撃するべく、再びサイコカッターを放つエルレイド。煙を切り裂いて真っすぐ突き進むその刃は、両腕を空に掲げるヤドランに当たる。

 

 ファーストヒットは奪った。けど、安心はできない。

 

(今の構えは間違いなく『みらいよち』!!ってことは、時間差で攻撃が飛んでくる!!だから、それを頭に入れて行動する!!)

 

「ヤドラン!!『シェルアームズ』です!!」

「『サイコカッター』!!」

 

 ヤドランがみらいよちの時間を稼ぐべく、シェルアームズによる弾幕を張ってきたので、これを切り裂くべく、三度虹の刃が放たれる。今回はタイプ相性もあって、エルレイドの攻撃が貫通してヤドランに飛んでいく。

 

「戻りなさい!!」

 

 これでヤドランに攻撃が入ると思ったけど、それよりも速くセイボリーさんがヤドランをボールに戻した。それによってこちらの攻撃は外れてしまったけど、これならボクも落ち着いてみらいよちに対応できる。

 

「戻ってエルレイド!!お願い、ブラッキー!!」

 

 エルレイドを戻して繰り出したのはブラッキー。あくタイプを含むこの子なら、みらいよちに関しては何一つ気にする必要はない。その証拠に、上空から降りそそぎ始めた光の球を前にして、ブラッキーは何一つ気にした様子もなく佇んでいた。

 

(よし、ここからゆっくりと汲み立てて、じっくり追い詰めて━━)

 

 

「行きますよ!!1、2の3で巨大化せよ!タネもシカケもございません!!」

 

 

「え……?」

 

 これからの展開について頭を働かせようとしたところで、急に響くセイボリーさんの声。これにはボクだけでなく、観客たちも驚いたようで、困惑の声が広がっていく。

 

 理由は簡単。

 

 なぜなら、本来なら切り札として大事に使われるべきその手札を、セイボリーさんはこんな序盤で繰り出したから。

 

「行きますよギャロップ!!『()()()()()()()』!!」

「まずっ!?」

「ブラッ!?」

 

 その切り札とは、ダイマックス。

 

 

「ルロォォォォォッ!!」

 

 

 ピンクの光を纏い、空から星を大量に落としてきたギャロップを前にして、まさかの手札切りに驚いたブラッキーは、その光を前にして動くことが出来ずに、光に包まれていく。

 

「ブラッキー!!」

 

 セイボリーさんとのバトルは、まさかの意表を突かれた形で始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




持ち込みポケモン

ゾロアークやメタモンのような返信ポケモンの判断が難しそうですよね。アニメではディスプレイにポケモンが表示されましたけど、その時点でゾロアークとか表示されたら、された側はたまったものではなさそうです。

ダイマックス

まさかの初手ダイマ。けど、実機的にはむしろこういう使い方の方が多いですよね。それもこれも、副次効果で能力値が上がった、天候が変わるからなのですが。




フルバトルタイムスタートです。楽しんでくださいませ。




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