ずっと追いかけていた背中は遥かに高く、そして険しかった。
勝つためにたくさんの策を考え、没にし、そしてようやく形になって挑んだ今日。でもその悉くを破られ、結果は1対2の完全なる負け状況。今でこそ互角の勝負をしていますが、現状で負けている以上引き分けでは意味が無い。かと言って、彼がここでワタクシにリードを譲るほど甘い人間では決してないことなんて、ワタクシ自身がよく知っている。
(きっと、観客の中では既に勝敗を決めつけている人もいるのでしょうね……)
ちらりと観客席に視線を送れば、ワタクシの考え通り、応援の声をあげてはいるものの、表情はどこか達観している人が何人か見受けられた。そのことに何か意見するつもりはありません。ワタクシが同じ立場でも、同じことを思ったことでしょう。
(ですが……それでも……!!)
不利状況上等。こんなところで諦めるようなら、彼の隣に立つことなんて不可能だ。
(あの時、あのウルガモスとのバトルのような、みじめな頃のワタクシには絶対に戻らない!!そのためにも……)
だから前を見る。最後の最後まで目線を逸らさずに。
だから虚勢でも声をあげる。己の心を燃やすために。
まだ、勝ちを拾うルートはある。だから……
(あなたの戦い方、参考にさせてもらいますよ!!クララさん……!!)
ワタクシが負かした人の気持ちをも背負って、前に駆けだす。
☆
「レオッ!!」
「ヤド……ッ」
ヤドキングを中心に行われる弾幕の撃ち合い。
避け、落とし、逸らし、そして返す。
左目が未だクリームによって潰されているインテレオンと、元々動きが緩慢な方であるヤドキングであるため、お互い全力のパフォーマンスが出せている訳では無いけど、少なくとも現状できることを全力で行っている両者は、その意地の張り合いに見事に喰らいつきあっていた。
インテレオンは速度と機動力で、ヤドキングは読みと精密度で勝っており、その強みを生かすように立ち回っているゆえのこの結果だろう。だが、そんな拮抗していた両者のバトルにも徐々に差が出始める。
(……やっぱり出てきたね……毒ガス)
少しずつ……でも確かに、バトルフィールドが紫色の煙で包まれ始めようとしている。これは、さっきからヤドキングが飛ばしているヘドロばくだんが気化し始めている証で、強い毒性を持つこの技は、気化する程度ではその効果が消えることは無い。炎で燃やしたりすれば多少はマシになるけど、みずタイプであるインテレオンにはそんなことは出来ない。だから、ここで何もしなければインテレオンは毒によって着実に削られてしまうだろう。
(それにしても、ここに来てまさかの毒攻め……)
じわじわと追い詰められるこの戦法を見て思い出されるのは、セイボリーさんの1つ前の戦。
(クララさんとのバトルの時に、マタドガスにされていた戦法だよね……)
毒のエキスパートの人が行っていた戦術を真似ているセイボリーさん。だけど、その時の戦いをそのまま使ってくるという先入観を持たないようには注意しておく。というのも、ここまで戦ってきたことで、セイボリーさんがいろんな人の戦い方を真似てきているのは理解できたけど、今までのそれはどこかしらにエスパータイプならではのギミックが入っていたし、最終的なメインの攻撃はエスパー技だった。そのことを考慮すれば、おそらくセイボリーさんの攻撃は、この毒ガスでは終わらない可能性が高いからだ。
(このままだとじわじわやられるから、こちらから仕掛けなくちゃって構えていたところに、まさか先に仕掛けて来るとは思わなかったけど……セイボリーさんも先のことを見据えているって事かな)
インテレオンの後ろにまだヨノワールがいる以上、勝つためにはここを速やかに突破しないとヤドキングのスタミナが持たない。だからこその采配なのだろう。
(さて、どうくる……?)
インテレオンと一緒にヤドキングを見つめ、ねらいうちで攻撃しながらどう動くかを注視する。すると、セイボリーさんが満を持して口を開く。
「ヤドキング!!『サイコキネシス』!!」
(『サイコキネシス』……?)
セイボリーさんに紡がれたヤドキングへの指示。その言葉に少しだけ違和感を感じた。
クララさんとのバトルでは、ぶきみなじゅもんをメインウェポンにおいて毒を弾くような動きをしていた。それに、ぶきみなじゅもんといえばガラル地方のヤドキングだけが使うことの出来る特殊な技だ。専用技というだけあってその効果も独特で、この技を受けた相手のスタミナを少し奪うという、キバナさんのキョダイマックスジュラルドンが使ってきたキョダイゲンスイのちょっと控えめ版となっている。強力な技ではあるし、ヤドキングの代名詞という技でもあるし、だからこそクララさんとのバトルでも頼っていたと思われる技でだけに、今回その技を切ってまでサイコキネシスを入れていることに疑問を感じたボク。
しかし、その疑問も次の瞬間には払拭されていた。
「さぁヤドキング!!存分に操っていきましょう!!」
「ヤド……ッ!!」
気合の入ったヤドキングが、目を青白く光らせながら技を発動し、自身の周りのクリームと毒ガスをどんどん集めていく。
「『ねらいうち』!!」
「レオッ!!」
何か大技の気配を感じたボクは、すぐさまそれを止めるべくインテレオンにねらいうちを指示。ヤドキングめがけて高速で飛んでいく弾は、しかしサイコキネシスによって操られたクリームが盾となって防ぐ。
「そこです!!」
「ヤドッ!!」
ねらいうちを防いだヤドキングは、すぐさまサイコキネシスでクリームの盾を外して視界確保。ねらいうちを打ったばかりで少しだけ後隙があるインテレオンに向かって、今度は毒ガスの方をサイコキネシスで操ってこちらに伸ばしてくる。
サイコキネシスによってまとめられ、一本の大きなうねりとしてこちらに迫ってくるその様は、ともすれば一匹の大きなジジーロンが口を開いて突っ込んできているようにも見えた。
「『ねらいうち』!!」
襲い掛かってくる毒の竜。その頭に対してねらいうちで迎撃を試してみるけど、インテレオンの水の弾は毒の竜の頭をすり抜けて、明後日の方向に飛んでいってしまう。
(『サイコキネシス』で集められているとはいえ、毒そのものはガスだから攻撃だととまらない……)
ねらいうちをものともせずにこちらに突っ込んでくる毒龍を見て、すかさず回避行動に移るインテレオン。自身の足元を嚙みつこうと突っ込んできたこの毒に対して素早く右に飛び、今度はヤドキングを狙って直接ねらいうち。毒龍を止められないのなら本体から叩くしかないので無理やり狙ってみる。が、しかしこれもやっぱりクリームに止められてしまう。
(毒竜を止めようと思ったらクリームが邪魔して、クリームを突破するために移動しようとしたら毒竜がちゃんとその進路をふさいでくる……厄介……)
自分が出したクリームに首を絞められる展開にどうしても歯がゆい気持ちが募っていく。どうにかこの展開を打開するために、インテレオンがステージを縦横無尽に駆け回るけど、ヤドキングからすればクリームの盾を少しずらすだけでねらいうちの射線は簡単に切れるから何も怖い所がない。ここまで攻防一体という言葉を実現している戦法もなかなかないだろう。
(せめてヤドキングの周りにあるクリームだけでも除去できれば、こちらからの攻撃が通るようになるからだいぶ楽になるのだけど……)
ねらいうちを防がれたところを再び突っ込んでくる毒竜を今度はバックステップでよけ、そんなインテレオンを更に追いかけてきた毒竜からもっと距離を足るために背を向けてとにかく走りまわるインテレオンの様子を見ながら、必死に次に打つべき手段を考えていく。
(毒竜を誘導させてヤドキングにぶつける……は無理か、『サイコキネシス』で動かしている以上自由が利くわけだし、そもそも今はたまたまあの形をとっているだけで、その気になれば全方位から追い込むことだってできるもんね)
竜の形をとって追いかけているのは、単純にサイコキネシスの速度で動かせる速度に限界があるからそうなっているだけだ。時と場合が来れば、この形はすぐに崩れることとなるだろう。むしろ、崩された方がやばいからインテレオンが走り回っているまである。しかし、そうなるとヤドキングからさらに距離が離れることになるため、クリームを飛ばすという行為はますます難しくなる。
(『ねらいうち』を地面にぶつけて、圧縮された水が爆発する勢いを利用してクリームを飛ばすのが間違いなく一番いい。だけど、ここまで距離を取らされたらそれも難しい……)
クリームを飛ばすだけならさっき考えた作戦で十分なのだけど、その肝心のクリームがサイコキネシスで固められている以上、サイコキネシスごと吹き飛ばすための威力が必要になって来る。圧縮された水を解放するだけでいいのならあまり距離は関係ないと思うかもしれないけど、遠くまで飛ばすと圧縮状態を維持するのが難しいから、発射してから圧縮を解除するまでの間に少し圧縮が解けて、爆発の規模が下がる可能性が高い。となれば、やっぱり近づいて攻撃したいところ。
(さて、どうやってヤドキングに近づくか……って、あれ?)
そこまで考えたところで、ある所に気が付く。
(今セイボリーさんが操っているのって、『ヘドロばくだん』の余りじゃなくて、『ヘドロばくだん』によって出来上がったガス……なんだよね?実体がないから相殺できずに避けるしかなくて、インテレオンは逃げることを強要されている……)
実体がなく、相殺できない攻撃というのはかなり厄介だ。防ぐことが出来ず、避けるしか回避方法がない攻撃であるため、神経を使う必要があるから。だからこそ今ボクは凄く困っている。
(でも、実体がないからこその対策方法だってある!!)
「インテレオン!!ヤドキングに向かってダッシュ!!」
「ッ!?……レオッ!!」
その困っている原因に対しての解決案を思いついたボクは、現在進行形で毒の竜からの突撃をジャンプで避けたインテレオンに対して突撃を指示する。これに対して一瞬びっくりした様子の顔を浮かべるインテレオンだったけど、ボクの目を見て、ボクの作戦を信じて、すぐさま表情を引き締めて返事を返しながら着地。同時に、自身の向いている方向をヤドキングに向けて、一気に突っ込みだした。
「ヤドキング!!」
「ヤドッ!!」
勿論セイボリーさんはこのインテレオンの進撃を阻止するために、自身とインテレオンの間に毒の竜を呼び込んで、通せんぼするようにして構えさせる。このままインテレオンが突き進めば、この毒の竜が大きく開けた口に飲み込まれることになるだろう。
だからどうした。
「そのまま突っ込め!!」
「レオッ!!」
「……ッ!!」
大きく口を開けて、こちらに噛みつこうとしている毒の竜に対して、こちらがとった行動は無視。まるで毒の竜なんて最初から存在していないとでもいうかのように、インテレオンは動く足の速度を止めない。
「レオッ!?」
そうなれば当然毒の竜はインテレオンにかみつく形になる。これでインテレオンの身体には毒が入り込み、時間と共に体力を削られることとなるだろう。
だが、それで構わない。
「怯まないで!!」
「……レオッ!!」
「やはり、そうきますか!!」
自身が毒になっても、それに気にかけることなく突き進むインテレオン。本来なら、攻撃を受けた勢いで後ろに弾き飛ばされてもおかしくないけど、ここに来て毒の竜がガスによってできた、実体のない攻撃というのが悪い方に……いや、ボクにとってはいい方に作用してきた。
「実体のないただのガスなら、攻撃を受けて吹き飛ばされることはない。毒状態は確かに厄介だけど、それにさえ目を瞑ってしまえばこちらの進撃は絶対に止められない。……ごめんインテレオン。今のボクにはこれしか思いつかなかった。少しつらい思いをさせるかもしれないけど……頑張って……!!」
「レオッ!!」
ボクの言葉に、気にするなとでも言いたげに返しながら、それでも足を止めないインテレオン。頭上には紫色の泡が立ち上り、目の下あたりにも薄い紫色の模様が浮かび上がっているけど、自分の身体に鞭を打って走り出す。
いつものボクなら、こんな捨て身の作戦は思いついたとしてもなかなか踏み出すことはしなかっただろう。けど、今回は他に手が思いつかなかったのもそうだけど、セイボリーさんが最後のポケモンであるのに対して、ボクにはまだヨノワールという強力なバックがいるというのがとにかく大きい。別にインテレオンを捨て駒として使うつもりは一切ないし、軽んじているわけでもない。インテレオンも、それをわかってくれているからこそ、ボクの指示を信じて行動してくれている……と信じたい。
「レ……オッ!!」
そんなボクの祈るような気持ちを後押しするかのように走るインテレオンに、一切の迷いはない。
毒の竜の中を駆け抜けたインテレオンは、程なくしてクリームのドームに包まれたヤドキングの目の前までやって来る。ここまでくれば、もうインテレオンの邪魔をするものはないし、ヤドキングの速度では、ここから反撃する方法は持ち合わせていない。
これでボクのやりたかったことが出来る。
「『ねらいうち』!!」
「レオッ!!」
右手人差し指に水を圧縮して溜めたインテレオンが、ヤドキングを守るクリームの足元に向けて弾丸を発射。今までで一番の水量を込めたその弾丸は、距離が空いているはずのボクのところでも、その弾の姿がしっかりと視認することが出来るくらいには、インテレオンにしては珍しく大きな弾丸を準備していた。
「ヤドキング!!『サイコキネシス』でもっとクリームを━━」
「インテレオン!!解除!!」
その弾丸を見て、ボクのやりたいことを見抜いたセイボリーさんが慌てて防御の準備を始めるものの、それよりも速く水の爆発音が響き渡り、セイボリーさんの言葉とクリーム、そしてインテレオンを後ろから追いかけていた毒ガスの竜を外へと弾き飛ばしていく。
「「っ!!」」
その爆風はとてつもなく、離れているボクとセイボリーさんも、その衝撃に思わず顔を覆うように腕を構える。一方で、水の爆心地の近くにいるインテレオンとヤドキングもこの爆発の余波を受けてしまうけど、この両者は気合で踏ん張り、吹き飛ばされることなくその場にとどまり続ける。
(インテレオンもヤドキングも凄い……ッ!!)
その様子に思わず賞賛の言葉を送ってしまうボク。それから程なくしてねらいうちの爆風が治まり、爆発によって消えた音が返ってき始めた。
インテレオンとヤドキングの周りには何もない。
「インテレオン!!」
「レ……オッ!!」
その状況を一歩速く確認したボクは、インテレオンにすぐさま前進の指示を出し、インテレオンも毒によって少しだけ反応が遅れながらも、すぐに足に力を入れて走り出す。対するヤドキングは、ボクの方からは少し下を向いていて、まだ怯んでしまっているように見えた。
ここが一番のチャンス。
飛び出したインテレオンは一瞬でヤドキングとの距離を詰め、懐に潜り込んだ。
これでもうクリームにも邪魔されないし、サイコキネシスでバリアを張られても、既に懐に潜り込んでいるから防御も意味をなさない。つまり、インテレオンの攻撃は確実にヤドキングへと刺さる。それを確信したボクは、インテレオンに指示を出そうとし……
「……ヤドッ!!」
「ッ!?」
(ヤドキングの目が……生きてる!!)
普段は頭をシェルダーに噛まれているせいで確認できないヤドキングの目元が少しだけ見えた時に、その瞳から感じる気迫を感じて一瞬だけ息を飲むボクとインテレオン。かと言って、決して油断をしていたわけじゃないから隙を見せたという訳でもない。
問題は、セイボリーさんの表情が、この時を待っていたとばかりに、表情に笑みを浮かべていたことだった。
「ヤドキング!!『ワイドフォース』です!!」
「「ッ!?」」
「ヤドッ!!」
自信満々な笑みを浮かべながら指示を出すセイボリーさん。
その技名はワイドフォース。
未だにサイコフィールドの残っているこの空間でのその技の威力はさっき体感したばかりだ。そして、あの時と違ってインテレオンはヤドキングの目の前にいるため、今回ばかりは走って下がるというのが絶対に間に合わない。このまま行けば、あのとてつもない火力を秘めたピンク色の爆発が、インテレオンを包み込んで強制的に戦闘不能へと持っていくことだろう。
恐らく、セイボリーさんは最初からこれを狙っていた。足の速いインテレオンを確実に潰すために、ギリギリまで近づかせて大技を当てる。だから先程の攻撃では、ヘドロばくだんそのものではなく、毒ガスの方を操ってこちらを攻撃していたという訳だ。
ボクが、最後の手段として毒の中を無理やり突っ込むという作戦を立ててくることに賭けて。
(ほんとに凄いよ……セイボリーさん)
どんどんピンク色のエネルギーを貯めて、それを解放する時を今か今かと待ちわびているヤドキング。インテレオンの方が一足早く技を構えているため、幸いワイドフォースを受ける前に一撃を当てることは出来るだろうけど、今の状態からインテレオンがヤドキングのこの攻撃を止める手段は持ちえない。ヤドキングの体力も沢山残っているから、一撃で倒すということもないだろ。
インテレオンを着実に落とし、次にヨノワールに繋ぐ、勝ちを貪欲に求める良い作戦だ。
(でも、そんなセイボリーさんだからこそ……このことは予想出来た!!)
ボクが突っ込む指示をした時に驚かなかったり、負ける気がないという発言を残したり、色々な小さな言葉の違和感を汲み取ったボクは、絶対に何かを隠しているという予感を頭の片隅に残していた。そしてそれはワイドフォースを見て確信した。
必ずどこかで、これを使った何かを仕掛けてくると。
(だから……この戦法を逆に利用する!!)
「インテレオン!!『とんぼがえり』!!」
「レオ……ッ!!」
「は……?」
ボクの指示を聞いて表情を固めるセイボリーさん。そんな彼を無視して、インテレオンはヤドキングに蹴りをぶつけ、その反動を利用してボクの方に跳んで帰ってくると同時に、ヤドキングのワイドフォースが発動する。
とんぼがえり。相手を攻撃しながら、他のポケモンと素早く交代できる技。
ヤドキングを蹴り、急いでボクの方に飛んできたインテレオンは、ボクが予め準備して右手に持っていたインテレオンのボールに吸い込まれていく。ここまでの移動を迅速に行っていた結果、インテレオンはワイドフォースの範囲に巻き込まれることなく帰ってくることに成功した。
そして、インテレオンが帰ってきたと同時に、ボクの左手からもうひとつのボールが投げられ、その中からボクの最後のポケモンが姿を現す。
「ノワ……ッ!!」
場に出ると同時にこちらに飛んでくるワイドフォース。さすがに交代してすぐでこの攻撃を避けることは出来なかったヨノワールだけど、耐久が高い彼は腕を交差してしっかりと受け止め、技の終わり際に合わせて腕を振り払うことで、ワイドフォースの余波を弾き飛ばす。
「ヨノワール……」
「ノワ……」
同時につながる心。変わる姿。闇の嵐に包まれたヨノワールは、今日2度目の変化を見せ、技を構える。
「『ポルターガイスト』」
「ノワッ!!」
お腹の口の端から燃える青い焔を滾らせながら、黒く染まった両手を左右に広げるヨノワール。すると、バトルフィールドの外周から黒い塊の波が盛り上がり、それを確認したヨノワールが腕を前に突き出す。すると、浮き上がった黒い塊がヤドキングに向かって卒倒。その姿は、ヤドキングを中心に向かっていく黒い津波に見えた。
「や、ヤドキング!!『サイコキネシス』でクリームの盾を……」
「ヤ、ヤド……!!」
「ってクリームがない!?……いえ、まさか!?」
この波を見てセイボリーさんがクリームの盾を作ろうとするものの、ヤドキングの周りはワイドフォースのせいですべてのクリームが吹き飛んでしまったせいで全くなく、さらには、その吹き飛んだクリームを全てヨノワールがポルターガイストで支配下に置いてしまったせいで、ヤドキング側に操作できるものがなくなっていた。
「な、なら『ワイドフォース』を!!」
「ヤドッ!!」
クリームがないことに気づいたセイボリーさんは、慌ててワイドフォースに技を変更。確かに、この技が最大威力を発揮すれば、ヨノワールのポルターガイストは止められるかもしれない。
……けど、その希望も、地面のピンク色の光が、徐々に消えていくことによって失われていく。
「じ、時間切れ……」
「すいません、セイボリーさん。サイコフィールドの終了時間です」
天候や壁と違って、効果時間を延ばすアイテムの無いフィールドは、ボクにとってはカウントのしやすいギミックだ。その終了時間を正確に読み切ったボクは、サイコフィールドが切れると同時に、ヨノワールの最高火力を叩き込むように調整していた。
「……楽しかったです、セイボリーさん。また、戦いましょう!!」
「ノワ……ッ!!」
勝負は決した。けど、バトルはしっかりとどめを刺すまでだ。だから、ボクはヨノワールと一緒に、前に突き出した手のひらをぎゅっと握る。
同時に、黒い波がヤドキングをワイドフォースごと飲み込み、大きな爆発を起こす。
すぐに収まる黒い爆発。その爆心地には、目を回したヤドキングが倒れていた。
「ヤドキング、戦闘不能!!よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」
ヨノワールとの共有化を解きながら、ボクは楽しかったバトルの終わりに、満足感と寂しさを混ぜ合わせた感情を浮かべながら、ほっと溜息を1つついた。
ぶきみなじゅもん
ここではぶきみなじゅもんはキョダイゲンスイの劣化的なポジションにしていますが、実際はぶきみなじゅもんの方がPPを奪う量が多いです。……どうして?
サイコキネシス
やっぱり便利なサイコキネシス。アニポケ軸では、やはりこの技チートですね。
ポルターガイスト
やっていることはサイコキネシスと同じかもしれません。こちらもアニポケ軸ならやばそうです。
セイボリー戦、終了。