238話
「これでフリアが決勝進出確定か……」
「まぁ、評判道理というべきか、妥当というべきか……」
「手持ちのポケモンがほぼリセットされているとはいえ、経験値という点では頭1つ抜けてはいるからな……まぁ、フリアよりも経験値を稼いでいそうな人としては、マクワさんやサイトウさんが上げられそうだが……」
「そう言う点では、セイボリーさんも家の出からして経験豊富なのよね。ああ……ってこととは、フリアは自分より後輩の人とは当たっていないのね」
「セイボリーさんは、フリアのことを上の人って見ていたみたいだけどな」
フリアとセイボリーさんのバトルを見届けたわたしたちは、今しがた着いた決着をもとに、フリアの大会に関するあれこれを振り返りながらジュンと言葉を交わしていく。
初戦にマクワさんに当たっている以上、トナメ運もよかったとは言えない道を進んでいるのは確かだ。それでも、基本的にみんな残り1人まで追い詰められているのに対して、本人の体力的に一度限界は迎えていたとはいえ、ここまでの試合で唯一残りポケモンを2人残して突破し続けているフリアは純粋に凄い。勿論、内容をしっかり見れば快勝をしているわけではないけど、それでも他のみんなと比べると、勝利に対する安定性が1つ高いのはよくわかるだろう。
(かといって、じゃあ決勝戦でもフリアが絶対安定するだなんて、言えはしないけどね)
そのことをしっかりと理解しているのか、少し考え事をしながら、ゆっくりと控え室へ歩いて行くフリアを、拍手をしながら見送るわたしとジュン。
次にぶつかるユウリかホップについて考えているのだろう。わたしからみても、今大会でフリアを除けばトップクラスに強力なトレーナーだ。コウキの面影も感じるあの姿を見れば、ああなってしまうのも理解でき━━
「「っ!?」」
フリアの行動に対して、納得を示している時に感じたほんの少しの気配。遠かったせいか、はたまた気配が小さかったせいか、詳しい気配の場所までは分らなかったけど、隣のジュンもわたしと一緒に肩を跳ねさせていたので、わたしの勘違いというわけではなさそうなその気配は、とても馴染みのあるそれに感じた。
「な、なぁヒカリ……今の……」
「……えぇ、ほんのちょっとだけど、確かに感じたわ……でも、なぜ……」
とても馴染みのある、けど本来ならこんなところで感じるはずのないその懐かしい気配は、確かにわたしとジュンのセンサーに引っかかった。さらに、そんなわたしの感覚を裏付けるかのように、今しがた拍手で見送っていたフリアも、その場で立ち止まって気配を感じた方を見ていた。
「フリアも足を止めてるな……ってコトは、やっぱりオレたちの勘違いって事じゃなさそうだぞ……」
「ええ。それに、フリアの方が近かったのか、ある方向を重点的に探してるわね……」
もっとも、立ち上がっている観客が多いのと、ここからでは遠すぎて、顔を帽子とかで隠されるといくらわたしたちの視力がいいと言っても確認するのが難しい。夏も過ぎ始めているとはいえ、未だに熱い日差しを避けるために帽子をかぶっている人も多いため、フリアの視線を追って、その延長線上の人を確認してもその人の正体までは確認できなかったりする。
(もし、万が一ここに来ていたとしても、あいつの性格だと顔を隠して見に来てそうだし、フリアの視線だけでどこにいるかの予想立ては無理ね……あっちも気配漏らしたことは気づいているでしょうから、下手したら場所かえてる可能性もあるし……)
今の心情的には、フリアたちに自分のことがばれるのは気まずいどころの話ではない。となると、間違いなくしばらくはおとなしくするか、ここから離れるだろう。そうなれば、ますますこの気配の正体を見つけるのは困難だ。
(って、ほぼ決めつけみたいになっているわね……違う人の可能性もあるというのに……)
どうもわたしも少なくない混乱を受けているようだ。
(だとしても、もしこれがコウキだったのなら……)
もしかしたら、今のフリアの試合を見て、ちょっと心を動かされているのかもしれない。
(もしそうなら……ふふっ、競争はフリアが一歩リードってところかしら?)
未だ気配のことで頭を悩ませているジュンを横目に見ながら、わたしはフリアたちと入れ替わるようにバトルコートに入ってきたユウリとホップを見る。
(なにはともあれ、今は目の前のことに集中しましょうか。……さて、どっちが勝つのかしらね?)
うんうん唸っているジュンの声をBGMに、わたしはこれから起きる試合に視線を向ける。
ぶつかり合う幼なじみの対戦。その姿に、フリアとジュン、そしてコウキの姿を重ねながら……。
☆
カツ……カツ……と、靴で地面を叩く軽快な音を奏でながら、私はゆっくりと、この暗い道を照らし、人の声が漏れてくる光の中へと足を進めていく。
1歩進める度に少しずつ重くなっていく空気に、思わずしり込みしてしまいそうにはなるけど、その度に胸に手を当てて深呼吸をして、自分に気合を入れ直す。
そんなことを繰り返していれば、気づけば私は道を照らす光の中まで足を進めており、暗い場所から明るい場所に出た瞬間に起きる特有の眩しさに襲われる。けど、程なくしてこの明るさに順応した視界は、私にこれから試合が行われるバトルコートの状況を鮮明に写してきた。
(凄い……前よりも歓声が大きい……)
芝生のコートに少し眩しい日差し。そして、空から降り注ぐ大歓声。サイトウさんと戦った時も大きいと感じたその歓声よりも、さらに盛りあがっているバトルコートは、その声だけで気温を2、3度はあげているのではないかと錯覚させるほどには興奮の渦を作っていた。その事実に、また身体を強ばらせそうになるけど、ふと漂う爽やかな香りが、私の心を落ち着ける。
(この香り……フリアのマホイップのミントの香りだ……)
いくらバトルコートを整備し直しているからと言って、完全に綺麗にするにはさすがに時間が足りないみたいで、ほんのりとだけど、ミントの爽やかな香りが漂ってきた。周りの人からしたら変な人と思われかれないけど、それでも私にとっては馴染み深いその香りに自然と表情が緩みそうになる。
(……うん、大丈夫)
自分の心がいいコンディションに近づいてきたことを自覚した私は、そのまま真っ直ぐバトルコートの真ん中へ。
ホップも私と同じ速度で歩いていたみたいで、私たちはバトルコートの真ん中に同時にたどり着き、同時に身体の向きを変えて向かい合った。
「「……」」
そこから始まる実況者と解説の人のやり取り。それを聞き流しながら、私はホップと無言で向かい合っていた。
湧き上がる会場に対して、静かな空気を作り出す私とホップ。
そんな、まるで別世界かのような空間を先に破ったのは、ホップだった。
「……いよいよだぞ」
「……うん」
お互い真剣な表情を浮かべたまま、真っ直ぐ目と目を合わせていく。
ふと、こうやってホップと真剣に目を合わせたことなんてあったっけ?と思い返してみる。私の記憶が確かなら、横に並ぶことは沢山あっても、向かい合うことはあまりなかったように思う。
「こうしていると、色んなことが頭をよぎっていくぞ」
「そうだね。私もホップも、長い時間一緒にいたから……」
勿論ホップとバトルをしたことがなかった訳じゃない。ここに来るまでの間に、特訓として軽めとはいえバトルをしたこともあったし、向かい合うだけならご飯の時とか話している時にいくらでもある。けど、そういう意味じゃなくて。
「ガラル地方でも田舎の方だったオレたちにとって、同い年の知り合いは貴重だからな!遊び相手は自然と決まっちまうよな」
「そうだね。一緒にテレビ見たり遊んだり、ご飯食べたり……色んなことをしたよね」
「ああ……でも、こうやってぶつかり合う事って、今までなかったよな」
「喧嘩だってしたことなかったもんね。私たち」
「っはは、ユウリは温厚だからな!あまり怒ったところが想像つかないぞ」
「そう言うホップはおおらかだもんね。ホップこそ、なんか想像つかないかも」
実況者の声にかき消されそうな、決して大きくない声で昔話に花を咲かせる私とホップ。けど、私たちの纏う雰囲気は、とてもじゃないけど穏やかなそれとは言えなかった。
これから、お互いの夢をかけた戦いを行う。そのことを決して忘れてはいない私たちの言葉は、交わされている内容とは裏腹に、とても重いものとなっていく。
「本当に……まだ夢のような気分だ」
「うん……でも、夢じゃない」
「ああ……あの時した約束を果たさすため……いくぞ!!」
「うん!!」
私とホップが頷き、お互い後ろを向いて歩きだす。その間私は、今日のトップバッターを務めてもらう子に手を掛けながら深呼吸。
息を吸って、吐ききったところでちょうどトレーナーの立ち位置に到着した私はその場で反転。まったく同じタイミングで振り返ったホップと目を合わせ、声をあげる。
「約束のため……夢めのため……勝つのはオレだ!!」
「負けない……今回ばかりは、例えホップでも譲りたくない!!」
ポケモントレーナーの ホップが
勝負を しかけてきた!
「行くぞバイウールー!!」
「行くよ!!タイレーツ!!」
「メェッ!!」
「へヘイ!!」
遂に幕が切って落とされた私とホップのバトル。
実況者の宣言と共に繰り出されたポケモンは、ホップからはバイウールーで、私からはタイレーツ。ホップの初手は、相手がたとえどんなポケモンを繰り出してくるのかわかっていたとしても、絶対にバイウールーから始めるというルーティーンがある。ホップがスランプから抜け出したきっかけのポケモンでもあるから、こうすることでホップの気持ちを無意識に引き締めているのだと思う。けど、ポケモンバトルにおいて、初手が決まっているというのは明確なディスアドバンテージでもある。
今回はお互い手加減抜きの真剣勝負。こういう突くことの出来る弱点はしっかり突いて行くべきだ。
両手でほっぺを2回軽く叩く、自身の行動のルーティーンもしっかりと取って、表情をキリっと引き締めたホップが気合十分にこちらを見つめて来る。
「やっぱりタイレーツか……お前のことだ。こうかばつぐんを狙ってくる……当然だよな!!」
「ホップこそ、最初は絶対その子からだもんね。その子の強さはよくわかっている。だから、こうかばつぐんをつけるくらいで安心なんてしない!!『はいすいのじん』!!」
「『コットンガード』!!」
場に出てまずお互いが始めたことは自分磨き。タイレーツは自身の退路を自分から断って、全ての能力値を底上げ。一方のバイウールーは、自身の弱点を突いてくる敵に対して、自慢の防御で無理やり受け止めきるために身体の綿の密度を深くしていく。
(『コットンガード』……厄介……)
防御力をぐぐーんと伸ばすこの技は、文字通り能力の成長させ具合が大きい。成長量だけならこちらのはいすいのじんだって負けてはいないのだけど、こちらが上げられるのはあくまで1段階。1回の行動で3段階も成長させられる向こう側と比べても、どうしてもその成長幅に差が出来る。そして、成長スピードに差が出来るということは、その次への行動も速く移れるという事でもある。
「タイレーツ!!もう一回━━」
「させないぞ!!『ボディプレス』!!」
「メェッ!!」
3段階上がった向こうの防御に対して、こちらはまだ攻撃が1段階上がっただけ。その差を少しでも縮めるべく、2回目のはいすいのじんを構えるものの、何か嫌な予感を感じたのか、それともただのカンか、私が何かをするよりも速く攻撃の指示を出すホップ。その言葉に従ったバイウールーが高くジャンプをして、もこもこの身体を勢いよくタイレーツの上から落としていく。
「ッ!!技中断!!避けて!!」
「ヘイ!!」
これに対してタイレーツは、前に進むことによって落下地点か場所をずらし、バイウールーのボディプレスを回避。むしろ、着地した瞬間の隙をついて、こちらから攻撃を叩き込む。
「『アイアンヘッド』!!」
「へヘイッ!!」
「「「「「ヘイッ!!」」」」」
自慢の角を鈍色に光らせて突撃。はいすいのじんで攻撃も上がっているため、かなりの破壊力を秘めた攻撃がバイウールーを襲っていく。が、ホップのバイウールーは防御が3段階上がっているため、この程度だと全然ダメージが入っていない。
「メェッ!?」
「え?」
と思ったのだけど、タイレーツの攻撃によって、思いのほか勢い良く転がっていくバイウールー。あそこまで防御が上がっていたのだから、入ったとしてもちょっと掠り傷を与えただけで終わると思っていたのに、この結果は些かおかしい。
そう思ったからこそ、私はこの攻撃の意味にすぐ気づく。
(いや違う、わざと自分から後ろに転がったんだ。ってことは……!!)
「バイウールー!!そのまま転がり続けろ!!」
「メェッ!!」
攻撃を受けて転がっていたバイウールーは、その丸い身体を生かしてそのまま回り続け、ある程度ころがったところで急旋回。タイレーツから離れるように転がっていたのに、気づけばタイレーツに向かて突っ込むように転がり始めていた。
「さらに『とびはねる』だ!!」
タイレーツに向かって勢い良く転がって来るバイウールー。その動きが、ホップの指示によって更に奇怪な動きをし始める。
とびはねるによって地面をバウンドし始めたバイウールーの姿は、まるで白いバランスボールが跳ねまくっているように見える。しかも、ただ跳ねまくっているだけでなく、跳ねる度にどんどんその速度が上がっている。
「突撃だ!!」
「メェッ!!」
「迎撃するよ!!『インファイト』!!」
「へヘイッ!!」
「「「「「ヘイッ!!」」」」」
回転しながら突っ込んでくる白い球。これに対して、タイレーツは6人がかり拳を構え、とにかくバイウールーに対して乱打を繰り出しまくる。
ノーマルタイプでありながら、ひこうタイプの技で暴れまくるバイウールと、自身の得意なかくとうタイプの拳嵐を叩き込むタイレーツ。
お互いが有利タイプで攻撃を繰り返す互角の勝負は、今回は防御力じゃなくて攻撃力で突っ込んできたバイウールーが負ける形で打ち上げられる。流石に攻撃力勝負ではこちらの方が上だ。
「もう一度『ボディプレス』!!」
しかし、押されてもただではやられないバイウールーは、打ち上げられた場所から落ちて来る勢いも利用して、インファイト終わりで隙が出来たタイレーツに向かってさっきよりも速い速度で落ちて来る。
「もう一回『インファイト』!!」
回避は間に合わないので慌てて拳で迎撃。天から落ちて来る白いボールは、しかしとびはねるのときよりも更に重い一撃となって落ちて来る。
「へ……イ……ッ!?」
結果、今回はタイレーツの技が打ち負け、後ろに大きく吹き飛ばされる。
「タイレーツ!?」
「へ……ヘイ!!」
まるで先程攻撃された分のお返しと言わんばかりに飛ばされ、それでも何とか受身を取ったタイレーツは、すぐさま陣を敷いてバイウールーに視線を向ける。
これで仕切り直し。しかし、受けたダメージはバイウールーよりもこちらの方が大きい。やはり防御の差が顕著に現れていた。
(せめてあと1回は『はいすいのじん』を重ねたい……)
私のタイレーツは、普通のタイレーツと違ってはいすいのじんを重ねがけできる。重ねる度に何かひとつを犠牲にするという少なくないリスクを背負うことにはなるものの、その度に全ての能力を底上げできるのであれば、それは大きなリターンに繋がる最強の手札になる。相手のしっかり育っている防御に対抗するためにも、積めるなら何回でも積みたい技だ。けど……
(サイトウさんと言いホップと言い、なかなかそうさせてくれない……!!)
サイトウさんとのバトルで、2回までならはいすいのじんを重ねることが出来るのは既にバレているが、その先もまだできることについてはバレてはいない。けど、その先の存在を何となく予知はしているみたいで、こちらが素直に構えようとすればすぐさまそれを阻止してくる。
(やっぱり、ここまで残った人に単純な行動は通らない……積みたいなら、積める隙を自分で作る!!)
「タイレーツ!!『はいすいの━━』」
「それだけはさせないぞ!!『ボディプレス』!!」
こちらが陣を敷く素振りを見せた瞬間素早く跳躍するバイウールーは、的確にこちらの陣の中心を狙って落ちてくる。
「『はいすいのじん』の2回掛け……サイトウさんとのバトルから、自由にさせるのはやばいって気配は感じたぞ!!それだけはさせない!!」
そう宣言したホップの言葉を裏付けるように、バイウールーの動きは迅速で正確だ。こんな動きをされたら陣を敷く所では無い。
(でも……逆を言えば、『はいすいのじん』を止めるために
「ヘイチョーは2歩前に!!他のみんなは散開!!」
「「「「「「ヘイッ!!」」」」」」
「な、なんだ……?」
落ちてくるバイウールーを前にタイレーツがとった行動は、バイウールーの着地地点を中心に、綺麗に円で囲むようにヘイたちを散開させ、ヘイチョーだけは着地地点から少し身体を動かして、紙一重で避けられる位置に移動するというもの。これでさっきと同じく、ボディプレスの回避は成功する。けどこれで終わりじゃない。こちらの動きに困惑しているホップを無視して、私は自分の作戦を遂行する。
「『メガホーン!!』」
「ヘイッ」
「メッ!?」
着地してきたバイウールーに対して、次の行動を取られる前に1番近くにいたヘイチョーが、角を緑色に輝かせて右から左に振り切った。すると、バットで打たれたボールのようにバイウールーが飛んでいく。
「さっきよりも『ボディプレス』への反撃が早い……!!けど、そのくらいじゃまだバイウールーの防御は貫けないぞ!!バイウールー!!また転がるんだ!!」
が、ホップの言う通りまだ致命傷が入っているようには見えないバイウールーは、先と同じように身体を丸くして転がり始め、また跳ね回る準備を始めた。このまま頬っておけば、再びとびはねるによる大暴走が始まることになるだろう。
けど、そのための周りのヘイたちだ。
「ヘイのみんな!!『アイアンヘッド』!!」
「「「「「ヘイ!!」」」」」
「なっ!?」
私の指示と共に、ヘイチョーとバイウールーを中心に円形に構えていたヘイたちが一斉に頭を鈍色に変色させて構えを取る。
声をあげながら士気を上げるヘイたち。そんな彼らのうち、バイウールーが転がっていく方で待っていた1人のヘイが、バイウールーの転がる速度が最大値に行く前に頭を思いっきりぶつけて、バイウールーが予想していない方向に吹き飛ばす。
「メッ!?」
「次!!」
「ヘイッ!!」
1人のヘイによって派手に転がっていくバイウールー。そんなバイウールーが転がっていく方には、また別のヘイがアイアンヘッドを構え、思いっきり頭をぶつける。
「メ、メェ!?」
「バイウールー!!」
2人目のヘイに飛ばされ、また派手に転がった後に今度は3人目のヘイが構えており、また吹き飛ばされる。そして今度は4人目へ、更に5人目へ、そのあと1人目に戻ってまた2人目へと、バイウールーをボールとした、サッカーのようにヘイたちがアイアンヘッドによって弾き飛ばし合う。
「メ……ェェ……」
「バイウールーしっかりするんだ!」
弾かれて転がらされまくったバイウールーは、そのまま目を回して動きを制御できなくなる。その姿にホップが慌てて声をかけるけど、改善の兆しは見られずに、変わらずに変な声をあげたまま転がっている。
「みんな!ヘイチョーにパス!!」
もう反撃は来ないと判断した私は、ヘイに指示をして、みんなの中心で構えているヘイチョーに向けてバイウールーを飛ばす。
「ヘイチョー!!『メガホーン』!!」
勢いよく転がって来るバイウールー。これに対して、待ち構えていたヘイチョーは渾身の力で緑色の角を振り上げて、バイウールーを空中へ飛ばす。
打ち上げられたバイウールーの回転が徐々に止まっていき、空高く打ち上げられたバイウールーは、簡単に行動することが出来ない。
絶好のチャンス。
「タイレーツ!!集まって『はいすいのじん』!!」
「ヘイッ!!」
この間に散会していたみんなが集まり、全員で陣を敷きながら盾を捨てる。
2回目のはいすいのじん。防御を捨てて、再び全能力を強化させる。
「バイウールー!!力を振り絞れ!!『ボディプレス』!!」
「メ……ェッ!!」
はいすいのじんが終わると同時に、回転が止まって平衡感覚を取り戻したバイウールーは復活。空中にいることを利用して、そのままボディプレスで攻撃しようと構える。けど、飛ばされた位置が高すぎて、攻撃に移るのが襲い。
「タイレーツ、もう一回!!」
「ッ!?」
この隙にもう一回はいすいのじん。今度は自身の陣の選択を捨てる。
Vの字型に展開したタイレーツは、もう何があろうともこの形を崩すことはない。このまま上から降って来るバイウールーに備える。
全能力3段階上昇。ここまでくれば、コットンガードの守りを貫いて攻撃できる。
「タイレーツ!!『インファイト』!!」
「負けるなバイウールー!!押し込め!!」
上から落ちて来る白い星と、下から打ち上げられる拳の嵐。
どちらも積み技によって鍛えられた、かなりの威力を込められた技同士のぶつかり合い。しかし、その技のぶつかり合いは、一瞬にしてタイレーツ側に傾く。
「ヘイ!!」
「「「「「へヘイッ!!」」」」」
「メッ!?」
こうかばつぐん。
両者同じ育ち具合なら、ポケモンバトルで最も基本となるタイプ相性がやはりものをいう。
かくとうタイプが苦手なバイウールーは、拳の暴風雨に耐えられずにまた打ち上げられ、目を回しながら地面へと身体を落としていく。
「バイウールー、戦闘不能!!」
「よしっ!」
「ヘイ!!」
まずは1歩。私が夢へと足を進める。
ヒカリとジュン
当然この2人も気づきます。不思議な縁でつながっていますから。
バイウールー
転がって移動するのはウールーの頃からの癖みたいなものですね。その癖も突き詰めると武器になる……そんな感じです。
タイレーツ
サッカーしましょう。バイウールーがボールです。