「大丈夫?ポットデス……」
「ティ……ティッ!」
ホップの大きな壁であるカビゴンを無事突破したポットデス。しかしその代償は大きく、削られた体力はかなりのもの。いくらくだけるよろいで素早さが極限まで上がっているとはいえ、ここまで削られてしまえば、疲れからのミスが増える可能性が高い。そうなれば、普段なら避けられる攻撃でも、判断をミスして被弾する可能性が出てくる。しかも、代償として防御力を沢山犠牲してしまっているので、この被弾がとどめとなる可能性が高い。っていうか、かするだけでも多分ダメ。ポットデスはそれだけでダウンすると思われる。
(……着実に差が縮まってる)
最初こそ、タイレーツとバイウールーという圧倒的有利な対面によって、私は大きなリードを作ることが出来たけど、その貯金がどんどん崩されている感覚がある。ポケモンの残りの数的にはまだ私が勝ってはいるものの、ポットデスの残り体力はわずか。体力の総量で言えば、もはや誤差レベルまで詰められてしまっている。
(ポットデスの足を上手く使えるかどうかで決まりそう……)
残りのホップの手持ちは、前と変わっていなければアーマーガア、バチンウニ、ゴリランダーの3人。全員足が速いポケモンではないので、ポットデスが一方的に翻弄すること自体は出来る。……いや、素早さが極まっている今のポットデスに追い付けるポケモンの方が少なくはあるんだけど……今はそこは置いておいて、自身の素早さを上げる方法も持っていない先の3人では、どうやったってポットデスに追いつくことはできない。だから、この速さをうまく生かせば、流れによっては完封することが出来るはずではある。特に、バチンウニが出てきてくれれば、より有利な展開に持っていくことが出来そうだ。
(ま、バチンウニだけは来なさそうだけど……私がホップの立場なら、出すならアーマーガア……かな?……うん、ある程度のダメージなら……)
「よし、行くぞバチンウニ!!」
「ニニ!!」
「え?」
先の展開について予想をつけ、それをもとにおおまかな作戦を組み立てようとしていたら、一番来ないと思っていたバチンウニが現れて少し困惑してしまう。バチンウニはホップの手持ちの中だけでなく、全てのポケモンを比べてもかなり足の遅い方に分類されるポケモンだ。ただでさえ足が遅いのに、そんなポケモンがポットデスというとんでもない速さを手に入れたポケモンに追いつき、そして闘う姿なんて全然想像できない。
「行くぞバチンウニ!!『びりびりちくちくだ』!!」
「って、そうだった!!ポットデス!!すぐに上に浮かび上がって『シャドーボール』!!」
しかし、そんな私の乏しい想像力も、ポップからの指示を聞いた瞬間に一気に目が覚めていく。
びりびりちくちくを指示されたバチンウニは、自身の針を器用に動かして、自分の姿をハリーセンのような形に変更。その状態でスパークを発しながら高速回転を初めたバチンウニは、車のタイヤのように辺りを駆け回り始める。
よくよく考えなくても、マリィとのバトルでも見せてくれたバチンウニの高速移動だ。カビゴンの方に意識が向きすぎていて、しっかりアーカイブを確認していたはずなのにこのことをすっかり忘れてしまっていたらしい。正直自分でも呆れるほかないけど、今は自分を責めることよりもやるべきことがある。幸い、すんでのところでバチンウニの戦いを思い出した私は、すぐさま指示を出したおかげでこの攻撃を間一髪のところで回避。空に飛んだポットデスは、走りまわるバチンウニに対して黒球の雨を振らせていく。
「ティ……ッ!!」
「避けるんだ!!」
「ニニ!!」
「……っ」
バチンウニの干渉できない空というステージからの攻撃は、しかしポットデスの体力が減っていることが大きく影響しているためか、自身の速度に伴っていない、いつものそれと比べると心もとないシャドーボールは簡単にバチンウニに避けられる。
(普通の攻撃は通らなくなり始めてる……こうなっちゃったなら、いっそのこと……)
頭の中をよぎったのは、先ほどカビゴンを倒したのろいをもう一度発動させる戦い方。
ゴーストタイプの放つのろいは基本的に外れることがない。理由としては、攻撃の要となるのろいの釘が実体を持たないから。さっきカビゴンが腕で叩き落せなかったのを見てわかる通り、あの釘は物理攻撃だろうが特殊攻撃だろうが、そのすべてが通り抜けていく。これは攻撃技に限った話ではなく、まもるやみがわりといった、自身を守ってくれる技ですらもそうだ。そのため、こののろいという技は、ちょうはつなどで技の発動そのものを止められることはあれど、発動さえしてしまえば必中の強力な技となる。
ただし、さっき言った通り、ゴーストタイプののろいを発動させるには自身の体力を犠牲にする必要がある。たとえそれで、自身の体力が消えることとなっても。
(もうポットデスの体力はないから、ここで『のろい』を使っちゃえば、間違いなくポットデスは倒れちゃう。それでもバチンウニに『のろい』は入ってくれるけど……そのあとすぐにバチンウニをボールに戻されたら、ポットデスを無駄に失うことになっちゃう……けど……でも……)
地面を転がるバチンウニと、シャドーボールを打ちまくるポットデスのやり取りを見ながら、これからどうするべきか頭を悩ましていく私。その中で、強力な択の1つである、のろいによる相手へのスリップダメージが頭をよぎるけど、だめだった時の展開と、それによってなくなるかもしれないこのリードを手放すのが怖くてどうしてもあと一歩が踏み出せない。
のろいをするべきか否か。この議題について悩んでいる時間はそんなに長くはない。時間にしてみればほんの数秒もかかっていないくらいだろう。けど、そんな一瞬でも、戦況というのはどんどん変わっていってしまう。
「バチンウニ!!『まきびし』!!」
「っ!?」
ホップの声にハッとして前を見ると、フィールドにある変化が起き始めていた。
「地面に……棘………?」
その変化とは、地面にまばらにまき散らされた棘たち。まきびしを指示されているのだから、棘があるのは当たり前なのでは?と思うかもしれないけど問題はその棘の撒かれ方だった。
(棘の部分が上じゃなくて下に向かってる……?地面に刺さっているせいで下を向いているっていのは分かるけど、でもこれだと本来の効果が発揮しないんじゃ……)
まきびしという技は、いわばトラップ技だ。相手の場にまき散らすことで、相手のポケモンが地面に足をつける度にダメージを与えるという技。特に、交代して出てきたポケモンへ与えるダメージが大きく、そのあたりはマクワさんが使っていたステルスロックにかなり近しいものとなっている。違いを上げるのなら、ステルスロックと違って、タイプ相性によるダメージの増減がないことと、地面に撒くという兼ね合いで、浮いているポケモンには当たらないと言ったところ。
けど現在、そんなダメージを与えるはずのまきびしの棘が地面に向かっているせいで、本来の効果が発揮できなくなってしまっている。ポットデスはもともと浮いているから大丈夫だとしても、これでは他のポケモンが踏んだとしても、対してダメージにはならないように見える。
「一体何考えて……」
「『びりびりちくちく』!!針を飛ばせ!!」
「っ!?避けて!!」
地面に刺さるまきびしを見ていると、今度はポットデスに向けて身体の針を飛ばし始めてきた。それも、びりびりちくちくの電気を纏ったままこちらに飛ばされてきているので、破壊力はバチンウニから離れていても衰えることはない。こんなのを受けてしまえばポットデスは倒れてしまうので回避。外れた電撃針は、そのままポットデスよりも高い方向へ飛んでいってしまう。
(くっ、こんな遠距離技を使ってくるなんて……!!)
バチンウニが針を飛ばしてくるということは、身体から針が消えていくこと意味するけど、バチンウニの針は時間が経てば再生していく。だからこれでバチンウニの火力が下がることはないし、むしろこんな遠距離攻撃がるのなら、空を飛ぶというポットデスの優位性も少し損なわれる。しかも、相手がまきびしを覚えているのなら、下手にバトルを長引かせると、今でこそ機能していないとはいえ、ここからさらにまきびしを撒かれてしまうと後続の仲間が闘うのが難しくなってしまう。
(悩んでる時間はもうない!!ポットデスには申し訳ないけど……切るしかない!!)
「ごめんなさいポットデス!!あなたの最後の力を貸して!!」
「ティッ!!」
私の少し残酷な指示に、しかしそれを覚悟していたポットデスは、自信満々に笑顔を浮かべながら、こちらを向いて返事を返してくれる。
本当に感謝しかない。
「ポットデス!!『のろい』!!」
「ティッ!!」
私の指示と同時に、再びポットデスの前に現れる紫色の五寸釘。これがポットデスに打ち込まれたとき、ポットデスは倒れ、同時にバチンウニに定期的に大ダメージが入るようになるだろう。このバトルにおける、ポットデスの最後の攻撃だ。
バチンウニから飛ばされた電撃針をすべて躱し、一時的にバチンウニの針がなくなった瞬間にのろいの準備を行う。いくら針が再生すると言っても、一瞬で再生するわけではない。ほんの少しのラグがある以上、自身の身体にこの釘を打ち込む時間はある。
準備は整った。
「ティッ!!」
現れた紫の五寸釘を右手に持ち、その先端を自分に向けたポットデス。バチンウニからの妨害がないことを確認したポットデスが、その右手を一気に自分に向かって引き寄せる。
(ありがとうポットデス。あなたのその覚悟、絶対につなげて見せるから!!まずは相手が交代をする可能性から考えて……)
「ティッ!?」
「……え?」
ポットデスの勇気ある行動に感謝しながら、私は次のボールを構えながら作戦を考えるべく、思考をホップの残りの面子から伸ばしていこうとした瞬間、私の耳に入ってきたのは、ポットデスが驚き、そして何かに被弾したかのような声。
バチンウニの身体に針はなく、その前に攻撃も全部避けてからのろいを構えているため、バチンウニから攻撃が飛んでくるはずはない。それなのに、ポットデスの声に気が付いて空を見た時、確かにポットデスはダメージを受け、目を回しながら落ちてきていた。
「なんで!?いったい何を……あっ!?」
突如ポットデスを襲った謎の攻撃。その正体がわからず、いろんなところに視線を向けて原因を探した私は、ポットデスがいたところよりも更に上の場所に、それを見つけた。
それは先ほどポットデスが避けた、びりびりちくちくを纏ったバチンウニの針。それが、空中でバチバチと音を立てながら、定期的に電気を放電していた。が、別にこの針が放電していただけなら何も問題はなかった。放電したところで、ポットデスには攻撃が当たらないからだ。
問題は、地面にささっているまきびし。
「オレのバチンウニの特性は『ひらいしん』だ。でんき技を打たれたら、オレのバチンウニは、その電気を自分の針に引き寄せて吸収、自身の力に変換する」
「……そういう事だったんだ」
知っている。マリィのモルペコと対面していたし、マリィもその特性のせいでうまく立ち回れていなかった気がするから。そして同時に、今ポットデスを襲った攻撃の正体にも気づいた。
バチンウニの針は、例え本人から切り離されていても、それ単体で蓄電及び放電する性質があり、その実、3時間は常に放電し続けることが可能となっている。この性質が、ポットデスを襲った攻撃の原因の半分。そして、もう半分こそが、先ほどホップが言った特性、ひらいしん。
「この『ひらいしん』は、何も相手の攻撃でしか発動しないわけじゃない。味方のでんき技でも発動する。自分のでんき技じゃ発動しないけどな。でもさ……自分の身体から引き離されて、勝手に放電している針はさ、自分の攻撃じゃないって言ってもいいよな?」
ホップの言葉と共に、空中に飛んでいた電撃針が放電。
「そんでもって!バチンウニから離れて、勝ってに地面に転がっている針も、『ひらいしん』の性質を持っただけのただの道具!!バチンウニじゃない!!なら!!」
そしてその電撃が、まるで導かれるかのように、地面に撒き散らされているまきびしに向かって落ちていく。
「こいつらは、勝手に放電して勝手にひかれあう、自然の電撃トラップになるわけだ!!」
結果起きるのは、地面に落ちたまきびしとまきびしを繋ぐ電気の線。それらがデンチュラのネットのように張り巡らされていく。というか、まんまエレキネットのようだ。
そんなネットの中心に、ポットデスは目を回しながら墜落していった。
『ポットデス、戦闘不能!!』
「……ごめんなさいポットデス。もっと早く判断するべきだった」
ポットデスにのろいを指示するかどうか、ほんのちょっと迷った瞬間に起きたホップからの攻め。これによって、私が持っていたリードがついに消え去った。しかもそれだけじゃなく、まきびしと電気による罠まで設置される始末。
(これじゃあミロカロスは戦えない……)
みずタイプのミロカロスには、当たり前だけどでんきタイプの技はこうかばつぐん。こんなにもでんきだらけのフィールドに、そんなミロカロスを投げたら大変なことになってしまうだろう。おかげで、私の次のポケモンはほぼ固定されたようなものになってしまった。
ポットデスをボールに戻し、次のポケモンを構える私。繰り出すポケモンは、もう決まっている。
「お願い、アブリボン!!」
「リリィ!!」
私の4人目はアブリボン。可愛く鳴きながら空を舞う小さな妖精は、笑顔を振りまきながら空を舞う。
「リィッ!?」
「アブリボン!?」
しかし、そんな彼女を襲う電撃。
後ろから射貫かれるように飛んできた電撃は、ボールから出てきてすぐで、周りの状況を詳しく確認できていないアブリボンには避けることが出来ず、いきなりダメージを負ってしまう。これで体力関係は逆転。
(でもまだ、これくらいなら覆せる!!)
「避けて!!」
「リリィ!!」
電撃を受けて、頭の中でスイッチが切り替わったアブリボンは、私の指示を聞いてすぐに移動を開始。持ち前の素早さを利用して、四方八方から飛んでくる電気のネットを悉く躱していく。
「『かふんだんご』!!」
「リィッ!!」
電気の包囲網から脱出して、すぐさま技を構えるアブリボン。黄緑色の球を作り出した両手を真っすぐバチンウニに突き出すことによって、弾を複数発射する。
「『びりびりちくちく』!!」
「ニニ!!」
これに対してバチンウニは、再び電気を帯びたまま回転を始める。まきびしや、針発射の際に無くなったバチンウニの針はもう再生しており、回転による突撃も難なく行えるようになっていた。
電気を走らせながら回転するバチンウニは、速度を上げて走り回り、飛んでくるかふんだんごを避けていく。蛇行しながら高速回転して突っ込んでくるその姿は、ドンファンの突撃のようにも見えて来る。
「『ムーンフォース』を地面に!!」
「リリィッ!!」
回転している状態でどうやってアブリボンの位置を正確に判断しているのかは知らないけど、そこはホップが上手くやっているのだろう。まるで追尾してくるかのように突っ込んでくるバチンウニに対して、直接攻撃を当てられる可能性がないと感じた私は、攻撃を地面にぶつけるように指示。地面に攻撃を当てて、爆発した時の風圧で無理やりバチンウニのバランスを崩させる。
「ニニッ!?」
「地面に針を刺すんだ!!」
いくら勢いよく回転しているとはいえ、バチンウニ自身の体重はかなり軽い。アブリボンの力ではそんなに強い衝撃を起こすことは少し厳しいけど、バチンウニを動かすくらいの力なら十分持っている。対する、爆発のあおりを受けた側のバチンウニは、身体が一瞬空中に浮き上がり、態勢を崩してしまう。けど、このトラブルに対してバチンウニは、全身の針を一か所に集めて大きな針にして地面に突き刺すことで、吹き飛ばされるのを拒否する。
マリィの時も見せていたけど、本当に器用な子だ。
「でも、それをするってことは動きが止まるって事!!『かふんだんご』!!」
「リリィッ!!」
地面に針を刺し、空中でピタリと止まるバチンウニ。ここから再度転がって避けるには時間がかかる。そう判断した私は、すかさず攻撃を指示。黄緑色の球が真っすぐバチンウニに向かって突き進む。
「止めろ!!」
これに対して、転がるのが間に合わないと判断したホップは、地面に刺さっている針を戻し、今度は前に向けて針を伸ばしてかふんだんごを突き刺すようにする。躱せないのなら受け止めるという判断なのだろう。
でもそれは読めてる。
「爆発!!」
「リィッ」
「ニィッ!?」
「なっ!?」
バチンウニの針にかふんだんごが刺さった瞬間爆発させて、緑色の花粉をまき散らすことでバチンウニの視界を奪っていく。かふんだんごの圧縮をあえて緩くして、ちょっとの衝撃で弾けるようにした結果だ。
「今度こそ『ムーンフォース』!!」
花粉にまかれて視界と動きを阻害されたバチンウニ。この間に右手に月の光をため込んだアブリボンは、バチンウニに向かって発射。目も動きも不自由なバチンウニはこれを回避できずに直撃し、吹き飛ばされる。
「くっ、『びりびりちくちく』!!」
「ニ……ニィッ!!」
攻撃を受けて吹き飛ばされるバチンウニは、しかしそのおかげで花粉の霧から脱出は出来た。これで動きに自由が戻った彼は、身体の針に電気を帯びさせて、真っすぐ飛ぶ物と、山なりに飛ぶ物に打ち分けてこちらに飛ばしてきた。
「避けて!!」
前から飛んできた数本の針を少し高度を上げ、上から降りそそぐ針を、前に出ることでこれを避けようとするアブリボン。
「放電!!」
「ニニッ!!」
しかし、アブリボンが回避する前に飛ばされた針が放電。地面のまきびしと、飛んでいる最中の針同士が次々とひらいしんを発動。電気の線が次々と伸びてき、アブリボンを囲う檻のようになった。
「『マジカルシャイン』!!」
このままではこの電気の檻に捉えられ、今度はこちらの動きを止められてしまうので、それを防ぐためにマジカルシャインで自身を守る壁を作成。アブリボンを中心に円状に広がっていく光が、迫りくる電気の檻を受け止めていく。
(これなら耐えられ━━)
「『びりびりちくちく』!!」
「そんな甘くないよね……もっと『マジカルシャイン』!!」
電気と光が拮抗し、何とか耐えられそうだと思ったけど、こんな状況を見て頬っておくほどホップは甘くない。針を全身に戻したバチンウニは、再び高速回転からの針戦車と化し、拮抗していたアブリボンに向けて突撃を始める。これに対してアブリボンは、マジカルシャインの火力を上げることで対抗しようとするけど、全体に攻撃を向けるとアブリボンと、一点集中で良いバチンウニの差が出てきてしまい、マジカルシャインのかべを突き抜けて、今度はアブリボンが吹き飛ばされる。
「リィッ!?」
「追撃行くぞ!!」
「くっ……『ムーンフォース』!!」
吹き飛ばされたアブリボンを追いかけるように、さらに回転をして加速するバチンウニ。これに対して、再びムーンフォースを構えて地面を爆発させようと準備をするけど、それよりも速くバチンウニが懐に転がり込んでくる。
これでは間に合わない。
「直接叩きつけて!!」
投げるのをやめて、一時期のフリアのキルリアのように、右手にパワーをためたまま拳を振るうアブリボン。これならこちらに突っ込んでくるバチンウニに対応できる。
「リィッ!!」
普段慣れない近距離ながらも、なかなか様になっているアブリボンの拳を構えた姿は、真っすぐバチンウニに向かって放たれ、拮抗を見せる。
ぶつかり合う拳と針。思いのほか検討しているアブリボンの姿を見て、このまま頑張れば押しのけるではないかという期待が私の中で高まっていく。
が……
「リィッ!?」
「アブリボン!?」
綺麗に拮抗していたと思われていたお互いの力が一瞬でバチンウニに傾いた。
そしてアブリボンの周りに舞う、
「毒!?じゃあさっきの突撃は……まさか!?」
「へへ、『どくづき』だぞ!!」
フェアリータイプにばつぐんのどく技。。それをふいうちの形で直撃を受けてしまったアブリボン。電気による開幕のダメージと、びりびりちくちくによる突撃によってダメージを積み重ねていたアブリボンは、この毒がダメ押しとなって致命傷を負う事となる。
「リィ……ッ」
「アブリボン!!しっかり!!」
地面に落ち、それでも何とか身体を起こそうと踏ん張るアブリボン。しかし、もう体力の少ないアブリボンを、バチンウニが見逃すことなんて当然なく……
「今度こそ決めるぞ!!『びりびりちくちく』!!」
「アブリボン……!!お願い!!最後の羽ばたきを見せて!!」
物凄い勢いで転がって来るバチンウニ。このまま攻撃を受ければ戦闘不能は必至。そのため、何が何でもこの攻撃を避けるべく、一生懸命身体を起こしたアブリボンは、最後の力を振り絞って飛び上がり、懸命に羽を動かしていく。
徐々に強くなっていく羽ばたき。それに比例して、アブリボンから放たれる強風。その風は、どんどんバチンウニに向かっていき、彼の周りをかなりの勢いで流れていく。
が……
「そんな風がどうした!!吹き飛ばすぞバチンウニ!!」
「ニニィッ!!」
向かい風を無視して転がりづけるバチンウニ。彼の勢いを止めるには風では足りなかったみたいで、そのまま直進を続けて、ついにアブリボンに激突する。
「リリィッ!?」
「アブリボン!!」
電撃を帯びた突進を受けて吹き飛ばされるアブリボンは、目を回しながらわたしの下へと飛ばされる。
『アブリボン、戦闘不能!!』
これで逆転。とうとう追い抜かれてしまった。
この逆転劇に会場は大盛り上がり。その声援に、思わず押されそうになる。けど……
(ありがとうアブリボン。……あなたのおかげで、
私の目は、まだ死んでいない。
びりびりちくちく
肉弾戦者に続いて針飛ばし。そして果てには帯電と放電まで。避雷針と組み合わせてトラップなんかもできましたね。凄い万能技になっていますけど、特性と、バチンウニの設定を組み合わせればこれくらいならできるかなと。
ここに来て逆転。ですが、アブリボンの仕事はちゃんと果たせているようですね。