【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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245話

「う……うぅ……」

 

 身体を打ち付けて来る熱と衝撃。それに対して私は、両腕で顔を覆いながら声を漏らすことしかできない。その漏れだした声も、衝撃音が凄すぎて、本来なら自分の声は骨の振動で耳を塞いでいても聞こえるはずなのに、衝撃が身体を叩く方が強くてそれすらも聞くことが出来ない。爆発の時に発せられた光のせいで視界も防がれてしまっているせいで、本当に状況の確認が全くできない。

 

「エース……バーン……ッ!!」

 

 それでも声をかけずにはいられない私は、衝撃に飛ばされないように踏ん張って、きっと戦場で耐えてくれているであろうエースバーンに向かって必死に声をあげる。

 

 きっと今頃ホップも、私と同じようにパートナーの無事を祈ってひたすら耐えていることだろう。

 

 そんなもどかしい時間を過ごすこと数十秒。無限にも感じたこの時間が、ようやく終わりを迎え始める。

 

「衝撃が……あ、声も!!」

 

 私の身体を襲ってくる衝撃が少しずつ小さくなっていくのを感じた。と同時に、今しがた私が呟いた言葉もはっきりと耳に聞こえるようになってきた。

 

「エースバーンはッ!?」

 

 一度小さくなってしまえばもうあとは消えるだけ。徐々に収まっていく光と衝撃を耐えきった私は、すぐに腕をどかせて戦況を見る。

 

「これは……」

 

 そんな私の目に入ってきたのは、一言で言えば凄惨。

 

 あれだけ生い茂っていた草原と木の根は全て燃え尽きており、焦げてくたくたになってしまった木の根の群れは、まるで山火事にでもあったのではないかと錯覚させるほどの光景になっていた。今も、焦げきってボロボロになった木の根が1つ、また1つと、音を立てながら崩れ始めていく。このまま放置すれば、根っこの群れ全てが崩れ経ってしまうだろう。

 

 そんなちょっとした災害の跡のような景色広がるバトルフィールドだけど、その中でも一か所だけまた様子が違う場所があった。

 

 それは、私の記憶が確かならば、最後にかえんボールを挟んでゴリランダーとエースバーンが鍔迫り合いをしていた場所で、かえんボールが爆発したのを最後に見ることが出来なくなったその場所は、今は爆発のせいか全てが吹き飛んでおり、木の根の森の中だというのに、そこだけがぽっかりとあいた、綺麗な空間となっていた。それだけとんでもない爆発が起きたという証なのだろう。

 

 そして、その爆心地の中心にて、エースバーンとゴリランダーが、向かい合う立ち位置で、うつぶせに倒れていた。

 

「エースバーン!!」

「ゴリランダー!!」

 

 遂に確認することが出来た、私の最後のポケモン。しかし、目を瞑って倒れている姿からはピクリとも動く気配を感じず、相手のゴリランダーともども、傍から見たら戦闘不能になっているようにしか見えない。私とホップが必死に声をかけても特に反応を見せず、どうすればいいのか頭が真っ白になってしまう光景となっていた。

 

「これは……」

 

 それは審判の人も同じみたいで、どう宣言すればいいのかを言いあぐねている様子だった。

 

 両者のノックダウン自体はさして珍しい光景ではない。今回のリーグ中だって何度か見たし、今までを振り返っても少なくない結果だからだ。でも、このトーナメントそのものの勝敗を決める、殿同士の対決で起きたことはなかった。私の記憶を振り返っても、確かにトーナメントの勝敗が引き分けで終わったことはない。

 

(もし引き分けになったら……どうやって勝敗を決めるんだろう……?)

 

 引き分けになった時の対処はアナウンスされていなかったと思うので、その時に私とホップの結果がどういう扱いになるのかが気になってそちらに思考が伸びていく。

 

(後日、また戦うとかになるのかな……だとしたら大変そう……)

 

「バ……ス……ッ」

「グ……ラ……ッ」

 

「「ッ!?」」

 

 と、この後のことを考えているとかすかに耳に届いたゴリランダーとエースバーンのうめき声。その声に弾かれたように顔を上げると、そこには震えながらもゆっくりと、腕を着いて上体を起こそうと頑張るエースバーンとゴリランダーの姿があった。

 

 産まれたてのシキジカのように頼りなく、そして不安定な腕の動きは、先程までの激しい動きと比べるとスローモーションのように遅い。けど、両者の浮かべる表情は至って真面目で、とてもじゃないけど茶化すことなんて全くできない。むしろ、こんなボロボロにまでなって、それでも私に勝ちを届けようとしてくれる健気さに、なにか込み上げてくるものを感じてしまうほどで。

 

「エースバーン!!頑張って!!」

「ゴリランダー!!踏ん張れ!!」

 

 気づけば私の口は勝手に動いており、必死に応援の声を投げていた。反対側から同じようにゴリランダーを応援する声が響いているので、ホップも私と同じ気持ちなのだろう。結果を見守る静かなバトルコートで、私とホップの声だけが響き渡る。

 

「バ……スッ!!」

「グ……ラァ!!」

 

 私たちの声を受けたエースバーンとゴリランダーは、声援に応えるべくさらに力を込めて、ゆっくりと身体を起こしていく。その頑張りもあってか、両者とも片膝を立てるところまでは起き上がることが出来た。あとは腰を持ち上げるだけだ。

 

「頑張って……エースバーン……!!」

「立つんだ……ゴリランダー……!!」

 

 普段なら、もう休んでいいよという場面。だけど、今だけはその言葉を言えない。言う訳には行かない。それほどまでにこのバトルは大切で、逃したくない場面で。もはや私のわがままでしかないこの願いに、この状態のエースバーンを付き合わせてしまっていることに罪悪感すら感じてしまうほど。

 

 それでも、エースバーンは嫌な顔をひとつも浮べることなく、私のために頑張ってくれている。

 

「バ……アアアァァァスッ!!」

「グ……ラアアアァァァッ!!」

 

 その頑張りを証明するかのように、一際大きな声を上げながら立ち上がるエースバーンとゴリランダー。天に向かって雄叫びをあげる姿は、今にも倒れそうなほどふらついているのに、同時に何にも負けない力強さを見せつけてきた。

 

「バス……」

「グラ……」

 

 天に向けていた視線をゆっくりおろし、お互いを見つめ合う両者。この対面を見守る観客たちは、『今まであんなに激しいバトルをしていたのにまだするのか』という驚きの声と表情を浮かばせている。そう思わせるほどの気迫を両者は放っているし、私も何も知らない状況でこの2人を見たら、きっと今の観客たちと同じことを思ってしまうだろう。

 

 けど、当事者だからこそ、私とホップの意見は他のみんなとは違った。

 

(もう、エースバーンもゴリランダーも、戦う体力なんて一切残っていない)

 

 ぱっと見は両足をしっかり地面につけている両者だけど、よくよく見ればその足が笑っているのがかすかに見え、立っているのだけでも限界なのが分かる。それはホップも理解しており、だからこそ、私もホップも攻撃技の指示を一切しない。

 

 ただ立っているだけ。しかし、たったそれだけが今の2人にとっては死ぬほどつらい。今からもう一度地面に倒れてしまえば、今度こそ戦闘不能になってしまうだろう。

 

(だからこれは我慢比べ。どっちが先に力尽きるかの、最後の意地の見せあい)

 

 膝を最初に折ってしまうのはどちらか。その決着は、思ったよりも速くやって来る。

 

「グラ…ッ!?」

「ゴリランダー!?」

 

 先に崩れたのはゴリランダー。膝が笑い、崩れ、地面に身体を落としそうになる。それを無理やり抑えるべく、前にドラムを置いて、それに身体を預けることで無理やり身体を支えるゴリランダーは、けど、確かに必死に耐えて立っていた。

 

「バスッ!?」

「エースバーン!!」

 

 となれば、当然次に限界が来るのはエースバーン。しかもこちらはゴリランダーと違って、身体を預けられるものがないため、素直に膝をついて倒れかけてしまう。元の耐久力がゴリランダーよりも少ないこともあって、かなり危なっかしく目に映る。

 

「エースバーン……ありがとう……」

 

 その姿を見て、私はエースバーンに言葉を投げかける。

 

 ここまで頑張ってくれたことに、本当に感謝しかない。だから、私はエースバーンに告げる。

 

「お疲れ様。もう……いいんだよ」

「バス……」

 

 私の声を聞いたエースバーンがゆっくりと、もう片方のひざも曲げ、腰を落としていく。

 

 そして同時に、審判の人が、このバトルの結果を宣言する。

 

「だって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴリランダー、戦闘不能!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたのおかげで……勝てたから……!!」

 

 

「よってこのバトル、ユウリ選手の勝ち!!」

 

 

「~~~~~~ッ!!」

「バアアアァァァスッ!!」

 

 腰をかがめるエースバーンの前で、音を立てて地面に倒れるゴリランダーを見た審判から告げられる宣言。これを聞き、膝を曲げたエースバーンが、その膝を伸ばす反動で、バック宙しながら高く跳び、着地と同時に大声で叫び声をあげる。その声につられた私も、背を丸め、声にならない叫び声をあげながら、その感情を解き放つように2回、両手を広げながら大きくジャンプをした後、左手の人差し指を立てて真っすぐ空に向ける。

 

 同時に湧き上がる大歓声。

 

 遂に終わり、そして決まった準決勝の結果に、周りのテンションはどんどん跳ね上がる。

 

 降りそそぐ拍手喝采は私とホップ、そしてエースバーンとゴリランダーに向けられ、惜しみない賞賛として響き渡る。その拍手の雨の中、私とエースバーンは抱き合い、ハイタッチを交わした。

 

「ありがとう!!エースバーン!!本当に、ほんっとうに、ありがと!!」

「バスバスッ!!」

 

(……勝てた……これで、約束を果たせる……!!)

 

 ついに到達できた、フリアとの約束の場所。

 

 ついに手にすることが出来たフリアへの挑戦権。

 

「ふぅ……」

 

 万感の思いがこもった呼吸を1つ。私は零す。

 

 私の準決勝のバトルはこれで終わった。けど、ずっと喜び続けるのは一旦休憩。だって、私にはもう1つやるべきことがあるから。

 

「……っ!!」

 

 一通り喜んで、エースバーンともう一度ハイタッチして、エースバーンをボールに戻した私は、今回の対戦相手であるホップの方に視線を向ける。すると、ホップの表情が少しだけ目に入る。

 

 とても悔しそうな表情を浮かべていたホップは、歯を食いしばり、何かを後悔するかのように右手を握り締め、下に下げていたその拳をゆっくりと腰の上くらいまで持ってきた後、それを小さく、けど力強く下に振り下ろした。

 

 たった1秒ほどで行われるホップのその行動は、しかし彼の心境をこれでもかという程表しており、ホップとバトルが終わった後の会話をするために、バトルコートの中心に歩こうとしていた私の足が思わず止まってしまう程。けど、ここで私が足を止めることは許されない。

 

 だって、ホップの夢を遠ざけたのは、他でもない私自身なのだから。

 

 ホップの実力があれば、ダンデさんを越えるという夢はどうなるかわからないけど、少なくともダンデさんに挑むところまで帰って来ることはできるだろう。でも、だからと言って今この瞬間すぐに気持ちを切り替えられるかと言われたら、多分無理だ。私だったら落ち込んでしまう。

 

(ホップ……)

 

 悔しそうな姿を見たら、いやが応にもホップの心が気になってしまう。けど、この不安も杞憂に終わる。

 

「……サンキューな、ユウリ。オマエがいてくれて……本当によかったぞ!!」

「ホップ……」

 

 そういうホップの表情は、先ほどまでの悔しそうなものとは一転し、とても晴れやかで、どこかすっきりしたものを浮かべていた。先ほどの拳を振りぬく動作で、ひとまず今渦巻いている感情は出し切ったのかもしれない。

 

(……でも、多分このバトルが終わって、ホテルに戻ったらまた感情が返って来るんだろうなぁ)

 

 こういった敗北の感情というものは、徐々に押し寄せて来る。今この瞬間は大丈夫でも、後になってまた落ち込む可能性は全然ありそうだ。

 

(そういう意味では、杞憂って決めつけるのはまだ早いかも……)

 

 ひとまずは、ゴリランダーをボールに戻しながらこちらに向かって穏やかな表情を見せるホップを信じて、私はホップとの会話をしていく。

 

「私の方こそ……ありがとうホップ。あなたと戦えて本当によかった」

 

 バトルコートの中心で、握手を交わす私とホップ。

 

 ハロンタウンから始まった私たちの物語の1つの終着点。私はまだ続くけど、ホップのお話は一旦ここで終わってしまった。

 

「……次はフリアだな」

「うん……」

 

 そんな寂しさからか、周りの大歓声とは裏腹に、私とホップの会話はとても静かで、最低限の言葉だけで行われていた。

 

「もしかしたら、セイボリーさんかもしれないけど……」

「かもだけど……どうしても、な」

「あはは……」

 

 私たちはまだ反対側の山の勝者を知らない。けど、セイボリーさんには申し訳ないけど、フリアの負ける姿が思い浮かばなかった。だから、少なくともここでの会話は、フリアが勝っている想定で進められていく。

 

「……勝てそうか?」

「……わかんない」

 

 小さい声量で、そして最低限の言葉でのラリー。だけど、今はこのやり取りがちょうど良く感じてしまう。

 

「……大丈夫だ。オマエならやれるぞ」

「……うん!」

 

 すっきりした表情から、徐々にいつもの笑顔へと表情を変えていくホップ。そんなホップからもらうエールが、半分嬉しくて、半分申し訳ないという気持ちで埋まっていく。

 

 けど、悲しいという気持ちを前に出すわけにはいかない。

 

「……オレの夢、今回はお前に託すぞ……勝ってくれ!!」

「……うん!!」

 

 ホップも、私の肩に手を置き、私をとにかく激励する。

 

 私に、後ろを振り向かせないために。

 

(私の目標を知っているホップだからこそ、こう言ってくれるんだ)

 

 こんなことをされてしまったら、私にもうホップを心配することなんてできない。背中をこんなにも押されたのなら、前を見て進むべきだ。

 

「絶対勝つ……って約束は、ごめんなさい。ちょっとできないかも……」

「ま、そうだよな」

「でも……私の望んだ舞台だから……観ててね、ホップ。少なくとも、退屈しない試合は出来ると……思ってる」

「……そっか!その言葉を聞けて安心したぞ!!」

 

 私の言葉に微笑みを浮かべながら、両手を後頭部で組むホップ。それにつられて、私も頬が緩んでしまう。

 

「じゃあ、とりあえず今日は先に返って休めよ。次があるオマエに、先にポケモンを休める装置も譲るからさ」

「うん、ありがとう。じゃあ、先に戻るね」

「おう!!」

 

 ホップに先を譲ってもらったので、私は少し駆け足で控室へと戻っていく。こうすることで少しでも早く装置を使って、ホップのポケモンたちも回復させてあげたいから。

 

 私が退場すると同時にまた一段と大きくなった拍手に手を振って返しながら、控室へと続く暗い道をかけていく。

 

(次は、いよいよ決勝だ……)

 

 ホップのことは未だに頭の片隅にどうしても残り続けちゃうけど、今の私はそれ以上に気になることが出来てしまっている。

 

(フリア……)

 

 いよいよここまで来た。

 

 勿論、まだセイボリーさんが上がって来る可能性はあるけど、それでも9割くらいは確定だろう。

 

(……本気で、挑むからね)

 

 私は心を引き締めて、先へと思考を向ける。

 

 ようやく立つことの出来る、目標の舞台へ思いを馳せながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いっちまったな」

 

 控え室に向かって少し小走りに向かい、そして振り向くことの無いユウリの背中を見届ける。オレと違ってまだ先があるユウリは、こんなところで振り向いている場合じゃない。少しでも早く腰を落ち着け、次の決勝戦の準備をするべきだから。

 

「……おし、オレも戻るか」

 

 そんな先を行く人の背中を見送って、完全に姿が見えなくなったあとも少しだけこのバトルコートで余韻に浸り、いよいよ実況者の長い話が終わりを迎え始めたところで、オレもユウリが消えた方とは逆側のルートを通って控え室の方に帰っていく。その際に、ユウリに送られた拍手と同じくらいの量をオレの方にも送ってくれた。その事が嬉しくて、手を振りながら退場するオレは、しかし控え室に続く暗い道を歩くと同時に、段々と心が下へ下へと沈んでいく感覚に襲われる。

 

「……はぁ」

 

 気づけばオレは控え室の中に入っており、その中心に置いてある椅子に座って大きなため息を零していた。

 

「終わっちまったなぁ……」

 

 ユウリに負けたことで、オレのジムチャレンジは終了した。昔からの夢を昇華させた、アニキを超えるという目標が遠ざかった。

 

 もちろん、これでオレのトレーナー人生が終わったわけじゃない。むしろ、長い目で見ればここからが本当のスタートと言っても過言では無い。ここまで勝ち残ったのならば、スポンサーが着いたり、新しいジムリーダーやリーグ関係の仕事に呼ばれたりなんて未来もある。将来性だけの話をすれば、むしろオレはかなり勝ち組の道を歩むことが許されている側の人間だと思う。

 

 けど、それでも……

 

「勝ちたかった……なぁ……」

 

 オレにとってこのジムチャレンジは特別で、小さなころからのあこがれで……

 

 何より、目標にしていたアニキが、チャンピオンになるまでに通ってきた道だった。

 

 アニキを越えるという目標を掲げている以上、真にその目標を達成するのなら、やっぱりオレはジムチャレンジでチャンピオンになりたかった。

 

「しかも……よりにもよって負けたのがなぁ……」

 

 今日の対戦相手のユウリ。

 

 小さいころからずっと一緒にいて、オレの夢を誰よりも知っていて……

 

 そして、オレと全く一緒のタイミングで旅を始めた一番のライバル。

 

 同期で同い年と言えば、ユウリのほかにもビートやマリィがいるにはいる。けど、マリィはジムリーダーの妹として既にある程度の経験はあったはずだし、ビートもビートで、ジムチャレンジ開始時点からかなり抜けていたことと、あのローズ会長からの推薦という事から、マリィと同じくジムチャレンジ開始時点ですでに経験があった側の人間だって分かる。……まぁ、ビートはそもそもここまで来ることが出来なかったんだが……今は置いておく。

 

 とにかく、真の意味でオレと全く同じ条件で旅を始めたと言えるのはユウリだ。そんなユウリと真正面からぶつかって負けた。その事実は、他の参加者の誰に負けるよりも意味があるものだった。

 

(だって、それってつまり、ユウリに才能で負けているって言われてる気がしてなぁ……)

 

 今でこそ、ユウリもしっかりと目標を見据えて戦っているけど、本人が言う通り、昔からこれほどまでトーナメントに熱意があったわけじゃない。ユウリが得た目標はあくまでも後天的なものであって、オレみたいに遥か昔から燃え続けていたそれではない。

 

 比べるのが間違いなのは分かっている。それでも、負けた直後の今の心境だと、そんな小さいことも思うところが出てきてしまう。その事実が、自分の器の小ささを思い知らされている気がして、余計に嫌になって……

 

「はぁ……ん?」

 

 またため息を零しながら落ち込むオレ。しかし、そんなオレの頭に何かが乗せられる感覚。

 

「グラ……」

「ゴリランダー……オマエ……」

 

 その正体はゴリランダー。

 

 まだ傷は治っていないから、いつ倒れてもおかしくない状態だ。なのに、それでもオレを励ましてくれるために出てきてくれた最高の相棒。

 

「うっ……ぐっ……」

 

 それがとても心にしみて、思わず頬を温かいものが伝っていく。

 

「すまん。ゴリランダー……絶対立ち直る。絶対強くなって、また挑む……だけど……今だけは……弱音……はかせてくれ……」

「グラ……」

 

 弱音を吐くオレを励ますゴリランダー。そして、そんなゴリランダーに続くように出て来るウッウ、バチンウニ、カビゴン、アーマーガア、そしてバイウールー。

 

 みんな相応に傷ついて辛そうなのに、それでもオレのために声を出してくれた。

 

「……ありがとな、みんな」

 

 その姿に、更に心が温かくなり、同時に改めて心に誓いを立てる。

 

「絶対に……帰って来る。そして今度こそアニキを越えるんだ……だから、その時まで……ついてきてくれるか?」

 

「グラッ!!」

「ウッ!」

「ニニッ!」

「カ~ビ」

「ガァ!」

「メェッ!!」

 

 オレから絞り出されるように発せられる小さな声と、これに応えてくれるみんなの声が控室に響いた。

 

(絶対リベンジするからな……だから勝てよ!ユウリ!!)

 

 オレの心に新しい目標が出来た瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホップ

実機でも見せたとても悔しそうなあの場面。そのあとの落ち着いた表情が、またちょっと心に刺さりますよね。それでも立ち直っているあたり、やはり心は強いです。少なくとも、とある人物よりは、よっぽど……

ユウリ

幼馴染に前を向けと言われたので、振り返ることなく前を向きます。それが、自分が夢を摘んだ相手への礼儀と信じて。




メロエッタの入手方法がワザップみたいで、最初に見つけた人が本当に凄いと思いました。そしてBP集めが本当に大変……




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