【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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249話

「ありがとう、タイレーツ」

 

(まっずいなぁ……)

 

 ボールに戻っていくタイレーツと、戻しながらもギラギラとした光を放ちながらこちらを見てくるユウリを見て、ボクは心の中で今の状況を整理していく。

 

 全能力が6段階上昇したタイレーツを何とか下すことには成功したボクだけど、そのために払った代償があまりにも大きすぎる。

 

(ヨノワール……平気……なわけないか)

(ノワ……)

 

 ヨノワールに呼びかけながら今の体力を確認するけど、正直どうやったってこのまま戦いを続けられるとは思えない。数多の連撃に晒された身体はそこらじゅうが痛むし、先程の回転しながら叩きつけを行った攻撃のせいで視界も少し揺らいでいる。さらに、攻撃を振り切ったところに貰った右肘へのダメージが痛すぎて、フィードバックの痛みしか感じていないボクの右腕すらも動かすのに時間がかかる。何割か軽減された痛みしか受けていないボクですらこの状況なのだから、当事者であるヨノワールが感じている痛みはこの比では無いだろう。少なくとも、このバトル中はもう動かせない可能性が高いとみて間違いないと思う。

 

(ここは1度下げた方が……)

 

「お願い、ポットデス!!『からをやぶる』」

「ポッティ!!」

「……って、そう簡単に……下がらせてくれない……よね!!『ポルターガイスト』!!」

「ノ……ワッ!!」

 

 体力を少しでも回復することと、共有化を切って、ボク自身の体力を取り戻す時間を作ろうとしたところで、ユウリは次のポケモンのポットデスを繰り出してくる。

 

 出現と同時に指示された技はからをやぶる。ここでもしヨノワールを引かせるのであれば、その間にどんどん自身の能力をまた上げてやろうという魂胆だ。

 

 当然ここでヨノワールを下がらせるなんてことはしない。いや、できない。このまま相手にからをやぶるを何回もされてしまえば、それこそ先程のタイレーツの二の舞になってしまう。それだけは絶対に避けないといけない。

 

 どうやら、いよいよもってここでヨノワールを落とし切るつもりらしい。

 

(ごめんヨノワール……もう少しだけ……付き合って……!!)

(ノワ……!!)

 

 息も絶え絶えになりながらも、からをやぶるを止めるために、辺りにちらばっている石の礫や岩を使ってポルターガイストを行うヨノワール。技の指示自体は向こうの方が早いため、からをやぶるそのものを止めることは多分できないだろう。しかし、からをやぶるという技は強力な力とスピードを手に入れる代わりに、先程のタイレーツ以上に防御面で脆くなってしまう諸刃の刃だ。なら、からをやぶるが終わった直後に当たるように調節したこのタイミングは、むしろポットデスを一撃で仕留めうる完璧な攻撃になる可能性が高い。ただでさえヨノワールの体力を大きく削られている以上、挽回できるこのチャンスを逃す訳にはいかない。

 

(いくら『からをやぶる』で速くなるとはいえ……破った瞬間なら……避けれないはず……!!いけ……っ!!)

 

 ポットデスが、自身が宿代わりに使っているティーポットに一度潜り、その殻を破った瞬間を狙って放たれた黒の弾幕。それら全てが、ボクの思いどおりのタイミングで当たるのを確信。

 

「ポットデス!!そのまま維持!!」

「……なるほど……やられた……」

 

 したところで、ポットデスの動きが一瞬止まる。

 

 その行動の理由は、からをやぶるタイミングをずらすこと。

 

 からをやぶるをした時のデメリットは、先ほども言った通り自身の防御力を極端につぶしてしまう事だ。これによって、ただでさえ耐久力が高い方ではないポットデスがかなり脆くなってしまう。そこでユウリがとった行動が、からをやぶるによって自分が入っているティーポットが割れる直前を維持し、防御面が下がっていないギリギリの状態で敵の攻撃を受け止めるという作戦だ。こうすることによって、相手の攻撃をしっかりと受けた後にからをやぶることが出来る。とはいっても、ヨノワールは物理技が得意で、ポットデスは物理方面に元々脆い。故に、たとえからをやぶるをしなくても、素の火力で倒されていしまう可能性の方がかなり高い。ボクと絆でつながっている今のヨノワールの火力ならなおさらだ。

 

 だからこそ、この時起きたもうひとつの現象に、ボクは無意識のうちに苦い表情をうかべる。

 

「ポ……ティッ!!」

 

(……気合いで耐えてる。やっぱりユウリも……ッ!!)

 

 本来なら耐えられないはずの攻撃を、維持と気持ちだけで耐えるその現象。

 

 ポケモンが、主を悲しませまいとするために、無意識のうちに発動する根性。

 

 勿論ユウリはこれを狙ってやっていない。コウキと違って、これを狙ってできるほどの技術や能力までは開花していないのだろう。きっと、ポットデスなら耐えられると純粋に信じていただけに過ぎない。けど、その姿は間違いなく、コウキの姿と重なって見えた。

 

 いつか、あのコウキと同じことが出来るようになる。そんな予感をひしひしと感じた。

 

「いいよポットデス!!そのまま『からをやぶる』」

「ティッ!!」

 

 そんな、一種のトラウマ現象と言っても差し支えない出来事にボクが気を取られていた一瞬の間に、ポルターガイストを受け止めきったポットデスは途中で止めていたからをやぶるを再開する。すると、一瞬身体が青く光り、防御と特防が下がったことを伝えた後、身体が赤く光り、今度は攻撃、特攻、素早さが強化されたことを伝える。

 

 そしてもう1つ。

 

「『ポルターガイスト』って物理技だよね……?だったら!!」

「ティッ!!」

 

 ユウリの言葉と共に、再び身体を赤く光らせたポットデスは、ティーポットのからをさらに落としながら声を上げる。

 

(……『くだけるよろい』!!)

 

 物理技を受けた際、防御面が脆くなる代わりに、自身のスピードを一気にあげる特性。

 

 からをやぶるとは別に発動するこの特性が重なったことで、ポットデスのスピードはさらに上がることとなる。

 

「ポットデス!!『アシストパワー』!!」

「ポルティッ!!」

 

 合計8段階上昇。タイレーツほどとは言わないが、それでも自信を磨き上げた完璧な状態のポットデスによって、ポプラさんとのバトルでも見たピンク色の光がこちらに目掛けて飛んでくる。

 

「くっ、ヨノワール!!『ポルターガイスト』!!」

「ノ……ワ……ッ!!」

 

 8段階という上昇量によって強化され、さらに特攻が鍛え上げられたことによってとてつもない威力となったこの攻撃を受けてしまえば、こちらは100%戦闘不能。タイレーツとのバトルでほぼ満身創痍なヨノワールは、それでも最後の力を振り絞って技を放とうとし……

 

「ッ!?」

「うぐっ!?」

 

 あまりにも高火力であるアシストパワーに対抗するために、無意識に利き腕である右腕を持ち上げてしまい、タイレーツから貰った攻撃を思い出して、その動きを止めてしまう。感覚共有を通してでも激痛を感じるそれはとてもじゃないけど我慢なんてできない。が、今この状況でこうなるということは、目の前から迫る攻撃を止めることが出来ないということでもあり……

 

「あ……」

「ッ!?」

 

 そうなれば当然、アシストパワーはヨノワールに直撃することとなる。

 

「ヨノワール!!」

 

 ピンクの光に包まれるヨノワール。その姿に思わず叫び声に似た呼びかけをしてしまうボク。しかし、この声に答えてくれるものは誰もおらず……

 

「ノ……ワ……」

 

 ピンクの光が納まった時、そこには地面に身体を伏せ、動けなくなってしまったヨノワールがいた。

 

 

『ヨノワール、戦闘不能!!』

 

 

「ヨノワール……」

 

 ボクが誰よりも頼りにしていたポケモンが、ここで倒れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(よし……よし……!よし……っ!!)

 

 審判から上がる、ヨノワールが脱落したという宣言。その声を聞いて私は、飛び跳ねたい気持ちをぐっとこらえて、心の中でたくさんガッツポーズをした。

 

(本当にありがとう!!タイレーツ!!ポットデス!!あなたたちのおかげで、私の作戦がピッタリハマってる!!)

 

 タイレーツが本気を出してヨノワールを引っ張り出し、そしてポットデスと2人がかりでヨノワールを倒し切る作戦。失敗してしまえば、そのまま私の負けが確定するレベルの開幕フルスロットルな攻撃戦法。

 

 この作戦をしようと思ったきっかけは、フリアののこした『後手に回りがち』という発言と、セイボリーさんがとった開幕ダイマックス戦法の2つを思い出したときだ。

 

 フリアは、あとから作戦に対応することはできるけど、作戦の最初の一手はよく貰うという、言ってしまえば初見殺しには引っかかりやすいタイプではある。対応能力は高い代わりに、反射的な対応があまり強くないというところなのだろう。現にセイボリーさんの取った開幕ダイマックス作戦は、途中までは完璧に決まっていた。その後に行ったヨノワールによる壁破壊と、エルレイドによるみらいよちやぶりによって、セイボリーさんの作戦自体は頓挫してしまったけど、それが突破口のヒントに放った。

 

 結果生まれた作戦が、最初の一手が致命的なもの且つ、回避不可能なものならどうだろうか。というもの。

 

 恐らくフリアのことだから、回避不可能と言っても、何かしらの手で乗り越えてくる可能性が高い。私程度の人間による浅知恵では、特にそうなってしまうと思う。だから、対策を立てられるまでのわずかな時間で、多大な爪痕を残す何かを残せる作戦を用意する必要があった。

 

 それがタイレーツによる特攻。

 

 ホップとマリィといくら考えても見つからなかったヨノワールの攻略方法。最後の壁を乗り越えられないと思った私が思いついた逆転の発想。それが、越えられないのなら向こうから出してもらう作戦。

 

(理想を言うのならタイレーツだけで倒したかったけど、フリアはそんなに甘くはないと思ったから、次善策としてポットデスも構えていたけど……うん。本当によかった。それに……少し申し訳ないとは思うけど、ヨノワールとフリアは感覚を共有しているから、ヨノワールがダメージを受けている今、きっとフリアは……)

 

 正直言うならとても心が苦しい。タイレーツの攻撃が当たるたびに、フリアの表情も歪んでいるのは見ていてこちらもつらい。

 

(でも……多分、ここで私がそれを理由に手を休めることを、フリアは望んでなんかいない)

 

 今までの戦いだって、フリアはフィードバックを理解しているうえでバトルをしてきている。今さらその痛みが怖くてバトルなんてしないだろう。

 

(だから、私は手を休めないし、手加減もしない……!!)

 

 ヨノワールが倒されたことに少なくない衝撃を受けているのか、未だに伏せられているせいで確認することの出来ないフリアの表情。でも、きっとそこにはまだまだ諦めていない、燃えるような意志を秘めた瞳をしているフリアがいるはずだ。

 

(さぁ……見せてフリア……。私が憧れた、私が大好きな人のバトルを……!!)

 

 ヨノワールに勝った喜びをかみしめながら、ゆっくりと顔を上げたフリアの表情を見つめる。

 

 ちょっとずつ、しかししっかりと上がったフリアの表情。

 

「っ!?」

 

 そこに浮かべられた、フリアのいつにない迫力のある瞳に、私はまた、引き込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヨノワール……」

 

 ボクの前に倒れているヨノワール。

 

 ボクが一番信頼を置いているパートナー。そんな彼が、ついに倒れた。

 

(そういえば、ここに来てヨノワールが倒れたところ見てないや……)

 

 ガラル地方に来て、既に何回もヨノワールとバトルをしてきたけど、ボクが倒れることはあっても、ヨノワールが倒れることはなかった。

 

 ボクに常に背中を見せ、前で闘い続けてくれた自慢のパートナー。そんな彼が、こうして倒れるところを見ると、やはり心に来るものがある。けど、このまま固まっておくわけにはいかないから、ボクはボールを取り出して、ヨノワールをボールに戻そうとする。

 

(……あれ?)

 

 と、そこまでしたところで、ボクはある違和感に気が付いた。

 

(ヨノワールの身体……いつの間に元に戻って……)

 

 それはヨノワールの姿。戦闘不能になっているのだから、共有化状態から元に戻っているのは当たり前なのかもしれないけど、よくよく思い出したら、ヨノワールが倒れる前からこの姿に戻っていた気がする。そして、もう1つの違和感。

 

(そういえば、ポットデスの『アシストパワー』を受けた時の痛みが……まさか!!)

 

 そこまで考えて、ようやくヨノワールが最後に何をしたのかに気づいた。

 

(自分から共有化を切ったんだ……)

 

 アシストパワーによる痛みを受ける瞬間に、ヨノワール側からパスを切ることによって、ボクにフィードバックが返っていく前に倒れたヨノワール。それによってボクへの負担が減り、この先を戦い抜くための体力を残せるという考えからの気遣い。

 

(ヨノワール……!!)

 

 自分がこれ以上闘うことが出来ないと悟ったが故のその行動に、ボクは傷む身体を無視して拳を握り締める。

 

(ごめん……ボクがもっとちゃんとしていれば……!!)

 

 ヨノワールはいつもボクのことを考えて行動してくれる。それが嬉しくて、そして同時に不甲斐なくて……

 

(絶対に答えなくちゃ……!!)

 

「戻って、ヨノワール……」

 

 ボールにヨノワールを戻しながら、傷み、そしてふらつく身体に鞭打って、ボクは心を更に引き締めていく。

 

(ユウリ……凄いよ……本当に強い……!!)

 

 ボクよりも1年遅く旅に出ているのに、既にコウキを彷彿とさせるかのような耐えや戦い方を見せてくれるユウリ。その証拠に、まだまだ序盤とはいえ、現状ボクは圧倒的不利な状況に追いやられてしまっている。

 

(何が『簡単には追い越されない』なのさ……もう、とっくに追い越されちゃってるじゃないか……)

 

 今の状況だけ見れば、間違いなく観客はユウリの方が強いと答えるだろう。ボクだってそうだ。

 

 これが才能の差。生まれ持った者との差。

 

(わかってたよ……ユウリに才能があることくらい……いつか、追い抜かされてしまうことくらい……)

 

 凡才であるボクにとって、喉から手が出るほど欲しいものを、彼女は既に備えている。

 

 けど、もうその差にくじける時はとっくに過ぎている。

 

(才能に差があることなんて……わかってる!だからこそ……ボクはここに来て……また一から始めたんだ!!)

 

 心を引き締める。

 

(うぬぼれるな!『超えさせない』だなんて消極的なことを考えるな!!まだボクは、挑まれる立場に……トップに立ったことなんてないんだから!!)

 

 ボクが次に出すべきポケモンをすぐに思い浮かべ、次のポケモンが入ったモンスターボールに手を掛ける。

 

(待つな!挑め!少なくとも、コウキに勝つまボクは……()()()なんだから!!)

 

 心意気を新たに、ボクは真正面にいるユウリを完全にライバルと認識しながら、ゆっくりと顔を上げる。

 

「ごめんね……ここから、改めて君に挑む!!ユウリ!!」

「っ!?」

 

 ボクの言葉に、ユウリが息をのむ音を立てる。その音を聞き流したボクは、右手に握りしめた3人目の仲間をフィールドに送り出した。

 

「行くよ!!ブラッキーッ!!」

「ブラッ!!」

 

 勢いよく投げ出されたボールから現れたのはブラッキー。選定理由は色々あるけど、一番の理由はアシストパワーを受けない点だ。今のポットデスの最高打点であるこの技を無効に抑えられるというのは、この場においては重要なポイントになる。それに、メインウエポンのシャドーボールも半減できると良いことづくしだ。難点をひとつあげるなら、素早さの差が少し大きいところだが、これはでんこうせっかによる加速に頼る。

 

「『でんこうせっか』!!」

「ブラッ!!」

 

 ボクの指示に従って、軽く身体を薄い白色に光らせたブラッキーは、勢いよく地面を踏み込んで猛ダッシュ。先程暴れ回っていたタイレーツに比べれば見劣りはしてしまうものの、それでも十分な速度を持って、ポットデスに向けて走っていく。

 

「くっ、『シャドーボール』!!」

「ティッ!!」

 

 走ってくる黒色に流星に対し、ポットデスがとった行動はシャドーボールの乱射。黒色の球が次々と乱射されて飛んでくる様は、さながら黒い壁が迫ってきているようにも見える。

 

「まずは右に1歩ズレて、そこから今度は10時の方向にジャンプ!!そこで『あくのはどう』!!」

 

 この一見して絶対避けられなさそうな攻撃に対して、ボクはいつも以上に注意深く観察してブラッキーに細かく指示を出す。細すぎて1回聞いただけでは伝わらない可能性すらある指示だけど、ブラッキーはこれを完璧に再現。黒い壁の合間を綺麗に縫っていき、最後に放ったあくのはどうによって、シャドーボールを完璧にいなす。でんこうせっかの速度を維持しながら行われたその動きは、人によってはシャドーボールが勝手に避けていったと錯覚してしまうほど見事な動きだった。

 

「凄い……」

「『でんこうせっか』!!」

「っ!?下がって!!」

 

 一連の行動に見とれたユウリが思わず声を漏らす。いつものボクなら、そんな彼女に『見とれている余裕はないよ!』くらいの声をかけているものだけど、今はユウリを格上の敵と認定しているため、そういった声かけすらする余裕が無い。

 

 小さな隙は、どんなものだって逃してはいけない。

 

 慌てて下がるポットデスと、それを追いかけるブラッキー。シャドーボールを引き撃ちしてくるのに対して、それを恐れずに前に走るブラッキーは、直撃こそ受けていないものの、掠る回数が少しずつ増え、小さなダメージを積み重ねていく。けど、着実に距離は迫っており、このまま追いかけることが出来れば、いずれ追いつけることが予想できる。ユウリが見とれていた一瞬の合間に、すぐさま前に走り出せたのが要因の1つだ。

 

(とりあえず、まずはポットデスを早く落とす!!)

 

 小刻みに左右にステップを踏みながら前に走るブラッキーが、身体に傷を作りながらも着実に距離を詰めていき、あと少しで追いつけるという距離まで辿り着く。

 

(後は、懐まで飛び込んで『イカサマ』を当てることが出来れば、それだけでポットデスを落とせることが出来るはず!!)

 

 からをやぶる前にポルターガイストを受けて、ギリギリのところで気合耐えをしているポットデスの体力は残りわずかだ。何か攻撃が掠るだけでも、それがとどめになりかねない。これがコウキとバトルしている時なら、この気合い耐えを何回もされる可能性を頭に入れておく必要があるけど、さすがにユウリにそこまでのことが出来るとは思えない。たとえできたとしても、からをやぶるによって必要ない攻撃力まで上がってしまっているポットデスには、この攻撃力を利用したイカサマは気合で耐えられる以上のダメージを叩き込むことが出来るはずだ。

 

(あと少し……!!)

 

 そうこう考えているうちに、いよいよブラッキーの前足が届きそうな位置まで来た。

 

「ブラッキー!!『イカサ━━』!!」

「ポットデス!!反転!!」

「っ!?」

 

 とうとう射程範囲に入り、前足を黒色に染めるブラッキー。それをポットデスに叩きつけるべく、勢いよく振り上げたところで、逃げ切ることをあきらめたポットデスの向きが反転。離れるのをやめ、むしろブラッキーに向かって一気に近づいたポットデスは、攻撃モーション途中のブラッキーの懐に逆に入り込む形となる。

 

「『シャドーボール』!!」

「ティッ!!」

「ブラッ!?」

 

 そこまで潜り込んだところで、今度はポットデスが右手に黒色のオーラを溜め、零距離でブラッキーに叩き込まれる。

 

 予想外の一撃は、こうかがいまひとつでありながらも、意表をついたゆえの威力がのり、ブラッキーに思いもよらないダメージが入る。また、受け身態勢をとっていなかったことから、ダメージの他にも攻撃の衝撃によるノックバックを強く受けてしまうブラッキーは、結果としてあれだけ狭まっていたポットデスとの距離を大きく離されてしまう結果となる。しかも、その勢いもかなり強く、先ほどまでブラッキーを追い返すために放たれていたシャドーボールに追いつくくらいの勢いで飛ばされていた。

 

「よし、これで仕切り直せる……」

「ティッ……!!」

 

 ユウリたち側からすれば危機を乗り越えた形だ。そのことに少なくない安心感を覚えているのか、2人揃ってほっと一息ついていた。

 

 確かに、ここからまたあのポットデスを追いかけるのは骨が折れる。ブラッキーにも少なくないダメージが積み重なり始めているから、次に追いつく頃には、もうブラッキーは倒れてしまう可能性もある。いくらつきのひかりで回復できるからと言っても、限界があるだろう。

 

 だから……

 

(意地でも……ここで潜り込む!!)

 

「ブラッキー!!()()()『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

「え?」

 

 ボクの指示を聞いて、ブラッキーが前足を振ったのは自分の後ろ。そこには、先ほども言った通り、ブラッキーが避けてきたシャドーボールが残っている。ブラッキーが前足を振るったのは、このシャドーボールに対してだ。

 

 このシャドーボールは、ポットデスがからをやぶるの強化を乗せて放った攻撃だ。その分威力が上がっているため、この球が爆発した時の爆風も凄いものとなる。

 

 なら、この爆風を利用すれば、それは大きな推進力になるはずだ。

 

「ブ……ラ……ッ!!」

 

 ブラッキーが前足をシャドーボールにぶつけると同時に大きな爆発が起きる。この爆風の直撃を受けたブラッキーは、少し苦しそうな声をあげるものの、決して態勢を崩すことなくこの勢いに乗り、でんこうせっかの時以上の速さをもってポットデスの下へ帰って来る。

 

「ティッ!?」

「避け━━」

「『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

 

 一瞬にして帰ってきたブラッキーに反応できないポットデスにイカサマが直撃。そのまま勢い良く吹き飛ばされ、ユウリの足元にまで転がっていき、目を回す。

 

 

『ポットデス、戦闘不能!!』

 

 

「ふぅ……」

 

 審判の声を聞いて一息つくボク。けど、集中力は絶やさない。

 

(思考を止めるな!集中を切らすな!発想の差で負けるな!)

 

 勝って兜の緒を締めよ。

 

(これはコウキに挑むための……試練だ)

 

 天才相手に、油断は命とりなのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヨノワール

遂に陥落。せめてもの役割として、やられる前に共有化を切り、主にダメージがいかないように。健気ですね。

ユウリ

とりあえず作戦が上手くいき一安心。しかし、フリアさんの様子が……?

フリア

なんだかんだ、無意識のうちに甘く考えていた自分を叱咤。ユウリさんの本気に触れ、フリアさんもまた、真の意味で本気のステージへ。2人のバトルは、切り札を失っても、さらに激しくなっていきます。




この作品と同時に、実機では追加ストーリーが配信ですね。まだまだポケモンSV、楽しんでいきましょう。




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