「ポットデス、ありがとう……ゆっくり休んで」
倒れたポットデスをボールに戻す私は、労いの言葉をかけながら次のポケモンを準備し、対面にいるフリアに視線を向ける。
(フリア……凄い気迫だ……)
ポットデスを倒した後だと言うのに、一切気を抜くことなくこちらを見つめてくるフリア。きっと共有化のダメージが大きいのだろう証拠に、若干の冷や汗こそ流してはいるものの、真剣な瞳が揺れることは一切ない。
(そんな目も出来るんだね……)
それは私を完全に敵として捉えている目で、人によってはもしかしたら恐怖を感じるかもしれないほど鋭い眼光。それほどまでに、今のフリアからは強力なプレッシャーを感じることが出来た。
このジムチャレンジが始まって、ずっと一緒に旅してきたフリアが、私にこんな表情を見せたことなんて1度もない。それほど真剣で真っ直ぐな瞳。
(フリア……)
私は、フリアがそんな瞳で見てくることが、この上なく嬉しかった。
(ありがとう……本気で私を見てくれて……!!)
だって、ようやくフリアに認められたような気がして、ようやくフリアの横に立てたような気がして。
ようやく、目標の1つに辿り着いたような気がして。
(でも……まだまだ!!)
しかし、ここで安心なんかしちゃいけない。
まだバトルは終わっていない。ともすれば始まったばかりだ。ここから不甲斐ないことをしてしまえば、ようやく得たこの信頼を裏切ってしまうことになる。それに……
(『追いつけた』だけじゃ満足できない……ここまで来たら『追い越したい』!!)
過ぎた考えかもしれない。自惚れた考えかもしれない。けど、少なくともフリアは私を完全に同格のトレーナーと判断してくれた。なら、少なくともフリアにとって、今の私は負けうる可能性のあるトレーナーとしてしっかりと認知されている。
なら、なおのこと本気で勝ちに行きたい。
(ここまで思われたら、私だって全力以上の力を出さなきゃ……!!)
ボールを握る手に、自然と力が入っていく。
私の目に宿る意志が、フリアにつられてもっと燃えていく感じがした。
「いくよ……ストリンダー!!」
「リッダーッ!!」
いつも以上に声を張り上げながら、私は3人目の仲間を繰り出していく。そんな私の声と空気にあてられたストリンダーもまた、場に出た瞬間胸ヒレを激しく掻き鳴らし、大音量でギター音を鳴り響かせていく。その音もいつもより激しく、音が大きすぎてその振動だけで大地が揺れているのではと錯覚してしまう程。
「『ばくおんぱ』!!」
「リッダッ!!」
その勢いのまま、特性の力と合わせて爆音を鳴らし続けるストリンダー。その衝撃波は、ヨノワールたちとの戦いで散らばった礫たちを巻き込んで、ブラッキーを攻める大きな振動の壁となって襲い掛かっていく。
「『あくのはどう』!!」
「ブラッ!!」
これに対してブラッキーは、口元に黒色の波動を溜めて発射。攻撃範囲が広すぎる技に対して、一点を集中して攻撃することによって穴をあけ、その穴からストリンダ―と距離を詰めようと画策する。
「ブラッ!?」
「くっ……」
しかし、ストリンダーの火力が高すぎて穴をあける前に衝撃がブラッキーに到達し、ブラッキーが押しのけられる。
「『オーバードライブ』ッ!!」
「リッダーッ!!」
「『イカサマ』!!地面に!!」
「ブラッ!!」
ここに追撃を仕掛けるように電撃の波を放つストリンダー。あくのはどうでは勝てないと判断したブラッキーは、今度は前足にオーラをためて、地面を思い切り叩いて土砂を巻き上げる。
巻き上がった土砂はオーバードライブを受け止め、しかしやはり土砂程度では特性の乗ったオーバードライブを止められるわけもなく、少しだけ止まりはしたものの、すぐに進軍を始めてその先にいるブラッキーを狙っていく。しかし……
「いない!?」
「『イカサマ』!!」
「っ!?」
土煙の先にはブラッキーはおらず、いつの間にかストリンダーの真上にいたブラッキーが、黒色の前足を構えて振り下ろす瞬間だった。
(地面を殴ったと同時にその反動で飛んでたんだ!!)
「リダッ!?」
殴られたストリンダーはそのまま後ろに引きずられるようにして下がっていく。
「『でんこうせっか』!!」
「ブラッ!!」
下がったストリンダーを逃さないように、追撃のために走るブラッキー。遠距離戦はどうやったってストリンダーの方に分があるから、向こうとしては何が何でも距離を離されたくないのであろう。
「地面に『ばくおんぱ』!!」
「リダッ!!」
ならこちらもそれを拒否する攻撃を放つ。
地面に音波をぶつけて、先ほどブラッキーが巻き上げたものの数倍の土砂を巻き上げ、巨大な壁を生成。どれだけ突っ込んでも乗り越えられない壁を生成する。
「『あくのはどう』!!」
「リダッ!?」
「速っ!?」
しかし、その壁をでんこうせっかですぐに横に回り込んだブラッキーが、ストリンダーの横からあくのはどうを発射。
「飛び付いて!!」
「ブラッ!」
この攻撃によってぐらついたストリンダーを確認したブラッキーは、そのままストリンダーの背中にしがみつく。
「『イカサマ』!!」
「ブラッ!!」
この状態から繰り出されるのはイカサマ。背中に張り付かれた状態で放たれたその技は、ストリンダー自身が物理よりも特殊の方が得意であることと、背中に引っ付いている故に振りかぶることの出来ない超至近距離という状況のおかげで、威力そのものはかなり控えめなものになっている。しかし、ストリンダーは胸ヒレから攻撃を行う関係上、自身の後ろに対する攻撃方法が乏しい。ホップの時にも突かれた明確な弱点だ。きっとフリアも私対策でしっかりと勉強しているということだろう。
(でも!!あの頃と違って私だって対策くらい立ててる!!)
「ストリンダー!!空に向かって『ばくおんぱ』!!」
「っ!?」
「リッダァッ!!」
その姿を見て、私が指示をしたのが空に向かっての攻撃。当然この技はブラッキーを狙って打った技ではない。
(狙いは1つ!!この技の勢いを利用する!!)
固定できる場所の無い空中でこれほどの規模の攻撃をすれば、その反動で後ろに下がってしまう。パンクロックで破壊力の上がったこの攻撃は、ストリンダーとブラッキーをまとめて弾き飛ばすほどの反動を発生。上を向いているストリンダーは、背中を地面に向けた状態で、弾かれたように落下した。
「ブラッ!?」
「リダッ!?」
結果、背中にくっついているブラッキーから地面に高速で激突。ストリンダーにもダメージは入るものの、ブラッキーがクッションになっているおかげでかなり軽傷で済んでいる。むしろ、下敷きになったブラッキーは小さくないダメージを負ったはずだ。
「『あくのはどう』!!」
「ブ…ラッ!!」
下敷きになったブラッキーは、しかしそれでも意地を見せてあくのはどうを発射。ゼロ距離ゆえ回避する方法の無いこの状況では、ストリンダーは大きなダメージを受けながら飛ばされることになるものの、これでブラッキーとの距離は広がった。
「『オーバードライブ』!!」
「リッダァッ!!」
「ブラッ!?」
距離が空いたと同時に放たれる電撃の波は、ブラッキーがでんこうせっかで避ける前に辿り着き、ダメージを与えながら土煙を巻き上げていく。その際、ブラッキーの小さい悲鳴がしっかり聞こえたことから、まとまったダメージが入ったことを確信。
「……『あくのはどう』」
「ブラッ!!」
「っ!?」
が、その土煙の中から黒色の波動が飛んでくる。
自分で巻き上げた土煙が目隠しになって逆に攻撃を確認することが出来なかったため、反応が遅れてそのまま攻撃を受けてしまった。
「ブラ……」
「『つきのひかり』……回復までばっちりされてる……」
しかも、土煙が晴れた先には、身体を緑色に光らせるブラッキーの姿。その頭上を見れば、白く輝く月があり、その光を一身に受けたブラッキーの傷が癒されていた。
「『でんこうせっか』!!」
「ブラッ!!」
元気補充完了と言わんばかりに声をあげ、同時に猛ダッシュ。傷が癒えたことで、先ほどと比べてほとんど速度を落とすことなく走り出したブラッキーは、ストリンダーの周りをグルグルと周回し始める。
「『あくのはどう』!!」
「『ヘドロウェーブ』!!」
その周回運動を続けたまましてくるのは黒い波動の乱射。中心にいるストリンダーに向けて次々と放ってくる黒い波動は、しかしこちらの全方位発射する毒の波によってその黒い波動の悉くを飲み込んでいく。当然この攻撃は、周回しているブラッキーの下まで届くから、この攻撃を回避するにはジャンプするしかない。
(飛んできたところを叩き落とす!!)
「ブラッキー!『イカサマ』!!」
「ブラッ!!」
「え……?」
ストリンダーとも目を合わせ、対空の準備をしていると、フリアが指示した技はまさかのイカサマ。この距離で近接技なんて振る意味を見いだせない私は、思わず声を漏らしてしまうけど、相手はフリア。常識の範疇で考えると痛い目を見るのは間違いないので、すぐさま気を引き締める。
一方指示されたブラッキーは、これまでの激闘で周りに転がっている岩の中で、比較的大きなものの近くに移動し、その岩に向かってイカサマを行い、ストリンダーの方に飛んでいくように殴った。しかし、ブラッキーの攻撃ではそんなに強く飛ばすことは出来ず、今までの攻撃からすればかなり遅い速度でこちらに飛んでくる。ストリンダーのヘドロウェーブの表面を滑って進んできているとはいえ、これではとても攻撃と呼ぶことはできないだろう。
(……いや、読めてきた)
「『でんこうせっか』!!」
「ブラッ!!」
フリアの狙いがわかってきたと同時に、ブラッキーが毒の波をジャンプで躱す、そして、そのまま先ほど弾いた岩の上に着地し、毒の波にサーフィンのように乗って接近してきた。
(本当に、相変わらず器用なことを考えて来るね……)
「『オーバードライブ』!!」
「リッダッ!!」
「重心を後ろに!!」
「ブラッ!!」
しかし、予想できていた私にとってはすぐに反応できるレベルだった。すかさずストリンダーで電撃の波を起こして攻撃。けど、これに対してフリアもすぐさま反応し、ブラッキーが乗っている岩の後ろ側に重心を傾ける。すると、ブラッキーの乗っている岩の前部分が少し浮き上がり、電撃に対する壁となって立ちふさがり、そのままの状態を維持して毒の波を滑って来る。
「蹴って!!」
「ブラッ!!」
そしてある程度進んだところでブラッキーがその岩を蹴りだし、ゆっくりだった岩の速度が加速。ストリンダーに迫る壁となる。
「『ばくおんぱ』!!」
この壁を吹き飛ばすべくばくおんぱ。高速で迫ってきているとはいえ、ブラッキーが動かせるレベル且つ、電撃を一度受け止めたことによるちょっとした摩耗によって、岩は簡単に吹き飛ばされる。が、攻撃範囲を選べないばくおんぱは、そのままストリンダー自身が出したヘドロウェーブも吹き飛ばしてしまう。
「『でんこうせっか』!!」
「リダッ!?」
(本命はこっち!?)
毒の無くなった地面に足をつけ、再び強く踏み込むブラッキー。一陣の光と化した彼は、そのまま真っすぐストリンダーに走り出し、ばくおんぱ終わりをついて突進を仕掛けて来た。
「『オーバードライブ』!!」
「リッダァッ!!」
これに対して何とか態勢を持ち直したストリンダーは、続けざまに電撃の波を奏でる。でんこうせっか自体は受けてしまったものの、攻撃を受けることを想定していたストリンダーはしっかり受け身を取り、反撃としてオーバードライブを放った。
「ブラッ……!!」
ばくおんぱの隙をつかれたこちらだけど、そのお返しとばかりに、でんこうせっかの後隙に電撃の波をぶつけられるブラッキー。でんこうせっかこそあるけど、元々の足はそんなに速くないブラッキーもまた、この後隙から立ち直る方法がなく、こちらの電撃を直撃し、後ろに下がっていく。
けど、耐久が高いブラッキーはまだ倒れない。
「『つきのひかり』!!」
「ブラ……!」
そこからさらに回復技を使って長期戦に持ち込もうとするブラッキー。しかし、いい加減こちらもただで回復なんてさせない。
「月に向かって『オーバードライブ』!!」
「リッダッ!!」
ブラッキーを癒すべく、光を下ろそうとしている月に向かって電撃を飛ばすストリンダー。月をめがけて放たれたこの技は、しっかりとその役目を果たし、空中に浮かぶ虚像の月を一撃で粉砕する。
「くっ……」
「もう逃がさない!!」
これ以上ブラッキーに耐久をされてしまったら、ストリンダーの体力が先に尽きてしまう。ヨノワールを落としているとはいえ、ポケモンの残り人数を見るのであれば、私とフリアはまだ同数だ。ここで先手を取られるわけにはいかない。
「『ヘドロウェーブ』!!」
ブラッキーを詰ませるための一手を放つ私。
「縦に!!」
「リダッ!!」
先ほどは全方向に広がるように発射した毒の波を、今度はストリンダーの前に壁のような形で展開。ストリンダーが掛け声と一緒に地面を踏みしめると同時に、地面から生えるように登っていった。
「っ!?まずい、ブラッキー!!『でんこう━━』」
「遅い!!そのまま『ばくおんぱ』!!」
「リッダァッ!!」
毒の壁が完成したと同時に、何かを察したフリアが慌ててでんこうせっかを指示するけどもう遅い。ストリンダーがばくおんぱを放ち、目の前に展開されている毒の壁を維持したままものすごい勢いでブラッキー側に押し出していく。横幅も十分にとったその攻撃は、少し横に走ったくらいでは逃げることは出来ず、更にヘドロウェーブとばくおんぱの2つの技の威力が重なることによって、かなりの破壊力を秘めた合わせ技となる。
「ブラッ!?」
その技は容赦なくブラッキーを飲み込み、壁が倒れ込むような形でブラッキーを押し潰し、流れていく。
「ブラッキー!!」
フリアの掛け声がこだまする中、ちょっとずつ引いて行く毒の波。その中心地点には、それでも意地で耐えているブラッキーが目に入る。
「ブ……ラ……ッ!!」
「……凄い意地……でも!!」
が、あれだけの毒液につぶされたブラッキーの頭には、紫色の泡が立ち上っており、遠目から見てもかなり顔色が悪くなっていた。
毒状態。それが、てっぺきとも思われたブラッキーの、最後の体力を削り切って地に伏せた。
『ブラッキー、戦闘不能!!』
「よし……!!」
「お疲れ様……ブラッキー……」
フリアの最強の矛に続き、最強の盾を1つ陥落させた。そのことに無意識に声を出す私。けど、まだまだ安心はできない。
(フリアの目……どんどん鋭く、燃えてる……!!)
倒れたブラッキーに対して、優しい声をかけ、労いながらも、決して闘志の火は絶やしていない。
「行くよ!!モスノウ!!」
そして間髪入れずに繰り出されるフリアの4人目のポケモン。
自慢のこおりのりんぷんを撒き散らしながら優雅に現れた彼女は、見ているだけで引き込まれてしまいそうなほど優雅で、しかし、モスノウ自身が瞳に宿す焔を見て、すぐさまその考えを改める。
(モスノウか……もしかしたら、ここは変に突っ張るよりも、1度ミロカロスに引いた方が……)
「『ちょうのまい』!!」
「フィッ!!」
「指示が早いっ!!『オーバードライブ』!!」
「リッダッ!!」
ストリンダーを1度引かせるかどうかほんの少しだけ悩んでいるところに、一切の迷いを見せずに告げられるフリアの指示。判断が早すぎて完璧にタイミングを逃してしまった私は、せめて舞を行う回数を最低限に抑えるべく、ストリンダーが放てる最高火力をモスノウに打ち出す。しかし、こおりのりんぷんによって特殊に対する抵抗力が高いモスノウは、飛んでくる電撃をこの鱗粉と、ちょうのまいで育った特防にて抑え、しっかりと受け止める。
(受け切られてる!!このままだとずっと『ちょうのまい』をされちゃう!!)
積み技による能力成長を放っておくとどうなるのか。それは開幕タイレーツで暴れていた私には手に取るように理解出来る。
特殊方面に対して強く出ることの出来るこのちょうのまいという技は、今から全力で積まれてしまうと、モスノウの特性も相まって、本当に特殊で倒すことが不可能になってしまう。となると、今の私の残りではエースバーンでしか倒すことが出来なくなってしまう。
(ここでエースバーンを出すのはさすがに避けたい……ちょっとでも温存して欲しから……けど、このままストリンダーで殴っても、多分『ちょうのまい』と鱗粉を越えられない……ここまで来たら交代の時間も惜しい……なら!!)
「まだまだ『ちょうのまい』!!」
「ストリンダー!!とにかく『ヘドロウェーブ』!!」
ダメージを見てまだちょうのまいをする余裕があると判断したフリアは、ちょうのまいを続行。私にされた積み技からの無双をやり返す魂胆らしい。私の戦法すら取り込む作戦構築の速さは本当に凄い。この技を通されてしまうと、ここまで積み上げてきたものが一瞬でひっくり返されない。かといって、エースバーンをまだ出すわけにはいかない私は、ここで少し賭けに出るためのヘドロウェーブを発射する。
上空にいるモスノウにあてるために、先ほどと同じように高い壁のように展開した毒の波を、舞を踊っている間の無防備な状態のモスノウに向けて倒していく。これに対してモスノウは、こおりのりんぷんがあることと、ちょうのまいで特防をあげていることから、ちょうのまいを中断して避けることよりも。ちょうのまいを続行して、ダメージを受けながらも技を積むことを優先。
「フィ……ッ!!」
結果、毒の波はモスノウに直撃するものの、こおりのりんぷんが盾となり、ちょうのまいの効果もあって、その威力を大きく減少させていく。これでは対してダメージにはなっていないだろう。けど……
「フィッ!?」
「よし!!」
「……そっちが狙いだったか」
モスノウの頭上に、先ほどブラッキーの頭にも浮かんだ紫色の泡が発生。どく状態になった証だ。これでモスノウは、どれだけ頑張ってもどこかで必ず毒で倒れるようになった。特防上昇による要塞化や、上がった素早さによる逃げの耐えもされることがなくなったのは大きなポイントだ。
これなら、もう少し欲張れる。
「ストリンダー!!もっと『ヘドロウェーブ』!!」
「リッダァッ!!」
ストリンダーが気合の入った声をあげるとともに、さっきよりもさらに高い毒の壁が発生。どく状態になったモスノウに対して、さらに毒を入れてもうどく状態になるのを狙うべく、壁を再びモスノウの方へ倒していく。
「モスノウ、『ふぶき』!!」
「フィッ!!」
「リダッ!?」
「うぅっ……凄い風……」
しかし、さすがに2回目は許さないフリアは、今度はふぶきを選択。荒れ狂う風は、ちょうのまいで火力が上がったということもあり、離れているはずの私たちの下までしっかりと届いており、ストリンダーが作り上げた壁さえも、一瞬で凍らせてしまった。
「『ばくおんぱ』!!」
「リッダッ!!」
攻めて凍った毒壁を氷の礫としてモスノウにぶつけようと、出来上がった壁を壊す勢いで音波を放つストリンダー。しかし、この攻撃さえも、モスノウが羽を1回羽ばたくだけで全てを無に帰させられる。
「『ふぶき』」
「フィィッ!!」
豪風。それは、ストリンダーが割った氷の礫のすべてを巻き込み、乱れ舞う刃としてストリンダーを襲っていく。
「リダッ!?」
「くっ……ストリン……ダ……ッ!!」
風が強すぎることと、私が寒いのが苦手すぎることが相まって、まともに前が見れない状況になってしまい、思わず腕で顔を覆ってしまう。その間に少しだけ聞こえてきたストリンダーの苦しそうな声が、やけに私の耳に強く残った。
程なくして風が止み、ようやく前を確認できるようになった私の目前には、身体中に霜を下ろし、礫が刺さった状態で、目を回して倒れているストリンダーの姿。
『ストリンダー、戦闘不能!!』
「フィィィィッ!!」
審判の言葉と共に、身体を巡る毒に根性で耐えながら声をあげるモスノウ。同時に、辺りにはこれでもかというくらいこおりのりんぷんをまき散らし、このバトルコートの温度をガクッと下げ、一瞬で自分の世界を作り上げていく。
「……次、どうしよっかな……」
そんな、普段温厚な彼女からは想像もできない激しい姿に、少しだけ悪寒を感じながら、けど、無意識のうちに笑顔を浮かべながら、私は次のボールを構えていった。