【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

251 / 374
251話

「ありがとうストリンダー。戻って休んでね」

 

(はぁ……はぁ……)

 

 ボールに帰っていくストリンダーを見送りながら、ボクはゆっくりと深呼吸を繰り返す。

 

 右腕は相変わらず痛むし、三半規管が揺れた感覚もまだ消え去っておらず、コンディションの話をするのであれば正直あまり宜しくない。わがままを言ってもいいのなら、今ここで横になって少し寝たいくらいだ。けど、そんなことは当然許されない。

 

(みんなが頑張っているのに……ボクが最初に弱音をあげるとか……絶対に嫌だ)

 

 ヨノワールのダウン。その衝撃は、ボクの心にとても大きなものを残した。ボクが信じていた1番の相棒だ。当たり前と言ったら当たり前の反応だと思って欲しい。けど、そのヨノワールが自分から共有化を切ってまで、ボクに先を見据えさせてくれた。あれがなければ、いよいよもってボクは立っていられなかったかもしれない。

 

(ヨノワールがせっかく繋いでくれたんだ。このバトンは死んでも離さない……!!)

 

「フィィィッ!!」

 

 そして、そんなボクの思いと比例するかのように、モスノウも大きな声で叫ぶ。毒を患っているにもかかわらず、それを感じさせないほど心強いその声は、聞いているこちらもまたやる気を漲らせてくれるものだった。

 

 ブラッキーのでんこうせっかがいつもよりも鋭かったり、モスノウの氷がいつもよりも冷たかったりと、みんなも気合いが入っている理由。これもやはりヨノワールが関係していた。

 

 ヨノワールのダウンは、何もボクだけが驚いたものでは無い。モスノウやブラッキーたちにとって、ヨノワールは絶対的な先輩だ。ボクの仲間になった時点で、既にボクの隣でその力を示していた彼の姿は、みんなにとってはさぞ大きな存在として映っていただろう。このトーナメントまでの期間だって、みんなで特訓をしていたけど、共有化関連以外の特訓の時はヨノワールもボクと同じで色々教える側に回っていたし、公式戦になれば、少なくともガラル地方に来てからは、必ずトリでのバトルで勝利を収めている。

 

 偉大な先輩であり、後ろから支えてくれる絶対的な柱。それが、みんなから見たヨノワールだった。

 

 そんな彼が、まさかの序盤で退場。その衝撃は大きく、下手をすればボク以上にショックだった子もいるかもしれない。

 

 けど、それ以上に、ヨノワールが自分から共有化を切ったということが、みんなの心に深くのしかかる。

 

 ヨノワールが共有化を切ったのは、ボクがこの先も戦えるようにするためだ。ここでボクが万が一でも痛みで倒れてしまえば、その時点で負けが確定してしまうから。だからヨノワールは、未来を見据えてこの行動に出た。それはヨノワールの気遣いであり、彼なりの優しい1面と捉えることが出来る。だからこそ、ボクはこんなにも心が燃えている。

 

 では、他のみんなからはこの行動はどう映るのだろうか。

 

 ボクがこの先も自由に戦えるようにするために、少しでも負担を減らすその行為。それは、裏を返せば、『たとえ自分が倒れたとしても、ボクと残りのみんなならこのバトルに勝てる』と思ってくれているということにならないだろうか。

 

 それは、ヨノワールからの1種の信頼だ。このことにすぐさま気づいたみんなは、ヨノワールの想いを受け取り、衝撃を受けた。

 

 自分たちの先輩で、自分たちの前を行き、自分たちを支えてくれた絶対的な人が、後輩を信じて託してくれた。

 

 こんなことをされて、熱くならないわけが無い。

 

(みんなも……嬉しかったんだね……)

 

 もちろんヨノワールは最初からみんなのことを認めてはいた。けど、決してそういったことを表に出すことの無いあのヨノワールが、まだ分かりづらいとはいえ、それでもちゃんと目に見える形で信頼の証を見せてくれたことが、みんなにとってはとても衝撃的で、とても嬉しいことだった。

 

 だから吠える。だからもっと頑張れる。

 

「フィィィッ!!」

 

 毒なんてなんのその。まだまだやってやると冷える彼女の周りがさらに寒くなる。

 

(ボクだけじゃない。みんなも挑戦している!!だから……来い!!)

 

 モスノウの気迫を受け、マフラーをぎゅっと握りしめながら、ユウリの方にじっと視線を向ける。

 

「……いくよ!!ミロカロス!!」

「ロォォォッ!!」

 

 対するユウリも、これだけの圧を受けても怯む事無く4人目のポケモンを呼び出す。

 

(ミロカロス……来たね……)

 

 現れたのはミロカロス。ユウリの手持ちの中でもトップクラスの耐久力を誇っている彼女は、ここまでの戦いでもその役割をしっかりとこなしている。頼もしく、そして相手にしていて厄介なポケモンだ。

 

(耐久を活かして、とにかく耐えている間に毒ダメージを蓄積させて粘り勝つ戦法かな?なら……!!)

 

「モスノウ!!『むしのさざ━━』」

「『アクアテール』!!」

「フィッ!?」

「っ!!」

 

 こちらから耐えきれないレベルの攻撃をぶつけてやろうと動いた瞬間、ミロカロスから水をまとった岩を飛ばされてくる。アクアテールで飛ばしてきた岩だ。

 

 攻撃をしようと構えていたところに、不意打ち気味で飛んできたその技は、直撃することは避けたけど、モスノウの翅に少し当たり、ダメージを貰ってしまう。

 

「『ねっとう』!!」

「ミロッ!!」

「『ふぶき』!!」

「ッ……フィッ!!」

 

 空中でバランスを崩したところにすかさず飛んでくる追撃。これをふぶきで相殺することで、熱と冷気がぶつかり合い、フィールドが一瞬で水蒸気に包まれる。

 

 このやり取りを見て、ボクは自分の間違いを改める。

 

(前言撤回。モスノウが毒で倒れるのを待つなんて、そんな消極的なこと絶対にしてこない!!なんなら毒のダメージと併せて、1秒でも速くモスノウを倒す気だ!!)

 

「『アクアテール』!!」

 

 ギラギラとした瞳をしながらどんどん攻撃技を指示するユウリを見て、本当の作戦を確信。それを証明するかのように、ミロカロスは次々と尻尾で岩を打ち出してくる。その速度とキレが凄まじく、当たれば岩が大の弱点且つ、物理に対して凄く脆いモスノウに対して、この攻撃は1つ1つが物凄いプレッシャーを放っていた。

 

「『ぼうふう』!!」

 

 美しい鱗を光らせながら、しかし、戦闘は荒々しいそのギャップに、ある意味見とれてしまいそうになるのをぐっと堪えたボクはぼうふうを指示。飛んでくる岩をそのまま吹き飛ばす勢いで荒れ狂う嵐は、岩にまとわりついていた水を弾き、岩を逆再生したかのごとくミロカロスへと返していく。

 

「『ねっとう』!!」

 

 返されることを想定していたミロカロスは、この岩をねっとうのより、軌道を逸らすことで回避。岩たちはミロカロスの周りに落ちていき、障害物として点在し始める。

 

「『ふぶき』!!」

「フィッ!!」

「ロッ!?」

 

 岩のせいで自由に走り回ることの出来ないことを確認したボクは、ミロカロスが避けられないことを確信してふぶきを指示。翅を羽ばたかせる度に流れていく白銀の風は、一瞬にしてミロカロスの元に到達し、その身体をどんどん冷やしていく。

 

 ちょうのまいによってかなり強化されたこの一撃。しかし、タイプ上いまひとつで受け止められることと、ミロカロス自身の耐久力の高さが相まって、余裕とはいかないまでも、充分余力は残した状態で耐えていた。予想はしていたことではあるが、やはり生半可な一撃では全然倒せる気がしない。さすがサイトウさんのネギガナイトの一撃を耐えきっただけはある。しかし、決して無敵では無く、ずっと攻撃すればいつか必ず限界はやってくる。ならば、ここでボクがするべきはガンガン攻めること。幸いミロカロス側からの打点は薄いように見えるので、こちらが有利であることには変わらない。それに、ストリンダーとのバトルで毒を貰ってしまっているので、時間をかければかけるほどこちらが不利になる。なら尚更止まる必要は無い。

 

「『ぼうふう』!!」

「フィィィッ!!」

 

 ふぶきが舞っている中にさらに風を送り込むモスノウ。これによって、ただでさえ強烈なふぶきがさらに強化され、ミロカロスを中心とした小さな嵐が発生。その様はまるで風の牢獄で、ちょっとやそっとでは脱出不可能な規模のそれになっていた。しかもこの攻撃は、ただ威力が高いだけでは無い。

 

「ル……ルロッ!?」

「ミロカロス!?」

 

 合体技を受けてもなお、まだ耐えようとしていたミロカロスの身体に異変が起き始める。その内容は、ミロカロス自慢の美しく、なめらかな白い身体が、このふぶきとぼうふうに晒されていくうちに徐々に赤くなっていくというもの。そして、その赤色の面積が増えていく度に、ミロカロスから苦しそうな声が上がる。

 

(きた……しもやけ!!)

 

 状態異常、しもやけ。

 

 これでミロカロスもスリップダメージを受けるようになり、長期戦が決してユウリ側にのみ味方する訳ではなくなった。もちろん毒に比べたらダメージは大きくは無いけど、しもやけのもうひとつの効果である、発症者の特殊技の威力が半減するという効果のおかげで、技の打ち合いには勝てるようになっているため、足りないダメージは別の部分で補うことが出来る。

 

(やっと……リードできそうだ)

 

 タイレーツの件からずっと握られていたリードをようやく取り返すことができそうな展開。もちろんここで油断なんてしない。いや、出来ない。今はとても寒そうで苦しそうで、痛みと寒さに必死に耐えているミロカロスを見ながら、表情を焦りに歪めているユウリだけど、瞳に宿る焔は決して消えることは無い。きっと今も頭の中では色々な考えが高速でまわっていることだろう。そして、ユウリが諦めていない現状なら、必ずこの状況を打開してくる。

 

(どんな手で来る……?)

 

 ボク自身も、ユウリの立場ならどういう手を打つかを逆算しながら構え、バトルフィールドを注視する。

 

(パッと考えただけだと、この状況を打破する策はそんな無さそう……だと思う。しもやけ状態によって『ふしぎなうろこ』が発動しても、あれは防御が強くなるだけだし、ミロカロス自身の火力も、モスノウみたいに強化できる技がないから大丈夫なはず……技構成も、サイトウさんとの試合とホップとの試合を合わせたら、『アクアテール』、『ハイドロポンプ』、『ねっとう』、『れいとうビーム』の4つ、だと思う。まだ見てない技のあるから、今日もこの構成だとは断定はできないけど……でも、ミロカロスの技の中には、やっぱり今を打破できる技は……)

 

「……えへへ」

「っ!?」

 

 思考に頭を回しているときに、突如聞こえてくる笑い声。その正体は、真正面で相対するユウリのもの。傍から見ればそれは、今の状況に困ったような、少し苦い気持ちを含んだそれに聞こえるだろう。

 

 けど、その声を真正面から受けたボクは、背筋に悪寒が走った。

 

「こうやってモスノウの攻撃を受け止めてると……ワイルドエリアでウルガモスと戦ったことを思い出すね」

「ミ……ロ……」

「……」

 

 急に始まるユウリの思い出話。それは、ワイルドエリアで吹雪に見舞われた時の話。

 

 ポケモンの巣穴のなかで行われた、ダイマックスしたウルガモスとのレイドバトルは、ガラルでの冒険の中でもかなり印象に深い出来事だ。

 

 このことをユウリに言われると、確かに今の状況はあの時のバトルに酷似しているかもしれない。もっともその場合、敵であるウルガモス役はボクが担っていることになるが……と、ここまで考えて、ボクの頭に何かが引っかかった。

 

(いや、待って……ウルガモスとバトルした時は確か……)

 

「あの時は、ミロカロスはまだヒンバスだったよね……」

「ミ……ロ……ッ!!」

 

 あの時は確か、ウルガモスとのバトルの途中でヒンバスも参戦していたはずだ。

 

(その時に使った技……ッ!?)

 

 ユウリが何をしようとしているのかわかったボクは、弾かれたように視線を上にあげる。

 

「モスノウ!!いますぐ『ふぶき』と『ぼうふう』を止め━━」

「もう、準備は出来た……くしくも、あの時と似たような状況になったね」

 

 慌ててモスノウに攻撃をやめるように指示を飛ばすボクだけど、その頃にはすでに、ミロカロスの前に透明な壁が出来ており、これから行う技の準備が完了している合図を出していた。

 

(せめて避けるだけでも……!!)

 

 これから来る大技に対して、最低限の防御行動をとろうと口を開くけど、今度は声を出すことすら間に合わなかった。

 

「ミロカロス……『ミラーコート』」

「ミ……ロッ!!」

 

 ユウリの言葉と、ミロカロスの声と共に、ミロカロスの前にある透明な壁が一気に発光。思わず目を塞いでしまう程強力な光と爆風を発生させながら、すさまじいエネルギーがモスノウに向かって解き放たれた。

 

「モスノ……ッ!!」

 

 威力が高すぎて、ボクの声すらかき消されるその爆風。

 

 ちょうのまいでかなり強化され、そしてぼうふうとふぶきという、それぞれのタイプの中でも特に威力の高い特殊技を合わせた強力な攻撃は、ミラーコートによってその威力を倍にされたうえでモスノウに返されていく。その威力は、いくらモスノウがこおりのりんぷんを散らし、ちょうのまいの強化によって特防を強くしたところで、その守りのすべてを無視して貫通するほど。

 

 こんな技、避けられるはずがない。

 

 程なくして、ミラーコートによる破壊の嵐は収まって、ようやく目を開けることが出来るようにはなったものの、正直結果は目を開く前からわかってしまっていた。けど、ここで目を逸らすのはモスノウに失礼だから、ボクはしっかりと前に目を向ける。

 

 

『モスノウ、戦闘不能!!』

 

 

「ル……ルロォッ!!」

 

 その視線の先には、目を回して落ちたモスノウと、しもやけと、ふぶきとぼうふうのダメージによって戦闘不能直前まで追い詰められてはいるものの、それでも踏ん張って吠えているミロカロスの姿があった。

 

「ミロカロス!!ありがとう!!」

「ルロッ!!」

「ありがとうモスノウ。ゆっくり休んで」

 

 モスノウを落としたことに喜ぶユウリとミロカロスの声をBGMに、労いの言葉をかけながら、ボクはボールにモスノウを戻していく。

 

(やられた……『ミラーコート』の存在を完全に忘れていた……)

 

 ミラーコートを使っていたのがかなり前だったことと、既に技を、試合またぎとはいえ4つみていたことが、意識していない先入観を植え付けられてしまっていた。

 

(いや、それを込みでの作戦だったのかも……だとしたら本当、成長してる……)

 

 番外戦術も組み込んでいるのならますます手が付けられない。本当に、誰からこんな戦法を習ったのか気になるところだ。

 

 とまぁ、今はそのことは置いておいて……これで再びボクがリードを取られる形となる。せっかくモスノウのおかげで流れが取れそうだったのに、ここにきてまさかの一手でその流れを無理やり取り返されてしまった。それが本当に痛い。

 

 しかし、ここに来てモスノウの意地と思いが、しっかりと天に届く。

 

「ロ……!?」

「ミロカロス!?」

「え?」

 

 モスノウのボールを腰に戻したあたりで、突如バトルフィールドから声が聞こえる。そちらに視線を向ければ、今まさしく、ミロカロスが最後の言葉を発しながら、地面にその巨体を倒れさせる瞬間だった。

 

「ミロカロス……」

 

 

『ミロカロス、戦闘不能!!』

 

 

 そしてそのまま告げられる審判からの宣言。その言葉が信じられず、一瞬思考が止まってしまいかけたけど、少ししてすぐに答えにたどり着いた。

 

「もしかして……『ぼうふう』と『ふぶき』の合体技を受けた時点で限界だった……?」

 

 氷と風の嵐にそこそこの時間晒し続けられたミロカロス。しかもその攻撃は、ちょうのまいを2回行ったことによって、ぐーんと能力を成長させたモスノウが放ったものだ。いくらミロカロスが耐久力のあるポケモンと言えども、さすがにこのダメージは看過できない。しもやけのダメージも相まって、想像よりも早くミロカロスの限界が来ていた。

 

 けど、きっとこの時に、ミロカロスはユウリを悲しませまいと、ユウリの思いに答えようと、ポットデスの時と同じように気合いで耐えた。

 

 そして、この期待に応えてミラーコートを放ち、モスノウが倒れたのを見送った後に、しもやけによるダメージで、とうとう力尽きた。おそらくこういう流れが起きたんだと思われる。

 

 絆による気合い耐え。ポットデスの時にも起きた現象の再発。それを見たボクは、ユウリの才能にどんどん押されていく。

 

(1回だけじゃなく2回目……どんどん近づいてる……今回はまだ良かったけど、次戦う時は、下手をしたら状態異常も気合いで治しちゃうかも……)

 

 コウキのポケモンは、コウキを心配させまいと気合いで状態異常をも治してくる。もしユウリがコウキと同じレベルに到達していたなら、ミロカロスはしもやけすらも治していただろう。そうなれば、いよいよもってボクの負けが見え始めてくるところだった。

 

(……って、何弱気になってるんだ。たとえそうだったとしても、勝つ!!気合い入れろ!!コウキはユウリより数倍強いんだぞ!!)

 

 天才たちのデタラメな戦い方にまた弱気になりそうな心を叱咤し、ふらつく身体を無理やり維持させながら、なれない左手でゆっくりと5人目の仲間が入ったボールを構える。

 

(とにかく、モスノウのおかげでようやく追いつけた!!)

 

 ミラーコートによるカウンターという、派手な負け方をしたせいで印象はあまり良くは無いけど、結果だけを見ればモスノウとミロカロスの相打ちだ。となれば、残りのポケモンはボクもユウリも残り2人の同数対決だ。

 

 タイレーツによって着けられた大きな差が、みんなに頑張によって少しずつ埋まっていき、遂に追いつくことが出来た。

 

(本当にみんな頑張ってくれてる。……ありがとう。追いつけたのはみんなのおかげだ。……そんでもって、追いつけたってことは、追い抜けるってことだよね!!)

 

 相変わらず身体は痛いし足はふらつく。頭も、常に思考を回しているせいか若干の知恵熱だって感じ始めていた。けど、それ以上にこのバトルへと掛ける思いが強すぎて、ボクの身体はまだまだ頑張れると、心が無理やり奮い立たせてくる。

 

「いくよ……マホイップ!!」

 

 不格好だけど、それでも気合いを入れて投げられたボールは、真っ直ぐ飛んで中からマホイップを吐き出した。

 

 出てくると同時に元気な声を上げ、周りにミントとクリームの混じった、甘くも爽やかな香りをばらまいて行くマホイップ。その香りのおかげで、ボクの腕の痛みと頭のふらつきももほんの少し和らいだような気がした。

 

「ありがとう、マホイップ」

「マッホ!!」

 

 えっへんと、小さく胸を叩きながら自信満々に答える彼女に少しだけ元気を貰ったボクは、改めてユウリの方へ視線を向ける。

 

「いこう、アブリボン!!」

「リリィッ!!」

 

 対面のユウリが繰り出す5人目はアブリボン。黄色い花粉を撒きながら、くるりと回転して滞空する彼女は、先ほどのモスノウと似ていながらも、綺麗さが目立っていたモスノウとは逆で、可愛さを前面に押し出した姿となっていた。

 

 くしくも、ターフタウン直前で仲間になったもの同士の対面。というか、先ほどから、モスノウとミロカロスだったり、ブラッキーとストリンダーだったりと、何かと関係性の深いポケモン同士がずっと闘っている気がする。今までのみんながいつも以上に気合が入っていたのは、そういったことも関係があるのかもしれない。

 

「マホッ!!」

「リリッ!!」

 

 出会った時期が一緒の彼女たちもまた、今までの戦いに感化され、らしくない凛々しい顔を浮かべながら声をあげる。

 

 長い戦いもいよいよ副将戦。見た目だけを言うのなら、およそ決勝には似つかわしくないカードだろう。実際に観客からも少し不安の声が聞こえたりはする。けど……

 

「「『マジカルシャイン』!!」」

「マホッ!」

「リリッ!!」

 

 そんな声を、お互いの技がぶつかり合うときの衝撃で無理やりかき消していく。

 

 お互いの見た目からは想像もつかないほどのその威力に、もう口をはさむ者はいない。

 

(まだまだ……いくぞ!!)

 

 可愛いだけじゃない2人の激突が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ミラーコート

久々のカウンター技。ヒンバスの時に大活躍しましたね。まさかの復活。

しもやけ

てっきりSVで採用されると思ってました。こういうのもあってもよさそうだとは思ったのですが、何かダメな理由があったのでしょうか?




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。