【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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254話

「バ……バス……!!」

「レオ……ッ!!」

 

 肩で息をし、傷ついた身体を踏ん張って持ちこたえさせている両者。その姿は少し痛々しく、見ている人によっては少しだけ辛いという感情を抱いてしまうかもしれない。しかし、それ以上に見つめあっている2人から発せられる気合いがそんな気持ちを抱かせない。

 

 身体に纏うオーラ以上に激しく揺らめくその瞳は、どちらかが倒れるまで決して消えることは無いだろう。

 

 勿論、ボクもユウリも、相手が倒れるまで戦うという2人の意思を尊重する。

 

「『でんこうせっか』!!」

「『アクアブレイク』!!」

 

 特になにか合図を出した訳では無いのに自然と重なるボクとユウリの指示。この言葉を聞いた2人は、ボクたちが何を言ってくるのかを自然と察知し、指示を言い終える前に行動を終えていた。

 

「バスッ!!」

 

 リベロによって髪色を、ノーマルタイプの証である白色に変えたエースバーンが、とても手負いとは思えない速度で走り出す。元々脚力の強いエースバーンの本気のダッシュは、正しく目にも止まらない速度を体現しており、とてもじゃないけど、今の不調状態のボクでは目で追うことがかなり難しい。正直残像をとらえるのがやっとだ。

 

「レオ……!!」

 

 しかし、獲物を絶対に逃さない、千里眼とでも比喩できるほど優秀な視力を持つインテレオンにとっては、この動きは捉えることが可能な範囲だ。高速で立体的に動き、こちらを翻弄するかのように動いていると思われるエースバーンの動きをしっかりと捉えられていることが、インテレオンの瞳孔の動きで読み取ることが出来る。

 

 そして……

 

「バスッ!!」

「レオッ!!」

 

 走り回り、速度の乗った分だけ重くなったエースバーンの右足の蹴りが、水を纏い、鋭い一撃となったインテレオンの右手の貫手と激突する。

 

 げきりゅうの乗った強力なアクアブレイクがエースバーンの突撃をしっかりと受け止める。しかし、もうかこそ乗っていないものの、リベロによってノーマルタイプになることで威力を上げ、さらにほのおタイプを消すことで弱点ではなくなったエースバーンの攻撃だって負けていない。技そのものの威力はインテレオンが勝っているけど、そこはでんこうせっかの速度でカバーしており、ほぼ互角の鍔迫り合いを繰り広げていた。このままではらちが明かないだろう。

 

「インテレオン!!」

「レオッ!」

 

 この拮抗勝負を先に崩そうと仕掛けたのはインテレオン。エースバーンと違って、攻撃を繰り出している際に使っている身体の部分が右手であるため、足を使っているエースバーンよりも自由が利くこちらが先に追撃を放った感じだ。

 

 その身体の部分は尻尾。キョダイマックスの時とは違って、一見ただ細く長いだけの尻尾は、その実仕込み刀のようにスパッと切れるナイフのような切れ味を秘めた強力な武器になっている。そんな隠れた武器にアクアブレイクの効果で水を纏わせることで威力を底上げした尻尾が、インテレオンの身体の左側から回ってエースバーンに伸びていく。右足で蹴りを放っている以上、この角度からの攻撃はよけづらいはずだ。

 

「エースバーン!!下がって!!」

「バスッ!!」

 

 これに対してエースバーンは、一瞬だけ力を込めてインテレオンの右手を押し込み、すぐさま力を抜いて後ろに弾かれるようにジャンプ。こうすることで、尻尾が自分に突き刺さる前にインテレオンの攻撃範囲から脱出。インテレオンの攻撃がエーズバーンに当たる直前でピタリと止まってしまう。

 

「『でんこうせっか』からの『とびひざげり』!!」

「バスッ!!」

 

 インテレオンの尻尾が止まったのを確認したエースバーンが、下がっている状態から一気に反転。地面に足をつくと同時に力強く地面をけり、止まった尻尾とすれ違うように前にダッシュ。一瞬でインテレオンの懐に潜り込んだエースバーンが、今度は左膝を左から右に振り、インテレオンの右脇腹に向かって、髪の毛をオレンジ色に変えながら放ってくる。

 

「上!!」

「ッ!!」

 

 このままでは手痛いどころではないダメージを貰ってしまうため、何が何でも避けようと動くインテレオンは、迫り来る左膝に対してタイミングよく右手を上から乗せ、エースバーンの左膝の上で、右手だけで逆立ちを行う。その姿はさながら曲芸師だ。

 

「バスッ!?」

「レオッ!!」

 

 さすがにこの回避にはエースバーンも驚きを隠せず、一瞬だけ表情が崩れ、動揺によって動きが止まる。この隙を逃さないインテレオンは、逆立ちをしたまま回転し、右腕を軸とした独楽のような形となりながら、遠心力の乗った右足をエースバーンに叩きつける。

 

「上体逸らし!!」

「バ……スッ!!」

 

 が、ユウリの言葉でハッとしたエースバーンが、顔を狙ったその一撃を、間一髪のところで上体を後ろに倒すことで回避。さらに、そこからバク転を行うことによって膝を上に振り上げ、膝の上に逆立ちで乗っていたインテレオンを空中へと打ち上げる。

 

「『かえんボール』!!」

 

 いくら身体を器用に動かせると言っても空中では限度がある。そこを狙って、エースバーンが自身のタイプをほのおに戻し、もうかの力も載せたかえんボールを連続で蹴り出す。回転のかかった3つの火球は、その全てが違う軌道を描きながらインテレオンへと飛んでいく。これでは避けるのは難しい。

 

「『ねらいうち』!!」

「レオッ!!」

 

 だから技で相殺する。

 

 空中という不自由な場所であろうとも冷静なインテレオンは、その瞳ですぐさまかえんボールの軌道を捉え、人差し指から水の弾丸を3発発射。かえんボールの核を正確に撃ち抜くことでこの火球全てを消滅させる。

 

「『とびひざげり』!!」

 

 が、火球の処理を終えて、地面に着地しようとしたところで待ち受けていたのは、髪をオレンジ色にし、右膝を構えたエースバーンの姿。最初からこの着地狩りが本命だったらしい。

 

「『アクアブレイク』!!」

 

 かえんボール同様技で受けるしかないこちらは、両手と尻尾に水を纏って、3つの攻撃がかりで膝に対抗。攻撃同士がぶつかり、鈍い音が響いた。

 

「レオッ!?」

 

 この打ち合いで負けたのはインテレオン。空中で踏ん張りが効かない故に力で押し負けたため、技の衝撃自体は防げたものの、思いっきり後ろに弾かれた。

 

「『でんこうせっか』!!」

「『ねらいうち』!!」

 

 思いのほか速い速度で飛ばされたインテレオンを追撃するべく、猛ダッシュで走ってくるエースバーン。これに対してインテレオンは、飛ばされたまま指先から水を発射。エースバーンの進撃を止めるべく、とにかく弾丸をばらまいた。

 

 迫ってくる水の弾丸。これに対してエースバーンは、ジグザグ走行で4発回避し、5発目をスライディングで潜りながら距離を詰めてくる。

 

 この辺りでステージ端の壁まで飛ばされたインテレオンが、壁に着地してそのまま走行。走り出して少ししたところで、インテレオンと同じように壁に着地したエースバーンに向かってねらいうちを発射。が、この攻撃も着地と同時に直ぐにでんこうせっかを行い、インテレオンの後ろを同じように壁を爆走。同時にエースバーンが少しだけ身体を右にずらす事で回避し、再び追走戦が始まる。

 

 壁を走りながら逃げるインテレオンと追うエースバーン。勿論この間にも攻防はしっかりと行われており、前を走りながらも指先はしっかりと後ろに向け、ねらいうちを連射していくインテレオン。対するエースバーンも、壁面という決して足場が広くはない所なのに、上体を揺らしたり小さくジグザグに動いたり、果ては足で水弾の側面を叩いて逸らしたりしてきた。

 

 そんな高度なやり取りをしながら、しかし決して自身の足を止めない両者のダッシュは、この広大なバトルフィールドの壁を一周するまで続いた。その動きがあまりにも洗練されすぎていて、とてもじゃないけどキョダイマックス終わりにボロボロの姿を見せ、膝を笑わせていた2人のやり取りには全然見えない。そのうえで、この外周を走り切るまでの時間が1分未満だというのだから本当に意味が分からない。

 

(インテレオンもだけど、エースバーンも気力が凄すぎる……!!)

 

 バトルフィールドを一周走り終わったところで、ようやくインテレオンに追いついたエースバーンがとびひざげりを叩き込もうと構えていたのを、インテレオンがアクアブレイクでいなし、壁にぶつけてエースバーンに少しだけダメージを与えながらバトルフィールドの真ん中にジャンプして戻ってきた。

 

「エースバーン!!」

「バ……スッ!!」

 

 真ん中に着地して態勢を整えるインテレオン。そんな彼を追うために、とびひざげりを外したときの代償に顔をゆがめながらも、エースバーンが声をあげながらバトルフィールドの中心に帰って来る。

 

 肩で息をしながら帰ってきた両者の仕切り直し。当然体力は最初に比べてさらに削れ、お互いの限界にまた一歩足を突っ込み始めている。が、体力の減少に対してまるで反比例するかのように、インテレオンとエースバーンの集中力にギアがかかっていく。

 

「『アクアブレイク』!!」

「『とびはねる』!!」

「レオッ!!」

「バスッ!!」

 

 先に動いたのはインテレオンで、姿勢を低くしてエーズバーンとの距離を詰め、水を纏いながら右手の貫手を放つ。これに対してエースバーンはインテレオンに向かって飛んでいた軌道を地面に対して垂直に変更。地面を蹴ることで真上に飛びあがり、貫手を躱したのを確認して、そこからひこうタイプのエネルギーを纏った右足でかかと落としを放ってきた。

 

「右!!」

「ッ!!」

 

 この攻撃に対して、重心を右に揺らしてよけたインテレオンは、右足を軸に左回転。その勢いを利用しながら、今度は左足に水を集めてソバットキックを放つ。

 

「しゃがんで足を取って!!」

「バスッ!!」

 

 かかと落としを外したエースバーンは、このキックを躱すべく身体を思いっきり下げて、地面すれすれまで上体を落とす。両手をも地面につけ、大股の腕立て伏せのような姿になったエースバーンは、そのまま器用に身体を回して、回転するために右足一本で立っていたインテレオンの軸足に向かって、インテレオンのかかと側から足払いを仕掛けてきた。

 

「『とびひざげり』で追撃して!!」

「バスッ!!」

 

 これを避けられないインテレオンは、綺麗にバランスを崩し、身体をゆっくりと後ろ側に倒すこととなる。この隙を狙ったエースバーンは、伏せていた身体をインテレオンの真下に滑り込ませてから、うつ伏せの状態から仰向けの状態へ。その状態で上から倒れてくるインテレオンの背中に向かって右膝を構え、左足で地面をけって飛び上がる。

 

「尻尾でそらす!!」

「レオッ!!」

 

 このままでは背中に攻撃が直撃してしまうインテレオンは、しかしこの攻撃を尻尾を器用に操り、エースバーンの膝の左側に添わせることで軌道を少し右に逸らし、同時に自分の身体を左に傾けることでギリギリのところで避けていく。

 

「『ねらいうち』!!」

「身体を回して右手を弾いて!!」

 

 倒れるインテレオンと打ちあがるエースバーンがすれ違い、お互いの立ち位置が逆転。地面に倒れながら左に回転したインテレオンは、地面に落ちながら人差し指をエースバーンに向け、ねらいうちの準備。とびひざげりを外して隙だらけとなっている背中に攻撃を叩き込もうと画策する。が、このねらいうちを予見していたのか、とびひざげりを外したことを確認したエースバーンは、膝を前に突き出したまますぐさま身体を右回転。それにより、エースバーンの右ひざが、エースバーンに向かって伸びていた腕を下から救い上げるように弾き、ねらいうちが発射されると同時に真上に弾かれ水弾が明後日の方向に飛ばされていく。

 

 結局お互いまともな攻撃をぶつけることが出来ず、一瞬だけ産まれたこの空白の時間で距離を取り、また仕切り直し。

 

 お互いの攻撃が毎回すんでの所で防がれ、致命傷にならない。

 

 紙一重。皮一枚。

 

 先のやり取りだって、時間にすれば数十秒のやり取りだ。それほどまでにお互い速くて冴えているのに……いや、だからこそ攻撃が当たらない。人によっては一種のダンスを2人で踊っているのではないかと思う程。それほどまでに2人の攻防はとてつもないものだった。

 

 仕切り直しを終えて再び突撃する両者。

 

 インテレオンは右手を向けねらいうちを放とうとし、その右手をエースバーンが右足で上に弾くことでまた水弾が明後日の方へ飛び、しかしそれを予期したインテレオンが左手の手刀を左から薙ぎ、これを屈んで避けたエースバーンがしゃがんだまま左足で足払いを仕掛け、これをインテレオンが飛んで回避。その後、空中にいるインテレオンの尻尾と、エースバーンのとびひざげりがぶつかり合って、お互いが弾かれることでまたお互いの距離が開かれることとなる。

 

(ほんとに凄い……)

 

 まさしく手に汗握る戦い。片時も目を離せない両者の攻防は、ボクとユウリの集中力をも引き上げ、周りのすべての音を消し去り、この世にボクたち4人しかいないのではないかと錯覚させてくるほどのものとなる。

 

 止まない指示と、攻撃がぶつかる音。それがボクの鼓膜を心地よく鳴らし、更にテンションをあげて来る。

 

(……楽しい!!)

 

 徐々に、ボクの頬が緩んでいくのがわかる。

 

 大事な場面なのに、約束の場所に行くための大切な試合なのに、ボクにとって負けられない大きな戦いなのに……

 

 そんな感情が吹き飛んでしまう程、ユウリと繰り広げているこのバトルが楽しくて仕方がない。

 

 ふと視線を前に向ければ、ユウリの表情も獰猛な笑みに変わっていた。

 

 正直、普段のかわいらしいユウリの表情から考えたら全く似合わない。けど、だからこそユウリも本気で楽しんでくれていることがわかってなお嬉しい。

 

 昔は天才たちと戦うことが日に日につらくなって、最後のコウキと戦う時には苦しさしか感じなかった。けど今はそんなことなく、この状況を楽しみ始めている自分がいる。

 

 息は苦しいし身体はボロボロ。ボク自身の体力は底をつきかけ限界までもう秒読みだ。現状以外の話をするのであれば、ユウリはコウキじゃないし、コウキはユウリよりももっと強いことを考えたら、先の長さに頭を抱えてしまいそうになるほどだ。

 

 でも、それすらも楽しくなってきていた。

 

 それはボクがおかしくなっただけかもしれない。はたまた、バトルにハイになっているだけの一過性のものかもしれない。けど、間違いなくあの頃よりも、この状況を前向きにとらえることの出来ている自分がいた。

 

(もしかして、こんな気持ちになるのは相手がユウリだからなのかな……?だとするのなら……本当にありがとう)

 

 ガラルに来て一番長い時を共に過ごした、もはや親友と言っても過言ではない大切な人。

 

 後ろをついてきていると思っていたらいつの間にか前にいた天才児であり、ともすれば、ボクのトラウマを再起させかねない人。

 

「『とびひざげり』!!」

「バスッ!!」

「レオッ!?」

 

 芸術にも似た華麗な2人の攻防は、正直永遠と行っていたいほど素晴らしいものだった。その美しさは、時間が経てば経つほどさらに磨かれ、余計目が離せない最高のものとなる。しかし、それでも限界と終わりはやってくる。

 

 今まで頑張って均衡を保っていた両者のバトルがついに動いた。

 

 アクアブレイクの隙間を縫って放たれたとびひざげりがインテレオンのお腹に直撃し、身体を大きく後ろに飛ばされる。倒れる訳には行かないインテレオンは、何とか受身をとって着地するものの、これまでにダメージの蓄積が大きく、片膝を地面に着けてしまう。

 

 やはり、近距離戦の上手さではエースバーンの方が1枚上手だ。

 

「『でんこうせっか』!!」

「バスッ!!」

 

 ここが好機。そう捉えたエースバーンが、とどめを刺すべく高速でインテレオンへと肉薄。懐へと素早く潜り込んだエースバーンが、トドメの膝を叩き込もうと振りかぶり……

 

「『れいとうビーム』」

「レオッ!!」

「っ!?下がって!!」

「バスッ!?」

 

 10本の指全てを地面に向けて、指先から氷の光線を発射。するとインテレオンの周りを氷の柱が一気に立ち上り、エースバーンをも巻き込む勢いで生成。インテレオンを守るかのように、大きな氷の筒が生えてきた。

 

 今のエースバーンはかくとうタイプだったので、出来ればこの氷に閉じ込めたかったけど、そこは何かを察したユウリに指示によってエースバーンは下がっていた。れいとうビームはダイアイスを除けば今日は1回も見せていなかったのによく反応したと思う。ユウリの方を見れば、本当にギリギリだったらしく、冷や汗が流れているのが見えた。

 

 しかし、この技を避けられたということは、逆に言えばインテレオンは今、この筒の中に自分から閉じ込められていると言うこと。

 

 それは、この氷を簡単に溶かせるエースバーンにとっては、またとないチャンスだった。

 

「エースバーン!!『かえんボール』!!」

「バスッ!!」

 

 4回ほどリフティングし、その度に体積を大きくする火球。

 

 キョダイカキュウに比べたら当たり前だけど体積は小さい。しかし、それでもその時のに負けないくらい轟々と燃え盛るかえんボールが、インテレオンに向かってまっすぐ解き放たれる。

 

 

「いっけえええぇぇぇっ!!」

「バアアアァァァスッ!!」

 

 

 いつも以上の気迫に特性のもうかも答え、さらに火力が上がるかえんボール。こんなのを受ければこちらは戦闘不能だ。しかし、インテレオンの周りに出来た氷の壁が回避を阻害する。

 

 絶体絶命のピンチ。けど、やはりインテレオンは慌てない。

 

「……『きあいだめ』」

「レオ……」

 

 火球が迫る中、目を瞑って精神を統一するインテレオン。傍から見たら諦めるように見えるだろうその動きは、しかし氷の壁と火球の熱によってボク以外には視認できない。

 

(いくよユウリ……!!これが今のボクの全力だ!!)

 

 火球の熱で徐々に溶けていく氷の壁。もうあと数秒もすれば、この氷は完全に溶け、インテレオンに到達するだろう。

 

 けど、それよりも速く、インテレオンの指先がエースバーンに向けられる。

 

 きあいだめはした。これで次の技は急所に絶対当たる。

 

 げきりゅうは載せた。これでインテレオンの水技の威力は最高峰のものとなる。

 

 そしてインテレオンは、自身の瞳でエースバーンの全てを見抜き、そっと目を閉じ、指先から1発の弾丸を解き放つ。

 

 その玉はとても小さく、しかし極限にまで圧縮されたこの攻撃はマッハ3と言うとんでもない速度をもってエースバーンに襲いかかる。

 

「バ……ッ!?」

「エースバーン!?」

 

 かえんボールの核を撃ち抜き、炎を散らされたことに気づいた時にはもう遅く、弾丸はエースバーンの急所に直撃した。それも、ユウリの想像以上の破壊力を持って。

 

(……ポプラさんとのバトルの時点で、こっちの特性も覚醒していたんだね……)

 

 インテレオンのもうひとつの特性、スナイパー。

 

 急所に攻撃が当たった際、通常よりもさらに痛烈なダメージを与える急所特化型の特性。きあいだめ込みで、絶対に急所を攻撃することができるインテレオンに凄くかみ合っている特性だ。

 

 弱点且つスナイパー補正とげきりゅう補正が同時にかかったインテレオンの必殺の一撃。しかもこれがかえんボールを突き抜けて飛んできたこともあって、視認性が悪く、エースバーンにとってふいうちの形で直撃してしまった。

 

「バ……ス……」

 

 当然エースバーンにこの攻撃は耐えられない。体力を削りきられたエースバーンは、その身体をゆっくりと地面に倒し……

 

 

「エースバアァンッ!!」

「……ッ!!バアアアァァァスッ!!」

 

 

 ユウリの声を聞いて、気合で耐えきった。

 

 それと同時に、エースバーンのもうかが最大火力で発動。エースバーンの周りがゆがむ勢いで温度が上がり、近くにいるこちらまで熱でやられそうになる。

 

「こんな時でも、しっかりその耐えは発動するんだ……全く……」

 

 此方の最高火力を、絆ひとつで耐えて来るなんてたまったものじゃない。しかも、もうかのせいで更に強化されていると来た。

 

 インテレオンの体力だってもう限界だ。ここに来てそんなものを観させられたら、誰だって心が折れる。

 

「エースバーン!!『かえんボール』!!」

「バァスッ!!」

 

 そんな全力火力を火球として出現させ、右足で思いっきり蹴り飛ばすエースバーン。

 

 狙いはさっきまで氷の柱があり、今は徐々に溶けて柱が倒れそうになっている場所であり……

 

 

 

 

 インテレオンが、ねらいうちを放った場所だ。

 

 

 

 

(くっ……火力が高すぎる……)

 

 氷の柱が一瞬で溶け、火球が高速で通過。ねらいうちで破壊なんてとてもできそうにないその一撃は、バトルフィールド端の壁にぶつかり、爆発を起こして煙を巻き上げた。

 

 

「バアアアァァァスッ!!」

 

 

 同時にあがるエースバーンの雄たけび。

 

「……」

 

 巻き上がる煙をじっと見つめるボク。

 

 あの火球で倒されているのなら、インテレオンはあの煙の中で倒れているだろう。それはボクだけが思ったことではなく、ここにいる全員が同じ感想を抱いていた。

 

(……終わった……かな)

 

 目を閉じ、一呼吸。

 

(まだ、倒れられない)

 

 目を開け、前を見る。

 

「フリア……」

 

 ユウリと目線を合わせる。

 

 そして……

 

「ありがとう、ユウリ。キミと会えて……こんな最高の舞台で闘えて、本当によかった」

「……うん。私も、凄く楽しかった。ありがとう、フリア」

 

 お互い、今日行う事の出来た最高のバトルに対してお礼を言う。

 

「バ……ス……」

 

 同時に、力を出し切ったエースバーンが大の字で地面に倒れ、審判の人が声をあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()、戦闘不能!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 審判の声と同時に湧き上がる困惑の声。だって、この状況を見たら誰だってインテレオンが負けたと思うから。しかし、そんな観客に対して答え合わせをするかのように、エースバーンのすぐ横に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()インテレオンが、右手のアクアブレイクを纏った手刀を振り切った姿で現れた。

 

 

 

 

「よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」

 

 

 

 

「ふぅ……………」

 

 息を小さく吐く。

 

「…………っしゃぁぁ……」

 

 そして、ぐっとガッツポーズをし、泣きそうな感情と、限界寸前の疲れのせいで震える声を隠すこともせずに、ボクは声を出した。

 

 同時に湧き上がる大歓声。

 

 降りそそがれる拍手の雨の中、ボクは感情が爆発しそうになるのを、マフラーを握り締めて我慢しながら喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




決着。




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