【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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255話

「レオ……」

「インテレオン……」

 

 バトルコートを埋めつくし、決着が着いてからもう数分は経っていると思われるのに、それでも鳴り止まない拍手の雨。しかし、ボクはその拍手に答えられるだけの心理的余裕が無い。

 

 ようやくバトルが終わったというのに、その実感が全然湧いてこず、どこかふわふわとしたような感情に包まれた。けど、そんな状態でもインテレオンを労わなくてはという感情だけはしっかりとあり、いつも通りクールな表情を浮かべながら、しかし、指先も足元も若干震えさせ、今にも限界を迎えて倒れそうなインテレオンを迎えるべく、ボクもゆっくりとインテレオンに近づく。そして……

 

「本当に……ありがと……」

「レオ……ッ!?」

「インテレオン!?」

 

 ぎゅっと抱きしめ、インテレオンと気持ちを共有し、徐々に勝ちを実感し始めたことに身体を震わせながら、ついに限界が来て崩れ落ちそうになるインテレオンを支える。

 

 インテレオンの身体に触ることで、改めて今のインテレオンの状況を把握するけど、身体中に傷を作っており、今すぐにでも休ませてあげたいという気持ちで溢れそうになる。

 

「こんなになるまで……本当にお疲れ様」

「レオ……」

 

 最後まで頑張って勝ちを持ってきてくれた最高の仲間にいまいちどお礼を言ったボクは、インテレオンを休ませてあげるためにモンスターボールを軽く当てて中に戻していく。これで少しでも身体への負担が軽くなってくれれば嬉しい。勿論、この後すぐにポケモンセンター、ないしは、このスタジアムにある回復装置を利用するのは確定だ。

 

「フリア」

 

 インテレオンをボールに戻し、ホルダーに掛けたところで掛けられる人の声。こんな場所で掛けてくる人なんて1人しか居ない。

 

「ユウリ……」

 

 声が聞こえた方に視線を向ければ、そこにはユウリの姿。いつの間にかこちらの方まで近づいてきていたユウリは、少し悔しそうな、しかしどこか満足そうな表情を浮かべていた。

 

 今日ボクと激闘を演じてくれた天才。彼女のおかげで、ボクは何かを掴めたような気がした。そのことにすごく感謝したい気持ちがあり、ボクもユウリの名前を呼びながら近づいていく。

 

「あ、あれ……?」

 

 しかし、ボクの身体は全然思うように動かず、まるで卵からかえりたてのシキジカのように足を震わせながら、足を半歩前に引きづるだけでボクの前進は止まってしまう。また、今まではバトルの興奮によって大量に分泌されていたアドレナリンのおかげで誤魔化すことにできていた疲労と痛みが、ここにきて一気にぶり返してきて、とてもじゃないけど耐えられないほどの倦怠感に襲われる。

 

(あ……まずい、かも……)

 

 と思った頃にはもう遅く、バランスを取ることもできなくなったボクの身体は、気づけばもう少しで地面にぶつかりそうな所まで落ちており、もはやボクに出来ることは、これから来るであろう痛みと衝撃に備えることだけだった。

 

「っ……!!」

 

 ぎゅっと目を瞑り、動かせる範囲で身体を縮こまらせ、少しでも痛みを耐えようと頑張るボク。

 

「フリア!!」

 

 しかし、そんなボクと地面の間に、スライディングで身体を滑り込ませてきたと思われるユウリが、ボクの身体をやさしく受け止め、抱きしめてきた。おかげでボクの身体にダメージは一切ない。

 

「ユウリ……?」

「フリア!!大丈夫!?」

「う、うん……ありがと」

 

 ボクを受け止めたユウリは、すぐさまボクの顔を見つめながら心配の声をかけてきた。その姿はさっきまでの全力を出し切って満足した笑顔とは打って変わっており、ボクのことを心の底から心配してくれているのがよく分かる。

 

「身体は痛くない?調子とか、右腕とか……えっと……やっちゃった私が言えた事じゃないかもしれないけど……」

 

 そんな表情が、ボクの身体を触診するかのようにひとつひとつ調子を確かめていくうちにどんどん曇っていく。

 

「フリア……ごめんなさい。ヨノワールと感覚がつながっているってわかっていたのに……その……」

「ううん……気にしないで」

 

 そんなユウリの表情がこれ以上曇らないように、声を返しながらゆっくりと上体を起こしていく。

 

「こうなることは分かっていたし、ユウリも理解してくれたから、全力で闘ってくれたんでしょ?」

「……うん」

「なら、謝ることなんてないよ。……ううん、むしろボクがお礼を言いたいくらい」

 

 ユウリがボクの共有化現象の理解をしているうえで、全力で闘ってくれたらかこそ、ボクは今回のバトルで大きく吹っ切れることが出来た気がする。今も、体調という面では物凄く悪いのに、ボクの心はどこか晴れやかではあった。ユウリに勝てたことと、コウキに対する気持ちの整理が出来たのが本当に大きい。

 

「だからありがと。……えへへ」

「……もう」

 

 ボクが微笑みながら言葉を返すと、そんなボクの姿に毒気を抜かれたユウリもまた、ボクにつられながら表情を崩して言葉を漏らす。

 

「……うん、やっぱりフリアと全力でバトルできてよかった。改めて、おめでとうフリア」

「うん……ありがとうユウリ。ボクも、キミのおかげで沢山成長できた。本当に、決勝戦の相手がユウリでよかった!!」

 

 お互い検討を称え合いながら、更に表情を緩めていく。

 

 きっとユウリの心の中には悔しい気持ちも大きくあるだろう。今も、もしかしたら表に出していないだけで、叫びたくて仕方ないのかもしれない。でも、今はこうしてボクの身体を気遣ってくれている。そのことが、またちょっとしたくすぐったさをボクの心の中に残していく。

 

 柔らかくて暖かくて、ずっとここに甘えてしまいそうな、そんな雰囲気を感じるけど、残念ながら今は公共の場。他の人の目も沢山ある中なので、これ以上こうしているわけにもいかない。……いや、だからと言って2人きりの時にこうするってわけでもないけど……とにかく、今はもう動くべきだ。

 

「よい……しょっと……」

 

 震えておぼつかない脚でも、ユウリを支えにしながらゆっりと立ち上がる。

 

「大丈夫……?スタッフの人を呼んでくる?」

「ううん、平気だよ」

 

 相変わらずユウリが不安そうな声をかけて来るけど、それに対してボクは自分に喝を入れてしっかりと立つ。

 

 確かにもう限界をとっくに超えているとはいえ、少なくとも今この場では自分の足でちゃんと立って帰りたい。

 

「優勝者が、誰かに担がれてなんて格好がつかないでしょ?……最後は……ちゃんと胸を張って歩くよ」

「……そっか。……うん、分かった。……じゃあ最後の仕事、頑張って!!」

「うん!!」

 

 完全に立ち上がり、何とかバランスが取れたところでユウリの肩から手を離し、しっかりと立つ。と同時に、ようやく周りを見渡す余裕が生まれたため、観客の方に視線を向けると、送られてくるのは惜しみない拍手の雨。先ほどの戦いに熱狂してくれたらしいみんなからの、そして優勝者が決まったことによる賞賛の証であるそれは、疲れたボクの身体にゆっくりとしみ込み、同時にボクが優勝できたんだという実感を徐々に教えてくれた。

 

 ふと視線を向けたら、こちらに向かって手を振っているホップたちの姿も見える。残念ながら手を振り返す力までは残っていないので、微笑みを返す程度にしか反応を残せないけど、今はこれだけでもいいだろう。どうせこの場所から帰ったらいくらでも質問攻めされることになるだろうし。

 

 とにかく、今はこの拍手を受けながら、このガラルリーグの優勝者として、胸を張ってこの場所から退場する。それが今のボクのするべきことだ。

 

「すぅ……ふぅ……よし!」

 

 呼吸を整えて、ゆっくり1歩ずつ歩く。

 

 ただこのバトルコートから退場するだけなのに、その距離がやけに長く感じる。それほどにまで身体が重い。けど、決して不快ではなく、やり切ったという達成感が凄い。それに、後ろからユウリが見てくれているというのが、どこか安心感を感じさせてくれる。

 

 これなら、このまま退場することが出来るだろう。

 

(勝者も勝者で、なかなか気が抜けないんだね……)

 

 勿論、この優勝は言ってしまえば通過点だから安心するのは正直に言えばまだ早い。というのも、ガラルリーグを優勝したボクに待ち受けているのは、この次に行われるチャンピオンリーグとなる。そこでは、ボクとガラル地方のメジャーリーグのジムリーダー全員を含めた9人によるトーナメントが行われることとなり、そのトーナメントで見事優勝することが出来れば、晴れてダンデさんへの挑戦権を得ることが出来る。そう考えると、まだまだ道のりは長く、そして険しい。けど……

 

(今日だけは……誇ってもいいよね?)

 

 少なくとも、勝ってすぐの余韻に浸ることは許されるはずだ。

 

(これで、また1歩……コウキに近づけたはず)

 

 ボクを称える拍手を浴びながら、ボクはようやく人目のつかない暗い道に入った。

 

 もう、気を抜いてもいいだろう。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 壁に手をつき、肩で息をする。

 

 もう人の目がないという緊張感からの解放がボクの身体を弛緩させる。けど、いくら人の目がないからと言って、こんな廊下で倒れるのはそれでそれでまずい。せめて、控室までは戻っておかないと、いろいろ辛い。

 

「やっぱ……ユウリについてきてもらった方がよかったかも……」

「フリア」

「やっぱこうなってたか」

「え?」

 

 いよいよ足が動かなくなりそうになったところで聞こえてくる人の声。顔をあげてそちらに視線を向けると、そこにはヒカリとジュンがいた。

 

「2人とも……」

「色々話したいこともあるし、いろんな言葉をかけてあげたいのだけど……今はこうとだけ言っておくわね。……もう、いいわよ」

「あとはオレたちに任せとけ!!」

「……ふふ」

「「……?」」

 

 突如現れた、ボクにとってとてもなじみ深い声と姿。それを確認したボクは、ユウリに抱きしめられた時と同じくらいの安心感を覚えた。

 

 それは、ボクの心が安らぐと同時に、もう身体から完全に力が抜けてしまう合図でもあった。

 

「じゃあ……2人とも……おねがい……ね?」

「……ええ。お疲れ様、フリア」

「良かったぜ!お前のバトル!!」

「ふふ……本当に……ありが……」

 

 そこまで言葉に仕掛け、ボクの視界は完全に黒に閉ざされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……本当に、おめでとう」

 

 ふらふらしながら、ボロボロの身体で、でも決してそんなことを感じさせないように、しっかりと自分の足で退場していくフリアの背中を見送る私。そんな背中を見つめていた私は、自然とそんな言葉を口にしていた。

 

 私の憧れた人は、私が思った以上に凄くて、そして私の期待にちゃんと応えて、私を越えて先に行ってくれた。そのことが嬉しくて、寂しくて……いろいろな思いが混ざり合って正直今はよくわからない状態になっていた。

 

「……私も、そろそろ退場しないと」

 

 そんな複雑な感情のまま、フリアの背中が完全に見えなくなったのを確認した私は、フリアが帰っていった方とは逆方向の道へと足を運ぶ。

 

 体力こそかなり減って疲れているとはいえ、フリアと違って身体にダメージはない私はすぐに暗い道へと進んで行く。すると、私の道を塞ぐように2つの影が現れた。

 

「よ、ユウリ」

「お疲れ様と」

「ホップ……マリィ……」

 

 そこにいたのはホップとマリィ。私と同い年で、私と一緒にこのトーナメントに挑み、そして敗れていった人たち。

 

「負けちゃった……」

「ああ、そうだな……」

「うん……勝てなかったと……」

 

 ここにいるのはみんな等しく敗北者だ。この大会のトップを目指し、そしてそこに届かなかった人たちだ。

 

 トーナメントというのは得てして、勝者を1人しか出すことの無い残酷なルール。それゆえにどうやったって悲しむ人は出てきてしまう。

 

 けど、だからこそ、そのてっぺんに到達した人の輝きが、さらに眩しく見えてしまう。

 

「いいなぁ……」

 

 私の脳内をかけたのは、勝ちが決定した瞬間にガッツポーズをして、少し変な声を出しながら喜ぶフリアの姿だった。

 

 いつもに比べて弱弱しく、突いてしまえば倒れてしまいそうなほど力のないガッツポーズ。けど、その姿が私にはどうしようもなくかっこよく見えてしまい、同時に羨ましくも見えてしまった。

 

(私も……いつかあんな風になりたい……!!)

 

 ただでさえ私はフリアにとても憧れているのに、そんなあこがれがさらに強くなってしまった。

 

(……って、ちょっと重くない?私……)

 

 その事に内心少し呆れてしまうものの、それでも私のあこがれは止められない。

 

 一度見てしまった。てっぺんに立った人の姿を。

 

 一度焦がれてしまった。そこで輝いている人に。

 

 なら、その人に並ぶためにも、目指さないなんて嘘だろう。

 

「ねぇ、ホップ……マリィ……」

「ん?なんだ?」

「どしたと?」

 

 私の言葉に首をかしげる2人。そんな2人に対して、私は目をしっかり合わせて言葉を告げる。

 

「今度は、私たちの中から優勝を……ううん、チャンピオンになる人を出そうね」

「「!?」」

 

 私からの言葉に目を見開く2人。そのことにちょっと不満が募る。

 

「もう~、そんなに私がこの言葉を言うのおかしい?」

「いや、だって……なぁ?」

「うん。てっきり、ユウリはそういうのにあまり興味がないと思ってたと」

「ひどい!?……いや、否定できないけどさ……」

 

 ジムチャレンジを始めてすぐのころの私を知っている人なら、確かにそういう発言が出てきてもおかしくなさそうだ。それくらいには、旅を始める前と後で、私の発言は大きく変わっているだろう。

 

 でも、それも仕方ないことだと思う。

 

「だって……あんなもの見させられたら……ね?」

「……っはは、そうだな!!」

「うん……それは間違いなかと」

 

 ここの2人だって、私と一緒にフリアが優勝するシーンを目撃しているんだ。だったら、2人も同じことを想像したっておかしくない。

 

 あの場所に、自分が立っていた時の姿を。

 

「次にあそこで勝ちをかみしめるのは……私でありたい」

「いや、オレだぞ!!今度こそアニキを越えるチャンピオンになる!!」

「悪いけど、あたしが先に底に到達すると。2人はその後にゆっくり追いかけてくればよかと」

「なんだと~!!」

 

「「「…………あっはっはっは!!」」」

 

 暗い廊下に響き渡る、私たち3人の笑い声。それは、これからあるかもしれない未来を思い、心を昂らせてくれる喝采の歌。

 

「……じゃあ誰が一番最初に、フリアの横に並べるか勝負!!」

「乗ったぞ!!絶対負けないからな!!」

「別にあたしはフリアの横を目指しているわけじゃないけどね。それはユウリだけと~。健気とね~?」

「なっ!?そ、そういうことじゃ……!!」

「?なんだ?どういうことだ?」

「つまりねホップ。ユウリは……」

「ああもう!!言わなくていいのマリィ!!」

 

 そこから続けられていく騒がしい会話。それが今はとても心地いい。

 

 いつまでもこの会話が続けられるような関係でいたい。そう思った私だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴウカザル!!『インファイト』!!』

『ドダイトス!!『ぶちかまし』!!』

 

 ぶつかり合うゴウカザルとドダイトス。2人の全力の攻撃は、バトルコートの真ん中でぶつかり合い、激しい音を立てていた。

 

 お互い一切引く気の無いその攻撃はとても苛烈で、見ているだけでこちらの心を昂らせてくれる。

 

(これは……え!?)

 

 こんなすごいバトルを誰がしているのかと気になって視線を動かしてみれば、そこに立っているのはボクのよく知る人物だった。

 

 その人物たちはボクを視認できていないのか、ボクのことなんてお構いなしにバトルを続けていく。

 

 その表情はとても明るくて、見ているこちらまでもが微笑んでしまいそうなほどで……

 

(じゃあこの夢は……まさしくボクの……)

 

 この夢が自分にとっての何なのかということに気づいたと同時に、だんだんとバトルコートが霧に包まれていき、ボクの場所から視認が出来なくなっていく。

 

(あ……)

 

 もうちょっと見ていたい。けど、もう時間みたいだ。

 

 霧に閉ざされていくバトルは、程なくして完全に見えなくなり、そしてボクの意識もだんだんと浮き上がるように曖昧になっていく。

 

(もっと見たかったら……目指せって事かな……?……うん、そうだよね!!)

 

 改めて、気合を入れる。

 

 この幸せな夢を、今度は夢ではなく現実で見るために。

 

 今のボクなら、それが出来そうな気がするから。

 

(まっててね……)

 

 最後にそう残したボクは、意識を完全に浮上させていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……ん……」

 

 まどろみの中からゆっくりと意識を浮上させ、閉じていた瞼を徐々に開けていく。途中で目に入ってくる光に少し苦しみながら、それでも何とか目を開け切ったボクは、今寝ている場所から見える天井をしばらくじっと見つめていた。

 

「見たことある天井だ」

「でしょうね」

「え?」

 

 目に入ったものをみて、適当に言葉を零しておくと、横から声が聞こえてきた。そちらに視線を向けると、ベッドの横の椅子に座ってこちらを見ているヒカリと目が合った。

 

「ヒカリ……おはよ」

「ええ、おはよう。身体はもう大丈夫?」

「うん……多分……」

 

 身体を起こしながら軽く腕を回し、特に問題がないことを確認するボク。特に、右腕に関してはちょっと念入りに確認をし、ちゃんと動かせるかをしっかり確認。外傷こそは全くなかったけど、痛みで動かせなかった時間が確かにあった以上、少しの不安が残ってしまう。けど、どうやら本当に激痛があると錯覚していただけのようなので、共有化を切って元の感覚に戻り、じっくり休んだ今となっては自由に動く。

 

(これなら、これからも共有化をしても怯える必要はそんなに……)

 

「フリア?変なこと考えてない?」

「そ、そんなことないよ?」

「はぁ……まぁ別にいいけど、あんまり心配かけさせないでよ?」

「あ、あはは……善処します……」

 

 ボクがこれからも共有化を使うことについて難色を示すヒカリに対して思わず苦笑い。正直、今のボクにはこれに頼らずに上を目指す方法が思いつかない以上、こればかりは許してほしい。ヒカリもそのことを理解しているためか、そこまで強くは言ってこない。この問題は一生付きまとってきそうだ。

 

「けど、ここまでヒカリが心配してくれるなんて珍しいね」

「わたしが心配しているんじゃないのよ。ユウリが物凄くおろおろしちゃうからちゃんとして欲しいのよ」

「ああ~……成程……」

 

 ヒカリに言われて納得し、声を漏らすボク。確かに、バトル終わった後の慌てようを見る限り、ボクたちの中で一番心配してきそうなのはユウリだ。それはユウリがただただ優しい人間だからというだけだから、別に嫌というわけではないのだけど、反応がちょっと大きい時があるから逆に申し訳ない気持ちが大きくなる。

 

「ユウリもわかってくれてはいるけど、ちゃんと顔見せておきなさいよ……っていっても、もうじき来るでしょうけどね。その時はちゃんと声をかけておきなさい」

「うん、分かった」

「ん、よろしい」

 

 こういう会話をしていると、なんだかヒカリがお母さんみたいに見えてきた。ボクを振り回す回数も多いけど、衣装や料理が絡まなければなんだかんだかなり常識人の方だ。そういう意味ではやっぱり、こういうまったりとした会話はヒカリとするのが一番落ち着くかも知れない。

 

 なんてことを考えていると、ヒカリが何かを思い出したかのようにスマホを取り出し、何かを打ち込んでいた。

 

「ああそういえば、あなたにお客さんが来てるわよ」

「お客さん……?」

「そ。さっきも来て、その時はフリアが起きたら連絡するって伝えて帰ってもらったのだけど……っと、今連絡入れたから、そろそろ来るんじゃないかしら?」

「うん……?」

 

 ヒカリの言葉に思わず首をかしげるボク。普通に考えたらユウリたちのことなのかなと思うのだけど、それならわざわざお客さんだなんて言い方をしない。となれば、普段絡んでいる人とは別の人が来ているということになるのだけど……

 

「お、起きたみたいだな。体調の方は大丈夫か?」

 

 なんて考えていたら、ボクが休んでいる部屋の扉が開かれ、そこから声をかけられる。そちらに視線を向けると、そこにいたのは……

 

「ダンデさん!!こんにちは」

「ああ、こんにちは」

 

 ガラルチャンピオンのダンデさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






どこかで見たことあるポケモンが闘っていますね。果たしてこれは目標化、はたまた予知か。




フルバトルラッシュがようやくひと段落。次はどうしましましょうかね……
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