【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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第5章 チャンピオンリーグ 開幕
258話


「う~ん、この対戦カードは……なんともまぁまぁ……」

 

 ガラルリーグが終わり、みんなとの会食とユウリとの二次会を終えた次の日の昼過ぎ。

 

 ボクは昨日ヒカリに言われた通り、念の為の安静を取りながら、視線をホテルに備え付けられたテレビに向けていた。そこにはテンションの高い司会者と8人のジムリーダーが集まっており、そのメンバーできたるチャンピオンリーグのトーナメント抽選会を見ていた……んだけど、その結果がなかなかなものになっていた。

 

 

 1回戦

 

 第1試合 0回戦の勝者VSルリナ

 

 第2試合 メロンVSオニオン

 

 第3試合 キバナVSヤロー

 

 第4試合 ネズVSカブ

 

 

 チャンピオンリーグのトーナメントは参加者が9人と言う中途半端な人数になっているため、まず最初に8人に整えるための試合が挟まるので、そのバトルを0回戦と定義した時の、1回戦の対戦カードがこうなった。

 

 この時点で、既に気になるところも沢山あるのだけど、それ以上にボクの心を引っ張ったのは、当然ながら0回戦のカード……つまりはボクの対戦相手だ。

 

 当たり前だけど、ここで当たるのは第1回戦の表の中に存在しない名前の人。そして、その人は当然1人しか存在しないので、自然と浮かびあがてくる。

 

「ポプラさん……ねぇ……」

 

 

 第0回戦

 

 フリアVSポプラ

 

 

 昨日ユウリと話した時に、1番当たりたくない相手としてあげたジムリーダー。その人が、ボクの初戦の相手になっていた。

 

「なんて言うか……フリア。頑張って!」

「あはは……そんな微妙な顔しながら応援しないでよ……」

 

 初っ端からなかなか大きな壁が用意されているなぁなんて思っていたら、隣で一緒にこの中継を見ていたユウリから、少し気遣ったようなトーンで応援の言葉を掛けられたので、ボクはそこにツッコミを入れるように返していく。ユウリには伝わっていると思うけど、あの時挙げた戦いたくない相手というのは、あくまでも勝率は高くないだろうという予想でしか無く、心の底では全員等しく戦ってみたい相手ではあるので、嫌という訳では無いのだ。まぁ、そのうえで一番最初にあげた人がいきなり当たるという運の無さに、同情したい気持ちも分からなくはないんだけどね。

 

「ん?フリアはポプラさんと戦うのは嫌なのか?」

「まぁ、あたしはその気持ちすっごくわかるとね」

「フリアが真正面からそう言うのは珍しいわね」

「マリィも結構嫌そうだな。そんなに強いのか?」

 

 そんなボクとユウリのやり取りをしていたら、同じくボクのホテルの部屋で一緒にテレビを見ていたホップ、マリィ、ヒカリ、ジュンの4人……いわゆるイツメンも声をかけてきた。ユウリ以外は昨日の二次会にいなかったので、ボクがどういう考えをしているのか知らないため、昨日のことを少し端折りながら伝えてみると、それぞれ納得といった表情を浮かべながら言葉を返してきた。

 

「確かに、あの人って掴みどころが本当になくて、あたしも終始ペースを握られっぱなしだった覚えがあると。タイプ相性も悪かったし、もしあたしが戦いたくないジムリーダーは?って聞かれたら同じようにポプラさんって答えると」

「そうなのか?オレはむしろ、ポプラさんとの戦いはすっごく楽しかったし、特に大変だったって記憶もないんだがな……」

「……そういえばホップは、対戦中に謎に問われたあの理不尽な問題、全部簡単に正解して、能力を上げてもらいまくってたとね……」

「あの問題、そんなに難しかったか?」

 

 まずはポプラさんと戦った経験のあるホップとマリィからの言葉。ホップはともかくとして、ボクと同じくとても苦戦した経験から苦手意識を持つマリィは、ボクの答えに凄く賛同してくれていた。ホップに関してはまぁ……申し訳ないけど、あまり参考にはならないかもしれない。それほどまでにホップの挑戦は、ボクから見ても意味がわからないくらいには順調だった。

 

「そんなに不思議な対戦相手なのか……そのポプラって言うジムリーダー……」

「っていうか、理不尽な問題ってどういうこと?」

 

 一方で、ポプラさんの戦闘スタイルを知らないジュンとヒカリ……特にヒカリは、ボクたちの会話からだけではイメージしきれないのか、少し首を傾げながら言葉を零したので、これに対してはユウリが答えていく。

 

「ポプラさんはフェアリータイプのポケモンで戦うのを得意としているんだけど……それとは別にもうひとつの特徴があって、それがクイズなの。急に2択のクイズを迫ってきて、それに正解したら能力を上げてくれて、間違ったら逆に下げられちゃうの」

「なんだそれ?」

「話を聞く限りだと、そのクイズもまた一癖も二癖もあるんでしょうけど……それ以上に能力を上下させるっていうのが全然分からないわ……」

「それがさ……信じられないかもしれないけど、こっちの視覚や感覚に刺激を与えて、そこから共感覚を引き起こすことでこっちの能力を変化させてくるんだよ。例えば、ついている杖を不規則に動かして、その動きを視認させることでこちらの力を抜けさせてくる……みたいな」

「「……は?」」

「ま、そうなるとね……」

 

 ユウリとボクの説明を聞いてぽかんと口を開けてしまうジュンとヒカリ。しかし、この反応も仕方の無いことで、ボクがヒカリたちの立場なら全く同じ反応を示したところだ。こうやって文字に起こしてみると、改めてその技術のおかしさに舌を巻く。マリィも少し呆れ顔だ。

 

「……ってことは何?相手は自分の姿を見せるだけで、思いのままに能力変化させられるってこと?技も使わずに?……それ、勝ち目あるのかしら?」

「ま、まぁさすがにリーグ中に使ったっていう話は聞かないから、多分トーナメントではしてこないと思いたいけど……」

「警戒するに越したことはないよな」

「それ以上に、そういう芸当ができるってことはさぞ観察眼も凄いんでしょう?一番の問題はそこね」

 

 ジュンとヒカリの言葉に頷きで返答する。ヒカリの言う通り、相手にとって見たら力が抜ける動きというのを即座にみつけ、すぐに実行できるその観察力と行動力は本当に未知数だ。先日ユウリにも伝えたけど、試合もどう展開してくるのか全くもってわからない。人は分からないものに恐怖すると言うけど、今のボクの心情は割とそこに近い。

 

「本当に……どう来るんだろうなぁ……不安だ」

「……ふふ」

「……っはは」

「っとと……」

 

 ポプラさんとのバトルに不安を感じ、言葉を零すと、ヒカリとジュンの笑い声が聞こえてくる。どうやら昨日の夜と同じく、無意識のうちに笑みがこぼれていたみたいだ。

 

「なんだかんだ言いながら、その調子なら大丈夫そうね」

「だな。当日はどうなるのか、楽しみにさせてもらうぜ!」

 

 頬を触り、表情を戻していると、ヒカリとジュンが笑みを深めながらボクを激励。ボクの心の切り替わりもしっかり察してくれたのか、安心感も孕んだ表情でこちらを見てくる。

 

(心配、してくれてたのかな)

 

 きっと2人はユウリと戦う時から、何かあったらボクが昔のアレに戻ってしまうんじゃないかと心配をしてくれていたんだろう。けど、今のボクの姿を見て、もうあの時みたいにはならないと、そう判断してくれたんだと思う。

 

「頑張りなさいよ。せっかくなら優勝しなさい」

「できなかったら罰金だからな!!」

 

 だから2人からかけられるのはいつもの言葉。それが嬉しくて、心地よくて……

 

「……はいはい、ちゃんと勝ってくるから、見ててね」

 

 程よく緊張が抜ける感覚がする。

 

「なんか……いいなぁ」

「ああいう気兼ねない感じ、ちょっと大人だよな!」

「本当に仲が良さそうと」

「改めてそう言われると……うん、なんかちょっと照れるね」

 

 ジュンたちとそんなやり取りをしていると、ユウリたちの羨む声が聞こえてくる。それがボクたちの仲の良さを客観的に再認識させられて少しムズ痒い。勿論嫌ではないんだけどね。

 

「あ、私たちも応援してるからね!!……って、私は昨日もう伝えてたっけ」

「頑張るとよ。あたしたち代表!!」

「オレたちの頂点としていくんだから、簡単に負けるなよ!!」

「うん!」

 

 そのまま続けられるユウリたちからの声援に、同じように頷く。

 

 つい先日までは、1つのトップを狙ってぶつかり合うライバルだったのに、今日になってボクたちは、1つのチームとなって手を取り合い、その代表としてチャンピオンを目指す仲間となっている。なんていうか、ライバルというものが何たるかというのが確かな形であらわされているような気がする。

 

 なら、ここは素直に甘えてしまおう。

 

「そのためにも……みんなの力、借りてもい?」

 

 ボクのちょっとすがるかのような、少しだけ小さくなった声に対して、みんなは一切の迷いを見せることなく頷いてくれた。そのことが少し嬉しくて、思わず頬が緩んでしまう。

 

「お~し、それじゃあさっそく作戦考えようぜ!!まずはポプラさんの手持ちのおさらいからだな!!」

「ポプラさんと言えば、やっぱりマホイップのことは外せなかと」

「マタドガスの『どくびし』もなかなか厄介だよね……」

「盛り上がるのはいいけど、まずは手持ちを全員知っている限りで教えてもらえないかしら?」

「オレたちは前情報すらないからな……今はもう手持ち変わっているかもしれないけど、とりあえず最近のポプラさんの手持ちを知りたいぜ」

 

 そんな、少しほっこりした気持ちになっていると、なぜかボクを放っておいて話が盛り上がり始めてしまった。

 

「全く……なんで戦う本人よりも盛り上がっているのやら……」

 

 わいわいがやがやと、急に騒がしくなっていくみんなを前にして、今度は呆れた表情を作ってしまうボク。本当に、みんなといるといい意味で緊張が消えて身体がほぐれていくのを感じる。

 

(ちゃんと、良い所見せたいね)

 

 カタカタ……

 

 ボクの気持ちに便乗するかのように動く6つのモンスターボール。その姿がまた面白く、微笑みを1つ。

 

(頑張ろうね、みんな)

 

「さて……そろそろ主役をハブにするのやめてもらっていいかな~!!」

 

 そこから、ボクたちの話はどんどん盛り上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初戦はポプラさんとのバトルね……なかなかつらい所を引いたわね」

「リーグ優勝者は他の人と比べて試合数が多い……なのにその相手がかなりつらい相手……しかもジムリーダーはみんな既に挑戦者であるフリアのバトルは3回も見ている……これ、下手すればあたくしたちの地方の四天王よりも果てしなく高い壁ね……」

「逆に、これこそがガラル地方のレベルの高さにつながっているのでしょう。実際、この壁を乗り越えてチャンピオンの座についているダンデ様は、ガラル地方だけでなく、ポケモン界全体で見てもトップの可能性がある選手ですからね」

 

 カンムリ雪原はフリーズ村。前まではヒカリやジュンもここにいたのに、結局試合をもっと見たいからということでシュートシティでホテルを取り始めてしまった2人がいなくなったこの宿舎は、フリアたちがいなくなった時以上に広くなってしまった。そのことに少し寂しさを感じはするけど、こうやってテレビの向こうで話題になっているところを見ると、それ以上にポケモン界の未来の明るさに期待を持ってしまって、こんな小さな寂しさなんて吹き飛んでしまう。

 

 しかし、だからと言って気にならないわけではなく……

 

「んん~……私の研究の方も大分まとまってきたし、次のチャンピオンリーグは私たちも現地で観戦しちゃおうかしら?あなたはどうする?」

「そうね……」

「あら、悩むなんて珍しい」

 

 彼らがシュートシティに移ってなんだかんだ数週間経っている。そろそろあの騒がしさがちょっとは恋しくなるというものだ。それは静かな場所を好むあのカトレアも同じみたいで、普段の彼女なら速攻で否定の言葉が返ってくるはずなのに、こうやって少しでも考察の余地を作ってしまっているあたり、カトレア自身も無意識のうちにフリアたちを気にかけているみたいだった。

 

「お嬢様も、皆様とのお時間が好きなのですよ」

「コクラン……?」

「失言でした。失礼を……」

「全く、たまには素直にコクランの言葉を認めた方がいいわよ?」

「うるさいわね……わかっているわよ……」

 

 少しそっぽを向きながら、恥ずかしそうに顔を赤く染めるカトレア。本当に、ここに来てからというもの、彼女の珍しい表情がたくさん見れて楽しい。それはコクランも同じみたいで、ふと彼の方を見ると視線が合い、2人揃って今のカトレアの姿に微笑みがこぼれてしまう。

 

 そんな私たちの反応が気に入らないのか、表情をいつものそれに戻したカトレアがこちらをジト目で見て来る。

 

「なんなのかしら……」

「別に何もないわ。で、結局行くの?行かないの?」

「ああもう……行くわよ……行けばいいんでしょ……これで満足かしら……?」

「ふふ、ええ。一緒に可愛い弟子の挑戦を見届けましょう」

「となれば、早速チケットを取らないといけませんね。確かチャンピオンリーグ0回戦の開催日は5日後のはずです。そちらの観戦券と、同時にシュートシティの滞在のためのホテルを取りましょう。日取りは0回戦の1日前から出よろしいですか?」

「ええ。それで構わないわ。頼んでいいかしら?」

「お任せください」

 

 私とカトレアの会話を聞いてすぐさま自分のやるべきことの最適解を導き出したコクランの確認に対して頷くと、彼はスマホロトムを呼び出しながら部屋を出ていく。恐らくネット予約をするのだろう。そんな優秀な彼の背中を見送った私は、再び話をトーナメント表へと戻していく。

 

「さてさて、フリアはどこまで行くかしらね?」

「このあたくしが直々に足を運ぶのだから……せめてリーグ決勝までは行って欲しいわね……」

「それはつまり、これだけの強力なジムリーダーに囲まれても、フリアは戦えると信じているって事かしら?」

「なんでいちいちあたくしの心を突くような言葉選びなのかしら……?」

「だって本当に珍しいのだもの。ここまであなたが入れ込むのは」

「……ま、否定はしないわ……」

 

 私の脳裏によぎるのは、ここ数年の退屈そうに欠伸を出すカトレアの姿。強い相手がおらず、常に寝ぼけ眼を擦っていたころと比べて、今は明らかに起きている時間が長い。そして何よりも、ここまで他人の試合を気にする姿が本当に珍しい。

 

 きっかけはヨノワールの変化という前代未聞の出来事を知るという名目だけだったろう。しかし、今はその現象についても何となくわかり始めている。つまり、カトレアの最初の目標であるヨノワールの変化の究明というのは大体終わりを迎え始めている。それでもここに残っているということは、単純にフリアといういちトレーナーを気に入っているという事を案に言っているようなものだ。

 

(本当に、不思議な子よね……これで自分には才能がないっていうんだから困りものよね……)

 

「何かしら……?」

「別に何でもないわよ」

 

 きっとカトレア本人にこのことを行っても否定するだろうから言わないでおく。今日はもう十分からかったので、やりすぎないようにちょっとセーブだ。

 

「さて……とにもかくにもまずは初戦ね。カトレア。あなたはどんなバトルになると予想するかしら?私は、最初のリズムの取り合いはポプラさんに傾くと思っているのだけど……」

「ふむ……」

 

 話しを一転させて試合の展開予想へ持っていく。シンオウ地方のチャンピオンとして、他の地方の視察のためにガラル地方のジムリーダーの試合も見たことはあるので、ポプラさんのスタイルもそれとなくは掴んでいるつもりだ。それを踏まえたうえで、私は1つの予想を組み立ててカトレアに告げてみる。私の経験上、この展開から大きく外れることはなさそうと思っている。

 

 そんな私に対して、カトレアは少しだけ悩んだ様子を見せ、しかしその思案顔は直ぐに少し崩れた微笑みに変わる。

 

「ええ、おおよそ間違っていないでしょうね……。シロナの言う通りよ……()()()()()()()()()()()……ね……」

「……?」

 

 そして告げられる、私の予想を肯定しているようで肯定していない返答。その言葉がよく分からず、思わず首を傾げてしまいそうになるけど、カトレアは気にせず紅茶を1口含み、唇を濡らしていく。その様はまさにお嬢様のそれで、何度も見ていて、且つ同性の私すらも見惚れてしまいそうなほど優雅な動きで……

 

「1番の大荒れが起きるならここよ……楽しみね……」

 

 エスパータイプ使い特有の、謎の電波を受けたらしいカトレアは、私には理解できないことに納得し、1人微笑んでいた。

 

(……0回戦、何が起きるのかしらね?)

 

 その姿を見て、私もますます興味を惹かれていた。

 

 0回戦が、今から楽しみで仕方がない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅ」

 

 ポプラさんと戦うということが決まってから5日。その猶予は、まるであの子が時間をいじくったのではないかと思ってしまうほど一瞬で流れて行った。

 

 正直みんなと気兼ねなく集まり続けるというのが久しぶりすぎて、大会への緊張よりも、楽しいという気持ちが勝っていたのが原因だと思っている。勿論、みんなで集まってしていたことは、ポプラさんへの対策会議であって、遊びではなかったわけだけど、それでもガラルリーグと違って、みんなで話し合って対策を考えるというのがとても心地よくて楽しかった。可能ならば、これからもこうしていたいと願うばかりだ。

 

 さて、そんな感じでボクに残された5日間という準備期間を、我ながらなかなか有意義に過ごすことが出来たと自負しているボクなんだけど、じゃあ今どこにいるかと言うと……

 

『フリア選手頑張れ~!!』

『応援しているぞ~!!』

『キャー!!可愛い~!!こっちみて~!!』

『ゴーゴーフリア選手~!!』

 

「分かってはいたけど、さらに歓声が凄くなってる……いや、1部おかしな声援混じってる気がするけどさ……」

 

 もう既にシュートスタジアムのバトルコートの中心にいたりする。

 

 あっという間に試合開始日になってしまったので、もはや通い慣れた道を歩いてスタジアムに来たボクは、いつもよりも気持ち早めにここに来ていた。というのも、相手はジムリーダー。間違いなくボクの格上の相手で、年齢で考えればさらに上の人だ。流石に待たせるわけにもいかないということで、いつもよりも早くこの場にいるのだけど……

 

「この声援……どこまで大きくなるんだろう……」

 

 バトルコートの中心に立ってから投げられる声援の大きさに、慣れたはずなのにまた驚いてしまう。

 

 ユウリと行われた決勝戦。あの時でさえとんでもなかったのに、さらに大きくなっているように聞こえるこの状況を前にすると、ダンデさんと戦う時は一体どんなことになってしまうのだろうかと、むしろ不安になってしまうレベルだ。ご近所の騒音対策とか大丈夫なのだろうか。

 

(しかもその声が、今この瞬間においては全部ボクに投げられているのがまたすごいよね……)

 

 現状ポプラさんが入場していないため、ここにいるのはボク1人だ。つまり、この場に巻き起こっている声は、全てボクに降りそそがれているということになっている。

 

(う~ん……速くポプラさん来ないかなぁ……)

 

 慣れ始めているとはいえ、ずっとここで待たされるというのもあまり落ち着かない。というよりも、そろそろ開始時間がもう目前にまで迫っていると思われる。だというのに、一向にボクが入ってきた道とは反対側の入場口に影が見当たらない。

 

(まさか……寝坊……とか?……って、そんなわけあるはずないか)

 

 ポプラさんに限ってそんな初歩的なミスがあるはずがないと決め、改めて空を見上げてぼーっと待つ。

 

 正直、せっかくのチャンピオンリーグの始まりだというのに、なんだか急に気が抜けていくような雰囲気に襲われた。

 

(もしかしたら、観客の人たちも同じ気持ちになってるんじゃあ……?)

 

 ジジ……ジジ……

 

「え?」

 

 それでもまだ顔を出さないポプラさんに、いよいよ不安感が募り始めていたところで、急にどこからかノイズ音が聞こえてきた。その音につられるように視線を動かすと、そこにはバトルコートに併設されている巨大モニターがすなあらしの画面を映していた。

 

「な、なに……?」

 

 急に起きたその怪奇現象が不気味で、思わず身構えるボク。これだけ大きなモニターなのだから、観客たちもしっかりと見えている。

 

 そんな、誰しもが注目する巨大モニターの異変は、数秒後、パチッという音と共に、とある人物が映し出されることで終わりを告げた。

 

 その人物は……

 

『やぁ優勝者。元気にしているかい?』

「ポプラさん……?」

 

 ボクがこれから戦う相手のポプラさんだった。

 

 巨大な画面いっぱいに映し出されるポプラさんの姿。それはまるで、何かを企んでいる悪の組織のトップのように見え……ボクは正直に言葉を漏らした。

 

「なんか……デスゲームの主催者……?」

『久しぶりに顔を合わせたと思ったら失礼だねぇ』

「ご、ごめんなさい……」

 

 結果、普通に怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




カトレア

恐らくガラル旅行を一番楽しんでいるのは彼女の可能性があります。

ポプラ

いったいなにをたくらんでいるんだー。




フルバトルは終わらないですが、さすがに次からは、フリアさん以外の試合は書かないと思います。ご了承くださいませ。




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