【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

265 / 374
265話

「『つじぎり』!!」

「エルッ!!」

 

 ブラッキーが倒れ、残りがヨノワールと体力の少ないエルレイドだけになったボクは、せめてギャロップだけでも落とすべく、エルレイドに全力で攻めを指示する。

 

(ギャロップさえ落とすことが出来れば、残りのニンフィアは体力的にすぐ倒れると思うからなんとかなる!!)

 

 現状残りのポケモンを数ぞえるなら、ボクが2人でビートが3人。体力面で言っても、ヨノワールとブリムオンがわりと元気な状態で、ニンフィアとエルレイドがかなり削られている状態。そして、ギャロップが半分位の体力+まひ状態となっている。

 

 気づけば大きく逆転されている盤面ではあるものの、今この瞬間だけで言えば、痺れているギャロップを前に走っているエルレイドの方が何倍も有利な状況にいる。体力こそエルレイドはかなり少ないものの、エルレイドの火力があれば、体力半分兼まひのギャロップを落とすことはまだ難しくないはずだ。

 

 タイプ上何も出来ずに負けてもおかしくないブラッキーが作ってくれたチャンスを生かすために、腕の刃を黒く染めたエルレイドはギャロップに向かって猛進。痛みに少し表情を歪めてはいるものの、その足は決して止めない。

 

「『サイコカッター』です!!」

「ル……ロッ!?」

 

 これに対し、角をピンク色に光らせ、迎撃をする態勢を整えようとするギャロップだったけど、力を込めた瞬間に身体に痺れが走り、バランスを崩してしまう。これにより、角に溜まっていた力が霧散してしまい、明確な隙が生まれる。そこを確実に捉えるべく、懐に潜りこんだエルレイドがすれ違いながら右腕を全力で振り切る。

 

「エルッ!!」

「ルロッ!?」

 

 ブラッキーの時とは比較にならない大ダメージを受けたギャロップは、この一撃によって足を曲げ、倒れそうになる。が、それでも最後の意地なのかギリギリのところで持ちこたえた。

 

「なんて根性……でももう限界のはず!!エルレイド!!」

「ギャロップ!!最後の力を!!」

「「『サイコカッター』!!」」

 

 どちらの体力も限界。そんな状態で放たれるピンク色の斬撃は、数を飛ばすのではなく、一撃に力を込めて放たれたため、大きなひとつの線となって飛んでいく。

 

 エルレイドは右腕をフックのように振ったために横の、ギャロップは角を真下に振り下ろして放ったので縦の線となって飛んでいく斬撃は、お互いの中間地点で十字を結ぶようにぶつかり合った。

 

 そこから少しだけ拮抗するぶつかり合い。しかし、ここまで来たら元々の攻撃力の高さがものをいう。それに、特性によってさらに威力の上がっているエルレイドの斬撃は、この場においては負ける理由が存在しない。そんなボクの想像通り、地面に水平の斬撃が、垂直の斬撃を打ち破ってギャロップに到達。

 

「ル……ロ……」

 

 そのままギャロップの身体に直撃し、地面に倒れた。

 

 

『ギャロップ、戦闘不能!!』

 

 

「ありがとうございます。ゆっくり休んでください」

 

 倒れたギャロップを戻しながらボールを持ち変えるビート。

 

 これで手持ちはイーブン。

 

「頼みます、ニンフィア!!」

「フィ……アッ!!」

 

 ビートから繰り出されたのはニンフィア。

 

 モスノウとのバトルで大打撃を受けているこの子も、今のエルレイドと同じく、体力を大きく削れている状態なので、あの時のような細かい連携技なんてとてもじゃないけどできる状態ではないだろう。

 

 この対面も、長くは持たない。

 

「『サイコカッター』!!」

「『ハイパーボイス』!!」

「エ……ルッ!!」

「フィ、アアアァァァッ!!」

 

 そうなれば、やはりできることは今出せる全力の攻撃のぶつけ合い。妖精の力を乗せた声と、右腕から放たれたピンクの刃は、先程エルレイドとギャロップが戦った時と同じ位置でぶつかり合う。が、先程と違うのはお互いの攻撃が相殺しあったということ。

 

 空中でぶつかりあった2つの攻撃は、激しい衝撃音と風圧を撒き散らして消えていく。

 

「走って!!」

「『でんこうせっか』!!」

 

 この風圧に一切怯まないエルレイドとニンフィアが同時に前に走り出す。足の速さだけで言えばエルレイドの方が上だけど、でんこうせっかを構えているニンフィアの方が瞬発力では上をいっている。そのためエルレイドが何かをする前に、そのお腹にニンフィアの体当たりが叩き込まれる。

 

「ッ!?……エルッ!!」

「『サイコカッター』!!」

 

 フェアリースキンで自身にとってばつぐんの技に変わっているそれを、しかしここまで体力が減ったら避けることすらしんどいと悟ってるいたエルレイドは、お腹に力を込めてこの攻撃をしっかりと受け止める。先制技ならではの、速い代わりに威力を犠牲にしているという弱点をつき、意地で耐えたエルレイドはそのまま左腕を振り下ろし、ピンク色の刃を直接叩きつける。

 

「フィアッ!?」

 

 結果、でんこうせっか終わりで隙のあるニンフィアはこれを避けることが出来ずに直撃。大きなダメージを背負うこととなった。

 

「エル……ッ!?」

 

 が、エルレイドの蓄積されたダメージも物凄く、技を振っている途中で膝が笑ってしまい、腰の入った一撃が放てなかった。そのせいで、ニンフィアにトドメを刺すことが出来ず、結果としては距離が空いただけ。お互いに体力をギリギリまで削られた上で、初期位置まで戻される。

 

「『サイコカッター』!!」

「『ハイパーボイス』!!」

 

 そして、その位置から再び放たれるお互いの全力。

 

 もう歩くことすら怪しいお互いが動かずに攻撃できるからという理由で選ばれた2つの技は、先程見たそれに比べてかなり弱々しく、それでもせめて目の前の敵を倒すという意志が込められているせいで、圧はかなりのものがあった。

 

 防御なんて一切考えていないその攻撃は、意思がそうさせたかのように互いの技に干渉することなく、すれ違っていく。

 

「フィッ!?」

「エルッ!?」

 

 すれ違った技は、何にも遮られることなく、お互いの身体に突き刺さった。ここまで戦って、沢山の傷を作ってきた両者に、そんな一撃を耐えるだけの体力と精神力なんてあるわけがなく……

 

 

『ニンフィア、エルレイド、戦闘不能!!』

 

 

 両者同時に、その身体を地面に横たえる。

 

「ありがとう、エルレイド。ゆっくり休んで」

「お疲れ様でしたニンフィア。戻ってください」

 

 ダブルノックアウト。これで、ボクとビートの残りポケモン数が並んだ。

 

 あと残っているのは、お互いが一番最初に繰り出した、エースポケモンだけだ。

 

 ボクは右腕の、ビートは左腕の赤いバンドを外に晒しながら、お互いの最後のポケモンをその手に握りしめる。

 

「「……」」

 

 その状態で見つめ合うボクとビート。

 

 色々話したいことや、口から出してみたい言葉は浮かんではいた。けど、そのどれもが、今この場所で告げるものでは無いような気がして。

 

 望んで、そして無理を通して実現したこのバトルに、もう言葉は必要なかった。

 

 あとは、最後の力を振り絞るだけ。

 

「「っ!!」」

 

 お互いが握りしめるボールの力を入れると同時に、ダイマックスバンドから赤い光が迸り、ボールの中へと吸い込まれる。そして、赤い光を吸収したボールはダイマックスボールへと変化していき、その中に眠るポケモンの能力を一気に引きあげていく。

 

 あの日中断されてしまったあのバトルの続きの、決着の時だ。

 

 

「大いなるピンクを見せましょう!!ブリムオン、キョダイマックスです!!」

「ボクたちの成長を見せよう!!ヨノワール!!ダイマックス!!」

 

 

 ボクとビートの声が重なり、同時にボールが空中に投げられる。

 

 力を込めて投げられたそのボールは、天高くまで飛び上がって、その中身を解き放った。

 

 

「ノワアアァァァッ!!」

 

 

 まず開いたのはボクが投げたモンスターボールから。飛び出してきたのはいつもの大きさに比べて何倍ものでかさとなってスタジアムに降り立ったヨノワール。てづかみポケモンらしく大きく主張していた手はさらに大きくなって、世界を掴むのではないかと錯覚させるほどだ。

 

 

「リオオオォォォッ!!」

 

 

 そんな頼れる相棒の逞しい姿の対面に現れるのは、ビートの相棒であるブリムオン。

 

 あの日、あの夜でのバトルで進化したビート最強の相棒は、キョダイマックスすることでまた姿を変え、更なる力を手に入れていた。

 

 身長は目測で26メートルほど。頭から伸びている毛先は3本に増え、普段は隠れてみることの出来ない顔から下の上半身部分が丸見えになっており、その姿はさながら、本体が巨大なアーマーを操縦しているかのような、もしくは、とても高い塔の中からこちら辺りを見渡している魔女のような姿になっていた。

 

 触手のようになびく毛先から稲妻のようなビームを飛ばす姿から『荒ぶる女神』と称される、そんな彼女の凛々しい姿が、美しくも怪しく光り輝く。

 

 その姿に一瞬目を奪われそうになるものの、すぐさま意識を切り替えて、こちらを見下ろすせいじゃくポケモンに挑む。

 

「『ダイアース』!!」

「『ダイアーク』!!」

 

 

「ノワアアァァァッ!!」

「リオオオォォォッ!!」

 

 

 ボクとビートの指示が重なり、ヨノワールとブリムオンもまた、同時に行動を起こす。

 

 両手にありったけの茶色いエネルギーをためたヨノワールは、そのまま地面に叩きつけて大きな地震をを起こし、ブリムオンへ発射。対するブリムオンは、3本の毛先を1つにまとめ、そこから真っ黒色のオーラをためて解き放つ。

 

 地を進む茶色のエネルギーと、宙を飛ぶ黒いエネルギーはお互いにぶつかり合うことなくすれ違い、そのまま相手に向かって突き刺さる。

 

 

「ノワッ!!」

「リオッ!!」

 

 

 これに対してヨノワールを両腕をクロスし、ブリムオンは1つにまとめていた毛先を三つに戻し、サイコパワーの壁を作ることで受け止める。

 

 ダイウォールで行った防御行動ではないため、ダメージはしっかりと入ってはくるものの、両者ともに耐久面に秀でているポケモンであるため、この程度の防御行動で十分ダメージを抑えきることが出来ていた。ダイマックス技の追加効果も、ダイアークはこちらの特防を下げる効果があるものの、ダイアースがこちらの特防を上昇させる効果を持っているため、結局±0となっている。

 

 まだ互角。

 

 

「『ダイロック』!!」

「『ダイサイコ』!!」

 

 

「ノ……ワッ!!」

「リオォッ!!」

 

 

 お互いダメージが少ないことを理解した僕とビートはすぐさま次の技を指示。ヨノワールは先ほどと同じように両腕を地面に叩きつけ、しかし起きる現象は先ほどとは違い、キョダイマックスしたブリムオンよりもさらに高い大きな岩の壁を作り出し、この壁をブリムオンの方へ倒して押しつぶさんとする。対するブリムオンの様子は、ヨノワールの作り出した大きな岩の壁のせいで確認することはできないけど、気合の入った声と、岩の奥から聞こえてくる不思議な音からしてかなり強力なダイサイコを放っているだろうことが想像できる。

 

 そんなボクの想像通り、岩の奥から感じる強力な力は、ヨノワールが作り出したダイロックを砕き、大きな岩の破片として辺りに散らばせていった。幸い、ダイロックを壊すのに威力の大半を持っていかれているらしく、ヨノワールの下へと到達するサイコパワーは存在しなかったものの、ヨノワールがかなり力を込めて作り上げた壁を一瞬のうちに砕くその威力には、さすがに驚きを隠せない。けど……

 

「壊されるのはむしろありがたい!!ヨノワール!!『ダイホロウ』!!」

 

 

「ノワアアァァァッ!!」

 

 

 ヨノワールが声をあげると同時に、辺りに紫色のオーラをまき散らし、先ほどブリムオンが壊した岩の残骸たちに纏わせていく。すると、紫色の染まった岩たちは重力を無視して浮上。ヨノワールを中心として周回するその姿は、まるで地球と月の関係みたいだ。

 

「解き放って!!」

 

 

「ノワアアァァァッ!!」

 

 

 ヨノワールの周りを沢山の岩が周回したのを確認して、ボクは攻撃を指示。その声に従ったヨノワールは、両手を思いっきりブリムオンに向けて突き出した。すると、ヨノワールの周りを飛んでいたものがブリムオンに向かって突き進み、今度はブリムオンの周りを周回し始めた。

 

 

「『ダイホロウ』……遠くから見てもヒリヒリしますね。最後にふさわしい技です。なら……ぼくたちも見せてやりましょう!!ブリムオン!!」

 

 

「リオオオォォォッ!!」

 

 

 自身の弱点であるゴーストタイプの技に囲まれるという、人によっては絶望しかねない状況。しかし、そんな状況においてもビートは焦らずにブリムオンに声をかけ、それに応えるようにブリムオンも吠える。

 

「これがばあさんに叩き込まれた技!!それを今ここで、ぼくたちの技として使わせてもらう!!『キョダイテンバツ』!!」

 

 

「リオオオォォォッ!!」

 

 

 周りに紫色の衛星を回しながら、天に向かって大声をあげるブリムオン。その姿につられて、スタジアムの遥か彼方に浮かぶ、ダイマックスエネルギーによって真っ赤に染まった雲の方に視線を向けると、雲の隙間から3つの光が輝いているのが目に入る。

 

「何、あれ……」

 

 その輝きはボクの目に入ってから消えることなく輝き続け、何ならどんどんその輝きを強く……いや、大きくしていく。

 

 それはまるで、()()()()()()()()()()()()()()()……

 

「っ!?ヨノワール!!急いで攻撃!!」

 

 

「ノワッ!!」

 

 

「ブリムオン!!意地を見せますよ!!」

 

 

「リオォッ!!」

 

 

 近づいてくる光に嫌な予感を感じたボクはヨノワールに急ぐように指示。ヨノワールもその予感を受け取ったのか、突き出した両手をぎゅっと握りしめ、ブリムオンの周りに浮かんでいたものに指示を出す。

 

 ヨノワールの指示に従ったダイホロウは、そのまま中心にいるブリムオンに向かって突撃。紫色のまがまがしいオーラが一斉にブリムオンに向かって収束していき、全ての光を飲み込む強力な大爆発が巻き起こる。

 

 

「リォッ!?」

 

 

「ブリムオンッ!!」

 

 

 ブリムオンにとってこうかばつぐんの大打撃。ともすれば、これで勝負が決まってもおかしくないそんな一撃を、しかしボクは見送ることなくすぐに視線を真上に向ける、するとそこには、さっきまで米粒ほどの大きさだった光が、バスケットボールの大きさに見えるくらいまでになっており、そこからさらにヨノワールに向かって突き進んでくる。

 

「い、隕石!?」

 

 その正体は星の形をした隕石にも見える妖精の一撃。

 

 3つの流れ星は、そのすべてがダイオホロウを終えて動くことが出来ないヨノワールに向かって突き進み、落ち切ると同時にピンク色の大爆発が巻き起こる。

 

 

「ノワッ!?」

 

 

「っ……ヨノ、ワール……ッ!!」

 

 バトルコートに巻き起こる紫とピンクの大爆発。その衝撃はとてつもなく、そばにいるボクとビートは顔を覆う事しかできない。

 

 それでも、決して目を逸らすことはせずに、この爆発が治まるまでじっと真正面を観続ける。

 

「「……ッ!!」」

 

 お互い、自分のパートナーがまだ耐えていると信じて真正面を観続ける。そんなボクとビートの想いが通じたのか、爆発が晴れ、ダイマックスが終わり、青い空と白い太陽がバトルコートを照らしていき、そこには、大ダメージによって傷つきながらも、しっかりと真正面を見据えているヨノワールとブリムオンの姿があった。

 

「ノワ……」

「リオ……」

 

 お互いかなりの傷を負い、フラフラになってもおかしくなさそうな見た目なのに、それでも決してそんな様子を見せることなく堂々と立っている。その姿からは、『勝負はまだまだこれからだ』という気概を感じる。

 

 ボクもビートも、最初からダイマックス勝負だけで決着が着くなんて思っていない。

 

「ヨノワール、行くよ!!」

 

 だから、ここからが本番。そう自分に言い聞かせ、気をさらに引きしめて、ボクはヨノワールに心を繋げ、ボクとヨノワールの切り札を発動する。

 

「…………あれ?」

 

 が、何故かヨノワール側から反応が一切なく、今はもはや慣れてきたせいか特に気にせず行うことが出来る共有化が出来なくなっていた。

 

(な、なんで共有化が発生しないの!?もしかして、そんなことできないくらいにまでヨノワールにダメージが!?いやでも、そこまでには全然……)

 

「……ふっ」

「ノ……ワ……」

 

 なぜ共有化が発生しないのかについて頭で色々考えているところに聞こえてきたのは、ビートの小さな笑い声と、ヨノワールの不安定な声。それを聞いて慌てて目線を前に向けると、そこには先程までの堂々とした立ち姿からは想像できないほどにフラフラしたヨノワールの姿が目に入った。

 

 そのフラフラ度合いはボクの目から見ても明らかに不自然で、とてもじゃないけどダメージによってなっているそれではない。言い方を悪くするのなら、まるでお酒の飲みすぎた酔っ払った人みたいな……

 

「……まさか!?」

 

 そこまで考えて、そういえばボクはブリムオンが行ってきたキョダイテンバツの追加効果を知らないことを思い出した。元のダイフェアリーの追加効果は知っているけど、キョダイマックスになったブリムオンの技はそれではない。

 

 受けたポケモンの身体をここまでフラフラにさせる追加効果。そんなもの、ボクはひとつしか知らない。

 

「『こんらん』か!!」

「正解です。が、遅いですよ!!『ムーンフォース』!!」

「ヨノワール!!腕をクロスして防御!!」

 

 こんらん状態になってフラフラしたヨノワールに向かって、月の光球が真っ直ぐ飛んでくる。これに対して、今のヨノワールでは回避できないと判断したボクは防御を指示。けど、こんらん状態でフラフラしているヨノワールは、ボクの指示をちゃんと聞くことが出来ているのかが怪しい。いや、聞こえてはいるのだろうことは、ヨノワールの腕の動きを見ればわかるのだけれど、視界と平衡感覚が狂っているのか、腕を構える位置がおかしい。ただ、ヨノワールの腕が太いことが功を奏したおかげか、ブリムオンの攻撃自体は何とか腕で受けることが出来、ダメージを少し抑えることには成功。攻撃の勢いで後ろに下げられはするものの、致命傷にはならなかった。

 

「防ぎましたか……ですが、その運はいつまで続きますかね?『ムーンフォース』!!」

 

 が、それならば向こうは攻撃の手を増やすだけ。耐えたヨノワールを確認したビートは、さらに攻撃を指示。第2、第3の月の光球が放たれる。

 

 このままではいつか必ず被弾する。

 

「『いわなだれ』!!」

「ノ……ワ……」

 

 せめて障害物を作って、自身に当たる確率をちょっとでも下げようとヨノワールに指示。この声を聞いたヨノワールは、何とか岩を召喚して、自分の周りに次々と落としていく。

 

 一瞬で作り上げられた岩の林は、ブリムオンのムーンフォースを何とか受け止めるけど、その度に1つ、また1つと砕けていき、ヨノワールを守る壁が消えていく。

 

 この行動も、ただの時間稼ぎにしかならない。

 

(このままじゃダメだ……何か、何か……!!)

 

「ノワ……」

「ヨノワール……?」

 

 徐々に追い詰められている状況で、なにか打開策をみつけようと必死に頭を回していると、未だに混乱に苛まれているヨノワールが、落ちてきている岩の1つに手をついていた。

 

 もしかして、限界が来てしまったのだろうか。

 

 不安を孕んだボクの声が、無意識のうちにヨノワールの名前を呼ぶ。

 

「ノワ……ッ!!」

 

 そんなボクの声を聞いたのか聞いていないのか、少しだけ気合を入れたヨノワールは、声を上げると同時に思いっきり頭を振り上げて……

 

「ノッワッ!!」

「「なっ!?」」

「リオッ!?」

 

 その頭を思いっきり岩に叩きつけた。

 

 いきなり行われた自傷行為に、ボクだけでなく、ビートとブリムオンも驚愕の声を上げる。

 

 なぜこんなことをしたのか分からないボクたちは、頭をたたきつけたことでボロボロと崩れ去る岩の音を耳にしながら、ヨノワールにじっと視線を向ける。

 

「っ!?」

 

 それと同時にボクの心に繋がるヨノワールとのパス。

 

 ここに来て、ヨノワールがしたかったことをようやく理解する。

 

(自分で頭を叩きつけて、無理やり『こんらん』を治したの……!?)

 

「ノワッ!!」

「ッ!!」

「まさかっ!?」

 

 ボクが未だに驚きで固まっているところにかけられるヨノワールからの声。これによってボクは今するべきことを直ぐに思い出し、ヨノワールとの共有化を行う。そしてこのタイミングで、ビートもヨノワールの行動の意味を理解し、その表情を今日1番の驚きに染め上げる。

 

 同時に、ヨノワールを漆黒の渦が包み込み、その渦を消しながら、自身の姿を別物へと変えていく。

 

「……本当に、無茶するんだから」

「ノワ」

 

 繋がる視界。響く痛み。痺れる腕。そのどれもが、今日のヨノワールとの絆を教えてくれる。

 

「行くよヨノワール。反撃……開始!!」

「ノワッ!!」

 

 ようやく発動できたヨノワールとの切り札。その繋がりは、今までの繋がりよりさらに、深くなっている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんらん

自傷行為して無理やり直すのは、直近で言えばアイリスさんのオノノクスが行っていましたね。実機でも自傷したら混乱が治れば……いえ、それだと弱すぎるんですかね?




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。