少しリアル事情で多忙になってしまい、書く時間を取れなかったので、今回は少し遅れる形となりました。
次話以降はいつも通り投稿出来ると思いますので、よろしくお願いします。
「共有化……出来ればさせる前に倒したかったのですが……」
「らしくない発言だね。昔のビートなら、ボクにさせた上で叩き潰すことこそが〜とか言いそうなものだけど」
「わざわざ相手の強化を待つバカがどこにいるんですか。勝てる時に勝つ方が建設的ってだけですよ」
「……ほんと、変わったね。いい意味で」
慇懃無礼な態度は変わっていないものの、その中に感じる確かな相手へのリスペクトを感じるあたり、ビートもしっかり変わっていることを改めて感じるボク。
いい方に変わってくれるのはとても嬉しいのだけど、ことこの戦いにおいては、そういう態度をとるということは、ボクに対して一切の油断をしてくれないということの裏返しでもあるので、正直昔の傍若無人の状態の彼の方がまだ戦いやすかった。
(ま、その分楽しい試合が出来るからいいんだけど……!!)
「『いわなだれ』!!」
「『ぶんまわす』!!」
ヨノワールと動きをシンクロさせ、右腕を上から下に振り下ろすと同時に複数の岩を呼び出し、ブリムオンに向かって打ち出していく。
尖っている部分を真っすぐ突き付けて勢い良く放たれた岩の刃は、そのすべてがしっかりとブリムオンに向かって突き進む。対するブリムオンは、頭から伸びている触手を真っ黒に染め上げ、それを思いっきり振り回すことで暴力の嵐を巻き起こす。
物理攻撃があまり高くないとはいえ、ここまで豪快に振り回されると、遠心力も乗ってかなりの破壊力になる。その一撃は、ヨノワールの飛ばした岩のすべてを粉砕。周りに粉粒クラスまで砕かれた岩が散らばっていくこととなる。
「『ムーンフォース』!!」
「『かわらわり』!!」
いわなだれを防いだブリムオンは、次は自分の番だと言わんばかりに月の光球を発射。今までのどのムーンフォースよりも強く輝いているそれは、しかしこちら側の、真っ黒に染め上げられた左手の振り下ろしによって真っ二つに割れ、そのままヨノワールの左右を通り過ぎて爆発。
「GO!!」
「ノワッ!!」
共有化によって背中から感じるムーンフォースの爆風から、これを推進力に使えると判断したボクはすぐさま前進を指示。いつもよりも速く前に飛び出したヨノワールが、再び両手を黒く染めながらブリムオンへの距離を地締めていく。
「『ぶんまわす』!!」
「『かわらわり』!!」
一方で距離を詰められている側のブリムオンは、いわなだれを吹き飛ばしていた力をそのまま引き継ぎ、毛先をもっと強く振り回し、遠心力を乗せた一撃を迎撃に使ってくる。その一撃は風きり音を強く奏でており、それだけで威力がかなりあると分かる。なので、こちらもそんな一撃に負けないように、両手に溜めていた黒いオーラを右手ひとつに集めていき、インパクト前に身体ごと右回りに回転させ、一回転分の遠心力を乗せて、右手を水平に放ってぶんまわすとぶつけ合う。
「ノワッ!!」
「リオッ!!」
お互いの技がぶつかると同時に響く鈍い音。
空気をひりつかせながら、激しいつばぜり合いを繰り広げるお互いの攻撃は、綺麗に中心で拮抗する。
ブリムオンに対してはいまひとつでありながら、あくタイプであるぶんまわすに対しては強いかわらわりを繰り出しているヨノワールと、単純にヨノワールに対してばつぐんを取ることが出来るあくタイプの技を放っているブリムオンの力関係はとても複雑で、正直一言でどっちが有利かなんて言えない。けど、少なくともまだ流れがどちらにも傾いていない現状では、いかに初撃を速く叩き込むかが大切となっているので、ここは意地でも競り勝ちたい。
ヨノワールと同じ動きをし、右腕を振っているボクの右手から感じる痺れに歯を食いしばりながら、ボクとヨノワールは右手に力を込めていく。そんなボクとヨノワールの視界の先には、同じく歯を食いしばっているような表情を浮かべているブリムオンの顔がよく見えた。あちらも、ここで流れを取られるのはよくないことをしっかりと理解しているのだろう。
そんな最初の意地のぶつかり合いは互角のまま終了。バチンと言う弾かれるような音とともに、ヨノワールとブリムオンが大きく後ろに弾かれ、2人の距離が初期状態以上に離れていく。こうなって来ると、本来なら特殊攻撃力の高いブリムオンの方が有利な状況になる。幸いボクのヨノワールが物理攻撃でありながら遠距離攻撃が可能な技を多く持っているため、この状況下になっても戦うことが出来るから、まだ何とかなる方ではあるが。
(それでもとどめはやっぱり懐に入って行うべき。そのためにも、近づくために色々しないと……)
「『じしん』!!」
飛ばされた身体を何とか整えたヨノワールに、すぐさま技を指示。ヨノワールと動きを合わせ、右拳を握り締めながら地面に叩きつけると、そこを起点にブリムオンに向かってエネルギーが伝わっていき、同時に地面から岩が隆起していく。
「まるで『ストーンエッジ』みたいな現象ですね……それだけ威力が高いという事なのでしょうが……ブリムオン!!」
「リオッ!!」
自身に向かってくる破壊の波に対して、若干の冷や汗をかきながらも、しかし冷静に判断したビートは、ブリムオンの名前を呼ぶだけで何をすればいいのかを指示。これを読み取った彼女は、自身にサイコキネシスをかけて、じしんから逃れるために宙に浮いた。それも少し浮くのではなく、ちゃんと岩の柱が当たらない高度まで浮き上がり、しっかりと追加効果をケアをした動きを取っていた。
「もう1回『じしん』!!」
「ノッワ!!」
だけど、そういう行動をしてくることはこっちも認識済み。だからこそ、今度は空いた左手も地面に叩きつけることで、1つの目のじしんを追いかけるように2つの目のじしんが発生。1つ目と同じ速度と威力で広がったその破壊の波は、出来上がっていた岩の柱を砕き、空中へと打ち上げていった。
これが、相手がふゆうなりひこうタイプなりを持っており、空を飛ぶことに慣れているポケモンであるのなら、この攻撃にもすぐさま反応して逃げることもできたのだろうけど、残念ながらブリムオンはひこうタイプでもなければ空を飛ぶことに慣れているポケモンでもない。よって、急に飛んでくる岩の礫に対する回避行動は間に合わず、この攻撃を全身に受けてしまう。
「『サイコキネシス』です!!」
「リ……リオッ!!」
しかし、回避が無理と判断して、すぐさま技での相殺に対策をシフトしたビートの指示によって、ブリムオンへのダメージは最小限で終わり、続けてブリムオンに飛んできた岩の礫は、そのすべてが動きを空中で止められてしまう。
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
けど、岩の動きを止めることに集中したことによって、今度はブリムオン自身の動きも空中で固定されてしまっている。これを好機ととらえたボクとヨノワールは、すぐさま行動を開始。ブリムオンと違って最初から空中に浮かんでいるヨノワールは、ブリムオンが動き出すよりも速くその距離を詰めていく。
「『いわなだれ』!!」
「岩の礫で反撃を!!」
距離を詰めながら両手をパチンと合わせて岩を複数召喚。そこから両手を振り下ろすことで岩の雨を降らせる。
対するブリムオンは、先ほどサイコキネシスで止めた岩の礫を再利用して迎撃。岩と岩がぶつかり合い、粉々に砕け散ったことで砂になって消えていく。
「『かわらわり』!!」
「『ぶんまわす』!!」
お互いの遠距離攻撃方法がなくなったところで、再び両者同時の近接攻撃。真っ黒に染まって右手の振り下ろしと、真っ黒に染まった毛先の振り払いがぶつかり合い、鈍い破裂音が響き渡る。しかし、先ほどとは違って遠心力を乗せる暇がなかったブリムオンの一撃は思った以上に威力がでておらず、右手にフィードバックする痺れもさっきと比べたらそんなに強くないので、これなら力押しできると判断。
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
「リオッ!?」
声をかけると同時に左腕にも力を加えたボクとヨノワールは、現在進行形でつばぜり合っている右手と触手のぶつけ合いに左腕も追加。上からさらに圧力を押し付けるように振り降ろし、ブリムオンに叩きつけた。
両腕によるかわらわりはさすがのブリムオンも耐えることが出来ずに地面へと叩きつけられ、大きな衝撃音と土煙をまき散らす。
「『いわなだれ』!!」
ブリムオンが落ちたところに向けて追加の雨。多数の岩による質量攻撃は、ブリムオンが落ちたところにどんどん積み重なり、一瞬でい岩石の山を作り上げ、生き埋め状態となる。
「『サイコキネシス』!!」
「リオッ!!」
が、そんな状態でもお構いなしと放たれた念動力によって、出来上がった岩石の山は一瞬ではじけ飛び、中からピンク色のオーラを纏ったブリムオンが飛び出してくる。
「『ムーンフォース』!!」
「リ……オッ!!」
更に、自身に溜めた力を妖精の光球に変換し、ヨノワールに向かって弾幕として打ち出した。
威力よりも数を重視したそれは、いわなだれを終えたばかりのヨノワールに向かって次々と向かってくる。けど、視界を共有し、更に感覚が研ぎ澄まされている今のヨノワールに避けられない量ではない。
「「ッ!!」」
ボクとヨノワールの視界が重なり、流れて来る月の光球の軌跡が手に取るようにわかる。
球と球の隙間に身体を滑り込ませ、飛んでくるすべてのムーンフォースを避けきったヨノワールは、そのまま次の攻撃態勢へ。
「『いわなだれ』!!」
「ノワッ!!」
手を合わせ、再び岩の弾幕の作成。これをブリムオンへと叩きつける構えを取り、いざ攻撃へ。
「ブリムオン……行きますよ!!」
「リオッ!!」
「ッ!?ヨノワール!!何かくるよ!!」
「ノワッ!!」
こちらのターンに徐々に傾き始めてきたところで、ビートから聞こえてくるのは意味深げな言葉。この声を聞いた瞬間に、背筋に嫌な予感が駆け巡ったボクは、すぐさまヨノワールと声をかけ合って警戒。
しかし、この次にビートが指示をしたものは、例え警戒したところでどうしようもない一手だった。
「ブリムオン。『じゅうりょく』」
「リオッ!!」
「「ッ!?」」
じゅうりょく。
フィールド全体にかかる重力負荷を一気に跳ね上げ、空に飛んでいる物を地面に叩き落す技。このフィールド下では、あらゆるポケモンが空中に存在することが出来なくなり、すぐさま墜落する運命となる。また、かかって来る重力のせいでポケモンの動きそのものもかなり制限されてしまうため、相対的に回避という行動が難しくなり、技の被弾率が跳ね上がる。
とはいえ、この技はあくまでもサポート技の1つであり、且つこの効果は自分自身も受けてしまうため、一概に使い得という技でもなければ、状況によっては自分にも害をなす可能性のある難しい技だ。それゆえに使い手はかなり少なく、ボクもこの技を使われたことなんて一度もない。
けど、だからこそ、今のボクにこの技は綺麗に刺さってしまった。
(お、おも……ッ!?)
ヨノワールと感覚を共有しているボクは、彼が受けている重さも返ってきている。その重さがとてつもなく、思わず膝を地面につくボクは、しかしそれだけで終わらないビートの攻めに目を見開く。
「ノ……ワ……ッ!!」
空中にいるヨノワールはじゅうりょくによってその高度をどんどん落とし、更に自分の周りに展開していたいわなだれも維持をすることが出来ずに、そのすべてを地面に落とされていく。が、これだけであるのならば、ヨノワールにもそんなにダメージは入らない。
問題は、じゅうりょくを行う前にブリムオンが放った攻撃。
「ヨノワール!!空に向かって『いわなだれ』!!」
「ッ!!」
地面に向かってうつぶせの姿で落ちている身体を無理やり反転させ、あおむけの状態へ。するとそこには、先ほど空に向かって撃たれ、そしてヨノワールが避けたムーンフォースがじゅうりょくに引かれ、帰ってくる形でヨノワールに襲いかかってくる。
(『じゅうりょく』のせいで今度は多分避けられない!!なら、撃ち落とすしかない!!)
雨のように降って来る月の光球に対してこちらは岩を発射。じゅうりょくによる加速も乗ったこの威力にはただのいわなだれでは対処できないと判断したボクは、降って来る数よりも多くの岩を発射することで対処。落ちて来るムーンフォースのすべてを何とか撃ち落としたうえで、少し多くの岩を出しすぎたのか何発かは空に向かってうちだされる。
「よし、何とか防げ……あぐっ!?」
「ノワッ!?」
「よそ見しすぎですよ。『ムーンフォース』!!」
「リオッ!!」
しかし、ヨノワールが空中で上からの攻撃に対処している間に、地面で態勢を整え終えたブリムオンがヨノワールの背中に向けてムーンフォースを乱射。上に気を向けていたヨノワールとボクはこの攻撃に反応が遅れてしまい、背中に大きな衝撃を連続で受けてしまう。
「く……ヨノワール!!反転して『かわらわり』!!」
ようやくまとまったダメージが入ったことを確認できたビートは、ここからさらに追撃をするべくムーンフォースを乱射。これに対してボクとヨノワールは身体を反転させて再びうつぶせの状態になり、両腕に黒オーラを携えて、打ちあがって来るムーンフォースを迎え撃つ。
両腕の手刀を次々と振り、飛んでくるムーンフォースを横に弾くように飛ばしながらじゅうりょくに引かれるヨノワールは、手刀で捌ききれないものを身体に受けてしまいながら、それでもある程度ムーンフォースを弾いたところで、更に後ろに手を向ける。
その先には、先ほど上から降って来るムーンフォースを迎撃するために放ったいわなだれの余り。それが、じゅうりょくに引っ張られることで、さっきのムーンフォースと同じように落ちて来る。これに対して掌を伸ばすことで、ヨノワールは次の技の準備とする。
「この『じゅうりょく』、逆に利用するよ!!『ポルターガイスト』!!」
「ノワッ!!」
じゅうりょくで速度の上がった岩をポルターガイストで包むことによってさらに威力を底上げし、ブリムオンに打ち出すことによって、まだ飛んできているムーンフォースを打ち抜きながらブリムオンを攻撃していく。
「本当に、対応が速くて嫌になりますね!!『ぶんまわす』!!」
自分が作り出したじゅうりょく空間を逆に利用され、黒い雨を降らせてくるボクたちに対して、悪態をつきながらもすぐさま応戦の指示を出すビート。これに従ったブリムオンは、自身の触覚を黒く染め、懸命に振り回してポルターガイストに挑んでいく。しかし、ヨノワールがムーンフォースを弾くのとは違って、物理攻撃が得意ではないブリムオンが行うこの弾き行為は若干の精細さを欠いており、被弾こそしてはいないものの、弾ききれなかったポルターガイストが地面に着弾した時の衝撃がブリムオンに少しずつダメージを刻んでいた。
この間にも、じゅうりょく下で空中に身を置いているヨノワールは、かなりの速さをもって地面に落ちていた。しかもただ落ちているだけではなく、両腕に黒色のオーラをため、今にも攻撃を放ちそうな予備動作を見せている。
「ブリムオン!!回避を……」
「『じしん』!!」
「なッ!?」
「ノワッ!!」
「リオッ!?」
この行動を見てかわらわりを警戒したビートは、飛んで回避は出来ないから地面を滑るように移動して避けることを指示。しかし、ボクがヨノワールと行った技はじしん。真っ黒に染まった拳を地面に叩きつけることで、その地点を起点として360°全方位に破壊の波動をまき散らす。
衝撃をたたきつけられたブリムオンは、苦しそうな声を上げながら後ろの弾かれていく。
パッと見自分から後ろに飛ぶことでダメージを軽減させているような動きを見ることはできたものの、ここに来てヨノワールの叩き込んだダイホロウがブリムオンに牙を向いてきた。
キョダイテンバツによるこんらん付与がインパクトありすぎて忘れがちかもしれないけど、今このバトルにおいてはダイホロウの追加効果である防御ダウンの効果もこんらん付与と同じくらい……いや、ことによってはそれ以上に影響を与えるパーツだ。物理攻撃を主体にするヨノワールにとってこのステータス変化はブリムオンへ与えるダメージに直結する。
(こんらんのせいで最初は負けてたけど、その後のダメージレースは間違いなくこっちが勝ってる!!大丈夫、このまま攻め切る!!)
「ヨノワール!!『ポルターガイスト』!!」
「ノワッ!!」
じしんを繰り出す際に拳を地面に叩きつけたことで隆起した岩石にオーラを送り込み、黒色の弾丸としてブリムオンに発射。後ろに弾かれているブリムオンへの追撃として次々と攻撃の雨を放っていく。
「引けない……ぼくたちは立ち向かう!!『ムーンフォース』!!」
「リ……オッ!!」
ここに来て一気に流れを取られ始めた自覚を持ったビートが、それでもここから挽回するために攻めの指示。この声を聞いて、吹っ飛ばされている状態から無理やり態勢を整えたブリムオンが、ポルターガイストに対してムーンフォースで対抗。無数の光球がブリムオンから放たれ、ヨノワールとブリムオンの間でぶつかり合い、黒く輝く怪しい光となって辺りに舞う。
「突っ込むよ!!」
そんな爆風荒れ狂う戦場をかけるひとつの影。
ブリムオンの体力が着実に削れていると感じ取れたボクとヨノワールが、最後の攻めを決めるために駆け出していく。
「ブリムオン!!」
「リオッ!!」
ここが最後のやり取りであることをビートも察し、ブリムオンと声をかけあってヨノワールの迎撃準備を整える。
ぶつかるまで残り数秒。
「『ポルターガイスト』!!」
ムーンフォースとポルターガイストがぶつかり合う中、そのうちの1つのポルターガイストを右手に持ったヨノワールが、そこにさらに力を加えることで、より黒くなった大きな塊が完成。これを叩きつけることで、このバトルに決着をつけることを心に決める。
「『ムーンフォース』!!」
対するブリムオンも、頭から伸びる触覚に力を込め、大きな光球を作り上げる。その様はまるでチェーンハンマーのようで、溢れ出る輝きからその破壊力がよく分かる。
正真正銘最後の攻撃。ブリムオンはダイホロウのせいで防御を落とされているため。ヨノワールはこんらんを治すときの自傷と、じゅうりょくを受けた時のムーンフォースの乱打を受けたため。そして何より、ダイマックスでの技の打ち合いによるダメージがお互いの身体にしっかりと刻まれているため、お互いのこの攻撃を受け止められるだけの体力が残っていない。
この一撃を叩き込んだ方が勝つ。
このバトルの終わりを前に、ボクもビートも、自然と拳に力が入る。
「ヨノワールッ!!」
「ノワッ!!」
先にしかけたのはヨノワール。
ムーンフォースとポルターガイストのぶつかり合いによる爆風を身体に受けながらも、その全てに耐え、逆に爆風を推進力として突き進むヨノワールは、想定していたよりも数秒早くブリムオンの懐へ入り込んだ。
「叩きつけろッ!!」
「ノッ……ワッ!!」
懐に入ったヨノワールは、右手に携えた黒い塊を叩きつけるために、腰を下ろした状態からアッパーを放つように拳を振り上げる。
威力もタイミングも申し分ない一撃。この攻撃を相殺する術も、避ける術も今のブリムオンにはない。そう確信できるほどの会心の一撃だ。
しかし、ビートの思考がボクの行動の1個上を行く。
「ブリムオン!!『じゅうりょく』解除!!」
「なっ!?」
ビートの声と共に、このバトルフィールドにかかっていた重力が一瞬で霧散。共有化しているボクの身体からも一気に重さが消え、変な浮遊感を感じてしまう。
「リオッ!!」
その感覚に戸惑った一瞬の隙が、ブリムオンの回避行動を許す。
「まずっ!?」
じゅうりょくから解放されたブリムオンが、自身にサイコキネシスをかけて浮遊。右拳を振り切ったヨノワールのさらに真上へと飛び上がり、攻撃を避けた。
「『ムーンフォース』!!」
「リオッ!!」
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
真上を取ったブリムオンが、触手の先のムーンフォースを叩きつけんと振り回し、ヨノワールに向かって振り下ろす。この攻撃に対して、せめて防御行動をとろうと身体を反転させるけど、その頃にはすでに技を放つ態勢が整っており、回避も迎撃も間に合わない状況となっていた。
「取った!!ブリムオン!!」
「リ……オッ!!」
完全に無防備となったヨノワールの身体にめがけて放たれるブリムオンの渾身の一撃は、現状ブリムオンの放てる最高の技。これが決まれば間違いなくヨノワールは倒される。そしてそれを避ける術がない。だから、ビートは勝ちを確信して最後の攻撃を放ってきた。
だからこそ、ボクもこの瞬間が、一番隙が生まれると思って構えていた。
「ヨノワール!!お腹!!」
「ノワッ!!」
「なっ!?」
振り下ろされる触手に合わせお腹の口を大きく開け、触手の先についている光球をかみ砕くように顎を閉じる。当然そんなことをすれば、毛先についているムーンフォースは爆発し、咥えているこちらもダメージを受けてしまいかねない。
(だから、爆発しないように
ムーンフォースが爆発する前にポルターガイストの闇で包み込み、爆発のエネルギーを閉じ込める。これで爆発による事故も起きない。
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
「ブリムオン!!『サイコキネシス』です!!」
「リオ……ッ!!」
触手は止めた。
暴発も起きない。
そしてお腹の口で加えているから、逃げることも出来ない。
腹筋に力を入れながら、ヨノワールが右拳に溜めたポルターガイストを、ブリムオンに向かって叩きつける。
ビートもまずいと思い、この状況でも放てる技をすぐに判断して指示を出すが、ここまで来たらブリムオンの攻撃はもう間に合わない。ブリムオンがサイコエネルギーを放つ前に、ブリムオンの身体ど真ん中にヨノワールの拳が炸裂し、ブリムオンの身体を思いっきりビートの下まで吹き飛ばす。
「……終わった」
「すぅ……よし……」
目を閉じながら言葉を零すビートと、深呼吸をしながら共有化を解除するボク。
「ブリムオン、戦闘不能!!」
「……ですが、不思議と悔いはないですね」
「よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」
「……あなたと戦えて、よかったですよ。フリア」
急遽行われたビートとの対戦は、そんなビートの、らしくなく、けどとても心地いい小さな言葉と共に、終わりを告げた。
じゅうりょく
実機では主に命中率の増加のために使われますよね。催眠じゅうりょくが最たる例です。他には、アップリューのGのちからという技を強くするためでしょうか。どちらにせよ、マイナーの域は出ませんが、アニポケ時空ならもっと悪さできそうですよね。