【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

267 / 374
267話

「お疲れ様ヨノワール」

「ノワ」

 

 観客たちの歓声が鳴りやまない中、ヨノワールと軽くハイタッチをしながら喜びをぐっと噛みしめる。

 

 強敵ビートとの戦いはとてもつらく、けど楽しいもので、それだけに勝った時の達成感が凄く、ヨノワールとのハイタッチはとても心地いいものとなっていた。

 

「……ッ!?」

「ヨノワール!!」

 

 けど、そんな感傷に浸る前にヨノワールがバランスを崩したので、慌てて身体を支える。

 

 いつもなら共有化した時のダメージフィードバックが大きすぎて、むしろボクの方が支えられる側なんだけど、今回に関しては共有化前に受けたダメージが大きかったせいで、ヨノワールの方が体力を消耗していた。

 

「本当にありがとうね」

「ノワ……」

「うん、今はゆっくり休んで」

 

 ボクの方にもたれかかっているヨノワールにリターンレーザーを当ててボールの中へ。腰のホルダーに戻されたヨノワールは一度だけかたりと揺れた後に、そのまま動きを止めた。疲れからぐっすり眠っているのかもしれない。

 

「……いい勝負、でしたよ」

「ビート……」

 

 ヨノワールの動きを一通り見守ったボクは、次にボクへ声をかけてきた人に目線を向ける。その相手は、先ほどまで激闘を繰り広げていた対戦相手のビート。いつの間にかボクの近くまで歩いて生きた彼は、先ほどまで熱い死闘を繰り広げ、その瞳を煌めかせていた姿とはがらりと変わっており、いつものハイライトの入っていない瞳に逆戻りしていた。

 

 オンとオフの切り替えがはっきりしていると言ったらそれまでなんだけど、ちょっとこの寒暖差にびっくりしちゃう。

 

「ですが、このジムチャレンジ中にあなたに勝つことはついぞできませんでしたね……」

「ボクも、上を目指すために成長し続けているからね」

「成長し続ける……ええ、そうでしたね」

 

 瞳の光が消えたことによって、不愛想な態度が返ってきたその姿は、しかし見る人が見れば分かるくらいには少し柔らかく、そして決して対戦相手に対する尊敬が消えているわけではないことがうかがい知れる。

 

「でしたら、次こそはあなたの成長を上回って、完膚なきまで叩きのめしてあげますよ。なんせ、ぼくはこんな短期間でジムトレーナーからジムリーダーになった、才能あふれる人ですからね」

「あはは、それは否定できないかも」

 

 ビートの言葉に似が笑う意を返しながらも、決して否定できないボク。

 

 ビートもユウリと同じく才能にあふれたトレーナーの1人だ。もしこのままボクに対する執着心を消さないまま、ずっとポプラさんの下で特訓を続けたのなら、ボクのことなんてあっという間に追い抜くかもしれない。

 

(本当に、おちおち立ち止まってられないね、立ち止まる気はないからいいんだけどさ)

 

 後ろから明確に迫って来る才能の塊たちに、呆れ半分とやる気半分を込めた心の声を零すボク。これも、コウキの下に辿り着くための試練と考えれば、まだまだ立ち向かうことが出来る。

 

 そうやってボクが心を引き締めていると、目の前のビートもこれからするべきことをまとめて口にしていた。

 

「そのためにもまずは、メジャーリーグの順位をあげなくてはいけませんね。……いえ、それよりももっとやるべきこととして、ボクがジムリーダーとして活動することに問題がないということを、沢山の人に知らしめる必要がありましたか……」

 

 やれやれと言いたげに首を振りながらそう述べるビート。

 

 確かに、罠にかかっていたとはいえ、彼がジムチャレンジ中にしてしまったことに対するイメージと言うのは簡単に払拭することは難しい。今この場でのバトルは、ダンデさんが声をあげてくれたから実現することが出来たものの、こんな都合のいいことは何回も起きないだろう。となると、ビートはこれから自分の力を1から証明しなければ、この地でジムリーダーとして活動することが出来ない。実力主義であるこのガラル地方で、1から評判を取り戻す難易度は、とてつもないものだろう。だからこそ、ビートもこうやって頭を悩ませている。

 

 しかし、ボクにとっては、そんなビートの悩みは杞憂にしか見えなくて。

 

「大丈夫だよビート。キミはもう十分認められているからさ」

「は?何を言って……」

 

 

『うおおおぉぉぉっ!!!』

 

 

「っ!?」

 

 ボクの言葉に理解不能と言った顔を浮かべながら返してくるビート。しかしそんな彼の言葉を遮るようにして、会場の声が爆発したかのように響き渡る。

 

 前兆もなく急に大きくなった歓声に、顔をしかめながら耳を塞ぐビート。度重なる大会での経験によって、ボクはもうこの歓声の大きさに慣れてしまっていたけど、今まで表に出ることなく、ポプラさんの下でずっと特訓してきたビートにとって、この量の歓声は経験したことの無いそれになるだろう。こういう反応も納得だ。

 

 それが、自身を称えてくれるものなら、なおさらに。

 

『かっこよかったぞビート選手!!』

『いい試合だった!!さっすがポプラさんの後釜だ!!』

『新しいジムリーダーかっこいい!!』

『過去に何かあったなんか関係ない、俺はもっとお前のバトルが見たいぞ!!』

 

「……」

「ね?認められてるでしょ?」

 

 ガラル地方はどこまで行っても実力主義だ。勿論最低限守らなくてはいけないところはあるけど、それ以上にいい試合、感動する試合が出来れば、それだけでここでの評価は一気に上がる。そして、今回ビートとボクが行ったバトルは、そんなガラル地方の人間が全員認めるにたる試合内容だった。

 

 ならば、この反応はボクからしてみれば当たり前のことだった。

 

「これは……」

「それだけ今回のバトルがみんなの心に刺さったってことだよ。大丈夫、まだビートを疑う声は一定数残ることにはなるだろうけど、その声も、今日バトルを見に来てくれた大多数の人がかき消してくれる。後は、ここからビートがどこまで行くか次第だよ」

「……」

 

 未だに観客からの歓声に呆気に取られているビートには、正直ボクの声が届いているのか怪しい。けど、これ以上の声掛けは必要なさそうだと感じたボクは、身体の向きを変えて、バトルフィールドの出口へと足を向ける。

 

(この感じだと、今日の主役はビートっぽいね)

 

 新しいジムリーダーの記念すべき初戦。結果だけ見れば敗北という残念な結果ではあったものの、チャンピオンリーグと言う大舞台を初戦にし、そのうえでここまでの激闘を繰り広げたというのは少なくないインパクトを与えてくれている。

 

 この試合をきっかけに、きっとビートはどこまでも上に伸びていくことだろう。と考えれば、今日の主役は勝ったボクではなく、新しいスタートを切ったビートであるべきだ。

 

「脇役はさっさと退場しないとね」

 

 ボクも今日のバトルを勝ち切った余韻に浸りたい気持ちがあるけど、それ以上に、これからのバトルの方が気になって仕方がない。

 

「あと……3回……!!」

 

 ここまでたくさんの人と戦って、たくさんの人に応援されて勝ち上がってきた。

 

 全てはコウキが待っている場所に辿り着くため。あの時交わした約束を、今度こそ守るため。

 

「次は、ルリナさんだ……」

 

 バトルコートから廊下に入り、真っ暗な道で目を閉じ、胸に手を当て深呼吸。そこには、ユウリからもらい、マクワさんに作ってもらった、おこうのかけらからつくられたネックレス。そこから漂う香りが、ボクの心を少しだけ落ち着けてくれる。

 

「ここまで来た。ユウリたちも応援してくれている。……うん、行けるよ、ボク」

 

 自分で自分に声をかけ、鼓舞をする。

 

 ここから先は、もっと過酷な戦いになるから。

 

「だからみんな……応援してね」

 

 ユウリたちに向け、小さく言葉を零しながら、ボクはゆっくりと足を動かし始める。

 

 見え始めてきた目標への道筋に、ボクの拳は自然と握りしめられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ビート選手~!!』

『この調子でメジャーリーグも頑張れ~!!』

『なんならおまえがチャンピオンまで駆け上がれ!!』

『後でサインくださ~い!!』

 

「……」

 

 360°。全方向からぼくに向けられる言葉の嵐。それはどれもぼくを称えるもので、正直そのどれもを簡単に信じられない自分がいた。

 

 ぼくは幼いころから1人だった。

 

 エスパーポケモンへの適正から、幼いころからその手のトラブルが絶えず、そのせいで親元からも離れることとなり孤児院へ。当然そんな経緯と言うこともあって、孤児院でも孤立したぼくは、そこで更に孤独な生活を送っていた。

 

 周りからの目は冷たく、孤児院に勤めている大人からも良い目では見られず、ぼくはただ自分の心を守るために他者を弾き続けた。

 

 そんなぼくに転機が訪れたのは、ローズ委員長が孤児院に来た時だった。

 

 孤児院で1人で孤立したぼくに声をかけ、ポケモンを授けてくれ、そして引っ張ってくれたローズ委員長。

 

 それまで、誰かに認められ、そして誰かに必要とされることがなかったぼくは、初めて自分の力を認めてくれた人が現れたことがとてつもなく嬉しくて、無意識のうちにその手を取っていた。

 

 心の奥から救われた気がした。心の奥から喜びの感情があふれた。誰もとってくれなかったぼくの手を、こんなにも簡単にとってくれた委員長のことを、ぼくはすぐに信じ、そして心酔していった。

 

 その手は、ずっと孤独だったぼくからすれば、麻薬にも等しい悪魔の誘いだったのだから。

 

(まぁ、結果は……御覧のありさまでしたが……)

 

 あの頃の自分は、何も知らないがゆえに、あの時簡単にぼくの手を取ったのが、ぼくのことを都合のいい駒としてしか見られていなかったのだということに気づかなかった。……いや、もしかしたら、その時はまだぼくに期待をしていてくれたのかもしれないけど、少なくとも、ラテラルタウンの1件が起きるよりも前には、ぼくのことはとっくに見限っていたはずだ。でなければ、あの日、あの場所で、ぼくの名前を全く覚えていないような言葉を零すはずがないのだから。

 

 結局ぼくは、いつまで経っても1人のままだった。

 

 頼りにしてくれていると思っていた人はそんなことなくて、その人の下についていた人には結局疎まれて、ぼくは仮初の関係を真だと勘違いして、ただただ踊っていただけだった。

 

(そんなぼくが、こんな声をかけられるなんて……)

 

 どん底に1人でいたぼくが、勘違いで踊っていたぼくが、こんな沢山の人にこんなにも賞賛される未来があったなんて、どうやって想像できるのだろうか。

 

(これも全部、あの2人のおかげ……いえ、あの2人のせいですね)

 

 ぼくをそこから拾い上げ、引っ張ってくれた2人の人間。

 

 1人は、どうしようもなくお人好しで、一度信じると決めたら何が何でも信じ切る厄介な人。

 

 1人は、どうしようもなく変にひねくれているせいで、とてつもなく面倒なおばあさん。

 

 2人とも、ぼくがいくら言葉を返そうとそんなこと気にせずにずかずか迫って来る恐ろしい人たちだ。そんな人たちのせいで、ぼくはもう逃げることの出来ないところまで引っ張られてしまった。

 

(本当にまったく……厄介なことをしてくれましたよ……)

 

 なんて言葉を口にしながらも、ぼくの表情が緩んでいくのを感じる。それはまるで、凍ってしまっていた心が少しずつ溶けていくようで。

 

「本当に……こんな世界に引っ張られたら……ここから離れるなんて……」

「リオ」

「わっぷ!?」

 

 ここまでの出来事と、今この場で起きたことのギャップに、内から込み上げてくるものがあり、認めたくはないけどそれが原因で気持ちが少しあふれ出そうになる。

 

 そんな感情に対して、まるで蓋をするかのように頭の上からかぶせられるものが1つ。

 

 頭をくしゃくしゃにしながら撫でてくるそれは暖かくて心地よくて。しかし、同時に髪型が崩れる不快感も感じてしまったため、対反射的にその手を外すように腕を動かす。

 

「は、離してください!!全く……あなたまでぼくをそういう扱いするのですか?」

 

 ちょっとしたやり取りの末、ようやくぼくの頭上からどかすことの出来た物体の正体は、ぼくの最初のポケモンであるブリムオンの触手。ぼくが孤児院から出た時からずっと一緒にいる一番の相棒。そんな彼女が、ぼくの頭を一通り撫で終えて満足したのか、とても晴れやかな笑顔を浮かべながらぼくを見つめていた。

 

「リオ~……っ!?」

 

 そんなブリムオンが、嬉しそうにこちらにすり寄ってきたかと思ったら、次の瞬間には苦しそうな表情を浮かべながら態勢を崩す。当り前だけど、先ほど激闘を終えたばかりのブリムオンは、まだまだ本調子なんかじゃないし、なんなら今すぐにでもジョーイさんに見てもらわなければならない状態のはずだ。なのにこうやって顔を出して頭を撫でてきたあたり、自分の身体を無視してでもこういう事をしたかったらしい。

 

「何やっているんですか全く……」

「リオ~」

 

 崩れそうになっているブリムオンを支えながら窘める。

 

 どうやらブリムオンは、今のこの状況と、ぼくの心境の移り変わりが嬉しいみたいで、身体が痛むはずなのに、それでも笑顔を向けながらこちらに身体を預けて来る。その姿に、先ほどまで上がってきた気持ちが下がっていき、急に落ち着きを取り戻した自分がいることに気づく。

 

 同時に、落ち着いたところで自分が今からどうするべきかなのか。何を目標に頑張りたいのかが自然と頭に浮かんでくる。

 

「リオッ!」

「はいはい、分かっていますよブリムオン。ここまで来たのなら、絶対にやってやりますよ」

 

 その相手は、先ほどまでぼくと激闘を繰り広げていたライバル。

 

 ぼくをこの場所まで連れてきた元凶の1人。

 

「ぼくをこんな目に合わせてくれた人なんです。たとえなんと言われようとも、どこまでも追いかけて絶対に目に物を見せてやりますよ」

「リオッ!!」

「……その時まで、力を貸してくださいね。ブリムオン」

 

 歓声響くバトルコートの中心で、ぼくは新しい目標を見据えながら、相棒の身体をそっと撫でる。

 

(いつか必ずこの恩は返す。だから、それまでぼく以外に負けることは許しませんからね。フリア)

 

 ブリムオンを撫でながら見つめる先は、フリアが退場していった出口の廊下。

 

 今は遠いその背中に必ず追いつくために、明日からまた気合を入れようと、心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そういえば、ぼくがこんな大立ち回りをしたら、絶対にあの人がどこかしらで乱入してくると予想していたのですが……あの人はどこへ?……いえ、ばあさんは気にする必要は無いと言ってましたし、今回もそんなばあさんの考えが当たっただけということにしておけばいいか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、凄かったなフリアとビートのバトル!!これが0回戦って信じられないぞ!!」

「うん、2人とも本当に凄かった。どっちも私と戦っていた時よりももう強くなってるんだもん」

「それ以上にビートの成長具合の方が凄か。もともと強いのは知っとったけど……ポプラさんの下での特訓が凄く表に出ていたと」

「わたしたちはそのビートって選手のことよく知らないのだけど、そんなに注目選手だったの?」

「ああ。なんてったって、リーグ委員長であるローズさんからの推薦を貰ってる人だし、優勝候補の1人って言われていたし、実際にオレは1回完膚なきまでに叩きのめされたしな」

「ホップが手も足も出なかったのか……それはやばいな……」

「今はそんなことないだろうけどな!!……って、ジュンの奴、オレの話を聞かずにもう自分が闘う事しか考えてないぞ……」

 

 シュートスタジアムはメインロビー。

 

 フリアとビートのバトルを見終えた私たちは、観客たちがいなくなり、だいぶ静かになり始めた時間帯を狙って、ロビーに備え付けられたスペースにみんなで腰を下ろして話していた。

 

 毎日毎日大騒ぎとなっているこのシュートスタジアムだけど、さすがに試合がない時は落ち着きを取り戻している。今となっては私たちもかなりの有名人なので、こうでもしておかないとスタジアム側に迷惑がかかってしまうからという理由で、こうやって時間をずらして話しているというわけだ。

 

 話の内容はもちろん先程の試合。あれからそこそこの時間がたち、もう夕暮れに差し掛かっているくらいだけど、それでも話が尽きることないくらいには、私たちの中でも興奮はなかなか覚めていなかった。

 

「フリアのエルレイド、絶好調だったよな。あんなにノリノリなのは初めて見たぜ」

「活躍という点ではブラッキーも頑張ってたわよ?不利な相性でも懸命にバトンを繋いでいるのは偉いと思うわ」

「あの辺はあたしも参考にしたか。ビートがメジャーリーグに入るってことは、これからも戦う機会があると思うけんね」

「むしろオレはビートのニンフィアに驚いたぞ。あいつ、昔はイーブイ持っていなかったはずだから、ジムリーダーになってからであった子だろ?なのに、この短期間であそこまで仕上げてるのは本当に凄いぞ」

「『ハイパーボイス』……凄い威力だったもんね」

 

 話せば話すほど出てくる今日の見どころ。それは私たちの心を強く刺激し、今すぐにでもバトルをしたいという気持ちにさせてくれるほどのものだった。

 

(と言うよりも、速くバトルを重ねて特訓をしないと、置いていかれそうな気がしちゃうよね……)

 

 大会という大きな経験値を得られる舞台は、それだけフリアの背中をどんどんと押し上げていく。

 

 フリアの事情を知っている身からすればとても嬉しいことに変わりは無いのだけど、フリア背中を目指している自分としては、その背中がどんどん離れている感覚も同時に覚え、若干の焦りも私の心に芽生え始める。

 

(……やっぱり、今からでもワイルドエリアに行って、ちょっとくらい特訓した方が……)

 

「大丈夫よユウリ」

「え?」

 

 そんな少し危機感を覚えていた私の頭にそっと下ろされる優しい手。急に声をかけられながら降ろされたその手の持ち主に視線を向けると、そこには手つきと同じく、とても優しそうな笑顔を向けているヒカリの姿があった。

 

「焦らなくても、あなたもちゃんと前に進めているわ。ユウリからみてフリアが離れて行っているように見えるのは仕方ないけど、私からすればまだまだ追いつける範囲よ」

「……それは、過去の経験談から?」

「まあね。なんだかんだ、とても距離が空いているように見えていたのに、フリアもコウキに追いつき始めているように見えるし、意外と何とかなるものよ。気楽に行き過ぎるのも良くないけど、抱えすぎるとそれこそ昔のフリアみたいになるわよ?」

「慰め方がすごーく辛辣……」

「当たり前よ。どれだけ心配させられたと思っているのよ全く……」

 

 明らかに不満顔を浮かべながら、けど今のフリアを見て安心感も覚えているのか、どこか柔らかい表情を浮かべているヒカリの姿は、それだけでフリアとの信頼関係の深さを窺い知ることが出来た。

 

(分かってたことだけど、ちょっと羨ましいな)

 

「ん~?」

 

 そんな関係にちょっとだけ嫉妬をしそうにしていると、私の視線に気づいたヒカリが1度私に首を傾げた後に、その表情を一気に微笑みに変えていく。

 

(なんだろう、すごーく嫌な予感……)

 

「安心してユウリ!フリアは盗ったりしないから!!」

「ななっ!?」

「ダイジョーブダイジョーブ!!」

「ヒカリがそういう時ってだいたい大丈夫じゃないの!!」

「まぁまぁまぁまぁ、そう言わずに~!!」

「ヒカリ~!!」

 

 そしてそこから始まるヒカリのいじり。

 

 もはや定番となってしまっているこのやり取りに、ホップとジュンは首をかしげ、マリィはヒカリと同じような表情を浮かべるのが恒例となっていた。正直とても恥ずかしいし、出来れば控えて欲しいと思う気持ちは強いのだけど、その気持ちのどこかに、このやり取りを楽しんでいる自分もいて。

 

 その気持ちを自覚する度に、「ああ、やっぱり私はフリアが好きなんだな」と改めて思い知る。

 

 同時に、心の奥が暖かくなるような気がして。

 

「あ、みんな!!おまたせ!!」

 

 そんな時に私の鼓膜を叩く、柔らかい声。

 

「ほら、来たわよユウリ」

「……うるさいよ、もう」

 

 ヒカリに小言を返しながら、その声に私は向き合う。

 

 私の好きな、そしてこれからもっと大変なバトルをする人へ。

 

(頑張ってね……フリア……!!)

 

 もう応援することしか出来ない私は、せめて全力で応援しようと誓い、手を振りながら迎え入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビート

彼の起こした遺跡事件は、ポケマスの話によると一応ガラル全土に広まっているらしいですね。ガラル地方出身である、ボタンさんからその話が効けるみたいです。犯人の名前はちょっとぼかしているみたいですが……この様子だと、やはり名前も広がっていそうですよね。それでもジムリーダーとして認められているあたり、心変わりももちろんですが、実力主義なガラル地方の土地柄も見れますよね。




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。