ボクが声をかけると同時に投げたボール。それは空中で弾ける音を奏で、その中から1人のかわいらしいポケモンを吐き出した。
「マホッ!!」
出てきたのはマホイップ。雨が降る中、それでもかき消されることの無い強力な、しかしそれでいてくどくないさわやかな香りを漂わせながら現れた彼女は、元気な声を響かせながら前に視線を向けていく。
その視線の先には相変わらず飛び回っているカマスジョーの姿があり、現在進行形で通った後の軌跡が増え続けていた。
「マホイップ……はたしてその子でわたしの速度に追いつけるのかしら?」
ボクの2人目のポケモンを見てそう言葉を零すのはルリナさん。相変わらず腕を組んで、自信満々に言うその姿は威厳があふれている。けど、そんな姿に臆することなく、ボクはマホイップと共にしっかりと前を見据える。
「マホイップ!!まずはクリーム行くよ!!」
「させないわよ!!『アクアジェット』!!」
準備が整ったと同時にボクが指示をするのは、マホイップお馴染みのクリーム展開。やっぱり、マホイップがその力を十全に発揮するためには、何においてもこれをしなければ話が始まらない。基本スペックが低いわけではないのだけど、やはりマホイップの機動力の重要なファクターとなるためこれだけは何とかする必要がある。
(何よりも、これがないとカマスジョーを止められないからね……)
勿論、カマスジョーの攻撃はとてつもない速さを誇っているため、このクリームを撒くという動作の途中でさえもカマスジョーの連撃がマホイップを襲っていく。しかし、エルレイドの時と違うのは、エルレイドよりもマホイップの方が少しの差とは言え物理防御面は優秀であるという点と、クリームをばらまいている最中に攻撃しているせいで、カマスジョーの身体にもクリームがくっつくため、少しずつだけど攻撃速度が落ち始めているところだ。
結果、徐々にカマスジョーの動きが鈍くなっていく。
「カマスジョー!!振り払いなさい!!」
「シャッ!!」
しかし、ルリナさんもこの状態を看過することなんてせず、アクアジェットで突き進んでいる合間に身体をひねって回転させることで、付着したクリームを定期的にはがすことで速度を減少させないように行動していた。しかも、回転することによって、ライフル弾のような貫通力も備えてしまったため、威力はさっきよりも跳ね上がってしまっている。
「成程、こういう回転つければさらに威力が上がったのね……ありがとうフリア。あなたのおかげでさらに強くなれそうだわ!!」
「そんなつもりはないんですけどね……」
回転をつけることによって威力をあげたカマスジョーのアクアジェット。まさかの強化に思わず声が漏れそうになるけど、しかし回転をつけるのに夢中になっていた瞬間と言うのは確かに存在していたので、その隙を少しでも有効活用するために、マホイップの周りにクリームの海を広げていく。
(この作戦を遂行するためには最初が肝心だ。とにかくクリームを大量に展開しないと話にならない!!)
カマスジョーを止めるプランと言うのは頭の中に2つ思い浮かんでいた。
1つはモスノウの力を借りた展開だ。
猛烈なふぶきを起こすことによって、雨を一時的に停止し、カマスジョーの動きを落とす方向性の戦闘だ。すいすいをつぶす方向性であるこの行動は、運が良ければカマスジョーをこおり状態にし、一発でカマスジョーを機能停止にする可能性すらある。しかし、今回こちらをボクが選ばなかったのは、モスノウが物理防御に不安があることが理由だ。
物理防御が少し低いとはいえ、根性のあるエルレイドが一瞬でやられたというのがどうしても頭に引っかかってしまった。そんな猛攻の中、エルレイドよりも脆いモスノウでは、間違いなく最初の攻撃で落とされてしまう。だからこそ、ボクはもう1つの、マホイップの力を借りプランに切り替えた。
そんなマホイップで一体何をするのかと言うと、目標自体はモスノウの時と一緒で、先程見せたように、身体にクリームを付着させて、相手の身体の自由を奪う作戦だ。モスノウと違う点は、雨を止めるのではなく、カマスジョーの動きそのものに働きかける点。
(追いかけられないのなら、向こうを落とすしかない。けど……簡単にはさせてくれない……)
しかし、ルリナさんは既にこの行動に対する解答として、回転をかけるという行動に出てしまっている。そのため、生半可な付着では一瞬でクリームを弾かれてしまい、意味をなさなくなっていた。だからといってクリームを付着するのを辞めるという訳にはいかないから、どうにかしてクリームで足を止める必要がある。
「マホイップ!!潜りながら回避して、そこからクリームもっと展開!!」
「マホッ!!」
回転しながら飛び回るカマスジョーが突っ込んでくるのを、クリームに潜って泳ぎ、何とかカマスジョーの軌道から逃れることによって回避。回転によってクリームがえぐれるように削りとられ、飛び散っていく様は、物が違えばちょっとお見せできない物にすらなっていた可能性もある。
しかし、それでもマホイップの回避が間に合い、そしてそこからクリームを増やす余裕が生まれ始めていた。
理由は簡単で、カマスジョーが回転をかけることによって貫通力は増しているものの、回転してるからこその視界の動きにまだ慣れていないせいで、若干小回りが効かなくなっているからだ。さっきルリナさんが言っていた通り、ルリナさんとカマスジョーにとって、アクアジェットのこの使い方は初めてで、まだ慣れていない状態。そんな中急にこんなことをして完全制御なんてできるわけが無い。実際、これが原因でカマスジョーの動きが少しだけ雑になっている。勿論このことはルリナさんも気づいており、今も向かい側で少しだけ難しい顔を浮かべているのがその証拠だ。となれば、この動きの雑さの修正や、対処は程なくされるはず。けど、それまでは僅かにラグが存在するはずだ。
突くなら、そこしかない。
「『とける』!!」
「マホ~」
「ッ!?カマスジョー!!回転をやめて速度を重視しなさい!!」
「シャッ!!」
回転するカマスジョーを避け、僅かに生まれた隙。そこを確認したボクは、マホイップにとけるを指示。一瞬で物理防御をぐーんとあげるこの技は、物理主体で戦っているカマスジョーにとっては最もされたくない技だ。
これを見たルリナさんは、今は回転よりも速度が大事と判断し、とにかく突撃することを指示した。この指示に従ったことによってカマスジョーの動きは加速され、先程までの誰も追いつけない高速の域に再び返っていき、とけている途中のマホイップに向かって連撃を浴びせていく。
「マ……ホ……ッ!!」
防御をいくら上げているとは言っても、さすがに一瞬のうちに何十連撃も叩き込んでくる攻撃は痛い。受けているマホイップも、思わず苦悶の声を漏らしている。しかし、そんな連撃も、ある瞬間でピタリと止んでしまった。
「捕まえた!!」
「っ!!」
身体に水をまとったまま空中で動きを止めるカマスジョー。その身体には、地面から伸びた無数のクリームの触手。
攻撃を受けながらもクリームをばらまいていたマホイップの行動が、カマスジョーの動きを徐々に削っていき、遅くなった一瞬の隙を着いて触手でキャッチ。捕まえるのが不可能と思われていた高速の魚雷をついに捉えることが出来た。
だが、安心するのはまだはやい。
(まだ、火力が足りない……)
ようやく捕まえることは出来たものの、問題はこれだけではカマスジョーは倒せないと言うこと。
カマスジョーは未だにダメージを負っておらず、そして攻撃性能が高い方ではないマホイップではとてもじゃないけど一撃で落とし切るのは難しい。となると、倒すには連続で攻撃を当て続ける必要があるのだけど、カマスジョーにはこの状態からでもクリームを弾く方法がちゃんとある。それまでにカマスジョーを倒すには、時間が足りず、かといって一撃で倒すにしても、せめてめいそうを2回はしておきたい。
(カマスジョーを押しとどめるのも無理。倒し切るのも無理。どちらにしたって、このカマスジョーを倒すのなら、もう一度クリームで捕縛する時間を作らないとだめ。なら、今ここでするべき最適解はこれ!!)
「マホイップ!!カマスジョーを空に向かって投げて!!」
「マホッ!!」
「っ!?カマスジョー!!『アクアジェット』の準備をしなさい!!」
「シャッ!?」
カマスジョーを捉えているクリームの触手を動かして、思いっきり空中に投げ捨てるマホイップ。身体を固定されている状態から急に放り投げられたカマスジョーは、まさかの扱いに受け身を取るのが精いっぱいで、少しだけアクアジェットに移行するのが遅れてしまう。
そんなわずかの隙をついて、ボクもマホイップに指示を出す。
「マホイップ!!『とける』と『めいそう』!!ありったけ!!」
「まずい、止めなさい!!カマスジョー!!」
空中で少しだけバタバタしていたカマスジョーが態勢を立て直し、アクアジェットの状態に移る前に、マホイップは自身の周りをクリームで包み、ドーム状にしたうえで、その中でめいそうととけるを交互に行っていく。この姿を見て危機感を感じたルリナさんは、カマスジョーを更に急かし、その緊張感が伝わったカマスジョーもルリナさんの感化されてすぐさま水を纏っていく。
「シャッ!!」
そのまますぐに尾ヒレを回して急発進。クリームのドームに引きこもってしまっているマホイップを止めるべく、再び音速に迫る勢いで走り出したカマスジョーは、少しでも速くマホイップの下に攻撃を届けるために回転も追加。再びライフル弾と化し、そのままクリームのドームを突き抜けて中にいるマホイップに向かって突撃を行った。
「潜行!!」
「マホッ!」
これに対して、すぐさまとけるとめいそうを中断し、カマスジョーが突っ込んで来るよりも速く地面のクリームの中に潜り込んだマホイップは、間一髪のところでアクアジェットを回避。そのままクリームの中を移動して、カマスジョーから一番離れたところに顔を出した。
「もう一度クリーム!!」
そこからさらにクリームを延ばしていき、地面にどんどんマホイップの領域を展開していく。
「追いなさいカマスジョー!!これ以上あのマホイップに『とける』と『めいそう』をさせてはダメよ!!」
「シャッ!!」
「マホイップ!!準備はいい?!」
「マホッ!!」
クリームの中で行われていたため、いったいマホイップがどれだけ行動できたかはわからないけど、ボクの見た感じ、あの短期間でとけるを1回と、めいそうを2回を積むことが出来たのではないかとおおよその当てをつけておく。
(最初の『とける』と合わせて8段階……うん、カマスジョーを倒すだけならこれでも……!!)
カマスジョーは素早さと攻撃力がとても強力な反面、耐久面に難がある、いわゆる高速アタッカーと言われるタイプのポケモンだ。この先を考えるのならもうちょっとめいそうをしてもいい気はするけど、十分妥協できるラインではある。特に、先ほども言ったようにカマスジョーのようなポケモンを相手するのなら十分の積み具合だ。
これがポプラさんなら、もう1回ずつは積めていそうなのが、自分のまだまだ甘い所。
「クリーム!!」
「マホッ!!」
「突っ切りなさい!!」
「シャッ!!」
回転しながら突っ込んでくるカマスジョーに対して、マホイップがクリームの塊を作り出して投げつける。これに対してカマスジョーは回転をさらに強くして、クリームの塊を一気に貫通して来ようと画策。今までで一番の速度と貫通力をもって繰り出された子のアクアジェットは、一瞬のうちにクリームを貫通して通り過ぎていく。
(さすがの破壊力と速度……けど!!)
「マホイップ!!」
「マホッ!!」
「っ!?後ろにいない!!いつの間に!?」
しかし、クリームを貫通した先にはマホイップはおらず、すでに遥か彼方まで移動していたマホイップがボクの声を合図に手を広げる。すると、先ほどカマスジョーが貫いたクリームの塊が爆発四散。あたりに散らばっていき、無差別にいろんなものへと取り付いて行く。
そのとりつく先にはもちろんカマスジョーもおり、カマスジョーはこれを避けるのに必死となり、軌道が不安定となって速度が落ちていく。
その様を見て、ルリナさんの表情が焦りに染まった。
「カマスジョー!!速度を落としてはダメ!!」
「遅いです!!マホイップ!!」
「マホッ!!」
速度が徐々に落ちていき、マホイップでも十分補足できるくらい遅くなったカマスジョー。その瞬間に、広げていた両手をきゅっと閉じると、散らばっていたクリームがカマスジョーを起点にして集まっていき、再びカマスジョーをクリームの中に閉じ込めることに成功した。
「カマスジョー!!すぐに回転を━━」
「絶対に逃がしちゃだめだよ!!マホイップ!!『アシストパワー』!!」
「マホッ!!」
2回目の捕獲。しかし、先ほどと違うのはマホイップの成長具合。
さっきはマホイップの火力が足りなかったからこそ、一撃でカマスジョーを落とすことが出来ないから諦めたけど、今回は違う。とけるとめいそうを2回ずつ行うことが出来た今のマホイップなら、十分カマスジョーを落とすに足る一撃を放つことが出来る。
マホイップからクリームの塊に向かって放たれたピンク色の波動は、カマスジョーが飛び回っていた以上の速度をもって衝突。ぶつかると同時に轟音と爆風をまき散らし、カマスジョーをルリナさんの足元へと飛ばしていった。
「シャ……ァ……」
『カマスジョー、戦闘不能!!』
当然一撃必殺。飛ばされたカマスジョーは目を回し、ここでリタイアとなる。
「ありがとうカマスジョー。戻って休みなさい」
「良いよマホイップ!!このまま攻めよう!!」
「マホッ!!」
倒れたカマスジョーに声をかけ、ボールに戻すルリナさんを見ながら、ボクはマホイップに労いと激励の言葉をかける。
(よし、うまくクリームが機能している!!さすがにポプラさんまでの域には及んでいないけど、少なくとも武器の1つとしては働いている!!)
以前は離れたクリームのほんのちょっとを動かすのが精いっぱいだったけど、今となってはその操作精度もかなりのものとなり始めている。
着実に感じる自分の成長。それが凄く嬉しく、同時にボクの自信につながっていく。
「やるわね……ポプラさんの扱っていたその戦法をしっかりと自分のものにしているなんて……」
「ボク個人としては、まだまだ納得していないですけどね。まだまだ成長していきますよ!!」
「マホッ!!」
「ふふ……いいわね。それでこそ最強の挑戦者!!」
ボクのマホイップを見て、冷や汗を流しながらも笑顔を絶やさないルリナさん。
落ち詰められている自覚はあっても、それ以上にこのバトルを楽しんでいるというのが伺い知れるその表情に、思わずボクも頬が緩んでいく。
「でも、まだまだ負けないわ!!グソクムシャ!!」
「ムシャッ!!」
とにかく楽しそうな笑顔を浮かべたまま、カマスジョーを懐に戻したルリナさんは、最初に繰り出し、そしてききかいひによって手持ちに戻ったグソクムシャを再び場に出す。
「……うん、ちょっと今はこうするしかないわね」
と同時に、空を見上げながら何かをポツリとこぼすルリナさん。その姿の意味がよく分からず、少しだけ首を傾げてしまうボクだけど、そちらに思考を回すよりも、グソクムシャが出てきたことによって間違いなく行われるであろうあの技に対して準備をするべく、マホイップに警告を飛ばす。
「マホイップ!!」
「マホッ!!」
「『であいがしら』!!」
「ムシャッ!!」
やはり飛んできたであいがしら。自分がボールから飛び出した瞬間にしか発動することが出来ないという制約の代わりに、圧倒的速度と威力を持って相手に襲いかかるこの技は、グソクムシャんの最も得意とする技だ。下手をすれば、この一撃だけで吹き飛んでしまうポケモンも存在するレベルの攻撃は、しかしとけるを2回行って、防御力をしっかりと高めているマホイップにとっては、全然苦になるものでは無い。クリームの盾を展開して防御姿勢を取るマホイップに対し、クリームを無理やりつきぬけて、全身クリームまみれにしながらも迫ってきたグソクムシャは、そのままクリームの奥に隠れていたマホイップに、その大きな右腕を叩きつけ、強烈な一撃を与えてくるものの、タイプ相性もあってか、今のマホイップには全くと言っていいほどダメージになっていなかった。
「『ドレインキッス』!!」
「マホ~」
「っ!?離れなさい!!」
むしろ、相手の体力を奪う技を使えるマホイップにとっては、今のグソクムシャはありがたい養分のようなものだ。先ほど受けたダメージは、このドレインキッスで回復することが出来る。
「ム……シャッ!?」
「逃がさない!!」
「……本当に扱いが上手いわね」
この攻撃を受けてしまえば、今までしてきたことが水泡に帰してしまう為、慌てて回避を選択するルリナさん。しかし、であいがしらをするために無茶をしてしまったのが祟り、全身をクリームだらけにしている今のグソクムシャの動きは、マホイップがちょっとクリームを操作するだけで簡単にその動きをキャッチできてしまう。
あっという間に行われる拘束に、グソクムシャも抜け出そうと必死に身体を動かしてはいるものの、カマスジョーとの戦いで散々クリームを展開しまくったおかげで、少々振り払われようとも、その上からさらにクリームがかぶさって、もうどうしようもない状況になってしまっている。
1度ききかいひも発動してしまっているせいで下がることも出来ないし、体力が半分も切っていることがバレてしまっている。そんな状態のグソクムシャが、今のマホイップの前に無防備な状態で晒されてしまえば、正直このバトルは決まっているようなものだ。
「マホイップ!!『アシストパワー』!!」
「マッホッ!!」
再び放たれるピンク色の光は、先程カマスジョーに叩きつけた時と同じ威力を持ってグソクムシャにも襲いかかり、体力をかなり消費していたグソクムシャをも、一撃の下吹き飛ばしていく。
「ム……シャ……」
『グソクムシャ、戦闘不能!!』
「よし、いいよマホイップ!!」
「マホッ!!」
マホイップによる華麗な2連撃破。予めクリームを展開できたことや、エルレイドが削ってくれていたこともしっかりと効いたが故のこの連勝は、確実に流れをボクの方に傾けてくれていた。
(凄くいい調子だ……けど、ルリナさんはこんなところで終わる人じゃない)
正直今のマホイップは簡単には落ちない。下手をすればもう詰み状態と言ってもいいレベルのそれだ。しかし、これだけで詰んでしまうような人が、このガラル地方のトップに名を連ねられるわけが無い。
必ず何かがある。そう思いながら、ボクとマホイップは警戒心を上げていく。
「ありがとう。ごめんなさいグソクムシャ。こんな役割を任せてしまって……でも、あなたのおかげで何とかなりそうよ」
そんなボクたちの視線を受けたルリナさんは、グソクムシャを戻しながら空を見上げる。すると、先程までしとしとと降り注いでいた雨がピタリと止み、空に青色がもどり始めていた。
「雨が上がった……そっか、ルリナさんはこれを待って……」
「いいタイミング。もう一度行くわよ!!ぺリッパー!!」
「ペリ~!!」
雨が止むと同時に現れるぺリッパーが空に声を上げることで、晴れていた空がまた一転。再び雨の降るスタジアムへと変わっていく。
ポケモンが変えた天候は、1部の伝説と言われるポケモンが起こしたものを除けば、基本的に時間経過でおさまる。そして、その時間は延長することは出来ない。つまり、消費した時間をあまごいやあめふらしによって持続させるというのが出来ないという事だ。それでも雨を持続させたいというのなら、雨が切れた瞬間にまたあまごいなりあめふらしをし直す必要がある。
正しく、今回のように。
「雨が止むタイミングを完璧に把握してる……」
「わたしはみずタイプのエキスパートなのよ?これくらいはできて当然よ。『とんぼがえり』!!」
「っ!!逃がさないで!!『アシストパワー』!!」
そして雨を降らせるだけ降らせたぺリッパーは、再びルリナさんの方へ帰っていく。このままその行動を許せば、この雨が止んだ時にまた雨を展開されてしまうので、ここでぺリッパーを倒すべく、フルパワーで攻撃を行う。攻撃が当たればぺリッパーを落とせるし、たとえ当たらなくても、とんぼがえりのためにマホイップに近づくのであれば、クリームで捕まえることが出来る。そう思ってのこの行動だ。
「地面を蹴りなさい!!」
「なっ!?」
しかしぺリッパーが地面のクリームの塊に対して技を放ったことによって、ボクの思惑は崩れる。
地面を蹴り、塊をアシストパワーに放つことで攻撃の速度をほんの少し緩め、その僅かな隙をついて戦場を離脱。マホイップにダメージを与えることではなく、無傷でこの場を脱出するのが目的であるぺリッパー側の考えを失念していたボクのミスによって、まんまとぺリッパーが手持ちに戻っていく。
「よく帰ってきたわ。おかげで、わたしの攻めはまだ止まらない!!」
「気をつけてマホイップ。次、来るよ!!」
「マホッ!!」
「ふぅ……行くわよ!!この状況を打開させるわ!!」
ぺリッパーが帰り、雨が降る中、ルリナさんの次のすいすいポケモンが繰り出された。