【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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270話

「行きなさい、アズマオウ!!」

「マ~ウ」

「アズマオウ……」

 

 勢いよく足を振り上げ、野球選手も見惚れるだろう美しい投球フォームから繰り出されたのはアズマオウ。カマスジョーと同じくすいすいを特性に持つこの子は、しかしカマスジョーと違って、少し物理攻撃が得意なくらいで、能力値的にはバランスよく整っており、その分素早さが少し低めといったポケモンだ。その少し不安の残る素早さを、すいすいで補っているという訳ではあるのだけど……正直初見の感想は、この子ではマホイップの突破に乏しいのでは?という気持ちだ。

 

 カマスジョーは耐久が低い代わりに、攻撃力と素早さがかなり抜きん出ており、尖った戦い方をするポケモンだ。そういうポケモンは総じて癖が強く、その分型にハマった時の破壊力が凄まじい。実際に、雨とアクアジェットを絡めたあのコンボは、エルレイドが何も出来ずに落とされてしまったほどだ。

 

 けど、今はそれをも超えたマホイップが場にいる状況。カマスジョーが戦えなかった相手に、カマスジョーのような尖ったものを持っていなさそうなアズマオウには、この状況を打開できるものがあるようには思えなかった。

 

(けど、その考えはあくまでボクが考えた時の話だ。それでもルリナさんがここでアズマオウを選択したということは、ルリナさんには明確な対策があるということ……)

 

 ボクがやっている戦法は、ポプラさんのしていたそれとほぼ一緒だ。そしてポプラさんもルリナさんも、ガラル地方のメジャーリーグジムリーダーという同じ立場に身を置いている人。当然戦闘経験はあるだろうし、ルリナさんもこの戦法はされたことがあるはずだ。

 

(絶対に、何かある……!!)

 

 警戒心を上げ、じっとアズマオウを見つめる。

 

 何かあっても直ぐに対応できるように、その一挙手一投足を目に焼き付け、マホイップにすぐに指示を出せる状態で構え、アズマオウの動きを待った。幸い、雨に時間制限がある以上、時間はボクの味方だ。焦って前に出なくても、必ずルリナさんが動かなくては行けないターンが来る。そこを待ち構えて反撃するのが、1番安定しそうだ。

 

(本当は『とける』と『めいそう』をして、少しでも磐石にしたいけど……今はしない方がいいよね……)

 

 とけるやめいそうをして、アズマオウを無理やり動かす考えももちろん浮かんだけど、この動きが致命的な隙になる可能性も0じゃない。だからボクはルリナさんの言葉をじっと待ち……

 

「アズマオウ……」

 

(来る……っ!!)

 

「『なみのり』!!」

「えっ!?」

 

 ルリナさんからのまさかの指示に思わず声を漏らす。

 

 なみのり自体は別におかしな技では無い。大量の水を呼び出し、操り、その物量で相手を押し流す強力な技だ。問題なのは、この技を使ったのが別に特殊が得意では無い……いや、むしろ苦手よりのポケモンであるアズマオウが打ってきたという点だ。

 

 けど、ボクはその考えを自分に当てはめてすぐに切り替える。

 

(いや、ボクだって状況に合わせて戦えるように、インテレオンやモスノウに物理技を覚えさせる時はある。その延長線と考えたら納得は行く。特に、この『なみのり』が相手の自由を奪うためだったり、相手に近づいたくない時にするという目的なら尚更だ)

 

 今のマホイップはクリームの国に囲まれている。そんなマホイップに対しての下手な物理攻撃は、カマスジョーの二の舞……いや、カマスジョーよりも機動力のないアズマオウがすれば、それ以上の悲惨な目にあうのは間違いない。なら、こういう時の対応策として、アズマオウが特殊技を用意しているのは何らおかしなことでは無い。雨で威力が底上げされていることも加味すれば、十分な牽制技になるはずだ。

 

 最も、元々特殊耐久が高く、その上でめいそうを2回行っている今のマホイップに対しては、この程度の攻撃は全然痛くは無いし、なんならこれくらいの波は、簡単に粉砕できるのだが。

 

「マホイップ!!『アシストパワー』!!」

「マホッ!!」

 

 真正面から迫ってくる水の壁に対して、マホイップはピンク色の波動を発射。今までルリナさんの手持ちを2人倒している凶悪なその波動は、アズマオウが作り出した水の壁を真っ二つに割り、そのままマホイップのところを避けるようにして倒れてきた。

 

 激しい水音とともに、地面に拡がったクリームを押しつぶすように倒れてきたその圧力は、しかしマホイップには当たることなく、バトルコートの地面を水で埋めるに留まる。もちろんマホイップには1ミリもダメージは入っていない。

 

「相変わらずとんでもない威力ね……」

「この程度ではマホイップは止まりません!!」

「ええ。嫌という程理解しているわ」

 

 この状況に苦い表情を崩せないルリナさんは苦しそうに言葉をこぼす。やはりこのマホイップを超えるのは、ルリナさんを持ってしても大変らしい。けど、瞳の中の闘志が燃え尽きていないことから、まだ何かを仕掛けてきそうだから警戒は一切解かない。いや、解けないと言った方が正しいか。というのも、先程のなみのりによってバトルコート全体が水に浸ってしまったため、少しだけ問題が起きてしまっている。

 

 その問題は、マホイップが広げたクリームの操作難易度の上昇だ。

 

 ビートとの戦いを思い出して欲しいのだけど、クチートがクリームを口に咥えた時、そのクリームはマホイップの操作できないものとなっていた。これは、マホイップとクリームの間に障害物があったという点と、クリームが別の力で抑えられていたからという点の2つが影響しているからだ。この判定を受けたクリームは、マホイップがいくら頑張っても操作できないか、極端に操作精度が落ちてしまう。もしかしたら、ポプラさんならこの状況でも気にせずクリーム操作ができるのかもしれないけど、少なくとも今のボクたちには不可能だ。

 

 つまり、波乗りによって水位が上がり、ボクのふくらはぎより少し下くらいまで水が浸かってしまっている(実際にはボクとルリナさんの足元にもクリームの山があるので浸かっていないが)今のバトルコートでは、マホイップのクリームは上から水に押さえつけられているため、操ることが出来るのは、自身の足元に島のように盛られているクリームのひとかたまりだけとなっている。はたから見たら、小さな無人島に流されたあとのような光景だ。

 

 最も、今のマホイップなら、この量のクリームだけでも真正面からのバトルなら負けはしない。それはルリナさんも理解しているはずだ。となると、ルリナさんの作戦はここから。

 

(さぁ、どう来る……?)

 

 なみのりによって生まれた水の中を、すいすいの効果によって高速で泳ぎ回るアズマオウから目を離さないようにし、何が来ても対応できるように構えておく。マホイップも、次が相手の本命択だと理解しているから、いつもの可愛らしい雰囲気は消し、真剣な表情でアズマオウを見つめる。

 

「アズマオウ!!」

「マウ!!」

 

 そのまま数秒ほど、マホイップを中心に右回りで泳ぎ回るアズマオウ。そんな彼女に、ルリナさんが声を上げると、元気よく返事をしたアズマオウが身体の向きを変え、額の角を構えてマホイップのいる島に向かって突進を始める。先程までの遊泳とは違い、本気で攻めるためか、その速度は今までのアズマオウの中では1番のスピードとなっている。その速度の緩急のせいで一瞬アズマオウを見失いかけるけど、先程までカマスジョーを相手にしていたために順応できた。

 

 これなら、まだ迎撃できる。

 

「マホイップ!!」

「マホッ!!」

 

 迫り来るアズマオウに対してしっかりと瞳を向けるマホイップ。そんな両者の距離がぐんぐんと近づく中、あと数秒でぶつかり合うところでお互いが変化を生み出す。

 

「マウッ!!」

「マホッ!!」

 

 アズマオウは額の角を伸ばして貫通力を上げ、マホイップはクリームを生み出して大きな盾を作り上げる。

 

 アズマオウはこの伸びた角でクリームごと刺し貫く方向で、マホイップはクリームで絡めとって確実にアシストパワーを当てる方向で舵を切る。

 

 普段より長く伸び、そして角を回転させながら飛び込んでくるアズマオウを前にして、しかしボクとマホイップは特に焦ることなく構えていく。

 

(アズマオウよりも貫通力の高いカマスジョーの攻撃も絡め取る事が出来たなら、アズマオウがちょっと工夫してもマホイップには届かない。大丈夫。それに、例え受け切ることが出来なくても、地面に潜って避ける時間は稼げる!!)

 

 準備万端。そして、いよいよ回転した角がマホイップのクリームに触れる。これにより、クリームは飛び散り、アズマオウの身体に付着することで素早さを奪っていく事になるだろう。

 

(よし、狙い通り!!このまま行けば……あれ?)

 

 ことは想像通りに進んでいる。しかし、ここに来てある違和感が確認できた。

 

(クリームが……想像よりも飛び散りすぎてる……?)

 

 それは、アズマオウの角に飛ばされたクリームが、アズマオウの身体に付着することなくステージの端まで吹き飛ばされているという明らかにおかしな挙動をしている所。その状態に猛烈に嫌な予感を感じたボクは、ここに来てようやく耳に届いた、アズマオウの角から聞こえる不快な回転音の正体に気づき、慌ててマホイップに指示を出す。

 

「マホイップ!!その攻撃に触っちゃダメだ!!避けて!!」

「ッ!?」

 

 クリームの異様な弾かれ方にマホイップも何かを感じとったみたいで、ボクが言葉を言い終わる前に身体を右にずらし、アズマオウの突撃を回避。何とか技の直撃だけは避けることに成功した。しかし、アズマオウの放った技が強力すぎた故に、マホイップの足場となっていたクリームの島が真っ二つに割れ、その両方ともが水に沈み始めていく。

 

「マ、マホ……ッ!」

「落ち着いてマホイップ!!まずは足場を……」

「もう遅いわよ」

「っ!!」

 

 急に足場がなくなり、パニックになったマホイップを落ち着けるために声をかけるボク。しかし、すいすいによって機動力が上がっているアズマオウにとっては、この時間が生まれた時点で次の攻撃を当てられることが確定してしまっている。

 

「マホッ!?」

「マウッ!!」

 

 結果、マホイップが気づき、そして振り返った時にはもう、マホイップの目前にまでアズマオウの角は迫っていた。

 

 マホイップの機動力では、この攻撃はどうやっても避けることは不可能だ。

 

 そして……

 

「ッ!?」

「マウ~!!」

 

 アズマオウの額で回転する大きな角が、マホイップの身体のど真ん中を貫いた。

 

「……やられた」

 

 これがただの攻撃であったのなら、ボクは何も焦ることは無かった。だって、今のマホイップはとけるによって防御が4段階も上昇しているのだから。例えアズマオウが、マホイップの弱点を着くことができるスマートホーンをぶつけてきたとしても、ボクは何ひとつ気にする事はなかっただろう。寧ろ、カウンターのチャンスとさえ思ったはずだ。

 

 しかし、今回アズマオウが放った技は、スマートホーンなんて生ぬるい技では無い。

 

「……『つのドリル』」

 

 つのドリル。

 

 回転している角を相手に突きつけて、その圧倒的な破壊力を持って攻撃する最凶の技。その威力は決して計測することはできず、当たったポケモンはいくら防御ランクを上昇させていたとしても、問答無用でひんし状態にされることとなる。そしてこれは、今のマホイップにも当たり前のように適用される。

 

「マ……ホ……」

 

 

『マホイップ、戦闘不能!!』

 

 

 一撃必殺。

 

 自身の能力を磨き、ここまで破竹の勢いで相手を倒していたマホイップに対して、この手の技はとても有効に働くこととなる。

 

「そこまでカチカチに守りを固めてくるのであれば、いっそこういった突破の方がよっぽど楽よね。ポプラさん相手にも、たまにこうするもの。時にはこういったこともやらないとね!!」

「ですね……見事にしてやられましたよ……」

 

 マホイップは耐久力はあれど、機動力は無い。クリームによる移動方法だって、一見インパクトのあるアクロバティックな戦法だけど、それでも上げられる……いや、ごまかせる機動力に限界はあるし、今回のように動ける場所を制限されてしまうと、その強みすら失ってしまう。そうなってしまえばもうマホイップに攻撃を避ける手段は無く、その状態のマホイップに、すいすいで速度の上がったアズマオウが、つのドリルを外す理由は無い。

 

「ありがとう。ごめんねマホイップ」

 

 アズマオウの行動から、どの技が来るかは正直予想できたはずだ。けど、とけるとめいそう、そしてアシストパワーのコンボが決まり、ルリナさんの手持ちを2人も連続で倒したことで、ボク自身はそんなつもりがなくても深層心理のところで、どこか油断をしてしまっていたらしい。今回マホイップを落とされたのは、そんなボクの甘さが原因だ。

 

(しっかりしろ。まだボクは勝ってなんかいない。……ただ、負けてなんかもいない。だから落ち着け……まだまだ対策はできる。今度こそこの子に頼る!!)

 

 マホイップの戻ってきたボールを懐に戻し、次のボールを構えて空中に投げる。

 

「頼むよモスノウ!!」

「フィッ!!」

 

 ボクの3人目として出てきたのはモスノウ。マホイップの時に話した、雨を止める方向性ですいすいを邪魔する戦法をここで行うためだ。

 

「『ふぶき』!!」

「フィッ!!」

 

 その思いついた作戦を早速実行するべく、ボクはすぐさまモスノウに指示を飛ばす。この言葉に応えたモスノウは、返事をあげながら翅を羽ばたかせ、冷たい雪の嵐を巻き起こした。

 

「さすがにそれはさせたくないわね……アズマオウ!!『なみのり』!!」

「マウッ!!」

 

 荒れ狂う暴風雪が、降りそそぐ雨全てを吹き飛ばさんとバトルコート全てを包み込む。

 

 流石にこれを看過することが出来ないと判断したルリナさんは、モスノウが放ったこの攻撃に対してなみのりで対抗。先ほどマホイップを襲ったものよりも、さらに高さの増した大きな波は、モスノウのふぶきとつばぜり合うかのように真正面からぶつかった。その結果として、ふぶきの勢いは完全に消され、同時にアズマオウが放ったなみのりが崩れ去り、現在進行形で浸されている地面の水がすべて凍っていく。

 

(まさかモスノウの攻撃が相殺されるなんて……)

 

 モスノウは特殊攻撃を得意とするポケモンだ。対するアズマオウは、さっきも言った通りそんなに特殊攻撃が得意なポケモンではない。なので、モスノウと比べるとこのなみのりの威力はかなり心もとないものとなっている。それでもモスノウのふぶきと相殺できたのは、ひとえにこの雨によるみずタイプの強化とみずタイプとタイプの相性関係のおかげだろう。やはり、この天候はどうにかして変える必要があるらしい。

 

(けど、この凍った地面……むしろアズマオウにとっては苦しい状況なのかも?)

 

 しかし、ふと視線を地面に向ければ、そこに広がるのはアイススケートのリンクを彷彿とさせるような一面の氷フィールド。

 

 見るからに寒そうで、そして立つことすらままならないくらい滑りそうなその状態は、とてもじゃないけどアズマオウが動けるグラウンド状況には思えない。カマスジョーのようにアクアジェットも憶えないので、空中を飛び回ることもできないということを考えると、この状況はボクが目指していた物とはちょっと違うけど、目標としていたアズマオウの足を奪うというそれは達成できていた。

 

 雨を止ませることなく止まるアズマオウの足。こうなれば、むしろこの雨はボクの味方になるかもしれない。

 

「モスノウ!!『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

 

 雨の下放たれるぼうふうは、降りそそぐ雨を巻き込み、更に巨大な嵐となって飛んでいく。その攻撃範囲はすさまじく、とてもじゃないけど避けることは不可能だ。

 

 それが、地面が凍って機動力を奪われているアズマオウなら尚更。

 

「アズマオウ!!『なみのり』で防ぎなさい!!」

「マウッ!」

 

 迫りくる嵐に対して再び水を呼び出して、二度目の防壁としての展開をするアズマオウ。自身が乗る波ではなく、自身の前に壁のように伸びた波は、雨によって強化され、迫力のある物となっている。

 

 しかし、雨で強化されているのはモスノウのぼうふうも一緒だ。

 

 雨をまきこみ、なんなら、強力すぎる風ゆえに、徐々に削られて行った地面の氷やクリームの塊をも巻き込んだ1つの台風は、物量と質量をもってアズマオウの壁を打ち破ろうとしていく。

 

「ちょ!?そんなに強くなるの!?」

「マウッ!?」

「フィィッ!!」

「モスノウ……」

 

 全てを巻き込んでどんどん成長していくぼうふうは、ボクの予想すらも超越してどんどん強力になっていく。と同時に、ぼうふうの大きさに比例していくようにモスノウの羽ばたきと大声が重なっていく。

 

(そっか……マホイップの頑張りに触発されて……)

 

 ボールの中からマホイップの大立ち回りを見ていたモスノウは、マホイップの想いを引き継いで必死に翅を動かしていく。その思いが届いたのか、モスノウが放ったぼうふうがついにアズマオウの作り上げた波のすべてを吹き飛ばし切った。

 

「うん、行けるよモスノウ!!『ふぶき』で追撃!!」

「フィッ!!」

 

 波が吹き飛び、その後ろに隠れていたアズマオウにも風が叩きつけられ、身動きが上手くとれないところに更に叩き込まれる氷の風。その攻撃は回避も移動もできないアズマオウにしっかりと直撃し、大きく体力を削っていく。

 

「モスノウにここまで力押しされるなんてね……メロンさん以来かしら?」

「じゃあもっと力押ししないとですね!!モスノウ!!」

 

 ルリナさんの愚痴を聞いてますます勢いに乗ったボクとモスノウが更に出力を上げていく。

 

 強化されたふぶきはとどまるところを知らず、もはや災害級のそれへと変わっていく、バトルコート全体の温度を一段階下げていくと同時に、心なしか降りそそぐ雨にも雪が混じり始めたように見えてきた。

 

 このままいけば、雨雲をも吹き飛ばすかもしれない。そうなれば、ただでさえ足場がなくなってきているのに、アズマオウはすいすいまでも失っていく可能性がある。そこまで行けばもうモスノウの独壇場だ。

 

「さすがにこれ以上調子に乗らせるわけにはいかないわ!!アズマオウ!!『ドリルライナー』!!」

「マウッ!!」

 

 当然ルリナさんはこの状況を見過ごすことなんてしない。その逆転の一手として、身体ごと角を回転させたアズマオウは、そのドリルを地面の氷へと叩きつけ、自身の周りに大量の氷の塊を作り出す。

 

「打ち出しなさい!」

 

 そして、アズマオウの周りに大量に積もったそれを順番にモスノウに向かって発射。ドリルをバットに見立てて次々と打ち出される塊たちは、野球のノック練習のようだ。

 

「『ぼうふう』にチェンジ!!」

 

 対するこちらは、飛んでくる氷の弾幕を跳ね返すために技をふぶきからぼうふうにチェンジ。飛ばしてきた氷をそのまま逆再生するかのように跳ね返していく。

 

(これでこのまま攻撃を跳ね返せば、アズマオウに追撃でダメージが……)

 

「っていない!?」

「『なみのり』よ!!」

「マウッ!!」

 

 しかし、跳ね返っていった氷の先にはアズマオウはおらず、地面に視線を動かせば、氷の上を綺麗に滑って移動するアズマオウの姿が確認できた。その正体は、自身の足元に波を発生させ、なみのりを攻撃のために使うのではなく、自身の移動手段として使うことで、こんな悪路でも綺麗な動きを見せていた。

 

 その行動に気づくのが遅れてしまったため、アズマオウは既にモスノウの足元まで接近。

 

「このまま『たきのぼり』よ!!」

「マウッ!!」

 

 真下まで来たアズマオウは、その場で自分の下に作った波を爆発させ一気に上昇。同時に水を身体に纏い、強烈な突撃をモスノウに向かって放つ。

 

「物理防御は低いでしょ!!打ち抜かせてもらうわよ!!」

「マウッ!!」

 

 なみのりが爆発した勢いと、たきのぼりによる圧力を合わせ、そこにすいすいの速度を掛け合わせたアズマオウの一撃。雨によってパワーが上がっていることも考えれば、充分モスノウを一撃で落としえる威力を持っている。

 

 角を真正面に向け、宙を舞うモスノウめがけて突き進む1つの星。荒れ狂う嵐の中突き進むその水の線は、彗星のように綺麗で鋭い。

 

 ルリナさんの言う通り、これを貰えばモスノウは間違いなく落ちる。

 

 けど、モスノウにこの攻撃は当たらない。

 

「モスノウ。もっと『ぼうふう』!!そのまま集めて回して!!」

「フィッ!!」

「っ!?」

 

 ボクのモスノウはぼうふうを自在に操れる。それは今までの戦いで証明されている。だからこそ、今回も同じようにモスノウは風を操り、自身に纏わせ、鎧とする。

 

 モスノウを守る風の鎧は、飛んできたアズマオウの角をモスノウから見て右にわずかに逸らす。これを確認したモスノウは、身体を右に回転させることでその動きをさらに強くし、アズマオウを大きく右に弾いた。

 

(『つのドリル』じゃないなら……逸らせる……!!)

 

 アズマオウの身体が、空中で無防備にさらされた。

 

「『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

「マウッ!?」

 

 すかさず動くモスノウの翅。

 

 力強く羽ばたくことで巻き起こった嵐によって、空中のアズマオウがはたき落とされ、地面に墜落。

 

 受け身行動もとることの出来なかったアズマオウは、そのまま目を回すこととなる。

 

 

『アズマオウ、戦闘不能!!』

 

 

「フィィィィッ!!」

 

 モスノウの雄たけびが、バトルフィードに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




つのドリル

言わずと知れた一撃必殺技。アニメでは、どちらかと言うと他の攻撃で削られた相手にとどめを刺す技の1つと言う扱いみたいになっていましたね。アランさんとのバトルの時のキリキザンを想像すればわかりやすいでしょうか。この作品では、そんなこと気にせずに強制一撃必殺にしていますけどね。実機と同じく、『相手にレベルで負けていたら通用しない』と言う路線を取ろうと思っています。




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