【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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271話

 モスノウの声が響くバトルフィールドは、雨にふぶき、そしてクリームに氷の地面と、もはやバトルコートの原型を留めていない程の荒れ模様となってしまっている。このバトルが終わったあと、次の試合のために整備することを考えると、少しだけリーグスタッフの人たちのことが心配かつ、申し訳ない気持ちになるけど、それはそれとして、ここまでしないと勝てない相手ではあるので、そういった気持ちはすぐに横へ置き、ルリナさんの方へ視線を向ける。

 

(ルリナさんの手持ちは残り3人……誰が出てくるか……)

 

 ぺリッパーが帰ってくるのか、はたまた新しい子が来るのか、どちらを出してきても不思議では無いけど、ルリナさんの手持ちですいすいを持っているのはあと1人しかいない。逆に言えば、のポケモンのために雨を残す行動を取ってくるだろうから、そこから逆算すればおのずとルリナさんの次の手は見えてきそうだ。

 

(雨の効果を後ろに残したいのなら、グソクムシャの時みたいに時間稼ぎを目的にするのかな……となると、ぺリッパーじゃなさそう……エースは最後に出すことを考えるのなら、じゃあここで出るのは決まったようなものかな)

 

「戻りなさい、アズマオウ。お疲れ様。よくやってくれたわね」

 

 頭の中で軽く予想を立てながら場を見つめていると、ルリナさんがアズマオウにリターンレーザーを当てているところだった。

 

 その表情は少しだけ曇っているように見え、次に誰を出すかで迷っているように見える。

 

(どっちなんだろう……予想は新顔君なんだけど……)

 

「うん、やっぱりあなたが良さそうね。行きなさい!!ぺリッパー!!」

「ぺリッパー……」

 

 数秒悩む素振りを見せたルリナさんは、しかしキッパリと自分の中で答えを出したのか、晴れやかな表情を持ってぺリッパーを繰り出した。

 

 ボクの予想とは違う選出に、少しだけ思考が伸びていく。

 

(ここでぺリッパーを出すんだ……ぺリッパーが倒されたらもう雨が展開できなくなっちゃうけど……エースポケモンに雨を残すのを諦めた?……ううん、あのルリナさんがそんな消極的な考えをするなんて思えない。ってことは……このポケモンでモスノウを突破する何かを持ってる……?)

 

 自分の中で、自然と警戒心が上がっていく。

 

 さっきはアズマオウにしっかりと仕事をされてしまったので、ここで同じことを繰り返すつもりは無い。なにかされる前に仕掛ける。

 

「モスノウ!!」

「ぺリッパー!!」

「「『ぼうふう』!!」」

 

 変な搦手をされるよりも速く攻撃を仕掛けるために、雨を利用して一気に攻める指示を出す。すると、ボクとルリナさんの指示が重なり、同じ技が両者から放たれた。

 

「フィッ!!」

「ペリッ!!」

 

 指示と同時に羽ばたく翅と羽から起こるぼうふうは、雨も氷もクリームも、何もかもを巻き込んで、両者の中間でぶつかり合う。

 

「っ!!」

「……」

 

 風と風がぶつかり合うことによってさらに大きな台風となったその風は、バトルコートのど真ん中で大きな台風となる。その風が強すぎて、ボクは思わず顔を腕で庇ってしまう。もちろん、この状態でも視線は外さないように前を見続けてはいるけど、対面のルリナさんは、相変わらず腕を組んだままの姿で微動だにしない。この戦法に慣れている証拠だろう。

 

 そしてそれは、この状況に対して絶対に勝つことが出来るという自信の表れでもある。

 

「……徐々に押されてる」

 

 バトルコートの中心で起きた台風を確認したモスノウとぺリッパーは、その上で更にぼうふうを放つ。こうすることによって、真ん中の台風を相手側に押し込んで、2つ分のぼうふうがあわさったエネルギーを相手に叩きつけようと考えているためだ。

 

 台風を使った綱引きのような力比べ。しかしその結果は、先程ボクが言葉を漏らした通り、モスノウ側のフリという形で動いていた。

 

 特殊攻撃の得意具合であればモスノウの方に軍配は上がる。これが純粋な力比べであるのなら、なおさら勝つのはモスノウの方だ。しかし、現実問題としてそうなっていないのは、ひとえにぺリッパーがこの状況になれているためだ。

 

 雨の使い方。羽の使い方。風の使い方。技の使い方。そのどれもがモスノウの1歩先を行く。モスノウだって、ぼうふうによって自分の鎧を作り上げるだったり、飛んでくる石の軌道を操るだったりと、ぼうふうの扱いには長けているのに、それでもこちらの攻撃は全てぺリッパーの横を通り抜けるだけで、まるで攻撃が自分からぺリッパーを避けているようにさえ思うくらいに当たらない。今も、こちらが隙を見て、台風を迂回するようにはなった風と氷は、その全てがぺリッパーの直前で不規則に軌道を変えられてしまっている。しかも、ぺリッパーはこちらの攻撃を避けながらも攻めの譲らないように、常に台風の足元に自分のぼうふうを送り続けていた。結果、台風足元の占有率を取られてしまっているせいで、こちらがいくらぼうふうをたたきつけてもビクともしない。

 

(ぺリッパーはあくまでも、雨を降らせるための起点作成役だと思ってたけど……全然そんなことない。下手したら、今の所戦ってきたルリナさんの手持ちでトップクラスにやばいポケモンなのかも……)

 

「さぁぺリッパー!!このまま風と雨で押し流しちゃいなさい!!」

「ペリ~!!」

「くっ……!!」

「フィ……!!」

 

 考えているうちにぺリッパーの羽の動きが更に加速。それに比例するように、モスノウに近づく台風の速度も上がっていく。

 

(このままだと勝てない……なら、前に行く!!)

 

「モスノウ!!風をまとって乗って!!」

「フィッ!!」

 

 現状維持だとこちらが負けるだけ。そう判断したボクは、この台風の奪い合いを諦め、風を纏わせて台風に突撃するように指示。一見ただの自殺行為に聞こえるかもしれないけど、風を纏って、台風の中に混じっている氷やら石の礫やらを弾きながら台風の風に身を任せることで、本来のモスノウではありえない速度の機動力を得る形となっていた。

 

(ピンチをチャンスに。この台風すら利用する!!)

 

「本当に、無茶苦茶な作戦ね……そんなの誰も思いつかないわよ」

「思いつかなきゃ勝てないんですよ!!モスノウ!!」

「フィッ!!」

 

 こおりのりんぷんを撒き散らしながら台風の外周を高速で飛び回る姿は、まるで1本の白い線で、その姿は先程までのカマスジョーのアクアジェットを彷彿とさせる。もちろん、あちらと比べると速度は雲泥の差ではあるけど、それでもなかなかの速度を誇っていた。

 

 その姿を見たルリナさんは、思わず苦言をこぼすものの、そんなこと気にしてられないボクは、モスノウが十分加速したのを見て突撃を指示。最高速度を溜め込んだモスノウは、台風から弾かれるように飛び出し、ぺリッパーへと体当たりを仕掛けに行く。

 

「ぺリッパー!!『ハイドロポンプ』!!」

「ペリッ!!」

 

 これを見たペリッパーは、モスノウを落とすべく水の大砲を準備。大きく開いた口をまっすぐモスノウに向け、打ち返どうとする。

 

 けど、遅い。

 

「モスノウ!!爆発!!」

「フィッ!!」

 

 ぺリッパーが攻撃を貯めている間に、一瞬で距離を詰めてぺリッパーの真上を取ったモスノウ。その状態で、自身が纏っていた風の鎧を一気に爆散させ、風の爆弾と化す。

 

「ペリッ!?」

「ぺリッパー!!踏ん張りなさい!!『ハイドロポンプ』!!」

 

 いきなり自身を襲った風の爆弾をもろに受けてしまったぺリッパーはバランスを崩し、高度を下げられる。けど、ルリナさんの指示を聞いてすかさず態勢を整え、自身の真上にいるモスノウに向かって、さっき打とうとして途中まで溜めていたハイドロポンプを発射。下から真上に伸びるその攻撃は、天に昇る1本の水柱となっていた。

 

「避けて『ぼうふう』!!」

「こちらも『ぼうふう』!!」

 

 この水を、身体を少し右に動かして避けたモスノウは、すぐさま反撃のために翅を動かし、ハイドロポンプを打ったばかりの相手に上からぼうふうを叩きつける。これに対してぺリッパーも、すかさず打ち上げるようにぼうふうを放って、再びぼうふう同士のぶつかり合いが発生。しかし、今回はさっきのような竜巻が発生することはなく、両者の攻撃が相殺しあって、風の爆発が起きるだけに留まる。ぺリッパーが無理な態勢で慌てて攻撃したから、少しだけさっきと結果が変わったみたいだ。その証拠に、ぺリッパーはさらにバランスを崩しており、次への行動が遅れてしまっている。

 

「『ふぶき』!!」

「フィッ!!」

 

 その隙を逃さないように、すかさずモスノウが翅を羽ばたかせて雪の嵐を打ち下ろす準備をする。

 

 ぼうふうのぶつかり合いによってモスノウもバランスは少し崩してはいるけど、それでもペリッパーほどではない。先に態勢を整えて攻撃が出来るのは、相手が崩れているときに先に攻撃を仕掛けたこちらの方だ。だから、次の攻撃は必ず刺さる。

 

そんなこちらの絶好なチャンスの時、少し奇妙なことが起きる。

 

「ペリッパー!!」

「ぺ……ペリ~ッ!!」

 

 モスノウの翅が動き、今まさに攻撃放たれる瞬間まで迫ったその時。ルリナさんの言葉を聞いたペリッパーが、態勢を整えるよりも先に大声を空に放った。

 

 決して攻撃をするための行動ではないその言葉に、一瞬だけ身体を硬直させそうになるモスノウだけど、虚勢を張ってモスノウの動きを止めることが狙いの可能性もあるので、ためらうことなく翅を動かしてふぶきを放った。

 

 一分一秒……いや、それ以上に細かい刹那を競うクラスでのバトルだからこその、この思いっきりの良さ。おかしなことはなく、むしろいい方と捉えていいだろう。

 

 ……しかし、今回だけはこの判断があだとなった。

 

「……?」

 

 モスノウが攻撃を放とうとする瞬間に、耳に入って来る奇妙な音。

 

 その音の発生源は、ペリッパーのハイドロポンプが刺さった雲の中。ハイドロポンプと言うかなり威力が高い技が突き刺さっているはずなのに、穴が開くことなくすべての水を吸収し切った雨雲は、その部分だけを更に濃い黒色に染め、そして先ほどペリッパーが放った大声に呼応するように蠢いた。

 

 そして、その真っ黒な位置から、まるで滝のように水が落ちてきて、そのすべてがモスノウへと降りそそぐ。

 

「モスノウ!!」

「フィッ!?」

 

 急に上から降ってきた水に、ふぶきを構えていたモスノウは反応することが出来ず、全てを身体で受け止めてしまい、ずぶ濡れ状態となってしまう。

 

 その姿を見て、ボクは頭の中を嫌な予感が駆け巡り、慌ててモスノウに指示を出す。

 

「モスノウ!!今すぐ自分に『ふぶき』を打ってその水を━━」

「させないわ!!ペリッパー!!『ぼうふう』!!」

「ペリッ!!」

「ッ!!」

 

 モスノウが被った水全てを払うために構えていたふぶきを中断させて、今すぐにでも水をはじく行動をとってもらおうとするけど、その行動をさせないようにペリッパーがすかさずぼうふうを放ってくる。

 

「目標変更!!迎撃して!!」

「フィッ!!」

 

 この行動によって、自身の水をはじくことが出来なくなったモスノウは、仕方なく迫って来るぼうふうに対してふぶきを返す。ボクの指示を聞いたモスノウも、水を弾けないと理解したので、すぐさま標的を変えて翅を羽ばたかせた。

 

 ふぶき対ぼうふうのぶつかり合い。

 

 お互いの得意技であるこの技のぶつかり合いは、本来なら拮抗するだろう勝負だ。しかし、そんな予想を裏切るかのように、ペリッパーのぼうふうが一瞬にしてモスノウのふぶきをかき消した。

 

「ふふ、やっぱり力が入らないわよね?」

「……『みずびたし』……なんて技を仕込んでいるんですか……」

 

 敗北の理由は、ボクがこぼした通りみずびたしと言う技のせいだ。

 

 みずびたし。

 

 相手に大量の水をかぶせることで、全身をくまなく濡らし、相手のタイプを無理やりみずタイプへと変換させる技。ポケモンのタイプを変える方法はいくつかあるけど、相手のタイプを強制的に変換させるのはかなり珍しい技だから、受けるまで頭の中に浮かばなかった。

 

 一見、モスノウのタイプをみずに変えることに意味はなさそうに見えるかもしれない。しかし、このタイプ変化は想像以上に効果が出てきてしまう。

 

 その理由は、タイプ一致の技が変わってしまうから。

 

 ポケモンは、基本的に自身と同じタイプの技を得意技としており、他のタイプの技よりも強力に放つことが出来る。モスノウならこおりとむしタイプの複合なので、この2つの技の威力が上がるし、ペリッパーならみずとひこうの複合なので、この2つが威力を高く放てる。しかし、ここでモスノウが自身のタイプをみずに書き換えられたならどうなるだろうか。

 

 答えは、『むしとこおりタイプの技の威力が下がり、みずタイプの技を強く打てるようになる』だ。

 

 今のモスノウはみずタイプのポケモン。故に、ふぶきもむしのていこうも得意技ではない。逆にみず技は強く打つことが出来るようになったけど、残念ながら今のモスノウはみずタイプの技を覚えていないため、ただただ火力が下がっただけとなっている。とはいえ、一応このみずタイプへの変化は悪いことだけではない。むしタイプが消えたことで、ひこうタイプのばつぐんも消えてしまったため、防御面は少し有利にはなったと言えるだろう。

 

 しかし、ここでもう1つの問題が発生する。

 

「フィッ!?」

「モスノウ!!」

 

 ふぶきを打ち破られ、真っすぐ飛んできた風がモスノウの全身を襲っていき、もみくちゃにしながら吹き飛ばしていく。その際に、モスノウの身体を守ってくれるはずの、こおりのりんぷんが全て消えてしまっていた。

 

(全身に水をかぶっちゃっているせいで、『こおりのりんぷん』が流されて消えちゃっている……)

 

 モスノウの特性であるこおりのりんぷんは、全ての特殊技の威力を半減に抑えることの出来る強力な特性だ。これがあるからこそ、ちょっとくらいタイプ相性が悪い攻撃であろうともしっかりと受け止めることが出来た。しかし、今はその強力な特性が消えている。だからこそ、みずタイプと言う弱点の少ない、耐えることにおいて強力なそれを生かすことが出来ずに、大ダメージを受けてしまう事となる。

 

「フィ……ッ!!」

「大丈夫!?」

「フィフィッ!!……ツ!?」

 

 風にもみくちゃにされたモスノウは、そのままボクの近くまで吹き飛ばされるが、墜落する寸前で態勢を整えて、何とか空中に浮かび続ける。しかし、想像以上に攻撃を受けてしまっているせいで、再びバランスを崩しまった。

 

「モスノウ、1回ボールに……」

「『ハイドロポンプ』!!」

「くっ……ごめんモスノウ、『ぼうふう』!!」

 

 このままではペリッパーに絶対に勝てないから、一旦モスノウをボールに戻そうとする。一度ボールに戻せたらみずびたしの効果をリセットでき、モスノウの特性とタイプが返って来るからだ。それを狙っての行動なのだけど、当然そのことに気づいていたルリナさんからすかさず追撃が飛んでくる。こうなってしまったらもう引くのは間に合わないので、せめて一太刀浴びせるために最後の抵抗を指示。しかし、やはりずぶ濡れ状態で力が出ないモスノウではこれを返すことは出来ず、再び攻撃が直撃していしまい、今度こそ地面に落ちていく。

 

 

『モスノウ、戦闘不能!!』

 

 

「……ありがとうモスノウ」

 

 倒されたモスノウにお礼を言いながらボールに戻し、ボクはすぐに次のボールに手をかける。

 

「『みずびたし』があるのなら……こっち!!インテレオン!!」

「レオッ!!」

 

 ボクからの4番手はインテレオン。元からみずタイプであるこの子なら、この雨も味方にできるし、みずびたしも意味がない。だからこその選出。

 

 だけど、正直ここでペリッパーを倒せるとは全く思わなかった。

 

「『れいとうビーム』!!」

「レオッ!!」

「『ぼうふう』」

「ペリ……ッ」

 

 場に出ると同時に、右手人差し指を向けて凍てつく光線を放つインテレオンと、ここまでのダメージで少しバランスを崩しながらも、しっかりと羽ばたいて風を起こすぺリッパー。2つの攻撃はお互いの中間で相殺し、爆散。きらきらと光を撒き散らしながら消えていく。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 そんな少し見とれそうな状況を無視して、ボクはすぐさま追撃を指示。相殺した場所を貫く3つの弾がぺリッパーに襲いかかる。

 

「ぺリッパー!!」

 

 これに対してぺリッパーは、痛む身体にムチを打って行動開始。1つ目を高度を上げて避け、2つ目を身体を右に傾けて回避。しかし、ここでまた痛みが走ったのか身体の動きが鈍くなり、3発目に被弾。当たった瞬間に起きた爆風によって、ぺリッパーの身体が大きく後ろに吹き飛ばされ……

 

「『とんぼがえり』……よく戻ってくれたわ。ぺリッパー」

 

 そのままルリナさんの右手にあるボールの中へと吸い込まれていく。

 

 避けることが体力的に難しいと悟ったため、ねらいうちにとんぼがえりをぶつけて帰ってきたということだろう。これで、エースにも雨を残されるのが確定してしまった。

 

 しかし、なにも悲観しなきゃいけないほど追い詰められている訳でもない。

 

(ペリッパーは帰ったけど、残りの手持ちのポケモンの体力的には勝ってる。なら、エースに繋げられる前にこのリードを広げる!)

 

 あのルリナさん相手に、微差ではあるけどリードできている。それは間違いなくボクの自信につながっている。驕るのは良くないけど、怯えすぎるのも良くない。事実はしっかりとみて、その上でポジティブに頭を動かしていく。

 

「行くわよ、ヌオー!!」

「ヌー……」

 

 そんなボクの前に現れたルリナさんの5人目のポケモンはヌオー。

 

 のっぺりとした顔に、どこか気の抜けるような声を漏らしながらゆっくりと腕を上げるその姿は、見ているだけでこちらの力を抜けさせてくるような不思議なオーラを放っている。けど、ここで出てきた以上強力な壁のひとつということに変わりはないので、警戒は解かない。

 

「行くわよヌオー!!『じしん』!!」

「ヌー」

 

 場に出てまったりと声を上げるヌオーに出された指示はじしん。ゆっくりと振り上げられた腕は、ヌオーの声と共に振り下ろされ、地面に広がる凍ったクリームの床全てを粉砕。砕けた氷は氷塊となって、あちこちに散らばり、同時にこの行動のおかげで久しぶりにバトルコートの地面を拝むことができるようになった。

 

「『なみのり』」

「ヌヌー」

 

 が、それも一瞬の出来事で、今度はその地面が水で満たされ、巨大な波が発生。ヌオーはその上に立って、自由自在に波を操っていく。

 

 インテレオンを飲み込む勢いで発生したそれは、じしんによって生まれた氷塊も一緒に流れており、これに巻き込まれたらただでは済まないことが見て取れる。

 

「氷塊を足場にして近づいて!!」

 

 だけど、この氷塊は寧ろ利用できる。流される氷塊を足場にして駆け抜けることで、波の上でゆらゆら身体を揺らしているヌオーに対して少しずつ接近していく。

 

「『ねらいうち』!!」

「レオッ」

 

 ある程度近づいて、インテレオンが正確に狙える位置に到達したところでインテレオンに攻撃を指示。相手の特性を確認するのも兼ねて、まずはねらいうちを発射した。

 

「ヌッ!?」

 

 インテレオンの指先からまっすぐ放たれた水弾はヌオーにしっかり直撃し、ダメージが入ったのを確認した。どうやら特性はちょすいではないらしい。それならば、こちらのメインウェポンはヌオーに通る。

 

(まぁ、通らなかったらブラッキーに変えるだけだけどさ)

 

 ひとまずこちらの攻撃がちゃんと効くことに安堵する。こうなって来ると、ヌオーの特性はてんねんだろうか。だとすれば、幸いこちらにはもう能力を磨くポケモンは残っていないので、ここに関しては気にする必要は無いだろう。インテレオンはのびのびと戦うことが出来るはずだ。

 

(けど……こういう時に限ってボクには味方してくれないんだよね~……)

 

 これからインテレオンが戦うという時に限って、ボクの視界に光が差し込んでくる。その光源である空に視線を向けると、暗雲たちこめていた空が徐々に晴れていき、天候が雨から晴れに変わっていく。

 

 これでみずタイプの技の威力が元に戻る。

 

(……まぁ、ボクは元々天候に頼ってない。いつも通りになるだけ)

 

 ボクとインテレオンの視線の先に、未だに波に乗ってユラユラ揺れるヌオー姿が見える。

 

(さて、後半戦……頑張ろう!!)

 

 ルリナさんとのバトルも、後半戦に突入した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みずびたし

相手のタイプを強制的にみずタイプに変える技。実機で使われた例としては、ナマコブシがアーマーガアなどに打って、はがねタイプを消すことでどくどくをいれる。と言う感じですね。ダブルバトルで言えば、ヌケニンに使って弱点を変えるとかでしょうか。場合によっては相手の火力も落とせる変わった技ですよね。

なみのり

ヌオーのなみのり……どこかのおじいさんを想像しますね。個人的にとてもかっこよかったなぁと思っています。




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