【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

272 / 374
272話

「ヌ〜」

「レオッ!!」

 

 バトルコート中心で高波に乗り、呑気な声を上げながら腕をユラユラ動かすヌオーと、高波の麓で次々と氷塊の上を飛び移り、自身を襲ってくる波から逃げていくインテレオン。

 

 ヌオーが腕を上げると同時にどんどんと動きが複雑になっていく波の動きは、しかしインテレオン持ち前の視力と反射神経を持って、次はどこが安全なのかを瞬時に見切り、的確な移動をすることによってこの猛攻を凌いでいた。

 

 しかし、これはあくまでも現状維持という守りの1手でしかなく、こちらからの攻撃が出きていない以上、このままではジリ貧でしかない。

 

(本来なら、水の中に潜ってヌオーを下から攻撃したいところなんだけど……)

 

 氷塊を巻き込んで発生しているこの波は、表面上は複雑にうねって迫るだけだけど、ひとたび水の中に潜れば、氷を刃としたミキサー状態とでも言わんばかりに荒れ狂っている。こんな状況の中飛び込めば、いくら泳ぎの得意なインテレオンと言えどもただでは済まない。だから、この氷塊の上から攻撃を当てたいのだけど……

 

(最初の『ねらいうち』を受けたところからすごく警戒されてる)

 

 さっきねらいうちを当ててダメージを取られたのが相当嫌だったのか、あれから何発か打ってみたのだけど、その全てが波の壁に阻まれる結果となった。ルリナさんからの視点で見れば、雨を必要としないこの戦法中は、いくら時間を使っても構わないということなのだろう。

 

 実際に、そういうのがいちばん困ったりはする。

 

(兎にも角にも、まずは『なみのり』の壁を越えて攻撃できるようにならないと話にならない)

 

「インテレオン!!『きあいだめ』!!」

「レオ……ッ!!」

 

 ひとまず、こちらの攻撃の貫通力を高めるために、1番大きく、上に乗っても安定する氷塊の上に移動したインテレオンは、そこで1度目を閉じて意識を集中し、心を張り切っている状態に持っていく。これで少なくとも、インテレオンの放つねらいうちは必ず急所に当たる技へと昇華した。

 

「『ねらいうち』!!」

「レオッ!!」

 

 強化されたところで早速ねらいうち。インテレオンの右手人差し指に貯められた水が勢いよく発射され、ヌオーに向かって真っ直ぐ飛んでいく。

 

「さすがにそれは受けられないわね……氷塊を盾にしなさい!!」

「ヌ~」

 

 このねらいうちをみて、なみのりだけでは防げないと判断したルリナさんは波を操り、ヌオーの前に氷塊ひとつを持ってきて盾替わりに活用。氷塊にぶつかった水弾は、威力の高さから氷塊を粉々に打ち砕きはしたものの、そこで威力を使い切ってしまい消失。ヌオーに届くことは無かった。

 

(波の防壁が厄介だね……やっぱり近づく必要があるかも……)

 

 そのままめげずに3発ほどねらいうちをしてみるものの、結果は変わらず全て波と氷塊のコンボで防がれる結果となる。もちろん氷塊の数には限度がある以上、このまま攻撃し続けていたらいつかねらいうちはヌオーに当たるようにはなる。しかし、問題なのがこの氷塊はインテレオンの足場でもあるということだ。

 

 この氷塊を全て壊してしまうと、ヌオーによって大荒れ状態となっているこの波に潜らないといけず、こうなってしまうと水中に残っている氷塊によるミキサーを受けることになる。それだけは避けないといけない。

 

(どうにかして、氷塊の消費量を抑えながら近づく!!)

 

「インテレオン!!『ねらいうち』!!」

 

 バトルコート真ん中で、祭りの櫓のように持ち上げられた波の上で踊るヌオーと、そのヌオーを中心に、波に巻き込まれないように時計回りに足場を飛び移っていくインテレオン。

 

 後ろから追いかけてくる波というのは、さながらパニック系の映画のワンシーンのようにも見えるけど、そんな状況でも冷静なインテレオンはボクの意図を汲み取って再びねらいうちを構えた。

 

 この様子を見たヌオーもすぐに反応。もう何回も起きているやり取りのせいで慣れてきたのか、今回はねらいうちを構えるよりも速く氷塊の盾を準備し終えていた。こうなってしまえば、もうインテレオンのねらいうちは防がれること確定だろう。しかし、それでもインテレオンは気にせず攻撃。インテレオンの指先から飛ばされる水弾は、ヌオーに向かって真っ直ぐ突き進み……しかし案の定氷塊に防がれる。

 

「何度やっても結果は同じよ。そのままイタズラに足場を消費し続けるといいわ」

「インテレオン!!『アクアブレイク』!!」

「え?」

 

 繰り返された光景を前に、こちらに打つ手が無いと判断したルリナさんが言葉をこぼすけど、そんなことを気にせずにボクはインテレオンに指示。同時にインテレオンが、ヌオーのいる方向に走り出す。

 

 足の速いインテレオンが目的地に着くのは一瞬だ。相手が動けない位置にいるのなら、その速度は尚更速い。しかし、今のヌオーはねずみ返しを作った波の櫓の上にいるうえため、登るのが難しい。と言うか、普通に登ろうとしたらジャンプして無理やり上がるしか方法が無く、なんの策も無しにそんなことをすればヌオーに撃ち落とされ放題だ。するにしても、事前準備は必須。

 

(だから、これはその準備!!)

 

 そんな櫓に走るインテレオンの前に、上から氷塊の一部が降ってきた。これは先程インテレオンが打ったねらいうちによって壊れた氷塊の1部だ。今までなら、ねらいうちが当たった瞬間に粉々に砕けていたけど、今回はわざと威力を抑えて打ったことにより、氷塊がそこそこの大きさを保ったまま複数落ちてきていた。

 

「レオッ!!」

 

 この氷塊たちに向かって、インテレオンはアクアブレイクを放ち、全ての氷塊を上空へ打ち上げた。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 打ち上げられた氷塊はヌオーのいる位置よりもさらに高い場所まで飛んでいき、ある程度のところで上昇が止まる。当然だけど、このままではただ氷塊が上がっただけで何も起きない。そこで、インテレオンはねらいうちを打ちあがった氷塊に角度を調整してぶつけることによって、氷塊をヌオーのほうに弾き飛ばし、打ち上げたものすべてがヌオーに当たるように操作する。

 

 これにより、空中にあがった数十の氷塊全てがヌオーめがけて回転しながら飛び出した。

 

「っ!?『なみのり』で防ぎなさい!!」

 

 急に牙を見てい来た物体に驚いたルリナさんは、それでも最小限のラグで反応してヌオーに指示を出し、これに応えたヌオーによってすべての氷塊が操作された波によって押し流される。

 

「ふぅ……っ!?」

 

 急に襲ってきた攻撃をいなせたことに一息つくルリナさん、しかし、その安堵も一瞬のうちに消え去る。

 

 なぜなら、インテレオンが現在進行形でヌオーが乗っている櫓を()()()()()()登ってきていたから。

 

「インテレオン!!」

「レオッ!!」

 

 なみのりで氷塊を落とすことに集中していたため、足元の確認が甘くなっている隙に、インテレオンはヌオーが足場としている波をれいとうビームで凍らせており、こおりの壁をものすごい勢いで駆けあがっていた。

 

「氷塊はフェイク。これが狙いだったわけけね」

「いい加減降りてもらいますよ!!後ろに『ねらいうち』を打ちながら『アクアブレイク』!!」

 

 ルリナさんとボクの会話が始まるころには、既にインテレオンは波の壁を登り切っており、ヌオーの目の前にまで迫っていた。その状態からボクがさらに指示を出すことによって、インテレオンは両手に水を纏い、ヌオーに向かって突撃。右拳による貫手が、真っすぐヌオーへと放たれる。

 

「レオッ!!」

「ヌッ!?」

 

 自分のうしろにねらいうちを打つことによって、その反動で加速したインテレオンの一撃は、動きが速くないヌオーでは避けることは不可能で、真っすぐ突き刺さった。さらに、そこから空いている左手を後ろに向かって突き出し、ねらいうちを連射することで推進力を維持。お腹に攻撃を突き刺したまま、突進することで、ヌオーをそのまま櫓の上から追い出そうとする。

 

「このまま引きずり落とすわけね……」

「ここから先は離れませんからね」

「熱いプロポーズね……でも、接近したからにはあなたにもリスクを背負う覚悟はあるわよね?ヌオー!!」

「っ!インテレオン!!ヌオーが落とせると判断したらもう引いていい!!」

「自分から迫っておいて、都合が悪くなったら引くの?逃がすわけないでしょ!!」

「ヌッ!!」

「レオッ!?」

 

 ヌオーに手を突き刺したまま進んだことによって、櫓の上から飛び出すことには成功。しかし、ここからルリナさんが何かを仕掛けてきそうだったので、インテレオンに指示してすぐさま距離を取ろうとする。

 

 右足を振り上げ、足によるアクアブレイクをぶつけた反動で離れようと行動。しかし、そこはヌオーが粘りを見せ、右足によるアクアブレイクを受けながらもインテレオンの右腕をがっしりホールド。これによって、インテレオンが離れられなくなる。

 

「『どくどく』」

「っ!!右手で『ねらいうち』!!」

 

 インテレオンを捉えたヌオーは、そのまま自身の身体から毒素を噴き出してインテレオンにしみこませる。これによってインテレオンにもうどくが入ってしまった。こうなってしまったらもうどうしようもないので、もうどくを受けることを割り切り、そのうえで右手に水を集中。ヌオーに抱きしめられるように捕まっている右手の指先で作られた弾丸は、ゼロ距離で大爆発を起こした。

 

「ヌッ!?」

「レオッ!?」

 

 その爆発によってくっついていた2人が同時にはじけ飛び、お互いのトレーナーの下へ吹き飛ぶ。その際、インテレオンは地面に向けてねらいうちを、ヌオーは地面に波を呼ぶことで受け身を取って着地。この時に、ヌオーがなみのりのために呼んだ水は一旦流れていき、久しぶりの地面が目に入る。もっとも、数は減ったとはいえ氷塊はまだそこらへんに転がってはいるが。

 

「ヌ~……」

「レオ……ッ!?」

 

 こんな至近距離で放てば、技を打った本人であるインテレオンにもダメージはくる。その証拠に、着地したインテレオンは少しバランスを崩す。とはいっても、総合的な被ダメージを見ればヌオーの方が大きい。もうどくを受けてしまっているとはいえ、現時点ならまだ有利だ。

 

 問題は、もうどく状態だからここから時間をかければかけるほどこちらが不利に傾くという事。

 

 ただでさえ、今回のバトルでは、氷塊の足場的に時間がボクの敵だ。なのに、ここに来てさらにどくという要素が入り込んだのでますます時間をかけるわけにはいかなくなった。

 

「インテレオン、つらいかもだけど頑張って!!」

「レ……オッ!!」

 

 どくによって顔色が少し悪くなっているインテレオンには酷なお願いかもしれないけど、さっきまでの戦いを見る限り、時間を稼ぐという分野においてこのヌオーはかなり強力なポケモンだ。またなみのりを使って上空に逃げられようものなら、それだけでかなりのタイムイートを喰らってしまう。だから、ここは頑張ってもらうしかない。

 

(氷塊を使った視線誘導からの奇襲はもう使えない。そんな手が二度も通じるような相手てじゃないし、そもそも氷塊の数がかなり少ない。打ち上げられたところで、そっちに注視しなければいけないほどの氷塊はもう打ち上げられない!!)

 

 心の中で少し焦りながら、しかしそれを表に出すことはせずにインテレオンを真っすぐみる。この視線を背中で受けているインテレオンも、ボクの気持ちが伝わってくれているのか、ただひたすらに真っすぐヌオーに向かって走り続けてくれていた。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 右手人差し指を真っすぐ向け、乱射しながら距離を詰めるインテレオン。もうどくをもらってしまった以上もう離れて戦う理由はない。なら、あとはもう常に張り付くだけだ。

 

(……こうなるなら、あの時『ねらいうち』で爆発させなきゃよかったかも?いや、ずっと右腕掴まれて、そのまま攻撃を受け続ける方がまずいか……)

 

「ヌオー!!『アクアブレイク』!!」

 

 さっきの出来事についてちょっと後悔をしかけ、けど改めて考えたらこれでよかったと判断している間、ヌオーは両手に水を纏ってゆらゆらと動かし、飛んできた水の弾を逸らしていく。インテレオンのような鋭い攻撃ではなく、穏やかな波のようにゆらゆらと動かされるその手は、ダンスを舞っているようにも見える。

 

「インテレオン!!『アクアブレイク』!!」

 

 しかしその間はこちらが近づくチャンス。ねらいうちに対して対処しきっているヌオーに対してどんどん走り、直実に距離を狭めていく。

 

「『じしん』!!」

「ヌオッ!!」

 

 そんなインテレオンに対して、これ以上近づかれたら対処できないと判断したヌオーは、両腕を地面に叩きつけ、衝撃波を周囲に展開。急に広がる破壊の衝撃波は、インテレオンがヌオーに高速で近づいていることもあり、相対的に技の速度は上がっている。その分、被弾した時のダメージは大きいだろう。だから、これを避けるために少し高くジャンプをし、上から攻める必要がある。

 

「レオッ!!」

 

 インテレオンもそれを理解しているからこそ、ボクが指示をする前にジャンプし、ヌオーの真上を位置取った。更に右足に水を集中させ、その場で宙返りをしながら落下。このまま落下速度と遠心力を乗せたかかと落としをぶつけるようだ。

 

「ヌオー!!」

「ヌッ!!」

「「っ!?」」

 

 当たれば大打撃。しかし、その攻撃はヌオーがじしんを起こした際に殴った場所から突如沸き上がった水の柱によって吹き飛ばされる。

 

 まるで間欠泉のように噴き出したその水は、先ほどヌオーが乗っていた波の位置よりもさらに高く、それに吹き飛ばされたインテレオンも同じくらいの高さまで吹き飛ばされる。

 

「『なみのり』!!」

「『れいとうビーム』!!」

 

 一方で、湧き上がった間欠泉に乗って再び出来上がった櫓の上に立ったヌオーは、水を操って打ち上げられたインテレオンに追撃を放つ。これを受けるわけにはいかないインテレオンはすぐさまれいとうビームを放つことで、この攻撃を凍らせて防御。凍った波を足場に、ひとまずボクの近くまで降りて一呼吸つく。

 

(危ない所は脱出できた。けど……)

 

 インテレオンと一緒に上を見上げると、そこにはまた櫓の上でふらふらしているヌオーの姿。それも、先ほど言った通りさっきよりも高さのあるそれは、さっき以上に登るのを困難なものにしていた。

 

(きつい状況だね……)

 

 再び水で満たされたフィールドによって、再び氷塊が浮かび上がり、こちらの足場が制限された。また、もうどくのダメージも蓄積されているせいで長い時間をかけることもできない。

 

(時間を掛けずに、一瞬でヌオーのいる位置に行く方法……)

 

「ここからはゆっくり攻めるわよ!!『なみのり』!!」

「ヌ~!!」

「くっ、走って!!」

「レオッ!!」

 

 ボクが迷っている間に再び始まる波からの逃走。氷塊を足場に次々と飛び回るインテレオンは、しかし体力の減少に伴って動きの精細が掛けており、捕まるのは時間の問題のように見えた。

 

 その様が、余計にボクの心を追い詰めて来る。

 

(早く……早く何か思いつかないと……!!)

 

 けど、焦れば焦るほど何も思いつかない。そんな間にもインテレオンはどんどん追い詰められていく。

 

(どうすれば……)

 

「レオッ」

「?」

 

 焦りと迷いからつい指示が止まってしまうボクに対して、急に聞こえてくるインテレオンの声。苦しそうな身体を抑えて、無理やりこちらに声をかけてきたインテレオンに視線を向けると、インテレオンは急にねらいうちを構えだし、それを水の中に向かって打ち込み始めた。その弾に視線を向けていくと、その策には水中で動いている氷塊があり、インテレオンの攻撃あhその氷塊を打ち抜いていた。

 

「えっ!?」

「……?」

 

 指示もなく急に攻撃したインテレオンの行動に驚きを隠せないボク。それはルリナさんも同じようで、氷塊に当たっているのには気付いていないようだけど、ボクと同じく怪訝な顔を浮かべている。

 

(インテレオンは急に意味の分からない行動をする子じゃない。だとすれば何か意味があるはず……でも氷塊を壊したら足場がなくなって、水の中に落とされるのが余計に速く……いや、待って……もしかして……!!)

 

 ここまで考えてインテレオンの狙いに気づいたボクは、視線をすぐさま水の中に向け、今残っているすべての氷塊の数を把握する。

 

「1、2、3……インテレオン!!全部で14!!見えているのが6で中にあるのが8だ!!」

「レオッ!!」

「一体何を……いえ、関係ないわ!!ヌオー!!足場がなくなったところを『なみのり』で捕まえなさい!!」

「ヌッ!!」

 

 ボクの声を聞いたインテレオンは返事をしながら水弾を乱射。これによって、現状存在するすべての氷塊が粉々に砕かれた。水の中であろうとも正確に射貫くことの出来る射撃力には舌を巻くばかりだ。

 

 しかし、これでインテレオンの足場はすべて消え、あとは水の中に落ちるだけ。そんな隙だらけなところを無視するわけなく、ルリナさんの指示が飛び、ヌオーによってインテレオンに向かって波が集まり始める。

 

 このまま水に落ちてしまえば、インテレオンはもみくちゃにされてしまうだろう。だから……

 

「インテレオン!!」

「レオッ!!」

「っ!?そういえばそうだったわね」

 

 ボクの言葉と共に、姿を背景にとけこませて消えていくインテレオン。これだけ水があちこちにあるのなら、インテレオンはすぐに皮膚を濡らして消えることができる。これで簡単に技は当てられない。

 

「けど、フィールドはこっちの物!!ヌオー!!」

「ヌ~!!」

 

 これに対してヌオーは、インテレオンを狙って攻撃するのではなく、自分の足元の水全てを無差別に動かして全範囲攻撃を繰り出す。これによってインテレオンがどこにいようとも攻撃を当てられるという寸法だろう。今も、ヌオーの立つ櫓のふもとでは、とんでもない量の水が荒れ狂っており、とてもじゃないけどあの中を泳げるようには見えない。

 

(インテレオン……頑張れ……!!)

 

 インテレオンの姿はボクにも見えない。だから祈ることしかできない。

 

 けど、不思議と不安感はなかった。

 

 ボクの中で、インテレオンならできるという、確かな自信があったから。

 

 そして、その想いは現実となる。

 

「レオッ!!」

「ヌッ!?」

「っ!?あの波の中を抜けたの!?たとえ抜けても氷塊があるはず……いや、まさか!?」

「よし!!」

 

 荒れ狂う波を抜け、櫓を作り上げる間欠泉の流れに乗り、ヌオーの足元から飛び出したインテレオンの姿に、ルリナさんとヌオーの表情が驚愕に染まる。

 

 インテレオンの狙いはこうだった。

 

 櫓に登る一番の近道は、今回インテレオンがとったように櫓を作っている間欠泉に乗って泳ぎ、ヌオーのところまで持ち上げてもらう事だ。しかし、それまでの障害として、今までは氷塊が水の中にもあったため、下手に泳ぐとこの氷塊をぶつけられる不安があった。だから水の中は危険だと思って、氷塊を足場に逃げていた。けど、インテレオンはここで逆のことを考えた。

 

 それなら、いっそのことすべての氷塊を消せばいいと。

 

 氷塊がなくなってしまえば、泳ぎが得意なインテレオンにとっては水の中も自分のフィールドだ。唯一の懸念点としては、今回のようにヌオーの無差別ななみのりに巻き込まれる可能性があったこと。その可能性を最小限に抑えるための最後の行動が、あの姿隠しと言うわけだ。

 

 ここまで来てしまえば、本当に運とインテレオンの泳ぐ能力次第だった。特にダメージとどくにおかされている今のインテレオンにどこまで泳ぐ力が残っているかは本当に賭けだったのだけど、その賭けに勝ったインテレオンがルリナさんの想定よりもかなり速くヌオーの懐に潜り込めた。

 

 もう避けるのは間に合わない。

 

「『アクアブレイク』!!」

「レオッ!!」

 

 懐に入ったインテレオンの右アッパーが炸裂し、ヌオーの身体が上に伸びきりながら持ち上がる。

 

 そんな無防備な状態のヌオーに、さらに追撃として右足の回し蹴りを叩き込み、ルリナさんの近くまでヌオーを蹴り飛ばす。

 

「ヌッ!?」

「ヌオー!!」

 

 予想外の奇襲に高高度からの叩き落とし。それはヌオーの体力を削りきるには十分なダメージで。ヌオーは目を回しながら突っ伏す。

 

 

『ヌオー、戦闘不能!!』

 

 

「よし!!やったよインテレオン!!」

「レオ」

 

 ヌオーが倒れたのを見届けたボクは、ボクの近くに着地してきたインテレオンを見ながら喜びの声をあげ、ハイタッチをしようとする。

 

 本当によく戦ってくれた。その事が嬉しくて、その喜びを身体で表そうとするボクの右手。

 

「レ……オ……」

「……え?」

 

 しかし、その右手は空を切る。

 

 もうどくに蝕まれ、波に揉まれ、それでもヌオーの下に辿り着いたインテレオン。しかしそれは決して楽な道ではなく、どうやらインテレオンにとっても、この行動は後のことなど考えていなかった特攻だったらしい。

 

 そして、ヌオーを倒すという一番の目的を達成したインテレオンは、満足したかのように、ボクの横にゆっくりと身体を倒した。

 

 

『インテレオン、戦闘不能!!』

 

 

「インテレオン……ありがとう」

 

 その身体を抱きしめ、沢山の感謝を込めながら、ボクは言葉を零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。