【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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277話

「……ブラッキー……随分と速い登板ですね」

「こちらも、手を隠すとか言ってられなさそうなんで……この子を出すからには一気に突破させてもらいます!!」

 

 ブラッキーの姿を見て苦い顔をするオニオンさん。ジムチャレンジの時に辛酸をなめることとなったあの時のイーブイが、自身にとって苦手タイプであるあくタイプへ進化して立ちはだかって来ることに、あまりいい印象を抱いていないのだろう。ボクがオニオンさんの立場なら同じような表情を浮かべていたはずだ。

 

(まぁ、オニオンさんがその表情を浮かべるのと同じくらい、ボクもちょっとこの展開は望んではないんだけどね)

 

 ブラッキーと言う圧倒的に有利なポケモン。それだけに、ブラッキーの登板はもうちょっと後にとっておき、そこで一気に攻め切りたいという考えだったのだけど、想像以上にこのデスバーンと言うポケモンが大きな壁として立ちふさがってきた。ここで下手にブラッキーを温存なんてしたら、取り返しのつかないところまで流れを取られかねない。故の早めの登板。

 

 取っておきたかった理由としては、他の子たちでタイプ有利を取れているわけではないから。ゴーストタイプと言う通りのいい技をいまひとつで受け止められるのはブラッキーだけ。ヨノワールは弱点を突くことはできるけど、逆に弱点を突かれる側でもあるから、殴り合いと言う若干不安定な行動を強いられるからね。

 

(けど、こうなったらブラッキーで大きく差を突き放すイメージで……!!)

 

「ブラッキー!!『でんこうせっか』!!」

「ブラッ!!」

 

 ボクが指示を出すと同時に、身体を薄く白色に光らせてダッシュするブラッキー。デスバーンが作り出したこのトリックルームは、素早さの反転は出来るけど、技による高速移動まで抑えることはできない。でんこうせっかの他にも、かげうちやしんそく、アクアジェットなんかも、トリックルームの効力を抜け出せる技だ。

 

 あくタイプでありながら、この技も持っているブラッキーは、まさしくデスバーンの作ったこの空間を攻略するに足る能力を持ったポケモンだ。

 

「……『いわなだれ』と『おにび』!!」

「バァ……!!」

 

 素早さが入れ替わった空間で、それでも縛られることなく走り出すブラッキーに対して、空中から岩の雨を落としていくデスバーン。降りそそぐ岩の雨は鋭く、そしてエルレイドに向かって打ったのと同じく紫色の焔を纏ったこの攻撃は、地面に当たるたびに爆発とねっぷうを辺りに撒き散らす。しかし、エルレイドと違ってでんこうせっかで走っているブラッキーは、エルレイドよりも余裕をもってこの攻撃を避けていき、一瞬でデスバーンの懐まで辿り着く。

 

「『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

「……『シャドークロー』!!」

「バァッ!!」

 

 懐まで入ったブラッキーが前足を叩きつけ、これに対してデスバーンが黒色の手を自身の前でクロスを作って守る動きを見せる。

 

「ブ……ラッ!!」

「バァッ!?」

 

 明らかにブラッキーの攻撃を受け止める目的の防御行動だけど、そんなことお構いなく思いっきり技を振りぬいたブラッキー。その破壊力が想像以上に高かったので、デスバーンはそのまま大きく後ろに吹き飛ばされ、トリックルームの壁に叩きつけられる。

 

「追撃!!『でんこうせっか』!!」

「……『おにび』!!」

 

 特性を奪われることなんて一切考慮せずにとにかく前に走り続けるブラッキー。おにびによるやけどを相手にも押し付けられるシンクロは、今回の場においてはなかなか強いかもしれないけど、それを主軸に置くほどではないので、そこは考えずにとにかく攻めまくる。

 

 おおよそブラッキーらしからぬ猛攻に、デスバーンも取れる行動はあまりないのか、影の両手に紫の焔をためて、ブラッキーにやけどを与えようという受けの態勢を取り始める。そこに対して、ただひたすらに真っすぐ走っているブラッキーは、デスバーンとの距離を再びゼロへと戻していく。

 

「……叩きつけて!!」

「突っ込んで!!」

「……全く躊躇しない!?」

 

 懐まで入ったブラッキーに対して、焔に包まれた両手でブラッキーを捉えようとしてくるデスバーン。バラバラになっている粘土板のあいだを繋ぐ影から伸びたその腕は、真正面から相対すれば、紫色の焔もあってかなりの雰囲気を醸し出している。しかし、そんな状況でも決して怯えないブラッキーは、迫り来る焔の手をギリギリまで引き付けたところで、身体を低くして潜り抜け、デスバーンの右腕の下を通過し、後ろに回り込む。

 

「『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

 

 後ろに回り込んで放つのは、後ろ足による回し蹴り。トリックルームの壁際にいたデスバーンを、今度は部屋の真ん中に戻すように放たれたこの技は、デスバーンの背中に突き刺さり、狙い通りデスバーンはステージ真ん中へ吹き飛ぶ。

 

「……デスバーン……掴んで」

「バァ……ッ!!」

「ブラッ!?」

 

 蹴られたデスバーンはステージの中心に飛びながら、しかしそれでも執念で粘土板の中から手を伸ばし、まるで後ろに目が着いているのではないかと錯覚してしまうほど正確にブラッキーを捕まえる。

 

(本体が影でできてるから、手の伸ばし方が常識に囚われてない……)

 

 此方に背中を向けたまま飛んでいったから反撃を喰らうことがないと思っていたら、とんでもない軌道を描いてブラッキーを掴んできた腕に、思わず苦い顔を浮かべてしまうボク。どうやらオニオンさんと戦うにおいて、常識にとらわれていてはだめらしい。

 

「……そのまま岩に叩きつけて!!」

「『あくのはどう』で岩を壊して!!」

 

 飛ばされた勢いをそのままに、ブラッキーをおにびを纏って落とした岩の残骸に向かって叩きつける準備を整えるデスバーン。おにびを纏って落ちたいわなだれは、地面に刺さったままでもその焔を消すことはなく、未だに轟々と燃え続けている。こんなところに叩きつけられたらやけどは必至なので、こちらはその岩に叩きつけられる前に破壊しようとあくのはどうを発射。ブラッキーの口元より放たれた黒色の波動は、しっかりとデスバーンが狙っていた岩を破壊することに成功した。

 

「……まだ!!」

「これじゃ止まらないよね……」

 

 しかし、おにびを纏って落ちてきた岩は1つや2つと言った少ない数ではない。バトルコートの中心にて燃える岩の数は両手の指では余裕で数えられない量あり、これをすべて破壊するのは現実的じゃない。事実、オニオンさんは壊された岩を無視してさらに別の岩に向かってデスバーンを走らせ、今度こそ叩きつけんと思いっきりブラッキーを掴んでいる腕に力を込めた。

 

「バ……ンッ!!」

「ラ……ッ!?」

 

 次の叩きつけはあくのはどうで壊すことが出来ず、ブラッキーを燃えた岩にぶつけられてしまい、そのままダメージを受ける。同時に、身体に炎が少し燃え移り、身体にやけどを負ってしまった。

 

(ブラッキーで長く戦う想定だったから、このやけどはかなりきつい……一応ダメージ自体は少ないから、回復は『つきのひかり』で間に合うはずだけど……)

 

「ブラ……ッ!!」

「バァッ!?」

「え……?」

「……やっぱりフリアさんのポケモン……侮れない」

 

 やけどを負ってしまったことで、この先の戦いのプランを変えなくてはと考えていたら、急にブラッキーの声が響き、同時にデスバーンが苦しみの声をあげる。

 

 この一連の流れにオニオンさんはすぐに気づいたけど、ボクはまだ気づくことが出来ていないかったので、苦しんでいるデスバーンを注視して何が起きたのかを確認する。すると、デスバーンの身体に、確かにやけどの痕が出来ていた。

 

(やけど……?あれってデスバーンが出した『おにび』のせいでついたの?……いや、もしそうなら、手に『おにび』を纏っている時点でやけどになってないとおかしい……それに、ブラッキーがやけどを負った後ってタイミングも加味すると、多分原因はブラッキーの『シンクロ』だよね……?でも、デスバーンには相手の特性を奪う特性があるんじゃ……?いや、もしかしたらデスカーンとは違って回数制限があるとか?……いや、今はそんなことどうでもいい!!)

 

 そのやけどの痕からいろいろ考察してみるけど、正直いますぐに答えが出るとは思えない。なら、今はとにかくこのチャンスを逆に利用することを考えなければならない。

 

「ブラッキー!!『あくのはどう』!!」

「ブ……ラッ!!」

 

 やけどを受けた痛みによって、ブラッキーの拘束が少し緩んだのを確認したボクは、すぐさまブラッキーに攻撃を指示。それも、やけどによって威力が下がることの無い特殊技を選択することで、デスバーンに対して一方的にこうかばつぐんのダメージを与えることを可能とする。

 

「……く……『いわなだれ』!!」

「バァ……スッ!!」

 

 あくのはどうを受けて後ろに下げられるデスバーン。やけども相まってかなり苦しい立場に追いやられた彼だけど、それでもここで諦めるわけにはいかないので、あくのはどうを放ってくるブラッキーに対して、再び岩の雨を降らせて来る。勿論おにびを纏わせているため、通常のいわなだれに比べるとかなり威力が上がっている攻撃だ。しかし、そこからやけどによる物理ダメージの減少が入ってしまい、ブラッキーのあくのはどうに対して上手く反撃が出来ていなかった。

 

 結果、降りそそぐ紫色の隕石は、全てブラッキーの黒い波動が打ち抜いた。

 

 とは言っても、あくのはどうを受けたいわなだれは、砕けたとしても小さな破片となってブラッキーに向かって飛んではくる。

 

「『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

 

 だから、この岩の破片に対して、ブラッキーはイカサマを放って前足で打ち返す。

 

 燃えている破片を触っているので、やけどしてしまう程熱い。けど、既にやけどを負ってしまっているのであれば、もう怖気づく必要もない。前足と尻尾を器用に使って次々と打ち出される熱い礫は、デスバーンに向かって雨のように飛んでいく。

 

「……本当に……器用……!!……『シャドークロー』!!」

「バァス……!!」

 

 これに対して、影の両手を巧みに使って防いでいくデスバーン。いわなだれと違って礫と言う小さな破片になっているからこそ、デスバーンの大きな手の一振りで、かなりの量の礫を防ぐことが出来ていた。デスバーンもやけどを患っている以上、追加効果に期待もできないので、この攻撃でデスバーンに大きなダメージが入ることはないだろう。

 

 けどこの行動は、ブラッキーに距離を詰める余裕を作ってくれる。

 

「ブラッキー!!」

「ブラッ!!」

 

 デスバーンの両腕が乱舞している中、その合間を縫って接近したブラッキーが、デスバーンの右側を取ったところで前足を黒く染めて構える。

 

「『イカサマ』!!」

「……『シャドークロー』!!」

 

 ブラッキーの右前足の振り下ろしと、デスバーンの右腕の薙ぎ払いがぶつかり合う。こちらがイカサマで攻撃している以上、攻撃力はお互いイーブン。しかし、タイプ相性は明確に差として現れ、デスバーンの腕だけが一方的にはじかれた。

 

 ここを逃さないブラッキーは、すかさず左前脚による振り下ろしを行い、そしてこれを受けるわけにはいかないデスバーンは、トリックルームの効果と、自身が後ろに弾かれた勢いを利用して、ブラッキーから少しでも距離を取ろうと行動。これによってブラッキーの攻撃が半歩足らず、空を切る。

 

「……デスバーン!!」

 

 この隙を好機と取ったデスバーンが、空ぶった左前足を地面に叩きつけていたブラッキーに対して、影の左腕による振り下ろしを行う。

 

「ブラッキー!!回転!!」

 

 けど、この攻撃はブラッキーに対する攻撃としてはまだ足りない。

 

 左前脚を地面につけた状態で、そのまま身体を左回転させたブラッキーは、振り下ろされるデスバーンの左腕に対して両後ろ足による回し蹴りをぶつけて攻撃を弾き、その勢いを利用して今度は右前足をデスバーンに叩きつける。

 

「追撃いくよ!!『あくのはどう』!!」

「ブラッ!!」

 

 イカサマを受けたことによって後ろに下げられるデスバーンに対して、そのまま追撃するべく黒色のはどうを発射。右腕も左腕も先のやり取りで弾かれているデスバーンには、この攻撃を防ぐすべはない。

 

「……デスバーン……横に避けて!!」

「バァ……ンッ!?」

「……時間が」

 

 腕で防げないのなら走って逃げるしかない。トリックルーム下であることを利用して、反転して速くなった自身の素早さを信じて、あくのはどうの軌道上から逃れるように指示を出すオニオンさん。それに従ったデスバーンも、慌てて横に動こうと身体を動かした。

 

 しかし、先ほどまで軽快に動いていたはずのデスバーンの身体が急に硬直してしまい、動きが一気に鈍くなる。その様子を見たオニオンさんは、空を仰ぎながら一言、苦しそうな表情を浮かべながら言葉を零した。

 

 視線の先には、徐々に崩れていく直方体の結界。それが表すのはトリックルームの消失。つまり、デスバーンの機動力の消失だ。

 

「バァッ!?」

「……デスバーン!!」

 

 こうなってしまったらもう、デスバーンに攻撃を避けるすべはない。無防備なところにしっかりと突き刺さったあくのはどうは、直撃と同時に激しい音を立て、デスバーンをオニオンさんの下へと吹き飛ばし、その身体を地面へと沈めた。

 

 

「デスバーン、戦闘不能!!」

 

 

「よし……まずは先手!!」

「ブラ……!!」

 

 やけどの痛みに顔をゆがめながらも、勝てたことを喜ぶブラッキー。相性上勝てる確率が高いのは分かっていたし、途中からこの対面においては負ける気はしなかったけど、やはりこうやって結果として残るとちゃんと嬉しさを感じる。

 

「……ありがとう……デスバーン」

 

 そんなボクとは対照的に、悔しそうな声をあげながらデスバーンをボールへと戻すオニオンさん。傍から見ても一方的に近かったこの展開に、やはり思うところがあるのだろう。

 

「……強い……でも……ブラッキーに苦戦しちゃうのは分かってた……だから!!」

 

 しかし、そんな負の感情はすぐにリセットし、すかさず2つ目のダークボールを投擲。空中で割れたボールの中から現れたのは、ピカチュウを彷彿とさせる被り物をかぶったポケモン。

 

「……ミミッキュ……お願いね」

「キュキュ……」

「ミミッキュ……ブラッキー対策って感じだね」

「ブラ……」

 

 ゴーストタイプでありながら、フェアリータイプも兼ね備えることで、あくタイプに抗うことの出来る数少ないポケモン。

 

 明らかにブラッキーを意識して繰り出されたそのポケモンを見て、ボクはすぐに行動を起こした。

 

「戻って、ブラッキー」

「ブラ」

「……やっぱりそうしますよね」

 

 その行動はブラッキーの交代。

 

 やけどしているとはいえ、ブラッキーにはまだまだ活躍できる場所がある。ここで無理に突っ張って、明らかな対策であるミミッキュに黙って倒される理由は存在しない。

 

「いくよマホイップ!!」

「マッホ!!」

 

 代わりに繰り出されたボクの3人目のポケモンはマホイップ。クリームを展開しながらディフェンシブに戦うこのポケモンであるのならば、ミミッキュに対してかなり有効的に動くことが出来ると判断しての選出だ。

 

(ミミッキュの特性『ばけのかわ』……守りにおいてかなり強力だけど、その分攻め手に欠けるポケモンのはず。攻撃面で強くなろうとすれば、必ず『つるぎのまい』をどこかでしなきゃいけない。実際に、今までのオニオンさんは、この『ばけのかわ』を盾にして『つるぎのまい』をしてから攻めてきていた)

 

 攻撃能力をぐーんと上げるつるぎのまいはかなり強力な技だ。これを1つされるかされないかで、この先の戦闘の流れがガラッと変わってしまう程。勿論弱点として準備がかかるというのがあるから、その間に攻撃をされたらつらい展開が待っている。けど、そこをばけのかわがフォローすることによって、安全につるぎのまいを行うことが出来るというのが、このポケモンの強い所だ。

 

 けど、時間をかけるということはこちらにも準備の時間を与えてくれるという事。相手が時間をかけて強くなるのなら、こちらは時間をかけて硬くなり、フィールドを作り上げるポケモンだ。

 

(『つるぎのまい』をしている間に、クリーム展開と『とける』で迎撃準備を整える!!)

 

 相手が準備をするのならこちらも準備をすることで対応する。そうすれば、最後はアシストパワーがある分こちらの方が火力が上になる。ばけのかわを剥がす方法をどこかで1回模索しないといけないのは面倒なところだけど、そこ以外はこちらが有利なはずだ。

 

「マホイップ!!クリーム展開からの『とける』!!」

「マホッ!!」

 

 その考えを通すためにさっそくクリーム展開ととけるを使用。何をするにしても、こちらも準備を整えないと戦えない。

 

「……ミミッキュ」

「キュキュ……」

 

 守りの準備を整えているボクたちを見て、言葉を零すオニオンさん。相変わらず大きくないけどしっかり通る声に、思わず背筋がピンとなってしまう。

 

 同時に、何か嫌な予感が駆け巡る。

 

「……『のろい』」

「キュ……」

「っ!?マホイップ!!急いでクリームの中!!」

「マホッ!?」

 

 その予感を裏付けるかのように告げられたオニオンさんからの指示はのろい。ゴーストタイプか、それ以外が使うかによって性能がガラッと変わるこの技は、ゴーストタイプが使うと自身の体力半分を生贄に、相手に強力なスリップダメージを与える技に変わる。

 

 このダメージは相手の防御力を無視し、固定のダメージを相手に与え続けてくるため、マホイップのような耐久することを主に置いているポケモンに対してこれでもかと言うくらい突き刺さってくる技だ。

 

 勿論この技のことはよく知っているし、ミミッキュも使えるということも理解はしているし、なんならジムチャレンジの時だって使われた。けど、オニオンさんについて勉強する過程で、チャンピオンリーグでは一度も使っていなかったし、昨日のメロンさんとのバトルも、あとでアーカイブを確認してみたらミミッキュが使っていた4つの技にのろいは含まれていなかった。だから、あれはジムチャレンジの時だけで、今回は使ってこないと思っていた。

 

(それでも使ってきたってことは……ブラッキーが逃げたとしても、その逃げ先に大きな負担を与えるための技って事か……!!)

 

 完全にボク対策の技構成へまるっと変えてきているオニオンさんの大胆さに驚きながら、ミミッキュの身体に紫色の釘が撃ち込まれていくのを見届ける。すると、ミミッキュの身体から紫色の煙があふれ出し、それがクリームの中に潜っているマホイップを追いかけて凄い勢いで飛んでくる。

 

「マ……マホ……ッ!!」

 

 紫の煙とマホイップによる鬼ごっこ。伸ばされたクリームを縦横無尽に泳ぎ回って何とか逃げようと必死に動くマホイップだけど、クリーム展開量が少ないため逃げ回るのに限界がすぐにやってきた。結果、クリームの端まで追い詰められたマホイップにのろいの煙が当たり、呪われた状態になってしまう。

 

「マ……ホ……ッ」

「く……せめて『ばけのかわ』は剥がさないと……『マジカル━━』」

「……させない……『いたみわけ』!!」

「キュキュ!」

「なっ!?」

 

 これでもうマホイップは交代しない限り長時間戦えない。ならせめてばけのかわを剥がすために攻撃をしようと技を構えるマホイップだけど、攻撃を行う前に先回りしていたミミッキュがマホイップの身体に接触。すると、2人の身体が怪しく光り、光が治まったと同時にマホイップは身体に傷を作り、ミミッキュはのろいによって身体に刻まれた傷が少し癒え始める。

 

 いたみわけ。

 

 お互いの体力を一度合計させ、その後で2等分にして両者に振り分けるという技。体力が多い方が損し、体力が少ない方が得をするこの技は、この状況においてはのろいによって体力を消費したミミッキュが大きく得する形となる。

 

「マホ……ッ!!」

 

(まずい……マホイップの体力が一瞬で奪われてる……)

 

 いたみわけによる減少と、のろいによるスリップダメージ。予想外の技による2連撃によって、マホイップでしようとしていたことが全て台無しにされてしまっている。そのことが、ボクの思考をかき乱していく。

 

(『のろい』を解くためにマホイップの交代を……いや、それでもし交代先に『のろい』と『いたみわけ』を入れられたらもっとひどいことになる……でもこのまま継続したところでマホイップが倒されるのはは確定……)

 

 どちらをとっても裏目が存在する運命の選択肢。迷えば迷う程、術中にはまっていく。

 

「……フリアさん……どうしますか?」

 

 そんなボクの様子を見ながら、小さく言葉を零すオニオンさん。

 

 デスバーンを凄く順調に乗り越えて、少し気が楽になったところでこの落とし穴。

 

 オニオンさんの、本気のゲームメイクが牙をむき始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




さまようたましい

発動条件は、この特性を持っているポケモンに対して接触攻撃をした時に発動で、その効果は、自身の特性と相手の特性を入れ替える。となっています。そのため、エルレイドに直接攻撃されたデスバーンがその時点で効果を発動し、きれあじとさまようたましいを交換。その後、さまようたましいを持ったエルレイドがボールに戻ることによって、場にはきれあじを持ったデスバーンと、シンクロをもったブラッキーが残る。この時にはもうさまようたましいが存在しないので、ブラッキーは特性を奪われなかったという経緯になります。ややこしいですね。

ミミッキュ

のろいいたみわけ型。前回はのろいだけでしたけど、そこにいたみわけが追加されました。ますますいやらしさが加速していますね。




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