【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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280話

 残り手持ちは3対4。数では有利を取る事が出来たオニオンさんとのバトルは、しかし4人中2人は既に消耗しているという体力面での不利を背負う形となっていた。先のシャンデラの最後の行動と言いといい、この差と言い、少しポジティブに考えるのが難しい状態だ。

 

 どこまでも強かで、やられたとしてもタダではやられない。そんな周到さが、ゴーストタイプらしさとオニオンさんらしさをこれでもかというくらい表していた。

 

「……いこう……サニゴーン」

「次はサニゴーン……また火力の高いポケモンだ……」

 

 そんなオニオンさんの4人目のポケモンはサニゴーン。シャンデラと同じく、特殊能力に秀でたその能力は、火力という面においてはシャンデラに勝るとも劣らないものを持っており、特殊の防御面においては遥かに上回っている。しかし同時に、シャンデラ以上に物理面に対して脆く、足が遅いのが特徴的なポケモンだ。

 

(ジムチャレンジでも見た子だ。ミミッキュのことを考えたら、また違う立ち回りしてくるのかな……)

 

 これまでの戦いから、もはや事前情報が当てにならないことが分かってしまっているので、とにかく警戒する範囲を広くしていく。オニオンさんがボクとの戦いのためだけに技や立ち回りを修正しているので、もうこうするしかない。

 

(って何消極的な考えになっているんだ。忘れるな挑戦者!!慎重と臆病は別物だよ!!)

 

「インテレオン!!『アクアブレイク』!!」

「レオッ!!」

 

 サニゴーンが何をするのか分からないので、それを待ってから行動しようか一瞬考えたものの、よく考えればサニゴーンは先も述べた通り、速度と物理防御に対して大きな不安を抱えるポケモンだ。そして今のインテレオンはげきりゅうによって火力が上がっている。となれば、今ボクがするべき事は、この上がった火力を使ってとにかく押すこと。げきりゅうが発動している以上インテレオンは長期戦ができないし、もしサニゴーンがシャンデラのようにちいさくなる見たいな、させたら終わる技を持っていたらそれこそやばい。だからこそ、兎に角前に出てこちらのペースに持っていくのが正義と判断したボクは、インテレオンに攻撃を指示。インテレオンも同じ気持ちなのか、すぐさま両手に水を纏いながら全力ダッシュを行った。

 

 実際、この行動自体は間違えているとは思わない。長期戦が不可能な以上、どっちにしろ前に出るしかないのが決まっているし、分の悪い勝負とも思わなかった。

 

 ……が。

 

「……『ふぶき』」

「ゴォォォン!!」

「ッ!?」

「レオッ!?」

 

 そんな前のめりなボクたちの攻撃を一瞬で止める、暴力的な氷の風が叩きつけられる。

 

 威力だけを見れば、恐らくモスノウの方が高く、タイプ相性的にもインテレオンにはあまり刺さらない攻撃だ。しかし、今回目を見張るべきは威力の高さではなく風の強さだ。前に走り出そうと前傾姿勢になっていたインテレオンの前進を一瞬で止めてしまうその風力は、インテレオンのさらに後ろにいるボクが思わず一瞬目を閉じて、反射で腕で顔を覆ってしまうほど。もちろんこのまま目を瞑り続ける訳にはいかないので、腕を盾に無理やり目を開けるけど、腕の隙間から入る風のせいで目が乾きそうで辛い。幸い、サニゴーン自身がこのふぶきの制御に集中しているせいで、ここからさらに追撃が来る可能性は無さそうだけど、このままではふぶきにあおられて倒されてしまうために、この距離から無理やり突破しなくちゃいけない。

 

「くっ……インテレオン!!『ねらいうち』!!」

「レ……オッ!!」

 

 足が動かなくなってしまったインテレオンに、仕方なくねらいうちを指示。インテレオンも、不満気半分苦しさ半分の声を上げながら、それでもしっかりと相手を狙って水弾を発射。小さく圧縮されて放たれたそれは、吹きすさぶふぶきの流れに逆らうように真っ直ぐ突き進み、きあいだめの効果もあって吸い込まれるようにサニゴーンの急所へ飛んでいく。

 

(『げきりゅう』も乗ったインテレオンの本気の一撃!!いくらとくぼうが高くても、無視はできないでしょ!!)

 

「……サニゴーン……『パワージェム』」

「ゴォォォン」

 

 ねらいうちを確認したオニオンさんが指示したのはパワージェム。宝石のようなキラキラした石を呼び出し、発射するその技は、今回は攻撃目的ではなく、サニゴーンの前に固めて呼び出すことで盾のような使い方をしていた。やはりオニオンさんからしてもこの攻撃は受けたくないらしい。

 

 パワージェムの盾にしっかり受け止められたねらいうちはその場で爆散し、固まったパワージェムを四方へ吹き飛ばすだけで終わってしまったため、残念ながらノーダメージという結果に終わる。しかし、今回の狙いはダメージを与えることでは無かったので問題はなかった。

 

「インテレオン!!」

「レオッ!!」

 

 パワージェムを打ったということは、他の技は打てないということ。つまり、この瞬間はインテレオンを止めるふぶきが存在しない。ねらいうちを防ぐことに集中してしまった結果、もうサニゴーンへの接近を邪魔する壁は無くなってしまっている。

 

「次こそ叩き込む!!『アクアブレイク』!!」

「レオッ!!」

 

 自由に動けるようになったのであれば、すばやさに圧倒的な差があり、上を取れているこちらが距離を詰めるのに時間はほとんど必要ない。瞬きをしている間にあっという間にゼロ距離まで駆け抜けたインテレオンは、右手に水を纏い、サニゴーンの懐まで潜り込んで目一杯後ろに引き絞っていた右腕を、全力で前に振り切った。

 

 物理防御の低いサニゴーンに、こんな攻撃が当たればただでは済まないけど、足の遅いサニゴーンでは避けられない。ワンパンは出来なくても致命傷は確定で入る。

 

「……『ハイドロポンプ』」

「ゴォ……ッ!!」

「「っ!?」」

 

 しかし、そんなピンチな状況であろうと、オニオンさんの声色に変化はなく、まるで予想していたと言わんばかりにハイドロポンプを指示。これを聞いたサニゴーンも、この指示をされる前から既に水を貯めていたのか、直ぐに口元に水の塊を作り出し、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()発射した。

 

 圧縮された水が急に地面に落ちたことによって、着弾地点で起きる小規模な爆発。この衝撃を受けたインテレオンは、思わず攻撃を中断してしまい、この爆風に飛ばされないように踏ん張りながら、両腕をクロスさせて衝撃を受け止めていた。

 

(凄く強引な接近拒否……!!でも、あんな至近距離で爆発させたら、サニゴーンだって無事じゃないはず……っ!?)

 

 その衝撃の大きさから、自爆覚悟で接近拒否をしたのだと思ったボクだけど、前を見るとその考えが間違いだったと気づく。なぜなら、サニゴーンは現在進行形で、インテレオンの足元に向かって水を吐き出しながら後ろに飛んでいたから。

 

「『ハイドロポンプ』の反動を利用して後ろに飛んでるのか!!」

「レオ……ッ!!」

 

 発射の反動で後ろに行くのなら、着弾して爆発する前に後ろに下がれるので爆発に巻き込まれることは無い。これによってサニゴーンは安全にインテレオンから離れることができるし、1度離れたあとはハイドロポンプの着弾先をインテレオンの足にちゃっかり変更しているため、開けられた距離をインテレオンが詰め直すことも出来なくなっていた。

 

 そんな時間が数秒続き、ようやくハイドロポンプが止まったと思った時には、既にもうサニゴーンとインテレオンの間は開幕の時以上に空いてしまっていた。これでまた詰め直しとなる。

 

(もう1回やり直し……けど、さっきのやり取りを思い出す感じ、サニゴーンに防御行動を1回でも取らせたら、インテレオンの足の速さならその隙をつけば間に合う!!)

 

 先程ねらいうちを防御された1連の行動に似たことをもう一度再現するのは、正直そんなに難しい話では無い。げきりゅうにきあいだめと、2つの状態が発生している今のインテレオンの攻撃は、向こうとしても絶対に受けられない技だ。だから、必ずこの技を潰すために動いてくる。

 

「……サニゴーン……『パワージェム』」

「ゴォォォン……」

「来た!!インテレオン!!『ねらいうち』!!」

「レオッ!!」

 

 即ち、先手から動いてこちらに技を打たせない行動をとるということだ。

 

(その動きは読めてる!!)

 

 ふぶきで止まらないことは先のやり取りでバレているので、今度は宝石の光による弾幕攻撃での圧かけ。けど、そこを予め読んでいたこちらは、両手に最初から水を集めており、相手が技を打つよりも早くねらいうちの準備を完了させており、その発射態勢へと移っていく。

 

 既に両人差し指は前に突き出しているので、もうあとは発射するだけ。サニゴーンの周りにはまだ宝石が生成されきれていないので、こちらの攻撃が先に当たるはずだ。

 

「行け!!」

「レオ……ッ!?」

「……え?」

 

 しかし、次の瞬間目の前で起こったのは、インテレオンの技が当たった場面ではなく、インテレオンの右脇腹に、1つの宝石が突き刺さっている場面だった。

 

 その宝石の正体は、誰がどう見てもパワージェム。サニゴーンの攻撃だ。

 

(なんで!?サニゴーンの周りの宝石は今出来た所……だからあの脇腹の宝石は……いや、違う!!)

 

 サニゴーンからのまさかの攻撃にパニックになりかけるけど、視線を慌てて動かしてすぐに答えに到達する。

 

 今インテレオンが立っている場所は、先程までサニゴーンがいたところであり、同時にサニゴーンがインテレオンのねらいうちを防ぐためにパワージェムの盾を作った場所だった。

 

 あのパワージェムは、インテレオンのめらいうちを受け止めた時の爆発によって散り散りになってしまった。けど、その時はまだ壊れてなくて形を保っていたのだとしたら?

 

(やられた。さっき『ハイドロポンプ』でインテレオンの足をねらたのは、距離を離すだけじゃなくて、インテレオンをパワージェムの盾があった場所に釘付けにするためでもあったんだ)

 

 ボクがオニオンさんの真意に気づいた時にはもう遅い。脇腹からの奇襲によってダメージを受け、バランスを崩しているインテレオンに、まるで逆再生しているかのように集まって来る宝石たちを避ける術は無い。そのまま次々と宝石が突き刺さっていき、更には今しがた作り出した宝石さえもインテレオンに向けてぶつけていくことによって、体力が削れているインテレオンはそのまま地面に倒れることとなる。

 

 

「インテレオン、戦闘不能!!」

 

 

「ありがとうインテレオン。気づけなくてごめん」

 

 ここまで頑張ってくれたインテレオンにお礼と謝罪の言葉を投げながらリターンレーザーを当て、しかしいつまでのクヨクヨする訳にはい行かないので、すぐに気持ちを切り替えて次のボールに手をかける。

 

「お願い!!ブラッキー!!」

「ブラッ!!……っ!!」

 

 インテレオンの次に出てきたのは、デスバーン戦ぶりの再登場であるブラッキー。デスバーンとのバトルのダメージとやけどが残っているので、少し苦しそうな顔を浮かべてはいるものの、それでもやる気いっぱいなのか、しっかりと目の前を見つめて声を上げている姿は、とても大きな信頼を寄せるに足る、逞しい姿だった。

 

「『でんこうせっか』!!」

「ブラッ!!」

「……『ふぶき』!!」

「ゴォォォンッ!!」

 

 その姿を確認したボクは、直ぐさま攻撃を指示。遠距離攻撃ではインテレオン以上に不利を背負うこととなるブラッキーなので、早く距離を詰める必要があるから指示内容はでんこうせっか一択。オニオンさんもそれがわかっているので、攻撃範囲の広いふぶきで、こちらの動きを制限させに来た。いくらでんこうせっかをしたブラッキーが速いとはいえ、これでは近づけない。

 

「だから……ブラッキー!!あの宝石群に『あくのはどう』!!」

「ブ……ラッ!!」

 

 それを理解した上で、ブラッキーは先程インテレオンを倒したパワージェムの塊に向かってあくのはどうを発射。これにより宝石たちは再び爆発に巻き込まれ、散り散りになって飛び始める。

 

「今!!その『パワージェム』を足場に『でんこうせっか』!!」

「ブラッ!!」

「……っ!?」

 

 その様子を見て、十分足場に出来ると判断したボクは、すぐさまでんこうせっかを指示。空中に舞うパワージェムを足場に、立体的に動き回りながらふぶきを避け、ぐんぐんとサニゴーンへと距離を詰めていく。

 

「……あの時の『スピードスター』みたいな戦法……今度はこっちの技を……!!」

「今のブラッキーは『スピードスター』忘れちゃっていますからね。だから技をお借りします!!」

 

 ジムチャレンジの時の戦いを思い出しながらオニオンさんが言葉を零す。確かに今のこのブラッキーの動きは、まだイーブイだったころに行われたオニオンさんとのバトルの時を思い出すような動きをしている。オニオンさんに対して2回目の行動と言うことで、対処される可能性はあるかもしれないけど、あの時と違って今回はゲンガーではなくサニゴーンが相手。素早さに天と地の差があるから、いくらわかっていても追いかけきれないと判断しての行動だ。

 

「ゴォ……」

「……追いきれない」

 

 その発想はどうやら間違いではなかったらしく、ふぶきを避けきり、そして縦横無尽に飛び回るブラッキーを前に、サニゴーンは重い身体を持ち上げて周りを見回すことしかできてない。

 

「……今!!ブラッキー、『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

 

 あちらこちらに視線を飛ばして何とか追いかけようとするものの、視線が完全に外れ、サニゴーンがブラッキーを見失ったのを確認した。

 

 その瞬間を逃さないようにすかさず技を指示。真っ黒に染まった前足を振ることによって、パワージェムの1つを弾き飛ばし、サニゴーンの背中に直撃させる。

 

「ゴォッ!?」

「……落ち着いて……9時の方向に『シャドーボール』!!」

「ゴ……ォッ!!」

「『あくのはどう』!!」

「ブラッ!!」

 

 死角から飛んできた岩の弾丸に怯みそうになるところを、声をかけてすぐに宥めて、反撃の一手を放ってくるオニオンさん。このあたりの采配はもはやいうことなしだけど、ここまでくればさすがにもう慣れてきた。反撃を予知していたボクは、すぐさまあくのはどうで反撃。特殊攻撃力では逆立ちしたってサニゴーンには勝てないけど、その分をタイプ相性で補うことによって相殺。こちらがすぐに攻撃を放ったことで、サニゴーンの目前で爆発した2つの技は、サニゴーンの視界を奪うことに成功。この隙に地面に着地したブラッキーは、すかさずでんこうせっかでサニゴーンの懐へ飛び込み、そこでまた前足を真っ黒に染めてあげる。

 

「『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

「ゴンッ!?」

 

 思いっきり殴られたサニゴーンは、苦しそうな声をあげながら大きく後退。イカサマと言う技の性質上、自分の攻撃力ではなくサニゴーンの攻撃力を借りて殴っているので、物理方面が得意では無いサニゴーンに対してはもしかしたらあまり威力が出ないかもしれないと思っていたけど、どうやらそれ以上に物理防御が脆いせいか、その心配は杞憂に終わってくれるようだ。サニゴーンの身体に想像以上にダメージが入ってくれているのがよく分かった。

 

「なら、このまま攻めるよ!!ブラッキー!!」

「ブラッ!!……ブラ?」

 

 こちらの攻撃が通るというのなら、もうやることは決まっている。

 

 でんこうせっかでサニゴーンの周囲を走り回りながら、とにかく距離を詰めて常に懐に入り続け、ひたすらにイカサマをぶつけ続ける。インテレオンがされてしまった時のように、ハイドロポンプで距離を取る作戦も、1度見てしまったものであるのなら対処は簡単だ。1度離れ、射線から身体を横にずらしてもう一度突撃するだけで対策が取れてしまうので、いよいよ持って距離を離される理由がない。

 

 ……強いて言えば、先程ブラッキーが少し首を傾げたように見えたのが気になるが。

 

「今のは……ううん、とにかく攻撃!!『イカサマ』!!」

「……『パワージェム』」

 

 とはいえ、気になることよりも今は攻めることの方が大事なのでブラッキーは突撃を再開。

 

 これに対し、さすがにこのままではまずいと思ったオニオンさんが、サニゴーンにパワージェムを指示し、サニゴーンはこれをブラッキーに発射するのではなく、自身の周りに浮かばせて、自身の周りを周回するように動かすことによって、自分の身を守る衛生ビットのような使い方をしてきた。

 

 周回速度をあげて複数の岩を自身の周りで動かすことで、触れてきたものを自動的に弾き飛ばすその盾は、確かにブラッキーの進撃を一時的に阻害し、こちらの動きを制限してきた。

 

 けど、その盾はあくまでも近づくポケモンを弾くだけであって、全てを弾く万能の盾では無い。

 

「『あくのはどう』!!」

「ブラッ!!」

 

 指示を受けたブラッキーは、あくのはどうをサニゴーン本体ではなく、サニゴーンの足元に発射。これにより、サニゴーンの足元で爆発が起き、この爆風によってパワージェムがあおられて、サニゴーンの防御壁が一瞬緩む。また、あおられたパワージェムも、飛ばされた上で少しだけ空中に残ってしまっていたので、むしろブラッキーの足場が増え、更にこちらの動きが複雑化する結果となった。

 

 こちらの機動力は上がり、あちらの防御は弱くなる。そうなってしまえば、もうブラッキーを止めるものはいない。

 

「『でんこうせっか』!!」

「……『シャドーボール』」

 

 真正面から飛んでくる黒い球を走りながらジャンプで避け、空中の岩を足場に3角飛びをするブラッキー。これに対してサニゴーンは、この3角飛びの着地際を狙って2つ目のシャドーボールを発射。シャンデラと同じように虚空に飛ばされたこの球は、着地際のブラッキーの背中側に現れ、そのまま直進してくる。

 

「わざと受けて、そのままダッシュ!!」

「ブラ……ッ!!」

「……っ!?」

 

 このシャドーボールをわざと背中に受けたブラッキーは、その衝撃をでんこうせっかに載せて前に走る推進力として利用。一瞬で最高速度に達したブラッキーは、サニゴーンが次の動作に入る前に懐に入り込むことに成功した。

 

「ブラッキー!!『イカサマ』!!」

「ブラッ!!」

 

 サニゴーンを守る岩は吹き飛ばしたし、ここから逃げられるほどサニゴーンは速く動けない。つまり、ブラッキーの攻撃を止めるものは何もいない。

 

(これでとどめ!!)

 

 前足を黒く染めたブラッキーが、サニゴーンにとどめを刺すべく右前脚を振りかぶり、サニゴーンに向かって勢いよく振り下ろされた。

 

「ブラ……」

「ゴーン……」

「……え?」

 

 が、そんなブラッキーの攻撃は当たることなく、前足に宿していたあくタイプの力はどんどん霧散していき、ブラッキーは何故か地面に倒れることとなる。更に、攻撃を受けていないはずのサニゴーンまでもが地面に突っ伏した。

 

 

「サニゴーン、ブラッキー、戦闘不能!!」

 

 

「な、何が……?」

 

 そして審判から告げられる両者ノックアウトの知らせ。その発言をにわかに信じることは出来ないけど、でもブラッキーたちに視線を向ければ、確かに目を回しながら地面に倒れている。これは間違いなく戦闘不能の証だ。しかしその理由が一切分からない。

 

「……『ほろびのボディ』」

「……え?」

 

 そんな混乱状態のボクに呟かれるオニオンさんの言葉。それと同時に、ブラッキーとサニゴーンの身体から、黒色のもやのようなものが浮び上がる。

 

「……サニゴーンの特性です。……サニゴーンに接触攻撃が行われた時……接触者とサニゴーンは『ほろびのうた』を聞いた時と同じ状態になります……『ほろびのうた』についてはご存知ですよね?」

「……」

 

 オニオンさんの言葉に無言で頷き、そして今の現象を全て理解した。

 

 ほろびのうたは、歌を歌ったものと歌を聴いたポケモンが一定時間後に強制的に戦闘不能にさせられる技だ。対策としては、1度ボールに戻してしまえばその効果が消えるため、交換するのが一番手っ取り早い。しかし、今回はその状態がまさかの特性で付与されているとは思わなかった。だから交換できずに倒されてしまった。

 

 オニオンさんに対する強力なカードのブラッキーがついに落ちた。けど、このバトルも後半戦。残っているポケモンを考えたら、不利とまでは言わないだろう。

 

 まだまだ勝てる範囲。

 

(ありがとう、ブラッキー……絶対に勝つから、見ててね)

 

 ブラッキーを戻しながら、ボクは終盤に向けて気持ちを整えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ほろびのボディ

サニゴーンがSVにいないことと、剣盾でもマイナーだったことから、デスバーンと同じくこの特性自体知らない人も多そうですよね。効果はオニオンさんが述べた通り、サニゴーンに対して接触攻撃が行われたときに、両者にほろび状態を付与する。です。正直使い勝手はあまりよくないですが、もう一つの特性がくだけるよろいなので、トリルで使う場合は強制的にこちらの特性を使うことになりますね。そうでない場合は、こらえると組み合わせてくだけるよろいで育てた方が強い気がします。




通算9回目のフルバトルも、ようやく終盤戦です。




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