「戻って、モスノウ。お疲れ様」
「……ありがとうポットデス……ゆっくり休んで」
ダブルノックアウトした両者を労いながらボールに戻し、いよいよ最後のポケモンが入ったボールに手をかける。
笑っても泣いても、これが最後の1人。その事実から来るプレッシャーと緊張を少しでも軽くするために、ボクは目を閉じ、深呼吸をひとつ。
大きく吸って、吐ききったところで目を開け、対面で待つオニオンさんと目が合った。
「……もう最後の1人になっちゃった……でもなんででしょう……寂しくない……ううん……むしろワクワクしてます」
「同じです。ボクも今、この瞬間が楽しくて楽しくて仕方がないです!!」
仮面を被っているから表情は読み取れない。けど、聞こえてくる声色から、少なくともこのバトルを楽しんでくれていることはわかる。だから……
「……「最後まで、楽しく!!」」
お互い右手に持ったボールを前に突き出し、ダイマックスバンドよりエネルギーをボールに注ぐ。
「「……っ!!」」
一瞬にして体積の大きくなったボールを抱えたボクたちは、相手も準備が出来ていることを確認したと同時に、息を止めて勢い良くボールを宙へと放り投げる。
「……行くよ……キミとボクの力で……勝利をこちらに縫いつける!!……ゲンガー……キョダイマックス!!」
「君にすべてを託す!!行くよヨノワール!!ダイマックス!!」
ボクの投げたボールは空中で割れ、オニオンさんの投げたボールは地面の中に吸い込まれ、地面の中で割れた音を響かせ、中から切り札が登場する。
ボクの前にはいつも通り大きくなったダイマックスヨノワールが、オニオンさんの前には、地面から身体を生やし、まるでトンネルと錯覚してしまいそうなほど大きな口を開けてこちらを見つめるキョダイマックスゲンガーが現れた。
「ゲンゲェェェラァァァッ!!」
「ノワアアアァァァッ!!」
お互い雄叫びをあげることで準備完了であることを示し、その瞳に闘志を宿す。当然その思いを汲み取るまでもなく、戦う気満々であるボクとオニオンさんも、すぐさま口を動かした。
「『ダイホロウ』!!」
「……『キョダイゲンエイ』!!」
「ゲェラァッ!!」
「ノワァァッ!!」
指示した技はどちらもゴーストタイプを元にしたダイマックス技。オニオンさんの方はキョダイマックスしているため技の名前は変わってしまっているけど、放っている攻撃のタイプは同じだ。
ヨノワールは両手を合わせて自身の周りに色々な物体を呼び出し、ゲンガーはその大きな口の中から吐き出すように物体を飛び出させ、この物体を声を上げながら指示を出すことで一気に射出。紫色に怪しく光る物体は、対戦相手目掛けてまっすぐ飛んでいき、両者の攻撃が空中でぶつかりあった。
巻き起こるは紫色に染った爆発と爆煙。
バトルコートを覆うほど大きく広がったそれは、ボクたちの視界を著しく奪っていき、場の様子の確認ができなくなってしまう。けど、ボクはそんな爆煙の中を、見えないとわかっていながらもじっと注視していた。
(煙によって見えない視界……けど、今までの戦いからオニオンさんはこんな状況でも間違いなくこちらのことを把握はできている。それでもって、ジムチャレンジの時の経験も活かせば、多分オニオンさんの次の行動を察知することは出来るはずだ)
ゴーストタイプへ高い適応力を持つゆえの把握能力と、キョダイゲンガーの性質を考慮していくとボクの頭の中で今オニオンさんがしたいであろう攻撃が自然と思い浮かんできた。その予想に頼りきるのも良くは無いけど、それでも可能性は高いと踏んだボクは、そちらに強めの意識を割きながら煙をじっと見つめる。すると、地面付近に流れていた煙の軌道が、微かに揺れて変わったのを確認できた。
「……っ!!ヨノワール!!空へ飛んで!!」
その揺れを確認して、オニオンさんが予想通りの行動をしてきたと判断したボクは、ヨノワールに空に飛ぶことを指示。この指示に従ったヨノワールは、疑問に思うことすらせずに上へ向かって動き出し、ある程度の高さまで飛び上がったところで下に視線を向ける。
視線の先にあるのは紫の爆煙ばかりで、結局何も見えはしないけど、しかしよくよく見てみると、爆煙の動きが不自然なところがあった。その部分は、最初はほんの少しだけ渦を巻いているように見える動きをしており、しかし時間が経過すると共に、その渦の動きが高速化。そして、そのまま地面に吸い込まれていくように煙がどんどん小さくなっていき、煙の量がかなり減ったところで、地面の表面から顔だけを出し、大きな口を落とし穴のように開けて、地面から噛み付こうとしていたキョダイマックスゲンガーの姿が目に入った。
「……逃げられちゃった」
「やっぱり地面からの奇襲……イーブイが襲われた時の印象が凄いから、流石に効きませんよ!!」
あの口の中に落ちかけ、そして噛み砕かれそうになったところを間一髪ダイウォールで防いだあのやりとりは、今思い出してもなかなかインパクトのある出来事だ。そう簡単に忘れられない。
「……残念だけど仕方ない……なら……『ダイアシッド』!!」
「ゲェェェラァァァッ!!」
地面からの奇襲が失敗に終わったオニオンさんは、口では残念と言いながらも、逃げられることなんて想定内で、最初から期待していなかったかのような声色でゲンガーに指示を出し、これを聞き届けたゲンガーはすぐさま声を返しながら、大きな口の中心に毒液を溜め込み始めた。
「ヨノワール!!避けながら地面に突撃!!」
「ノワッ!!」
ゲンガーの攻撃準備を確認したボクは、ヨノワールに突撃を指示。地面からの奇襲を避けるために上昇させていた身体を反転させ、今度は地面に向かって真っ直ぐ飛ぶ。
「ゲ……ラァッ!!」
この間に攻撃準備を終えたゲンガーは、自身に向かってくるヨノワールに向けて、真っ直ぐ毒液のビームを発射。地面から天に伸びていくその1本の線は、大きな円柱となって宙にいるヨノワールに飛んでいく。更に、ゲンガーはダイアシッドを放ちながら、自身の身体から周りに毒液の水溜まりを広げていき、その水たまりからも間欠泉のように毒液の立ち登らせることで、ヨノワールに対して複数の毒液ビームを発射させていた。
これに対してヨノワールは、まずはゲンガーの口から放たれたものを左にローリングすることで回避し、続けて地面から伸びてきた毒液の柱は、右ローリングしながら回避。しかし、このまま右に進めば、最初に避けたゲンガーの口からの攻撃に当たりに行ってしまうので、ゲンガーの吐き出した柱の周りを、時計回りに周回しながら地面へと突き進む。
その回避行動はとても丁寧で無駄な動きが存在せず、ここから更に毒液の柱が伸びてくるものの、それら全てをローリングを駆使することでいなしていき、ついにゲンガーが顔を出す地面間近まで到達した。
「『ダイアース』!!」
「ノワッ!!」
地面まで到達し、ゲンガーを射程距離内に収めたところで出した指示はダイアース。右手に少し薄い茶色のエネルギーを貯めたヨノワールは、ありったけの力を決めて、地面に向かって拳を振り下ろす。
「……流石にあれは貰えない……ゲンガー!!……逃げて!!」
「ゲンッ!!」
ゴーストタイプでありながら、どくタイプを含むゲンガーにとって、じめんタイプの技はこうかばつぐんな上、ゲンガー自身が物理防御が心もとないポケモンなので尚更この攻撃を受ける訳にはいかない。奇襲が失敗し、ダイアシッドも見事に躱された今、地面に居続ける必要のないゲンガーはすぐさま移動を開始。結果、ゲンガーを仕留めようと振り下ろされ、そして大きな音を立てながら地面を揺らすヨノワールの攻撃は、直撃する寸前で地面の中に隠れてしまい、ダイアースの揺れがおさまった時には、ゲンガーは既に離れたところから顔を出して、大きな口を開けてこちらを見ていた。
(物理防御面は低くても、それを補えるだけのスピードと回避力を備えているってことだね……)
ゲンガーというポケモンについてはよくわかっているし、なんならジムチャレンジ中にも戦った相手だ。そういう点においては、サニゴーンやデスバーンよりも戦い易くはある。最も、ゲンガー自身のスペックが高いせいで、結局苦戦は強いられるという点に変わりは無いのだけど。
とにかく、お互いのダイアシッドとダイアースは不発に終わり、それぞれの初期位置まで戻ることとなって仕切り直し。打てるダイマックス技もあと1回となり、ボクもオニオンさんもどうするべきかと頭を少し悩ませる。
(ダメージを取るのなら『ダイホロウ』一択。相手のぼうぎょも下げられるしすごく都合がいいよね……逆にこちらの守りを固めるのなら『ダイアース』なんだけど……)
「……ゲンガー!!」
「ゲンッ!!」
なんて頭の中で考えている間にオニオンさんは答えを出したらしく、ゲンガーに声をかけ、攻撃の準備を行い始める。
(来る!!やっぱりここは最後だし、オニオンさん的にもダメージが欲しいから『キョダイゲンエイ』……?追加効果が実質無いけど、それでもダメージは大きいもんね。……けど、それ1点読みだけは避けて、他の可能性も頭に入れて……)
「……『ダイアーク』!!」
「ゲェェェンッ!!」
「っ!?やっぱり!!」
オニオンさんが下した最後のダイマックス技はゴースト技ではなくあく技であるダイアーク。相手を攻撃しながらとくぼうを下げることが出来、かつヨノワールの弱点を突くことの出来る強力な1手だ。威力だけを見るのであれば、確かにキョダイゲンエイの方が上ではあるけど、キョダイゲンエイの効果であるかげふみ状態は、最後の1人同士になっている今の状況では全く役に立たないし、そもそもゴーストタイプであるヨノワールは影を踏まれることがない。その点ダイアークなら、相手のとくぼうダウンという、このバトル中ずっと効果のあるデバフを相手に叩きつけることが出来る。
刹那のダメージか、この先の効率かの天秤で、オニオンさんは後者を取ったというわけだ。
しかもこの技、さらに厄介なのが、こちらが受け止めるのが難しいという点だ。
キョダイゲンエイに比べて威力が低いとはいえ、あくタイプの技もゴーストタイプの弱点を突く技だ。当然ヨノワールにもばつぐんで通ってくる。なので、この技を受け止める必要があるのだが、ダイホロウではタイプ相性上受け止めることが出来ず、オニオンさんの後手に回っている以上、ダイアースとダイロックでは少し間に合わない。となると、こちらができる技はひとつに限られてしまう。
ゲンガーの口元から発射された、2本の畝る黒色の光線は、右と左からぐるりと回り込むようにしてヨノワールへと殺到する。
「『ダイナックル』!!」
「ノワッ!!」
左右から迫り来る攻撃に対抗できる技を指示すると同時に、ヨノワールの両腕がオレンジ色に発光。そのまま両腕を天高くかざしたヨノワールは、飛んでくるダイアークに向かってタイミングを合わせて力強く振り下ろす。
激しい音を奏でながらぶつかり合う拳と光線の鍔迫り合いは、タイプ相性で勝っているこちらが優勢であり、そんなに長く続くことなく打ち破ることに成功。飛んできた黒の光線は、ヨノワールの腕によって綺麗に左右に別れることとなる。これで大ダメージを受けることも、とくぼうを下げられることもないだろう。
「ノワッ!?」
しかし、攻撃を不発にさせられ、行き場を失ったエネルギーが爆発する衝撃までは抑えられない。
ダイマックスが終わり、身体が小さくなってしまったことによって、耐久が下がったところに叩きつけられるダイアークが爆発した余波は、少なくともヨノワールの姿を隠し、態勢を崩させるのには十分な威力と煙の量を誇っていた。
そして、この状況を見て、ボクは1つの思考にたどり着く。
(最初からこのダイマックス終わりに隙を作るのが狙いか!!)
態勢を崩し、煙で場の状態が確認できない今の状況は、先程ゲンガーが地面から奇襲しようとしてきていたそれと告示している。しかし、先程と違うことは、ゲンガーがキョダイダイマック状態では無いため、更に見つけづらくなってしまっているという点だ。先程見破られたことも考慮して、煙の動きからゲンガーの攻撃先を予知することは不可能だろう。
(なら、こっちも感覚を強固にする!!)
「ヨノワール!!」
「ノワッ!!」
煙の中で姿の見えないヨノワールに声をかけ、ボクとヨノワールの心を繋いでいく。
絆を結ぶのに、姿を見る必要は無い。心で繋がっているボクとヨノワールなら、この状態でだって至ることが出来る。
「「っ!!」」
視界がつながり、感覚がつながり、さっきまでバトルコートを俯瞰してみていたのに、一瞬で煙の中に立たされている状況が現れる。
それと同時に、右後ろから明らかに大きな気配を察知。
「『いわなだれ』!!」
「ノワッ!!」
「ゲンッ!?」
「……ゲンガー……下がって!!」
すぐさま振り向き、右手を突き出して大量の岩を召喚。煙の中に容赦なく降り注ぐ岩の雨は、潜んでいたゲンガーにしっかり飛んで行ったみたいで、煙の向こうからゲンガーの焦ったような声が聞こえ、同時にオニオンさんからの撤退の指示が飛んできた。もしかしたらこの指示が嘘の可能性もあるので、岩が落ちている音の向こう側に意識を少し集中させてみるけど、ゲンガーの気配がしっかり下がっていることから、どうやらちゃんと後ろに下がってくれているらしいので、少し安心する。
「『じしん』!!」
「ノワッ!!」
そして、いい加減この視界を奪う煙が厄介なので、右腕に力を込め、地面を殴りつけて衝撃を起こすことで煙を霧散させ、同時にゲンガーに対してばつぐんのタイプの技で追撃をしていく。
「……飛んで!!」
「ゲンッ!!」
勿論この攻撃を受けるわけにはいかないゲンガーは、すぐさま空中へジャンプ。じしんによって打ち上げられる振動や、いわなだれの岩さえも届かない上空へと浮かび上がっていく。
(っていうか、そもそもオニオンさんのゲンガーは『のろわれボディ』と『ふゆう』の2つ特性持ちだったっけ……ならどっちにしろ『じしん』は当たらないか……空中に飛んだのは単純に打ち上げられた『いわなだれ』から逃げるためかな……流石にキョダイマックス状態だと『ふゆう』は消えてたみたいだけど)
と思ったけど、よくよく考えたらオニオンさんのゲンガーにこの攻撃は当たらない。ボクだって特性を2つ持っているポケモンが手持ちにいるのに、ついつい頭から抜けてしまいそうになるのはよくないことだ。しっかりと頭にもう一度意識付けして、すぐに前を見る。
「『ポルターガイスト』!!」
「ノワッ!!」
「……避けながら『シャドーボール』!!」
「ゲンッ!!」
右手を黒く染め、前に突き出すと同時に動き出す紫色の岩たち。
じしんを避けるために空中に飛びあがったゲンガーを追いかけるべく放たれた岩の追尾弾は、ヨノワールの手の動きに合わせて複雑な動きを描いて行く。
真っすぐ進んだと思ったら急停止してテンポをずらし、その間に他のポルターガイストが横に回り込んで、回りこんだものが当たる寸前で再び動き出してゲンガーに迫る。このように、1つの攻撃だけでなく複数の弾幕が連携を取るかのように襲い掛かるポルターガイストは、ゲンガー側から見たらかなりめんどくさい動きをしているはずだ。
「……前、右、後ろ……次が真上と真下で……最後が左下!!」
「ゲン……ッ!!」
しかし、そんな複雑な動きの中でもオニオンさんは焦ることなく、フェイントも軌道変更もすべてを綺麗に読み取り、どのポルターガイストを優先的に落とせばいいのかを最小限の言葉で指示。それに従ったゲンガーは、その方向に一発ずつ打ち込んで、全てのポルターガイストを落とし切ることに成功した。
「……『ヘドロばくだん』!!」
「ゲンッ!!」
全てのポルターガイストを打ち落としたゲンガーが次に放つのはヘドロばくだん。地面にいるヨノワールに向かって次々打ち出される雨のような弾幕を前に、今度はこちらが対処する番となる。
「「っ!!」」
落ちて来るヘドロの雨に対して、俯瞰視点であるボクの視界と、主観視点であるヨノワールの視界を組み合わせて、ヘドロの雨全ての軌道を確認して身体を動かしていく。
(最初に当たるのは右肩。だから身体を左にずらして、次は少し前に進んで、そのあとは1歩右前に動いて……うん、大丈夫)
攻撃を確認してヨノワールが動いたのは3歩だけ。それもステップを踏むような素早い動きではなく、歩くようなのんびりとした動き。
激しく動く必要はない。攻撃の軌道が全て読めるのであれば、最小限の動きですべてを避けることが可能だ。その動きは、傍から見たら泥の雨全てがヨノワールを勝手に避けているように見えるだろう。
「右」
「ノワ」
雨がやみ、自由に動けるようになったところで、ヨノワールとボクは右腕を右に伸ばして力を解放。そのまま、残っていた岩の1つがヨノワールの右手に収まり、同時にポルターガイストの力注がれていく。
「左」
「ッ!!」
右手に大きな塊を握り締めたヨノワールは、そのまま左側に右腕を持っていき、黒い塊を左側突き出した。するとそこには、いつの間にか影に潜み、シャドーボールを構えてこちらに突っ込んできていたゲンガーの姿。
「……感覚共有……厄介ですね」
「感覚が敏感なのはお互い様ですよ」
攻撃と攻撃がぶつかり合って相殺し、爆発。右腕に痺れを感じながら軽口を叩き合うボクとオニオンさんは、ヨノワールとゲンガーの距離が空いたところで再び攻撃を指示した。
「……『シャドーボール』!!」
「『いわなだれ』!!」
黒球と岩の弾幕同士のぶつかり合い。
ヨノワールは両手を合わせることで数多の岩を量産し、ゲンガーは虚空に攻撃を送り込むことによって攻撃の数を増やし、お互いの背中からまるで軍隊による一斉射撃のごとく弾幕を連続発射。その数は下手したら三桁に及ぶのではないかと言うくらいの数で、とてもじゃないけど数えることは出来ないし、こんな弾幕の嵐の中生き残れる気はしない。
「『ポルターガイスト』を両手に持ってダッシュ!!」
「……『シャドーボール』を両手に構えて前進!!」
しかし、第六感が強いオニオンさんと、他の人と比べて感覚を共有している分情報が多いボクにとって、この攻撃の嵐は把握できる範囲の攻撃だ。
前と後ろから飛んで来る夥しい数の弾幕と、それらがぶつかり合うことによって起こる小さな爆風の嵐。そんな地獄絵図のような状況の中、その全ての攻撃を視認することすらせず避けるヨノワールとゲンガーは、まるで何でもないところで闘っているかの如く滑らかな動きで対峙する。
右手を突き出してきたゲンガーの攻撃を屈んで避け、ヨノワールが右アッパーで返答。これを空に飛ぶことで攻撃範囲外にすかさず逃げたゲンガーを追いかけて、ヨノワールも空を飛ぼうとしたところで、その動きを中断して少し身体を屈ませる。これにより、ヨノワールが進もうとしていたところを通過したシャドーボールを避けることに成功。しかし、これで少し距離を取れたゲンガーが安全に攻撃できるようになる。その位置を利用して上からシャドーボールを発射してきた。
「投げて!!」
このシャドーボールに対して右手持っていたポルターガイストを投げて相殺し、同時に飛んできているいわなだれをすぐに右手で掴んで再び黒く染め上げる。
「……ゲンガー!!」
「ゲンッ!!」
シャドーボールとポルターガイストがぶつかることで、弾幕同士の攻撃よりも一回り大きい爆発が発生し、煙により視界が阻害される。これをチャンスと取ったオニオンさんが攻め切る指示を出した。
「
「ノワッ!!」
「……っ!?」
煙を突っ込んでヨノワールの目の前に現れたゲンガーを確認したボクとヨノワールは、その姿をよく観察したうえで、真後ろに振り返りながら左腕のポルターガイストを地面に叩き込む。すると、いつの間にか地面の中に潜り込んでいたゲンガーの右腕と激突。先ほどまでヨノワールの真正面にいたゲンガーは、煙の中に溶けるように消えていき、同時に激突による爆発によってゲンガーが弾き飛ばされ、オニオンさんの元へと戻っていった。
(やっぱり、あのゲンガーは影と煙で作った幻覚……!!)
今回のぶつかり合いは、ゲンガーの偽物を見破ったヨノワールの力が上回った形になる。
「……いけっ!!」
「ノワッ!?」
「ッ!?つぅ……」
が、いつの間にか1つだけシャドーボールを虚空に送っていたみたいで、ゲンガーを飛ばして少し一呼吸を置いていたところで、いきなり目の前にシャドーボールが現れて爆発。顔面に大きな衝撃を受け、その感覚に思わず顔をのけぞらせてしまう。
同時に、顔から伝わる鋭い痛み。それに耐えながら、ボクは何とか顔を前へ向けた。
「「はぁ……はぁ……」」
2人の攻防が一旦の決着がつくと同時に、いわなだれとシャドーボールのぶつかり合いも終了し、バトルコートに響くのはお互いの呼吸音のみ。
いや、正確にはこの攻防に興奮している観客たちの大歓声が響いているはずなんだけど、戦うことに集中しているボクたちには、その声が届いていない。
(いやになるほどの互角だね……このまま続ければ、共有化している分こっちが先にガス欠になるか……さて……どこで仕掛けるかな……)
この均衡を崩す一手。すなわち、勝ちへの一手を求めて、ボクはこのバトル最後の思考を全力で回していく。
ふゆう
キョダイマックスしている間だけ、ゲンガーからふゆうが消えているイメージでお願いします。わかりやすく言えば、メガシンカしたゲンガーのようなものですね。