【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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283話

「……『シャドーボール』!!」

「ゲンッ!!」

「っ、『いわなだれ』!!」

「ノワッ!!」

 

 膠着状態になっているヨノワールとゲンガーのバトル。

 

 先程行った弾幕合戦をリプレイするかのように飛び回る岩と黒球の嵐は、お互いに相殺し合い、至るところで爆発音が響いて行く。

 

 傍から見れば綺麗に互角となっているこのバトルは、しかし共有化のせいで体力消費は激しいし、痛覚共有のせいで両腕の感覚も薄くなり始めているこちらの方が、徐々に不利となっている。

 

(ヨノワールの体力はまだ大丈夫だけど、先にボクの身体がおかしくなりそう……いや、そうなっても無理やり戦いたいんだけど……ヨノワールがそれを許さないだろうから、何がなんでも突破口を見つけないと)

 

 思考も共有しているせいで、今の考えもヨノワールに筒抜けだからすごく不満気な感覚が返ってくるけど、今だけはその感覚をわざとスルーして、とにかくこの場の突破方法を考える。

 

 いわなだれとシャドーボールがぶつかり合う中、空中を自由自在に飛び回るゲンガーの姿は、とてもじゃないけど簡単に捕まえることが出来そうにない。いくら共有化して動きが鋭くなっているとはいえ、流石に機動力でヨノワールが勝るなんてことは無いからだ。

 

(単純な追いかけっこだと捕まらない……けど、出来る工夫も少ない……)

 

 ゲンガーはゴーストタイプのポケモンだ。その身体はノーマルタイプとかくとうタイプの攻撃をすり抜けさせるために、ボクのヨノワールのかわらわりが通じない。さらに、オニオンさんのゲンガーはのろわれボディとふゆうの2つ特性を持つため、じしんを当てることも出来ない。

 

 つまり、今ヨノワールはゲンガー相手に、常に技を2つ縛られた状態で戦わなくてはいけないということだ。しかも、ここでのろわれボディが発動しようものなら、技を3つ縛られることとなる。そうなってしまえば、いよいよ工夫なんてできなくなる。

 

(今のところは運がいいのか『のろわれボディ』は発動していないみたいだけど……っ!?)

「ノワッ!?」

 

 頭の中で思考している時に、突如右腕に走る痛み。その感覚に顔を顰めながら確認をすると、どうやらいわなだれと相殺せずに、いわなだれに跳弾して飛んできたシャドーボールが右腕を掠めたらしい。

 

 今まではぶつかって爆発するだけだったのに、いよいよそのぶつかり合いすらもオニオンさんは変化させてきた。

 

「『いわなだれ』を『ポルターガイスト』で操作して、自分を守って!!」

「ノワッ!!」

 

 1度跳弾し始めたらもう止まらない。1つ、また1つと、シャドーボールが跳弾を始めていくことで、いわなだれとシャドーボールによる弾幕合戦の激しさがさらに加速していく。その軌道はとても無茶苦茶で、いくら共有化していても軌道を読み取ることは不可能だ。ヨノワールもその回答にすぐに至ったので、自身の周りに黒い岩を周回させることで、即席の防御壁として利用。周回するポルターガイストが、跳弾によってこちらに飛んでくるシャドーボールを次々と弾いていく。

 

 威力よりも数を優先している弾幕の打ち方をしていることと、跳弾目的にためにさらに威力を下げていることが幸いして、ポルターガイストが破られる心配というのは特にない。このまま何も無ければ、これだけで防ぎ切る事は可能だ。

 

 もっとも、ヨノワールの足が完全に止まっているこの瞬間を、オニオンさんが逃がすとは到底思えないのだが。

 

(かと言って、こんな攻撃が複雑化している状況だとゲンガーだって攻撃は難しいはず……一体どうやって攻撃を……)

 

「……って、あれ?」

 

 今の状況からゲンガーの動きを予測しようとした時、ヨノワールの視界を確認しながら、自分の視界も使って周囲を確認すると、バトルコートの大きな変化に今更気づく。

 

「ゲンガーはどこ……?」

 

 それはゲンガーの消失。

 

 攻撃を防ぐことに考えを働かせすぎて、いつの間にかゲンガーの姿が消え去っていたことに気づかなかった。2人分の視界を限界まで駆使して、バトルコートの隅々まで視線を飛ばしていくけどどこにも引っかからない。そのことに焦りと緊張感が一気に膨らみ、同時にヨノワールとボクは、言葉を口にすることなく、一瞬で警戒態勢へ移行する。

 

 こうも綺麗に姿を隠したということは、次行われるオニオンさんからの攻撃は勝負を決めかねない大きなものになるはずだ。その攻撃を受けてしまえば、いくら耐久があるヨノワールと言えども、やられる可能性が高い。

 

 しかし、逆に言えばそれさえ乗り越えれば今度はこちらが攻撃出来るチャンスを得る可能性もある。

 

(ここが正念場……!!)

 

 シャドーボールが跳弾用に威力が下がったことで、弾幕のぶつかり合いにも変化がおき、いわなだれの一部が爆発するのではなく、弾かれるようにして上に跳ね上げられ始めた。

 

 跳ね上がった岩は、一定距離上に上がったところで反転し、雨のように落ちてくる。

 

 質量のあるその雨は、ヨノワールの周りを次々と落ちていき、地面にドスドスと言う鈍い音を立てながら突き刺さる。そんな狂気的かつ危険な場所でも、共有化と身体を守ってくれているポルターガイストのおかげで安全であることを確信しているヨノワールは、1歩も動くことなく、ただひたすらにゲンガーが仕掛けてくるタイミングを待っている。

 

(……どこから来る?)

 

 地面を見て、空を見て、虚空を見て、しかしそれでも見つからない。いよいよもって攻撃する瞬間にしか姿を現す気がないことを悟ったヨノワールは、いわなだれを両手に持ってポルターガイストを発動させ、すぐさまカウンターできるように準備を整えた。

 

 バトルコートに響く爆発と、岩が地面に刺さる音。

 

 普通は耳を覆いたくなるほどうるさい状況なのに、極限への集中力が、この辺りの音全てを無意識のうちにシャットアウトし、ゲンガーが動き出した時の音に気づくための状態へと変わっていく。その集中のおかげもあってか、ヨノワールの視界が、スローモーションになっているかのごとく、ゆっくり流れていく。

 

 飛んでいくいわなだれが、弾かれるシャドーボールが、落ちてくる岩の雨が、その全てがゆっくりと動いていく。

 

(これは……)

 

 その感覚に少し戸惑ってしまいそうになるけど、むしろ周りを観察しやすくなっているとプラスに受けとり、この間に全てのものに視線を向けていく。

 

 全てがゆっくりとなった視界では、色々なものが細かく確認でき、普段とは違うその感覚は、ちょっとした新鮮さを感じさせてくれる。

 

 岩と黒球がぶつかる瞬間。煙の広がり方。横を通り抜ける破片の回転の仕方。

 

 1つ1つを綺麗に写し取るヨノワールの視界は、本当に何も見逃さないつもりで、青色のモノアイを動かして確かめていく。

 

(ゲンガーはどこから来る……?)

 

 右を見る。

 

 いない。

 

 左を見る。

 

 いない。

 

 後ろを見る。

 

 いない。

 

(……本当に、どこ?)

 

 ゆっくり周りが見れるようになり、観察力を一気に高めたというのに、それでもゲンガーの姿は確認できない。もはや、ここから逃げていなくなったと言われた方が納得できるレベルだ。もしくは、シャドーボールやゴーストダイブなどと同じ原理で、自身の身体を虚空の中に滑り込ませたくらいしか考えられない。

 

 岩石の雨が降る中、いよいよもって見つからないことに痺れが切れそうなボクたち。ヨノワールのすぐ右を落ちていく岩を横目に流しながら、それでも警戒を解くことだけはせずに周りを確認していく。

 

(……あれ?)

(ノワ?)

 

 と、少しのじれったさを感じている時、ボクとヨノワールは同時になにかの違和感を感じとった。

 

 その違和感の元凶は、先程ヨノワールの右を通り過ぎて落ちていった1つの岩石。

 

 自分に当たらないことがわかっているので、横目で少し確認しながら、しかし落ちていくだけのなんでもないただの岩なので気にすることなく別へ視界を動かそうとした時、岩の後ろが微かに動いた気がした。

 

 どくん。

 

 心臓の跳ねる音と、嫌な予感を一気に膨らませたボクとヨノワールは、この感覚に従って視線を慌てて右下に向け、ヨノワールの右を少し通り過ぎた所で()()()()()()岩を視界の中心に捉えた。

 

「っ!?ヨノワ━━」

「……遅いよ……『シャドーボール』」

 

 止まっている岩を見て慌てて指示を出そうとするけど、その前にゲンガーが岩の陰から身を出し、シャドーボールを構えて終わっていた。

 

 こちらの攻撃は間に合わない。

 

「「っ!?」」

 

 せめてダメージを防ごうと腕を交差させ、盾にして受け止めるけど、威力が高すぎて着弾の衝撃でヨノワールの身体が思いっきり吹き飛ばされる。

 

 その衝撃の強さは、両腕に返ってくる痛みが如実に知らせてくれた。

 

「ノ……ワッ!!」

「ヨノワール!!後ろ!!」

「ッ!?」

 

 そのまま地面付近まで飛ばされたヨノワールは、墜落寸前で何とか踏ん張り、態勢を整える。しかし、ちょうど態勢を整え終えたところで、後ろから黒球が接近。ボクの言葉で何とか反応できたヨノワールは、身体を限界まで屈ませることでこの攻撃を回避。

 

「……ゲンガー!!……ここで攻め切るよ!!」

「ゲェェン!!」

 

 追加のダメージを何とか抑えたヨノワールだけど、回避することに意識を割きすぎて反撃ができない。ここをオニオンさんが逃す訳もなく、ヨノワールを中心に縦横無尽に飛び回るゲンガーは、そこから数多のシャドーボールを乱射して、真ん中のヨノワールを釘付けにする。

 

「ノ……ワ……」

 

 360°、全方位からタイミングをずらして襲いかかってくる弾幕。

 

 避けることしか出来ず、そして避け切ることも難しいこの攻撃の嵐によって、ヨノワールの身体に徐々に傷が増えていき、フィードバックの痺れも両腕だけだった最初に比べて、今は全身に拡がっている。

 

 痛いし苦しいし、絶体絶命な状況。完全に流れは奪われ、フィールドはゲンガーのものとなっている。

 

 この時間が続けば、程なくしてヨノワールが倒れることとなるだろう。

 

「「……」」

 

 けど、そんな状況下であろうとも、ボクとヨノワールの集中力は落ちておらず、相変わらず周りの景色はゆっくりになっていた。

 

(……大丈夫。ゲンガーの奇襲は確かにやばかったし、今でも両腕が悲鳴をあげてるくらいには痛い。……でも、追い詰められたおかげで逆に吹っ切れた……!!)

 

「……いって……ゲンガー!!……このまま!!」

「ゲンッ!!」

 

 オニオンさんとゲンガーの攻め手が更に激しくなり、飛んでくるシャドーボールの量が増えていく。そして、それに比例してゲンガーの動きが速くなり、同時にヨノワールとの距離を少しずつ狭めて行く。これにより、ヨノワールへの攻撃着弾時間が短くなるので、もっともっと苦しい立場に追いやられることになった。

 

 完全に勝負を決め切る形。ここで倒そうと前のめりになる瞬間。

 

 普段は搦手を使い、じわじわと攻めるオニオンさんが、勝負を決めるために1歩前に出て攻めを強くしたこの瞬間。

 

 戦闘スタイルを切り替え、僅かに動きを変えたこの刹那の時間は、しかし、だからこそ、この流れに乗ったオニオンさんの動きを止め切る、確かな隙となる。

 

「ヨノワールッ!!」

「ノワッ!!」

 

 ここまで防戦一方だったヨノワールが、ボクの声に合わせて右手にポルターガイストを宿した岩を持ち、自身を狙ってきたシャドーボールの1つに添わせるようにぶつけ、軌道を左上に逸らしていく。

 

「行け……ッ!!」

「……ッ!?」

 

 その逸らした先は、ちょうどゲンガーの通り道。

 

「ゲンッ!?」

 

 いつものゲンガーの反射神経と速度であれば、予想外の軌道であったとしてもなんとか回避することはできたであろう。しかし、今回は長いバトルの最後というスタミナがない状態なのと、ヨノワールに対して攻撃中だったこと、そして何より、とどめを刺すべく前のめりになっていたため、ヨノワールとの距離が想像より近かったことが仇となり、軌道逸らしの意図に気づくのが遅れて被弾してしまった。

 

「……耐えて!!……まだこちらが有利だから!!……『シャドーボール』!!」

「ゲ……ンッ!!」

 

 ここに来て急な大ダメージに大きく怯んでしまうゲンガー。しかし、オニオンさんの言葉に発破をかけられ、意地で耐えきったゲンガーは、ヨノワールをドーム状に覆うようにまとめてシャドーボールを召喚し、両手を握り締めて収束する指示を出すことで、中心にいるヨノワールへ全方位からの同時攻撃を行い、逸らすことすら許さない一撃をもってとどめを刺す判断を下した。

 

 ゲンガーはもともと体力が多くなく、耐久力に難があるポケモンだ。故に、大ダメージを負ってしまった今、一秒でも早く倒すために、無理やり攻めを継続したという事だろう。

 

 だからこそ、こちらに攻略の最後の糸口が見いだせた。

 

(……やっぱり、オニオンさんにその攻め攻めなスタイルは似合わないですよ。じゃなきゃ、あなたはこれを見落とすことはなかったはずだ)

 

 迫りくるシャドーボールの壁を前に、勝ちを確信したボクとヨノワールは、特に焦ることなく右手を前に突き出し、その手をキュっと握り締めながら、最後の攻撃を指示する。

 

「ヨノワール……『ポルターガイスト』」

「ノワ……ッ!!」

 

 指示した技はポルターガイスト。今のヨノワールの放てる最高火力であるこの技は、今のゲンガーを一撃で倒すのに十分な威力を誇っている。しかし、今この状態で放ったとしても、シャドーボールの壁に防がれてポルターガイストは届かず、そのまま黒球の壁に押しつぶされてこちらが負けてしまうだろう。

 

 だから、ヨノワールが操ったのはこのシャドーボールのドームの()()()()ポルターガイストだ。

 

 思い出してほしい。ヨノワールが地面に落とされる前に、どうやって自身を守っていたのか。そして考えて欲しい。ヨノワールを守るために周回していたあれが、ヨノワールが地面に落とされた今、どんなことになっているのか。

 

 正解は、その場にとどまっている。だ

 

 ヨノワールが元々耐えていた場所は、今ヨノワールを囲っているシャドーボールの壁の外側にある。つまり、シャドーボールに相殺されることなくゲンガーの下へポルターガイストを運ぶことが出来る。そして、ゲンガーへの攻撃ルートは、ヨノワールから視認できなくてもボクの俯瞰視点を利用すれば、はっきりと確認することが出来る。

 

「……ッ!?……ゲンガー!!逃げて!!」

「ゲンッ!?」

 

 ここまで来てようやく後ろからポルターガイストが迫ってきたことに気が付いたオニオンさんが、慌てて回避を指示するものの、とどめをするために全力を尽くしていたゲンガーはこれに反応が出来ずに、黒色の岩が4発、全て突き刺さり、大きな爆発を起こす。

 

「……ノワ」

「……はぁ」

 

 同時に、ゆっくりと腕を下ろすヨノワールとボク。

 

 ヨノワールに迫りくるシャドーボールの壁は、ヨノワールに直撃する寸前にピタリと止まり、そして空気に溶けるように消えていった。

 

 シャドーボールが完全に消え、ポルターガイストの爆発によって起きた煙も消え、そしてボクとヨノワールのキズナへんげも解除された。

 

 静けさが返ってきたバトルコートに、最後に響くのはゲンガーが地面に落ちる音。

 

「ゲ……ン……」

 

 

「ゲンガー、戦闘不能!!」

「よってこのバトル、フリア選手の勝ち!!」

 

 

「……しぃッ!!」

 

 ゲンガーが倒れ、決着がつき、ボクの勝ちが審判の人に正式に伝えられる。その声を聞き、自分が勝ったことがようやく実感となって身体を駆け巡り、同時に嬉しさに染まっていく。

 

「勝てた……勝てた……!!」

 

 チャンピオンリーグ準決勝の勝利。それは、次の優勝者決定戦である、決勝に駒を進めたことを意味する。

 

「あと……一勝……!!」

 

 ダンデさんの足元が、いよいよ見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……「ありがとうございました」」

 

 バトルが終わり、ヨノワールとゲンガーをボールに戻したボクとオニオンさんは、バトルの終わりを称える拍手の雨の中、バトルコートの中心で、同時にお礼の言葉を紡ぎながら握手を交わす。

 

 激闘による疲れか、はたまた、緊張した瞬間の連続による汗のせいか、いや、おそらく両方の理由で、握手を交わしているボクたちの手は少し重く、握りながら少し上下に動かす仕草を取るだけで、ボクの腕が若干の悲鳴をあげていた。

 

「……大丈夫ですか?」

「あ、あはは。気にしないでください。これはもう慣れたので……ったた……」

 

 身体を庇うように動いているため、若干動きがぎこちないボクを見たオニオンさんが、仮面から除く瞳に心配の色を乗せながら質問を投げてくる。これに対してボクは、できる限り心配をさせないように、おちゃらけという訳では無いけど、少しだけ明るく言葉を返していく。

 

 正直今すぐベッドの中に潜って、ヒリヒリしている身体を休ませてあげたいのだけど、さすがに試合終わりのこの時間を蔑ろにする訳には行かない。

 

 一応このバトル後のやり取りは義務ではなく、するかどうかは選手に一任されているので、本当はさっさと帰ってもいいのだけど……ここでそれをする勇気は、残念ながらボクには無い。シンオウ代表みたいな扱いを受けている今、下手な行動も取れないし、何よりボク自身が相手に敬意を表したい気持ちも大きいので、ここは辛くても我慢だ。

 

「……無理しないでくださいね?……次はいよいよ……決勝ですから」

「勿論です。帰ったらぐっすり眠らせてもらいますね」

 

 握手を終え、手を離しながら未だにボクを心配する声をかけてくれるオニオンさんの姿は、とてもじゃないけど戦闘中の人と同一人物のようには見えない。それほどまでに迫力の差があり、正直ちょっと面白い。彼の中で、無意識に切り替わっているスイッチがあるのかもしれない。

 

「……あ……あの……頑張ってくださいね!!」

 

 今は完全にオフになっているオニオンさんの、少し吃りながら告げられる応援の言葉。ボクはそれを急かすことなく、オニオンさんの瞳をじっと見つめ、最後まで受け止める。

 

「……ボクは……ポケモンバトルが強いあなたが……大好きです……!!……だから……応援します!!……ボクの分も頑張って……優勝してください!!……えっと……こんなことしかいえなくてごめんなさい……」

「ううん、オニオンさんの思い、しっかりと胸に刻みました!!本当に、ありがとうございました!!その思いに答えるために……決勝戦も全力で戦います!!だから、見ていてください!!」

「……うん!!」

 

 決して綺麗な言葉とは言えない、ただ自分の思いを並べて叩きつけるだけの言葉。だけど、オニオンさんからのこの言葉は、彼の性格を考えればとてつもなく大きなものだ。それをボクに向けて放ってくれたことがとてつもなく嬉しく、思わずボクも力強く返答する。そんなボクの言葉に、さらに嬉しそうに言葉を返してくれたオニオンさんの姿を見たら、心の奥が少しじんわりと温かくなった。

 

「っつつつ……」

「……だ、大丈夫?」

 

 と、オニオンさんの言葉にテンションが上がっていたところに、釘を刺すかのように再び身体中に痛みが走り、反射的に身体を縮こませてしまった。そんなボクを心配してオニオンさんがまたボクに向かって手を伸ばしてくれたけど、ボクはその手を制して、深呼吸をしながらゆっくり身体を起こしていく。

 

「大丈夫です。決勝戦まで上がった選手ですから、退場もしっかり、自分の足でします」

「……わかりました。……では改めて……決勝進出おめでてとうございます。……頑張ってくださいね」

「はい!!」

 

 オニオンさんと最後の言葉を交わし、ボクたちはそれぞれ別方向の出口へと足を運んでいく。

 

(次はいよいよ決勝戦……どっちが上がってくるんだろう?)

 

 反対の山のカードは、キバナさんとネズさんだ。

 

 どっちが勝ってきても、間違いなく今までで1番の苦戦を強いられることになるだろう。

 

 けど、同時にここを勝てばダンデさんへの挑戦権を獲得出来る。

 

 そして何よりも、コウキの見てきた世界に、ぐっと近づける。

 

(どちらが上がってきても……勝つ!!)

 

 痛む身体を引きずり、けど心の中で焔を燃やしながら、ボクは足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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