284話
ガラル地方はシュートシティ。
今絶賛チャンピオンリーグ中のこの街は、定期的に繰り広げられる激闘に熱狂した人たちが昼夜問わず大盛り上がりを見せており、発展している街特有の騒がしさは、これが原因でさらに騒がしく、そして楽しそうに湧き上がっていた。
当然今日の夜も街中は大盛り上がり。いや、なんならいつもよりもさらに盛りあがっているだろう。なぜなら、今日はチャンピオンリーグの準決勝が行われた日なのだから。
シンオウ地方からの挑戦者フリア選手VSゴーストジムリーダーオニオン選手。
ドラゴンジムリーダーキバナ選手VSあくタイプジムリーダーネズ選手。
この2つのカードは、どちらも白熱した試合となっており、その内容はたとえポケモンバトルに精通していなくても、思わず声を上げてしまいそうなほど熱いものとなっていた。今も背の高いビルにくっついている液晶画面には、今日の試合のハイライトが映し出されており、街を歩く人たちはそれを見て、今日の熱をまた思い出して盛り上がりを見せている。
(……みんなそんなに楽しんでくれたんだ)
そんな賑やかな夜の街を、人の隙間を縫うようにして歩いていくひとつの影があった。
その影はただでさえ背が小さいのに、若干の猫背姿のせいでさらに小さく見え、更に紫のパーカーのフードを深く被りながら歩いているため、誰の目にも止まることなく、正しく影に潜むような状態となっていた。
目立つことが極端に苦手なその影は、スクリーンを見て盛り上がっている人たちを、恥ずかしさ半分と嬉しさ半分の気持ちを抱きながら、足を止めている場合では無いことを思い出して、再びゆっくり、ひっそりと歩き始める。
(……急がなきゃ)
目立たないように、気づかれないように。ひっそりこっそりと、賑やかな街の陰を歩いていく影は、裏路地に進んでいき、やがてひとつの小さな看板が掲げられた小さなお店にたどり着く。
扉の前にたった影は、誰にも気づかれていないかを確認するために、1度視線を左右に動かし、深呼吸をひとつ。そして、意を決したかのように少し気合を入れて、目の前の扉を開けた。
「……こ……こんばん━━」
「あああぁぁぁもっと戦いたかったぁぁぁ!!くやしぃぃぃぃっ!!」
「ひっ!?」
ドアを開け、挨拶をした瞬間、鼓膜を叩く大声にびっくりしてしまった影は、思わず身体を硬直させてしまい、このお店のカウンター席で蹲っている人に向かってつい怯えた視線を向けてしまう。しかし、同時にこの声を外に漏らすことはダメだと本能で感じた影は、慌てて店の中に身体を滑り込ませて、素早くドアを閉めた。
ドアを閉めたくらいでは今の声を完全に抑え切るのは不可能だと思うけど、それでもかなりマシにはなるだろう。むしろ、自分が入る瞬間の無防備だった時間に聞かれていないかが不安だった。
「うぇぇぇん、今年こそ優勝したかったのにぃぃぃ」
「まぁまぁ、落ち着きなさい。気持ちはわかるがもう1週間近く経つ。そろそろ気持ちを切り替えようじゃないか」
「何度も試したけどやっぱり無理なのよぉぉぉ!!」
「こういうのは後になって、ああすれば~とかこうすれば~とか思いつくものですからねぇ。負けず嫌いな人なら尚更感じちゃうんですよ。かくいうぼくも、今回は珍しくまだ引きずってますしねぇ」
「あんなバトル見せられたら誰だって思うわよ!!ああほんっと……なんであの場所にわたしはいないのよ~……」
そんな心配を他所に繰り広げられる3人の会話を横目に、できる限り関わらないように少し離れたボックス席へと腰を下ろす影は、もうパーカーで顔を隠す必要は無いと思い、ゆっくりとフードを外していく。
もっとも、フードを外したとしても、この人の表情を視認することは出来ないのだが。
「おや、オニオンくん。今来たのですね。いらっしゃい」
「……こんばんは……ネズさんの方こそ……お疲れ様です」
フードを外したことで顕になったのは、サニーゴの殻でできたお面を被った姿。そのお面を見て、ようやく対面に人が来たことに気づいたネズは、今日の試合を労うかのように声をかけ、この言葉に影……オニオンも、返事を返した。
ここは知る人だけが知っているジムリーダーたち御用達の隠れたお店。表立って動けば混乱が起こってしまうゆえ、こうやって隠れた場所で、リーグ中に飲んだり食べたり喋ったりするのが、ひとつの定番となっていた。
未だにカウンター席で荒れているルリナと、それを宥めるために両側から声をかけるヤローとカブを横目に、オニオンはきのみジュースを注文しながら今日の出来事を振り返る。
フリアとのバトルは、間違いなく彼史上いちばん楽しいバトルだった。しかし、だからこそ感情に揺れて完璧な立ち回りができなかったことに悔しさを感じている。ヤローも言っているが、後になってそのことを強く実感したため、余計に悔しい。
「珍しいですね。あなたがそんなに感情的になるなんて」
「……はい……自分でもびっくりです」
ネズに言われて、改めて自分らしくないことをしていると実感したオニオンは、しかしそのことに驚きはすれど、後悔や嫌な感情というのはひとつも持ち合わせてはいない。勿論今回の敗北に、この心境の変化というのは少なくない原因となってしまってはいるけど、それは逆に言えば、これを制御出来れば自身の新しい手札が増えるという意味でもある。
まだまだ、強くなれる可能性がある。そう思うと、悔しさ以上にやる気が溢れるというものだ。
「……全く、若いというのは羨ましいですね」
「……ネズさんも十分若い気がしますけど」
「そんなことないですよ。おれは十分古株です」
「それはもっと歳上であるあたしたちへの当てつけかい?そのセリフはあたしたちより年上になって使いなさいな」
オニオンのやる気に当てられ、いつもより数段めんどくさいネガティブワールドを作り上げるネズ。そんなネズにオニオンが戸惑っていると、ネズの隣に1人の女性がドカッと音を立てて座り込む。
「……メロンさん……お疲れ様です」
「ああ、お疲れさん。2人揃って今日の反省会かい?」
その女性の正体は、キルクスジムのジムリーダー、メロン。今日の集会の最後のメンバーだ。
この集会は、基本的に既にチャンピオンリーグで敗北してしまったジムリーダーたちが集まる場所となっている。そしてメロンの言葉からわかる通り、今日ここにいるオニオンとネズは、今日行われた準決勝の敗者の2人だった。そんな2人がひっそりしているところにようやく到着したので、とりあえず今日のバトルのことを言うためにこちらに来たみたいだ。
決して、騒いでいるルリナを面倒くさく感じたから逃げた訳では無い。
因みに、勝者として残っているキバナは当たり前として、あとここに来ていないメンバーとして、アラベスクジムの新旧ジムリーダーであるポプラとビートが挙げられるが、ポプラはジムリーダーの引退を宣言しているためここに来るつもりは、少なくとも今は無いらしく、ビートはまだ就任したばかりなので、そもそもこの店の存在を知らない。なので、今シーズンでこの店を訪れることはおそらくないだろう。
閑話休題。
お酒をひとつ頼みながら絡んでくるメロンに対して、相変わらずだるそうな、それでいて拒否しているわけではない感情を持ってネズは口を開く。
「ちゃんと反省して次へ繋げようとしているのはオニオンくんだけですよ。おれはもう次は無いので……」
「……え?」
「まさか、あんたもジムリーダー辞める気かい?」
ネズの口から発せられたのはジムリーダー引退宣言。そのことに少なくない衝撃を受けたオニオンとメロンは、表情を変えながら言葉を返す。そんな両者に対して、しかしネズはいつも通りのテンションで淡々と言葉を続けた。
「このシーズンを最後にするのは元々決めていたのですよ。なんせ、おれより適任がようやく表に立つことが出来るんですからね」
「妹のマリィだね。……なるほど、確かにあんたよりも華のあるジムリーダーになるだろうねぇ」
「……メロンさん!?」
「いいですよ。事実ですからね」
今度はメロンの言葉にびっくりするオニオンだが、ネズはメロンの言葉を否定しない。その姿は、本心からメロンの言葉を肯定しているように見えた。
「キバナ相手に、ダイマックス無しで正々堂々バトルし、ほぼ互角のいい勝負ができた自覚はあります。けど、スパイクタウンを盛り上げたいっていう妹の夢を叶えてあげるのなら、やっぱりまだ足りない。それはきっと、おれがジムリーダーにいる間はずっとそうだと思っています」
「だから、可能性のある妹に託す……って訳だね?」
「ええ。あいつは凄いジムリーダーになりますよ。間違いなく、おれよりも上に行きます」
そう言いながら少し上に視線を向けるネズの表情はどこか誇らしく、同時にほんのりと寂しさを帯びたものになっていた。
「……そんな表情を見せられたら、あたしからは何も言えないねぇ」
ネズの本気具合を改めて感じたメロンは、カクテルを1口飲みながら呟き、思いっきり伸びをしながら言葉を続ける。
「んん~……世代交代が激しいねぇ。いっそあたしもあのバカに譲ってやろうかしら?なんだか知らないうちにメキメキ強くなってたしねぇ」
「……マクワ選手のことですね……彼もすごく強いトレーナーでした」
「うちの妹といい、メロンさんの息子さんといい、若い子が育つのは嬉しいものですね」
「あんたも充分若いんだがねぇ……まぁ、今は置いておくとしても、面白いのがその全てにあの子が関わっていることだよ」
「……フリアさん……ですね」
メロンの言葉を聞いて、その場にいる全員が思い浮かべたのは、つい数時間前までオニオンと戦っていた相手の顔。
童顔で幼く、中性的な表情をした、シンオウ地方よりの挑戦者。
メロンが挙げたマクワも、ネズが挙げたマリィも、そして今しがた悔しさをバネにさらに成長しようと決心したオニオン自身にも大きな影響を与え、今なおリーグを勝ち進んでいる張本人。
「……いったい……どこまで勝ち進むのでしょうか」
オニオンの声に答えるものはいない。しかし、口にしないだけで誰もが同じことを思っていた。
ガラル地方に吹く新しい風。その中心人物の快進撃。
きっと、どんな結果になってもガラル地方は大きく変わっていくだろう。
「……どう変わるか……楽しみです」
「ふふ、いい笑顔で笑うじゃないか」
「顔、見えませんけどね」
「うるさいねぇ、雰囲気でわかるだろう?」
「今フリアの話ししていた!?っくぅぅぅ思い出したらまた悔しさがぁぁぁ」
「ああもううるさいよ!!カブ!!ヤロー!!ちゃんとたづな握っておきなさいよ!!」
「と言われても、こうなったルリナくんは君にも止められないだろう?」
「悔しい気持ちはみんな一緒だからなぁ」
そんな話で盛り上がっていたオニオンたちの下に突撃してくるのは、もう完全にテンションがおかしなことになっているルリナと、そんな彼女をなだめていたカブとヤロー。ここに来ているジムリーダーが一気に1つの場所に集まり、騒がしさが倍増していく。
ジムリーダーが6人。
人によっては、その集まりに感動を覚える人さえいるだろう。しかし、彼らが話している会話は、ただただ負けたことに対する悔しさをぶつけ合うだけの愚痴の言い合いだ。決して褒められたそれではない。
ジムリーダーと言えども、元をたどれば1人の人間である。いくら超人と言われる彼らにも、休息は必要だ。
(……ボクのリーグは今日終わってしまった。……だから、あとは観戦しかできません)
しかし、その休息の時間さえも、身体を休めたうえで効率よく、貪欲に情報を集めようとしている。
(……次の決勝戦……楽しみにしてます……フリア)
次こそは、このリーグを勝ち抜くため。
この中で一番おとなしく、だけど、この中で一番影響を受けたジムリーダーの少年は、喧騒渦巻くバーの中で、静かに闘志を燃やしていた。
☆
ドクン……ドクン……。
目を瞑り、胸に手を当ててみると、いつもよりも少し早い鼓動がしっかりと聞こえてくる。
(……いよいよだ)
鼓動をしっかり感じながら、ゆっくりと目を開ける。するとそこには、こちらを待ち受けているかの如く、大きく口を開けて、光と歓声を漏らせてくる真っ白な出口があった。
(この先に……いる……!!)
その出口に向かって、1歩……また1歩と足を動かし、ついにその出口を潜り抜ける。
『わあああああああああ!!!!』
「っ!!」
潜り抜けた瞬間にボクを待っていたのは、強烈な声と光の雨。
暗い所から急に外に出たことによる眩しさと、ボクの姿を確認したことで、いよいよ始まるバトルへの期待によって、一気に爆増したボルテージがそのままボクの身体に叩きつけられた。
毎回更新される熱気の強さに、もはやこの熱気がどこまで盛り上がるのか、今からダンデさんが闘った時の会場の空気が若干怖くて仕方がない。
「すぅ……ふぅ……」
しかし、ここで飲み込まれるわけにはいかない。
これから行われる決勝戦。これに勝てば、いよいよダンデさんと戦う権利を得られる。
(決勝戦……相手は、キバナさん……!!)
深呼吸をし、心を落ち着けたところで、観客の歓声が更に一段階上がる。その声につられてバトルコートの反対側の出口に視線を送ると、そこからはガラル地方ナンバーワンジムリーダーのキバナさんが、スマホロトムで自撮りをしながら、悠々とこちらに歩いてきていた。
その姿からは、あまり緊張感を感じない。
それは決してこちらを侮っていたり、余裕があるというわけではない。
ただただ、この場に来るということに慣れている証。
自分はこの頂に、来るべくして来ているのだという絶対の自信の表れ。
傲慢ともとれるかもしれないその態度は、しかしここまで圧倒的なものを見せられると、それだけで強力なプレッシャーとなってこちらを押しのけようとしてくる。
「よう!!最強のチャレンジャー!!とうとうこの時が来たな!!」
バトルコートの真ん中にたどり着き、一通り自撮りを終えたキバナさんが、スマホロトムを懐にしまい、獰猛で嬉しそうな笑顔を浮かべながらボクの方に声をかけてくる。
審判の声を待ち遠しく思っているのか、既に身体を少し震わせながらこちらを睨んでくるその姿は、今まさにこちらにくらいつかんとしてくるクリムガンのようで、人によってはこの睨みだけで身体を痺れさせてしまうのではないかという程の圧力があった。
「……はい、ついにここまで来ました」
そのプレッシャーに負けないように、じっと見つめながら言葉を返す。
キバナさんは、自分が放つプレッシャーに怯えずに言葉を返してきたボクの姿が嬉しかったみたいで、浮かべている笑みをさらに深くさせながら口を開く。
「お前は本当に凄いぜ。このガラル地方は、他の地方に比べてレベルが高い。なぜなら、ジムリーダー間でもランク付けされるからだ」
「よく分かっています。ここまで戦ってきた人たち、みんな強かったですから」
「ははっ、そりゃそうだ」
本当に嬉しそうに笑うキバナさん。そんな彼の顔から、目を逸らせることが出来ない。
「さすがはあのシロナさんが推薦しただけはある。……だけどな、ダンデに挑むのは、このオレ様だ」
「っ!?」
キバナさんと目を合わせて話しているところに、さらに膨れ上がるプレッシャー。その重さから、一瞬だけ息が止まる。
「ジムチャレンジの時と一緒だと思うなよ?オレ様は確かにダブルバトルの方が得意だが……シングルだろうと負けはしない!!」
身長差も相まって、圧倒的なまでの迫力を持って宣戦布告してきたキバナさん。その圧だけで1歩相手を退けられる程の威圧を前に、けど、ボクも後ろに引くことはせず、真正面から受けて答える。
「ボクも……ようやく見えた背中があるんです。その背中に、今度こそ追いつくために……絶対に負けない!!今回も、勝たせてもらいます!!キバナさん!!」
「……へっ、やっぱりいいなぁ、お前は!!」
ボクの返答と態度に嬉しそうに返したキバナさんは、そのまま身体を反転させ、定位置へと歩いていく。
その背中姿を見送ったボクも、キバナさんに倣って振り返り、定位置まで歩いて行く。
(最初に出すポケモン……どうしよう……)
歩いて行きながら、ボクの頭の中に巡るのは最初に誰を出すか問題。
いつもなら、こういうのは戦う前にある程度決まってはいるんだけど、今回においては少し迷ってしまっている。
(キバナさんと言えば、ドラゴンタイプ使いは勿論だけど、天候を操ることでも有名だ。それもあって、初手はギガイアスやサダイジャみたいな、天候を簡単に変えられるポケモンを出しがち……でもそれは、あくまでもダブルバトルでの話なんだよね……)
当たり前だけど、サダイジャもギガイアスもドラゴンタイプのポケモンではない。ダブルと違って。場に出てるポケモンが少ないシングルでは、ここを入れるだけでドラゴンタイプ以外のポケモンを操る時間がぐっと増えてしまう。
天候は、あくまでも自分のポケモンを手助けするために返るものであって、天候を変えることに主軸を置いてしまえば、それは本末転倒となってしまう。そのため、キバナさんはシングルで闘う時は、特性で天候を変えられるポケモンは1人しか入れないというポリシーみたいなものがある。それは、少しでも得意なドラゴンポケモンを長く使いたいからという理由だ。
(ジムチャレンジの時に使ってきたのはサダイジャとギガイアス……でも、今までのバトルビデオを見てみたら、コータスやニョロトノを出している時もあるんだよね……)
キバナさんが主に扱う天候は3つ。
はれ、すなあらし、あめの3つだ。
特にすなあらしとはれを好んで使っている傾向があるように見え、逆にあられは一切使ってこない。これに関しては、単純にドラゴンタイプが苦手なこおりタイプを強化してしまう天候だから敬遠しているという話なんだろう。後は、あられを有利に扱える特性や、タイプをしているドラゴンタイプがほとんどいないという点もあるのかもしれない。
とにかく、キバナさんの初手はキバナさんがどの天候を扱ってくるかどうかで変わってきてしまう。
(コータスを出してくるのならインテレオン。ギガイアスを出してくるのならエルレイド。ニョロトノを出してくるのならモスノウを出しておきたいんだよね……)
頭の中でいろいろなパターンを浮かべるけど、どれも可能性がありそうで悩んでしまう。
今までの相手と違って、これと言った明確なパーティが決まっていない相手の厄介さと言うのが、ここに来てボクの判断を迷わせてきた。
「っとと」
なんて考えているうちに、いつの間にかボクの足はトレーナーが立つ場所にまで到達しており、慌てて急停止して後ろを振り向く。
その視線の先には、既にハイパーボールを構えて、準備万端なキバナさんの姿。
(……よし、インテレオンで行こう。相手がコータスでもギアイアスでも弱点をつけるし、ニョロトノ相手でも不利にはならないし、ここが一番安全だと思う……!!)
コータスはひでりのせいでみずタイプの威力が、ギガイアスはすなあらしのせいで相手の特防が上がるため、そもそも特殊技が通らないというネックな点はあるけど、一番安牌ではあるはずだ。そう思い、ボクはインテレオンが入ったボールを手にして、ぐっと力を籠める。
「いくぞ……フリア!!」
「はい……キバナさん!!」
「お前に勝ち!!ダンデに勝ち!!オレ様の強さを証明する!!」
「ここで勝って、ずっと追いかけてた背中に手をかける!!」
ジムリーダーの キバナが
勝負を しかけてきた!
「お願い!!インテレオ━━ッ!?」
「レオ……ッ!?」
チャンピオンリーグ決勝戦。その開幕の火ぶたが切って落とされた。
ボクはさっき考えた通りインテレオンを投擲。インテレオンも、自身が選ばれる可能性をしっかり考えてくれていたので、ちゃんと準備できているような返事を返してくれていた。
しかし、準備万端だったボクとインテレオンの表情が、一瞬で崩れる。
元凶は、キバナさんの
「せっかくの決勝戦だぜ?ちまちまやり合うとかおかしいよなぁ?!」
リストバンドから溢れた赤い光は、キバナさんが右手に持つハイパーボールに吸い込まれ、体積を一気に膨らませていく。
「荒れくるえよオレ様のパートナー!!スタジアムごと、やつを吹きとばす!!」
「ジュラアアアァァァァッ!!!」
スマホロトムを浮かばせ、一瞬パシャリと撮影すると同時に投げられたダイマックスボール。その中から、キョダイマックスジュラルドンが雄たけびをあげながら姿を現した。
それを見て、ボクもすぐにダイマックスを切ろうとインテレオンにリターンレーザーを伸ばす。
「ッ!!インテレオン!!すぐに戻って━━」
「遅いぜ!!『キョダイゲンスイ』!!」
「ジュラアアアァァァァッ!!!」
しかし、それよりも先に、ジュラルドンのキョダイゲンスイが飛んでくる。
「インテレオン!!避けて!!」
「レオッ!?」
「インテレオン!!」
戻すのは間に合わない。だからせめて回避してもらおうと指示を出すボクだけど、そんなボクの声は、キョダイゲンスイが炸裂し、巻き起こる爆発音によってかき消されていく。
チャンピオンリーグ決勝戦。その開幕は、キバナさんによる派手な一撃によって幕をあげた。