【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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286話

「ブラッキー、戻って休んで。……ありがとう」

 

 キバナさんによる開幕からの猛攻撃は、着実にボクの手持ちにポケモンたちを削ってきていた。まだ戦いは始まったばかりだと言うのに、ボクの手持ちは既に2人戦闘不能になっており、傍から見てもかなり追い詰められた状況になっている。観客たちも激戦を予想していただけにこの結果はかなり予想外らしく、キバナさんファンによる大歓声半分と、この状況への困惑の声半分と言ったところで、バトルが始まる前の状況に比べて、少しだけ周りの声は小さくなっていた。

 

 もしかしたら、このままキバナさんが圧勝してしまうのではないか。

 

 まさかの展開にそんな未来予想図を描き始めている人も少なくないのだろう。そして、それが現実に起こってしまえば、きっとこの会場は今までにない決勝ということで、別ベクトルの盛り上がりを見せるはずだ。

 

 ……そうなってしまった時の、ボクに向けられる感情を想像すると少しだけゾッとする。間違いなく失望の視線は増えるだろうから。

 

 そんな別方面の心配が生まれてしまった現状。ブラッキーを戻しながら、次のポケモンを構えようとするボクなのだけど……

 

(さて、どうしようかな?)

 

 思いのほかこの状況にマイナスイメージを持っていなかった。

 

 確かにブラッキーとインテレオンを失ったのは痛手だ。しかし、相手もダイマックス権とジュラルドンの体力をいくらか払ってこの結果を手に入れている。そう考えると、割と釣り合いの取れた交換になっているような気はしている。

 

 それに、ボクにはキバナさんに強いポケモンがまだ控えているというのが、何よりも強いボクの心の支えとなっていた。

 

(ヨノワールはぴんぴんしてるし、ダイマックスもあの子も残ってる。……うん、全然逆転の芽は見えてる!!)

 

 頭の中で冷静になって考えてみれば、十分チャンスは残っている。やっぱり無理してインテレオンにダイマックスを切らなかったのは英断と言っていいだろう。かと言って、楽観視できる状況では無いので、この作戦を行う上で、気をつける点はしっかりと意識しておく。

 

(ここから逆転をするにあたって、1番ネックなポケモンはあの子だ。あの子に対して、どうにかしてエルレイドをぶつけてあげたいんだけど……)

 

 意識した上で行われる、次のポケモン選び。

 

 今現在キバナさんの場にはジュラルドンがいるけど、正直今はジュラルドンのことを考える必要は無い。ダイマックスも終わり、りゅうせいぐんの反動で一時的に火力も落ちているジュラルドンをこのまま場に残す意味もないので、間違いなく手持ちに1回戻るからだ。

 

「おし、1回戻ってくれ、ジュラルドン!!」

 

(やっぱり!!)

 

 なんてことを考えていると、ボクの予想通りジュラルドンは1度手持ちに帰っていった。そして、すぐさま次のポケモンを繰り出してくる。

 

「いくぜ、キングドラ!!」

「グドラッ!!」

 

 場に出てきたのはキングドラ。みずとドラゴンの2つのタイプを持ったポケモンで、同時にキバナさんが得意とする天候変化にとても相性のいいポケモンだ。きっとボクの予想通り、あの天候に変更して戦ってくることだろう。今から想像するだけで、その強さに少しだけマイナスなイメージが浮かんでしまいそうになる。

 

 しかし、強力な展開があるということは、その展開を読みやすいという意味でもある。キバナさんの弱点を挙げるのなら、出てきたポケモンでどの天候を使いたいのかがそれなりに想像出来る点だ。そして、変わってくる天候がわかるのなら、その天候を逆に利用してやればいい。

 

(キングドラが出てきたということは天候は絶対に『あめ』だ。なら、このあめを利用できて且つ、キングドラに対しても戦えるポケモン……!!)

 

「行くよ!!モスノウ!!」

「フィィッ!!」

「……ここできやがるか」

 

 ボクが選んだ3人目はモスノウ。こおりのりんぷんを撒き散らしながら優雅に佇むその姿は、いつ見ても視線を奪われてしまうほど美しい。しかし、そんなポケモンを見たキバナさんの表情は、先程までの笑顔が嘘のように歪み始める。

 

 こおりタイプはドラゴンタイプが苦手とするタイプのひとつだ。だからキバナさん視点からすれば、厄介な相手が出てきたと思うのは仕方がないだろう。しかし、キングドラはみずタイプも持っているため、他のドラゴンタイプに比べれば、まだこおりは平気な方である。それでもここまで嫌な顔を浮かべるのは、ひとえにキバナさんの苦手意識の問題だろう。

 

 ガラル地方最強のジムリーダーに君臨するキバナさん。その名は伊達ではなく、ジムリーダー内でのランキングは常に1位で、現にこの決勝戦に駒を進めてきている強力なトレーナーだ。しかし、そんな最強のジムリーダーであるキバナさんにも、苦手な相手というのが存在していた。

 

 それが、キルクスタウンジムリーダーのメロンさん。

 

 こおりタイプを司る彼女との戦いでは、実はキバナさんは1回も勝てた経験がない。タイプ相性が不利であることを加味しても、ポプラさんには勝ったことがあるのに、メロンさんに対しては本当に1度もないのだ。そして、モスノウというポケモンは、そんな彼女の手持ちのひとりである。そのポケモンが急に目の前に現れたとなれば、内心穏やかではないだろう。

 

 勿論、ボクはメロンさんのようにこおりタイプに精通している訳では無いから、同じように立ち回ることは出来ない。しかし、それを加味したとしてもこちらにアドバンテージがあるはずだ。

 

 これが先程ボクが『あの子』と言った、対キバナさんへの切り札のひとつ。

 

(ここで少しでも追いつく!!)

 

「逃げ切るぞキングドラ!!『あまごい』!!」

「『ちょうのまい』!!」

「グラッ!」

「フィィッ!!」

 

 お互いの準備が整うと同時に発せられた指示は起点作成。キングドラは空に向かって吠え、場にあめを降らせ始め、対するモスノウは踊りを舞い、自身の能力を成長させる。

 

「さぁ、あめだぜキングドラ!!火照った身体に冷たいあめが染みるよなぁ!!」

「残念ですけど、うちのモスノウは染みる前に鱗粉であめを弾きます!!キバナさんの猛攻も、ここで一緒に弾きます!!」

「だったらその自慢のりんぷんとやらで弾いてみな!!『ハイドロポンプ』!!」

「『ふぶき』!!」

「グドラッ!!」

「フィィッ!!」

 

 降りしきる雨の中放たれる水の大砲と氷の暴風。

 

 落ちてくるあめ全てを巻き込んでぶつかり合う2つの攻撃は、両者の中心点で爆音を放ちながらあたりに冷えた水をまき散らし、その水は地面に叩きつけられると同時に次々と凍っていく。どうやら冷えた水が地面にぶつかると同時に、ふぶきの余波でさらに冷えることで固まっていったらしい。場の状態を技ひとつでこんなにも変えてしまうあたり、両者の攻撃の高さがうかがえる。

 

 しかし、そんな強力な技同士のぶつかり合いだとしても、その中で強弱と言うのは存在する。

 

「グドッ!?」

「ったく、相変わらずとんでもない火力してるな……こっちはあめ降らせてるんだぞ?」

 

 余波によって後ろに下げられたのはのキングドラ。キバナさんの言う通り、あめによってハイドロポンプはかなり強化され、そんじょそこらのポケモンであればこれだけで吹き飛ばしてしまえそうなほどの火力を誇っている。しかし、それを見越していたからこそ、こちらもあまごいをしている間にちょうのまいを行うことで、あめによる威力増加に対抗するためにとくこう上昇をさせている。そのおかげもあって、威力の上昇量の話をすれば、あめの下のキングドラと一緒の状態だ。となれば、元々の特殊攻撃力が高いこちらの方がそのまま火力が上と言うことになる。お互いが放った技もハイドロポンプとふぶきという、ともに各タイプの高威力技で、技そのものの威力にも差はないのであれば、決着は当然それぞれの能力値で決まるので、こちらが少し有利と言うわけだ。しかも、モスノウは特性のおかげで相手の特殊攻撃に対しての耐性も高い。そこを加味すれば、さらにそこの差は広がっていくだろう。

 

(天候を奪われるのは百も承知している!!なら、取られたうえで問題ない行動をとっていけばいい!!少なくとも、モスノウなら可能だ)

 

 キバナさんの苦手とするポケモンで、キバナさんに火力で負けない立ち回りが出来るモスノウは、まさしく今回のバトルの要となる。それは、今キングドラに対して押し勝てている点から見ても分かるだろう。

 

 けど、ここに慢心だけはしてはいけない。

 

「……だが、火力が全てってわけじゃないよな?むしろ、火力よりもこっちの方が大事だろ!!キングドラ!!『なみのり』!!」

「ドラッ!!」

 

 後ろに飛ばされた勢いを殺さず、むしろその流れに乗ったキングドラは、自分の足元に大きな波を召喚し、そのまま身体を波の中に入れて高速で泳ぎ回る。

 

 特性すいすい。

 

 ルリナさんとのバトルで散々苦しめられたその特性をキングドラも所持している。だからこそ、キバナさんはあまごいを行って、火力をあげるだけでなく、機動力も確保しようと考えていたわけだ。

 

 ここに来て、天候を操ることに長けているキバナさんらしい戦い方が顔を見せてくれたと思う。むしろ、今までのパワープレイの方が、多分キバナさんの戦い方らしいものではないそれだったんじゃないかなと思う。実際、ジムチャレンジの時はサダイジャの特性を生かして、かなりテクニカルな動きをしてきたイメージがある。

 

 パワープレイが出来ないというわけではないんだろうし、むしろ性格的にはパワープレイがかなり好きそうな人だけど、最初からそれを仕掛けるほど考えが無かったり、搦め手が苦手という印象もないからね。

 

「グラッ!!」

「良いぜキングドラ!!そのまま流れに乗っちまおうぜ!!」

 

 そんなボクの考えを肯定するかのように、あめをうけたキングドラは縦横無尽に泳ぎ回り、モスノウの眼下を高速で飛沫を建てていた。

 

(ここからが本番……だよね!!)

 

 既に2人仲間を失ってはいるけど、ここに関してはまだ挽回可能だ。むしろ、ここからさらに追い込まれたら逆転の可能性すらなくなってしまう。

 

 逆転の芽を作り上げるために……ここからが本当のキバナさんとのバトルだ。

 

「モスノウ!!『ふぶき』!!」

「フィッ!!」

 

 眼下で高速で動くキングドラ。その速さはすさまじく、いくらちょうのまいで素早さをあげているとはいえ、モスノウの速さではとてもじゃないけど追いつくことが出来ない。だから、逆転の発想をする必要がある。

 

「水を凍らせてキングドラの動きを止めようって腹だな?させるかよ!!『なみのり』!!」

「ドラッ!!」

 

 キバナさんの言う通り、水を凍らせてキングドラの足を止めようと放った此方の攻撃。

 

 全てを凍らせる勢いで広がっていくその攻撃は、しかしその攻撃から水面を守るように新しく出来上がった大きな波が盾になるような形でキングドラの前に出現。ふぶきを全て受け止めたその波は表面からゆっくりと凍っていき、こちらへの勢いを徐々に緩めていく。が、さっきも言った通りこの波の役割はこちらの攻撃を防ぐことだ。動きが止まったところで 、それは想定通りでしかない。

 

「飛びだせ!!『ハイドロポンプ』!!」

「ドラッ!!」

 

 その役割通り、モスノウのふぶきを止めた波の壁から身を乗り出したキングドラは、口元に目一杯の水を溜めて大砲を発射。轟々と音を立てながら、真っすぐモスノウに向かって飛んできた。

 

「『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

 

 目の前から飛んでくる水の光線に対し、こちらは風の障壁を作成。自身を守るように展開された風の渦は、向かってくる水の光線を受け流し、自身の左後ろへと進路を変えていく。

 

「『むしのさざめき』!!」

「『りゅうのはどう』!!」

 

 ハイドロポンプが不発に終わったことを確認したボクとキバナさんは、すぐさま次の技を指示。モスノウからは緑色の波動が、キングドラからは藍色の波動が飛んでいき、両者の中間で爆発。その衝撃に押されるように、モスノウとキングドラは同時に後ろに弾かれた。

 

 この時に、モスノウが凍らせた波も衝撃で砕け、ばらばらの氷塊となって辺りに散らばっていく。

 

「良いもん出来たじゃねぇか!!『なみのり』!!」

「グドラッ!!」

 

 その様子を確認したキバナさんは、悪い笑顔を浮かべながらキングドラに移動を指示。キングドラもすぐさま行動し、堕ちている氷塊の裏に高速で移動をしたのち、その氷塊をなみのりでまとめ始めた。水の流れに氷塊を混ぜ込ませることで攻撃の質量をあげようという算段だ。けど、ただ氷塊をなみのりに混ぜただけでは、またこちらがこの波を凍らせてしまえばいいだけだ。だから、キバナさんはここから更ににひとつ工夫を付け加える。

 

「『ハイドロポンプ』だぜ!!」

「ド……ラッ!!」

 

 氷塊を巻き込んだなみのりの中に潜んでいるキングドラが、その場からハイドロポンプを発射。その姿を見て、額面通り受け取るのならば、波をカモフラージュにしてその中から攻撃をするように聞こえる指示。しかし、それをすのであれば、わざわざ氷塊をなみのりに巻き込む必要がない。

 

 氷塊を巻き込んだのは、このハイドロポンプによってこちらを直接狙うのではなく、ハイドロポンプの水圧を利用して、氷塊を弾丸のようにこちらに打ち出すための準備だ。

 

「ッ!?『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

 

 この氷塊に対しては身体に纏ったぼうふうだけでそらせることはできない。なので、今度は身体に纏うのではなく、真正面に翅を羽ばたかせてぼうふうを発動。天候があめであるため、規模が強力になった風の渦が、水圧で飛んできた氷塊を押し返すように飛んでいき、ぶつかり合う。

 

 2つの技のぶつかり合いによって、中間に合った氷塊は粉々に砕け、間の緩衝材がなくなったことで3度目になる技と技のぶつかり合いが発生。しかし、今までと比べて緩衝材を1度挟んだおかげか、ぶつかり合った時に起きた衝撃は小さかった。なので、この結果に対してはお互い気にすることなく移動を開始。

 

「『ハイドロポンプ』!!」

「ドラッ!!」

 

 キングドラはそのまま水の中を高速で動き回り、モスノウめがけて何本もハイドロポンプを発射。いろんな角度から空中を舞うモスノウに向かって、時に水を、時に氷塊を飛ばし、撃ち落とさんと猛攻を仕掛けて来る。

 

「『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

 

 対するこちらは、先ほどと違って攻撃に攻撃をぶつけるのではなく、攻撃を避けることと、逸らすことに重きを置いてぼうふうを操っていく。

 

 自身の身体に纏った風でハイドロポンプの軌道を反らしていき、飛んできた氷塊は自身の翅で起こしたぼうふうで巻き上げ、あめによってできている雨雲よりもさらに上に打ち上げていく。

 

「……おまえこそなかなかやばいことを思いつくな」

「これがボクのスタイルなので……モスノウ!!上へ!!」

「来るぞキングドラ!!構えろ!!」

 

 この様子を見て、こちらの狙いを理解したキバナさんは表情を少し歪め、けど臆することなくキングドラに声をかけて迎撃の準備を進めていく。

 

 そんなキングドラを横目で確認しながら、モスノウは雨雲の中に突っ込んで、そのさらに上へと飛んでいく。

 

 これによってボクたちの視線からモスノウが完全に消えてしまうことになる。けど、ボクの指示したことをしっかりと読み取ってくれたモスノウは、互いの姿を見ることが出来なくても、その動きに迷いは無い。

 

 そんなモスノウを信じて、ボクは技の指示を告げる。

 

「モスノウ!!『ふぶき』!!」

「フィィッ!!」

 

 遠くから聞こえるモスノウの叫び。それと同時に巻き起こるのは、急激な温度の低下と、()()()()()

 

「おいおい、ほんとに力技だな……」

 

 強力なふぶきを上から下にたたきつけることによって、空に浮かんでいた雨雲がふぶきに押されて落下してきた。その様は、地面にいるボクたちにとっては正しく天井が落ちてきているように錯覚してしまうほど恐ろしく、そして規模の大きい現象となって現れた。しかもそれだけでなく、雨雲が冷やされることによってあめも一緒に凍り、天候があめからゆきに変更。キングドラのすいすいまでもが上手く機能しなくなる。

 

 この時点で既に、場にとてつもなく大きな現象を巻き起こしてしまったモスノウのふぶき。けど、今まで説明したものは全て、ボクのやりたかったことの副作用でしかない。

 

「まだまだぁ!!」

「フィィッ!!」

 

 ボクの声に呼応して声を上げ、またさらに翅を強く羽ばたかせるモスノウ。これによって、ボクの本当の狙いが顔を出す。

 

 それは、空中にある雨雲を突っ着て地面に落ちてくる無数の氷塊。

 

 先程ぼうふうで空に打ち上げた氷塊が、モスノウの指示で全てキングドラに向かって降り注ぐ。その様は、先程ブラッキーが受けてしまったりゅうせいぐんの氷バージョンと言っても差し支えないほどの凶悪な攻撃となっていた。

 

「キングドラ!!『ハイドロポンプ』だ!!」

「グド……ラッ!!」

 

 降り注ぐ氷塊の流星群。それを前に、口元に水を溜め込んで準備をしていたキングドラが、決死の声をあげながら水を吐き出す。

 

 落ちてくる氷塊の数が多いことと、雨雲が地面に向かって下がってきたため、落ちてくる氷塊を視認してからキングドラにぶつかるまでの時間が短くなっていること、そして何より、あめが消えてしまったことによってすいすいも止まり、素早さが下がってしまったことによって、避けるのが難しいと判断したキバナさんは逃げることではなく撃ち落とすことを選択。その判断はまさしく完璧で、キングドラから伸びる水の大砲は氷塊を次々と打ち落としていく。

 

 スナイパーもびっくりするほど正確な水の狙撃は、自身に当たると思われる氷塊全てを射抜き、モスノウからの攻撃を捌き切る。が、落ちてくる氷塊の数が多すぎるためか、まだ氷塊は落ちてきているのに徐々にキングドラのスタミナに限界が見え始めてきた。

 

「気合い入れろキングドラ!!」

「ド……ラァッ!!」

 

 そんなキングドラに喝を入れるキバナさん。この攻撃を超えたら、またあめを降らせて流れを取り返すつもりなのだろう。キングドラもそんなキバナさんの気持ちを汲み取り、声を上げて自身を鼓舞しながら再び口元に水を溜め込み、ハイドロポンプ続行の準備を整えた。

 

(本当にすごい気力……でも、この瞬間を待ってた!!)

 

「モスノウ!!『ぼうふう』で小さな氷塊を飛ばして!!」

「フィッ!!」

「っ!?いつの間に!?」

 

 その気力の強さに純粋に感心するボク。しかし、その行動こそボクが待っていた行動だった。この動きを読んでいたボクは、氷塊の流星群に紛れていつの間にか地面近くまで戻ってきたモスノウへ指示を出し、小さな攻撃を差し込む。

 

 行った行動は、砕けて小さくなった氷の塊の発射。

 

 当たったところで対してダメージにもならないであろう拳サイズの小さな塊は、モスノウの風を受けてまっすぐキングドラの方向へ向かっていく。勿論、先程も言った通り、これをぶつけるだけならばキングドラに大したダメージは入らないし、キングドラ側もこんなちょっかいを受けた程度で氷塊の流星群を止められなくなるなんてことにはならないだろう。

 

 重要なのは、この塊が当たる場所だ。

 

「グド……ッ!?」

「おいおい……マジかよ!?」

 

 その場所は、キングドラの口。

 

 スナイパーライフルの銃口を想起させるキングドラの口の穴に吸い込まれるように飛んでいった氷塊は、そのままキングドラの口に突っ込んでいき、栓をする状態になった。

 

 今まさにハイドロポンプを打とうとしていたキングドラの口元は、水が外に出ることを封じられたことによって口の中で暴発。まるで風船が膨らんだかのように口部分が大きく膨らみ、キングドラから声にならない悲鳴が起こった。

 

 技の不発。それはキングドラに対して内側からダメージを与えると共に、自分にとんでくる攻撃を防げない状態の現れでもある。

 

 結果、キングドラが打ち落とせなかった氷塊の雨が全て、キングドラへと降り注ぎ、大きな音を立てた。

 

「ぐっ……キングドラ!!」

 

 その衝撃に、一瞬顔を覆うものの、すぐさま振り払って前を見るキバナさんは、大きな声でキングドラを呼ぶ。しかし、その声に返事を返すものはおらず……

 

「ド……ラ……」

 

 

「キングドラ、戦闘不能!!」

 

 

「フィィィッ!!」

 

 代わりに響いたのは、審判によるキングドラ戦闘不能の旨と、モスノウによる勝利の雄叫びだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キングドラ

実機ではキバナさんの手持ちではなかったドラゴンタイプのポケモン。このポケモンが入ったことから察するかもしれませんが、キバナさんの手持ちは思い切ってます。




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