「ドラ……」
「戻ってくれ、キングドラ」
ごぽりと、倒れたキングドラの口から、発射されるはずだった水と、この水を堰き止めていた氷がこぼれ落ち、膨らんだ口が元の太さに戻っていく様を見ながら、キバナさんはハイパーボールを取りだしてリターンレーザーを当てていく。そして同時に、今や雪となってしまったあまごいのターンが終了を告げ、バトルフィールドから雪が消え始めていった。
「ああ、ちくしょう。見事にやられたぜ」
空を見上げ、雪が止んで晴れ始めた姿を見ていたら、急に聞こえる対面からの悔しそうな声。それに釣られて視線を下の方におろせば、そこには悔しそうな、しかし同時にこの状況を楽しんでもいそうな、複雑な表情を浮かべているキバナさんの姿があった。ハイパーボールを腰に戻しながらそう零すキバナさんは、早く続きを行いたいのか、すぐさま次のボールに手をかける。
(次のポケモンの判断が早い……間違いなくモスノウを潰す選択だ)
その姿を見て、次のポケモンを予想出来たボクもまた、キバナさんに習うように別のモンスターボールを構えて、交換の準備をする。ちょうのまいの効果が消えるのはもったいないけど、さすがにここで突っ張れるほど肝は座っていない。
「やっぱりそいつは危険だな……だからここで潰すぞ!!」
「さすがに逃げます!!戻ってモスノウ!!出番だよエルレイド!!」
「行け、バクガメス!!……っておい!!逃げんなよ!!」
「エルッ!!」
「ガメェッ!!」
キバナさんからの3人目のポケモンは予想通りバクガメス。モスノウが苦手とするほのおタイプを複合に持つドラゴンタイプで、少し前にボクが『ネックなポケモン』と言ったのがこのバクガメスだ。
ほのおタイプを複合に持つことによって、ドラゴンタイプのポケモンに対する特攻持ちであるモスノウとマホイップの通りが悪くなってしまう。そうなると、必然的にヨノワールとエルレイド戦うことになるのだけど、その場合はこちらは攻撃手段が物理攻撃となる。そうなると、今度は彼が持つ専用技が強力故に大きな障害になってしまうという訳だ。
本当ならインテレオンをぶつけるのが1番安全なところだったのだけど、残念ながらインテレオンはもう倒れてしまっている。もっとも、バクガメスがほのおタイプを持つ以上、みずタイプであるインテレオンが通る可能性は高くは無いのだけど……え?みずタイプだからほのおタイプには強いんじゃないのかって?いや、本来ならそうなんだけど、バクガメスはドラゴンタイプも持っているからみずタイプ自体は苦手では無い。それに……
「いくぞバクガメス!!『にほんばれ』!!」
「ガメェッ!!」
ほのおタイプが操る天候がひでりである以上、みずタイプの技は全て威力が下げられてしまう。これではとてもじゃないけどみずタイプは戦っていけない。こう考えると、やっぱりインテレオンでも厳しかったかもしれない。
「ほらよ!!お次は『にほんばれ』だ!!フリア、おまえ対策してきたか?」
「……」
先程まで降っていたあめとゆきによって冷えていたからだが、今度は太陽の輝きによって一気に温められ、汗を流し始めてしまう。
急な寒暖差に身体が壊れそうな気がしないでもなけど、そんなことは今は気にせず、額をつたう一筋の汗を拭いながらまっすぐ相手を見る。
(この『にほんばれ』は単純にほのおタイプの技を強くするためのものだよね。バクガメスの特性は1つしかないから警戒する必要もあまりないし……となると、目下の問題はやっぱりあの技……)
「エルレイド、『サイコカッター』!!」
「エルッ!!」
「バクガメス!!『トラップシェル』!!」
「ガメッ!!」
(やっぱり来るよね……)
エルレイドがピンク色の刃を放つと同時に、背負っているトゲトゲした甲羅をこちらに向けながら、その甲羅を赤く光らせるバクガメス。その輝きはとても強く、太陽に照らされていることも合わさって、とてつもない高温になっていることが予想出来てしまうほどだ。その様は見ているだけでも目が焼けそうだし、なんなら蜃気楼でも起きているのか、少し姿がゆらゆら揺れているようにも見えるほど。
そんな赤々と熱せられた甲羅に向かって飛んでいくピンクの斬撃は、しかし特に妨害や減衰などをされることなくバクガメスの甲羅に直撃。この時にバクガメスから少しぐぐ持った声が聞こえたので、間違いなくダメージは刻み込まれていた。
この状況から拍子抜けを喰らう人も出てきそうな、そんな一幕。しかし、当然ただ攻撃を受けた訳では無いので、ボクとエルレイドは一気に警戒度を跳ねあげる。
「受けた分は返さねぇとなぁ!!バクガメス!!」
「ガ……メェッ!!」
「来るよエルレイド!!避けて!!」
「エルッ!!」
攻撃を受けたバクガメスが、キバナさんの声を聞きながら背中の甲羅の温度をさらに上昇させ、もはや溶けるのではないかと言うくらいに熱を溜め込む。そしてその溜め込んだ熱を、甲羅に点々と存在する棘に集中させ、一気に発火。背中にある8つの棘のうち、サイズの大きい4つからほのおのエネルギーが飛び出し、これがエルレイドに向かって、爆発の推進力を受けた状態で猛進してくる。しかもただ猛進してくるだけでなく、にほんばれの影響を受けたこの技は、ただでさえ火力が高い攻撃なのにその火力をさらに一段階強化し、掠るだけで火傷してしまうのではないかと言うほどの火力となって襲い掛かってきた。
当然こんな技を受けるわけにいかないエルレイドは、全力で回避行動をとる。
真正面から飛んできた炎の弾を屈んで避け、次に左半身を狙ってきたものを、右に小さく飛ぶことで回避。その後、回避の後隙を狩るように3つ目が真上から落ちてくるけど、これにも何とか反応して小さくバックステップすることで射線から身体をどかすことに成功する。これで残る攻撃はあとひとつ。
「エル……ッ!?」
しかし、そのあと1つがどこから来るのか探し始めた瞬間に、先程真上から落ちてきたものが地面に着弾すると同時に爆発。その衝撃がエルレイドに襲いかかったため、堪らずひるんでしまう。
そんなエルレイドに真正面から飛び込んでくる最後の炎弾。
「ルッ!?」
「エルレイド!!」
ひるんでいるせいで避けることが叶わないエルレイドのお腹にしっかりと突き刺さる焔は、地面に落ちたのと同じく、突き刺さると同時に大爆発。そのまま受けたエルレイドを大きく後ろへ吹き飛ばした。
「まだまだぁ!!『りゅうのはどう』!!」
「ガメェッ」
特防の高いエルレイドは、この攻撃で大ダメージこそ受けてしまうもの耐えることは出来るだろう。しかし、それはキバナさんも理解している部分であるため、キバナさんもすぐさま追撃を選択。吹き飛んだエルレイドを確認するよりも速く、バクガメスの口元から藍色のエネルギーが発射された。
「エルレイド!!『せいなるつるぎ』!!」
「エ……ルッ!!」
龍のアギトを模した藍色のエネルギーは、その顎にてエルレイドを噛み砕かんと突っ込んでくる。これに対し、無理やり態勢を整えたエルレイドはすかさず両腕の刃を展開。同時に白色の光を帯させ、突っ込んできた波動に対して勢いよく抜刀し、藍色の龍を綺麗に4等分に切り裂いた。
「走って!!」
「ッ!!」
切り裂かれた波動が爆発するのを横目で確認しながらダッシュを指示。すぐさま走り出すエルレイドは、両腕の刃をさらに鋭くさせながらバクガメスとの距離を詰めていく。
「バクガメス!!地面に『だいもんじ』!!」
「ガメッ!!」
「っ、エルレイド!!ストップ!!」
距離を詰めていくエルレイドに対して近づかれたくないバクガメスは、自身とエルレイドの間にだいもんじを発射。爆音と熱波を放ちながら着弾したその攻撃は、両者の間の地面を赤く熱し、足を踏み入れるだけで焼かれる灼熱地獄を作り上げる。これに足を入れる訳には行かないこちらは泣く泣く突撃を断念。エルレイドも悔しげな表情を浮かべながら足を止める。
「『りゅうのはどう』だぜ!!」
「ガメッ!!」
「『せいなるつるぎ』!!」
「エルッ!!」
こちらの足が止まったところでバクガメスが攻めに出る。
背中をこちらに向けたまま顔だけをエルレイドに向け、ストローのようになっている鼻から再び藍色の波動を発射。先程エルレイドが防いだものと同じ攻撃をしかけてくる。
この攻撃自体は別に怖くなく、さっきと同じようにせいなるつるぎで簡単に切り裂くことが出来る。今回もその例に漏れず、飛んできた藍色の波動はエルレイドの刃によって一瞬で切り裂かれ、エルレイドの後ろに流れてそのまま霧散していく。
(攻撃を受けることは無い。けど、こちらから手を出すことも出来ない……)
りゅうのはどうを切り裂き、直ぐに攻撃に移ろうと遠距離からでも攻撃出来るサイコカッターを構えるエルレイドだけど、その瞬間にバクガメスが背中をこちらに向けて準備を始めるので手を出すことが出来ない。
トラップシェルは、物理技であればどんな攻撃でも反撃が発動してしまう。それがじしんやサイコカッターのように、相手に直接触れることなく攻撃できる技であってもだ。そしてエルレイドは物理技を得意としているポケモン。それ故に覚えている技は全て物理技なので、何がどうあってもバクガメスのトラップシェルが発動してしまう。
本来バクガメス自身に火力はそこまで無いため、トラップシェルをされたとしても耐えることはそんなに難しくないし、トラップシェルという技はあくまでも反撃をする技であって攻撃を防ぐ技では無いため、この時に受けたダメージはしっかりと身体に刻み込まれる。だから、特殊技に対して耐性が高いエルレイドであるならば、真正面から殴り合うでも充分勝てる相手だ。けど、その威力が低いという欠点を、天候をはれにすることでカバーしている。だから簡単に攻めることが出来ずにいた。
(エルレイドなら戦えるって思ったけど、想像以上にはれが厄介だ……でも、バクガメスには明確な弱点がある。そこさえ突けられれば……!!)
「攻めないのか?ならこっちから行くぜ!!バクガメス!!『だいもんじ』!!」
「っ!!『アクアカッター』!!」
攻めるためのステップを1つずつ、ゆっくりと踏むために、頭の中で動きを組み立てているボクを、しかしそんな悠長に待つことなんてする訳ないキバナさんから再度攻撃の指示が聞こえたため、慌ててエルレイドに防御を指示。漢字の大の形のままこちらに迫ってくる業火に対して、エルレイドは水の刃を構えて一閃。炎をかき消そうと頑張るけど、本来ならタイプ相性でこちらが有利なはずの関係は、はれによってみずタイプの技が弱体化されている影響でエルレイドが押し負け、爆発と同時に後ろに下げられる結果となる。
このまま遠距離戦を続ければ、エルレイドは何も出来ずに負けるだろう。
(近づくためには……これしかない!!)
「エルレイド!!地面に向かって『せいなるつるぎ』!!」
「っ……エルッ!!」
爆風に煽られて後ろに下げられながら、それでも態勢を崩すことはしなかったエルレイドが、ボクの指示に従って地面を何度も切り裂き、岩の塊を何個か地面から切り出した。
「蹴飛ばして!!」
この生み出された岩に対して、エルレイドは大きく足を振りかぶって思いっきりシュート。綺麗な放物線を描いた岩たちは、バクガメスがいる方へと次々飛んでいく。
「技でなんでもないただの岩投げか?そんなの吹きとばせ!!バクガメス!!」
「ガメェッ!!」
突如現れた岩の弾幕に対して、しかしバクガメスは別段焦った様子を見せずに、自身の尻尾を思いっきり背中の甲羅に叩きつけ、反撃による爆発を自分から誘発させることで全ての岩を撃墜。煙が立ち上り、そして晴れた時には、バクガメスに向かっていた岩は全て跡形もなく消え去っていた。
「エルレイド!!今だよ!!」
「エルッ!!」
「……なるほど、本命はそっちか!」
しかし、あくまで消されたのはバクガメスに飛んで行ったものだけだ。エルレイドが蹴った岩はバクガメスを狙ったものだけではなく、バクガメスがだいもんじを放って灼熱地獄に変えてしまった地面の部分にも落ちていた。その岩は、燃え盛る地面の上に落ちたことで、徐々に表面温度をあげることになってはいるけど、まだ完全には上がりきっておらず、その岩に触れるだけならばまだ平気な状態だった。なので、バクガメスが甲羅を爆破させ、煙が出ている間にその岩を足場にして灼熱地獄を突破。バクガメスまでの距離を一気に詰めることに成功した。
(距離を詰めることは出来た。あとは、バクガメスの弱点を殴るだけ……!!)
自身の目の前にまで迫ってきたエルレイドに対して、相変わらず背中を向けたまま、首だけをこちらに向けてくるバクガメス。
こうやって背中を向け続け、カウンターで爆破することで自分の身を守ることに特化した戦い方が得意なバクガメスだけど、そんなバクガメスには2つの弱点が存在する。
ひとつは単純に足が遅いこと。背中に背負っている甲羅が大きく、さらに硫黄などの成分を多分に含んだ棘が重量を増しているせいで、バクガメス自身の機動力はかなり低い。背中を相手に向けるための振り向くという動作だけをとっても、そこそこの時間がかかってしまうだろう。
そして、この足が遅いという弱点が、もうひとつの弱点をさらに決定的にすることとなる。
そんなバクガメスのもうひとつの弱点は、ずばりバクガメスのおなかに空いている穴だ。
バクガメスは背中の甲羅に、自らが摂取した硫黄などをため込むことで爆発性を持つ棘を生成しているのだけど、この爆発の際に起きる熱を輩出するための通気口がお腹の中心に開いている。この穴はまさしくバクガメスの生命線で、この穴が無ければバクガメスは自身の爆発によって生まれた熱に内側から焼かれることになるため、存在するだけで弱点となってしまうことがわかっていながらも備えざるを得ない機構となっている。だからこそ、バクガメスは常に相手に背中を向けて戦うスタイルをとっているのだけど、逆に言えばそれは、回りこむことさえすればこちらが一気に有利になることと同義だ。
そして何よりも致命的なのが、足が遅いせいで、近づかれたら簡単に回り込まれてしまうという事だ。
「エルレイド!!」
「エルッ!!」
「バクガメス!!自分で背中の甲羅を殴れ!!」
「ガメッ!!」
岩を足場に飛び移り、バクガメスの目の前まで辿り着いたエルレイドは、ボクの声に反応して肘の刃を伸ばしながら大きく1歩踏み込む。これに対してバクガメスは、先ほど岩を吹き飛ばしたときと同じように、自分の尻尾で背中の甲羅を叩いて爆発を誘発。巻き起こる爆風をもって、エルレイドとの距離を再び広げようと画策。その狙い通り、大きな爆発がエルレイドを襲った。
「……エルッ!!」
「うん、よく耐えた!!」
「なっ、前に出てないッ!?」
しかし、エルレイドは1歩も下がることなく、両腕をクロスして受け止めることで爆風を耐えきっていた。
先程エルレイドが踏み込んだ1歩は、バクガメスへの距離を詰めるための1歩ではなく、来る爆発に備えての1歩だ。そのため、エルレイドとバクガメスの距離がキバナさんが想像するよりも離れていた。だからこそ、エルレイドは防御しきることが出来たというわけだ。
(今のバクガメスは爆発を起こしたばかりで上手く動くことが出来ない。チャンスは今!!)
「エルレイド!!今だよ!!」
「エルッ!!」
バクガメスが反動で動けない今度こそ、エルレイドは距離を詰めるための1歩を踏み出し、バクガメスの懐へダッシュ。既に距離がそこそこ詰まっているおかげで、その距離をゼロにするのに1秒もかかることは無い。
今度こそやばいと悟ったバクガメスは、近づいてくるエルレイドの攻撃を少しでも軽減させるために、少し後ろにさがりながらも必死に背中をエルレイドの方に向ける。が、エルレイドとバクガメスの素早さの差が大きすぎて、バクガメスの動きでは周りを走るエルレイドに背中を向けるのが間に合わない。バクガメスが1歩身体をかたむけている間に、エルレイドは3歩走り込み、その結果、バクガメスの抵抗虚しく、エルレイドがバクガメスの正面側に回り込むことに成功した。
「叩き込んで!!『せいなるつるぎ』!!」
「エ……ルッ!!」
正面側に回り込んだエルレイドの目の前には、バクガメスの弱点である、お腹に空いた大きな穴。背中を向けることも出来ていないため、トラップシェルで守ることも許されないその急所に向かって、エルレイドが右腕で全力の太刀を叩き込む。
「ガメェッ!?」
攻撃が当たると共に響くバクガメスの絶叫。急所に叩き込まれたエルレイド渾身の一撃は、バクガメスの体力を大きく削り、さらに態勢も崩させることによって、こちらがもう1発技を叩き込む隙ができた。
「エルッ!!」
その大チャンスをものにするべく、今度はまだ振っていない左腕で攻撃を仕掛けるエルレイド。狙いはもちろん胸の穴で、バクガメスの急所に向けて、2発目のせいなるつるぎが放たれる。
いくら防御力に定評があるバクガメスとはいえ、ここまで攻撃を喰らえばタダでは済まない。いや、そもそも耐え切れるかどうかすらも怪しいだろう。実際、今まさに2発目のせいなるつるぎを受けたバクガメスは、もうほぼ瀕死状態となって、その身体をゆっくりと後ろに倒そうとしていた。
(よし、これでキバナさんのポケモンを2人倒せた!!その分エルレイドも体力ギリギリだけど、ダイマックスを切っていないのにここまで追い付けれたら充分!!)
モスノウが通りづらいバクガメスに対して、ここまで上手く事が運んだことに思わず拳を握るボク。これを機に、さらに勢いをつけてこのまま追いついてやろうとテンションを上げていく。
「バクガメス!!最後の意地だ!!エルレイドを捕まえろ!!」
「ガ……メッ!!」
「エルッ!?」
「なっ!?」
しかし、そうは問屋が卸さない。
キバナさんの言葉を聞いて、後ろに倒れながらもエルレイドを両腕でしっかりとホールドしたバクガメス。体力が減っているため、後ろに倒れることを踏ん張ることは出来ないけれど、エルレイドを掴む腕は一切の緩みを見せることがなく、エルレイドが抵抗しても離れることは無い。こうなると、体重差的にエルレイドはバクガメスに引っ張られる形となってしまうため、バクガメスが背中から地面に倒れる方向に、エルレイドは無理やり付き合わされる。
「一体何を……」
完全にホールドされてしまったエルレイドだけど、同時にこの状況、バクガメス側にもできることがないように見えたボクは、ついそんなことを口にする。
しかし、そんなボクの考えが、次のバクガメスの行動によって吹き飛んだ。
「『トラップシェル』!!」
「なっ!?」
バクガメスが行ったのはトラップシェル。しかし、肝心のトラップシェルを発動する攻撃はどこにもない。では、どうやってそれを発動するのか。
答えは、背中を地面に倒した時の衝撃だ。
「ガメッ!!」
バクガメスが地面に倒れると同時に、甲羅と地面の間で巻き起こる大爆発。その火力はエルレイドとバクガメス2人分の体重を軽々しく空中へと打ち上げる程のものだった。
「エルッ!?」
ただ爆発で空中に浮かび上がっただけにも見えるこの行動は、しかしこの場においてはエルレイドに対して多大なダメージを与える行動となる。
その理由は、エルレイドがバクガメスに抱きしめられているからだ。
バクガメスのお腹には、さきも述べたように爆発によってたまった熱を排斥するための穴が空いており、ここから熱を逃がすことで、体内に色んなものがたまらないようにしている。しかし今その穴はエルレイドの身体がくっついており、それはつまり、バクガメスが身体の中に貯めていた熱やら爆風やら全てが、捕まっているエルレイドにたたきつけられるということになる。
(自身の弱点を攻撃手段に変えた!?)
「まだまだぁ!!バクガメス!!起爆だァ!!」
「ガメェッ!!」
バクガメスに捕まり、まさかの反撃を受けたエルレイドは、バクガメスの拘束から逃げ出すことが出来ない。そして、その間に空中に打ち上がったバクガメスは、身体を回転させて、上がバクガメス、下がエルレイドになるように調整。背中の甲羅を空に向けた状態で、尻尾を甲羅にたたきつけて再び発火。空に向けて爆発を放ったバクガメスは、今度はその反動によって地面に真っ逆さまに落ちていく。
「っ!?エルレイド!!逃げて!!」
「エ……ル……ッ!!」
このままだと、バクガメスと地面の間に潰されてしまう。それが分かり慌てて逃げようと動くけどもう遅く、バクガメスとエルレイドはそのまま地面へと墜落。激しい衝撃と轟音を周囲に撒き散らす。
「ッ……エルレイド!!」
「エ……ル……」
その衝撃から顔を守り、直ぐに声をかけながら前を見るボク。しかし、返ってくるのはエルレイドの力ない声で。
「エルレイド、戦闘不能!!」
目に入った光景は、バクガメスに下敷きになり、目を回しているエルレイドの姿だった。
バクガメス
おなかに空いた大きな穴については公式設定ですね。あれだけ大きな急所を出していると、守るのも一苦労な気がします。