「『ぼうふう』!!」
「『スケイルノイズ』!!」
「フィッ!!」
「ジャラッ!!」
ボクとキバナさんの指示が飛ぶと同時にぶつかり合う氷の嵐と不協和音。両者の中間でぶつかり合った2つの攻撃が、綺麗な結晶と衝撃音を広げる中、そんなものにはひとつも気にかけないモスノウとジャラランガは、方や力強く翅を羽ばたかせ、方や地面を力強く踏みしめて、留まることをせずに全力でダッシュ。両者とも決して速い方とはいえないポケモンだけど、能力で素早さを強化しているせいでその速度はかなり高く、慣れていない人は時たま見失ってしまうのではないかと思ってしまうほどだ。勿論、ボクとキバナさんはそんなことはしないが。
「ジャラランガ!!走りながら『スケイルノイズ』連打ァ!!」
「ジャラッ!!」
お互いの距離がぐんぐんと近づいていく中、先にしかけてきたのはキバナさん。指示を受けたジャラランガは、返事をしながら両腕をぐっと握りしめ、シャドーボクシングでもしているかのように両の拳を交互に前に突き出していく。この動作により、腕が振るわれる度に鱗が擦れることによって不協和音が鳴り響き、その音が弾幕として発射。モスノウに向かって飛んでいく無数の不可視の弾丸となって飛来する。
ひとつひとつが強力な弾丸だ。それ故に、ふぶきやぼうふうを展開するだけでは、威力では勝っていても一点突破力で負けているため、この攻撃を完全に防ぐには同じようにピンポイトでそれぞれに相殺できる技を当てる必要がある。
けど、現状モスノウにそのような技は無い。
だから、ここは少しモスノウに頑張ってもらわなきゃいけない。
「モスノウ!!今度こそ成功させよう!!翅を交互に動かして『ぼうふう』!!」
「フィッ!!」
その頑張りとは、先程挑戦し、そして不格好な姿となってしまった片翅によるぼうふう。
あの時はわざと失敗することによって反動にあおられ、スカイアッパーの軌道から無理やり逸れるという目的があったため上手くいく必要がなかった。……いや、絶対に上手くいくわけにはいかなかった。しかし、今回はちゃんとした攻撃を繰り出し、完璧に操って相殺する必要があるため、むしろ逆で必ず成功させる必要がある。
ぶっつけ本番で且つ2回目の挑戦というかなりの無茶ぶり。難易度はそれだけ高く、だからこそモスノウは最初の1回目の時はボクの指示に驚いた表情を一瞬見せていた。しかし、今回はその時の戸惑いなんて一切なく、ボクの言葉に自信満々に返答してくれた。さっきボクが「また無茶を言うかも」という発言から、またこの指示が来ることを覚悟してくれていたのかもしれない。
そんな覚悟極まった頼もしい返事をしながら、モスノウは高速で前進しながら右、左、右と、交互に順番に翅を動かした。
ただでさえ難しい片翅だけのぼうふうなのに、それに加えて前に飛びながらのその行動は、失敗の確率をさらにあげる行為だ。そして失敗してしまえば、バランスを崩してしまい技は不発になるだろう。そうなれば、襲いかかってくるスケイルノイズに撃ち抜かれ、モスノウは戦闘不能になる。
果たして、その結果は……
「……やりやがったな」
「……えへへ。……ありがとうモスノウ!!」
モスノウの翅より、小さな弾丸状に竜巻が射出。その弾は寸分違うことなく音の弾丸に接触し、至る所で爆発の嵐を巻き起こしていた。
モスノウの新技術の成功の証だ。
「その調子でもっと『ぼうふう』!!」
「フィッ!!」
「技1つ成長したからって勝てると思うなよ!!ジャラランガ!!もっと『スケイルノイズ』だ!!」
「ジャンラァ!!」
1度成功してしまえばコツを掴むのは速く、もう失敗することを恐れていないモスノウは器用に翅を動かし、どんどん風の弾丸を発射。渦巻く小さな竜巻による弾幕がジャラランガに向かって次々と打ち出される。
一方のジャラランガも、この攻撃に対抗するべくさらに両腕を振るって音を発生させ、音の弾丸を発射。これにより弾幕同士のぶつかり合いが更に激化し、爆発の数が一気に増える。
音も衝撃も強く、思わず耳を覆いたくなってしまうほどのそれが起きまくる中、しかしそれでもモスノウとジャラランガは動きを止めることなく前進を続け、風と音がぶつかり合う戦場で、ついにお互いの身体が触れ合う直前の場所までたどり着いた。
「『スカイアッパー』!!」
「『ぼうふう』解放!!」
至近距離まで接近したところで先にしかけてきたのはジャラランガ。右拳をぎゅっと握った彼は、そのまま下から掬い上げるように振り上げ、モスノウを下から打ち上げるように攻撃する。対するモスノウは、前進しながらいつの間にか身体に纏っていたぼうふうを解放しながら左にローリングを行い、ジャラランガの右手によるスカイアッパーのさらに外側へと身体をずらしてすれ違う。
「振り向いて『ぼうふう』!!」
スカイアッパーを避けてそのままジャラランガの後ろを取ったモスノウは、そこからすぐに振り返ってぼうふうを発射。こちらは片翅ずつの弾丸ではなく、大きく羽ばたいて放ついつものぼうふうだ。すなあらしの砂も巻き込んでジャラランガに襲いかかっていく様は、いつ見ても災害級の規模を見せてくれる。
「ジャラランガ!!地面に右手を突っ込め!!」
「ジャ……ラァッ!!」
自身に襲いかかってこようとしている風の暴力。それを前にして、スカイアッパーおわりで少し隙を晒しているジャラランガは、キバナさんの指示に従って振り向きながら右腕を地面に突き立てた。それも、ただ突き立てるだけでなく、地面に向かって本気で放たれた右のパンチは、地面の中に一瞬でめり込み、ジャラランガの肘関節くらいまでが埋まってしまっていた。これでは回避も防御行動も、なんならスケイルノイズだって行えない。
「一体何を……」
「そのまま右手でもう1回『スカイアッパー』!!」
「っ!?」
「ジャラアアアァァァッ」
いきなりの行動に一瞬思考が止まったと思ったら、次の瞬間に直ぐに告げられるキバナさんの指示に、一瞬にして意識を引き戻される。それと同時に 先程地面に埋めた右腕に渾身の力を込めたジャラランガは、まるで地面をひっくり返さんとする勢いで右拳を上に振り上げた。その破壊力はとてつもなく、ジャラランガの右腕を起点として周囲の地面にどんどん亀裂が走り、そして地面の中から右拳が振り上げられたと同時に地面が爆発。スカイアッパーの勢いを受けた岩盤が、岩石の嵐となってモスノウの方に飛んできた。
「力技すぎる!?モスノウ!!飛んで逃げて!!」
「フィッ!!」
「逃がすな!!『スケイルノイズ』!!」
「ジャラァッ!!」
岩石の弾幕によってぼうふうはかき消され、そのまま雨となって降り注いでくるこの攻撃から逃れるために、攻撃を中断して空に浮び上がるモスノウと、そこに追撃を放つために音の弾幕を撒き散らすジャラランガ。
岩と音の弾幕を前に一瞬怯みそうになるのをぐっと堪えたモスノウは、まずは岩の攻撃から逃れることを優先してとにかく上を目指し、岩の雨が当たらない地点まで登ったところで身体の向きを反転させ、ジャラランガの方へと正面を向ける。
「『ぼうふう』連打!!」
スカイアッパーによる擬似的ないわなだれを回避したモスノウは、次に音の弾幕の対処をするべくぼうふうを発射。もう何度目か分からないふたつの攻撃のぶつかり合いは、今回も相殺で決着がつき、お互いにダメージが入っていない。
「『ふぶき』!!」
「フィッ!!」
このまま膠着状態を続けてしまうと、すなあらしのダメージ分こちらが不利になってしまう。仕掛けるなら速くした方がいいと判断したボクは、このタイミングですなあらしという天候そのものを変えかねない一撃を選択し、モスノウに本気に攻撃を仕掛けてもらう。
「ジャラランガ!!こっちも本気の『スケイルノイズ』だ!!」
「ジャラァッ!!」
ここが勝負どころと本能で悟ったキバナさんも、すかさずジャラランガに最高火力による攻撃を指示。声を上げながら全身に力を決めたジャラランガは、筋肉の動きに連動させて全身の鱗を擦り合わせ、今までで1番の音を奏でて攻撃を発射。
上から打ち下ろされる氷の嵐と上から打ち上がる龍の音色の威力は完全な互角。よって、ふたつの攻撃は相殺しあって、辺りに爆風と轟音を散らすだけで終わってしまう。……かに思えた。
「フィッ!?」
「モスノウ!?」
が、実際に起きたのはモスノウの一方的な怯み。
威力自体は確かに互角だったのだが、モスノウが放ったふぶきがすなあらしを巻き込んでいたのが良くなかった。
2つの技によって生まれた爆風は、モスノウが操っていた雪と砂の粒子も同じように吹き飛ばしており、その速度はとてもじゃないけど避けられるものではなく、モスノウとジャラランガの元に一瞬で到達していたた。これが砂だけ、もしくは雪だけであったのなら大して問題はなかったのだけど、雪が少し溶け、水分を吸った砂の粒子同士がくっつくことで、その粒子はちょっとした礫のようなものに変貌し、周囲への無差別攻撃へと発展してしまっていた。この粒子の塊が、運悪くこおりのりんぷんの隙間を縫って、モスノウの目と翅に当たってしまったのが、今回モスノウが怯んだ原因だった。
「ジャラランガ!!いけ!!」
「ジャラッ!!」
一方で、同じ現象にジャラランガも襲われてはいるけど、あちらは特性ぼうじんのおかげでこの攻撃を全て弾いたのでノーダメージ。この礫を気にすることなく、怯んで高度を落とし始めているモスノウに向かって真っ直ぐ走り出した。右拳を構えながらこちらに近づいてきているあたり、このスカイアッパーでとどめを刺そうという魂胆なのだろう。
「モスノウ!!」
「フィ……ッ!!」
「遅せぇよ!!」
ボクもモスノウも、その狙いに直ぐに気づいたため慌てて態勢を整えて迎撃の準備を始める。しかし、モスノウ自身が地面に向かって落下をしてしまっている以上、自分からジャラランガに向かっている状態になってしまっているせいで、モスノウの立て直しが全く間に合っていない。
「『スカイアッパー』!!」
「『ふぶき』!!」
モスノウが立て直すよりも速く懐に飛び込んだジャラランガの右アッパーが飛んでくる。これに対して、何とか翅を動かしたモスノウが氷の嵐を操ってジャラランガに放とうとするが、これも1歩間に合わない。
「フィッ!?」
結果、物理に脆いモスノウの身体に、ジャラランガの右腕が深々と突き刺さり、モスノウに大きなダメージが刻まれた。下手をすればこれで戦闘不能になってしまってもおかしくないだろう。それほどまでにクリティカルヒットしたその拳を受けてしまったモスノウは、ジャラランガの拳にぐったりとその身体を乗せた状態から動かない。
「っし、ようやくモスノウを黙らせれたぜ!!」
「ジャラッ!!」
宿敵であるモスノウへの致命打。それは、メロンさんに勝てたことの無いキバナさんにとってとても大きな一撃であり、且つボクの手持ちを残り1人にまで追い詰める決め手の一撃でもある。そのことに大きな満足感と達成感を得たキバナさんは小さくガッツポーズをし、ジャラランガも嬉しそうに声をあげた。
確かに、ここでモスノウが倒されてしまえば、ボクの残り手持ちはあと1人。それに対してキバナさんは、体力が全員万全というわけではないにしろ、ジャラランガを含めてまだ3人もポケモンが残っている状態になる。ダイマックスが残っているとはいえ、これをヨノワール1人で全員を相手にするのはつらい。観客もそれがわかっているのか、空気は徐々にキバナさん勝利のそれに代わり始めていた。
「この調子で勝ち切るぞ!!ジャラランガ!!」
「ジャラァ!!」
その空気に当てられて、さらにテンションの上がっていくキバナさんとジャラランガ。そして、そのキバナさんとジャラランガの言葉に観客も盛り上がって、さらに歓声が上がるという相乗効果により、バトルフィールドに響く声の総量はどんどん大きくなってくる。
完全に流れはキバナさんが持っていった。このままいけば、間違いなくキバナさんが勝つ空気になっていくだろう。
「……ジャラ?」
「……なんだ?」
しかし、ここで何かがおかしいことに気づくジャラランガとキバナさん。
「……」
2人がおかしいと感じた点は2つ。
1つは、なぜかいつまでたっても審判の人から告げられることの無いモスノウが倒れたというアナウンス。
そしてもう1つは、思いっきり殴り抜けたはずなのに、ジャラランガの拳から引っ付いて、
「……っ!?ジャラランガ!!今すぐモスノウを払い落とせ!!」
「ジャラッ!?」
キバナさんの言葉を聞いて慌てて腕を振り回すジャラランガ。しかし、どれだけ激しく動かそうと、右拳の先にくっついているモスノウが外れることはなく、むしろ、ジャラランガの拳の先から、徐々に白い何かが膨れ上がっていくのが確認できた。
「ジャラランガの拳が……凍り始めてやがる!?」
その白色の正体は、モスノウの身体から零れるりんぷんが、ふぶきと合わさってジャラランガの拳を氷づけにしているところだった。
「フィ……ィ……ッ!!」
「モスノウ!!そのまま絶対に離さないで!!」
スカイアッパーの致命傷によって声を出すことすら辛そうだったモスノウがようやく声を少しあげた。自分の身体ごとジャラランガの拳を氷の中に取り込むことに集中していたこともあり、他のことに意識を向ける暇のなかったモスノウの、捨て身の行動が花開いたことによって少しだけ他のことに意識を向ける余裕が出来ため、声をあげられるようにあったみたいだ。そして、その声が聞こえたと同時に、ジャラランガの拳から広がる氷の大きさもぐんぐんと広がっていく。
「腹にあれだけの攻撃を受けてまだ耐えられて、そのうえでこれだけの冷気を操れるのかよ……」
モスノウの死力を尽くした最後の攻撃。自身の身体ごと氷の中に閉じ込める攻撃は、こおりタイプが弱点であるジャラランガに大きな制限を与える。
「ジャ……ラ……ッ!?」
「ジャラランガ!!すぐに氷を壊せ!!左手で『スカイアッパー』だ!!」
このままでは全身氷漬けになり、モスノウもろとも行動不能になってしまう。それを回避するために、左腕に渾身の力を込めて、思いっきり下から殴り抜けようとする。
「させない!!『ぼうふう』!!」
「フィッ!!」
「ジャラッ!?」
しかしその左腕の攻撃は、モスノウが翅を器用に動かして発動させた風の鎧によって受け止められ、勢いが喪失。左の拳が氷に触れた時には完全に速度が死んでおり、むしろ広がっていく氷に左腕までもが飲み込まれてしまう。
これでもう、ジャラランガに打つ手はない。
「モスノウ!!」
「フィ……ィィィッ!!」
相手からの最後の抵抗を封殺したところで、モスノウの声が響き渡り、ジャラランガとモスノウを氷の嵐が巻き込み、2人の身体をどんどん氷の中に閉じ込めていく。
「解放!!」
「ッ……フィッ!!」
そして、2人の姿が完全に氷の中に閉じ込められた瞬間に、モスノウが氷の中に一緒に閉じ込めていたぼうふうを解放することで、氷の内側から嵐の大爆発を巻き起こし、氷を打ち砕きながら2人の身体を大きく吹き飛ばした。
「……モスノウ、ジャラランガ、戦闘不能!!」
この攻撃により、弱点攻撃を連続で受けたジャラランガは勿論、スカイアッパーを受けた時点でほぼ死に体だったモスノウも、自身の体力を掛けた攻撃によって戦闘不能になった。
「ありがとう、モスノウ。本当によく頑張ってくれたよ」
「すまねぇジャラランガ。油断した……」
相打ちという形で最後まで粘ってくれたモスノウに感謝の言葉をかけながらボールに戻すボクと、先程までの勢いを完全に止められ、少し歯痒そうな表情を浮かばせるキバナさんという、対象的な図が出来上がる。観客の声も、今の一幕による大逆転にびっくりしすぎたのか、一瞬完全な無音空間になり、しかし次の瞬間には、モスノウの頑張りに興奮した人たちの声によって、ボルテージが再び帰ってくる。
本当に忙しく、そしてこちらの心を持ち上げるのが上手い観客たちだ。
そんな観客たちの心の移り変わりにほんの少し笑を零しながら、ボクは改めて状況を整理する。
(さて、これで1対2……)
モスノウが倒れたことで、ボクの手持ちは最後の1人となる。キバナさんの仕掛けてきた作戦により、2人分の差を開幕で付けられたことを考えれば、その差を1人まで詰めることが出来ていることに拍手を送っても問題は無いだろう。完璧とまでは行かなくても、おおよそ逆転のプラン通りに進行できていると言って過言では無いはずだ。
(みんながここまで繋いでくれた……さぁ、最後の締めだよ。ヨノワール?)
開幕ダイマックスといういきなりのアプローチを受けてなおここまで耐え、ヨノワールにバトンを繋いでくれたことを、ヨノワールが入ったボールを撫でながら感謝し、同時にヨノワールに少しだけプレッシャーを与えてみる。
本来ならあまりやらない方がいい行動なのかもしれないけど、こと彼においては、自身がエースである自覚があるためか、こういう言葉を掛けられるのはむしろ好きらしく、ボクの呼びかけにボールを振動させることで答えてくれた。
本当に頼もしい相棒だ。
「……しっ!!次はお前だ!!頼むぜガブリアス!!」
「ガブアァァ!!」
ボクがヨノワールと心を通わせている間にキバナさんも次のポケモンの呼び出しを行う。今まで顔を出すことのなかった、キバナさん6人目のポケモンはガブリアス。ボクにとってはもはや顔なじみと言ってもいいほどよく見るポケモンであり、同時にドラゴンタイプの中でも特に強力と言われている種族。人によっては、最強のポケモンは誰?と聞かれた時にガブリアスだと答える人もいるだろう。あのシロナさんの切り札でもあるそんなポケモンが、すなあらしが吹き荒れる中、天に向かって咆哮を上げながらバトルコートに現れる。
ヌメルゴン、ジャラランガ、そしてガブリアス……どれもドラゴンタイプのポケモンの中で特に強いと言われている種族が連続で出て来ている。それだけで、キバナさんがどれだけこのバトルに本気を出してくれているのかがとてもよく分かる。
ガラル地方最強のジムリーダー。その名に恥じない、まさしく最強の布陣だ。
けど、怯む訳には行かない。
吠えるガブリアスを前に、ヨノワールが入ったボールを真っ直ぐ真正面に向け、同時に右腕に着けたバンドを赤く光らせる。
(行くよヨノワール!!)
(ノワ!!)
ヨノワールの返事を聴きながら、赤い光を吸収して巨大化していくモンスターボールをしっかりと両手で抱えたボクは、万感の思いを込め、そのボールを天へと全力で投げつける。
「君にすべてを託す!!行くよヨノワール!!ダイマックス!!」
「ノワアアアァァァッ」
空中で割れたモンスボールより飛び出してきたのは、頼もしい相棒がダイマックスをした姿。先程ガブリアスが挙げた雄叫びなんてめじゃない程の音量となって響き渡り、空気をも振動させた。その様は、ヨノワールの特性も相まって、見ているだけで押しつぶされそうな圧を感じる。
「2度目の対決……だが、あの時よりもさらに圧力が上がってやがる……ははっ、分かってはいたけどよ……本当に短期間でぐんぐん成長しやがって……面白ぇ!!」
「ガブアァッ!!」
しかし、そんな圧力を前にしても、キバナさんはニヒルな笑みを消すことは無い。いや、むしろ嬉々としてこの状況を受け入れている。
その笑みにつられて、ボクも口角が少し吊り上がる。
「ヨノワール!!『ダイアース』!!」
「ノワアアアァァァッ」
「ガブリアス!!『じしん』!!」
「ガブアアアアァァァッ!!」
お互いが今の状況を楽しんでいる中繰り出されるのは、どちらも地面を揺るがす大きな破壊の振動。それぞれの拳が地面に叩きつけられると同時に、お互い目掛けて災害級の技が飛んでいき、ぶつかり合う。
奏られるは爆音。
舞い上がるは砂塵。
このバトルで1番派手なその光景は、ボクとキバナさんのバトルが、佳境へと差し掛かっていることの合図となって辺りに駆け巡った。
ガブリアス
キバナさんの伏せられていた最後のポケモン。実機のことも考えたら、ここは絶対にフライゴンにしたかったのですが……どうしてもとある事情でこちらに。私としては、ずっとフライゴンを使って欲しい気持ちでいっぱいです。キバナさんには、是非ともフライゴンで勝ち上がって欲しい……(厄介オタク)