7月25日から31日まで、諸事情により執筆がおそらく出来ません。そのため、次回更新日は最遅で8月4日となると思われます。ご了承くださいませ。
「さて、あなたたちにやってもらいたいことだけど、それは重要拠点の防衛と、遊撃の2つね」
「防衛と遊撃……」
シロナさんの言葉を復唱するボク。他のみんなも、声には出していないけど、ボクと同じく頭の中で言葉を噛み砕き、理解しようとしている様子が伺えた。そんなボクらの様子を見て、シロナさんは小さく頷きながら言葉を続ける。
「重要拠点の防御に関しては、このシュートシティの入口と、ワイルドエリアの玄関口となっているナックルシティ、及びエンジンシティでそれぞれ戦ってもらうことになるわ。ダイマックスポケモンの進撃はもちろん、ウルトラホールでこちらに来てしまい、パニックになって暴れるポケモンたちも無視する訳には行かない。そちらを対処してもらいたいと言うのが1点」
まずシロナさんから聞いたのは拠点防衛について。シロナさんの言う通り、ダイマックスポケモンの暴動に目が行きがちだけど、この事件でパニックになって暴れだしているポケモンというのは少なくない。いや、街の中にいつの間にか入り込んで暴れる可能性のある分、下手なダイマックスポケモンよりも厄介な可能性が高い。なので、ジムリーダーのみんなが各ジムに当てられている以上、自由に動けるボクたちがここを担当するのは理にかなっていると言っていい。
「次に遊撃について。これはワイルドエリア内のまだ避難できずに残ってしまっている人たちの救出が主な行動ね。テレビ局やラジオを通して現状を発信しているから、ワイルドエリアからほとんどの人が出て行っているとは思うけど、中には移動が難しい人たちや、この放送を聞いていない可能性にある人もいるはず」
「そっか、ワイルドエリアの預かり屋さんとか、ワイルドエリア内にある建物なんかにも気を使わないと……」
「どうやら心当たりがあるみたいね。だったら話が早いわ。ようは、そういった人たちを救出ないし、護衛するのがこの部隊の役割よ」
そして2つ目に挙げられた遊撃の役割の説明。
ようはワイルドエリアの巡回を行うこちらの役割は、ジムリーダーの守備管轄外の人を、管轄内の街まで連れていくのが1番理想の動きとなるだろう。広大なワイルドエリアを駆け回ることになるため、防衛組とはまた違った体力の消費を強いられることとなる。ただ防衛側と違ってある程度時間が経てば役割を完遂して、余裕ができるようになるポジションでもある。勿論そのことはシロナさんも理解しているため、この件についてもすぐに説明をしてくれた。
「一通り仕事が出来たのなら、この遊撃部隊はそのまま防衛部隊ないし、各ジムの辛そうなところに加勢してちょうだい。この辺りは、その時の現場による本人の判断に任せることになるわね。……ごめんなさい、このあたりまでしっかり予想出来ればいいのだけど、この先は私も予想ができないわ」
「いえ、充分分かりやすい説明でした。ありがとうございます」
「なら良かったわ」
ちゃんと先のこともしっかりと予見してくれているシロナさんの的確な指示はかなりありがたい。本人はまだ不十分だと自分の評価を下げているけど、むしろここまでしてもらってこの役割を出来ない方が悪い。しっかりとこの重要な仕事を頑張らせてもらおう。
「人数の振り分けについてはあなたたちに任せるわ。しっかり決めたいけど、いい加減行動を開始しないとそろそろ危ないところも出る可能性がある……カトレア!!」
「ええ……準備は出来てるわ……」
一通りの説明を終えたシロナさんは、ボクたちに向けていた視線をカトレアさんに向ける。すると、シロナさんが話している間に次の準備をしていたカトレアさんが、5人のポケモンを展開して待っていた。
「それぞれの役割はわかった……。ならすぐに移動する必要がある……けど、その足には限度がある……」
「ああ。アーマーガアタクシーの数には限界があるし、これらは民間人の避難に数を割きたいことを考えると、別の移動手段に頼りたい」
「そこであたくしの出番……今ここにフーディン、ネイティオ、サーナイト、ネンドール、オーベムが居るわ……」
「全員『テレポート』を覚えるポケモンだ……」
カトレアさんの言葉に頷くダンデさんに対して、5人のポケモンを紹介していく。その姿を見たオニオンさんが、この5人のポケモンの共通点をズバリと言い当てた。その博識具合に、少しだけ嬉しそうに頷いたカトレアさんは、これから自分が担おうとしていることを改めて口にする。
「今から『テレポート』ですぐさま送るわ……。けど送れるのは見ての通り5人まで……。誰が飛ぶ……?」
「俺はリザードンに乗って飛ぶから大丈夫だ」
「オレ様もガブリアスに送って貰う。気にしなくていいぜ」
「バウタウンにウルトラホールがないというのなら、わたしも後回しでいいわ。緊急性はまだ少ないでしょう?」
「ならわたしが車で送るわ!!それならタクシーも使わないし、けど急いで着けるでしょ?」
「ソニアの運転っていうのがすごく心配だけど……まぁ背に腹は抱えられないわね。お願いするわ」
「決まりね……じゃあヤローさん、カブさん、オニオンさん、メロンさん、ネズさん……準備を……」
テレポートで飛ばす候補である8人からダンデさん、キバナさん、ルリナさんが辞退することで、ピッタリ定員通りの人数になったので、カトレアさんのポケモンたちが順番にカブさんたちの傍によっていく。
「カトレアさん。送ってくれるのはありがたいが、君はどうするんだい?カンムリ雪原までかなり距離があるが……」
「あたくしはメタグロスに運んでもらうから心配はいらない……コクランも乗ってもらうわ……」
「畏まりました」
「同じ理由で私も気にしなくていいわ。ガブリアスがいるからね」
「なるほど……了解した。そういうのなら今回は有難くこの移動方法を使わせてもらおう」
「……実際凄くありがたいです」
「気にしないで……。お礼は全て終わってからちょうだい……。準備が出来たならすぐに行動するわよ……」
各々の移動手段も決まったところで、カトレアさんが移動開始の言葉を発すると同時に、ここにいる全員が頷き、それと同時に移動を開始する。
「出てきなさいメタグロス……。そしてみんなは『テレポート』……!!」
「リザードン!!俺をナックルシティへ!!」
「ガブリアス!!頼むぜ!!」
テレポートとリザードン、そしてガブリアスの力で、次々とこの場を離れていくジムリーダーたちとダンデさん。これによってこの場所の音が一気に消え、静かになった。その現象がいよいよボクたちがこの事件に本格的に関わることの合図のようになったのを感じ、自然と拳に力が入る。
「いよいよ作戦開始だな!!早速行こうぜ!!」
「まずは南下してシュートスタジアムの入口ね。そこを確認してから行きましょう」
「うん、賛成。そこでここを守る人と、ワイルドエリアに行く人で分けていくと」
「よし、出発するぞ!!」
「あ、待ってちょうだい!!」
ここから移動を開始した人たちに続くために、ジュンが声を上げ、ヒカリがまずするべきことをまとめ、マリィがその先を見据え、ホップの声で出発しようとする。しかし、そんなボクたちの第1歩を、シロナさんが少し慌てた様子で待ったをかけた。
一分一秒を争うこの状況で、おおよそシロナさんらしくないその行動に少し疑問を感じながら、しかしシロナさんのことだから何か大切なことがあると感じたボクたちは足を止めてシロナさんの方に身体を向ける。その姿を見て少しほっとしたような顔をしたシロナさんは、すぐに顔を引きしめて言葉を続けた。
「フリア、ユウリ、ホップ、マリィ、ヒカリ、ジュン。さっきも言った通り、あなたたちには遊撃と防衛をお願いしたいのだけど……出来ればもうひとつお願いしたいことがあるわ」
「お願いしたいこと……ですか?」
その内容は、ボクたちに与えられた仕事の追加。元々重要な役割を任されているだけに、この言葉に一気にみんなの緊張感が高まる。
「ごめんなさいね。本当なら私たちがするべきなのだけど、カンムリ雪原はあまりにも遠すぎるから……って言い訳はどうでもいいわね。あなたたちにお願いしたいのは、ワイルドエリアや防衛が落ち着いたあとの話しよ。もし余裕があるのなら、ダンデに加勢をしてあげてちょうだい」
「ダンデさんの加勢?」
「ええ」
追加内容は、ボクたちの役割が終わり次第、ムゲンダイナへ挑んでいるダンデさんへの加勢のお願いだった。あのダンデさんなら必要ないのでは?と疑問に思い、だからこそ内容確認のために同じことを繰り返したユウリの言葉に肯定の意を示しながら、シロナさんはさらに言葉を続けていく。
「確かにダンデは強力なトレーナーよ。ともすれば、私でも勝てないかもしれないほどの人……けど、あのムゲンダイナというポケモン、とてもじゃないけど一筋縄では行かないと思っているわ。その点は、フリアとヒカリとジュンは、何となくわかっているのではないかしら?」
「「「……」」」
シロナさんの言葉を聞いて、ボクたちの頭の中を流れるのはテンガンざんでの出来事。
神と呼ばれるポケモンを巻き込んで行われたあのバトルは、規模こそはそこまで大きくなることはならなかった。今回のガラル地方のように、シンオウ地方全てを巻き込んだ事件とまではなっていなかったから、きっと今シンオウ地方にいる人たちに話を聞きに行っても、殆どの人が『なんか天気が悪かったなぁ』で終わってしまうことだろう。
しかし、それはテンガンざんでの戦いが楽だったという訳では無い。
伝説のポケモンが6人も集まって繰り広げられた戦いは壮絶で、下手をすればひとつの世界が崩壊しかねないほどの戦いが繰り広げられていた。神や伝説と呼ばれるポケモンは、それだけの被害を簡単に生み出すことが出来る程の力を秘めている。
そんなポケモンに対して、ダンデさんは1人で2人のポケモンに立ち向かおうとしている。
あのムゲンダイナというポケモンがどのようなポケモンなのかは知らないけど、あのポケモンが放っていたプレッシャーは神と呼ばれたあの子たちと遜色ないものだった。そんな強力なポケモンが、2人もそろっているところにダンデさん1人で闘うのは確かに荷が重い。
「だから、あなたたちの中で余裕が出来た人がいたなら、すぐに駆け付けてあげて。なんなら、ここにいる全員で手助けに行ってもいいレベルよ。まぁ、さすがにそこまでは難しいでしょうけど……」
「オレたちがアニキの手助けに……ああ、分かったぞ!!」
「絶対に駆け付けます!!」
「頼むわね」
ダンデさんが担っていることの重要さを改めて認識したユウリとホップは、2人して気合を入れて返事をした。昔から関係を持っている2人だからこそ、ダンデさんの手伝いを少しでもしたいという気持ちが出てきているのかもしれない。
ユウリに関しては、ほしぐもちゃんの無事も気になっているから、そこも含めて、尚更ナックルシティに行きたいのだろう。
「なら!!ユウリとホップは『まどろみのもり』に行くのはどうかしら!!」
「ま、『まどろみのもり』……?何かあったか……?」
「……あっ!!」
そんなやる気に満ちていた2人に対して声をかけるのはソニアさん。いつになくテンションをあげながらそういったソニアさんは、表情も少しだけうずうずしているかのようなそれになっていた。その様子に、少しだけ引いたような様子を見せながら質問を投げるホップ。けど、そのホップの質問にソニアさんが答える前に、何かに気づいたユウリが声をあげる。
急に声をあげたことによって、みんなの視線はユウリ集中。これに対してユウリは、たった今気づいたことを口に出す。
「ブラックナイトって、大昔にガラル地方を滅ぼしかけた事件の名前でしょ?でも実際には滅ぶことなく乗り越えた」
「ええ、史実ではこのブラックナイトを乗り越えたのは2人の英雄と、剣と盾のポケモン。けど、そのポケモンは事件の解決と共に眠りについたらしい……じゃあ、その眠りについた場所は?ユウリやフリアがみた、あの謎のポケモンがいた場所は?」
「っ!?それで『まどろみのもり』か!!」
ユウリの言葉を引き継ぐように説明したソニアさんの言葉によって、ようやくユウリとソニアさんが何を言いたいのか気づいたホップ。同時に、その謎のポケモンを目にしたことのあるボクも、ソニアさんがユウリとホップになにをしてほしいのかをよく理解した。
一方でそれ以外の人たちは、当たり前だけど何が何だかわかっていないので首をかしげることしかできない。しかし、その内容を詳しく聞く時間はないと判断したシロナさんは、この話を切り上げながら、しかしソニアさんたちの意見を尊重したものをあげていく。
「それならユウリとホップは今すぐその『まどろみのもり』と言う場所に行ってちょうだい。きっとそこにはこの事件を攻略する鍵があるのでしょう?」
「はい。きっと、あのポケモンがいるはずなんです。それがこの事件を突破する鍵になるのなら!!……でも、『まどろみのもり』までかなり距離が……」
「そこはオレのアーマーガアで行けば大丈夫だぞ!!アーマーガアの大きさなら、オレたち2人分はのせられると思うし、何ならタクシーのかごを借りることもできるはずだぞ!!」
「あ、そっか!!」
「……話はまとまったみたいね。流石にこれ以上時間をかけるわけにはいかないから、私たちも行くわね。フリア。今は緊急事態だからあなたのポケモンは全て渡しておくわ。……みんなの無事を祈っている。カトレア!!コクラン!!」
「……ええ」
「はい」
ボクたちのやるべきことを確認し終えたシロナさんは、ボクに5つのモンスターボールを渡し、満足そうにうなずくと同時にカブリアスを呼び出し、その背中へ。天高く舞いながら、カトレアさんとコクランさんに声をかけて、3人で南の方へと飛んでいった。
「それじゃあわたしたちもそろそろ急ぐわ。ウルトラホールがないと言っても、急いだほうがいいことに変わりはないからね。ルリナ!!」
「ええ。今回ばかりは頼りにさせてもらうわよ、ソニア」
「オレたちも行くぞユウリ!!頼む!!アーマーガア!!」
「うん。お願いホップ。アーマーガア。みんなも、また後で!!」
シロナさんたちが飛んでいったのを確認したところで、ソニアさん、ルリナさん、ホップ、ユウリも、それぞれの移動手段をもってこの場を離れていく。
ジムリーダーたちに続いて、さらに人が減ったことにより、この場に残ったのはとうとうボクとマリィ、そしてジュンとヒカリだけとなった。
「……よし、ボクたちも行こう!!」
もう話すことはすべて終わった。後は、この夜を乗り越えるために行動するだけだ。
ボクの言葉にみんなも頷き、その足を急いでシュートシティの入口へと向けて動かしていく。
「まずはシュートシティの入り口でポケモンの進行のストッパーをするとよね?」
「ええ。一番人が集まっているここが襲われるのは、とてつもない被害になる可能性があるもの。それに、ジムリーダーたちをはじめ、シロナさんたちまでもが今はこの街にはいない……」
「それってつまり、実は一番手薄な場所がここでもあるってことだよな?」
「きっと、みんなボクたちがまずここを守ってくれると信頼しているからこその行動だと思う。まずはその期待に応えよう!!」
やることは沢山あるけど全部同時にやることは不可能だ。だからまずは手の届く範囲から手をつけていく。そのために早速足を動かしたボクたちは広いシュートシティを兎に角駆ける。
『どうしよう……どうなっちゃうんだろう……』
『怖いよ……お母さん……』
「大丈夫です!!ボクたちが守りますから!!」
「みんなはホテルに作られている避難所に向かうと!!ゆっくり、焦らずに!!」
『フリア選手とマリィ選手!?』
『2人が守ってくれる……きっと他の選手も頑張ってくれてる……』
『な、なら大丈夫だ!!みんな、焦らず避難しよう!!』
入口に向かうまでに聞こえてくる悲鳴や不安そうな声に対して、できる限り安心させられるように声をかけながら行くことも忘れない。ジュンとヒカリはともかく、ボクとマリィは既に色んな人に顔を知られている有名人だ。ポケモンバトルの強さも今大会で保証されているので、ボクたちの発言と行動は少なくない安心感を与えることが出来るはずだ。その証拠に、ボクたちの姿を見た人たちは、安心したような表情を見せながら、決して焦ることなく、確実に避難を開始していた。これならば、街中でパニックになって将棋倒しになってしまうなんてこともないだろう。そこから先はリーグスタッフの人が案内をしてくれるはずだから、ボクたちは自分のやるべきことをするためにとにかく足を動かしていく。
「っ!?……見えたぞ!!入口だ!!」
そうやって声をかけながら走り続けること数分。ジュンの声を聞いて前を見ると、数ヶ月前、ボクやユウリたちが、ジムチャレンジ突破の1歩を同時に踏み出したシュートシティの入口が見えてきた。
ついつい頭の中を横切った、もはや懐かしくすら感じる記憶に少しだけ顔が綻ぶのを感じたけど、その入口越しに迫ってきているポケモンたちの進軍にすぐに表情を引き締める。少なくとも今は、思い出に浸っている訳には行かない。
リーグスタッフの何人かが、この進軍を止めるために応戦しているけど、とてもじゃないけど抑えきれるようには見えない。すぐさま加勢をする必要があると判断したボクたちは、お互いに顔を見合せて頷き、右手にモンスターボールを構えてさらに走る速度を上げていく。
「インテレオン!!『ねらいうち』!!」
「レパルダス!!『あくのはどう』!!」
「エンペルト!!『ハイドロポンプ』!!」
「トゲキッス!!『エアスラッシュ』!!」
入口に到達と同時にポケモンを呼び出し、すぐさま攻撃を指示。それぞれの攻撃は進軍するポケモンたちに真っ直ぐ突き刺さり、こちらに攻めてくる速度をしっかりと落とすことに成功した。
「大丈夫ですか?!加勢に来ました!!」
「無茶せずに、傷ついている人はしっかり下がると!!」
「フリア選手!!マリィ選手!!良かった。あなた方が来てくれるのなら百人力です!!」
「……ちぇ、オレたちだっているのにさ」
「仕方ないでしょ?わたしたちはガラル地方で特になにかしたわけじゃないもの。当然の結果━━」
「あ、あの!!もしかしてヒカリさん……ですか?」
「え?え、ええ。わたしの名前はヒカリだけど……」
「こ、こんな状況で言うのもあれかもですけど、コンテスト見てました!!ファンです!!ヒカリさんも手伝ってくれるんですか?」
「ファンって言ってくれてありがと。勿論手伝わせてもらうわよ!!フリアたちと比べたら頼りないかもしれないけど、ちょとくらいは任せなさい!!」
「はい!!」
「……なんでオレだけ……なんだってんだよ〜……」
ボクたちが合流することで上がる現場の士気。これによってポケモンたちを押し返す力が上昇し、さっきに比べたら状況が良くなっていく。若干1名だけテンションを落としてしまっている人がいるけど、その人は放っておく。どうせすぐに立ち直るだろうし。それよりも現場を確認する方が大事なので、ボクは近くのスタッフさんと情報を共有していく。
「状況はどんな感じですか?」
「はい。シュートシティがガラル地方の最北端にあると言うだけあって、攻めてきているのはこの入口だけです。ただ、入口がひとつしかないせいで逆にポケモンが集中しているみたいで……」
「箇所が少ないのはいいことだけど、勢いが凄いってことか……」
何ヶ所も守らなくていいことは朗報だ。これなら、今のこの波さえ抑えることが出来れば、少ない人数で防衛することも難しくは無い。それはマリィたちも同じ考えのようで、思ったよりは何とかなりそうだということにほっとしていた。しかし安心出来る状況では無い。
「その波を抑えるのに時間がかかりそうってこととね」
「いくらなんでも数が多すぎるな……」
「統率が取れてないから、一人一人の強さはそれほどでもないけど……このまま物量で押されたら、ここは勝つことが出来ても、この先ワイルドエリアまで行く前に、体力をかなり持っていかれるわよ」
ボクたちの戦いはここだけでは無い。ここに全力を尽くして、あとはガス欠ですなんて結果だけは絶対に迎えてはいけない。
しかし、そんなこちらのエコ的な考えを向こうは許してくれない。
「ダイマックスポケモンが並んできてます!!気をつけて!!」
「「「「っ!?」」」」
どこかのスタッフの声につられて遠くを見ると、確かにダイマックスポケモンの軍勢が行進を始めていた。
その数は2桁を少し超えている。
1人だけならまだしも、この数が迫ってくるとなると、さすがに温存なんてしている場合では無い。
(この先が苦しくなるけど、ここを突破される訳にもいかない。絶対に止める!!)
急に襲ってくるダイマックスポケモンによるスタンピード。これを止めるべく、ここでリソースの大半を切る決心をボクはした。
急にやってきた絶望的状況に、ヒカリたちも苦しそうな顔浮かべながら、けど諦めるつもりはなく、ボールを構える。
ここにいる誰一人として諦めるつもりは無い。そんな強い意思を感じた。
そしてその強い意志は、絶望の中で輝くからこそ、他の人へと伝播していく。
「「ウーラオスッ!!」」
「『すいりゅうれんだ』!!」
「『あんこくきょうだ』!!」
迫り来るダイマックスポケモンのうち2人が、2人のウーラオスの拳によって吹き飛んだ。
「何とか間に合ったか……遅れて済まない。クララが心配していたが、無事かマリィよ」
「久しぶりに帰ってきたらとんでもないことになってて吃驚したよ。けど、俺が帰ってきたタイミングで良かった」
「マスタードさん!!」
「片方は知ってるけど、もう1人のウーラオスは始めてみるぞ……」
見知った顔の登場に喜ぶマリィと、もうひとつの知らない型を取っているウーラオスに対して困惑の声を上げるジュン。感動と驚きの出会いが果たされた横で、今度は大きな地響き。しかしそれは相手が暴れる音ではなく……
「ハガネール!!『アイアンテール』です!!」
「フガアアアア!!」
巨大な鉄の塊が、相手を薙ぎ倒すところだった。
「みなさん!!わたしたちも加勢するので任せてください!!しゃ、シャキーン!!」
「ジョウト地方のジムリーダーのミカンさん!?なんでここに!?」
まさかの援軍に声を上げるヒカリ。ここに来て追加された援軍にこちらの士気はさらに上昇。迫り来るポケモンを押し返さんばかりの声を上げる。
そしてさらに、衝撃的な援軍が現れる。
「ドダイトス。『ぶちかます』」
「ッダアアア!!」
「…っ!!」
ドダイトスの渾身のタックルによって吹き飛ぶダイマックスポケモン。その破壊力に、ほとんどの人が目を奪われる。
しかし、ボクとヒカリ、ジュンだけは、それ以上に別のことに視線を奪われた。
「お、お前……!!」
「なんでここに……」
最初に口を開いたのはジュンとヒカリ。
思わず口から出た彼女の疑問は、しかし誰も答えることは無い。
「……ジュン……ヒカリ……フリア……」
「コウキ……」
代わりにボクとジュン、そしてヒカリの名前を呼ぶその人物。
ボクの、目標であり、親友であり、ライバルであり、今1番気まずい相手。
そんな相手との、まさかの再会を、こんなところで、果たしてしまった。
別行動
みんながみんな、自分推すべきことをするために移動開始。まずは総力戦のための準備ですね。
マスタード
マスタードさん参戦。弟子であるマサルさんを見かけたので、嬉しさからいきなり本気モード。服装もジャージではなく胴着姿となって、この場に現れています。ダブルウーラオス、ここに見参。
援軍
マサルさん、ミカンさん、そして満を持してコウキさん合流。3人ともガラルリーグを見に来ていたので、当然この事件にも手を出してきますが……フリアさんのバトルをずっと観戦し続けて、思いをしっかり感じ取ったコウキさんと、そんなことなんて露も知らないフリアさん。急遽出会う事となった2人……その心境やいかに。
前書きでも書いてある通り、少しだけ投稿が止まります、我ながらなかなか気になるところで止めてしまい申し訳ないのですが、しばし待っていただけると幸いです。