やっぱりあるという事実だけで嬉しいものですね。
「ん……ぅ、ウールー!!」
ウールーと叫びながら目を覚ました少年に向かって少し近づくボクとダンデさん。こうして改めて顔を見るとやっぱりどこか似てる。瞳の色とか特に……
「起きたかホップ。どこか具合が悪い所とかないか?」
「あ、アニキ……?なんでここに……ってそんなことより大変なんだ!!ウールーが!!それに変なポケモンもいたし……あ、あとユウリは!?」
「落ち着けホップ。ウールーもユウリも無事だ。変なポケモンはよく分からないが……とにかくみんな無事だ」
起き抜けで混乱しているまま喋っているのか話が行ったり来たりして要領を得ないホップ君の言葉を一つ一つ丁寧に返して落ち着かせるダンデさん。こういうところにどこか頼りがいを感じる。
そんなダンデさんの話し方に少しずつ落ち着きを取り戻したホップ君がゆっくりと見回してウールーやユウリさんが無事なのを確認し、ようやく安堵のため息をつく。
「良かったぁ……みんな無事で安心だ」
「ん、んんぅ……あ、あれ。私……」
ホップ君が落ち着いたタイミングでユウリさんも目を覚まし、これで晴れてみんなが完全に無事だということがわかった。ユウリさんのためにもう一度現状を説明するダンデさんもその顔には安心の色が伺えた。
「しかし、なんで2人とも勝手にまどろみの森に入ったんだ?ここは危ないから勝手に入らないようにと言ったはずなんだが……」
「そ、それは……」
「朝起きてメッソンやウールーが見当たらないってアニキから聞いてユウリと一緒に探してたんだ。そしたら少し大きな破壊音が聞こえて……気になって見に来たらまどろみの森への門が壊されててもしかしたらって思ったらいてもたっても居られなくなって……オレがすぐに行こうってユウリを誘って行ったんだ」
ダンデさんの言葉にユウリさんが少し詰まってしまった所をホップ君が引き継いで説明する。少しユウリさんを庇ってるとも取れる説明からこの2人は仲がいいのが分かる。なんだか昔のジュンとコウキが怒られてた所を思い出すね。
「だからその……すまん、アニキ!!」
「ごめんなさいダンデさん!!」
「別に怒ってはいないさ。2人のポケモンを大切に思う気持ちやその勇気は素晴らしいものだ。ただ、少しは周りを頼るんだ。今回は彼がいなかったらもしかしたらもっと危険だったかもしれないからな」
「彼……?」
「そう言えばアニキの隣にいる人、誰だ?」
そんな思い出にしばらく浸っていた時に急にボクに振られる話題。
(いや、完全にボク空気だったし全く違うこと考えてたのに急に振られても!?)
しかしここで何も話さない訳にも行かないので慌てて口を開く。
「え、えっと……ボクの名前はフリア。とりあえずみんなに大事なくてよかったよ」
「彼がオレより早くウールーにメッソン、それに君たち2人を見つけて保護してくれたんだ」
「そうだったのか!!オレはホップ。フリアありがとうな!!」
「私はユウリって言います。今回はありがとうございました」
ぺこりと礼儀正しく頭を下げるユウリさんと太陽のような眩しい笑顔で真っ直ぐ礼を言うホップ君。まるで正反対な2人の行動に少しクスリとしていまう。
「いえいえ、ボクもウールーのおかげでここまで来れたから。たまたまにすぎないよ」
「それでも、助けてくれたのはフリアだ。ほんとにサンキューな!!」
笑顔で手を出してくるホップ。
少し強気な、しかし優しさも垣間見えるそのコミュニケーションの取り方は『ああ、ジュンに優しさと落ち着きを少し加えたような感じだなぁ』だなんて思ってしまい、それがまたおかしくもう一度笑ってしまう。
「ん?なにかおかしかったか?」
「いや、少しせっかちな友人の事を思い出しただけだよ。ではあまり否定するのも失礼なので……どういたしまして」
そう言いながら差し出された手を握り返す。
(うん、温かさと言い力強さと言いやっぱりダンデさんに似てるや)
「さて、2人とウールー、そしてメッソンの無事がわかった。ならここに長居は無用だ。3人とも、ハロンタウンに戻るぞ」
ダンデさんの言葉に3人で首を縦に振り、改めて森の出口と思われる方向へ足を運ぶ。ようやくこの森を出れることに安堵しながらこの森を抜けた先の町、ハロンタウンのことを思い浮かべる。マップを見た時の記憶を呼び出せば、確かハロンタウンはブラッシータウンより南にある町だったはずだ。
(うわぁ、森を迷ってる間に南に行き過ぎたのかぁ……ここまで道に迷ったのは初めてかも)
濃霧と森のコンビは侮れないなんて思っていたら隣を歩いていたユウリさんが声をかけてきた。
「あの、フリアさんはなんでここに?」
「あ、それはオレも気になってたぞ!」
「あ〜、それは……」
正直お恥ずかしいところがあるのであまり話したくはないんだけど……まぁ、そうは言っても隠すようなことでもないから素直に事情を話しておく。
シンオウ地方から来たこと。ブラッシータウンに用事があること。線路がカビゴンに止められていたこと。色々話していくうちにボク達の間の空気は大分柔らかいものになっていて、ダンデさんはともかくホップ君とユウリさんとはここからは呼び捨てで砕けた感じで話す仲になっていた。
「なるほど、だから朝から列車が止まっていたのか……しかし、なぜまどろみの森を横切ろうと……?」
「ブラッシータウンを目指してたのなら普通に線路を辿れば良かったのでは……?」
「……ホントじゃん」
マップを開いて今いる所を運転手に聞いたら直進で行けるじゃん!って思ったから直進しちゃったけど横着せずに線路沿い歩けばそもそも迷わなかったという……いや、でも言い訳が許されるなら一応森の中を少し線路通ってたの!!これはホント!!間にトンネルもあったしね!?……いや、だとしても線路沿いに歩くのが1番なんだけど。
「まぁまぁ、フリアが迷ったおかげでウールーとメッソンは助かったしオレたちも見つけてくれたんだ!!フリア、迷ってくれてありがとうな!!」
「うん、褒められてる気が一切しないんだけど一応褒め言葉として受け取っておこうかな」
若干頬がひきつってるのを感じながら返すボク。
(ダンデさんもユウリさんも苦笑いをしている当たり多分天然なんだろうなぁ……)
悪気がある訳では無いのでなんとも怒りづらいところだね。まぁ確かにボクがまどろみの森に入ったからこうなったというのは間違いじゃないし、ボク自身この3人とは仲良くなれそうなので会えてよかったと思ってはいるんだけどね。
……しかしそうなると今度はこの森に来てすぐに出会ったあのポケモンを思い出す。
「……結局あのポケモンはなんだったんだろ?」
「あのポケモン?」
「ああ、えっとね……」
思わず声に出ていたみたいで隣にいたユウリに聞こえてたみたいだ。と言っても特に隠すことでもないのであの時に見たシアン色のポケモンとマゼンタ色のポケモンの話をした。
「え、フリア君もあのポケモン見たの……?」
「やっぱりいたよな!!あのなんか凄いポケモン!!」
「ってことはホップとユウリも?」
「あのポケモンとは……?」
どうやらホップとユウリもあの2匹を見ていたらしくボクの言葉に反応を見せてくれる。それに対してダンデさんはその姿を見てないらしく頭にハテナを浮かべていた。
「森を少し進んだくらいで不思議なポケモンに出会ったんです。そのポケモンはどこか現実離れしてたというか……」
「霧みたいな感じで攻撃してもすり抜けてたんだ」
「え、あのポケモン実体がなかったの!?」
「うん。私とホップの攻撃、全部すり抜けちゃって何も当たらなかったんだ」
まさかの情報に驚きを隠せないボク。もしそれが本当ならあの時こちらからケンカを売らなくて良かったと安堵する。
「そんなポケモンがこの森に住むだなんて聞いたことないな……」
「ただ、なんて言うか……敵意とか怖さは感じなかったんだよなぁ……もしかして良い奴だったのかなぁ?フリアはどう思った?」
「ボクも敵意は感じなかったけど……」
あの時の状況を思い出しても確かにそういうのはなかったけど代わりに来たあのとてつもないプレッシャーはなんとも言い難いものがあった。たとえ敵意はなくともなにか機嫌を損ねたら危ないのは確実だ。
実体がないから幻なのでは?とも思わなくはないけど……にしては纏っていた空気が重すぎてとても空想のものとは思えなかったし……結局あれはなんだったのかは謎のままだ。
「もしかしたら、とんでもないポケモンなのかもしれない。お前たちが強くなった時、またここに来て見たらなにか分かるかもしれないな」
「だとしたら楽しみだぞ!!なら次にあいつに出会った時、ちゃんと攻撃を当てられるように鍛えないとな!!ユウリ!!」
「うん、そうだねホップ!!」
「その時はフリアも手伝ってくれよな!!」
「ははは、ボクで良ければ喜んで」
「今からお前たちの成長が楽しみだな!!……ん?そろそろだな」
なんて話し込んでいるうちにようやく森の終わりが見えてきた。
何時間もさまよってたせいか森をぬけた時に顔に刺さる日光がやけに眩しく感じる。そんな日差しに目を少し細め、光に目を慣らして少しずつ景色を視界に入れていく。すると……
「うわぁ……」
黄金色の草原をウールー達が楽しそうに走り回る長閑な風景。吹き抜ける心地よい風も相まってとても懐かしさや落ち着きを感じるいい町が出迎えてくれた。
「ここがハロンタウン。昔から牧場を営み、ポケモン達と共に暮らす町だ。改めて、ようこそフリア君。そしてありがとう。ガラル地方は君を歓迎しよう」
「ありがとうございます!!……う〜んっ!!空気が美味し〜……とても素敵なところですね!!」
「だろ〜!!オレやアニキ、ユウリが育った自慢の場所なんだ!!」
「うん。あと、私のお兄ちゃんも……みんなこの町が大好きなの」
誇らしげに語る3人の表情はとても輝いて見えた。
本当に地元を愛してるんだなぁと心から感じる。
確かに、こんな場所に住んでいるならボクも自慢しちゃうかもしれない。そう思うほどにとてもゆったりとしたいい雰囲気を感じた。
「さて、自慢話も程々に目的を果たそうか。確かフリア君はブラッシータウンに用事があるんだったな」
「はい。ブラッシータウンにいるマグノリア博士にものを届けるように頼まれていまして……」
「それならオレたちもこれからポケモン図鑑貰うために行くつもりだったんだ。これも何かの縁だし一緒に行こうぜ」
「元々今日の予定はウールーとメッソンの件がなかったら朝からブラッシータウンに行く予定だったもんね」
これは嬉しい提案だ。道案内の申し出は素直に嬉しいし一人で行くより何人かで行く方が楽しい。これはシンオウ地方を冒険した時に既に体験したことだ。
「いい提案だが……ユウリ、ホップ、まずは2人とも家族に報告だ。ブラッシータウンに行くこともそうだが2人がまどろみの森に行ったんじゃないかと話が出た時かなり心配していたぞ。ちゃんと報告して冒険に出ることも伝えて、しっかり安心させてから来い」
「うぅ、わかったぜアニキ……」
「は、はい。ごめんなさい……」
「うん、それじゃあ2人とも早く行ってこい」
はーいという返事とともに2人がそれぞれの家に帰っていく。少し駆け足になってるあたり早くポケモン図鑑を貰いたくてウズウズしてるようにも感じた。
(ポケモン図鑑を貰う前のワクワク感、分かるなぁ)
自分も通ってきた道だから親近感が湧いてくるね。
「さて、ではオレたちは一足先にブラッシータウンに向かうか」
「了解で━━」
「おーい!」
そんな2人を見送って行こうとした時にホップが慌てた様子で走って戻ってくる。
「何かあったの?」
「すまん、ひとつ言い忘れたことがあるんだ!」
「言い忘れたこと?」
「ああ。先にアニキとフリアでブラッシータウンに行くんだろ?だったらアニキをよく見ててくれ」
ヒソヒソ話をするかのように小さく発せられた言葉の意味がよく分からず思わず首を傾げてしまう。
「実はアニキ、超がつくほどの方向音痴で……道案内を任せると高確率で迷うんだ」
「え、でもまどろみの森で出口まで案内……」
「あれはオレも驚いたぞ……」
「えぇ〜……」
あれだけ頼もしく感じたダンデさんの身内からの思いもしない評価で微妙な空気になる。……いや、きっと気の所為とか冗談の類だよ。うん。それにたとえそうだとしてもここから恐らくブラッシータウンがあるであろう場所を見ると微かに建物が見える。そこまで遠く無い証でもあるうえ目印があるなら大丈夫なはずだ。……大丈夫、だよね?
「とにかく、アニキから目を離さないでくれよな。……まさかお前まで方向音痴ってことはないよな?」
「そこは安心してよ。これでもひとつの地方を旅した経験あるんだし、友達周りでもマップは見れる方だったから大丈夫だよ」
まどろみの森で迷ったのは濃霧による視界不良と森の中という目印をつけづらい場所という2つの迷いやすい要素があったからと言うだけだ。いや、線路辿ればよかっただけなんだけどさ?マップに関してもジュンというせっかちの代名詞みたいな人がいたせいで慣れたくなかったけど宥めながら道案内することにも慣れている。
「それなら安心だ。じゃあアニキを頼む!!オレたちもすぐに向かうからな!!」
そう言って今度こそ帰っていくホップ。それを見送って向かい合うボクとダンデさん。
「よし、じゃあ向かうか」
「はい」
お互い頷きあっていざ、1歩目を歩き出す。
ボクは北に、ダンデさんは東に……
「ってちょっと待てぃ!」
「ん?」
慌てて腕を引っ捕まえてダンデさんを止める。
「何かあったか?」
「ダンデさん?ブラッシータウンのある方角は?」
「北だ」
「今ダンデさんが歩いている方向は?」
「北だが?」
「東です!」
どこから湧いてるのか分からない自信と共に明言をしているけどどう考えても東の方向に歩いてるようにしか見えない。
「なんと、東だったか。済まない、じゃあ北はあっちだな」
「そうですね……」
ため息をひとつ落としながらとりあえず仕切り直し。今度はちゃんと北に向かって歩き始めた。きっと1歩目は方角を少し勘違いしただけだ。普通の人だって割といきなり方角を聞かれてすぐに答えられる人は少ないんだもの。きっとそうだ。
そう思い込みながら歩くこと数分後。
……ダンデさんが直角に西に曲がる。
「どこ行くんですかダンデさん?」
「ブラッシータウンだが……」
「本気で言ってます?」
光の速さで肩を掴んだボクに首を傾げながら答えるダンデさん。
なぜ真っ直ぐに北に行けばいいのに曲がる必要があるのか。そこのところがワカラナイ。
「あの、ブラッシータウンってここを真っ直ぐ行ったところに微かに見える町ですよね……?」
「ああそうだが?」
「なんで曲がるんですか?」
「オレは曲がった覚えはないが……」
「本気で言ってます?」
ホップ君。これは方向音痴というレベルを超えていると思うんだけど……
「とにかく!ここから見える町まで真っ直ぐ歩くだけですよね!?ちゃんと前向いて歩きましょう!!」
「そうだな。そうしよう」
そういいながらダンデさんは再び足を動かし始めた。
ある程度離れたことによって少し小さく見えるようになったハロンタウンに向けて。
「ボクが手を繋いで先導するので着いてきてもらっていいですか!?」
「それは助かる。オレは方向音痴でな。では頼んだぞフリア君」
「は、はい……」
なぜ地元の人を初めてその土地に訪れた人が案内しなければならないのか……飛行機の旅疲れ以上に疲れた体を引きずりながらボクは今度こそブラッシータウンへと足を運んだ。
☆
「ここがブラッシータウン、マグノリア博士の研究所だ」
「ハイ、ソウデスネ」
手を繋ぐという絶対にはぐれない方法をとってもなお何回か曲がろうとするダンデさんを無理やり引っ張りながら歩くこと1時間弱。この人はもしかしたらボクのことを嫌いなのではないかと疑い始めた辺りでようやくこの旅の目的地に到着したボク。とりあえず足を休めたい。
けどナナカマド博士からの用事となれば早めに済ませた方がいいだろうと思い疲れた体に鞭打って呼び鈴を鳴らす。
『はーい』
程なくして返事が帰ってきてすぐに目の前の扉が開く。さて、これからマグノリア博士という人に出会う訳だがナナカマド博士と関わりが深いということはもしかしたらここの博士もすごい人なのかもしれない。少し緊張……
「どちら様でしょうか?」
きっとナナカマド博士のような少し固い雰囲気を纏った厳格そうな人が来るんだろうなぁと思っていたら出迎えてくれたのはかなり若く綺麗な人だった。
オレンジ色の髪をサイドテールに結わえ、ハートの髪飾りを散らており、服装は緑のニットの上にコートを着ていて、下は水色のジーンズ姿。ダンデさんと年齢が近そうな大人と言うよりはお姉さんみたいな雰囲気の人だ。
「って、誰かと思ったらダンデ君じゃない。どうしたの?また無茶ぶりかなにかでもしに来たの?」
「やぁソニア。元気そうで何よりだ。無茶ぶりというか、ここには気になる本が多いからついつい気になることがどんどん出てくるだけだよ」
「それに振り回されるわたしの身にもなってよ……幼なじみの扱い雑過ぎない?」
どうやらソニアさんというらしいこの女性はダンデさんの幼なじみみたいだ。少なくともマグノリア博士ではないということだね。
「で、本題に戻すけど今日はどうしたの?」
「ああ。こちらのフリア君がここに届け物があるということで連れてきたんだ」
「はじめまして、フリアと言います。ナナカマド博士からマグノリア博士にこれを届けて欲しいと言われて持ってきたんですけど……」
「あ!あなたが今朝おばあさまが言ってたフリア君って子ね!はじめまして。わたしはソニア。マグノリア博士の助手をしているの。って言っても自称だけどね……とにかく、よろしくね」
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
「立ち話もなんだし、シンオウ地方から来たんでしょ?疲れてるだろうしひとまず中に入ってちょうだい。ダンデ君も」
「ああ、そうさせて貰うよ」
「失礼します!」
ソニアさんの案内の元、研究所の中に入るボクたち。研究所の中は壁のほとんどがガラス張りになっているおかげか陽の光が差し込み、研究所の中とは思えないほど明るく、観葉植物も元気に育っているように見える。一方でとてつもなく背の高い本棚も並んでおり、天井近くまでびっしり詰まっているそれらはこの研究所の記録の足跡の多さを表しているようにも見えた。
「とりあえずそこのソファに座ってゆっくりしてて。わたしはおばあさまに連絡するから」
そう言いながら研究所の奥へと歩いていくソニアさんを見送ってソファに座るボクとダンデさん。
「ワンパワンパ!」
「ん?」
ナナカマド博士の研究所と比べると明るく色の多い雰囲気の部屋を見回していると足元に黄色い四足の小さいポケモンがいた。
「この子……」
ボクの足にスリスリと体を擦り付けるこの子をそっと抱き抱えて膝の上に向かい合うように乗せる。
「ワンパ!!」
「可愛い……もふもふ〜……」
頭をもふもふしたり頬擦りしたりしてスキンシップをしてみるとこの子も気持ちよさそうに鳴いてくれる。それが嬉しくてもっともっととじゃれ合う。
そんな疲れも吹っ飛ぶ幸せな時間を過ごしているとソニアさんが帰ってくる。
「おばあさま、ちょっと手が離せないから2番道路の先にある家まで直接持ってきて欲しいって……あら、ワンパチともう仲良くなったの?」
「ワンパチ……この子の名前ワンパチって言うんですか?」
「ええそうよ。私のパートナーなの」
「可愛いですね。ずっと抱きしめてたいかも……」
「ワゥ〜…」
「すっかりフリア君に懐いてしまってるな」
「えへへ〜……」
この子を抱いて眠れば安眠間違いなしだ。このまま微睡むのも……
「って、ソニアさんのポケモンですよね!?す、すいませんでした!!」
「いいのいいの。この子も楽しかったみたいだし。ね、ワンパチ?」
「ワンパ!!」
「え、えと……とにかく。この子をお返ししますね。あと、荷物の件了解しました」
とはいうもののあまりボクが抱えるのもどうかと思うのでソニアさんにお返しする。……ちょっと名残惜しいとは思うけど。その代わりと言ってはなんだけどワンパチについて聞いてみよっと。
「ワンパチってでんきタイプのポケモンですか?」
「そうだが……フリア君、君もトレーナーなんだろ?どうやら手持ちも1匹いるみたいだしポケモン図鑑を持っているのでは?」
「ああ〜……持ってはいるんですけどボクの図鑑、シンオウ地方のポケモン用なのでガラル地方のポケモンに使うと反応してくれなくて……」
「ならわたしが図鑑のアップデートしてあげましょうか?ホップとユウリの分も準備しなきゃだし、ついでにやってあげるわよ」
「ホントですか!?じゃ、じゃあお願いします!!」
ポケットからポケモン図鑑をソニアさんに渡す。これでようやくガラルのポケモンも知ることが出来る。黄色い子とか青い子って呼ぶのがちょっと申し訳なくてちゃんと名前を呼んであげたかったんだよね……でもこれでちゃんと名前を呼んであげることが出来る!!
(どんな子に会えるか楽しみだなぁ)
「それじゃあ早速、フリアのポケモン図鑑を━━」
「ケケケケケ!!」
「ちょ、ロトム!?」
ソニアさんがボクのポケモン図鑑をアップデートしようとした時に突如響く笑い声。ボクもよく知るロトムの声だ。
ふと視線をあげると声の主が空中を飛び回ってた。天井に壁にと縦横無尽に駆け回りながら笑い声をあげているロトム。しばらくするとその動きを止めていきなりソニアさんのいる方に急旋回。そのままボクのポケモン図鑑に……
「入っちゃった……」
『ケケケケケ!!』
「……どうやらこの図鑑の中が気に入ったみたいね」
「えと……これ、大丈夫なんですか?」
「安心しろ。最近はスマホや図鑑にロトムが入っているのは割とメジャーになりつつある。むしろ君の冒険を手助けしてくれるはずさ」
「わたしもスマホロトム持ってるしね。ほら!」
うーん……2人がそう言ってるのなら大丈夫……かな?確かにソニアさんのスマホが飛び回ってるけど特に害をなそうとしてるわけじゃないし……
(いやむしろこれはジュンたちに自慢できるのでは……?)
それならなんだかシンオウに戻った時凄く楽しそうだ。どんなことができるようになるのかはまた調べよう。もしかしたら面白いことが出来るかもしれないし、そう思うとなんだかワクワクしてきた!
「じゃあ改めて、図鑑アップデートしてくるわね」
「オレたちはホップとユウリが来るのをここで待ちながらゆっくりするとしようか。シンオウ地方の話や君の仲間のポケモンについてもぜひ聞きたい。荷物を届けるのはその後でも問題ないだろう」
「はい!!ボクもダンデさんからガラル地方のポケモンとかダンデさんのポケモンについてとか聞きたいです!!」
「ちょ、ちょっと!!シンオウ地方の話ってわたしも聞きたいんだけど!?に、20秒だけ待って!!すぐアプデ終わらせるから〜!!!」
叫びながら奥へ走り去っていくソニアさんがなんだか面白くてついつい笑ってしまうボクとダンデさん。
それから本当に20秒きっかりでアプデを終わらせたソニアさんを混ぜて、3人で談笑しながらホップ、ユウリをゆっくり待つボク達だった。
方向音痴
何故か書いててダンデさんがただのアホの子に……
どうして……
でもエンジンシティの昇降機があっても迷うってこれくらいなのでは……?
ちなみに地元民を案内は私の実体験です。
何故旅行者の私が道案内してたんですかね?
ワンパチ
ここではイヌヌワンとは言わない。(書きたかったけどイヌヌワン表記でワンパチを可愛くかける自信がなかったです)
ただザシアンとかは見ての通りゲームでの鳴き声表記なのでゲーム表記とアニメなどの表記を混ぜていくと思います。
アニメのワンパチ可愛い……
図鑑
晴れてアップデート。
でもどちらかと言うとサンムーンみたいな感じの図鑑ですね。
ロトムはとりあえず突っ込んでおけ()