楽しみですね。
30話
「セイボリーさん、調子はどう?」
「もう大丈夫ですよ。ワタクシの自己再生によりこの通り!!」
「ああ、うん。大丈夫そう」
第二鉱山を抜けてポケモンセンターによった後日。
すぐにカブさんに挑んでもよかったんだけど、流石にセイボリーさんが心配なので彼を看ることにしたボクたち。というのも、バウタウンでボクが倒れてた時にちょくちょくユウリがお見舞いに来てくれたのが、迷惑をかけてしまったという感情以上に来てくれてうれしいという感情の方が強かったからだ。やっぱり病気とか怪我で倒れているときって精神的にも弱りやすいからそばに人がいてくれるだけでだいぶ精神的に安定するんだよね。
知識としてはもちろん最初からあったけど、実際に体験してみてさらによくわかった。そばに人がいる安心感は本当に強い。自分がされて嬉しいことは何となくしてあげたくなるというもんだ。
最もそんなに深い傷でもなかったためか特に何事もなくすぐ回復。こうして翌日の朝に見に来てみればもうぴんぴん。いつもの胡散臭い態度がさらにマシマシになったような喋り方にむしろ安心感さえ覚えてしまうほど。
何はともあれ元気になってくれてよかった。後遺症もなさそうだし、これで安心してジムチャレンジを再開できることだろう。
ユウリも色々あったみたいだけど文句も特になくここまで快諾してくれているあたりなんだかんだ優しいし、しっかり周り思いやれるいい人なんだなと改めて思った。
「よし、セイボリーさんも治ったことだし改めてジムの申し込みしようか」
「うん。私もそれに賛成。早く突破してホップたちを追いかけなくちゃね」
ユウリもやる気満々といった様子で拳をぐっと構える。セイボリーさんと戦うまでの間にいろいろと戦い方も考えていたみたいで、さっきもその話し合いをしていたし、最初の鬼門と言うだけあって、やっぱり気合は入るというものだろう。
かく言うボクもその点においてはかなりやる気が入っている。今から予約してジムチャレンジを突破、その後ジム戦と考えると最短でもカブさんと戦えるのは明後日だというのに、気が速すぎと思われるかもしれないけど相手の強さを考えるとどうしてもワクワクしてしまうというのがトレーナーの性。気合が入りすぎて空回りするかもしれないという懸念こそあれど、なんだかそんな気も一切起きないほどすでに気持ちは出来上がっていたり。
そうとなれば善は急げ。さっそくジムへの挑戦をするための受付を行うために三人そろってポケモンセンターを出ていく。ここから真っ直ぐ西に向かって歩けばエンジンスタジアムだ。
エンジンスタジアム。
開会式にも使われた会場だけど今まで挑んできたターフスタジアムやバウスタジアムと違い、その建物の形はスタジアムと言っておきながらさながら砦のような見た目をしていて余計に登竜門という言葉を意識させるような物々しさまで感じる。建物の大きさ自体も今までのスタジアムをはるかに超えているためその壮観さはかなり大きく、思わずため息が出てしまう程だ。シンオウ地方のジムだってここまですごい建物は見たことがない。しいて言えばデンジさんが暇だからという理由で自分のジムを改造して無茶苦茶をしていたことぐらいだろうか。……流石に自分のいる街を停電にさせるほどの改造をするのはどうかと思う。っと脱線してしまった。とにかく、今ボクたちが向かう場所はそんなとても迫力のある場所だという事。
そして、同時にボクたちジムチャレンジャーにとってはまさしく、この建物が見た目だけではなく砦として立ちはだかっているという事。
開会式の時は何も感じなかったけどこうして二つのバッジを手に入れてもう一回訪れてみればその大きな威圧感から開会式のワクワクから180度違った印象を受けてしまう程で、ほかにも挑戦の受付をするためか訪れているジムチャレンジャーの人たちがいるものの、最初来た時とのあまりにも違うその印象に、あちこちで立ち止まって上を見上げている人が見つかる。中にはちょっとふるえている人も見えてたり。よく隣を見てみてればユウリとセイボリーさんも何か思うところがあるのかそれぞれいつも以上に気を引き締めた顔をしている。
気持ちはよくわかる。このプレッシャーは実際にジムチャレンジをしてここに立つボクたちにしかわからない気持ちだ。
その緊迫した空気感はエンジンスタジアムの自動ドアをくぐっても消えることはなく、むしろ外よりもさらに張りつめているとさえ感じるほど。白いユニフォームを着た人がちらほらと見受けられ、みな真剣な表情。きっとこれからジムチャレンジを受ける人たちだろう。そんな人たちの邪魔にならないように静かに間を通り抜けてエンジンスタジアムの受付へ。受付をしているジムトレーナーの人に明日ジムチャレンジを受ける予約を取る。
「……はい、ユウリ選手、セイボリー選手、フリア選手ですね。予約完了いたしました。明日のジムチャレンジ、頑張ってくださいね」
「「「ありがとうございます」」」
三人そろってお礼を言う。さて、これで今日の予定は完了だ。後は明日とその先のカブさんへの挑戦に向けて手持ちのみんなと相談、ないし特訓をする時間。なんだけど……
『『『『…………』』』』
(うわ~……)
受付が完了したのでとりあえず外に出るために振り返る。すると先ほどまで自分のジムチャレンジのために集中していたであろう他の選手たちが全員こちらをじっと見つめていた。ただただ見つめるもの。近くの人とひそひそ話ながら見つめるもの。こちらが気になるものの集中もしたいから片目だけでこちらを見つめるもの。色々な姿があれど全員顔はこちらに向いている。
(……正直ちょっと怖いなこれ。別の意味で凄いプレッシャーあるんだけど)
セイボリーさんもユウリも同じ気持ちらしく、セイボリーさんはどことなくつまらなさそうな顔を、ユウリにいたっては若干震えている気もしなくない。とりあえず落ち着けるためにそっと服の袖を引っ張って声をかけておく。
「大丈夫?ユウリ」
「う、うん。大丈夫……ありがと。おかしいな、ジム戦でもっとたくさん視線を集めているときは平気なんだけど……」
「まあ視線の質が違うからね……」
バトルの時に受ける視線は単純に応援だったり、熱い試合を見にきたり、盛り上がるために来たりとプラスの心象が多い視線ばかりだから気になりはするけど重くはない。けど今ここで受けている視線は値踏みだったり嫉妬だったりとどちらかというと負の印象が強い視線。
どちらが精神的に負担がかかるかなんて言うまでもないだろう。
「とりあえず何も気にせずにさっさと外に出よう」
「うん。早くここから出たい……」
「右に同じく、ですね」
今日はもうここに用事はないのでさっさと外に出る。けど、威圧されている雰囲気を出すとそれはそれであとで変なことをされかねないので表面上はまるで気にしてない雰囲気を出しながらスタジアムの外へ。そんなにドアまで距離があるわけではないけどなんだか無茶苦茶長く感じてしまった。
「「「すぅ……ふぅ~……」」」
ドアを潜り抜けて外に出た瞬間に三人で思わず深呼吸をしてしまう。気持ち悪い空気から一気に解放されて体が物凄く軽くなった気がした。
「うぅ、なにあの空気……凄く重かった……」
「なんというか……嫌な視線でしたね……」
たった数分の出来事だったのにどっと疲れたような顔をする2人。もちろんボクも肩から重荷が外れて一気に空気が軽くなるのを感じた。思わず凝ってもいない肩をぐるりと1周回してしまうほど。
「さすがにここまで来るとこういう視線も増えてくるね」
「フリアは経験済みなの?」
「まぁ、無くはない、かなぁ……」
シンオウ地方を旅していた時はあまり受けなかったけど、シンオウリーグで上の方に上がって注目選手として紹介された時なんかは同じ出場者からはあんな視線を向けられたこともあったっけと思い出す。
「みんなそれだけピリピリしてるってことだよ。ここのジムはそう思われるだけの場所ではあるだろうからね」
「……そっか」
改めて振り返りエンジンスタジアムを見上げる。登竜門と言われるだけあり、ジムチャレンジャーの半分以上はここで脱落することとなる大きな壁。それはもはや周知の事実。だからこそ、観客は誰が突破できるのかの予想に大いに盛り上がり、逆に選手はこの壁を超えなくてはならないという大きなプレッシャーに押しつぶされていく。自分の夢がかかっている冒険の大きなターニングポイント。そんな大きなプレッシャーを感じている中に現れるチャンピオンから推薦された注目選手の姿。本人にその気がなくてもそういう視線を向けてしまうのも分からなくはない。なんせ、ユウリたちと仲良く冒険に出ているから忘れがちかもしれないけど、悪く言ってしまえばボクたちはお互いを蹴落とし合う敵なのだから……。
ボクたちはライバルだなんて言うけど、その関係だって他者から見ればそれこそ全く関係の無いどうでもいいことだからね。
「いいのですよ。ああいう視線はさせておけば」
「セイボリーさん……?」
そんなボクとユウリの心情に割って喋るセイボリーさん。
いつもの雰囲気ではなく、エンジンスタジアムを見つめる目は少しの冷たさをはらんでいた。
「きっとあの中にはワタクシたちを下に見る目だってある。この道を進む以上、比べられ、蔑む視線だって少なくない。なら、ワタクシたちにできることは圧倒的な強さを見せつけて黙らせ、見返すことだけなんですよ」
冷たく低く、静かに放たれたその言葉は盛り上がりを見せるエンジンシティの喧騒の中をそんなもの知るかと言わんばかりに突き抜けボクたちの耳に入ってくる。拳を握りながらそう告げたセイボリーさんの表情はとても固く、そして怒りとほんの少しの辛さを混ぜたような顔をしていた。
(何か、あったのかな……)
間違いなく過去に何かしらを抱えているであろうその姿だが、生憎とボクたちはまだ出会ってすぐの関係な上、お互いの過去を気軽に話せるまではさすがに仲良くなってはいないと思っている。何かしらを抱えているとわかったところでできることは今のところはない。
そんな少し重くなってしまった空気。それを霧散させるべく大きな破裂音が響く。
「さっ、重い話は終わり!!そんなことよりも早くカブさんに向けての対策の特訓をしよう!!せっかくワイルドエリアにも戻ってきてるんだし、場所には困らないんだからやらなきゃ損だよ!!」
正体は頬を叩き、気合いを注入しながら元気よく喋るユウリ。この行動で空気はまた軽くなり、自然と自分の頬が緩むのが分かる。
「はは……そうだね。正直ボクもまだまだ詰めたいところがあるし、やりたいことはたくさんだ」
「ワタクシも、エスパーつかいである以上、カブさんの切り札には手を焼きそうなので……その辺、フリアさんのジメレオンと戦ってばつぐんの技を使ってくる相手ともしっかりと戦いたいのです。確か使えますよね?」
「マルヤクデ対策だね。威力とか正直比べ物にならないと思うけどそれでも良ければ」
「ずるい!!私も戦いたい!!」
「そういえばまだユウリと戦ったことなかったっけ?せっかくだし戦ってみよっか」
「うん!!よし、気合い入れて頑張らなくちゃ!!」
「……ユウリさん、あなたカブさんとの戦いより盛り上がってません?」
和気あいあいとエンジンシティの外へと足を運ぶボクたち。後ろにあるエンジンスタジアムはひとまず視界から外し、ワイルドエリアへ。
(……コウキがうけた視線は、これよりもきつかったのかな)
「フリア〜!!はやく〜!!」
「……はーい!!」
少し後ろ髪を引かれながらも、ユウリの声に返事をしてボクは駆けた。
☆
「なるほど、次のジムミッションは捕獲か……」
翌日。
ジムミッションの時間が来たためエンジンスタジアムに入り、ジムミッションの会場に入ったボクを待ち受けていたのは円状の広いフィールドにまばらに設置されたたくさんの草むら。その近くには各草むらに1人ずつジムトレーナーが待ち受けている。 一方草むらの方は定期的にガサゴソと動いており、中にポケモンが隠れているのがよく分かる。
そしてこのフィールドのど真ん中にはボードがあり、グラフのようなものが書かれており、その1番上には捕獲ポイントと撃破ポイントと大きく書かれていた。
『ここ、エンジンスタジアムのジムミッションは捕獲です!!草むらに隠れたポケモンを捕獲してポイントを稼ぎ、一定量以上のポイントを貯めるのがここでのジムミッションのお題となります!!』
おおよそボードを見てから思いついた物どおりのお題だ。その先のルールを聞くに、今この場所でポケモンを捕獲したら2ポイント。ポケモンを撃破したら1ポイントの加算がされ、この合計ポイントが5ポイントを超えたらジムミッションクリアというもの。ただし、1部特殊ルールがあり……
1つ、5ポイントの間に必ず1匹は捕獲をすること。
2つ、野生のポケモンと戦う、ないし捕獲する際はその草むらの1番近くにいるジムトレーナーも参戦すること。
3つ、ジムトレーナーが撃破、ないし捕獲した場合はポイントが発生しないこと。
4つ、捕獲の際に使えるポケモンは1匹のみとし、交換は禁止。また、その1匹が倒された場合はその野生のポケモンに対してのボールの投擲は禁止とする。(このルールはジムトレーナーにも適応される。また、他の野生のポケモンと戦う際は違うポケモンに変えても良い)
1つ目のルールに関しては5匹さっさと倒してクリア。なんてつまらないし、捕獲を見るミッションなのに意味が無いからの制限。そして2つ目と3つ目、4つ目が第3陣営がいることの示唆ということだろう。
4つ目が少しややこしいけど、例えばロコンに対してジメレオンを出したら捕獲、撃破、もしくはやられるまで変更不可。だけどロコン戦が終わったあとに次のヒトモシと戦う時はジメレオンを続投してもいいし、イーブイやキルリアに変えてもいいという訳だ。
そして何より大事なのが第3陣営であるジムトレーナーがいること。
ただ捕まえるだけではもちろんこのジムトレーナーに妨害や先取りをされるから、どうにかして競走に勝つ必要があるというわけだ。
方法としてはおそらく2つ。
1つはジムトレーナーよりも早く捕獲をするか撃破をする。
そしてもう1つはジムトレーナーのポケモンをさっさと倒してしまうこと。
4つ目のルールに戦闘不能後の行動不可はジムトレーナーにも適応されると書かれている以上野生のポケモンを捕まえる以前にジムトレーナーを戦闘不能にするのもありということだ。
もちろんこれは相手側もそうだからジムトレーナーもこちらを戦闘不能にしてくるような動きをしてきそうだ。
(いや、もしかしたら先に捕獲するか、もしくはこちらが捕獲しようとするところを倒して邪魔するってことなのかな?)
そう考えてみると妨害の方法が多岐にわたることに気づいてしまう。
(むむむ、これはもしかして捕獲をするための観察眼を見るものじゃなくて想定外のことや横槍があったとしてもアドリブで正しい判断を直ぐに出来るかどうかを見るためのミッションなのかも……?)
そうなってくるとこのスタジアムが難しいと言われる所以はここにもあるのかもしれない。よくよく考えれば三つ巴の戦いなんて普通に過ごしていてもまず起きるようなものじゃないからここで求められるものは実はとても大きすぎるものなのかも……。
恐らくジムトレーナー全員が全員同じ妨害の仕方なんてしない。1人目がこうだったから次もこう、なんて甘い見通しは簡単に防がれるだろう。
(さて、どうしようか……)
『ではでは、制限時間は10分!!始めていきましょう!!』
「っとと、もう開始時間なのか」
頭の中で色々考えにふけっている間にもうジムミッション開始時間になってしまっていた。考えるのも大事だけど目の前のことにも集中しないといけない。しっかりと頬を叩いて気合い注入!!
『よ〜い、スタート!!』
アナウンサーからの高らかな開始宣言を受けて直ぐに周りを見渡してどの草むらから回るか考える。とりあえず視界に入っているのはロコン、ヒトモシ、ヤクデ、ガーディ。野生のポケモンは全部ほのおタイプのポケモンみたいだ。となるとジムトレーナーが妨害に使うポケモンもほのおタイプが濃厚と見ていいかもしれない。
(こうなってくるとやっぱりマホミルの出番はどうやってもないかもなぁ……)
フェアリータイプであるマホミルはメインウェポンがほぼ効かなく、ターフスタジアムでのジメレオンのようにサブウェポンで弱点をつける技を覚える訳でもない。せめてジムミッションだけでも活躍できないかななんて思ったけど今回に関してはお留守番になりそうだ。
(さてそれじゃあ誰から行こうか……な……?)
とりあえずはイーブイを慣らすためにイーブイから入ろうとモンスターボールを構えて草むらに行こうとすると少なくとも4つの芝生の中からなんだか不思議な視線を感じる。十中八九草むらの中に潜んでいるポケモンがこちらを見つめているということなんだろうけど……
(あ、あれ?なんか視線を向けられている割には敵意が一切ない……?)
てっきり捕獲と撃破がテーマだからここにいる野生のポケモンはみんなトレーナーに対して少なからず敵対意志があるのではと思ったけどそんなことはなく……
「う〜ん……野生って言っておきながら実際にはカブさんが訓練しているからそこまで凶暴ってこともなかったり……ってイーブイ!?」
「ブーイ!!」
目標である野生のポケモンを見つめていたら勝手にイーブイが飛び出してきた。いやまぁ、呼び出してあげる予定だったから別にいいのはいいんだけど……
「……なんでポフィン食べてるの?」
「ブイ?」
器用に前足でポフィンをつかみ、カジカジしているイーブイ。確かに可愛いんだけどなぜ白昼堂々と主人の前で盗み食いしているのか……
「全く、食べたいなら食べたいって言えばあげるのに……」
仕方ないと思いながらイーブイを持ち上げるとイーブイのふさふさの毛の中からさらにポフィンが何個も落ちてくる。
「……」
「……ブイ!」
「イーブイ〜?」
まるでてへぺろと言わんばかりにあざとく笑うイーブイのほっぺをムニムニする。
「さすがにこれはとりすぎじゃないかな〜?美味しいと言ってくれるのは嬉しいけどやりすぎると怒るよ〜?」
「ブ、ブイ〜!!ブイィ〜!!」
第二鉱山では頼もしいと思っていたのにやっぱりまだまだ産まれたばかりのイタズラやんちゃっ子。元気があるのはいいことだけどさすがに怒るところはちゃんと怒らないとね。
「全く、イーブイったら……これくらいすぐに作れるんだから、ちゃんと言いなさい」
「ブイ……」
「もう……ん?」
「「「「……」」」」
イーブイを叱っていると感じる視線。その主はジムチャレンジとして配置された草むらの中にいる野生のポケモンたち。彼らの目はたった今イーブイが落としたポフィンへと釘付けになっていた。
「「「「……」」」」
(すっごい見てる!?)
穴が飽きそうなくらいじっとこちらを見つめてくる彼らになんとも言えない恐怖を感じる。けど、何となく言いたいことは分かるからとりあえず提案を……
「え、えと……食べる?」
「「「「!?」」」」
「ってうわぁ!?」
ボクの発言を聞いた瞬間、我慢の限界だったのか野生のポケモンたちがものすごい勢いで飛びついてきてポフィンにかぶりついて行った。もしゃもしゃと食べていく彼らは、味がお気に召したのか1口飲み込んだ瞬間食べるスピードがさらに早くなっていく。多くはないけどそこそこあったポフィンが全て消えるのに時間はかからなかった。そして……
「「「「……」」」」
「……いや、もうさすがにないんだけど」
まだ食べ足りないのかこちらを見つめてくるポケモンたち。当然ながらこのジムチャレンジにはポケモンに持たせるのは良しとしても、基本アイテムの持ち込みはできないため今手持ちにポフィンは無い。強いていえばこのジムミッションのためにモンスターボールを何個か貰っているのでそれが手元にあるだけだ。だけどそんな事情はもちろん彼らは知らない。
「えっと……ごめんね?もうないんだ。リュックの中にはまだまだあるんだけど、ここから外にでないとなくて……」
「ヤーク!」
「ヒト〜!」
「コ〜ン!」
「ガゥ!」
「わわわわ!?」
手元にないということをはっきり告げた瞬間飛びかかってくるポケモンたち。いきなりの4対1の構図にボクもイーブイも、果てはジムトレーナーの人も反応出来ずに慌ててしまう。その一瞬の硬直の間に4匹はもう目の前まで来ていて……
「イ、イーブイ!!とにかく『スピードス━━』」
せめて相手の勢いを上手く相殺しようとイーブイに指示しようとして……
「……え?」
何が起こったのか分からず懐のボールに視線を向けるとカチッと言う子気味のいい音と共に中身の入ったボールが4つ増えていた。この人について行けばまた食べられると思ったのだろう。
『う、嘘……』
『こんな方法で……』
「え、えーっと……」
どうすればいいのか周りを見渡しても口元に手を抑えたり、目を見開いたり、行動の差はあれどみんな驚いたという反応を見せて固まっているジムトレーナーしかおらず、観客までもが困惑からザワザワし始める。どうすればいいのか分からず、ボク自身もワタワタしているとようやくアナウンスが入り……
『なんということでしょう!!一度に4匹のポケモンを同時にゲット〜!!捕獲ポイント8ゲットによりフリア選手、エンジンスタジアムのジムミッション、最速クリア〜!!』
「これでOK貰えるの!?」
まさかの合格判定に逆に大声をあげて反応してしまう。
『こんな展開見たことありません!!一瞬でポケモンのハートを鷲掴みにするその能力、神業と言っていいでしょう!!』
「いや、ただ餌付けしただけなんだけどな!?」
『フリア選手、最速記録を叩き出しての突破!!観客の皆様もいいですよね?』
「いや、さすがに観客の皆は……」
『最速記録すげぇ!!』
『文句なんてないよ!!』
『早くカブさんとのバトルを見せてくれ〜!!』
「いいんかい!!」
まさかの観客まで乗り気である。
「え、本当にいいの?なんかずるしたみたいで忍びないんだけど……」
『ということでフリア選手、見事ジムミッションクリア!!フリア選手の明日のジム戦もお楽しみに!!』
「えぇ〜……」
なんか納得行かないままジムミッションをクリアしてしまった。
(荒れないといいなぁ……)
この日、ボクは初めてエゴサというものを行った。とりあえず特に荒れてはいなかったとだけ言っておこう。本当に良かった……。
あ、ちなみに今回捕まえた子たちはみんなポフィンを上げたあとカブさんにお返ししました。やっぱりここのポケモンはジムチャレンジ用にカブさんが準備した個体だったらしい。
……事情を話したらカブさんも困惑してたけどね。
何はともあれ、明日……頑張ろう。
視線
全年齢対象だから実機ではマイルドだけど多分リアルだとここの空気はかなり重そうですよね。
ジムミッション
ミッションは賑やかに、本戦は本気で戦ってる流れになりつつありますね……
温度差凄そう。
条件についてはさすがに撃破だけで稼ぐのはちょっとということで実機より少し厳しめに。
まぁ、色々考えましたけど全部無駄にするミッションクリア方法なんですけどね()
ポフィン
なんだかこの小説でポフィンが万能すぎる……
ちょっと擦りすぎな感じもしますけどせっかくなのでシンオウ地方のことも触れたいとなるとポフィンってすごくお手軽なんですよね。
書きやすいです。
次回、カブ戦。