【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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祝300話。

長いですね。ここまで来ると、読み返しも新規さんも大変そうです。


300話

「フリア……これ、どうすると……」

「どうって言われても……」

 

 マリィの言葉に対してしどろもどろにしか返すことの出来ないボク。それもそのはずで、このブラックナイトのさなか、突如追加されたポケモンがとてつもなくヤバいポケモンなため、正直ボク自身どうすればいいのかが全く分からない。

 

 このことはさすがのコウキにとっても予想外すぎたのか、ボクたちの中でいちばん強い彼も、思わずフリーズ状態になってしまうほどだった。

 

「そもそも、あいつら何者なんだよ」

「ジュン……あんた知らないの?あれはイッシュ地方で伝わっている伝説のポケモンよ」

「白いのがレシラム。黒のがゼクロム。そして灰色のがキュレム……だったかな。シロナさんが少し話していたはずだ」

 

 ジュンの言葉に対して、ヒカリとコウキが現状を確かめるように口にする。話し方自体はいつも通りだけど、その表情は焦りに染っており、いまの会話も、現状把握という名の現実逃避の意味が含まれている。願わくば、今しがた口にしたことが夢であって欲しい。そう思わずにはいられない。しかし、どれだけ目をこすっても、どれだけほっぺたをつねっても、目の前のポケモンが消えることは無い。これは夢ではなく、現実なのだから

 

 そして、これが現実ということは、当然向こうは黙ったままなんてことは絶対に有り得なくて。

 

「シラアアァァァッ!!」

「クロオオォォォッ!!」

「キュアアァァァッ!!」

 

「っ!?来るよ!!」

 

 3人の伝説の雄叫びが響き渡ると同時に、ボクたち5人の緊張が一気に引き上げられる。

 

 叫んだ3人の構える技は、それぞれの得意タイプであるダイマックス技の、ダイバーン、ダイサンダー、ダイアイス。ただでさえ強力なダイマックス技を、伝説のポケモンが放つというとてつもない圧力を伴って、3つの攻撃が同時にこちらに迫ってくる。

 

「っ!!インテレオン!!『ねらいうち』!!チリーン!!『サイコキネシス』!!ネオラント!!『ハイドロポンプ』!!」

「レパルダス!!ゾロアーク!!『あくのはどう』!!ドクロッグ!!『ダストシュート』!!」

「エンペルト!!『ハイドロポンプ』!!ヘラクロス!!『ロックブラスト』!!ロズレイド!!『リーフストーム』!!」

「エンペルト!!『ハイドロポンプ』!!トゲキッスは『エアスラッシュ』!!エテボースは『スピードスター』!!」

「ドダイトス!!『じしん』!!フーディンは『サイコキネシス』でブーバーンは『だいもんじ』だ!!」

 

 視線を合わせるや連携を取るなんて言っている場合では無い。とにかく全力でこの攻撃に抵抗するために、全員が3人ずつポケモンを繰り出して、すぐさま攻撃技を指示。少しでも相手からの攻撃を止めないと、とんでもない被害が巻き起こることとなる。

 

 可能ならばもっとポケモンを呼び出したいが、さすがにこれ以上は数が多すぎて邪魔しちゃうのと、単純に指示が間に合わない。この前ヒカリは6人全員に指示を出して戦っていたけど、あの時とは状況が違いすぎる。

 

 こちらから放たれた計15の技は、綺麗に重なり合って伝説のポケモンの攻撃とぶつかり合う。さすがにこれだけ重ねれば、さすがの伝説のポケモンによるダイマックス技でもその力を発揮しきることは出来ないのか、何とか相殺することに成功。全ての技が、ぶつかりあったところを起点にして爆発を起こし、エネルギーが四方八方へと飛び散っていく。

 

 しかし、逆に言えばここまでしてようやく互角。伝説のポケモンの火力の高さを、改めて思い知らされる。

 

「ぐっ……これでようやく相殺……」

「15人がかりでやっとか……本当にとんでもないな……」

 

 爆風を腕で受け止めながらぼやくボクとコウキ。分かってはいたけどやっぱり一撃一撃が重い。さっきは何とか相殺できたけど、こうでもしなきゃ相殺できないのをそう何回も受け止めるのはさすがに無理がある。しかも、この先ワイルドエリアに向かう必要があることを考えたら、もうそれだけで頭がパンクしてしまいそうだ。ヒカリとジュン、そしてマリィも、その事を理解しているため、言葉こそ発してはいないものの表情は重い。

 

「けど、止まる訳には行かない。ダイマックスアドベンチャーの時に戦ったスイクンと同じ要領なら、きっとダイマックス技を連発はできないはず……!!」

「なら、今はクールタイムか。そのうちに仕掛けるしかないな!!ドダイトスは『ぶちかまし』!!フーディンは『きあいだま』!!ブーバーンは『だいもんじ』!!」

 

 ボクがいうやいなや、コウキがすぐさま判断して攻撃を放つ。

 

 前を猛進するドダイトスの後ろをついて行くように飛んでいくふたつの攻撃は、まっすぐレシラムたちに向かって突き進む。

 

「シラァァ!!」

「キュアァ!!」

「させない!!『ねらいうち』と『ハイドロポンプ』と『サイコキネシス』!!」

「わたしも!!『ハイドロポンプ』と『エアスラッシュ』、『スピードスター』!!」

 

 コウキの攻撃に対して反応したのはレシラムとキュレム。その両者が声を上げながら藍色の波動……りゅうのはどうを口から放ち、コウキの攻撃を止めようとする。その妨害を止めるべく、ボクとヒカリが技を指示して、2つのりゅうのはどうを阻止。なんなら、今回は技のぶつけ合いに勝ったため、ほんの少しだけ余波がレシラムとキュレムに届いた。

 

 パニックになっていることと、ダイマックスになれていないことが合わさって、ダイマックス技と比べたらかなりマイルドな威力になっていた。これなら、通常技はしっかり受け止めることが出来そうだ。

 

 ……ダイナックスになれていないのに、それでもこれだけの戦力がいる時点で大概ではあるけどね。

 

 とにかく、コウキの攻撃を止めるものがない今、この技はしっかりと相手に届く。

 

「クロォォ!!」

 

 レシラムとキュレムはりゅうのはどうを打つために少し後ろに下がったため、コウキの技は全部ゼクロムに向かうこととなる。これに対しゼクロムは、雄叫びを上げながら全身に電気をまとい、全力の突進をかましてくる。その火力はとてつもなく、ただゼクロムが電気をまとって走るだけで、ドダイトスと並走して飛んでいたきあいだまとだいもんじが消し去ってしまうほど。余波だけでこれなのだから、こんな技が直撃したらひとたまりもないだろう。

 

 そんな技を、現状真正面から受けてしまうしかないポケモンが1人いた。それが、現在ぶちかましのために猛進しているドダイトスだ。

 

「ド……ダッ!!」

「いいぞドダイトス!!そのままいけ!!」

 

 3、4人がかりでようやく止めることの出来る伝説の技を、真正面から受け止めてしまうドダイトス。普通なら、技に弾かれて吹き飛ばされるのだろうけど、しかしドダイトスは耐えた。くさとじめんタイプを併せ持つ彼に、でんきタイプの技は届かない。タイプ相性は、伝説であろうとひっくり返すことの出来ない絶対なルールだから。

 

「ドダァッ!!」

「コォッ!?」

「よし!!」

「追撃しかけると!!『あくのはどう』と『ダストシュート』!!」

「オレもいくぜ!!『ハイドロポンプ』!!『ロックブラスト』!!『リーフストーム』!!」

 

 ドダイトスによる全力の突進が炸裂し、ゼクロムの身体を大きく後退させることに成功。ここに来てようやくまとまったダメージが入ったことに手応えを感じたコウキは、小さくガッツポーズを取りながら声を出す。この勢いに続こうと、マリィとジュンはさらに指示を繰り出し、後ろに下がったゼクロムに対してさらなる追撃をしかけた。

 

 完璧なタイミングの追い討ち。さすがの伝説でも、この連携を掻い潜ることは不可能だ。

 

 しかし、それは相手が伝説1人だけだった場合に限る。

 

「シラァァ!!」

「キュアァ!!」

 

 ジュンとマリィの攻撃はゼクロムを狙って放たれたものだ。しかし、ゼクロムが下げられたことによって近くにいたレシラムとキュレムは、自身を攻撃されたと勘違いして応戦。2人が吠えると同時に、空からは太陽のごとき炎の塊が落ちてきて、真正面からは全てを凍らせるふぶきが吹き荒れた。

 

 ふぶきによって進軍を停められ、そこを真上から太陽をぶつけられたため、こちらの攻撃は全部消失。熱と冷気のぶつかり合いによって起きた大量の水蒸気が視界を一瞬覆い尽くすものの、レシラムたちが吠えたことによって蒸気が霧散。すぐに晴れた視界の先には、レシラムやキュレムは勿論、恐らくこうかはばつぐんなはずの、ドダイトスのぶちかましを受けたというのに、ダメージが入っているのかすら分からないほどピンピンしているゼクロムの姿もあった。

 

「これ……本当にどうするんだ……?」

「これだけ仲間がいれば、負けはしないでしょうけど……勝てるビジョンも全く見えないわね……」

 

 あまりにも膠着状態。

 

 一切の手応えを感じることの出来ないこの状況に、ジュンとヒカリが苦しそうに声を出す。他のみんなも、ボクを含めて声に出さないだけで、思っていることは同じだ。

 

(早くここを抜けてワイルドエリアを見て、ダンデさんの援護をしたいのに……!!)

 

 夜を超えるために、やらなくては行けないことがまだまだありすぎる。そのためにもこんなところで足踏みをしている訳には行かない。けど、立ちはだかるにしてはその壁はあまりにも高すぎる。

 

(どうすれば……)

 

「……え?」

「ん?」

 

 どうすればこの巨大な壁を打ち砕くことが出来るのか。そのことに頭を悩ませていると、横から声が聞こえた。その声の主はヒカリで、ヒカリは西の空を眺めながら、気の抜けたような声を上げていた。

 

「ヒカリ?どうかしたと……?」

「……あ」

 

 そんなヒカリに対して心配するような声をかけるマリィだけど、ヒカリはそんなマリィの言葉なんて一切気にすることなく、ずっと西の空を見続けていた。その様子を見て、他のみんなもいぶかしげな表情を浮かべようとしたところで、今度はコウキが何かに気づいたのか、ヒカリとは反対側の方向に視線を向けて肩合ってしまう。

 

「ちょ、コウキまでどうしたんだよ!?今よそ見している余裕ないだろ!?」

 

 ヒカリに続いてコウキまで固まってしまった。このことにいよいよ焦りを感じたジュンが大声で声をかけるけど、ヒカリもジュンも全く反応を示さない。もしかしたらエスパータイプのポケモンに何かをされたのではなんて思っていろいろ周りを見渡してみるけど、レシラムたちの登場によって野生のポケモンのかなりの数が離れ始めているので、催眠術をかけてきそうなポケモンなんて見当たらない。そもそも、コウキもヒカリもそこまで不用心な人じゃないから、こんな緊張感のある状況で不意を打たれるなんてまずない。となると、2人が明後日の方向を見てぼーっとしてしまうということは、それだけのものに気づいたということになるはずだ。

 

(……2人がこんな状況よりも気を取られてしまう程重要な何か……ってことだよね……それって……)

 

「……え?」

 

 頭の中で2人の行動の理由を考えた時に、ふと背中に誰かの視線を感じた。その視線につられるように、ボクはゆっくりと後ろに振り返る。

 

(……誰?)

 

 シュートシティを守るために戦っていたボクが振り返れば、視線に入るのは当然シュートシティの街並みだ。ボクとユウリ、ホップ、マリィ、そしてクララさんと同時に踏み出した入口の門の先に広がるシュートシティは、ボクたちの防衛のおかげか、綺麗な姿をまだ保っており、門をくぐってすぐに来客を迎えてくれる大きな噴水も、いつもと変わらない綺麗な水飛沫を散らしながら、こちらを見守ってくれていた。

 

「おい、ヒカリもジュンもどうしちまったんだよ……」

「速くしないと、また攻撃が来ると!!フリア!!……フリア?」

「ちょ、フリアまでもか!?」

 

(噴水……)

 

 振り返った時に目に入った噴水。その水飛沫からなぜか目が離せない。

 

 正確には、その水面に反射する景色から、目を離すことができない。

 

(水の中に何かいた……?)

 

「「「っ!?」」」

 

 水の中に映った何かの存在。それを視界に入れた瞬間、ボクの頭の中に電撃が駆け抜けるような感覚が走ると同時に、カバンの中に入れた()()()()()()()()()。その反応を感じ取ったボクは、弾かれるように動き、カバンの中に手を突っ込む。

 

「うわぁ!?急に動くな!?」

「さ、3人ともどうしたと!?」

 

 視線の正体に気づいたのはボクだけではなかったみたいでボクと同時のタイミングで気づいたヒカリとコウキも、慌てて自分のカバンの中に手を突っ込む。

 

 ぼーっとしていたところから急に動き出したボクたちにびっくりしたマリィとジュンは、慌ててボクたちに確認の言葉を投げて来るけど、その言葉に反応する余裕がボクたちにはない。カバンの中に腕を突っ込んで、1秒でも早く目当ての道具を引っ張り出すために、とにかくカバンの中を全力で漁っていく。流石に中身を外に投げ捨てるまではいかないけど、中で整理していた荷物はぐちゃぐちゃにかき混ぜられていく。けど、その甲斐あってか目的の品はすぐに探し出すことが出来た。

 

「……あった!!」

 

 それは、カバンの中にずっと入れていた、ボクの大切なお守り。

 

 ヒカリとコウキも一緒に取り出し、3人で目を合わせて頷いたときに握られているのは、1つのモンスターボール。

 

 中にポケモンは入っていないけど、登録はされている大切なボール。

 

 このボールの中に入る権利を得ている、大切なボクたちの仲間。その仲間が、今ここに来ていることを、ボクたちは確信した。

 

「コウキ!!ヒカリ!!」

「ああ。……まさか、来てくれてたなんてな」

「もしかしたらずっとわたしたちを見守っててくれてたのかもね」

「だと、嬉しいな」

「……さっきから、何の話していると?ずっと置いてけぼりで何もわからなか」

「オレにもさっぱりだぞ……」

「……マリィはともかく、ジュンにはせめてわかって欲しいんだけどなぁ」

「あんたって、本当に……いえ、いいわ」

 

 ヒカリとコウキと頷き、ボールを構えたボクたちに対して、未だに現状をよく理解していないマリィとジュンが困りを越えてあきれ顔を浮かべるけど、マリィはともかくとして、一緒の時間を過ごしてきたはずのジュンが全く察することが出来ていないことに、ボクとヒカリは逆にあきれ顔を返す。そんなボクらの表情に不満顔を浮かべるジュンだけど、これ以上無駄話をしているといよいよレシラムたちが動き始めてしまうだろう。

 

 時間はもうない。だから、ボクたち3人は、それぞれが視線を感じた方にモンスターボールをむけ、そこから()()()()()()()()を伸ばして、ボールの中にポケモンを戻していく。

 

 リターンレーザーが西と東の空と、シュートシティの噴水へと伸び、そこから何かを吸収してボールに戻っていく感覚が手のひらに広がっていく。

 

 それと同時に、ずしりと感じるボールの重み。

 

 このボールの主が、中に帰ってきたことを確かに感じた。

 

 ボクの手の中に納まったその主は、ボクとの再会を喜ぶかのようにカタカタとボールを揺らしてくる。

 

(うん、久しぶり……)

 

 その再会の喜びを、ボクもしっかり噛みしめて、そしていよいよそのボールの主を解き放つ。

 

「お願い……ギラティナ!!」

「頼む、ディアルガ!!」

「出ておいで……パルキア!!」

 

「ギュアアアァァァッ!!」

「ディアアアァァァッ!!」

「パルウウウゥゥゥッ!!」

 

 ボクと同じタイミングでコウキとヒカリも投げ出したモンスターボールより飛び出してきたのは、時を司る神ディアルガと、空間を司る神パルキア、そして反物質世界を司る神ギラティナ。

 

 シンオウ地方にて伝わる伝承の正体。

 

 あの事件を乗り越え、なぜかボクたちと繋がりを持つこととなった神と呼ばれるポケモンたち。

 

 レシラムやゼクロム、キュレムと同等の存在と言える強力な仲間が、ボクたちのピンチに駆け付けてくれた。

 

「久しぶりだなディアルガ。元気にしてたか?」

「来てくれてありがとうね、パルキア」

「ギラティナ。見守っててくれてありが……ってちょっと、くすぐったいよ……はは」

 

 ボールから飛び出し、声をあげるや否や、それぞれのパートナーへとあいさつをしてくる神のポケモンたち。その姿はとても神のポケモンと言えるようなカッコいい姿ではなく、むしろ親しみを覚えるどこか可愛らしい姿だった。ギラティナなんかは、ボクの顔に頬擦りする始末だ。伝説とは一体……。まぁ、かわいらしいからいいのだけど。

 

「シラァ!!」

「クロォ!!」

「キュァ!!」

 

 そんな久しぶりの再会に感動を感じているところに、いい加減しびれを切らしたレシラムたちが咆哮。再びダイマックス技の構えを取り出した。

 

 いきなり現れた強力な力を秘めたポケモンに、ちょっとした癇癪を起こしたと言ったところか。

 

 そんな不安定な状態で繰り出される成果、さっきよりも威力が落ちているように見える。その程度の攻撃なら、ディアルガたちの力を借りなくても済むだろう。けど、来てくれたのなら、ここはこの子たちに任せよう。

 

 コウキたちも同じ考えみたいで、ボクと同時にディアルガたちに指示をする。

 

「ディアルガ!!『ときのほうこう』!!」

「パルキア!!『あくうせつだん』!!」

「ギラティナ!!『シャドーダイブ』!!」

「ディアアアァァァッ!!」

「パルウウウゥゥゥッ!!」

 

 迫って来る炎の塊は、ディアルガから放たれた銀河色の光線に打ちぬかれ、雷の雨はパルキアが右腕を振りぬいたことによってできた斬撃に切り割かれ、キュレムが放った氷の砲弾は、ギラティナが空けた闇の空間に飲み込まれ、消えていった。

 

 ボクたちのポケモンが15人がかりでようやく止める子の出来た攻撃を、あの時より威力が削られているとはいえ、ディアルガたちはいともたやすくいなす。しかも、相手はダイマックスをしているのに対して、こちらは何もしていないのにだ。

 

「ギュアアアァァァッ!!」

 

 全ての攻撃をあっさりと打ち消したディアルガたち。しかし、ディアルガたちの攻撃はこれで終わりではない。

 

 闇の穴の中に潜りこんだギラティナが、キュレムたちの真後ろにその出口を出現させ、そこから飛び出しながら漆黒の羽を振りぬき、レシラムたちに大きな爪痕を残していく。

 

 これが、神と呼ばれるポケモンたちが信頼するトレーナーと共に戦線に立つことによって、その力を十全に発揮した姿。

 

「ディアルガたちが来てたのか……それでコウキたちは……」

「すご……これが、シンオウの伝説……」

 

 レシラムたちに入った大きなダメージを見ながら、この光景に驚いたような声をあげるマリィとジュン。同時に、見えてきたこのバトルの突破口に、驚いた表情を徐々に明るいものに変えていく。

 

「これならいける!!キュレムたちを追い返せる!!」

「ギュア」

「……ギラティナ?」

 

 勿論その士気の上昇はボクたちにも伝わっている。このままギラティナと戦えば、余裕をもって勝つことができるだろう。しかし、そこでギラティナが待ったをかけるように声をかけてきて、ボクの瞳をじっと見つめて来る。ディアルガたちも、コウキとヒカリと目を合わせ、それぞれ何かを伝えているようだった。

 

 その何かの内容は、『ここは自分たちに任せて先に行け。やることを見失うな』と言うもの。この意志を聞いて、ボクたちは改めて今の状況を思い出す。

 

「ギラティナ……うん、分かった。ここは任せるよ!!」

「ディアルガ、頑張れよ!!」

「パルキア、お願いね」

 

 ボクたちの声を聞いたディアルガたちは、頷きを返しながらレシラムたちに向かって対峙する。これでここはもう大丈夫だろう。

 

「ジュン、マリィ、ここはギラティナたちに任せて先にいこう」

「……大丈夫と?」

「大丈夫だ!!ディアルガたちは強いからな!!」

「さっきまで忘れていたあんたが何得意げになってんのよ」

「先に行くのは分かったが……移動手段はあるのか?」

「それは……」

 

 この場所をギラティナたちに任せて先に進むことを話しうボクたち。しかし、コウキから投げられた鋭い疑問に、言葉がつっかえる。

 

 今は住民の避難のためにアーマーガアタクシーは全部出払っており、列車は線路がダイマックスポケモンの進行で荒らされているせいで運行していない。

 

 シュートシティはガラル地方で一番北の町だ。それに対してワイルドエリアは、ガラル地方の中心部から南に向かって伸びているため、ここからだと少し距離が遠い。1分1秒が惜しい今の状況でこれはあまりよろしくない。

 

 みんなのポケモンの力を借りて移動することも視野には入れるけど、残念ながら空を飛べるポケモンが少し足りない。ここにいる全員でワイルドエリアにすぐに向かうなら、もう少し空を飛べるポケモンが欲しい。

 

 欲を言うなら、ワイルドエリアの気候を飛ぶことに慣れているポケモンが。

 

(けど、そんな都合よくそんなポケモンが来ることなんて……)

 

「ギャォ!!」

「キキィ!!」

「フォォ!!」

「え……?」

 

 つい、ないものねだりをしてしまったところに、急に響き渡る新しい鳴き声。それにつられて空に視線を動かせば、そこからそれぞれ黒、薄紫、オレンジの色をした羽をもつポケモンたち。

 

 その正体は、カンムリ雪原にて、戦い、理解し合い、ともにご飯を食べたボクたちの仲間たち。

 

「ファイヤー!!サンダー!!フリーザー!!来てくれたんだ!!」

 

 ガラル地方に現れた伝説に抗うために、ガラル地方に住まう者たちに近しい伝説たちもまた、集結し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ギラティナ ディアルガ パルキア

記念すべき300話にて遂に登場シンオウ神話組。フリアさんがお守りとしてずっと持っていたボールは、ギラティナのボールでした。大切な人のピンチに、すかさず助けに来てくれた神様たちです。可愛いギラティナに違和感を感じる方もいるかもしれませんが、シェイミの映画や、アルセウス映画を見たことのある方なら、このギラティナも違和感がないかと思います。普通にいい子なんですよね。

ファイヤー サンダー フリーザー

ガラル3鳥も、この状況を乗り越えるために参戦。気持ち的には、フーパの映画で助けに来たラティアス、ラティオスのようなポジションですね。相手が集中している分、こちらも集合してきています。いよいよもって総力戦ですね。……と言うことは、あの伝説も……?




本当に長く続く作品になりました。恐らく400に到達する前には終わると思いますので、あと少し、お付き合いいただけたらと思います。……これで400いったら笑いものですね。




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