【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

303 / 374
303話

「……よし、着いたぞ!!ありがとうアーマーガア。戻ってくれ」

「ありがとホップ。アーマーガア。……帰ってきたね」

 

 シュートシティから空を飛び、ワイルドエリアの気候にちょっと苦戦しながら、それでも何とか無事に進むことが出来た私たちは、私たちの冒険の始まりであり、そして故郷であるハロンタウンに帰ってきていた。

 

 随分と久しぶりに帰ってきた大切な故郷は、いつもと変わらない雰囲気と景色をもって私たちを出迎えてくれた。空がこんな色をしていなければ、さぞ懐かしい空気を受けて、しみじみとしたかもしれない。残念ながら今はその感傷に浸っている訳にはいかないけどね。

 

 現状ハロンタウンは特になにかの被害に遭っていると言ったことはなく、ワイルドエリアからかなり離れていることもあって、ダイマックスポケモンによる侵攻も全くなかった。勿論、その上で町の入口にはしっかりと人が立って守ってくれているのだから、ひとまずここは安心だ。

 

「『まどろみのもり』はあっちだぞ!!」

「急がなきゃだね」

 

 かと言って、まったりする訳にも行かない。もし私たちが今向かっている場所が、この夜を超えるための大事な場所であるのならば、私たちがかけた時間は、そのまま解決までの時間に置き換わるため、ダンデさんに並んで1番重要な出来事のひとつと言っても過言では無い。なので、私とホップは、町に帰ってくるなりすぐさまその足をまどろみのもりの方へと向けていく。

 

 まどろみのもりは私の家に帰る道を左折すればその先に広がっている。あの時は、メッソンとウールーが迷い込んでしまったのを助けるために、初めて仲間になったヒバニーと一緒に、恐る恐る入っていった。

 

 約束を破って入ったその森はとても不気味で、1歩踏み出しただけでも身体が少し震えていたのを今でも覚えている。

 

 けど、今はあの時とは違う。

 

「エースバーン」

「バスッ!!」

「ゴリランダー」

「グラッ!!」

 

 私たちの隣には、ここまでの道を一緒に突破してきた頼もしい相棒がいる。そして、他の場所ではかけがえのない仲間が一生懸命頑張ってくれている。例えそばにいなくても、その事実が私の心を暖めてくれる。

 

「ユウリ。ホップ」

「「っ!?」」

 

 身体を巡るやる気に、じんわりと身体が温まり始めていたところに、急に後ろから声をかけられる。そのことにびっくりして後ろを振り返れば、そこには私にとって1番身近な人がいた。

 

「お母さん……」

「おばさん……」

 

 私を産み、ここまで育ててくれた大切な家族。

 

 まどろみのもりに行こうとする私をいつも叱ってくれて、あの時勝手に入った時も、物凄く心配してくれた大切な人。そんな人が、今からまどろみのもりへいこうとする自分たちの背中から声をかけていた。その事が、なんだか自分が今からいけないことをしているんじゃないかという罪悪感につながり、思わず声をどもらせてしまう。

 

 勿論悪いことをしに行く訳じゃない。むしろ、これからのことを考えたら、誰しもが声を上げて褒めてくれることをしようとしている。しかし、それでも小さい頃から打ち付けられている楔というのはなかなかに重く、こっちにゆっくりと歩いてくるお母さんに対して、私は何も出来ずにいた。

 

「2人とも……」

 

 どうすればいいのか分からない。そうやって頭を悩ませている間に、お母さんはもう目の前にまで来ており、こちらに向かってゆっくりと手を伸ばしてきていた。

 

(怒られる……っ)

 

 その動きがどうしても、叱るために頭に伸ばしてきたそれに見え、思わず身体を強ばらせる。が……

 

「無事でよかったわ」

「「え?」」

 

 次の瞬間私たちの身体を襲ったのは、頭に乗せられた手のひらの温かさと、そこから引き寄せられることによってお母さんの腕に抱きしめられたことによる優しさだった。

 

「お母さん……」

「何も言わなくていいわよ。中継見てたもの。ローズ委員長がむちゃくちゃをしたせいで、大変なことになっているものね。そして、そんなタイミングでここに帰ってきて、『まどろみのもり』に行こうとしているって事は、この先に大事なものがあるってことなんでしょ?」

「……うん」

 

 お母さんは研究者でもなければ、ポケモンバトルに精通している人でもない。だから、今起こっていることなんてほとんど知らなくて、不安がいっぱいあるはずだ。それなのに、お母さんは私を抱きしめ、落ち着けて、そして何も言っていないのに無償で信じてくれた。その事がとても嬉しくて、『どうして』だとか、『なんで?』だとか、そんな言葉が浮かぶよりも先に、自然と私の口から感謝の言葉が溢れ出た。

 

「ありがとう。お母さん」

「……ほんと、立派に成長したわね」

 

 お母さんの言葉に改めて温もりを感じた私は、ぎゅっとお母さんを抱き締め返し、その数秒後にゆっくりと身体を離した。

 

 この時に、ホップも一緒に開放されたらしく、腕から開放されたホップも、私の隣に並んでお母さんの方に目を向ける。

 

「あなたたちはもう立派なトレーナー……私の誇りのトレーナーよ。だから、自分に自信を持ちなさい。あなたが出来ると思ったことを、自由にして頑張りなさい」

「……うん!!お母さん、行ってきます!!」

「行ってらっしゃい、ユウリ。ホップ君も、頑張ってね。ユウリをお願いね」

「ああ!!任せてくれ!!」

 

 お母さんからの言葉を背に受け、身体がやる気に満ち溢れる。

 

 今なら、ダンデさんにも勝てるような気がする。

 

「行くよホップ!!」

「おう!!」

 

 そのやる気に導かれるように、私たちは駆け足でまどろみのもりへと足を動かしていく。

 

「あの時の……リベンジだ」

 

 今度は気絶なんて情けない結果で終わらないように、まっすぐと前を向きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まどろみのもり。

 

 小さい頃より、私の住んでいた町のすぐ横にあり、『何者も入ってはいけない』と、耳にオトスパスができちゃうほど聞かされた場所。私がヒバニーを受け取り、ホップと一緒にその約束を破って入り、初めて野生のポケモンとバトルをした場所。霧が深い場所で、不思議なポケモンと出会った場所。

 

 そして何より、フリアと初めて出会った場所。

 

 おそらく、私の旅という点において1番根っこになる部分を担っている場所、それがこのまどろみのもりだった。

 

 別にあの時私たちがここに迷い込まなくても、フリアとは別の形であっていたかもしれないけど、きっとここまで仲良くなることは無かった気がするし、フリアの手持ちにメッソンが加わることは絶対になかったと思う。そんな、私とホップにとってちょっとしたターニングポイントになっているだろうこの地に、成長して強くなった私たちが、改めて足を踏み込むことになったのがとても感慨深い。

 

「……懐かしいな。けどここって、こんなに不思議なところだったんだな」

「……うん。懐かしいのに、改めてここに来たら、私たちってここのことをよく知らなかったんだなって、思わされちゃうね」

 

 あの時と同じくたちこめる霧と、霧の奥から聞こえる何かが動くガサガサという音が、神秘的ながらもどこか不気味な雰囲気を作り出す。その景色に懐かしさを感じながら、しかし、同時にあのことろと違って不気味に対する耐性が出来たおかげか、この森の状態を余裕を持って観察できることに、ちょっとした新しさも感じていた。

 

 ガサガサと蠢く音はたしかに不気味だけど、その影から聞こえるホシガリスやココガラがきのみをカリカリと食べる音や、ブラックナイトのせいで少し足りなけど、それでも葉と葉の隙間から降り注ぐ光の姿を確認してしまうと、とてもじゃないけど『立ち入り禁止』を告げられるほどの危ない場所には見えなかった。ともすれば、雰囲気だけで言えばルミナスメイズの方がよっぽど怖かったかもしれない。そんな森でもキャンプをして泊まった経験があるのだから、今ならフリアたちがいれば、ここでも楽しく過ごすことが出来るだろう。

 

「……ユウリ、気をつけて進むぞ。確かあの時のフリアは、アーマーガアに襲われたって言ってたよな」

「うん。森の入口にはココガラとかホシガリスとか、サッチムシくらいしかいないから、多分奥に向かったらポケモンが強くなるってことだよね」

「幸いブラックナイトの影響を受けてないのか、暴れているポケモンがいなさそうなのはいい事だけどな」

「でも、油断は禁物、だよ」

「ああ。わかってるぞ」

「バス……」

「グラ……」

 

 しかし、今はそんな呑気なことをしている場合では無い。一刻も早く、ここにいるであろうとあるポケモンたちに協力をあおがなくてはいけない。それを理解している私たちは、顔を見合せて頷き、速く、けど慎重に、エースバーンたちを連れて森の奥へと足を動かしていく。すると、程なくして見覚えのある広場にでてきた。

 

「ここは……」

「オレたちがあの不思議なポケモンと出会って気絶した場所だよな……」

「こうして歩いてみると、思ったより町に近かったんだね……」

 

 そこは、当時あのポケモンと出会い、濃霧に包まれ気絶し、そしてフリアと出会ったあの場所だった。まだ森に入って数分しか歩いていないのに、それでもたどり着いてしまったことに、当時の自分たちの青さというか未熟さというか、そういうのを感じると同時に、その場所に立って、冷静でいられている自分の成長さも実感することが出来た。

 

 今なら、この森の奥も怖くないかもしれない。

 

 成長を実感したおかげか、幾分か心が軽くなった私たちは、その分を自信へと変換させ、森の更に奥へと視線を向ける。

 

「おし、このまま真っ直ぐ行くぞ!!」

「うん!!」

 

 慎重に動くことは変えずに、けどここに来るまでと比べて明らかに速くなった足取りを持って、ずんずんと森の奥へと進んでいく。

 

 森の奥はさらに霧が濃くなっており、ブラックナイトで空が元々黒いことも相まってかなり怪しい空気を漂わせている。また、あの広場から奥に進み始めたあたりで、出てくる野生のポケモンのレベルが1段階上がった。

 

 さっきまでホシガリスやココガラくらいしか出てこなかった茂みからは、アーマーガアやマタドガス、イオルブといった、進化したあとのポケモンが顔を出し始める。

 

 その姿はまるで、この先に行かせまいとする騎士のようだった。

 

「エースバーン!!『かえんボール』!!」

「ゴリランダー!!『ドラムアタック』!!」

「バースッ!!」

「グラァッ!!」

 

 しかし、その悉くをエースバーンとゴリランダーの技が跳ね返していき、私たちはさらに奥へと足を進めていく。申し訳ないけど、今の私たちは止まっている場合では無い。だから、これが試練だと言うのなら、全力で立ち向かわせてもらう。

 

 そうやって、迫ってくるポケモンを退けて、とにかく奥へ奥へと懸命に突き進む私とホップ。すると、程なくして小さい川に掛かる石造りの橋があるところに到達した。

 

「ふぅ……結構奥まで来たな……」

「うん……そんなに大きい森ってイメージは無いから、全体で見たらかなり進んでいるとは思うんだけど……」

「こうも霧が濃いと、先までの道のりの確認もできないな……って言うか、またさらに霧が濃くなっていないか?」

 

 ホップに言われて改めて周りを見てみると、確かにさっきと比べて見える範囲が狭まっているように感じる。まだ何とかなる範囲ではあるけど、これ以上視界が狭まってしまうと、野生のポケモンからの奇襲に対して反応がかなり厳しくなってくるだろう。

 

「バス……」

「グラ……」

「うん。2人ともありがとうね」

 

 この状況をしっかりと理解しているエースバーンとゴリランダーも、意識をさらに集中させて周りを確認し始める。私たちの安全を第一に考えて、自然とこういう行動を取ってくれる2人には感謝しかない。

 

「ああもう!!いっそこの霧を全部吹っ飛ばすか!!アーマーガア!!羽ばたけ!!」

「ガァッ!!」

 

 対するホップは、視界が制限されることをいい加減鬱陶しく感じてしまったのか、アーマーガアを呼び出して思いっきり風を起こし、霧を吹き飛ばそうと画策。この指示を受けたアーマーガアは、声を上げながら翼を動かし、とにかく突風を巻き起こしていった。

 

 しかし、アーマーガアが必死に巻き起こした風の効果は何故かほとんど現れず、視界がほんの数cm広がるだけにとどまってしまった。

 

「なんで霧が晴れないんだ!?」

「特別な霧なのかな?……ますます不思議な場所だね」

 

 普通の霧なら吹き飛んでいそうな風を受けて、しかし全く晴れることの無い霧を見て驚きの声を上げるホップ。正直私も、これで視界が広がると確信していた側の人間だったから、これで晴れていないことにびっくりしてはいる。しかし、同時にこの場所がそれだけ特別な場所であるという裏付けにもなっているような気がして、どこか納得してしまっている自分もいた。

 

「はぁ……結局自分の足で抜けろってことか」

「楽は許してくれないって事だね。でも、きっとあとちょっとだしがんば……っ!?」

 

 しかし、ホップの霧払いが全く役に立たなかったという訳では無かった。

 

 私たちの視界は確かに数cmしか広がらなかった。けど、その数cmのおかげで、確かに見えるようになったものがあった。

 

「ホップ……!!」

「ああ……」

 

 見えるようになったものは、今私たちがいる小さな石橋の向こう側におり、片方は蒼色の毛並みをし、もう片方は紅色の毛並みをした、四足歩行のポケモン。

 

 あの日、あの広場で、私たちが見つけたあの不思議なポケモンたち。

 

「いた……あの時の……!!」

「剣と、盾のポケモンだぞ……!!」

 

 ソニアさんとのお話のおかげで知ることのでき伝承上のポケモン。そんな彼らが、私たちの前についに姿を現した。

 

 こうして対面するだけで、肌がピリピリするような圧倒的なプレッシャーを感じさせる。ともすれば、これだけで1部のポケモンは気を失ったりするのではないかと不安になるレベルのその圧力は、まるで私たちを試しているかのようで。

 

(でも、退けない……。ここで退く訳には行かない!!)

 

 しかし、ここまで来た目的をしっかりと持っている私とホップは、目をそらさないように、しっかりと意志を込めて、じっとポケモンの目を見つめていく。

 

「……ウルォーード!!」

「ウルゥーード!!」

「「っ!?」」

 

 見つめ合うこと数十秒。お互い全く動くことの無い、無音の時間を過ごしたと思ったら、突如剣と盾のポケモンが吠えだし、その姿が徐々に霧の中に隠され始める。

 

「あ、待って!!」

「どこ行くんだよ!!」

 

 気づけば全身霧の中に隠されているポケモンたちを見て慌てて声をかける私たち。しかし、この声に対する返答はひとつもなく。

 

「アーマーガア!!」

「ガァッ!!」

 

 アーマーガアがもう一度羽ばたくことで風を起こし、ポケモンを隠すために現れた霧を再び散らしていくけど、そこには、まるで最初から何もいなかったかの如く、誰もいない静かな道がずっと続いているだけだった。

 

「今のは……幻、だったのか?」

「ううん、絶対に違う。あのプレッシャーは本物だったもん」

「……だよな」

 

 さっきまで剣と盾のポケモンがいた場所を見てそう呟くホップに対して、私はしっかりと自分の意見を伝える。

 

 確かに、夢でも見ているかのような感覚だったけど、あのポケモンたちから感じた圧は確かなものだったし、ちゃんとさっきまであの子たちがいた所に、しっかりと足跡が残っていた。

 

 あの時と違って、しっかりと実在する生き物として捉えることが出来ている証拠だ。

 

「行こう。ホップ」

「ああ……!!」

 

 あのポケモンがいたということは、やっぱりこの先にブラックナイトを止める鍵がちゃんとある。そのことを改めて理解できたのなら、もう迷うことも恐れることもない。私たちは、目的を達成するために、一緒にゆっくりと、まどろみのもりの最奥に歩いていく。

 

 霧で前は見えないけど、それでも恐れることなく前に進み続けていると、ある地点をすぎたところで急に霧が消え始め、視界が一気に切り開かれた。

 

「ここは……」

「無茶苦茶綺麗だぞ……」

 

 霧が消え、おそらく最奥に着いたと思われる私たちを待っていたのは、思わず言葉を失って見とれてしまうほど綺麗で神秘的な場所だった。

 

 ブラックナイト中にもかかわらず木漏れ日は綺麗な光を煌めかせながら落ちていき、古く、少し朽ちかけているアーチ状の建造物を優しくライトアップしており、その雰囲気はまるで異世界にさまよったのではないかと錯覚してしまうほど綺麗だった。また、アーチ状の建造物の後ろには小さな湖ができており、今立っている場所の少し横を見れば、先程石橋を渡って越えた川の水がここに流れ込んでいたのがわかる。この湖の表面にも、先の木漏れ日はしっかりと降り注いでおり、この光を反射することで、この空間の神秘度をさらにあげていた。

 

 湖と木漏れ日、そして緑と古い建築物。これら全てが奇跡的な組み合わせで重なることで、この幻想的な空間は彩られていた。

 

「ここが……あの子たちのお家なのかな……?」

「の割には、姿は見えないぞ」

 

 この景色に驚きながら、ゆっくりと足を進める私たち。

 

 もしここがあの子たちの家なら、荒らす訳には行かないのでゆっくり歩いていくけど、いくら見渡しても肝心のあの子たちの姿は見当たらない。

 

「霧の奥に行ったのなら、ここにいるはずだけど……どこいったんだろう?」

「このままじゃあ力を借りれないぞ……お〜い!!どこにいるんだ〜!!力を貸してくれ〜!!」

 

 さっき見かけ、こっちの方に消えていったはずのあの子たちを見つけるべく、ホップが手を口の横に添えながら大声で呼びかけてみる。けど反応はひとつも返ってこず、霧がまだ残っている後ろを振り向いて見ても、その中から出てくる気配はひとつもない。

 

 ここまで綺麗さっぱりと気配が消えてしまうと、なんだかここに来たと同時に晴れた霧と一緒に、どこかに霧散していったのではと不安になってしまうほど。

 

「本当にどこに行っちまったんだよ……」

「早くしないと、みんなを助けられないのに……あれ?」

「ん?なにか見つけたのか?」

 

 その不安は徐々に焦りと苛立ちに変換され、急かされている今の状況と、ここまでしても姿をちゃんと見せてくれない剣と盾のポケモンに、ついつい愚痴のひとつでも零したくなってしまう。そんな気持ちになりながら、それでもなにかないかと、アーチ状の建築物の方へ足を進めていくと、アーチの中心にある石碑の前に何かが落ちているのを確認できた。それが気になった私は、その場所へと近づいていき、その正体を探る。

 

「これは……剣と盾……?」

「……なんか、すっごくボロボロじゃないか?」

 

 それは赤褐色に酷く錆びた剣と盾だった。しかも、剣は途中で折れ、盾は至る所に傷がついていて、とてもじゃないけど実用性があるようには見えず、正直触ることすら躊躇してしまいそうなほど酷い状態となっていた。

 

「これがブラックナイトを倒す道具になるのか……?」

「分からない。でも……」

 

 朽ち果て、今にも崩れて消え去りそうなほど儚い剣と盾。その姿に、これが本当に役に立つのかと不安を感じてしまうけど、いざ近づき、意を決してくちたけんを握ってみると、触れている右の掌からじんわりと暖かい何かを感じ、これがただの朽ちた道具では無いことを強く感じる。

 

 それはまるで、この剣が私たちで言うモンスターボールの役割をしているかのようで、この剣から、確かな意志を感じる。

 

 それはホップも感じ取ったみたいで、私の隣でくちたたてを拾い、目を瞑り、大事そうに抱きしめたところでゆっくりと口を開く。

 

「……ああ、感じるぞ。……まだ眠っているけど、確かにいるんだな……ここに」

 

 やはり伝説は本当だった。きっとこのこの剣と盾は、ブラックナイトを……ムゲンダイナを止めるのに必ず手を貸してくれるだろう。

 

「行こう。ホップ!!」

「おう!!……ブラックナイトを止めるために、この剣と盾……借りていくからな!!」

「少しの間、失礼します!!」

 

 そこにいるかは分からないけど、アーチの先に見える湖に向かって一言断ってから来た道を引き返し始める私とホップ。

 

 切り札は手に入った。あとはダンデさんと一緒に、ムゲンダイナを止めるだけだ。

 

(待っててね……みんな!!)

 

 恐らく今も他のところで奮闘しているであろうみんなを、そしてフリアを想起しながら、私たちはとにかく足を動かした。

 

 この剣と盾が、この夜を切り裂く光であると信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お母さん

ポケモンの旅は必ずお母さんの元から始まりますよね。旅の始まりには外せない要素です。

まどろみのもり

久しぶりどころでは無い登場。初めに帰ってきました。あの頃とは見違える成長ぶりですね。




前書いた伏線や内容を思い出すために、前の話を読み直すことがあるのですが、ここまで増大だと、「書いた覚えは絶対にあるのに、どこだったか思い出せない」が多発します。最近だと、コウキさんがフリアさんの発言を聞いているシーンとかでしょうか。そして振り返った結果、「聞いているシーンはないけど、戦う前の発言で『約束』や『行きたい場所』という言葉を使いまくる」という若干分かりづらい伏線になってしまってたりします。その度に後悔するんですよね。

振り替えやすいように、副題つければよかったなぁと。(とんでもなく後の祭り)




  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。