【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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317話

「赤く身体が光った……ということは、何かしらの能力が上がったということですね……」

「倒されたことがキーとなってるなら、『じしんかじょう』みたいな特性ってことね……これはもう倒される訳には行かないね……」

「それが出来れば苦労しませんが……」

 

 こちらのポケモンが倒されたことであちらの能力が上がったのだとすれば、おそらくこれからのバトルは、もっと火力が上がっていることが予想される。となれば、さっきこちらのポケモンをまとめて倒したあのボディプレスがさらに強くなって飛んでくる可能性があるということ。白いポケモンに限っていえば、ダイアシッドでも強化されているため、さらに大変なことになっている可能性が高い。

 

 マクワの言う通り、倒されずに勝つ。というのはなかなか辛いだろう。

 

「せめて、どちらか片方でも早めに倒せたらいいんだがね……」

「どちらかを素早く倒す方法……」

 

 

「ウロロロ〜!!」

 

 

「「っ!?」」

 

 どうすればこの強固な壁を打ち破ることが出来るのか。そのことを必死に考えようと頭を動かしているところに聞こえてきたのは、白いポケモンの叫び声。

 

 声量は決して大きいという訳では無いのに、それでも不思議な圧によってずしりと響いてくるその声は、こちらの身体を無意識のうちにプレシャーで縛り上げてくる。

 

 この圧に負けないように身体を動かし、前を見ていると、白いポケモンの身体から一気に毒の波が噴出。さっきと比べて明らかに火力の違うその攻撃を前に、慌てて防御準備へと取り掛かる。

 

「バリコオル!!グレイシア!!『ふぶき』!!」

「バンギラス!!イシヘンジン!!ツボツボ!!『ストーンエッジ』です!!」

 

 相手1人に対して5人がかりでの防御陣系。

 

 さっきまでの状態なら、ここまですれば余裕を持って防ぐことが出来ていたが、今回は全然そんなことはなく、防ぐこと自体は成功してはいるものの、こちらの技は毒の波とぶつかった瞬間ほとんど消え去っており、先ほどまでとは違うということを見せつけてきた。

 

「やっぱり火力が桁違いになってるねぇ!!」

「こんなギリギリな守り、いつまでも持ちませんよ!!」

「わかってるよ!!」

 

 今回は守ることが出来ても、毎回この5人が万全の状態で立ち向かえる訳では無い。ましてや相手は2人。あの白いのばかりにかまけていれば、今度はレンガの方から攻撃が来る。

 

 

「ツン……ゴゴゴゴ!!」

 

 

 その考えを裏付けるように、早速レンガのポケモンのストーンエッジが発射。こちらのポケモンの足元から、次々と岩の柱が立ち上っていく。

 

「コオリッポ!!ヒヒダルマ!!」

「アマルルガ!!」

 

 この攻撃は白いポケモンほど威力は無いものの、こちらの弱点を突いてくる技だ。無視することなんてできないので、毒波を防ぐときに参加しなかった面子ですぐさまガード。地面に刺さるつららおとしとたきのぼり、そしてフリーズドライが、何とか岩の進軍を押さえ込んだ。

 

 あちらの攻撃はひとまず乗りきった。しかし、こちらの表情はどんどん曇っていく。

 

「ジリ貧ですね。耐えれても攻めれない……」

「せめて一発……ドデカイのをかませたら……」

 

 相手を一撃で崩せる大技。強いてあげるのなら、はらだいこを行っているコオリッポの一撃がこれに当たるのかもしれないが、これだけでは絶対に足りないだろう。かと言って、コオリッポのように火力を出すために変化技で能力をあげるというのも、それを得意とするモスノウは倒れてしまっているし、そもそも防御に手一杯でそんな時間が確保できない。

 

 せめて、今のままで相手を倒せる火力を2人くらいが発することが出来れば、大きく流れは変えられるのだが……

 

(けど、そんな都合のいいことなんて……)

 

「ルオォッ!!」

「バリコッ!!」

 

 頭の中を色々なものが駆け巡っている中、急に鼓膜を叩いてきたのはアマルルガとバリコオルの鳴き声。その声につられて視線を動かせば、そこには決意に満ちた目でこちらを見つめている2人の姿があった。

 

「アマルルガ?どうしたんですか?」

「バリコオル、あんたまでいったい……あっ!?」

 

 その姿を見て、その意図が上手く汲み取れなかったあたしたちは一瞬首を傾げかけ、しかしすぐさま2人のやりたいことを理解したあたしは、弾かれるように顔を上げた。

 

「なるほど、確かにそれなら……ですが、いいのですか?」

 

 同じタイミングでマクワも2人の意図に気づいたみたいで、確かにこの作戦なら突破できる可能性が高いということも理解した。しかし、同時にこの作戦は、アマルルガとバリコオルに大きな負荷をかける作戦。そのことに対し、少なくない不安を感じたマクワとあたしは、心配するように視線をなげかける。

 

「ルオッ!!」

「バリッ!!」

「あんたたち……」

 

 この視線に対するアマルルガとバリコオルの答え。それは、任せろと言いたげなほど自信満々で、これから起きることに対する覚悟も完了しているという圧を感じた。

 

 もう、2人の中では答えが決まっているのだろう。

 

「……マクワ」

「ええ……ここまでの覚悟を見せてもらったのなら、2人を尊重させないと逆に失礼です」

 

 そんな2人の意志を尊重させるべきだというマクワの言葉に、あたしも覚悟を決めて頷いた。

 

 この子の言う通り、せっかく自分から名乗り出てくれて、その上で現状最も簡単に白い方を倒せる可能性のある手段を提供してくれているのだ。たとえそれで、アマルルガとバリコオルにかなり辛い仕事を押し付けることとなっても、当の本人が覚悟を決めているのであれば、それはトレーナーであるあたしがしっかりと背中を押してあげるべきだ。

 

 絶対に上手くいくと、信じてあげるべきだ。

 

「大丈夫ですよ。あなたのバリコオルと、あなたから貰ったアマルルガは強いポケモンなんです。絶対に、仕事を完遂してくれますよ」

「……なんだい、それであたしを励ましてるつもりかい?」

「……珍しく弱気そうなあなたを見てると、調子が狂うだけですよ」

「全く、ジムを出ていった時の生意気さは変わらないね」

 

 そっぽを向き、表情を隠しながら言葉を零す我が息子。

 

 ジムを出ていく時も見せたその喋り方は、しかしジムチャレンジを通して心の内を知った今なら、なかなかどうして可愛いらしく見えてしまって。

 

(いい男に育っちゃって……子の成長って本当に早いわねぇ)

 

 今がバトル中でなければ、思いっきり抱きしめていたかもしれない。

 

「とにかく!!バリコオルとアマルルガのやりたいことを援護しましょう!!それに、たった今あのレンガのポケモンを打ち崩す手段も思いつきました!!この勝負、絶対に勝てます!!」

「言い切ったね?じゃあ勝てなかったら、ほっぺたにチューを100回して慰めてあげるよ!!」

「……これは絶対に負けられませんね」

「あからさまに嫌そうな顔するんじゃないよ!!」

 

 随分久しぶりな親子のやり取り。そのおかげで大分心が軽くなったあたしは、頭の中が澄み渡り、絶好調状態に入っていく。

 

 今なら、どんな攻撃も見切れそうだ。

 

 

「ツン……ゴゴゴゴ!!」

「ウロロ〜!!」

 

 

 こちらがなにか新しい動きをしようとしたのを察したのか、声を上げて気合を入れ出す相手のポケモンたち。練り上げられている力の圧から、もしかしたらまたダイマックス技を行ってくるのかもしれない。

 

 そんな相手を見たマクワは、自身の懐からボールを取りだしながら、セキタンザンに向けてリターンレーザーを放っていく。

 

「作戦を決行するためには、あのレンガのポケモンが邪魔です。そのためにも、まずは全力でレンガのポケモンを抑える必要があります。なので……」

「守るためのラプラスで攻撃してでも攻めろって事でしょう?言わなくても分かっているわよ」

「ならいいです。……頼みますよ」

「誰に物言ってるのさ」

「ふふ……そうでしたね」

 

 柔らかな笑顔を一瞬だけ浮かべ、そして直ぐに戻し、ダイマックスバンドから光をボールに送っていく。

 

 

「何人たりとも、きみを……そして僕たちを砕くことは出来ない!!」

 

 

 ボールが大きくなりきったところで、サングラスに左人差し指を添え、軽く持ち上げながら、ニヒルな笑顔を浮かべるマクワ。そして……

 

 

「セキタンザン!!キョダイマックス!!」

「ダアアアァァァッ」

 

 

 解き放たれる大きな山のような姿をしたセキタンザン。

 

 胴体に抱える竈からは燃え盛る焔が確認でき、ある地域では大寒波から沢山の命を救ったと言われる逸話を持つ優しい力。それが今、このキスクルタウンを守るために、あたしの横で構えを取る。

 

 

「ウロロロ〜!!」

「ゴゴゴ、ゴゴゴ!!」

 

 

 目の前に現れた2人目のキョダイマックスポケモン。その圧を前にして、しかし1歩も引かない彼らは、こちらに対抗するべく、2人で1緒にダイロックを発動。地面を畳返しのようにめくりあげ、巨大な壁を2枚作りだした相手のポケモンは、その岩の壁をこちらに倒して押しつぶそうとしてきた。

 

「この僕にいわタイプの技で挑む……いい度胸ですよ。セキタンザン!!」

 

 これに対し、マクワが声をあげると同時に、お腹の暖炉の火力をあげ、力を溜めていくセキタンザン。

 

 

「そそり立て、『キョダイフンセキ』!!こちらの繰り出す岩の檻を、押し返せるか!!」

「ダアアアァァァッ」

 

 

 そのセキタンザンが地面を殴ると、先ほど相手が作った壁よりも一回り大きな壁を目の前に作り出した。

 

 キョダイマックス技として、相手よりも少し大きな規模で放たれたこの技。しかし威力だけでみればそんなに大きく変わることはないし、何なら相手は2枚の壁且つ、白いポケモンに関してはおそらく特攻が何段階か育っている状況。いくらキョダイフンセキとはいえ、この2つと真正面からぶつかり合ったら簡単に押し負けるだろう。だから、ここでもう一押し。

 

「かあさん!!」

「ええ!!ラプラス!!『ダイストリーム』!!」

 

 キョダイフンセキの壁を後ろから押し上げるための水が、ラプラスより解き放たれた。

 

 本来ならダイロックとキョダイフンセキは、出来上がった壁を相手側に倒して押しつぶす技だ。しかし、本来のその攻撃方法を少し変えて、後ろから水で押し込むことによって、相手を押しつぶす壁とする攻撃方法。

 

 巨大な水の奔流で押されたキョダイフンセキは、そのまま2つのダイロックにぶつかり、そのダイロックをも巻き込んで押していき、白いポケモンもレンガのポケモンもまとめて押しつぶそうと猛進。3重に重なる巨大な壁は、相手に向かって真っすぐ突っ込んでいく。

 

 

「ゴゴゴ……ッ!!」

 

 

 この壁に対してレンガのポケモンはジャイロボールを行う。

 

 何段階か上がった防御を盾に、自身の身体を鈍色に包みながら行われる回転攻撃は、迫って来る岩の壁を全てを打ち砕く勢いでぶつかり合い、まるで洞窟を作るための工事でもしているのではないかと錯覚してしまうような採掘音を奏でながら岩の壁を貫通していき、打ち砕いていく。

 

 ダイマックス技を何重にも重ねた攻撃。それをたった一人で打ち崩すその防御力は、やっぱり見ていて凶悪なものだ。簡単に打ち崩すことはできないだろう。しかし、足止めくらいならできる。

 

「今です!!バンギラスとイシヘンジンとツボツボで『ストーンエッジ』!!」

 

 狙うは先ほども行った足元奪い。足元からストーンエッジを放つことによって、足を奪ってレンガのポケモンをこかすことを目的としたこの攻撃は、先の展開をもう一度繰り返すかのようにレンガのポケモンを襲っていく。しかし、勿論同じ手を喰らわないようにしている相手は、足元の足場に違和感を感じたと同時に、狙われた前足2本を自分から持ち上げ、むしろその岩の柱を踏みつし、その勢いのままストーンエッジを返そうとしてきた。

 

 けど、その行動も予想できている。

 

「ヒヒダルマ!!コオリッポ!!」

 

 この行動と同時に走り出すのはヒヒダルマとコオリッポ。足を振り上げ、2本の足だけで立っているレンガのポケモンの、残っている足をそれぞれつららおとしとたきのぼりで攻撃することによって、レンガのポケモンがバランスを崩し、その身体をまた地面へと横たえた。

 

 

「ウロロロ〜!!」

 

 

 そのレンガのポケモンを援護するべく動き出すのが白いポケモン。全身に毒のエネルギーを溜めて、またダイアシッドを放とうとする姿を見せてきた。この行動を許してしまえば、レンガのポケモンの自由を再び許すこととなる。そのため、何がなんでも止める必要があるのだけど……

 

「その行動を待っていたのよ!!バリコオル!!」

「アマルルガ!!」

 

 地面に伸びていく毒の沼。それが、今目の前で解き放たれようとしているその瞬間。この時を待ってましたと言わんばかりに、白いポケモンの目の前にバリコオルとアマルルガが顔を出した。

 

 いきなりゼロ距離付近まで現れた2人を視界に収めた白いポケモンは、自身の身の危険を瞬時に察知。このまま攻撃を受けるわけにはいかないと判断したのか、ため込んでいる力をすぐさま解き放つ選択を取る。

 

 同時にまきおこるのは毒の柱の乱立。至る所で無差別に発生した毒は、白いポケモンの特攻を上昇させながら、いろんなところを攻撃していく。しかし、全てを無差別に放っていると言わけではなく、一部の攻撃はちゃんと攻撃をする場所をしっかりと指示しており、その証拠に、レンガのポケモンの足もとにはちゃんと柱が立とうとしている予兆が見られた。そしてそれは、バリコオルとアマルルガの足元にもしっかりと現れており、あと数秒もすれば、攻撃が直撃してしまうのが簡単に想像できてしまう程。

 

 受けれ間違いなく致命傷となるだろう、そんな攻撃を目の間に、バリコオルとアマルルガはある行動をとる。

 

「バリッ!?」

「ルオッ!?」

 

 それは、()()()()()()()()()()()()()と言うもの。

 

 特攻が何段階も上昇した、明らかに貰ってはいけない一撃。それを、何の対処もすることなく、2人は真正面から受け止めた。結果、2人は大きく後ろに吹き飛ばされ、今にも倒れてしまいそうな状態になってしまう。

 

 本当だったらあり得ない光景に、白いポケモンも思わず驚きの声をあげそうになり、しかし 次のあたしたちの言葉によって、その鼓動が甘かったというのを思い知る。

 

「バリコオル」

「アマルルガ」

「「『ミラーコート』!!」」

「バ……リッ!!」

「ル……オッ!!」

 

 声と同時に解き放たれる白い光。それは、とてつもなく強烈な威力となって、白いポケモンへと襲い掛かっていく。

 

 自身が受けた特殊技の威力を倍にして返すミラーコート。それが2つ分重なって打ち出されることによって、単純に4倍となった威力が、白いポケモンの身体を一気に襲い掛かていく。

 

 

「ウ……ロ……ッ」

 

 

 予想だにしていなかったところから放たれた、予想以上の大ダメージ。当然、こんな攻撃を受けて耐えきれるわけがない。

 

 結果、白いポケモンは、地面に広がった毒の波を消しながら、ダイマックスエネルギーを放出。身体のサイズをもとに戻しながら、倒れることとなった。

 

 これで敵はレンガのポケモンだけだ。

 

 

「ゴゴゴ……ッ!!」

 

 

 共に戦っていた仲間の脱落。それを見たレンガのポケモンは、まるで遺志を受け継ぎ、奮起するかの如く声をあげながら、白いポケモンの最後の攻撃によって起きた身体を持ち上げ、今しがたとどめを刺したバリコオルとアマルルガめがけて大ジャンプを行った。

 

「バンギラス!!ツボツボ!!」

「グガァッ!!」

「ツボッ!!」

 

 その動きを見て、一番近くにいたツボツボとバンギラスがすかさずレンガのポケモンにジャンプ。その身体に引っ付いて、何かの技の準備を行った。

 

 

「ゴゴッ!!」

 

 

「ツボッ!?」

「グガッ!?」

 

 しかし、その2人が攻撃をする前に気づいたレンガのポケモンがすかさず回転。ジャイロボールによる反撃によって、2人は地面へと叩きつけられてしまう。これにより、バンギラスは耐えたものの、ツボツボは耐えきれなかったみたいで、目を回して倒れてしまう。

 

 

「ゴゴゴ……ッ!!」

 

 

 そして、続けて放たれるレンガのポケモンの渾身のボディプレス。これによって、ミラーコートのために大ダメージを受けていたバリコオルとアマルルガも脱落。これでこちらのポケモンの数は7となる。

 

 

「ゴゴゴォォォッ!!」

 

 

 一瞬にして3人ものポケモンを倒したレンガのポケモンは、再び身体を赤く発光させながら、天に向かって声をあげる。

 

 これがあたしの想像通りなら、これであいつは特性によって防御が5段階も上昇した計算になる。

 

 まさに鉄壁。これほどまでに頑丈になったこのポケモンを倒すだけの火力は、こちらでは簡単に準備できない。

 

「さて……白いのは倒せたけど……こいつはどうする気だい?あんたが勝てる作戦を思いついたっていうから、そっちに関しては全部任せるつもりだが……」

 

 そんなレンガのポケモンとマクワを交互に見ながら言葉を零す。

 

 これで、実はどうにもできませんだなんて言った時には、きつ~いお仕置きをしなければいけないのだけど。

 

「作戦ですか?それならもう、()()()()()()()()()()()

「……は?」

 

 そんなあたしに対して、マクワはただただ楽しそうに笑みを浮かべながら言い放つ。

 

「そんなに僕の言葉が信じられないのなら、攻撃してみてはいかがですか?コオリッポならいいダメージが出せると思いますよ」

「……そんなに言うなら……コオリッポ!!『たきのぼり』!!」

 

 マクワの言葉を信じて、とりあえずコオリッポで攻撃を指示。ボディプレス終わりの隙のある状態めがけて、本気の突撃を行った。

 

(とはいっても、絶対にたいしたダメージにはならないでしょ?何をもって作戦を完遂だなんて……)

 

「リ……ッポォ!!」

 

 

「……ウゴッ!?」

 

 

「……え?」

 

 半信半疑だったあたしの目の間に映った景色、それは、思いのほかダメージを受けて、後ろに下がって行くレンガのポケモンの姿。

 

「おや、結構削ったと思ったのですが、思いのほか耐えますね。ですがその様子だと、そう何回も攻撃は受けられなさそうですね」

 

 驚くあたしの横で、さも当然そうに呟くマクワ。そんな彼に、あたしは質問を投げる。

 

「あんた……一体何を……?」

「簡単なことですよ。ですがその前に、最後の仕上げをしましょうか。……バンギラス。()()()()『いやなおと』」

「グガァッ!!」

 

 その質問に対して、マクワは返答をする意思を見せながら、バンギラスに不可解な指示をした。

 

『もう一度』

 

 この言葉をつけたということは、すでに一度この技を使っているという事だ。そのことにますます混乱したあたしに対して、マクワは相変わらずニヒルな笑みを浮かべたまま、自分のやってきた作戦について話し出す。

 

「相手は確かに堅牢な防御を持っています。そう簡単に貫く火力を準備はできないでしょう。なら、相手の防御を下げればいい。ただそれだけです」

「それで『いやなおと』かい?」

「いえ、『いやなおと』はあくまでおまけです。この作戦の要はツボツボですからね」

「ツボツボが……まさか!?」

「ようやく気付きましたか、ま、そういう事です」

 

 戦闘不能になったツボツボをボールに戻しながらそう答えるマクワを見て、あたしはようやく答えに気づいた。

 

 よくよく考えれば確かにおかしかった。そのおかしな点は、()()()()()()()()()()()()()()だ。

 

 ツボツボと言うポケモンは、攻撃面が貧弱な代わりに、防御面においてかなり秀でた能力を持っている。その力は、全ポケモンを通しても最高クラスと言っても過言ではないだろう。彼を一撃で倒せるポケモンと言うのは、おそらくほとんどいないはずだ。ではなぜ、ジャイロボール一発で沈んだのか。

 

 答えは、パワートリックと言う技で、攻撃と防御を入れ替えていたから。

 

 貧弱な攻撃と、強力な防御を入れ替えてしまったからこそ、ジャイロボール一発で沈んでしまったというわけだ。

 

 しかし、これだけではレンガのポケモンが弱くなった理由にはならない。

 

 そこで出て来るもう1つの技。それが『ガードシェア』。

 

 相手と自分の防御、特防の能力を合算して、4等分するという効果を持つのだが、それをパワートリックによって防御が貧弱になったツボツボが、レンガのポケモンに行った。これにより、相手は防御力がガクンと下がることになる。

 

 これこそが、コオリッポの攻撃で大きく怯んでしまった理由だ。

 

「それでも耐えるあたり、元々の能力は本当に高かったのでしょうね。バンギラスがいてくれて助かりました。おかげでより簡単に勝つことができます」

 

 防御が下がってしまったレンガのポケモンは、もはやただ動きが遅いだけのただの的だ。こうなってしまえば、倒すのに時間もかからない。そんなあたしの予想通り、今残っているポケモン全員で殴り始めたら、ものの数秒で決着がつき、ダイマックス状態を解いたレンガのポケモンも、白いポケモン同様に倒れていった。

 

 本当に呆気ない幕切れ。

 

 ここまで綺麗に作戦がはまった戦いと言うのも、なんとも珍しいだろう。

 

「本当に、成長したんだねぇ」

「それだけ、沢山の刺激を受けましたからね」

 

 そう言いながら上を見るマクワ。その視線の先には、おそらくあの子が想起させられていることだろう。

 

 こういう作戦を思いつくようになった、その原因が。

 

「今度は絶対リベンジしなよ?」

「ええ、勿論ですよ!!」

 

 このバトルはマクワにとって、ただの踏み台でしかないのかもしれない。

 

(ふふ……このジムを譲るのも、そう遠くないのかもしれないわね)

 

 そんな息子の姿をみて思わず、ジムリーダーとしてスタジアムに立って試合をする姿を想像してしまうあたしだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

メロン&マクワVSウツロイド&ツンデツンデ

 

勝者、メロン&マクワ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ガードシェア

本来は、ハピナスのような片方が極端に高いポケモンに対して行い、均等にすることで、強力な守りにするのが目的ですが、今回は自身の防御を下げてから行うことで、相手の能力を別方面から下げるという使い方をしています。ツボツボの攻撃実数値、レベルが50なら30しかありませんからね……。

いやなおと

この作品、よくよく考えれば、自身の能力をあげる技はよく出ますけど、相手の能力を下げる技はあまり出ていないんですよね。そこで、単純な技のご登場。防御が高いのなら、こちらの技が通るまで下げればいい。ここに来てシンプルな作戦でした。




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