【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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319話

「……戻ってください、タチフサグマ」

 

 倒れてしまったタチフサグマをボールに戻しながら、おれは目の前で翼を広げて吠えるホウオウを忌々しく見つめる。

 

 タチフサグマのダウン。これは正直なところかなりやばい。というのも、先程言った通り、おれは攻撃を避ける訳にはいかない。流れ弾が後ろに飛んでしまえば、それだけで町への被害が凄い事になってしまうからだ。だが、そんな厳しい状況でも何とかねばれていたのは、タチフサグマのブロッキングに頼っていたからに他ならない。

 

 おれの仲間の中で、唯一身を守る技を持っているポケモン。その存在は防衛という観点にてかなり重要で、攻撃技をぶつけて相殺するのに比べて安定度が段違いだった。本来なら1人では厳しい伝説を相手に、ここまでしっかり町を守ることが出来たのは、間違いなくこの技があったからだ。

 

 しかし、タチフサグマが倒れてしまった今、もうこの技に頼ることは出来ない。不幸中の幸い……でもないが、一応少しだけ楽になった点として、今しがたホウオウが放った攻撃によって、野生のポケモンもジムトレーナーのポケモンも全員がダウンしてしまったため、今この戦場ではおれのポケモンたちとホウオウしかいない。そのため、気にしなければいけないところはそこそこ減ってはくれているが……逆に言えば援軍への期待が、難しいから不可能に変わったということでもあるので、やはり手放しには喜べない。

 

(いや、気にする必要はない。結局は、おれが出来ることをやるだけです)

 

 ホウオウの大技によって起きた惨劇を前に、少し気持ちを持っていかれていたところを、頬を叩いて気を引き締めて、改めて前を見据えていく。

 

「ズルズキン!!まばらに『ストーンエッジ』!!」

 

 気持ちを切り替えたところで、早速行動開始。その手始めとして、ズルズキンの手で至る所に背の高い岩の柱を生やしてもらい、焼けた大地にたくさんの障害物を用意していく。これで万が一同じ技を繰り出されたとしても、いくらか軽減させることは出来るだろう。タチフサグマが居ない今、こういう細かいところで工夫をしないと、一瞬でやられる。

 

「スカタンク!!バルジーナ!!」

 

 岩の障害物をある程度作り出したところで、次に動いたのはスカタンクとバルジーナ。生えた岩を足場にして軽快に駆け回るスカタンクと、岩の隙間を縫うようにして飛びまわるバルジーナは、それぞれ左右に別れて挟み込むような形をとる。

 

「カラマネロは『サイコカッター』でストリンダーは『オーバードライブ』!!」

 

 左右に別れた2人に対してホウオウが視線を動かし、どちらから攻撃するか考えていそうなところに、カラマネロとストリンダーの攻撃を添えていく。

 

 真っ直ぐ飛んで来る斬撃と電撃は、左右に意識を割いた上で無視できないと判断したホウオウは、これに対してだいもんじを放ち、相殺するルートを選択。大爆発をもって、しっかりとこちらの攻撃を防がれる。

 

「スカタンク、バルジーナ、『バークアウト』と「イカサマ」!!」

 

 だがそんなことなんて最初からわかっている。だからこそ、2人には予め左右に割れてもらっていた。

 

 右から迫る黒い波動と、左から迫る黒い足。

 

 左右から迫っていくあくタイプのエネルギーに対して、だいもんじを放ったばかりのホウオウは、しかし特に驚くことなく冷静に場を見ている。おそらく、先程横からイカサマの蹴りを喰らったことを頭に入れていたため、警戒をしていたのだろう。素早く翼に風を溜めたホウオウは、それを左右に放つ準備を整える。最初からこの対策を考えていたのか、その速度はかなり速く、このままではあのぼうふうで簡単に反撃を貰うだろう。

 

「ズルズキン!!上から叩き込んでやれ!!『かみくだく』!!」

 

 だから、ここにさらにもう1手攻撃の手を組み込む。

 

 岩の柱を足場にしてジャンプしたズルズキンがホウオウの真上を陣取り、牙を構えた。

 

 急に現れた3人目の敵に、さすがのホウオウもここまでは予知できていなかったらしく、驚愕の反応を示す。結果、空から襲い掛かって来るズルズキンの牙に対しての防御行動が間に合わず、大きな顎によって上から襲い掛かられたホウオウは、その動きを一瞬止めてしまう。これにより、左右から飛んでくる攻撃に対して取っていた防御行動である、ぼうふうのためのエネルギーが霧散。左右を守る壁もなくなってしまい、バルジーナとスカタンクの攻撃が突き刺さる。

 

 

「ホ……アァ……ッ!?」

 

 

 刻み込まれたダメージは、ホウオウの身体を仰け反らせ、後ろに下げさせる。

 

「ストリンダー!!カラマネロ!!」

 

 明確に生まれた隙に対して、さらに追撃を叩き込むために、ストリンダ―とカラマネロに声をかける。

 

 もう何度もやったやり取りに、技を指示しなくてもオーバードライブとサイコカッターを放ってくれている姿に頼もしさすら感じながら技の行く末を見つめていく。しかし、さすがにこれ以上の攻撃を許るわけにはいかないホウオウは、再び翼に風を集めてぼうふうを展開。自身を中心に嵐を作り出し、攻撃を弾きながらズルズキンとバルジーナ、スカタンクの3人も吹き飛ばしていった。

 

 空を飛んでいるバルジーナは器用に翼を動かすことで何とか姿勢を整えることに成功するが、スカタンクとズルズキンは強烈な風に押し出されてしまったことで墜落。

 

 

「ホアアアァァァッ!!」

 

 

「ストリンダー!!カラマネロ!!今すぐ……くっ、間に合いませんか……」

 

 その墜落した2人に対してすかさず虹色の炎を携えたホウオウは、間髪入れづに追撃。倒れている2人に着弾すると同時に、大きな爆発を作り出したホウオウの攻撃は、確実に2人の体力を削り切ってしまう。

 

 これで後3人。

 

「ストリンダーは『ばくおんぱ』!!カラマネロは『サイコカッター』!!」

 

 これ以上こちらのポケモンを落とされるわけにはいかないこちらは、とにかく攻撃を仕掛けていく。

 

 ここまで手持ちが少なくなってしまえば、もう相手の攻撃を防ぐことなんてできない。そうなると、相手に一回でも攻撃を許してしまえば、それだけでスパイクタウンの防衛が出来なくなってしまう。

 

 攻撃こそ最大の防御。それをずっと続けなくては、町を守ることは不可能だ。そのことを理解してくれているストリンダーとカラマネロは全力で攻撃を発射。更に、この攻撃の後ろに着いたバルジーナが、両足を黒く染めながら接近していくことで、攻撃が着弾したと同時にイカサマを叩きつける準備を整えていく。

 

 しかし、ここでもホウオウのセンスの高さが上を行く。

 

 ホウオウが翼を前に突き出し、自身の前に風の塊を作成。この球でストリンダーのカラマネロの攻撃を受け止めたことにより、ダイジェットの予備動作であるこの球に、電撃と斬撃が混ざりこむ。

 

「っ!?バルジーナ!!下がってください!!」

 

 その状態を見てすぐさまバルジーナに下がることを指示したが、その時にはすでに遅く、近づいてくるバルジーナに向けてその風の塊をそのままぶつけることによって、電撃と斬撃を巻き込んだ小さな球の中にバルジーナを閉じ込め、バルジーナの体力を一気に奪っていく。

 

 

「ホ……アァァァッ!!」

 

 

 更に、バルジーナを巻き込んだ風の塊にホウオウが蹴りを放つことによってダイジェットを発動。竜巻を横に倒したような攻撃は、真っすぐこちらに向かって飛んできた。

 

 この攻撃は受け止められない。しかし避けてしまえば、スパイクタウンへ流れ弾として飛んでいってしまう。

 

(くそっ、本当に次から次へと……最善策は……)

 

 頭を必死に働かせて、どうするのが正解か模索していく。しかし、その答えは出ず、気づけばもうダイジェットは目の前まで迫っていた。

 

「ネロッ!!」

「カラマネロ!?」

 

 そんな状況で動いたのがカラマネロ。

 

 自身の触手全てにサイコパワーを纏ったカラマネロは、ダイジェットに対して真正面からぶつかり、張り合う。しかし、1人ではこの威力に勝てるわけもなく、カラマネロの身体はどんどん後ろに押し流され、スパイクタウンの方へ飛んでいく。

 

「ネ……ロ……ッ!!」

 

 このままではスパイクタウンに被害が行く。それを察したカラマネロは、自身の身体にサイコパワーを溜め、地面に向かって放って斥力を放つことで、ダイジェットごと空中にジャンプ。軌道を無理やり上に変えられたその攻撃は、巻き込まれたバルジーナとカラマネロを2人とも連れて天空に飛んでいき、ある程度の高さに到達したところで爆発。辺りにぼうふうをまき散らしながら、しかしスパイクタウンに被害を出すことなくその技を昇華させることに成功した。

 

 その代償として、カラマネロとバルジーナが倒れることとなってしまったが。

 

「……ここまでやりやがりますか」

 

 これでこちらに残ったのはストリンダーのみ。当り前だが、この状態でこちらに打つ手なんて何もない。

 

「ネズさん……逃げましょう。この町は大好きですけど、俺たちがいたらまだ再建できます」

「そうです!!ここでやられるよりかはずっと……」

 

 もう逃げた方がいい。たとえ町が壊されたとしても、人が生きていれば建て直すことはできる。そんなもっともなことで、この場で唯一闘うことの出来るおれとストリンダーに向かってそんな言葉を投げかけるジムトレーナー。勿論、2人ともおれを信頼しなくてこんな発言をしているわけではない。むしろ、一番最前線で闘っているおれを気遣っての言葉だ。ここでおれがまだ戦えば、それこそホウオウの攻撃に巻き込まれかねない。

 

 そうなったとき、おれが傷ついてしまうことを嫌がっているのだろう。

 

「リッダァッ!!」

 

 そんな後ろ向きな周りの発言に対し、喝の声をあげたのはストリンダー。その声は、まるで『まだおれが残っている』とでも言いたげな、諦めたくない思いを前面に押し出した声だった。

 

 まだ戦えるのに逃げろと言われているのは、戦っている身としては嫌な気持ちにしかならない。当然ストリンダーもそんな気持ちを感じているし、おれだってその気持ちを尊重してあげたい。

 

 しかし、それ以上に、みんなにはおれたちに傷ついて欲しくないという事なのだろう。

 

 ……勿論、ストリンダーだけではホウオウに勝てるわけがないと思っているのも、原因の1つなのだろうが。

 

「リダッ!!リダッ!!」

「ストリンダー……?」

 

 しかし、それでも諦めきれないストリンダーは、おれのポケットの中身を指差しながら声をあげ続ける。その様子に、最初は何を言っているのかわからなかったおれだったけど、その指を差している先のケットの中に入っているものを思い出して、ストリンダーが何を言っているのかがわかってしまった。

 

「ストリンダー……正気ですか?」

「リッダッ!!」

 

 その行動に対して、とてもじゃないけど信じられないおれはストリンダーに確認の言葉を投げかけるが、これに対してストリンダーは全く迷うことなく頷く。

 

 おれの右ポケットの中に入っているある物。確かにこれを使えばあのホウオウに勝つことはできるだろう。たとえ相手が伝説であったとしても、正直負ける気が一切しない。しかし、そうだとしても、どうしてもおれはすぐにその手段に手を伸ばすことが出来なかった。

 

「リッダ……!!」

 

 そんな優柔不断なおれに対して懇願するかのように頼み込んでくるストリンダー。

 

 どうやら、ストリンダーの心は既に、覚悟が決まっているみたいで。

 

「……本当に、いいのですね」

「リッダ」

 

 おれの確認の言葉にすぐに頷くストリンダー。ここまでの覚悟を見せられてしまったのなら、もうおれに言えることは何もない。

 

 おれも、腹を括るのが、ストリンダーへのせめてもの励ましだ。

 

 だがその前に、しておかなくてはいけない事がある。

 

「みなさんはすぐにシャッターの中に入ってください。ここは、俺が絶対に食い止めますので」

「な、何言ってるんだよネズさん!!」

「そうですよ!!さすがにホウオウ相手に1人でなんて……」

 

 それは、今ここに残っている、おれ以外の全員を町の中へ移動させること。当然そんなことを簡単に受け入れられない人からの反論は出てきてしまうが、それでも、これだけは絶対にしておかなくてはいけなかった。

 

「安心してください。……なんて言葉は言いません。ですが、絶対に勝って見せますよ。……ですから、速く中へ」

「ネズさん……」

 

 おれの、いつにない真剣なお願いに対して何かを感じ取ってくれたジムトレーナーのみんな。

 

 納得いかないことも、不安なところもたくさんあるだろう。それでも……

 

「……お願いします」

「リッダ」

 

 おれとストリンダーの目を見たみんなは、静かに頷いてシャッターの方へと走っていく。

 

「絶対、無事に帰ってきてくださいね」

「でないと、俺たちは勿論、お嬢も悲しんじゃいますよ」

「それを言われると弱いですね……」

 

 残された言葉に苦笑いを浮かべているおれを見て、少しだけいつも通りの空気感を感じて安心したみんなが、足早にとシャッターの中へ避難していく。その迅速な対応のおかげで、数十秒もしないうちに、この場はおれとストリンダー、そしてホウオウだけとなる。

 

 野生のポケモンすらいない静かな空間。そんな場所で、おれは右ポケットから、もうボロボロになってしまっている()()()()()()()()()を取り出し、装着する。

 

「いきますよ……ストリンダー」

「リッダ」

 

 装着と同時に起動させたおれは、ストリンダーをボールに戻して頭上に掲げ、ダイマックスボールへと変化させて視線を送る。

 

「……もう、しないと思っていたんですがね……こんな形でまたすることになるなんて……」

 

 心に渦巻くのは後悔の念。けど、ここまで来たのなら、もう立ち止まれない。

 

「せめて……一瞬で決着をつけてあげます。だから……頑張って下さい……ストリンダー」

 

 まるで祈るように声を掛けながら、おれはボールを宙へと投げた。

 

 

「リッダアアアァァァッ!!」

 

 

 宙で割れたボールから飛び出したのは、()()()()()()()()()()ストリンダー。

 

 姿勢は二足歩行から四つん這いになり、腰の突起物は電波塔のようなものへ変化。腹部の発電器官も水色と黄色の複合になり、背びれのように発せられている電撃も同じようなカラーリングと、まるでハイとローの二つの姿を混ぜ合わせたような姿となっている。

 

 この姿のストリンダーは、体内にすさまじいほどの電撃と、100万リットルを超える毒液を蓄えた凶悪な状態となる。その力はとてつもなく……

 

「ストリンダー……『キョダイカンデン』」

 

 

「リッダアアアァァァッ!!」

 

 

 おれの指示を聞いたと同時に、エレキギターの形をした紫色の電気の塊を作り出したストリンダーの攻撃が、とてつもない轟音を発しながらホウオウへと襲っていった。

 

 

「ホア……ッ!!」

 

 

 この攻撃はまずい。そう悟ったホウオウは慌ててダイバーンを構えるものの、炎が発生する前に電撃が炸裂。紫色の雷がホウオウの頭上から降りそそぎ、稲妻と毒液がホウオウへと叩き込まれていく。

 

 毒と稲妻の複合と言っても、元のタイプはでんきタイプ。そのためホウオウにはこうかばつぐんの技となり、今まで与えてきたダメージをはるかに超えるダメージが叩き込まれる。それでも伝説の意地か、こちらの攻撃を何とか耐えたホウオウは、地面に落ちることを拒否して浮かび続けていた。

 

 

「ホ……ア……ッ」

 

 

 そんなホウオウを次に襲ったのは、全身に走る小さな痺れ。

 

 キョダイカンデンは、技を受けたポケモンのフィールドに、まひかどくの状態異常を振りまく追加効果を持つ。その効果によって、今のホウオウに電気が走ったという訳だ。

 

 しかし、これだけでは終わらない。

 

「どくかまひ……なんて、かったるいことは嫌いなんです。ですから、特別に両方選ばせてやりますよ」

 

 

「ホワッ!?」

 

 

 身体が痺れているホウオウを次に襲うのは、自身の頭の浮かぶ紫の泡。

 

 そう、どく状態。

 

 本来ポケモンは、状態異常を発症した際は、抗体が活発化するせいで他の状態異常が併発することはない。キョダイカンデンがどくかまひどちらかのみの発症というのも、この性質が影響する。

 

 しかし、何故かおれのストリンダーにはこの常識が当てはまらない。

 

 毒の効能が強いのか、はたまた発電能力が高いのか。理由は定かではないが、とにかく、おれのストリンダーはキョダイマックスの中でもさらに特殊なポケモンだった。

 

 状態異常の併発には、さすがの伝説といえどもこたえられないようで、飛ぶことを維持できなくなったホウオウは、どくに苦しみ、まひで痺れながら、ついに身体を地面へと落とす。

 

 

「ホ……アァァァッ!!」

 

 

「……『ダイアシッド』」

 

 それでも抵抗しようと、せいなるほのおを構えようとするホウオウ。そのガッツは目を見張るものがあるが、その虹色の輝きも、どくとまひのせいでどこか美しさが損なわれており、それに比例して威力が出ていない。

 

 そんな攻撃では、ストリンダーは止まらない。

 

 

「リッダアアアァァァッ!!」

 

 

 ストリンダーが地面を殴り、呼び出した複数の毒液の柱によって、炎を鎮火しながらホウオウが襲われていく。

 

 襲いかかってくる毒液と、状態異常のどくとまひに蝕まれるホウオウは、身動きが一切取れない。

 

 そんなホウオウの前に、ストリンダーがゆっくりと歩み寄る。

 

 そして……

 

「……終わりにしましょう。『キョダイカンデン』」

 

 

「リッダアアアァァァッ!!」

 

 

 動けないホウオウに対して、最後の雷が降り注ぐ。

 

 毒液と電撃をばら撒きながら繰り出される暴力的な攻撃は、ホウオウの体力を完全に削り切り、その身体を小さくさせ、戦闘不能へと追いやっていく。

 

 これでもう、ホウオウの脅威に怯えることは無いだろう。

 

 しかし、おれの表情は晴れない。

 

 

「リ……ッダ……ッ!?アアアァァァッ!!」

 

 

 なぜなら、決着が着いたあとなのに、ストリンダーが毒と電気を撒き散らし、苦しみの声を上げながらもがいていたから。

 

 キョダイマックスストリンダーは、先も述べたようにその体内に強力な毒と電気を内包している。その威力は見てもらった通りで、伝説にも引けを取らない。しかし、その代償とも言うべきか、その毒液が脳内まで浸透してしまうせいで、ストリンダーはキョダイマックスすると常に暴走状態となり、手がつけられなくなってしまう。暴れる度に毒と電気を散らし、大地を汚す姿は、人に『歩く災害』と恐れられるほど。しかもおれのストリンダーは、相手にまひとどくを併発させるほどさらに強力なそれを持っている。

 

 その代償による苦しみと、暴走による被害の規模は、想像を遥かに上回る。

 

 

「リッ……ダアアアァァァッ!!」

 

 

「ストリンダー……」

 

 僅かに残っている理性のおかげで、スパイクタウンには攻撃がいっていないことと、既に3回ダイマックス技を行ったおかげで、この状態が長くは続かないことは幸いな点だが、やはり、苦しんでいる相棒の姿を見て、いい気はしない。

 

「……すいません」

 

 自分がもっと強ければ、ダイマックスをすることなくホウオウを倒せたのではないか。そう思う度に、自分の心が苦しくなっていく。

 

 そんな自身の無力さに打ちひしがれること数十秒。ついに力を使い果たしたストリンダーが、元のサイズに戻っていく。が、体力を使い果たしたのか、勝鬨をあげることなく、その身体を地面へと横たえた。

 

 そんな彼に対してゆっくり近づき、その身体を抱き抱えながら声をかける。

 

「ストリンダー……無事ですか?」

「リッダ……」

 

 ストリンダーから返ってきたのは、弱々しい声と、それでも勝てたことを自慢するかのように儚く笑う表情だった。

 

 その返事を受けて、けど、おれは素直に喜ぶことが出来なくて。

 

「……」

 

 周りを見渡せば、電気と炎と毒と暴風によって、見る影もなくなったスパイクタウン外れの様子。

 

 昔の景色を取り戻すには、長い年月が必要かもしれない。……いや、下手をすれば、取り戻すことすら出来ないかもしれない。

 

 そんな荒れ果てた戦場跡地で最後まで残っていたのは、代償でボロボロのストリンダーとおれだけ。

 

「……だから、ダイマックスは嫌いなんですよ」

 

 その中心で、右腕のダイマックスバンドをしまいながら、おれは小さく呟いた。

 

 もう二度と、この力に頼る日が来ないことを願って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネズVSホウオウ

 

 勝者、ネズ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ネズ

以前私が書きたい戦いが3つあると言いましたが、その3つ目がこの戦いです。しかし、同時にキバナさんとのお話同様とても悩む話でもありました。『ネズさんにダイマックスを使わせるか否か』はずっと悩みましたが、今回はストリンダーのお話を交えるという形にしました。キョダイマックスストリンダーの、常時暴走状態と言う公式設定と、ネズさんがダイマックスを好んでいない理由が明確化されていないという2つを見た時に、私の頭の中で思い浮かんだ妄想ですね。勿論、ネズさんがダイマックスするのは解釈違いと言う方もいらっしゃると思います。もしこのネズさんが何が何でもダイマックスしないという方なら、どういう展開になったのでしょうか?




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