「ルギャアアアァァァッ!!」
「やばいやばいやばいィ!!マタドガス!!ヤドキング!!『ヘドロばくだん』!!ヤドランは『シェルアームズ』ゥ!!」
「えーい、少しは落ち着きなさい!!フーディン!!オーベム!!ココロモリ!!『サイコキネシス』!!」
荒れ狂う風と、耳をつんざくような叫び声が飛び交う中、こちらに目掛けて飛んでくるのは巨大な竜巻を横倒しにしたような攻撃。まるで全てをすり潰すミキサーのような破壊力を内包したその攻撃に対してこちらも必死に対抗して、少しでもその威力を落とそうと立ち向かっていく。
毒と念動力による反撃は、何とか相手の技を打ち消すことに成功。ぶつかりあった衝撃で、周囲にとてつもない量の風がたたきつけられることとはなったが、それでも攻撃力だけは抑えることが出来ていたので周りに被害は無い。後ろにある大切な道場にも、特にこれといって傷は入っていなかった。
『ぺっぺっ!!……うぅ、口の中に砂が入ったァ……最悪ゥ……』
「それくらい我慢してください。……本当に、こんな状況でも変わらないですね」
「こんな状況だからこそだぞゥ!!じゃなきゃやってられっかァ!!」
「……それもそうですね」
隣でわめきち散らかすクララさんに同意しながら周りを見渡せば、そこはちょっとした戦争状態。突如ダイマックスした野生のポケモンたちが大進撃を行い、このヨロイ島の道場に集まってくるという緊急事態。道場にいる門下生たちが総出で出張り、この道場を守るべくあちこちで奮闘する姿を確認することが出来る。中には既にポケモンをやられ、戦えなくなっている人もいるが、その人たちも必死に物資などをかき集めることで、この防衛戦を裏側から支えていた。
そんな、とてもこの世の状況とは思えない惨事の中で更にやばい状況。それが、今ワタクシとクララさんの目の前にいるこのポケモン、ルギアの存在。
ルギア。
あまり他の地方に詳しくないワタクシでも知っている伝説のポケモン。
その銀色の羽は、1度力を込めて羽ばたくだけで40日間も続く嵐を起こせ、逆に荒れ狂う海を鎮めることもできると言われている、ジョウト地方にて『海の神』と言われるほどの力を持った生き物。そんな恐ろしいポケモンが今、ワタクシたちの前でダイマックスした状態で暴れており、なんなら何回か道場に向けて攻撃を放っていた。
スタジアムのようにバリアのない道場に、この攻撃が当たればひとたまりもない。マスタード師匠も不在の今、ワタクシたちこそが最後の防衛ラインなのですが……
「ルギャアアアァァァッ!!」
「また来たァ!!ペンドラーとドラピオンは『ミサイルばり』ィ!!エンニュートは『だいもんじ』ィ!!」
「今度はヤドランとヤドキングで『サイコキネシス』!!ギャロップは『サイコカッター』をなさい!!」
その防衛ラインを襲ってくる暴風の弾丸。
ルギアというポケモンは、肺呼吸でありながら数年単位で潜水することの出来る強力な肺活量を持っているポケモンであり、戦闘ではこの肺活量を利用し、体内の空気を強力な弾丸として放つことが出来るのですが、これがまた肺活量に比例してとてつもない威力を誇っています。
ルギアより放たれた風の弾丸は全部で3つ。大きさでいえば、直径1.5m位の大きさで、人間からすれば充分大きいが、ダイマックスしているルギアの身体からしてみれば小さく、パッと見ではそんなに強そうな印象を受けない攻撃です。しかし、弾の小ささは空気の圧縮度の裏返しであり、そこに込められている力は暴力そのもの。この弾丸がひとたび何かに着弾すれば、瞬間その周辺は一瞬で吹き飛ばされ、下手をすれば跡形もなく消されかねない程の威力を秘めています。
(こんな攻撃を道場にぶつけることを許せるはずがありません!!)
師匠は今、シュートスタジアムで昔の弟子と再会し、共に窮地に立ち向かっていると聞きました。そんな師匠の帰る場所を無くしたとなれば、合わせる顔がありません。だからこそ、こちらも全力で守るために、必死で技を放って迎撃していく。
1つの弾に対して2人ずつ攻撃を仕掛けることでなんとか技を相殺し、とりあえずは道場への被害を0にすることは成功。その点にはホッと一安心。しかし、相殺された際に起きる、圧縮された空気の解放による突風は凄まじく、離れている場所にいるはずのワタクシたちの元へ強く叩きつけられる。
さすがに身体を持っていかれるほど強くは無いですが、それでも思わず顔を腕で覆ってしまうくらいには強く、これにより一瞬だけ前方の確認が疎かになってしまう。
「ルギャッ!!」
同時に聞こえてくるのはルギアからの短い言葉。その言葉に嫌な予感を感じたワタクシは、すぐさま腕をのけて前を見ると、そこには空中に浮かび上がる無数の岩石たち。
「『サイコキネシス』ですか!!」
岩石の縁を彩っている薄いピンク色の波動が、この岩たちが念動力に包まれていることを証明しており、その念動力の強さからこの技自体の威力の高さも読み取ることが出来た。
「フーディン!!オーベム!!『ひかりのかべ』!!」
瞬間こちらに向かって一斉に打ち出される岩石たち。その攻撃を見て素早く判断したワタクシはひかりのかべを展開し、相手の攻撃を何とかシャットダウン。壁にぶつかった時の衝撃でフーディンたちの腕が僅かに痺れはしたが、特に被害は出なかった。
「ナイスセイボリちん!!ヤドランは『シェルアームズ』でヤドキングは『ヘドロばくだん』!!」
ここまで来てようやく反撃のチャンスを得たこちらは、相手が技を打った後隙を狙ってすぐさま攻撃。ルギアに向かって飛んでいく紫の塊は、何者にも阻まれることなく綺麗に直撃し、ルギアに対してしっかりとダメージを入れることに成功する。
一見順調に見える一幕。しかし、その展開も、ルギアが小さく吠えると共に、無に帰していく。
「ルギャ……」
「『じこさいせい』……本当に面倒ですね……」
「ちまちまダメージとってもすぐに回復されるゥ!!ボスが回復魔法を使うなんてェ、これがRPGなら大ブーイングだぞォ!!」
「回復魔法を使うボス自体は多いような気がしますが……いえ、今はどうでもいいですね」
クララさんからの怒り言葉に微妙に納得しながら、しかし厄介に変わりは無い回復行動にワタクシも内心舌打ちをする。
「ヤドキング!!『ぶきみなじゅもん』!!」
ならせめて、その回復出来る数を減らそうと、相手のスタミナを奪うための攻撃をヤドキングに指示するものの、相手もこの攻撃は受けては行けないと察しているのか、空中を飛んでいく波動に対してはしっかりと風の弾丸を放ち、打ち消していく。
やはり一筋縄では行かず、こちらの手を通すなら工夫は必須らしい。
「クララさん、あいつに勝つには『じこさいせい』を打てないレベルまで疲れさせる、もしくは封じることと、何かしらの状態異常にしてしまうのが1番の近道です。技の封印方面はワタクシがしますので、相手を状態異常にするのは、そのエキスパートであるアナタに任せて良いですか?」
「ったりめぇよォ!!こちとら最初からそのつもりだってぇのォ!!そのためにもセイボリちん!!こっちだって節約はなしだぞォ!!」
「……みたいですね。ええ、共に行きましょう!!」
その足がかりであるスタミナ奪取ともうどく付与のうち、毒のエキスパートであるクララさんに後者を任せる旨を伝えると、クララさんはワタクシに言葉と気合いを返しながら、右腕のバンドを赤く光らせた。
じこさいせいがある以上、スタミナを奪うにしても長期戦は不利。そう判断しての、最初からのアクセル全開作戦ということなのでしょう。その作戦にはワタクシも賛成であるため、首を縦に振りながら、同じく右腕のバンドを赤く光らせていく。
「戻ってェ!!ヤドラン!!」
「いきますよ、ヤドキング!!」
準備を進めたワタクシとクララさんは揃ってボールをヤドキングたちに向けリターンレーザーを発射。そこからボールに吸い込まれていく相棒たちを眺め、確認したところで、赤い光をボールに送り込んでいく。
徐々に大きくなるボールに対して、ワタクシは手を離してサイコパワーで浮かばせ、クララさんは罅でも入るのではないかというくらい力強くボールを握りしめ、そのボールを解き放つ瞬間を今か今かと待っている。
「ルギアアアァァァャッ!!」
その様子を見て、準備をさせまいと邪魔をしてくるルギア。この状態なら攻撃できないとふんで、風の弾丸を発射してきた。
「ちょっとォ!!変身シーン中は攻撃しないのが暗黙の了解でしょうがァ!!」
「現実のバトル、ましてや野生のポケモンにそんな道理が通じるはずがないでしょ!!さっさと守りますよ!!『ひかりのかべ』!!」
「納得いかないィ!!『ヘドロばくだん』!!」
しかし、邪魔をしてくるのは最初から想定していたため、特に焦ることなく指示を飛ばす。クララさんもこうは言っているものの、ちゃんと頭の中にはその可能性を入れていたらしく、しっかりと対処。相変わらずの暴風にボールが飛ばされないことを意識し、風の弾丸をやり過ごしたところで、クララさんと同時にボールを投げ込む。
「1、2の3で巨大化せよ!タネもシカケもございません!!」
「キャハッ!!ヤドランちゃん!!夢もボディも、おっきくねェ!!」
風が荒れ狂う中投げ出されたボールは空中でしっかり割れ、その中からダイマックスしたヤドランとヤドキングを吐き出す。
「「ヤアァンッ!!」」
普段のんびりとし、動きもゆっくりな彼らだが、やる時はやってみせると気合いの入った雄叫びをあげてくれる。それでも、普段の雰囲気のせいでどこか力が抜けそうに聞こえてしまうものの、そこはご愛嬌。ワタクシたちだけが理解出来る彼らの気合いの入様を確認したワタクシたちは、海の神へ挑んでいく。
「ご覧あれ超・能・力!!超すごい能力の略です!!『ダイサイコ』!!」
「アナタの姿、毒まみれでも〜っと可愛くしてあげるゥ!!『ダイアシッド』ォ!!」
ヤドキングからは超の、ヤドランからは毒のエネルギーが発射され、ルギア目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
片や空狩り降り注ぐ虹の光線で、片や地面から沸きあがる毒の間欠泉。同時に飛んできてはいるものの、その実方向は全くの真反対から迫り来るダイマックス技による波状攻撃。生半可なポケモンでは対処不可能なその連携は、しかし生半可の範疇に収まらないポケモンであるルギアは、焦る様子を見せることなく行動を開始する。
「ルギアアアァァァャッ!!」
雄叫びと同時に彼の身体に集まっていくのはサイコエネルギー。その力はとてつもなく、ダイサイコとして解き放っている訳では無いのに、自身を中心に球状に力を解放するだけで、ダイアシッドは分解され、ダイサイコは相殺され、辺りに爆風を叩きつけるだけに終わってしまう。
海の神と呼ばれるせいで勘違いされがちだが、エスパータイプとひこうタイプの複合である彼にとっては、これくらいのエネルギー操作はお手の物と言ったところなのでしょう。
(本当に伝説というのはデタラメですね……ですが、まだ予想の範疇です!!)
「エンニュートは『だいもんじ』でドラピオンは『ミサイルばり』ィ!!」
「ココロモリとヤドキングで『シャドーボール』です!!」
そんな圧倒的力を見せつけられても、それはこちらにとっては覚悟の上のこと。こうなることを理解していたのなら怯む必要なんてなく、こちらがやるのはとにかく抗うことだけ。念動力を使ってこちらの大技を弾いたことで、それなりに体力の消耗がされている時点で十分こちらにとってはプラスだ。
「ギャロップ!!」
「ペンドラーァ!!」
「「『メガホーン!!』」」
そんな大きな隙を突くために走り出したのは、こうそくいどうと特性のかそくによって素早さが成長しているギャロップとペンドラー。瞬きをする間に一瞬で懐に入った2人は、角を緑色に光らせて、渾身の突きを放っていく。
「ルギャッ!!」
完全に1発入ったと思ったタイミング。しかし、それでもルギアは何とか反応をしてサイコキネシスを展開。ルギアを中心に発生した斥力のフィールドは、2人の攻撃を完全に受け止め、後ろに弾いていき、それでも広がっていく斥力の壁が、ギャロップたちに追い打ちをかけんと広がっていく。
「ギャロップ!!前に出なさい!!」
そんな状況でワタクシが出した指示は、ギャロップの更なる前進。しかしこれは相手を攻撃するためでも、相手の攻撃に抗うためでもなく、味方を守るための行為。
「あ、アリガトォセイボリちん!!」
「お礼は後で受けます!!今は前を!!」
理由は、この斥力がペンドラーに当たったらとてつもないダメージになってしまうから。
どくタイプのポケモンにエスパー技はばつぐんだ。そういう意味では、このバトルはクララさんの方が立ち回りが難しい。そこを補助するのは間違いなくワタクシの役目だ。そんなワタクシの考え通り、サイコキネシスを身体に受けたギャロップは、苦しそうな声をあげるものの、効果がいまひとつのおかげで、受けたダメージは致命傷と言うまではいかず、最小限のダメージに抑えて後ろに弾かれる。
そんな弾かれたギャロップが次にぶつかるのは、自身が盾になることで後ろに控えることとなったペンドラーの身体だ。斥力に押され、更にギャロップの体重も乗せられた重い一撃がペンドラーを襲い、今度は2人が揃って後ろに吹き飛ばされてしまう。
一見すれば2人を襲っているのは大きなダメージだ。しかしペンドラーからしてみれば、サイコキネシスが直撃するよりかはよっぽど軽いダメージだし、ギャロップからしてみれば、自身を受け止めるクッションが存在してくれたおかげで衝撃を逃すことができるという都合のいい状況。動きと演出こそ派手だけど、ワタクシとクララさんの目には、ダメージを受けながらもまだまだやってやるという目をする2人がしっかりと確認できた。
「フーディン!!オーベム!!」
2人のやる気を感じ取ったワタクシは、その2人が飛ばされる先にフーディンとオーベムを配置し、2人がフーディンたちにぶつかる瞬間をしっかりと見極める。
「クララさん、準備はよろしいですね?」
「バッチコーイィ!!」
同時に、隣にいるクララさんに確認の声を投げかけると、返ってきたのはやたらテンションの高い凄い返事。相変わらずのハイテンションに、呆れを通り越して尊敬すら抱きかねない。
(この性格……敵だと鬱陶しいですけど、味方だと変な頼りがいがありますね……おかげで肩の力がいい具合に抜けます)
クララさんのおかげで少しリラックスした視界は、ギャロップとペンドラーがフーディンとオーベムとぶつかった瞬間を正確にとらえることに成功。そしてその状況が訪れた瞬間、ワタクシの口は反射的に予定していた言葉を口にする。
「『テレポート』!!」
言葉と同時に掻き消える4人の姿。
テレポートによって瞬間移動したその移動先は、斥力フィールドの内側で、さらに言えばルギアの後頭部付近。
「「『メガホーン』!!」」
飛ばされている勢いを保存したまま移動したことによって、瞬間移動と同時にルギアの方に吹き飛んでいくギャロップとペンドラーは、その勢いを利用したまま突撃。緑色に再び光出す2本の角は、油断していたルギアの頭を後ろから正確に貫いて行く。
「ル……ギャッ!!」
「よそ見している場合ですか!!ヤドラン、ココロモリ!!『サイコキネシス』!!」
「ペンドラーは『ミサイルばり』でェ、エンニュートとヤドキングは『ヘドロばくだん』!!」
後ろから急に来た攻撃に反応して振り返り、肺を膨らませて風の弾丸で反撃しようとするルギア。しかし、後ろに振り向くということは、真正面にいる他のみんなに対して大きな隙をさらすということで、そんな隙を逃すはずのないこちらから、怒涛の連続攻撃を解き放つ。
1つ1つの攻撃は、ルギアにとってはあまり痛くないものかもしれませんが、ここまで重なればさすがに無視することはできないみたいで、背中に突き刺さっていく攻撃たちは、ルギアの身体を大きくずらしてく。
「ルギャァ……」
身体に刻まれていく複数の傷。これを確認したルギアが、この傷をいやすために薄い緑色に発光。再びじこさいせいによる治療を行い、徐々に体力を回復している姿が確認できた。
「それを待っていましたよ!!フーディン!!『かなしばり』!!」
「フッ!!」
「ギャッ!?」
その回復動作を、一瞬の隙をついて目の前までテレポートしたフーディンが、目を合わせて技を発動。薄く緑色に輝いていたルギアの身体から光が霧散し、回復動作が一瞬のうちに停止されてしまう。
これでしばらくの間はじこさいせいは使えない。
「ルギャアアァァァッ!!」
「フーディン!!戻りなさい!!」
回復技が使えないと悟ったルギアは、口元に水をため込んで、ハイドロポンプの構え。これを、かなしばりを仕掛けてきた張本人であるフーディンに向かって叩きつけようとしたところで、フーディンは再びテレポートを発動し、一瞬でその場から離れる。
「ギャッ!?」
「今です!!」
「リョーカイィ!!」
目の前から標的が消えたことで混乱の表情を見せるルギア。それがさらなる隙となり、この間にテレポートで移動したオーベムが、マタドガスを連れてルギアの懐に現れる。
「マタドガスゥ!!『どくどく』ゥ!!」
ゼロ距離まで近づけたマタドガスが放つのはどくどく。相手をもうどく状態にし、じわじわと体力を奪っていくこの技は、じこさいせいを封じ込められたルギアにとっては大きな障害になる。
「ル……ギャァァッ!!」
じこさいせいを封じられ、もうどくを入れられて、どんどんストレスをためていくルギア。そのストレスを発散させるかのように吠えた彼は、そのまま全身に風を集めていき……
「そんなバレバレな攻撃を許すわけないでしょう?『ダイサイコ』!!」
「もっともっと毒でお化粧しましょうねェ!!『ダイアシッド』ォ!!」
その風を散らすように、2回目の毒の波と虹色の波動が襲い掛かっていく。
ダイサイコはルギアに対していまひとつだし、ダイアシッドは味方の特攻をあげるという能力の兼ね合い上威力が低い。そのため、これら単体では致命傷を与えることはやはりできない。が、ここまでいろんな攻撃が積み重なったことと、じこさいせいができないこと、そしてもうどくにより身体がどんどん蝕まれていることが、ルギアの膨大な体力を少しずつ、しかし確実に削りにいっている。
きっと、まだルギアの体力を半分も削り切れてはいないのだろう。しかし、それでもここまで順調にルギアの体力は削れているし、こちらのポケモンはまだ誰も倒れていない。
今のところは驚くほど順調に戦えている。この調子でいけば、じこさいせいさえ阻止すれば削り切れる可能性すらあるし、何ならもうどくのおかげで耐えるだけで勝つ未来も見えてきた。
「このままいけば、割と楽に勝てそうじゃんねェ!!」
「そうですね……いえ、これってフラグと言うやつなのでは?」
その状況から思わずクララさんとワタクシから漏れる気の抜けた言葉。しかし、この言葉を漏らしたと同時に、ワタクシの頭によぎる嫌な予感。
そして、その嫌な予感とフラグを爆速で回収するように、ルギアが吠える。
「ルギャアアァァァッ!!」
「「っ!?」」
吠えると同時に口元に集まっていく水の塊。しかしそれはハイドロポンプのそれよりももっと密度が濃く、その技がダイストリームであることが分かった。
「『ひかりのかべ』です!!」
「フ……ディッ!?」
「ベム……ッ!?」
それを見てすぐにフーディンとオーベムの位置を確認し、みんなを守れる位置にいると判断したところですぐさま指示。透明に光る壁はワタクシたちの身体を守り、飛んでくる激流の威力を下げることは出来たが、余りにも水の勢いが凄すぎるせいで、壁は一瞬で粉砕。落とし切れなかった残りの水は全てフーディンとオーベムに当たり、同時にダイストリームの追加効果であめが発生。ワタクシたちの周りに、しとしとと雨が降り始める。
「ルギャアアァァァッ!!」
「……これ、やばくねェ?」
「やばいなんてものではないです!!フーディン!!オーベム!!まだ動けますか?!」
「フ……ッ!?」
「べ……ム……ッ!?」
あめが降り始めたところで更に吠えるルギアの胸が、どんどん膨らみ始める。その姿にさらに嫌な予感を感じたワタクシは、もう一度ひかりのかべを行って相手の攻撃を防いでもらうためにフーディンたちに確認を行った。が、どちらも先のダイストリームが痛かったのかすぐに動けない状態であった。
「ル……ギャアアァァァッ!!」
そんな状態の中、ついに放たれるルギアからのエアロブラスト。それは雨も雲も地面も岩も大木も、ありとあらゆるものを巻き込んだ破壊の竜巻となって、ルギアを中心に暴れまわり、全方位を無差別に攻撃し始める。
「な、何なの……よォ……!!馬鹿じゃないのォ……!!」
「ぐぅ……みんな……逃げ……」
気を抜けばワタクシたちも吹き飛ばされてしまいそうな暴風。顔を守るのが精いっぱいで、周りの状況を確認することすらできない中でワタクシたちが出来るのは、必死に逃げることを指示することだけ。だが、ここまで大規模な攻撃だと、逃げれるかどうかなんて運ゲーです。
その運ゲーの結果がどうなったのか。
数十秒に及ぶ暴風が止み、ようやく周りが確認できるようになったワタクシたちが見たもの。
「……これが伝説ですか」
「さっきまで楽勝な空気だったのにィ……何よこれェ……!!」
それは、地面に倒れて伸びている、フーディン、オーベム、ココロモリ。そして、ドラピオン、エンニュート、ペンドラーの姿だった。
「ルギャアアァァァッ!!」
6人も仲間が一瞬に倒された逆転状況。そして、その中心にて吠えるルギアの姿。
その様はまさしく、海神と呼ぶにふさわしい、神々しく、同時に恐ろしい姿だった。