「ギャロップ!!『サイコカッター』!!ヤドラン!!『サイコキネシス』です!!」
「マタドガス!!ヤドキング!!一緒に『ヘドロばくだん』でやっちゃってェ!!」
ルギアに向かって飛んでいく念動力と斬撃に、毒の爆弾。
決して弱いと言えるような威力ではなく、当たればそれなりのダメージが入ると信じている自慢の攻撃。しかしその自信は一瞬のうちに吹き飛ばされ、ワタクシの想像通りに動くことはなくかき消されていく。
「ルギアアアァァァャッ!!」
海神が吠えると同時に放たれる風の弾丸により、全ての攻撃が無惨にも散らされ、こちらの攻撃は全然届くことは無い。
(やはり届きませんか……早くしないと『かなしばり』が解けてしまいます。しかしここから火力を増やすのはどうやっても……)
その光景を見て、ワタクシの頭の中に渦巻くのは焦り。
6人もの仲間を同時に倒されて、さらにかなしばりが解けるまでというタイムリミットまで設けられている現在。早く倒さないとじこさいせいでチャラにされるというのに、そのための火力が準備できないという歯がゆさに、どうしたって手に力が入ってしまう。
爪が手のひらにくい込んでいることにすら気づかずに握っていた手を見て、しかし解こうとすら思うことの出来ない程余裕のないワタクシは、歯を食いしばりながら考えていく。
(ルギアに『じこさいせい』をさせない為には火力が必要ですが、そのために『めいそう』などをしたところで間に合わない。かと言って今のまま攻撃したって、さっきのように風に散らされてはいおしまい。と言うやつです。……本当に、手詰まり感が半端ないですね……)
「セイボリちん!!」
「っ!?げほっ、げほっ……いきなり背中をどつかないでいただけませんかね!?」
「そんな辛気臭い顔してたらァ、誰だってきあいパンチ叩き込みたくなっちゃうでしょォ?」
「あなたのきあいパンチはあくタイプだからワタクシには突き刺さるのですよ!!」
「んな事はどうでも良くてェ!!」
「あなたが振ったんですよね!?」
人が一生懸命頭を回しているところにぶつけられる理不尽な暴力とツッコミに、時と場合とその他もろもろを考えろと言おうとしたところで、クララさんがビシッと指を立てながら言葉を続けていく。
「火力は無いしィ、『じこさいせい』もまた使われるけどォ、でももうどくはしっかり入ってるゥ!!なら、最終的にはどくのダメージの方がとんでもないことになるのォ!!だから命かけて耐えろォ!!」
「……成程」
その内容は激励。
確かに数は減って火力はなくなっているが、相手に入っているのはもうどく。もうどくは、普通のどく状態と違って、時間が経てば経つほど身体を蝕むダメージが増えていく状態異常。耐えれば耐えるほどダメージが増えるということは、最終的にはじこさいせいによる回復速度を余裕で上回ることが出来るということだ。相手がダイマックスしているせいで、毒の廻り自体は確かに遅くはなってしまっているが、いくら伝説であったとしても、この現象に反することは出来ない。
クララさんの言う通り、耐えるだけで勝とうと思えば勝てる。もうどくが入っている時点で、その所まで行くことは出来ている。
(なら、今ワタクシがするべきことは一体何なのか……)
クララさんの言葉を聞いて、今の状況に何が必要なのか、それを頭の中で考えたワタクシは、ひとつの答えにたどり着く。
「一番わかりやすいのはこうですかね?ヤドキング!!『ダイアシッド』です!!」
「……へェ」
隣から変な笑みを向けられたワタクシがした指示は、得意なダイサイコではなくダイアシッド。
理由は単純で、2回目のダイサイコが当たった時点で、既にサイコフィールドの展開が終わっているから。ですが、それだけだと理由としてはちょっと弱い。なぜなら、サイコフィールド下で打つダイサイコはより強力なものとなり、現状ワタクシたちの求めている『強い一撃』という条件を達成することができるものだからだ。
このサイコフィールドだって、エスパータイプを持つルギアも活用できるように見えて、ひこうタイプ故に恩恵を得ることが出来ず、同時にでんこうせっかのような素早く攻撃できる技から逃げられるというサービスも受けることが出来ないので、こちらに利するフィールドでしかないということを考えても、このフィールドを維持するためにもダイサイコを行うのは割と安定だ。
しかし、今回ワタクシがこの手を取らなかったのは、安定では勝てないから。
これからワタクシたちが行うのは、もうどくが回りきるまでの時間稼ぎです。となってくると、こちらがするべき行動というのは攻撃ではなく防御であり、そのために必要なのは瞬間的な火力ではなく、恒久的な能力上昇。そういう点では、時間経過で消えてしまうサイコフィールドよりも、このバトル中はずっと特攻を上げてくれるダイアシッドの方が需要は高い。
最も、ここまで理由を述べてはいるものの、結局はこの攻撃が当たらなければ意味は無いのですが。
「ルギアアアァァァャッ!!」
地面から湧き出てくる7本の毒柱に対して斥力のフィールドを作り出したルギアは、これだけで6本のダイアシッドを無力化。残り一本の柱も、たまたま地面から湧き出るのが遅くて斥力にぶつかっていないだけで、防がれるのは時間の問題だ。
「ヤドキングゥ!!『サイコキネシス』ゥ!!」
が、その最後の1本が当たる直前に、その軌道を直角に曲げ、斥力フィールドから逃げるように離れていく。
ちらりと横を見れば、ニヤニヤと笑みを浮かべながらヤドキングに指示を出しているクララさんの姿。ヤドキングを通して毒を自在に操るのが楽しいらしい。その楽しさを体現するかの如く、操られたダイアシッドは空中を縦横無尽に動き回り、ルギアの視線をあちこちに惑わしながら、ルギアに向かって突撃する瞬間を今か今かとまっていた。
「ギャロップ!!ヤドラン!!」
「マタドガスゥ!!」
この間に他のポケモンも隙をついて攻撃。
ダイアシッドの軌道を見るために上を向いているルギアを下から狙ったサイコカッター、サイコキネシス、ヘドロばくだんによる波状攻撃。意識が上にあるせいで、ルギアは反応が1歩遅れ、しかしそれでも何とか風の弾丸の発射を間に合わせた。
地面に打ち降ろされた弾丸は、地面に着弾すると共に小さな竜巻を起こし、ギャロップたちの攻撃をかき消していく。たったこれだけのことで消されることにやっぱり理不尽さを感じるものの、今回はこれでいいのでぐっとこらえる。なぜなら、ルギアが下の攻撃に対処するということは、今度は上を飛んでいるダイアシッドが自由になるということだから。空中で複雑な起動を描く毒の塊は、この隙をついてルギアの真上から垂直落下を仕掛けていく。
上を見ていたら下から攻撃をされ、それに何とか対処していたら今度は真上から攻撃。そんな忙しい状況に、さすがに反撃が間に合わないと判断したルギアは、自身の身体を羽で包むように広げ、盾にしてこの攻撃を受けきる態勢を取る。
元々防御力の高いルギアがこの行動を取れば、生半可な攻撃はほとんど通ることは無い。その予想通り、ルギアの美しい銀の羽が攻撃を弾き、ダイアシッドによる攻撃は僅かなダメージとして処理される。幸い、攻撃はヒットしているため、こちらの特攻は全員上昇しているものの、ルギアにとっては細事でしかないだろう。
なぜなら、このタイミングでかなしばりが切れたから。
「ルギャ……」
かなしばりが解けたという事は、じこさいせいが使えるということ。そして、このじこさいせいを止められるフーディンも既に倒れてしまっているため、再びかなしばり状態にすることはできない。
結果、ルギアの身体が薄く発光し、毒によって刻まれたダメージを癒していく。
この回復した体力も、もうどくがあるためそう遠くないうちに削られることだろう。しかし、それだけの時間があれば、ルギアがちょっと本気を出してしまえば、それだけでヨロイ島は海の底に沈むことになる。しかも、まだルギアは数回じこさいせいが可能なため、その分猶予はさらに長くなってしまう。
だから、今のじこさいせいを最後に、もうルギアに回復行為はさせない。
「その『じこさいせい』を、最後の1回とさせていただきます!!ヤドキング!!」
「ヤァン……」
ルギアの銀色の翼にしがみつくひとつの影。それはワタクシのポケモンで、先程までダイマックスをしていたヤドキング。
ダイアシッドを打って元の大きさに戻っていたヤドキングは、実は最後に遅れた発射されたダイアシッドの中に潜り込み、一緒に進撃していた。
まるでアクアジェットのように毒液のチューブの中を泳いで……いえ、正確にはクララさんのヤドキングのサイコキネシスのおかげで自在に動けていたのですが……とにかく、そんなダブルヤドキングのコンビネーションによって空中を自在に動いていたワタクシのヤドキングなのですが、そのヤドキングが翼で身を固めているルギアに向かって、ダイアシッドごと突っ込んだ事によってこの状況が出来上がった。
そして、ここまで接近してしまえば、次のヤドキングの攻撃は無条件で成功する。
「『ぶきみなじゅもん』です!!」
「ヤドッ!!」
「ルギャッ!?」
選択した技はぶきみなじゅもん。
その効果は、この攻撃を受けたポケモンが直前に使っていた技のエネルギーを大きく失わせ、その技を放つためのスタミナを奪い去ってしまうというもの。
そして今回ルギアが最後に使った技はじこさいせい。
これで、ルギアのじこさいせいを使うためのエネルギーは完全に奪い去ることに成功した。
「ルギアアアァァァャッ!!……ッ!?」
ぶきみなじゅもんを受けたルギアは、慌てて翼を強く振り回してヤドキングを排除。ワタクシの近くまで行き飛ばされたヤドキングは地面にたたきつけられてしまい、大きなダメージを受けることとなる。そして、その様子を見届けたルギアは慌ててじこさいせいを再度行おうとするものの、その身体に緑の光が集まることはなく、ルギアの傷も癒えることはなかった。
「言ったでしょう!!それが最後の1回と!!」
「ナイスゥセイボリちん!!さぁこっからはひたすら我慢比べと行くぞォ!!」
もうルギアが回復することはない。
ヤドキングが受けたダメージは馬鹿にならないが、それ以上にルギアの回復行動を永久的に封印することが出来たことが何よりも大きい。後はこちらは耐えるだけで、ルギアは勝手に毒で倒れることとなる。
「ルギアアアァァァャッ!!」
もう相手に勝つにはさっさと撃破するしかない。それを悟ったルギアは、肺を大きく膨らませて本気の風の弾丸を打つ準備を整え始める。
「させるわけねェだろォ!!ヤドラン!!『ダイアシッド』ォ!!ヤドキングとマタドガスも『ヘドロばくだん』!!」
「こちらも行きましょう!!ヤドキング!!ヤドラン!!『サイコキネシス』!!ギャロップは『サイコカッター』!!」
「ルギャッ!?」
しかし、当然ながらその準備を許すほどワタクシたちは甘くない。
焦りからか、大きな攻撃の前隙をさらしてくれたルギアに向かって、こちらの残りポケモンによる一斉掃射。
ダイマックス技も加わった、現状こちらが放てる最高火力の弾幕は、ルギアの溜め行動を完全につぶし切り、同時に大きなダメージを叩き込むことに成功。肺に大きく取り込んでいた空気は、お腹に直撃した数多の攻撃によって無理やり吐き出されることとなり、上に向かって口を開けていたルギアから吐き出され、空を覆う黒い雲に向かって突き進んでいく。
「ここに来て無茶苦茶順調ゥ!!セイボリちんとうちの、歴戦コンビをなめんなァ!!」
「結成してまだ数時間ですが……順調なのは違いありません。同門の力を見せつけてやりますよ!!」
払った代償は大きいが、それでも勝ちへの道筋が見えてきた。
あの伝説のポケモンに対して勝ち星をあげられる。その未来が少し見えてきたという事実に、いやが応にも力が入る。
(ここで勝てば、また間違いなく彼に近づける……!!)
ワイルドエリアでは、ダイマックスした野生のポケモンに後れを取ってしまった嫌な記憶があり、それを乗り越えられる可能性が、今目の前に広がっている。
今度こそ乗り越えるために。
もう、あんな惨めな思いはしないために。
そんな気持ちが、ワタクシの頭の中をどんどんと広がっていく。
……だからなのだろう。
今しがた、ルギアが逸れにはなった風が不発ではなく、狙って放たれたものだと気づけなかったのは。
「みなさん!!今のうちに━━」
「……雨?」
「え?」
今から最後の戦いに向けて、万全な準備を整えようとしたところにクララさんの声がやけに響き、思わず上を見る。
「……なんですか、あれは!!」
「や、やばそうな匂いがプンプンするんだけどォ!?」
その先にあったのは、巨大な赤黒い積乱雲。
先ほどルギアが放った風が原因で、ダイマックスエネルギーを内包した雲がかき集められて急速に成長し、その中でゴロゴロといかにも危険な音が聞こえ、同時にぽつりぽつりと雨が降り始めた。そして、大きく育った積乱雲に比例するように雨脚は強くなり、数秒後にはまさしく、バケツをひっくり返したかのような大雨と、それに伴って雷がいたるところに降り注ぎ始める。
「ルギアアアァァァャッ!!」
その中心で、まるで自身の怒りを表すかのように叫ぶ、銀色のポケモン。
空気を震わせ、豪雨の中だというのに一切の輝きを失わずに広げられる銀色の翼。
同時に、ワタクシの頭の中をよぎる1つの伝説。
曰く、ルギアは40日間止むこのない嵐を起こすことができる。
(この嵐がまさしくそれだというのですか!?)
数歩先を確認することすら難しい雷雨。それを一身に受けるワタクシたちは、自身の身体をかばうことが精いっぱいで、身動きが取れない。
「スウウウゥゥゥ……ッ」
「「っ!?」」
そんな中、唯一自由に動けるルギアが行った行動は、大きく息を吸う事。
こんな悪天候の中であろうと、一切の不自由を見せることなく大きくい空気をため込むその姿は、先ほどワタクシたちが止めたそれよりもさらに大きく、そして深い。
同時に、ため込んだ空気と比例するかのように大きく膨らんだルギアのお腹が、次に放つ攻撃の危険度を知らせていた。
あれだけは絶対に止めなくてはいけない。
(ですが……嵐が強すぎる……ッ!!)
ルギアの攻撃をいますぐ止めなくてはいけないことは分かっているのに、身体に打ち付ける雨と風が強すぎて動きが取れず、たとえ動けたとしても嵐の音が凄すぎて、そもそもこちらの指示が届かない。
ふと視線を横に動かせば、クララさんも同じ状況なのか、メイクが落ちないように顔を覆いながら、声にならない叫び声をあげることしかできていない。これではクララさんにお願いすることも構わないだろう。
「「ヤドッ!!」」
「ドガッ!!」
「ルロッ!!」
「あ、あなたたち……っ!!」
そんな視界不良の中でも確かに確認できたのは、ワタクシたちを守るために前に出て、指示を貰わずとも必死に技を構える健気な仲間たち。
自身を犠牲にしてでも守ろうとするその姿勢に思わず声を上げて止めようとするものの、ルギアから放たれる風の威力が1段上がり、無理やりこちらの口を閉ざしてくる。
(このままではみんなが……っ!!)
なにかしなくてはいけないとわかっているのに、それでも動くことが出来ない。そんな焦れったい時間を過ごすこと数秒。遂にルギアの口より攻撃が解き放たれる。
「ルギアアアァァァャッ!!」
エアロブラスト。
圧縮された空気を吐き出し、全てをすり潰すその攻撃は、今までは弾丸として放っていたのに、今回は竜巻を横倒しにしたものを吐き出し、まっすぐこちらに向けて飛ばしてくる。
風の渦はありとあらゆるものを巻き込み、真正面から見たそれは、こちらの命をも巻き込まんとしている死神の攻撃にしか見えず、生命の危機を伝えてくるその渦を前に、ワタクシが出来ることは何も無い。
只ひたすら、打ち付ける風と雨に耐えるために、必死に顔を腕で守るだけ。
「う……ぐぅ……っ」
どんどん火度kゥなる嵐によって、もう何も確認できない状況の中、それでも盾になってくれた仲間がどうなったのかを確認したくて必死にこらえるワタクシとクララさんは、とにかく耐えて、風が通り抜けるのを待っていた。
時間にして数十秒。されど、今までのどの数十秒よりも長く感じた時を経て、ようやくエアロブラストの衝撃が消えたのを理解した瞬間、ワタクシはすぐさま腕を払い、顔に着いた水滴を拭い、前を見る。
「「「「……」」」」
そこには、ワタクシのヤドキングとギャロップ。そして、クララさんのヤドランとマタドガスが、目を回して倒れている姿があった。
これで残りは、ワタクシのヤドランと、クララさんのヤドキングのみ。
12人いた頼もしい仲間たちが、遂に残り2人まで削られてしまった。
「これは……どうすれば……」
「マジヤバァ……何よォ……」
絶望。
まだ戦えるポケモンはいるのに、ワタクシたちの心の折れる音が聞こえてきそうなほど、どうしようもない場面。
毒も効いているだろうし、こちらの攻撃だって効いている。じこさいせいもされない状況だから、耐えれば勝てるし、その時間だってそんなに長くは無いはずだ。
それでも、その少しの時間さえ、稼げる気がしなかった。
(やはり……ワタクシは……)
このままでは、あのウルガモスの時と同じだ。
結局何も出来ず、怯えるだけになってしまう。
その現実が、お前はまるで成長していない落ちこぼれだと、あの憎い2人組が語りかけている気がして。
「「ヤァン!!」」
「「!!」」
そんな打ちひしがれいるワタクシたちの前に、ヤドランたちが声を上げながら立っていた。
ワタクシたちの最後のポケモンであり、先の攻撃の余波を受けたせいで体力を大きく削られて、絶対に勝てないという現実をたたきつけられて、何よりも自分の主が折れているのを見せられて。
それでも尚、凛々しく声を上げながら、ヤドランたちは立っていた。
「ヤドキング……」
「ヤドラン……」
その姿を見て思い出すのは、ウルガモスの時に進化したヤドランの姿。
あの時も、折れたワタクシを励ますように声を上げて前に出て、そして進化して立ち向かった。
ワタクシに、大きな勇気を与えながら。
「……そうでしたね。まだ、最高の相棒であるあなたがいます」
今回もまた、そんな相棒に勇気を貰う。
(全く、情けない)
やっぱりワタクシは何も成長できていない。
リーグに出て、いい試合ができたと思っていたけど、まだまだ甘い。
「そうです。彼の横に立つためにも、こんなことでへこたれてはいけません!!」
「セイボリちん……」
隣で同じように意気消沈していたクララさんを横目に、ワタクシは前を見据える。
彼ならきっと、こんな状況でも絶対に諦めない。なら、ワタクシもここで諦める理由にはならない。
「で、でもォ……ここからどうすればァ……」
「……分かりません」
それでも気持ちだけでどうになるレベルは超えてしまっている現状に対して、まだ心を持ち直せないクララさんのしてきた質問は至極真っ当で、ワタクシ自身もこの問いに正解は出せない。
けど、それでも……
「ヤドランが諦めてなくて、まだワタクシの心に火があるのなら……立ち向かいたい!!」
「セイボリちん……」
「ルギアアアァァァャッ!!」
視線の前で、最後のトドメと言わんばかりに再び風を集めるルギア。
この攻撃は、絶対に防げない。それでも、ここから逃げることだけはしたくない。
「ヤドラン!!本気の『サイコキネシス』の準備を!!」
「ああもうゥ!!うちだってこんな所で終わりたくなんか無いィ!!ヤドキング!!ありったけの力で『ヘドロばくだん』!!」
ワタクシの無謀とも言える行動に当てられたクララさんも、心の底の言葉を吐き出しながら立ち向かう。
下手したら命を落としかねない。しかし、ここで逃げて道場を壊されたら、それこそ死ぬ以上の後悔に苛まれる。
たとえ勝てないとわかっていても、それでも今は引きたくない。
(奇跡でもなんでもいいです!!今この時くらいは、根性を見せろセイボリー!!)
ルギアの口元に溜まった風が、いよいよ解き放たれる時間がやってきた。
ここでこのヨロイ島の命運が決まる。
その時をしっかりと目に焼きつけるために、視線を向けた瞬間。
「ルギャッ!?」
「「……え?」」
ルギアの顔を、強烈な激流が貫いた。
「ギャ……ァ……」
「「ヤァンッ!!」」
水に貫かれたルギアは、これによりエアロブラスト打てずに大ダメージ。そのルギアに対して、追撃となる形で、技を準備していたヤドランとヤドキングの攻撃がさらに突き刺さった。そして、元々蓄積されていた毒のダメージが更に追加されることによって、ルギアはついに倒れることとなる。
「い、一体何が……」
「セイボリちん!!あれ!!」
急に倒れたルギアに呆気に取られていると、クララさんが後ろを指差しながら声をあげていたので、今度はそちら人視線を動かす。
「ガメエエエェェェッ!!」
「クララちゃん、セイボリーちゃん、よく頑張ったわね。そして遅れてごめんなさい。島のあちこちにはぐれていたみんなを助けていたら遅れちゃったわ。……でも、同時にあんたたちなら、ちゃんとあたしが到着するまで耐えてくれるって信じてたから。やっぱりこうしてよかったわね。……本当に、頑張ってくれてありがとう」
そこにいたのは、キョダイホウゲキを打ち終えた姿で吠えているキョダイマックスカメックスを従えた、この道場の主、マスタード師匠の伴侶であるミツバさん。
「……ははは、本当に……よかったぁ……」
「た、助かったよォ……」
その頼もしすぎる姿を見たワタクシたちは、腰が抜けて地面座り込む。
「本当にお疲れ様。後はゆっくり休んでちょうだい」
「そうさせていただきます」
「つ゛か゛れ゛た゛ァ゛……」
いつのまにか雨は上がり、空を見れば未だに黒いながらも、風もかみなりも、積乱雲もない空へと戻っていた。
(本当に、まだまだ遠いですね……)
その空を見上げ、改めて感じる自分の未熟さ。
結果を見ればヨロイ島は守られたという喜ばしい状態だ。しかし、今回もまた、結局助けられてしまった。
(もっと……強くならないとですね……)
倒れるルギアを見ながらワタクシは、改めて心に誓う。
もっと強くなり、彼の横に立つために。
セイボリー&クララ(&ミツバ)VSルギア
勝者、セイボリー&クララ(&ミツバ)
ミツバ
実機でも戦うことの出来るマスタードさんの奥さんですね。使うポケモンは、主人公がヨロイ島で選択を迫られる、フシギダネとゼニガメの選ばなかった方で、キョダイマックスさせる際は、ハンドボールのように片手で鷲掴みをし、風圧を起こす勢いでぶん投げます。恐らく、剣盾の中では一番力が強いキャラなのではないでしょうか?恐ろしいですね。地味に戦う条件が厳しく、戦ったことのない方も多そうです。
まさかの決着ですね。この形にしたのは、純粋にネズさんとの力の差を表したかったからです。
1人で勝ったネズさんと、2人では恐らく負けていたセイボリーさんとクララさん。まだまだ、上は高そうです。