【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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326話

『べべッ、べべッ!!』

「ウーラオス!!『すいりゅうれんだ』!!」

「ウーラオス!!『あんこくきょうだ』!!」

 

 空中より飛来する、宇宙人のような見た目をしたポケモンの大軍。

 

 空を埋めつくしていると言っても過言ではないほどの物量による力押しに対して、こちらは俺と師匠の2人のウーラオスが、力の限り握りしめた拳を振り回し、どんどん吹き飛ばしていた。

 

 軍団として襲いかかってきている宇宙人のようなポケモンたちは、ひとりひとりの強さはそこまでない。正直、何回戦ったところで負けることは無いだろう。

 

 しかし、こいつらの真に恐ろしいところはその数だ。

 

 ここまでの攻撃によって10人くらい倒したというのに、全く恐れることなく、その穴を埋めるように、今度は20人ものポケモンが迫ってくる。

 

『べべべ!!』

 

 そんな1軍団のポケモンたちが一斉に放ってくるのはベノムショック。その威力はやはりそんなに高いようには見えず、これもまた単発を受ける程度なら大して痛くは無い。が、先も言った通り、これが軍団の攻撃として飛んでくるとなると話は変わってくる。小さな攻撃だろうと、20発もまとめて受けようものなら流石にそこそこのダメージは避けられない。しかも、その攻撃を放っているものが攻撃を受けた子とは別のポケモンが攻撃をしてくるせいで、攻撃の前隙や後隙という概念が相手側だけ存在しないという状態になってしまっている。

 

 今もまさに、拳を振り抜いたウーラオスの後隙を狙うように、毒の雨が降り注いでいた。

 

「ネール!!お願い!!」

 

 しかし、あちらの攻撃がこちらに届くことは無い。

 

 ウーラオスに向かって飛んできた毒の雨は、その全てを鈍色に輝くボディを持つ巨体に受け止められ、効果を発揮することなく地面へと落ちていった。

 

 はがねタイプという、どくタイプに対して最強の耐性を誇るタイプを持つハガネールが、ウーラオスへの攻撃の全てを受け止め、守ってくれていた。

 

「相手がどくタイプなら、あたしが絶対に通しません!!」

 

 可愛らしい外見からは想像できないほど、心強く、頼もしい発言をしながら敵の攻撃全てを弾いていくその様は、さながら正義のヒーローのようで、実はそういったものが好きなミカンさんは、人によっては不満を感じるかもしれないが、確かにちょっとした嬉しさを含んだ表情を浮かべていた。その姿が可愛らしく、同時に危ない状況だと言うのに俺の心を軽くしてくれる。

 

 相手ほどの数がいる訳では無いけど、こっちだって、師匠とミカンさんという心強い仲間がいる。それを改めて認識することで、俺のテンションはどんどん上がっていく。

 

「エースバーンは『かえんボール』でイオルブは『サイコキネシス』!!ストリンダーは『オーバードライブ』!!」

「コジョンドは『ブレイズキック』でルガルガンは『ストーンエッジ』、ジャラランガは『スケイルノイズ』!!」

「ドリュウズは『アイアンヘッド』でジバコイルとアカリちゃんは『10まんボルト』です!!」

 

 そのテンションを下げないようにとにかく攻撃を連打して、相手の波に飲まれないように前線を上げていく。そんな俺の考えを師匠とミカンさんも察してくれており、合わせるようにして攻撃を重ねてくれた。そのタイミングと言い、威力と言い、察しの良さと言い、さすが元ガラルチャンピオンと、現ジョウト地方ジムリーダーだと痛感させてくれる。今この場においては本当に頼もしい。

 

 

「アアァァゴオォォォッ!!」

 

 

 そうやって相手の群れを少しずつ、けど着実に削っているところに響き渡るのは、向こうの大将である蜂と龍を掛け合わせたような見た目をした、群れを成しているポケモンの進化系に見える紫のポケモン。

 

 ダイマックス状態にあるその大将は、凶悪そうな見た目をしている尻尾の針の穴をこちらに向け、そこから毒々しい液体の塊を何発も発射。おそらくダイアシッドと思われるそれを、弾幕のようにばらまいてきた。

 

「何度やっても同じことです!!ネール!!」

 

 普通に戦っていたら思わず身体が硬直してしまう程の物量攻撃。しかし今回においては、対どくタイプ最強の頼れる壁が存在してくれている。

 

 みんなの前にその巨体を踊り出し、飛んでくる毒液をすべてその身に受けるハガネールは、しかしタイプ上絶対に有利なため、微小のダメージを負う事すらなく凌ぎきる。

 

「アーマーガア『アイアンヘッド』!!レントラーは『ワイルドボルト』!!ウータオスは『すいりゅうれんだ』!!」

「ナットレイ『ジャイロボール』!!クチートは『アイアンヘッド』です!!」

「アーマーガアは『ドリルくちばし』でワタシラガは『かふんだんご』、ウーラオスは『あんこくきょうだ』!!」

 

 相手の攻撃を耐えたこちらはすぐさま反撃状態に移行。ハガネールの後ろから一斉に飛び出し、各々が得意としている技をもって、再び群れ狩りを開始していく。

 

「これでまた3人くらいは倒れてくれたけど……くそ、数が多すぎる……」

「こりゃ骨が折れる戦いじゃな……」

「やっぱり、あの親玉を倒さないとどうにもならないみたいですね……」

 

 次々と倒れていくエイリアンポケモンたち。しかし、その倒れた数以上のポケモンがすぐに補填に入り、また攻撃を仕掛けて来る。

 

 正直、現状のままならどこまでだって耐えられる気がするから、持久戦をするかまわない。しかし、問題は別の所にある。

 

 

「シラアアァァァッ!!」

「クロオオォォォッ!!」

「キュアアァァァッ!!」

 

 

「ギュアアアァァァッ!!」

「ディアアアァァァッ!!」

「パルウウウゥゥゥッ!!」

 

 同じくシュートシティの入り口。少し離れたところで行われている、とてもじゃないけどこの世のものとは思えないバトル光景。

 

 放たれるプレッシャーはすさまじく、正直目の前のこの軍団を相手していることよりも恐ろしい。

 

 妹のユウリの友達が、このシュートシティを守るために呼び出してくれたシンオウ地方の伝説のポケモンと、ダイマックスして暴れるイッシュ地方の伝説のポケモン。

 

 どちらもがその名の通り、各地方で伝説を残したとてつもないポケモンたち。

 

 このうちのどれか1人いただけでもとんでもない被害が起きるのに、それが6人もそろっているのだから、正直何が起きるのかが全く読むことができない。

 

(できることなら、こっちをさっさと決着つけてあっちの手助け……が出来るかはわかんないけど、せめて流れ弾が街に行くのを防ぐくらいはしたいよな……)

 

 横目でディアルガたちのバトルを見ながら師匠やミカンさんの方に意識を向けてみると、2人も同じことを考えているようで、どうにかして相手の親玉を倒して、速くあちらの援護に行きたいと言った表情を浮かべていた。やはり伝説のポケモン同士のぶつかり合いは、実力者の2人から見ても、見ていて安心できるものではないみたいだ。

 

 だが、速攻が難しい理由もしっかりとある。その理由はダイマックス。

 

 俺と師匠が同時にダイマックスを切れば、あの親玉に向かって攻撃が届く可能性がかなり高い。ミカンさんはダイマックスバンドを持っていないだろうから、残念ながらこの攻撃に参加することはないけど、それでも2人分の攻撃を重ねれば、これくらいの壁なら何とかなると思っている。

 

(それにミカンさん……代わりにちゃんと『アレ』を持っているらしいし……)

 

 ハガネールの首元にある、遺伝子マークのようなものが刻まれている丸い石を見ながら、俺は今ここでダイマックスを切った時のことを考える。

 

(ここでダイマックスを切ったら、間違いなくディアルガたちのバトルに参加するときはダイマックスは終わっている。伝説のポケモンたちと、俺たちの差がどれだけあるかは知らないけど、その時にこっちの奥の手が無いのは……流石にちょっと不安だよな……)

 

 恐らく『アレ』が出来るミカンさんは大丈夫かもしれないが、時間制限のあるダイマックスが一番の切り札の俺と師匠にとっては、今目の前で闘っているこの軍団だけに注意すればいいわけじゃないので、切りどころはすごく気にする必要がある。

 

 目の前のバトルに勝つことは簡単かもしれないが、その後の戦いにストレスを作るのはちょっと違う気がする。

 

(あとに回すべきか……今使うべきか……)

 

「ギュアアアァァァッ!!」

「っ!?」

「ほう……」

 

 先のことについてどうするべきか悩んでいたら、急に俺の耳元でギラティナと呼ばれていたポケモンの声が響いてくる。そのことに驚いて、慌てて向こうの方を見てみれば、そこにはこちらに視線を送りながらも、依然としてレシラムたちと互角の戦いを繰り広げているギラティナの姿。

 

 その目からは、『こっちは大丈夫だから、油断せずに全力を出せ』という意志を感じた気がした。

 

「ふふふ……なかなか気概のあるやつじゃな……」

「師匠……やはり師匠も……?」

 

 と思っていたら、隣にいる師匠も嬉しそうな表情を浮かべながら、俺と同じようなことを感じ取っていた。

 

「ディアルガにパルキア、そしてギラティナは、本当にフリアたちのことを気に入っているみたいだな。あの3人の役に立つためにも、絶対にここは自分たちが抑えるという気合を感じる。大丈夫だマサルよ。ワシらはこちらに全力を出しても特に問題はない」

「フリアさんやギラティナたちのことは、あたしにはよくわかりませんけど……あのポケモンたちから感じる熱はあたしでもよく分かります。マスタードさんの言う通り、多分物凄い絆でつながっているんだと思います。……伝説のポケモンと、どうやってそんな仲になったのかは疑問ですけど……」

 

 そして、そんな師匠の言葉にさらに便乗するミカンさん。

 

 俺以上に実力のある2人が、ここまではっきり言ってくれるのであれば、信じてもいいんだろう。

 

「わかりました。じゃあ……ここは全力であの親玉を倒して、あとはギラティナたちを信じて、街の守りに徹しましょう!!」

「じゃな。さて、後先考えずに戦えるのは、実に気が楽だ!!」

「あたしも、しっかりみなさんを支えます!!防御は任せてください!!」

 

 だとすれば、こちらのやることは決まっている。俺と師匠はウーラオスをボールに戻しながらダイマックスバンドを解放し、ミカンさんはキーストーンを輝かせて、ハガネールの首元にある石と反応させる。

 

 

「いくぞウーラオス!!みんなの街を守るために、本気の拳を握り締めろ!!」

「ウーラオスよ、怒張せよ!!その拳で、天をも貫け!!」

 

 

「いくよネール!!あなたの守りを、みんなのために!!」

 

 赤く輝くダイマックスボールと、虹色に輝くキーストーン。

 

 暗い夜の中でも、希望の光を放つかのように輝く3つの光は、2つは空中にて弾け、1つは地面を這うハガネールを包み込んで、解き放つ。

 

 

「「ウラアアアァァァッ!!」」

 

 

「グゥアアアァァァッ!!」

 

 光が弾けると同時に現れる、大きな3つの影。

 

 1つは、赤と白のカラーリングに、雄たけびを上げているかのような、怒りに満ちた表情を浮かべながら、どっしりと拳を構える、『怒りの化身』と呼ばれるウーラオス、いちげきのすがた。

 

 1つは、青と白のカラーリングに、まるで凪のように落ち着いた表情を浮かべ、片足立ちの静かな構えを取り、ゆらゆらと相手を見据える静のウーラオス、れんげきのすがた。

 

 そして最後の1つは、胴体側面及び、突起と尻尾の先端部分の金属がはがれ、そのはがれた金属片を首の周りに襟巻のように浮遊回転させ、内部にため込んだメガシンカエネルギーの影響で、より強固な結晶体と化した組織を惜しげもなく見せびらかす白銀の巨体。ダイマックスをしていないのに、それでも10,5メートルと言う巨体にて、迫りくる軍勢に対してドンと構える最硬の盾、メガハガネール。

 

 キョダイマックス2つと、メガシンカ1つと言う強力な強化状態が3つ並んだ姿は、当事者である自分ですら、まるで夢を見ているかの様な特別な圧力がある。

 

 正直、全然負ける気はしない。

 

 

「鍛え上げたこの拳で!!道を切り開け!!『キョダイイチゲキ』!!」

「何千、何万と振るった拳、全ては今、この時のために!!『キョダイレンゲキ』!!」

「「ウラアアァァァッ!!」」

 

 

「ネール!!あたしたちも道を作るよ!!『アイアンテール』!!」

「グゥアアッ!!」

 

 準備が出来たと同時に、ウーラオスとハガネールが放つ本気の攻撃。

 

 俺のウーラオスは、赤黒く染まった右腕を腰の横に置き、力をぐっとため込み、正拳突きと共に解放。オレンジ色の波動としてエイリアンの軍団に向かって飛んでいき、全てを一撃の下で破壊するとんでもない威力となって突き刺さっていく。

 

 次に師匠のウーラオス。こちらは両手に水の波動をため込み、緩やかに、しかし力強く、流れるように両腕を振るう。すると、両手から放たれた水が、無数の衝撃となって相手に襲い掛かっていく。その衝撃1つ1つがとてつもない威力になっており、連撃技の衝撃のどれか1つが通っただけで、近くにいるポケモンをなぎ倒していく。

 

 そして最後にミカンさんのハガネール。ダイマックスした状態とまではいかずとも、そこに迫る巨体と鋼鉄の身体から放たれる力任せのフルスイングは、ただの力任せな攻撃だからこそ防ぎようがなく、純粋な暴力として敵に襲い掛かっていく。その威力と風圧は、身体の小さいエイリアンのポケモンで受け止められるわけがない。

 

 そんな3つの攻撃が重なり、同時に相手を襲うことによって、エイリアンポケモンの群れが一瞬で瓦解。数人倒すのにそこそこの時間がかかっていた時とは全く違い、この一撃をもって群れの半数以上が吹き飛んでいった。

 

「今だみんな!!」

「ウーラオスとハガネールが作った道をしっかりつき進め!!」

「あたしたちは守り寄りでお願いします!!相手の得意技はたぶん、どくタイプとドラゴンタイプだから、あたしたちが守りの要としてみんなを支えます!!」

 

 この瞬間を最大の攻撃チャンスととらえたこちらは一斉に前にダッシュ。ウーラオスとハガネール以外の全員による突撃は、かなり壮観な様相となっている。

 

 親玉への道筋もしっかりできているから、ここまでくれば押し切るのも時間の問題だろう。

 

 もっとも、相手がそれを許してくれれば、の話だが……。

 

 

「アアァァゴオォォォッ!!」

 

 

 いきなり起こった、自身の仲間の一斉リタイアと、自身を襲い掛かる強烈な圧。

 

 自身を襲ってきた圧倒的な不利状況を前に、しかし群れの王としてか、野生の本能としてか、逆境魂を燃やすかの如く声を荒げた紫のポケモンは、尻尾の針に毒液を充填。ダイアシッドの準備を進めていった。

 

「『ダイアシッド』……大丈夫です!!あたしたちが受け止めます!!」

 

 その様を見てデンリュウ以外のミカンさんのポケモンたちが、みんなを守るように一歩前へ。どく技を無効にして、その隙に一気に前へ詰める準備を進めていく。

 

 やはり野生のポケモンと言うこともあって、この辺の動きにはちょっと粗さが目立つ。さっきは、逆境に燃える姿を見て、ここから一波乱あると思ったけど、この調子なら杞憂で済むかもしれない。……しかし、それでも、俺の心の隅に、何かが引っかかって。

 

(なんだ……どうしてあいつは()()()()()()()()()んだ?)

 

 しかし、ついぞその違和感に気づくことはなく、紫の龍が針の穴からダイアシッドを発射した。

 

 

 

 

 すぐ近くにいた、野生のバリコオルたちに向かって。

 

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

 紫の龍が突如行った、関係ないポケモンへの八つ当たりのような一撃。それはバリコオルたちにとっても予想外の攻撃で、急にとんできた攻撃に対して対処なんてできる訳もなく、簡単に被弾して吹き飛んでいく。しかも、1回当てて満足するのではなく、針の中に溜め込んだダイアシッドを参3回に分割して発射し、2回目はコオリッポの、3回目はイシヘンジンの群れに向かってこれを放った。

 

 一見すれば、全く関係ないところを攻撃するというこちらにとっては隙を晒してくれるありがたい攻撃にしか見えない。しかし、この攻撃の意図に気づいた俺と師匠、ミカンさんは、心の中にあった余裕が一瞬で消えていく。

 

 何故なら、今の行動で紫の龍と、エイリアンの軍団全員が、身体をオレンジ色に3回光らせたから。

 

 ポケモンの技においていくつか存在する、相手を攻撃しながら何かしらの効果を発揮するタイプの技は、基本的には相手に当たらなければその効力を発揮することは出来ない。例えば、相手を殴りながら自身の火力を上げられるグロウパンチやダイナックルは、ゴーストタイプで透かされると攻撃は上がらないし、攻撃しながら相手の素早さを下げるがんせきふうじ等も、当たらなければ素早さは下がらない。今回で言えば、特攻を上げられるダイアシッドは、はがねタイプのポケモンには効果が無いため、当たっても特攻上昇の恩恵は得られない。勿論、一部例外はいるし、技の使い方や解釈次第で工夫は効いたりするけど、少なくともダイアシッドはそこまで器用な技では無いはずだ。

 

 しかし逆に言えば、この追加効果の恩恵は、技が当たりさえすればなんだっていい。

 

「あいつ、『ダイアシッド』の恩恵を受けるために、態々周りのポケモンを攻撃しやがった!!」

 

 今まではハガネールが受けたために恩恵が発動することは無かったが、それが他のポケモンに対して当たったことで効果が発動。そしてダイマックス技の恩恵は、放ったポケモンの味方全員に発揮されるため、紫の龍と、エイリアンの軍団全員が受け取ってしまった。それもただ受けとったのではなく、3回に分けて放ったことにより、3回分の強化として。

 

 

「アアァァゴオォォォッ!!」

 

 

『べべべべべ!!』

 

「まずい!!全員一度下がれ!!」

 

 強化を受けた瞬間、エイリアンの軍団が一斉にベノムショックを発射。その全員が、特攻が3段階も上昇しているせいで、1つ1つが無視できない攻撃に変わり始めていた。

 

 しかし、これだけならまだ焦る必要はなかった。なんせ、いくら強化されようが所詮はどくタイプの技。タイプ相性をひっくり返せる訳では無い以上、ミカンさんのポケモンの前では全てが無意味だ。しかも、耐久力が上がっている訳では無いから、今まで通りミカンさんのポケモンが受け止め、俺と師匠のポケモンが攻撃することでどうとでもなる。

 

 問題は親玉の龍の方。

 

 そちらが構えている技。それが何なのかは分からない。しかし少なくとも、尻尾の針の穴から漏れだしているものから、それが()()()()()()()()()()()()()はわかった。

 

「みんな!!下がって!!アカリちゃんは『10まんボルト』!!」

「ルガルガン、コジョンド、『ストーンエッジ』!!ジャラランガは『スケイルノイズ』!!」

「エースバーンは『かえんボール』!!ストリンダーは『オーバードライブ』!!」

 

 はがねタイプにほのおタイプの技はこうかばつぐん。それに、はがねタイプのポケモンは基本的に物理に強く、特殊に弱い傾向にある。特殊攻撃が得意そうな紫の龍たち相手にガードできていたのも、耐久が高いからではなく、タイプが有利だからという面が強い。

 

 そんな所に、こんな攻撃を叩き込まれたら溜まったものでは無い。

 

 師匠の言葉からワンテンポ遅れて反応した俺とミカンさんは、慌ててポケモンを下がらせようとしたけど、火の勢いが強すぎて間に合わない。なので、少しでも火の手を遅らせようと、炎に対してまだ抗えそうなメンバーで攻撃をしながら退却を開始。

 

 しかし、炎の勢いが強すぎることと、今までは全て受け止めて機能していなかったベノムショックも合わさって、とてもじゃないけど受け止めることが出来なくなったその攻撃は、こちらの攻撃を打ち破り、減衰したとはいえ余波を爆発させ、俺たちのポケモンほぼ全員にそこそこのダメージを叩き込んできた。

 

「ごめんなさい、あたしがしっかり守れなくて……」

「いや、オヌシのせいでは無い。あヤツらを軽んじたワシの責任じゃ」

「俺の責任でもあります。……強いですね、あの子たち」

 

 今の一連のやり取りを見て、俺たちの表情からは全ての油断が消える。

 

 さっさと勝てる楽勝の相手。その考えは一瞬で消え、全員の表情がひきしまる。

 

 ギラティナの言う通り、本気でいかないとダメだ。

 

「すぅ〜……ふぅ……よし、いくぞ!!」

 

 深呼吸をひとつした俺は、改めて前を見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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