「跳ねるわよ!!しっかり耐えてよね!!」
「わかってるわ!!」
不安定な足場でバランスを取っていると足元から聞こえる大声。それに視線をよこすことなく返事を返したわたしは、じっと、空に見える物体をひたすら視界に入れ続ける。
「ポポ……ポゥ……!!」
すると、見つめている対象のポケモンから、図体の割には可愛らしい声を上げながら、大きな緑色の物体……おそらくタネばくだんと思われる攻撃が、無数に落下してくるのを確認した。
「グソクムシャ!!カマスジョー!!『アクアブレイク』!!アズマオウは『メガホーン』!!相殺することは考えなくていいわ!!とにかく横にそらすことを重視しなさい!!」
その攻撃に対して、直撃しそうな技にのみ狙いを搾って技を放っていく。
タイプ相性上絶対勝てないと割り切ってはいるので、相手の技を壊すのではなく、とにかくそらすことに意識を集中させる。幸い、街を背に戦う防衛戦では無いため、周りに被害が出ても誰の迷惑になることは無い。せいぜいが、一時的にこの道路が使えなくなるくらいだろう。それくらいならこの夜が明けたあとで修復すれば良い。このポケモンを止められなかった時に起きてしまうだろうバウタウンの被害に比べたら些細なものだ。
(本当はそんな被害すら出したくは無いけど……背に腹は抱えられないものね)
今の自分の優先順位を正しく理解する。それがこの場において大事なことだと思うから、これだけはしっかりと意識しておく。
(今はとにかく、バウタウンのことを……っ!?)
自分の中で目標を定めたところでわたしの視界の中に入ってきたのは、こちらの攻撃で弾ききれなかった大きな緑色の種。空を飛んでる巨大ポケモンが落としたタネばくだんの1部が弾ききれず、3つほどがわたしたちの進行方向に墜落したところだった。
「ソニア!!」
「わかってる……わよっ!!」
慌ててソニアに声をかけると、ソニアはアクセルとブレーキの踏み加減を巧みに操りながらハンドルを操作し、綺麗な蛇行運転(蛇行の時点できれいではないけど)をし、地面に落ちている巨大な緑の種を綺麗に避けていく。
急激なカーブの連続は、その車の天井の上に立っているわたしにとっては足場が悪いでは済まされないくらいに暴れており、おそらく普通の人ならば一瞬で車から振り落とされてしまうだろう揺れを起こしていた。
(これは、昔からお父さんの船に乗って漁のお仕事について行ってた経験が活きるわね……)
だが、小さいころから大時化の波にあおられた船に乗った経験のあるわたしにとっては、これくらいの揺れならまだ耐えられる。伊達に足腰と体幹が鍛えられていないわけだ。もっとも、こんな場面になることなんて想像していなかったけど。
(っと、今はそんなことはどうでもよくて!!)
ちょっと昔のことに思いを馳せていたところを無理やり頭を振って追い払い、今対面するべき強敵を見据える。どうやらタネばくだんをドライブテクニックでちょうど避けきったところを見られたらしく、空飛ぶ緑のポケモンが再びタネばくだんを構える姿が確認できた。
「そう何度もやられてたまるもんですか!!ヌオー『なみのり』!!カジリガメは『ストーンエッジ』!!」
再び落ちて来る緑の隕石3つに対して、今度はヌオーが目一杯の波を作成し、車と並走するように流していく。そして、その波の中にカジリガメが入り込むことによって素早く移動。落ちて来る緑の隕石に対して、岩の弾丸を放ってその動きを一瞬止める。
「グソクムシャ!!カマスジョー!!アズマオウ!!」
そこに飛び出すグソクムシャたちは、アクアブレイクやメガホーンにてタネばくだんを反射し、打ってきた張本人へお返しする。その結果、タネばくだんは全て上空のポケモンに被弾。同時に爆発を起こし、表面にちょっとした傷をつけた。
が、それだけで大したダメ―ジが入ったようには全く見えない。
「本当に、いやになるくらい固いわね……」
ダイマックスしたせいで巨大化している身体と、植物を連想させる緑色の見た目をしながら、どこか硬質的なその質感から、どうしてもダメージが入っているように感じられないし、相手の飛ぶスピードに一切のぶれがない当たり、本当にダメージは入っていないのだろうことが感じ取れる。
「見た目の色と使ってきた技的にくさタイプを持っていそうと思ったけど……あの質感ははがねタイプのそれよね……カマスジョー!!『アクアジェット』!!」
相手のタイプが一切分からないのは本当にやりづらい。せめて弱点のタイプさえ分かればと色々思考を伸ばしてみるけど、見た目と技がどうにも噛み合っていない気がしてならない。かと言って何もしない訳にも行かないので、とりあえずカマスジョーに動いてもらって相手の動きを見させてもらう。
水を纏いながら高速で空を駆け回るカマスジョーは、その勢いのまま何度も緑のポケモンに突撃。スピードの乗った分だけ強力なその一撃を何度も何度も叩きつけていくが、それでもやはりダメージは薄く、緑のポケモンは別段気にしたふうもなく、ゆっくりと、しかし確実にこちらを敵と認識して攻撃を仕掛けてくる。
「ポゥ……!!」
今回しかけてきた技はかえんほうしゃ。自身が高速で飛ぶために炎を吹かせている、隣にある2つの、竹の形をしたロケットのようなものの噴出口をこちらに向けて放ってくるその技は、わたしが乗っている車目掛けて一切の容赦なく放ってきた。
「っ!?ヌオー!!」
ここに来て全くタイプの違う技且つ、わたしどころか車ごと狙ってくるその動きに、もしこれが直撃したらという未来を想像し、一瞬で鳥肌が浮き出てしまったのを何とか冷静に抑えてヌオーに指示。なみのりを自在に操りながら、かえんほうしゃの盾になるように調整したことによって何とか火炙りになるのを防いだ。
「グソクムシャ!!アズマオウ!!」
相手の攻撃を防ぎ、なみのりのおかげで道路以外のところに水が満たされている間に今度はこちらが攻撃。高い波から飛び出したグソクムシャとアズマオウが、下から突き上げるようにアクアブレイクとドリルライナーを放っていく。
かえんほうしゃを打つためにロケットの向きを変えているせいか、少し速度の落ちている相手に攻撃を与えるのは簡単で、こちらの攻撃はあっさりと相手に突き刺さる。が、ここで予期せぬ事が起きる。
「ウオッ!?」
「『ドリルライナー』が弾かれた!?」
グソクムシャのアクアブレイクはしっかり突き刺さったのに、アズマオウのドリルライナーだけは完全に弾かれ、一切のダメージを与えることすら出来なかった。
何故?と一瞬頭がこんがらがってしまいそうになったが、ドリルライナーが直撃したはずの場所を見れば、その答えは一瞬でわかった。
「技が当たったところに風の渦……ひこうタイプ!?」
それは、ひこうタイプが持つ加護の証。
じめんタイプを無条件で弾く、ひこうタイプ特権の能力。その効果が発揮された瞬間をしっかりと目に刻んだ。
そこから導き出されるわたしの答え。
(はがね、ひこうタイプ!!また厄介なタイプしてるわね!!)
自分で出したおおよその答えに自分で悪態を着く。なぜなら、はがね、ひこうタイプのポケモンに弱点をつける、ほのお技とでんき技を私はどちらも扱うことが出来ないから。くさタイプがないため、みずタイプの技を半減させられる訳では無いのがせめてもの救いではあるけど、この耐久お化けなポケモンを前に、弱点技なしで戦うというのはそれだけで骨が折れそうになる。現に、先程直撃したはずのグソクムシャのアクアブレイクも、あの緑のポケモンは全く意に介さず、お返しとばかりにタネばくだんを撒き散らし、わたしのポケモンはその対処に追われていた。
「全く……時間もあまりないって言うのに……!!」
緑のポケモンの進行方向に視線を向ければ、うっすらとだがバウタウンの町並みが少し確認できる。この速度で飛べば、多く見積ったとしても数十分もすれば到着してしまうだろう。なんとしてでもそれまでに倒す必要がある。
「全く、ちょっとくらいこっちに構って速度を落としてくれても━━」
「ポポゥ……」
「え?」
どう考えてもきつい状況についつい愚痴をこぼしていると、その愚痴に対して、まるで『分かった』と返したかのように鳴き声を響かせる緑のポケモン。
突如上から聞こえてきた声に驚いて見上げるわたし。その視界に移るのは、徐々に大きくなっていく緑色のポケモンの姿。
(ちょ、ダイマックスしているのにまだ大きくなるの!?一体どれだけ大きく……いや、違う!!)
と、そこまで考えてさらに周りに違和感を感じたわたしは、慌てて声を上げる。
「ソニアァァァッ!!」
「ッ!!」
わたしの声を聴いたソニアは、わたしの意図を汲み取ってすぐさま急ブレーキをかける。そんな無茶な操作をすれば、わたしの身体は思いっきりつんのめって、前に振り落とされそうになるけど、このまま前に倒れるわけには絶対にいかないので、腰をぐっと落とし、手をついてでも絶対に前に落ちないようにする。その甲斐もあってか、急ブレーキによって激しいスキール音を奏でながらピタッと止まった車の動きに何とかついていったわたしは、屋根の上から振り落とされることなく前の景色を見ることが出来た。
「ポポ~……」
「「っ!?」」
目の前に広がる景色。それは、地面に向かって身体の前面を押し付けるように地面に墜落し、とてつもない地響きと共に周りの衝撃をまき散らしている緑のポケモンの姿。地面に落ちた瞬間に広がる衝撃波は強力で、車に乗っているわたしとソニアが車ごと一瞬空中に打ち上げられるほど。
急にふわっと空中に投げ出されたせいでうまく反応することが出来ず、そのまま車の天井にお腹から着地してしまい、ちょっとした痛みが身体に走った。それでもすぐに立ち上がって前に視線を向ければ、地面から再び身体を起こして空中に浮かび上がっている緑色のポケモンの姿と、地面にはっきりと突いた緑のポケモンの形の穴。
ヘビーボンバー。
先ほどわたしが感じた緑のポケモンの巨大化は、実際に大きくなったのではなく、こちらに落ちてきたことによって距離が近くなったため、相対的に大きくなったように見えたのが原因だ。相手が近づいてきたときに、周りの景色が影のせいで暗くなっているのに気づかなかったら、対処が遅れていた可能性がある。
見た目通りの体重を全部乗せて行われたその攻撃は、見ての通りの破壊力。この危なさに気づき、すぐさまソニアがブレーキをかけてくれたことで、前に走りながら落ちている相手の後ろ側に止まることが出来たため、何とか避けることが出来たものの、もしわたしが前に投げ出されるか、ソニアが車のブレーキを掛けるのが一瞬でも遅かったのなら、今頃わたしはこの攻撃の下敷きになっていただろう。そう考えるとぞっとする。
「ポ~」
「っ!?ソニア!!」
もしかしたらあったかもしれない未来を想像し、少し震えているわたしを確認することなく再び宙に浮かび上がった緑のポケモンは、再びバウタウンに向かって飛び立つ準備をする。その際に響くロケットの音にハッとさせられたわたしは、慌ててソニアに指示を出して再び車で追いかける態勢をとる。勿論、この時に仲間のポケモンたちに指示を出して、ヌオーの作り出したなみのりに乗って追いかけるのも忘れない。
そして再び始まるチェイスバトル。
飛行し始めたポケモンを止めるべく、後ろから追いかけながらカジリガメがストーンエッジをしたり、サシカマスがアクアジェットで追いかけて攻撃したり、アズマオウが飛び出してメガホーンを放ったりしているものの、岩の弾丸はタネばくだんで相殺し、他2つの攻撃に関してはそもそも見向きすらせずに攻撃を受け、何事もないかのように進んでいく。実際に身体にかすり傷くらいしか入っていないところを見るに、本当に気にする必要がないのだろう。
そうこうしているうちに、また更にバウタウンへの距離が縮まっていく。だというのに、未だにこちらの攻撃はうまく入っている気がしない。
(くっ……どうしても火力が足りない……)
その状況に募るのは焦る気持ち。
速く何とかしないといけないのに、その対抗策が永遠と見つからず、ずっと頭の中をぐるぐるしている。勿論この間にもしっかりと指示は出しており、緑のポケモンに攻撃を繰り返してはいるものの、こんな状態でする攻撃がちゃんと相手に通るはずもなく、全ての攻撃をタネばくだんやかえんほうしゃでいなされたり、その屈強な身体で受け止められてしまっていた。
相手の技は強力で、こちらの技は相手の弱点をつけないせいで通らない。
けど、ここでどうにかしないとわたしの大好きなバウタウンに大きな被害が出てしまう。
(どうすれば……)
「……ルリナ」
「っ!?」
頭の中でグルグルと思考が回って、永遠と答えに辿り着かない。そんな泥沼にはまっているところにかけられる、ソニアからの重い言葉。
普段とは全くトーンの違うその声に、まるで身体を引っ張られるかのように、不安と焦りから曲ってしまっていた腰がピンと伸ばされ、今も必死に運転しているであろうソニアの方に、強制的に視線を向けさせられる。
「……何かしら?」
いつもと違う雰囲気をビシバシと感じさせるその圧に、なんだかお母さんに怒られている時のような感覚に襲われながら、恐る恐るソニアに言葉を返す。すると、ソニアからは明らかに怒っているという空気をにじませた声色でこう返してきた。
「あんた、わたしに気遣って本気で闘ってないでしょ?」
「っ!?」
それは、わたしの現状についての文句。
わたしが、ソニアといるから全力を出せていないということに対する言及。
急に告げられたその言葉に対して、わたしはとっさに言葉を返せない。
だって、ソニアが言っていることは、本当のことだから。
「道理で……運転に集中しているから、今外がどうなっているのかを詳しく知っているわけじゃないけど、流石に
「……」
全部バレている。
わたしがあの子を出していないことも、その理由も。
それを知ったソニアは、さらに語気を強めながら言葉を零す。
「確かに、ジムチャレンジの時のままのわたしなら信頼されても仕方なかった。けど、今はその時とは違う!!」
それはまるで、過去のジムチャレンジを越えられなかった自分に対する決別のようにも聞こえ、当時の印象をどこかで引きずっていたわたしの心にぐさりと突き刺さる。
「やりたいことも見つかったし、わたしよりも年下の子が必死こいて頑張ってる!!なら、わたしだってやるってところを見せなきゃでしょ!!だからルリナ!!わたしに変な気づかいはいらない!!新しいわたしを見せてやるんだから、あんたは気にせずあいつをやりなさい!!それとも、ここで手を抜いたからって理由で、バウタウンを好きにされても言い訳?」
「っ!!」
息を飲むわたし。
ソニアの言う通り、ここでコイツを止められなかったら、わたしはみんなに顔向けできないし、その時本気を出せてなかっただなんて言い訳は死んでも言いたくない。
(本当に、何やってるのよ、わたし)
さっき自分で言ったばかりの、『自分の優先順位を理解する』ということが全くできていなかった。今になってそのことに腹が立ち、そしてソニアの言葉のおかげで目が覚め、その怒りの矛先を正しい方向へコントロールできるようになった。
「もう、迷わないし躊躇もしないわ」
改めて爆速で走り、緑のポケモンを追いかけている車の上で、腕を組み、仁王立ちしながらわたしは言葉を続ける。
「覚悟なさい。この子を解禁する以上、あなたに勝ち目はないわ!!」
自信満々に口にしながら、最後の一人のボールを右手で握りしめ、大きく振りかぶってぶん投げる。
鋭く投げられたボールは、まっすぐ綺麗に飛んでいき、小気味よい音を立てながら割れ、中からわたしのパーティのキーとなるポケモンが呼び出される。
「ペリ〜」
そのポケモンはぺリッパー。
気の抜けたような鳴き声は、緊迫したこの状況には少し合わず、あれだけ啖呵を切って呼び出したにしては、パッと見少し頼りなさそうな印象を受けてしまうほど。しかし、先も言った通りこの子はわたしのパーティの中枢を担う子だ。その理由はこの子の特性にある。
「ペリペリ〜!」
ぺリッパーが呼び出されると同時に、わたしたちの周辺の天候が変化。特性あめふらしによって、少し強めの雨が降り注いできた。
そう、この雨こそが、わたしにとって最高のパフォーマンスを送るための要素となる。
雨はみずタイプの技の威力をあげてくれ、そしてすいすいのポケモンの素早さを倍にしてくれる。そして、わたしの手持ちでこのすいすいの特性を持っている子は3人。
「シャッ!!」
「マウ〜」
「ガメェッ!!」
カマスジョー、アズマオウ、カジリガメの3人が、雨を受けて嬉しそうな声を上げて臨戦態勢へ。
「カマスジョーは『アクアジェット』でアズマオウは『たきのぼり』!!カジリガメは『アクアブレイク』!!」
そんな3人は、わたしの指示を受けると同時に勢いよく飛び出し、水を纏いながら走り出す。
その速度は先程までとは全然違い、一番最初に動き出したカマスジョーは、既に緑のポケモンの眼前にまで迫っていた。
「ポ!?」
ここに来て初めて聞く、緑のポケモンの焦った声。が、その声が続くよりも速くカマスジョーの突進が顔面に突き刺さり、さらにその攻撃に続くようにアズマオウとカジリガメの攻撃も顔面に直撃。すると、今までなんの反応も見せなかった緑のポケモンが、苦しそうな声を上げながら身体を少し傾け、同時にロケットから吹き出す炎が少し弱まった。
「ダメージが入ってる……これなら……っ!?」
いける。そう言おうとしたところで、足元が大きく揺れ、危うくバランスを崩しかけた。
何とか振り落とされることは無かったけど、急に起きた揺れに対して少し気になったので、フロントガラスからソニアの様子を伺う。するとそこには、汗を流し、必死にハンドルを握りしめ、苦しそうな顔をしながら運転するソニアの姿。
当然だ。今はぺリッパーが呼び出されたことによって雨が降り、地面がぬかるみ始めている。タイヤの表面にも水が付着することで、ブレーキの効きも悪くなっているだろうから、スピードの制御がさっきまでとは段違いに難しくなっているはず。これが公道を規定速度で走っているだけなら問題は無いのだが、今は緑のポケモンを追いかけるためにかなりの速度を出している。おかげで握っているハンドルの重さも相当なもののはずだ。
(やっぱり、ぺリッパーを呼んだのはまずかったかしら……)
「何よ、必死こいてるわたしを笑いに来たの?」
そんな考えが頭をよぎっているところにかけられる、ソニアからの不満気な声。
こんな状況なのになぜそんな言葉が言えるのかと思い、改めてソニアの顔を確認する。
「あなた……」
「だから……なんなのよ!!」
そこには、苦しそうにしているのに、同時に嬉しそうに笑っているようにも見える感情が見えた。
「言ったでしょ!!新しいわたしを見せるって!!だからあんたは、大舟に乗ったつもりでいなさい!!」
「……船じゃなくて車だけどね」
「知ってるわよ!!でも、今この瞬間だけは大時化の海よりも荒い自負があるわ!!」
「誇るところじゃないわよ。あと、さすがにそれは海を舐めすぎね」
その姿に当てられて、わたしも心が軽くなる。
(さっき躊躇しないって言っておきながらもうしてる。全く……)
そのことに対し、思わず笑みを浮かべながら、わたしの心の中で何かが切れた。
「でも、ええ……そうね。今は頼れる操舵手様がいらっしゃるものね!!なら、遠慮はいらないわよね!!カジリガメ!!」
「……え?」
そうと決まったら出し惜しみはなしだ。懐からボールを取り出して、カジリガメに向けてリターンレーザーを放ち、同時にダイマックスバンドを光らせる。
「さぁ行くわよ!!」
「ちょ!?さすがにそこまでは聞いてな━━」
ソニアが何か言っているがもう無視だ。あれだけの気合いを見せてくれたのなら、これをしたって平気なはず。
赤く光るエネルギーが、バンドからボールに吸収され巨大化。そのボールを抱えたわたしは、腹から声を出して叫ぶ。
「さらなる大海を知りなさい!!カジリガメ!!キョダイマックス!!」
「ガメエエエェェェッ!!」
そのボールを投擲すれば、飛び出してくるのは雄叫びをあげるキョダイマックスカジリガメ。
ドシンという大きな地響きとともに現れた彼は、わたしたちの乗る車を気遣うことなく暴れ、ヌオーのなみのりとペリッパーの雨に乗って走り出す。そのたびに揺れる地面のせいで、車は更に暴れ、操作が困難になった。
「ああもう!!やってやろうじゃない!!いい?もしこれで車が廃車になったら、あんたに請求するからね!?」
「大船なんでしょ?この程度で沈没するはずないじゃない」
「たった今味方のせいで泥船になったのだけど!?」
「それよりも……」
いくら運転を任せろとはいっても、味方のせいで難しくなるのは納得いかなかったらしいソニアからやけくそ気味な言葉が聞こえる。けど、それ以上にソニアに伝えたいことがあるわたしは、ソニアの言葉を無理やり遮って言葉を投げかける。
「ソニア。もう1つあなたにお願いしたいことがあるわ」
「なによ!!正直運転に手いっぱいで、これ以上は何もできないわよ?」
「大丈夫、簡単なことよ」
「なに?」
「それは━━」
その内容は、今思いついたこのバトルを終わらせる最後のピース。
「……成程、良いわよ、任せて!!合図は頼むわよ!!」
「ええ!!」
ソニアからの了承も得ることが出来た。
「さぁ、行くわよ!!」
あとは勝つだけ。反撃開始だ。
テッカグヤ
どちらかと言うと実機の鳴き声に寄せてみた結果、なんだか八尺様のような声に。……ある意味間違っていなさそうなのでこれでいいような気もしますね。
ソニア
ドライブテクニックはすさまじい?少なくともアニポケを見る限りではとんでもないテクニック(ただし、同乗者の気分は考えないものとする)なので、これくらいは出来そうかなと。
前書きで触れていたことなのですが、12月16日より、おそらく25日くらいまで、私用で家を離れるため、執筆時間を取るのが難しくなります。……はい、歴代最長期間ですね。私もこれだけ家を外すのはほぼ初めてと言っても過言ではないレベルの長旅です。なのでこの期間更新が難しく、下手をすれば、次の予定日である15日の次は、29日くらいになる可能性があります。もし可能であれば早めに出しますが……気長に待っていただけたら幸いです。
以上、お知らせでした。