【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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夜明けを目指して
338話


「はぁ……はぁ……何とか勝ててよかったぜ……」

「だな。おれたちだけだとどうしようもなかった……。来てくれてありがとう。本当に助かった」

「お礼を言うのはオレたちの方だぞ!!オレたちがここに来るまでしっかり守ってくれていただけでも十分助かった!!」

「ホップの言う通りです。それに、戦った時間は短いですけどこのポケモン、とても強いですよね……?きっと私とホップが最初からいても苦戦は免れなかったと思います。そんな強敵相手に、ガラル地方じゃない人が頑張ってくれただけでも凄く嬉しいです。ありがとうございます」

 

 地面に倒れ、目を回している緑色の大きなポケモンの横で、バトルが終わったことに対してお互いに感謝を言いながら集まっていく私たち。

 

 いつもよりも少し硬い言葉になってしまっているのは、やっぱりこの人の存在があるからだろう。

 

 現シンオウチャンピオン、コウキ。

 

 フリアから何回も聞いた、最年少チャンピオンの記録と並んでいる物凄いトレーナー。

 

 ヨロイ島とカンムリ雪原で出会い、その実力をしっかりと見せてくれたあのシロナさんを倒してその座についていると言われている、間違いなく格上の人。そんな人が目の前にいるとなれば、緊張してしまうのは無理もないだろう。

 

(無茶苦茶強い人ってことは聴いていたけど……同時にフリアとすれ違っている人ってことでもあるもんね……)

 

 シロナさんよりも強く、そして絶賛フリアとすれ違い中の人となると、どうしても暗く、そして怖いイメージが先行してしまってなかなか声をかけづらい。しかし、同時に隣にいるジュンの様子から違和感を感じてもいた。

 

(でも、フリアだけじゃなくてジュンともすれ違っていたんだよね……?その割には、今はこうして楽しそうに並んでいるように見えるけど……)

 

 それに、合流してすぐの時のあの明るい自己紹介。

 

(私たちが離れてから、何かあったのかな?)

 

 すれ違っていたみんながどのようにしてまたくっつくに至ったのか。どうしても頭の片隅に引っ付いて離れないその疑問は、しかし、今は表に出すべきではないと判断して端に押し込んでいく。

 

 なぜなら、もっと気になる存在が横にいるから。

 

「ペアッ!!」

 

 視線を横に向ければ、そこにいるのは綺麗な翼膜を広げながら、焦ったように声をあげている夜色の大きなポケモン。その様子と見た目の色合いから、あの子と同じような印象を受けた私は、慌てるこの子を落ち着けるかのように声をかける。

 

「落ち着いて。その様子だと、あなたはほしぐもちゃんの関係者?」

「ほしぐもちゃんのだって!?本当かユウリ!?」

「うん……何となく、同じ雰囲気を感じるから……」

「ぺペア!!」

 

 私の言葉に対して驚いたような声をあげるホップと、肯定するように首を縦に振る夜のポケモン。また、ジュンも声を出していないだけで驚いている表情を浮かべており、この場で唯一分かっていないような表情を浮かべているのは、ほしぐもちゃんとの面識がないコウキさんだけだ。

 

 急に目の前に現れた、ほしぐもちゃんの関係者かもしれないポケモン。

 

 にわかには信じづらい状況ではあるし、私も何となくそう思ったというだけで、明確な証拠があるわけではないから証明はなかなか難しい。特に、ほしぐもちゃんのことも私たちのこともよく知らないはずのコウキさんへの説得材料としてはこの上なく弱い。事実、完璧には信用していないのか、コウキさんは言葉こそ発してはいないものの、疑いの視線を少し向けている。むしろ、初対面と言うことを鑑みれば、少しで抑えてくている分まだ信用してもらっている方と言っていいかもしれない。

 

(せめてあともう一押し、何かがあればいいんだけど……)

 

「あ、じゃあもしかして、写真を見せればいい反応してくれるんじゃないか?」

 

 どうやって信用してもらうかと、頭を悩ませている時に聞こえてきたのはそんなジュンの声。

 

 懐をまさぐりながらそう喋ったジュンは、スマホにみんなで撮った写真を表示させながら、夜のポケモンへと見せていく。

 

「もしこいつが本当にほしぐもちゃんの関係者なら、これを見れば反応するだろ?それに、こいつが飛んできた方角って預かり屋の方面だし、ワンチャンヒカリにも会ってるんじゃないか?」

「確かに、あの方角はおれたちが来た方角だな」

「え、今ヒカリは預かり屋さんに行ってるの!?……そっか、ワイルドエリアの中にあるもんね……じゃああそこは今はヒカリが守ってくれてるんだ……良かった……」

「預かり屋?アオイのいた所とはまた別なのか?」

 

 写真の準備をしながら話題に上がったのは、私とフリアたちが吹雪によって身動きが取れなくなった時にお世話になった預かり屋さんでホップは知らない場所だ。

 

 どうやらこの事件中に危ない場所はここだと判断したらしいフリアが、1度ここに立ち寄って手伝いをしてからナックルシティに向かったらしく、その時に守備をヒカリに任せて来たのだとか。

 

 そんな方角から飛んできたのなら、もしかしたらヒカリにこの場所を教えられたからこそ、このタイミングで到着できたのかもしれないとジュンは思ったらしい。そして、そんなジュンの予想はしっかりと当たっているらしく、ジュンの写真を見た瞬間、さっきよりも激しく首を縦に振り、全力で肯定してくるような姿を見せてきた。

 

「やっぱりそういうことなんだな!!」

「恐らく、おれたちが預かり屋を離れた後に例の穴が開いて、出てきた所でヒカリに出会って、ユウリ選手と同じ考えに至ったヒカリがここを紹介したんだろうな」

「ならやっぱり、ほしぐもちゃんの関係者だよね!!私、今はほしぐもちゃんのトレーナーのユウリって言います!!私もほしぐもちゃんを助けたい!!だから一緒に行こう!!」

「オレたちにとってもほしぐもちゃんは大切な仲間だからな!!早く会いに行くぞ!!」

「ペペアァッ!!」

 

 写真による擦り合わせによって完全に仲間兼ほしぐもちゃんの関係者だと確信をもてた私たちは、夜のポケモンと一緒にほしぐもちゃんを迎えに行くことを決意し、声を出しあって士気をあげる。

 

 ここに来て強力な仲間の参戦。それは、この不安定な状況においては、何よりも心強い戦力強化のひとつだった。

 

「よし、じゃあ早速行くぞ!!きっとフリアたちが先に向かってくれているはずだもんな!!」

「うん。私たちも、剣と盾を早く届けてあげないとだもんね」

 

 背中のリュックに感じる確かな重さを確認しながら、私たちの視線はナックルシティの中央にある、お城のようなスタジアムに向けられる。

 

 きっと今頃、フリアとマリィ、そしてダンデさんがあそこで奮闘してくれているはずだ。なら、1秒でも早く合流して手伝った方がいい。そう思い、早速足を動かそうと思った時、後ろから待ったの声が掛かった。

 

「申し訳ないが、おれたちは行けない。……すまない」

「「え!?」」

 

 それはコウキさんからの声で、内容はこの先にはついて来れないというもの。

 

 ここに来てまさか拒否されるとは思わなくて、私とホップは驚いた声を上げながら表情を少し歪めてしまう。そんな私たちの反応を見て慌てた様子のコウキさんは、すぐさま理由を説明してくれた。

 

「悪い、言葉が足りなかったな。ついて行きたいのはやまやまなんだ。だけど……」

「本っ当にすまん!!今の戦いでオレのポケモン、ほとんどやられちまっててな……」

「それにブラックナイトはまだ終わっていない。今はまだ、緑のポケモンが暴れてくれていたおかげでここの近くにポケモンはいないけど、緑のポケモンが倒れた今、もうここに近寄らない理由はないだろ?そうなると、また野生のポケモンが突撃してくる可能性がある」

「……けど、オレのポケモンは結構倒されちゃったからさ。さすがに1度休憩を挟まないと耐えられない。ってことは、その間ここの守備をコウキ1人に任せちまうことになる」

「おれの方も、ちょっとした理由で耐えれてはいるけど、万全って意味じゃないからな……さすがにそっちに援護できる余力までは無いかな」

「そっか……ううん、そうだよね」

「くっそ〜、解決することばかり考えてて他のことが頭から抜け落ちていたぞ……」

 

 最初こそ『なんで?』という気持ちが強かったけど、コウキさんとジュンの言葉を聞いて納得した私たちは、自分たちの視野の狭さに反省をする。やっぱりチャンピオンということだけあって、この辺りの判断力はしっかりしているということなんだろう。

 

「……大丈夫。安心してくれ」

 

 細かなところで確かに感じる能力の差と、自分たちの考えの甘さ。それらを見せつけられ、少しだけ落ち込んでいると、そんな私たちを励ますかのようにコウキさんが口を開く。

 

「こんなんでもチャンピオンなんだ。この街を守るくらいこいつがいなくてもなんて事ない。任せてくれて大丈夫だ」

「おい!!」

 

 表情を崩し、笑いながらそう言ってくるコウキさんの言葉には、確かな安心感を感じ、そこにジュンとの身内ノリを合わせることで、私たちの緊張も解してくる。

 

(ああ、これは……敵わないなぁ……)

 

 狙ってやっているのか、はたまた偶然か。そんなことはどうでもよく、今この場で1番必要な言葉をちゃんと選べるその思考力は、フリアのそれと近しいものがあり、そして更に大きな差を実感させるものとなる。

 

「だから……速くフリアのところに行ってあげてくれ」

 

 だからこそ、急にしおらしく、そして懇願するかのように紡がれた次の言葉は、ここまでの頼もしさからのギャップせいで、よりしっかり心に突き刺さる。

 

「きっと、今のあいつに必要なのは君たちの手だから。だから……頼む。おれの親友を……助けてやってくれ」

 

 頭を下げ、真っ直ぐ伝えてくるその言葉に押されかけ、一瞬返答の言葉が詰まりかけてしまう。けど、フリアのことを大切に思うその姿に、何故か対抗心を覚えてしまった私は、押されかけた心を引き締め、1歩前に踏み出しながら、しっかりと言葉を伝える。

 

「勿論です。だってフリアは……私にとっても大切で、かけがえのない、大好きで大事な人だから……!!だから……っ!?」

 

 と、ここまで伝えて、自分が何を言っているのか分からなくなってしまった私は、自分の発言をふりかえって思わず口を塞ぐ。

 

(わ、私急に何を……!?)

 

 この行動に対して、よくわかっていないらしいホップとジュンは首を傾げただけに終わるけど、私の目の前の人……コウキさんは、なにか察したのか、下げていた頭を上げて驚いたかのような表情を受けべながら言葉を漏らす。

 

「その反応に言葉……もしかして……?」

「え!?い、いや……あの……っ!!」

「ふっ……あっははは!!なるほど、そういう感じかぁ」

 

 訂正したいけど間違っていないから指摘できず、かと言って何も言わないのも変だと思っていると、口から出る言葉は要領を得ない物ばかりで、そんな私の反応に余計確信を得てしまったらしいコウキさんは、どこか微笑ましいという表情を浮かべながら大笑い。その姿を見て、一気に恥ずかしさがこみあげてしまった私は、反論をすることすらできずに顔を覆ってしまう。

 

「悪い悪い。弄るつもりはなかったんだ。ただ……そうか、あいつになぁ……」

「も、もういいですかから……!!」

「「???」」

「悪かったって。その様子なら、もうヒカリに散々からかわれているだろうから、おれからはもう何も言わないさ」

「ぺ、ぺァ……?」

 

 顔を覆う私と笑うコウキさん、そして首をかしげるホップとジュンと言う、傍から見たら訳の分からない状況には、流石の夜のポケモンもどうすればいいのかと困惑の様子を浮かべていた。

 

 恥ずかしくてたまらない空間。しかし、それは同時に、私のコウキさんへの印象の軟化と言う役目も担っており、気づけば私の中には、コウキさんへの苦手意識は消え去っていた。

 

「まぁ、そういう事だ。この入り口はおれたちに任せて先に行ってくれ。いい加減、この子も速く行きたそうにしているしな」

「ペアッ!!」

「っと、そうだぞユウリ!!速く行こう!!」

「うぅ~……正論なのになんか納得したくないぃ~……」

 

 コウキさんの言葉に頷き、私を促そうとするホップ。

 

 今この場所の行動としては正しいのだけど、これで私が責められることに納得がいかない。

 

(まぁ行くんだけどさ?)

 

 しかし、この子を速く欲しぐもちゃんの所へ連れて行ってあげたいのも事実なので、いい加減しっかりと気を持ち直して進むこと決意した私は、赤くなった頬を抑えるために頬を軽く叩き、頬の緩みを直してから改めてコウキさんに向き直る。

 

「では、この場所は任せます!!私とホップとこの子は先に行くので!!」

「おう!!フリアたちをよろしくな!!」

「頑張ってくれ」

「ああ、任せろ!!」

「ペアッ!!」

 

 ようやく話が終わった私たちは、コウキさんとジュンに背中を向けてナックルシティへと走っていく。

 

「なぁユウリ、今の話って一体……」

「ホップは気にしなくていいの!!」

「お、おう……そうか……?まぁ、ユウリがそういうならいいが……」

 

 その途中に質問を投げてきたホップの言葉も無理やり抑えながら走った私は、とにかく足を動かしていく。

 

(待っててね……みんな!!)

 

 目的地はナックルシティの研究施設。

 

 そのどこかで闘っているであろうフリアとマリィ、そしてダンデさんを思い浮かべながら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミロカロス!!『ねっとう』!!」

「モルペコ!!『オーラぐるま』!!」

「くっ、ちょこまかとうっとおしいわね!!さっさとやられなさい!!ダストダス!!『ダストシュート』!!」

「倒れるのはあんたの方と!!ゾロアーク!!『あくのはどう』!!」

 

 ミロカロスによって放たれたねっとうを、赤と青に光る車輪に乗って駆け回るモルペコが華麗に避けていき、そんなモルペコの回避先に飛んでいくようにダストダスから放たれる毒の塊を、ゾロアークが技で相殺していくことで防御。この隙に素早さが上がったモルペコが、ダストダスに突撃するとでダメージを与え、ダストダスの身体を大きく後ろに吹っ飛ばし、距離を取っていく。

 

「ローズ様の邪魔をするだけでなく、オリーヴのポケモンをこんなに傷つけるなんて……生意気!!オリーヴキレそう!!ミロカロス『ハイドロポンプ』!!」

「もうとっくにキレてると!!ゾロアーク『サイコキネシス』!!」

 

 ヒステリックに叫びながら指示を繰り出し、攻撃を仕掛けて来るオリーヴさん。

 

 その姿からは異常なまでの圧を感じ、こうやって相対するだけでこちらを押しつぶそうとしてくるだけのすさまじい気迫を感じる。

 

(この気迫に気持ちで負けたら……押される!!)

 

 幸いポケモンバトルの腕自体はそんなに強くないため、普通に戦えばあたしが負ける所なんてない。これでもガラルリーグ出場者なので、そのあたりは心配はしていないんだけど……

 

「ダストダス!!『ダストシュート』!!」

「ダァスッ!!」

「モルッ!?」

「右に飛ぶと!!」

 

 技を放つ時の圧力がいちいち凄すぎるせいで、その度に少しの怯みを見せてしまい、その度にこちらの行動が一瞬遅れてしまっている。

 

 今の攻撃も、本来なら素早さが上がって余裕を持って避けられたはずの攻撃なのに、オリーヴさんへの恐怖のせいで動きが少し固くなってしまい、出だしが遅れて攻撃に当たりそうになっていた。

 

「アッハハハ!!動きが硬いわねぇ!!もしかして、心の奥ではローズ様のことを正しいと思っていらっしゃったりするのかしらぁ!?」

「そんなわけなかと!!」

 

(怖がらないでって……言葉で言うのは簡単と。でも、流石にこれは恐怖を覚えると……)

 

 顔を歪ませ、笑いながら攻めてくるその姿は、たとえ自分よりも実力は下だとわかっていても恐ろしい。

 

「ダストダス!!『ダストシュート』!!」

「ゾロアーク『かえんほうしゃ』!!」

 

 ぶつかり合う毒の塊と炎の波。

 

 熱によって蒸発していく毒は、紫の煙として立ち上り、吸うだけで良くないことが起きそうというのがいやでも伝わって来る。

 

 出来ることなら、この煙は避けて戦いたい。

 

「モルペコ!!『オーラぐるま』!!」

「ペコッ!!」

 

 滞留している煙を迂回して避けるように走り出すモルペコ。

 

 直線で走れない分、ぶつかるまでの時間はかかってしまうものの、それでも素早さの上がっているモルペコなら気にすることなく攻撃ができるはず。そう思って指示したこの技は、あたしの狙い通りの速さを持って、ミロカロスへと肉薄していく。

 

(とにもかくにも、まずは1人倒させてもらうと!!)

 

 相手は本職のトレーナーでは無い。なら、手持ちも6人MAXで持っていない可能性もあると思っており、事実、腰にぶら下げているボールは2つしか確認できなかったから、今場に出ているミロカロスとダストダスしか、オリーヴさんは持ってきていないと思っている。なので、どちらか1人を倒すだけで流れは一気に持っていくことが出来る。だからこそ、モルペコが有利に戦えるミロカロスを集中的に狙おうとしての行動。

 

 セオリー通りちゃんと動けており、問題は特に見当たらない。

 

 これがスタジアムで行われる大会の試合であるのならば、しっかりとミロカロスに大打撃を与えられただろう。

 

(いける!!)

 

 しかし、このバトルは公式戦では無い。

 

 つまり、何をしたって許される。

 

 あたしの頭からは、その事が抜け落ちていた。

 

「ダストダス!!『ロックブラスト』!!」

「ダスッ!!」

 

 ダストダスの身体から発射された岩の弾丸。それはミロカロスを狙っているモルペコに向かって飛んでいく……ことはなく、モルペコが通る予定のルートの横の壁にぶつかり、爆ぜていく。

 

 一見、技を失敗してあらぬ方向に発射してしまったかのように見えるその攻撃は、しかし、その場所から一気に水が吹き出して来たのを見た瞬間に、その考えが間違いだったということを思い知らされる。

 

「ペコッ!?」

「モルペコ!?」

 

 前に走っているところに急に吹きかけられる激流。

 

 小さな身体のモルペコではこの水圧に耐える事ができず、水に押し流されて壁に激突してしまう。

 

「あら、こんな所に屋内消火栓。ついてますね。まるでローズ様の行動を神様が後押ししているようです」

「最初から狙って攻撃してたくせに……!!」

 

 その正体は屋内消火栓の破損による水の流出。

 

 ロックブラストによって破壊され、無理やり栓が外されたことによってあふれ出た水による妨害を狙って引き起こすという予想外の攻撃は、公式戦ばかりをしてきたあたしにとって対処できるものではなく、一瞬指示が滞ってしまう。

 

「最終的に勝てば、どうだっていいのですよ。ダストダスは『ダストシュート』。ミロカロスは『ねっとう』です」

「ゾロアーク!!『あくのはどう』!!」

 

 その隙をついてきたオリーヴさんの指示によって、壁にたたきつけられたモルペコに襲い掛かるのは毒の塊と湯気を立ち昇らせた水の光線。本来なら避けられるし、耐えることもできるかもしれない攻撃は、壁に叩きつけられ、無防備状態になってしまっているモルペコに対してはいつも以上にダメージが入るとどめの攻撃になりかねない。そんなモルペコを助けるために、すぐさまゾロアークが間に入ってあくのはどうを放つものの、いくらこちらのポケモンの方が練度が上とはいっても、1VS2に勝てるほど差が開いているわけではなく、簡単に押し切られてしまう。

 

「ゾロアーク!!バック!!」

「ゾロアッ!!」

 

 このままではモルペコもろとも技につぶされてしまうと判断したあたしは、技を打ち切ってすぐさま退却を指示。ゾロアークも同じ気持ちだったらしく、ちょっと力を込めてあくのはどうを放って爆発させることで一瞬だけ相手の技の勢いを殺し、その隙に後ろで倒れているモルペコを回収。ミロカロスたちの攻撃が着弾し、破裂するギリギリのところで技の軌道から逃げ、あたしの下まで帰ってきた。

 

「モルペコ!!大丈夫と?」

「ぺ、ペコッ!!」

 

 ゾロアークに降ろしてもらっているところに声を掛ければ、元気よく声をあげながら復帰するモルペコ。

 

 この調子ならまだ戦えそうで、ひとまず安心だ。

 

「……本当、めんどくさいですね。さっさと倒れていただけませんか?」

「くどか!!あたしは絶対に引かんけんね!!」

 

(ビビってなんかいられなかと。早くこの人を倒して、フリアたちの所に行かんとね……!!)

 

 威圧を跳ねのけ、仲間を助けるために、あたしは反撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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