【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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340話

「……っとと、何やら外が騒がしいですね……上で誰か暴れているのでしょうか?」

「逆に暴れていないと思っているんですか?」

 

 ナックルシティの地下深くにあるここ、エネルギープラントを襲う大きな揺れ。それに対して、目の前の男性……ローズ委員長は、小さな微笑みを浮かべながらくつくつと喉を鳴らす。

 

 その姿は、上で何が起こっているのかわかっていながら零した発言にしか見えない。

 

(なんて言うんでしょうかね……原因の一部が自分にもあると考えたら、少しだけ変な気分ですよ)

 

 ばあさんにお世話になる前の、委員長に世話になっていた頃の自分をふと思い出す。

 

 別にあの頃の自分が間違ったところにいたという気持ちは無い。施設にいた頃の方がもっと酷い目にあっていたし、あそこから救い出してくれ、そしてポケモンを授けてくれた委員長には大きな恩を感じている。委員長の下を離れた理由だって、変なやつらに洗脳されて、気づかないうちに手を切られたに過ぎない。

 

 運が悪かった。言ってしまえばそれだけの事。

 

 だから、別に今のローズ委員長に対して別段大きなマイナスを抱えているかと言われたら、正直微妙なところではある。ただ、あの時と比べて自尊心や承認欲求は、ばあさんやフリア、そしてフリアとのバトルで見てくれるようになったみなさんのおかげで充分満たされ、そして破壊された。

 

 だからこそ、オリーヴさんの言いなりにしかなれず、それにもうとっくにぼくのことを忘れて、興味を失っているであろう委員長のところに帰りたいという気持ちは一切ない。

 

 だから、このバトルは周りが思う程重いバトルなんかではない。

 

 また、別にブラックナイトなんてものにもそんなに興味は無い。

 

 ただ、今の居心地のいい場所の方が、今までのどの場所よりも好きなってしまっている自分がいるから。

 

 なら、そんな好きになってしまった場所を守るためにも、少しくらいなら手を貸してやるのもまぁ、やぶさかでは無いという話だ。

 

(全く、いつの間にこんな気持ちを持つようになってしまったんでしょうかねぇ……)

 

 間違いなくぼくに影響を与えている2人の顔を思い浮かべ、そして直ぐに消していく。

 

 今は、センチになっている場合では無い。

 

「やれやれ、本当に私の考えをしっかり理解してくれる人が少なくて困ります。どうしてわかって貰えないのでしょうか……」

「悲劇のヒロインのように振る舞うのは構いませんが、そもそもぼくは最初から理解する気はありません。未来がうんぬんかんぬんだなんて興味無いんですよ。今の自分を見てくれている。そんな人がいれば、それで十分なんです。だから諦めてください」

「随分と傲慢で自分勝手……少しはこちらの気持ちも考えて欲しいものです」

「でしたらあなたこそ、今この瞬間襲われている人たちの気持ちを汲み取ってあげるべきですね」

 

 かつてお世話になった人との会話は、永遠と平行線のままで決着が着く兆しが見えない。

 

 こうなってしまえばもう、決着をつける方法は1つしかない。

 

「はぁ……言っても伝わらないのがこんなに悲しいとは……仕方ありませんね。新しいジムリーダーということで多少は期待していたのですが……あなたにはここで止まっていただきましょうか」

「……はぁ、そういう所ですよ。本当に」

「行きなさい、ダイオウドウ。ナットレイ」

「パオォォッ!!」

「ナット……」

 

 相変わらずぼくの名前なんて全く覚えていない委員長は、懐からハイパーボールを2つ取りだし、宙に向かって投げた。するとその中からダイオウドウとナットレイが姿を現し、声を上げながらこちらを睨みつけてくる。

 

 その視線からもまた、ぼくに対する敵意が溢れており、ぼくのことなんてまるで覚えていないようにも見えた。

 

(子は親に似る、なんて言葉が世の中にはあるらしいですが……こんな所でその言葉を実感するなんて思いもしませんでしたよ。いえ、実際には親子ではありませんが……)

 

 ナットレイはともかくとして、ダイオウドウに関しては、操られていたせいで記憶にはあまりないが、共にラテラルタウンで暴れた仲だ。だと言うのに、それを一切感じさせない相手の態度に、もはや関心すら覚えてしまいそうになる。

 

 ここまでされると、いっそ清々しいと言うやつだ。

 

「……ふぅ、頼みますよ。ブリムオン、ニンフィア!!」

「リオッ!!」

「フィアッ!!」

 

 ひと呼吸ついたぼくは、懐に下がっている6つのスーパーボールのうち、2つを掴んで投げ出す。

 

 中から飛び出したのはブリムオンとニンフィア。

 

 方や委員長から始めてもらったポケモンで、方やばあさんから初めて貰ったポケモン。

 

 どちらも、今のぼくを形成するまでの、重要な転換期に来てくれた大事なポケモンだ。

 

「フェアリータイプのジムだけあって、フェアリータイプのポケモンばかり……私がはがねタイプのポケモンを得意としているのをわかっての挑戦ですよね?」

「ええ、よく知ってますよ。元チャンピオンカップ準優勝さん」

「おや、私の過去をよくご存知で……では、私との相性の悪さはなおのこと知っている━━」

「優勝していないのであれば、ぼくの敵では無いですね。ましてや、現役をとうに過ぎ去っているのであれば尚更です。申し訳ないのですが……負ける気、ないんですよね」

「……」

 

 相手はチャンピオンカップで準優勝を果たしている、はがねタイプのエキスパート。はがねタイプを苦手としているフェアリータイプにとっては不利どころの話ではない相手だし、それが実力者であるのならばさらにキツイ。が、さっき口にした通り、委員長は裏方に回ったことによって前線からは退き、ポケモンバトルはあまりしていない。少なくとも、ぼくが拾われてからは本気で戦っている姿というのは見たことがないし、ハイパーボールを取りだした時に翻ったスーツの裾から、他のハイパーボールが見当たらなかったのも、バトルから退いている証左だろう。

 

(現役時代はちゃんと6人控えていたと聞きますからね。最も、相手がフルパーティいた所で、負ける気はしませんが)

 

 それに対してこちらはばあさんに絶賛しごかれ中の身な上、どこかの誰かさんというお節介なライバルのせいで強くならないと気が済まない状態になってしまっている。

 

 そんな精神状態で、負ける訳には行かない。

 

「……厳しいねぇ……厳しすぎるよ。そういうの、良くないんじゃないの?」

「敬うことよりも、もっと大切なことがあるので……申し訳ないですけど、最初から全力で行きますよ。ブリムオン!!ニンフィア!!『マジカルフレイム』!!」

「ダイオウドウ『ストーンエッジ』。ナットレイは『パワーウィップ』」

 

 言葉通り最初から勝ちに行くために、はがねタイプ対策のほのおタイプの技で攻めに行くこちらの2人。虹色に輝く魔法の炎は、一直線にダイオウドウたちに向かっていく。

 

 それに対してあちらは、まずダイオウドウが岩の柱をつくりあげ、そこにナットレイがパワーウィップをすることで岩石の玉を作り出し、これをマジカルフレイムにぶつけることで相殺を狙ってくる。

 

(判断と対策が早い。少し認識を改めた方が良さそうですね)

 

 とてもじゃないけど、現役を引いて長い時間が経っている様子には見えない今の一幕を見て、自分の中で委員長に対する評価を1段階あげる。

 

 どうやら、現役で戦ってはいなくとも、数多くの試合を見てきている事もあって、知識という面ではかなりのアドバンテージがあちらにはあるようだ。

 

「ふむ、はがね対策はちゃんとしているようで……ですが、技ひとつで対策出来るほど、タイプ相性は甘く無いんですよ。ダイオウドウ、『ヘビーボンバー』。ナットレイは『ジャイロボール』」

 

 虹の焔を乗り切った相手は、早速反撃をするために行動を開始。全身を鈍色に染めた2人は、ダイオウドウはジャンプをしてこちらを押し潰すように、ナットレイは駒のように回転しながらこちらに突っ込み、力で押し込んでこようとしてきた。

 

「ニンフィアは『でんこうせっか』でブリムオンは『マジカルシャイン』!!」

 

 先程も言ったが、フェアリータイプははがねタイプが苦手だ。故にこの技を受ける訳にはいかないので、ニンフィアは素早く走り出すことで攻撃範囲から脱出。力がある分素早さが足りない相手の弱点を突いて逃げ切ることに成功する。が、足の遅いブリムオンではニンフィアのように回避ができないため、こちらは自身の身体をマジカルシャインで包み込み、ピンク色の球体の状態を維持。このままナットレイのジャイロボールを受けることで、わざと力負けをして後ろに弾かれることで、ダメージを抑えながらナットレイとの距離を離し、これによって上から落ちてきたダイオウドウの攻撃も同時に回避する。

 

「『マジカルフレイム』!!」

 

 攻撃を両方回避したところで再びマジカルフレイム。

 

 攻撃が終わったあとの隙を狙って放たれた焔は、まっすぐダイオウドウとナットレイ目掛けて飛んでいく。

 

「ダイオウドウ。『ストーンエッジ』」

 

 これに対して相手は、ダイオウドウが地面に落下した衝撃をそのままストーンエッジに変換し、地面から岩を隆起。その地点をダイオウドウとナットレイの足元だけに集中させたことにより、2人の身体が高く持ち上げられる。

 

 こうなってしまえば、マジカルフレイムは太く聳え立つ岩の柱にぶつかるしか無く、この焔では到底岩を壊せないのでまたもやこちらの攻撃は外れるという形になり……

 

「ブリムオン、『サイコキネシス』!!」

 

 岩の柱にあたる直前でサイコパワーでキャッチされた虹色の焔は、その軌道を真上に変更され、頂上にいるダイオウドウとナットレイを目掛けて直進していく。

 

「絶対に逃がしませんよ。意地でも焼いてやります」

 

 サイコキネシスによる擬似的な追尾弾は、足の遅いダイオウドウたちにとっては回避が難しい攻撃なうえ、たとえストーンエッジのような壁を作り出されても、それをサイコキネシスで操作して、迂回して攻撃出来るため意味をなさない。

 

 回避も防御も不可能。少なくとも、これで最初の痛手を負ってもらう。そんなつもりでこちらは攻撃を仕掛けていく。

 

「最初から逃げる気なんてありませんよ。ナットレイ『ジャイロボール』。ダイオウドウはナットレイに『アイアンヘッド』」

「は?」

 

 しかし、そんな攻めっけ溢れるこちらの行動に対して委員長が指示したのはさらに攻めで返してくる強気な言葉。

 

 この指示を受けたナットレイは、ダイオウドウの方に接近しながら回転。高速で回転する凶器の楕円球となり、この球をダイオウドウが真上から頭を叩きつけることで、岩の柱の麓へ発射。登っているマジカルフレイムの中心を突っ切り、風圧と威力で無理やりかき消しながら地面まで落下したナットレイは、ストーンエッジによって生まれた岩の柱の性質の兼ね合いで、地面に近づくほどに太くなることによってできた勾配に沿って転がっていき、垂直に落ちていた軌道を真横に変更。今度はまるで地面をボウリングの球のように転がっていき、ブリムオンとニンフィアに向かって突っ込んで来た。

 

(速い……避けるのは不可能ですね)

 

「ニンフィア!!ブリムオンに『でんこうせっか』!!」

「フィァッ!!!」

「リオッ!?」

 

 想像以上に速いスピードを持って突っ込んでくるナットレイを前に、ブリムオンの回避が間に合わないと判断したぼくは、ニンフィアにブリムオンを無理やり動かすことを指示。全力とは言わなくても、ある程度の力を速度をもってブリムオンに突撃をしたニンフィアは、ブリムオンをナットレイの攻撃軌道上から弾き飛ばすと同時に、その反動を利用して後ろにジャンプ。これで自分自身もナットレイの攻撃範囲から脱出し、2人の間に出来た隙間をナットレイが凄い勢いで通り抜ける結果となる。

 

「ブリムオン『サイコキネシス』!!ニンフィアは『ムーンフォース』!!ダイオウドウの足場を崩せ!!」

 

 ナットレイが明後日の方向へ転がっているのを見送ったところで、ナットレイをはたき落とし、すぐさま岩の足場に着地したダイオウドウに視線を向ける。

 

 本当ならナットレイに攻撃を当てた方がいいのだろうけど、この先を考えると多分こっちが正解とみていいはずだ。

 

(委員長の右手首にかすかに見えた赤いバンド……間違いなくダイマックスバンドとみていいでしょうね。それにこの空間、ムゲンダイナを管理するための場所ってだけあって、フィールドも広いしダイマックスエネルギーも充満している。委員長の現役時代の相棒がダイオウドウだったことと、ダイオウドウはキョダイマックスが見つかっているポケモン。そこを考えれば、この先のバトルでキョダイマックスして暴れる可能性は十分高い。ならここは、多少無理してでもダイオウドウを削る!!)

 

「パォッ!?」

 

 ダイオウドウの足元の岩を打ち抜くムーンフォース。これによって岩の柱が崩れ、高い位置から落とされたダイオウドウは、声を漏らしながら地面へと落ちていく。

 

 空中で態勢を整える技も、空中を自由に動く技も持っていないダイオウドウは、そのまま真っすぐ自由落下をしていく。ここをチャンスと捉えたこちらは、ブリムオンがサイコキネシスで崩れた岩を操り、これを次々とぶつけることで、ダイオウドウへの追撃と言う形をとっていく。

 

「ニンフィア!!岩を足場に『でんこうせっか』!!」

 

 更に、崩れた岩をいくつか空中に滞在させておくことで、ニンフィアが駆け抜ける足場の準備もしておき、これを利用したニンフィアがダイオウドウの落下ルートに先回り。位置に着いたところで、虹色に輝く炎を口元に溜め込んだ。

 

「『マジカルフレイム』を叩き込みなさい!!」

「フィア━━」

「さすがにそこまで認可はしませんよ。ナットレイ、『パワーウィップ』をブリムオンに」

「ナット!!」

「リオッ!?」

「フィッ!?」

 

 これが当たれば大きな一撃になる。そう思い準備したこの攻撃は、しかしすんでのところで委員長の指示が間に合い、ジャイロボール状態から解除されたナットレイが緑色の触手を伸ばし、ブリムオンを叩くことで不発にさせられていく。

 

 本来ならニンフィアを焦って攻撃するところを、冷静に状況判断し、ニンフィアの足場を支えているブリムオンに攻撃することでサイコキネシスの調整を狂わせ、ニンフィアが岩の足場から落下。間接的にダイオウドウを救った形となった。

 

(本当に現役から退いてしばらく経っている人の判断力か、どんどん怪しくなっていきますね……)

 

「いやはや、久しぶりに戦うのも楽しいですね。昔の頃の記憶と、いままで見てきた試合の経験が合わさって、現役時代以上に視野と戦略が広がっている気がするよ」

「……」

 

 顎髭を触りながら本当に楽しそうに微笑む委員長。その姿がとても様になっており、このバトルが一筋縄ではないことをよりこちらに強調させてきているようにも感じた。

 

(準優勝者は伊達じゃないってことですか……仕方ないですね……)

 

「ナットレイ『ジャイロボール』。ダイオウドウはナットレイの足元に『ストーンエッジ』」

「ブリムオンは『サイコキネシス』で坂を作って、ニンフィアは着地地点に『マジカルフレイム』!!」

 

 深呼吸を入れて気合いを入れ直したところで、崩れた岩の柱から落ち、地面に着地しながら吠えたダイオウドウによって、ナットレイの足元に再び坂が作られ、その坂を転がることでまたジャイロボールによるボウリングが開始。身体を180°傾けた鋼のスパイク付き楕円球が超回転をしながらこちらに突っ込んでくる。

 

 そんな攻撃に対してこちらがとった行動は、ブリムオンのサイコキネシスによって岩を操り、ブリムオンとナットレイの間にジャンプ台となる小さな上り坂を作成するという動き。これによってナットレイがブリムオンの上を通り過ぎ、攻撃の射線上に入らないように操作。その目論見通りナットレイが空を飛んでいく。

 

 ダイオウドウと同じく、空中で自由の効くポケモンでは無いナットレイの着地は隙だらけ。なのでそこを狙うように、ニンフィアが輝く焔を発射。ナットレイが地面に着地すると同時に焔をぶつけることで、今度は消されることなく着火し、ナットレイが燃える球となって転がり始めた。

 

「ナナッ!?」

「パォッ!?」

 

 そんなナットレイが転がる先にいたのは、今しがたストーンエッジを打ったばかりのダイオウドウ。

 

 坂の向きを微妙に調整することによって、ナットレイが転がる先をダイオウドウに向け、フレンドリーファイアを誘発するというぼくの作戦だ。このまま行けば、ほのおタイプの技で大ダメージを受けているナットレイが、ダイオウドウを巻き込んでさらに大きなダメージを受け、一気にこちらが有利な状況が出来上がる。

 

(なんなら、ほのおタイプが大の苦手なナットレイくらいは、これで倒れてくれたら嬉しいのですが……)

 

「ダイオウドウ、『ストーンエッジ』。ナットレイは触手を伸ばしなさい」

「パオォッ!!」

 

(やはり甘くは無いですか)

 

 起こるかもしれない展開に少しだけ希望を持ってみるものの、それを打ち砕くようにダイオウドウが吠え、前足を地面に叩きつける。すると、このエネルギープラントの至る所に岩の柱が発生し、そのひとつに向かって、ナットレイが転がりながら、身体から伸びている3本の触手のうちの1本を引っかけ、引っ掛けた岩に柱を中心に弧を描くように移動。これによって自身の軌道を操作できるようになったナットレイは、岩を起点にUターンをして、ブリムオンに向かって再び突進をしてきた。

 

(ブリムオンの周りに沢山の岩の柱……今はまだ避けられるかもしれませんが、じり貧にしかならなさそうですね)

 

 ナットレイの突撃はまだ避けることは可能だ。今しがた使った岩の坂を再びサイコキネシスで動かして調整すれば、またブリムオンの頭上を飛んでいくことになるだろうから。が、既にブリムオンは岩の柱に囲まれている状態となっている。なので、1度や2度避けたところで、向きを変えてナットレイは再び襲ってくる。

 

 勿論向こうも現在進行形で身体が燃えているため、常にダメージは入っているものの、この炎のせいで余計に火力が上がっている今のジャイロボールを受けたら、下手をすれば今のナットレイが受けている以上のダメージを受ける可能性がある。

 

 この攻撃を受ける訳にはいかない。

 

「ならこの手で……ブリムオン!!何とか耐えてください!!ニンフィア!!お願いします!!」

「リオッ!!」

「フィッ!!」

 

 ぼくの指示でニンフィアが走り出し、ブリムオンが坂を操作。これによって再びジャンプしたナットレイが、ブリムオンの頭上を飛び越え、まずは1回回避。が、少し走ったところで再び岩に触手を引っ掛けてまた軌道操作。ブリムオンに向けて3度目の突進を開始する。

 

(次弾が速い……けどまだ間に合う)

 

 触手を引っ掛けた岩が思いのほか近かったせいで、さっきよりも速くブリムオンに到達しそうなその攻撃は、それでもまだブリムオンのサイコキネシスの方が速い位置。それを見越し、すぐさま坂を操るブリムオン。

 

「『パワーウィップ』」

「ナッ!!」

 

 が、ここに来て縦回転しながら横回転を加えることで、触手を水平に凪いで攻撃してきたナットレイ。これにより、岩の坂にパワーウィップが直撃して破壊。ブリムオンを守るものが無くなってしまう。

 

 邪魔者はなくなった。今度こそ仕留める。

 

 そんな気概を見せながら、ナットレイがさらに加速して、ブリムオンに向かって突進していく。

 

「……かかった。ニンフィア!!」

「フィア!!」

 

 トドメをさしてやるとばかりに猛進していたナットレイ。そんな彼の身体が、ブリムオンに当たる数歩手前で、地面の中に吸い込まれていく。

 

 ニンフィアがあなをほるで掘っていた落とし穴。

 

 研究所の床に穴を開けるのは如何なものかと思いはしましたが、ストーンエッジで山ほど岩が生えているし、何よりもぼくが気にする所ではないので知らんぷりです。

 

 今はとにかく、穴に落ちて完全に隙だらけなナットレイにトドメを刺すのが先決。

 

「ブリムオン!!ニンフィア!!『マジカル━━』」

 

 

「どかーんと一発、やって見せましょうかね!!」

 

 

「っ!?ブリムオン!!ニンフィア!!下がってください!!」

 

 ナットレイを戦闘不能にしようとしたその瞬間、空間に響くのは委員長の声。

 

 それにつられて視線を向ければ、そこにはダイマックスボールを投げた委員長の姿。

 

 

「パオオオォォォッ!!」

 

 

 そして、空中で割れるダイマックスボールから現れた、キョダイマックスダイオウドウ。

 

「……ここからが本番ってことですかね」

 

 ついに切られた委員長の切り札を前に、ぼくも対抗するべく、そっとバンドとスーパーボールの準備をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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