「さてと……今から繰り出す技で状況が良くなるといいねぇ」
「ブリムオンは『サイコキネシス』でありったけの岩を集めて盾を作り、ニンフィアは『あなをほる』で避難してください!!」
ローズ委員長の言葉を聞き流しながら、こちらは慌てて次の一手を凌ぐための行動を開始する。
ナットレイにとどめを刺そうと意識がダイオウドウから離れた隙に行なわれてしまったこのキョダイマックス。完全に非はこちらにあるので甘んじて受け入れはするのだが、対策をするかしないかはまた別問題。おそらく飛んでくるであろうあの技をまともに受けてしまえばこっちはひとたまりもないのだから、回避行動ひとつとってもこちらは必死だ。
(ナットレイが穴にハマって、未だに上手く動けていないことは不幸中の幸いでしたね)
「ダイオウドウ、『キョダイコウジン』」
「っ!?来るっ!!2人とも準備を━━」
「パオオオォォォッ!!」
ブリムオンが自身の周りに岩の壁を作りあげ、ニンフィアが地面に潜って逃げる準備を整えたところで空間内に響き渡るダイオウドウの声。
いつもの姿と違って、二足歩行となって胴が縮んだ代わりに、鼻がさらに肥大化した姿となったダイオウドウが、その自慢の鼻で地面を強く叩いた瞬間、薄緑色をした銀色の液体が地面を走り、その液体が急に固くなって棘となり、至る所に突き刺さっていく。
その威力は凄まじく、攻撃の衝撃によって地面はめくれ、あれだけ生やしていた岩の柱は悉くが打ち砕かれ、辺りに破壊を撒き散らしていく。
「リオッ!?」
「フィッ!?」
「……さすがに無傷突破は無理ですよね」
結果、ブリムオンの盾は砕かれ、穴に隠れていたニンフィアは引きずり出され、決して小さくないダメージを背負うことになる。
「ブリムオン『サイコキネシス』!!ニンフィアは『でんこうせっか』です!!」
しかし、受けるダメージを軽減させることが出来ているのは確かで、2人とも攻撃に打ち上げられてはいるものの、ブリムオンは岩が、ニンフィアは地面がクッションになってくれたおかげですぐに次の行動には移ることが出来た。
ブリムオンは空中でまだ形の残っている岩を集めて足元に動かし、その上に乗って岩そのものを動かすことで移動を行い、ニンフィアは先に固まって棘になったキョダイコウジンを足場として、空中を飛び回ることで追撃を回避。2人とも追撃を受ける訳にはいかないと必至に逃げていく。
その甲斐もあってか、この後に迫ってきた薄緑の棘は全て回避することに成功し、何とか必要最低限の被害で耐えることが出来た。
しかし、やはりこちらの状況は悪い。
「フィ……っ」
「リオ……っ」
「鋼の粒……邪魔ですね……」
キョダイコウジンの効果である鋼の小さな棘を空中に漂わせることで、相手にポケモンに対して常に少量のダメージを刻み続けるフィールドを作り上げられる。これによって、こちらのポケモンは何かしらのアクションをする度に小さなダメージを受けるし、特にポケモンを交換した時にはより大きなダメージを受けることとなる。まぁ、今のところポケモンを交換する予定は無いので、こちらの効果はあまり気にしなくていいが、もしブリムオンかニンフィアが倒れてしまった時は次のポケモンを出さざるをえないので、どちらにせよこちらにとってはマイナスでしかない。
「うんうん、想像以上の効果ですねぇ。これなら何とかなりそうだ」
なかなか大きな被害を受けたこちらを見ながら満足そうに頷いた委員長は、この間にナットレイもしっかりと近くに戻し、さらにこちらを追い詰める準備を整える。
自身の計画が着実に進んでいるのが、何よりも嬉しいらしい。
(その勘違い……正さないとですね)
その姿を見て対抗心が燃え始めたぼくは、ダイオウドウに対抗するべく、左腕のダイマックスバンドを光らせながらスーパーボールを構える。
「行きますよ、ブリムオン」
ブリムオンにリターンレーザーを当て、ボールに戻した後にエネルギーを注入。ダイマックスボールとなったスーパーボールを、力いっぱい空に向かって投げていく。
「ぼくたちの色で塗りつぶしましょう。ブリムオン、キョダイマックスです!!」
「リオオオォォォッ!!」
空中で割れたボールから飛び出すのはキョダイマックスブリムオン。
委員長に貰い、エスパー能力を持つぼくに同じエスパータイプとして寄り添い、フェアリータイプのジムにお世話になり始めると同時に進化を果たし、同じようにフェアリータイプを身につけて、ここまでぼくに着いてきてくれた最高の相棒。
その相棒が咆哮を上げながら力を解放。溜め込んだサイコパワーを解き放ちながら自身の存在を証明していく。
「『キョダイテンバツ』!!」
「リオオオォォォッ!!」
そんなブリムオンがピンク色のオーラを解き放つと同時に、天井があるはずの空から壁を無視するかのように3つの星を落としていく。
フェアリータイプの力をしっかりと内包したその攻撃はダイオウドウに向かって真っすぐ直進。その足元に到着すると同時に大きな爆発を起こして、ダイオウドウたちにダメージを与える。
「ダイオウドウ、『ダイロック』」
と思っていたら、地面から一気に岩が隆起し、地面に落ちていく星を逆に持ち上げるように立ち上っていく。
ただ、ダイロックによって出て来る岩の突起は1つしかない。いくら大きさがあるとは言えども、3つばらばらの位置に落とすことができるダイフェアリー全てを止めることは出来ない。そのこともあって、空から落ちてきた星のうち2つは岩によって破壊されるものの、1つはちゃんと地面に着弾。同時にピンクの爆発を起こし、ダイオウドウとナットレイにダメージを与える。
とは言いつつも、やはり3つで1つの技であることに変わりはないので、効果がいまひとつなことも相まって、ダメージ自体は全然入っていない。
しかし、この技の目的はダメージを与えることではない。
「ナゥ……!?」
「パァォッ!!」
キョダイテンバツの追加効果である全体へのこんらん付与。これにより、ダイオウドウとナットレイが平衡感覚と意識を失い、まともに立てなくなる。
「ニンフィア!!『でんこうせっか』をしながら『マジカルフレイム』をチャージ!!」
この隙をついて、相手の懐に入って強力な一撃を与えるためにでんこうせっかで一気に距離を詰めるニンフィア。
こんらんしてまともに動けない相手にこの進撃を止めることは不可能で、簡単に位置に着いたニンフィアは、ナットレイに向かって溜めた炎をぶつける準備をする。
「ナットレイ『パワーウィップ』。周りを気にする必要はありません。全力で振り回してください」
これに対して相手が行ったのは、とにかく攻撃をやたら目ったら振り回すという行為。
ナットレイの身体から伸びている3つの緑の触手がありとあらゆる方向に振り回されていき、近づいているニンフィアの方にはもちろんのこと、近くにあるダイロックの残骸や地面にダイオウドウ、果ては、鞭がしなる勢いがナットレイ自身にまで返ってきていた。
力の限り暴れ狂う緑の鞭は、先ほど挙げたすべての存在に対して等しくダメージを与えていき、且つナットレイ自身と、ダイオウドウのこんらん状態も無理やり解除してきた。
「フィッ!?……ァッ!!」
「ナッ!?」
緑の嵐の暴力に巻き込まれたニンフィア。しかし、ここまでマジカルフレイムを何回も止められているため、いい加減ダメージを与えたかったこちらは、鞭に弾かれながらもマジカルフレイムを発射。パワーウィップで吹き飛ばさらながらだったため威力こそ万全ではないものの、ナットレイに対して確かにダメージを与えることが出来た。
ほのおタイプがかなり苦手なナットレイにとってこの一撃はかなり重く、戦闘不能にこそならなかったもののその体力はもうあとわずかだろう。もう1つ何かしらの攻撃を引っかけることが出来れば、それだけで倒せそうだ。
「フィィッ……!!」
が、こちらのニンフィアも少なくないダメージを受ける結果となっている。
原因は、先ほどキョダイコウジンによってまき散らされた鋼の棘。
パワーウィップで弾き飛ばされた際に空中に漂っていた鋼の棘がチクチクとニンフィアに突き刺さることによって、小さいダメージがどんどん蓄積されていた。
キョダイコウジンによって生まれた鋼の棘は、ステルスロックと同じように与えるダメージにタイプ相性が反映されてしまう。そのため、小さな鋼の棘は、その見た目に似合わず、ニンフィアに対してばつぐんのダメージとなって蓄積される。
ブリムオンのように、どっしり構えるタイプなら構わないのだが、ニンフィアのようにでんこうせっかなどで動き回って戦うタイプにとっては、こういう障害物は特に邪魔になってしまうだろう。
(このお邪魔もの、想像以上にダメージが痛い……どうにかして排除する必要がありますね……いえ、排除するだけならそんなに難しくはないか……なら早速……!!)
「ブリムオン!!『ダイバーン』です!!」
「リオオオォォォッ!!」
予想以上に此方の動きを制限してくる鋼の棘に対してとった行動は、大火力で鋼を溶かすというもの。
マジカルフレイムを元としたダイバーンを放ち、ダイオウドウのみならず、戦場全体を高温で焼いていく。
「火力で押し切る気ですか……それはいけませんねぇ……ダイオウドウ、地面の岩を掴んで投げてぶつけなさい」
キョダイコウジンが焼かれるのは委員長も許したくないらしく、しかしここでダイマックス技を使ってしまえばキョダイマックスが切れてしまい、あと1回残っているこちらのダイマックス技に対する手札が無くなってしまう。そこで妥協点として、鋼を溶かすには至らないところまでこちらのダイバーンの火力を落とすという考えに至ったようで、それを実行するために大きな岩を鼻で掴んだダイオウドウは、これを勢いよくぶん投げる。
キョダイマックスの鼻で掴まれた岩は現状この場に残るものの中で一番大きなものだ。それを正確に投げつけており、このままでは委員長の考え通りのことが起きてしまう。
「ニンフィア!!『ムーンフォース』!!」
それはこちらにとっては不都合でしかない。なので、あちらの妨害を更に妨害するために、こちらはニンフィアでムーンフォースを発射。輝くピンクの球は投げだされた岩を砕くために直進していく。
「ナットレイではこの技を止められませんよね?」
あちらにはまだ動けるポケモンとしてナットレイが存在する。が、ナットレイは素早く動くことを苦手としており、さらに遠距離技を持っていないポケモンだ。そのためニンフィアの攻撃を止めることは出来ず、ダイオウドウが投げだした岩は呆気なく砕かれることとなる。
(よし、これでひとまず鋼の棘は気にしなくて━━)
「ナッ!!」
「……仕方ありませんね。わかりました。ダイオウドウ、
「は?」
此方の作戦が成就しそうなことにほっと一息をつこうとしたところに聞こえて来るとんでもない指示。それに驚いている間に、さっきの岩と同じようにナットレイを掴んだダイオウドウが、ダイバーンに向かってナットレイを投擲。
「ナットレイ、『ジャイロボール』です」
更に、投げられたナットレイ自身が自分から回転することによって、強烈な回転弾となって真っすぐダイバーンに突っ込んでいく。
ダイオウドウの力とナットレイの回転力が加わったこの攻撃は、それでもダイバーンを完全に消し去る威力には届いておらず、ましては体力がほとんど残っておらず、ほのおを大の苦手としているナットレイがこの技に勝てる道理はない。故に、ナットレイがぶつかると同時に小さな爆発が起き、ダイバーンの威力は少し下がってしまったものの、ナットレイは目を回し、戦闘不能状態となってダイバーンに弾かれる。
(そこまで鋼の棘を溶かされるのが嫌ですか……)
威力の下がったダイバーンはそのままダイオウドウに直撃し、小さな爆発を起こして周りをひでり状態に変えていく。しかし、技の規模が縮小したせいでダイオウドウは余裕で耐えているし、鋼の棘も依然変わりなく浮遊したまま。ダイバーンを中心としたやり取りは、委員長の方に軍配が上がる結果となった。
しかしそれはナットレイの犠牲の上で成り立っている。正直ナットレイが落ちるのであれば、鋼の棘が無くならなかったことなんて全然気にならない。むしろ嬉しい一手だ。
「……ついでに、ニンフィアはいただきますね」
「フィァッ!?」
「え……?」
人数有利。そこから一気にこちらが攻めていける。そう思ったところに再度耳に入る委員長の声。その声にまた意識を取られた瞬間ぼくの目に映ったのは、炎の塊がニンフィアに直撃し、ニンフィアが大きく吹き飛ばされる瞬間だった。
「ニンフィア!!」
轟々と燃え上がるその炎の塊の正体。それは今さっきダイバーンの威力を抑えるために自ら突っ込んだナットレイ。
ダイバーンのぶつかって爆発した瞬間、最後の力を振り絞って自身が飛ばされる方向を調節したらしいナットレイは、ものすごい勢いでニンフィアに向かって墜落していた。
自身の体力を犠牲にした特攻攻撃。
弾かれた速さも相まって、不意を突いて飛んできたこの攻撃にこちらが反応なんてできるはずもなく、ジャイロボールとダイバーンが乗った攻撃を受けたニンフィアは、この一撃によって地面に身体を横たえてしまう。
「ニンフィア!!」
「フィ……ァ……ッ!!」
戦闘不能の大ダメージ。しかし、それでも意地でまだ立ち上がろうとするニンフィアは、ボロボロになりながらも最後の力を振り絞ってムーンフォースを3発その場に作り出す。が、それを発射するまでの体力は残っていなかったようで、その球を滞空させたニンフィアはそのまま地面に倒れた。
「……あなたの想い、確かに受け取りました。休んでください、ニンフィア……ブリムオン!!」
倒れたニンフィアにねぎらいの言葉を掛けながらボールに戻し、残ったムーンフォースをブリムオンのサイコパワーで操ってもらい、彼女の周りを周回させる。
「今度こそ、『ダイバーン』!!」
「一度失敗した策にまだすがりますか……『ダイロック』」
ニンフィアの想いを受け取ったところで再び繰り出すダイバーン。
ひでりによって強化されたその一撃は、しかしこの時のためにとっておいたダイロックが邪魔をするように立ちふさがってきた。
「ブリムオン!!」
「リオオオォォォッ!!」
その邪魔をする壁に向かって、ニンフィアが残してくれたムーンフォース3つのうちの1つを発射。
渾身の力が込められた妖精の輝きはダイマックス技にも決して引けを取らず、ダイロックに大きな亀裂を作り出す。
「これは……」
「忘れてませんか?今のぼくはフェアリータイプのエキスパートなんですよ?その程度の壁でばあさんが叩き込んできた技を防げるとでも?」
ばあさんに叩きこまれ、今やぼくの一番扱いやすい技となってしまったこの技は、相手のタイプ不一致のダイマックス技に対抗するまでに成長した。
「これがピンクの力です!!」
「……」
罅の入ったダイロックは、タイプ相性では有利を取っているものの、やはり耐久が下がったことが災いしたのか、ダイバーンを思ったよりも受け止めることが出来ずに瓦解。ダイオウドウに大きなダメージを与えると共に、辺りに広がる高温にて鋼の棘をどんどん溶かしていく。
これでもうキョダイコウジンは役に立たない。
(最も、一番被害を受けかねないニンフィアはもう倒れてしまいましたが……いえ、これで万が一のポケモン交換も可能になったと前向きに捉えて……さっさと攻めましょう)
「ブリムオン!!『サイコキネシス』です!!」
「ダイオウドウ、『ストーンエッジ』」
お互い時間制限がきて、ダイマックスが解けたブリムオンとダイオウドウ。
ここからは小細工無しの1対1のバトル。それを象徴するかのようにダイオウドウに迫っていくサイコパワーと、それを止めるべく生えてきた岩の柱がぶつかり合い、激しい音を周りにこだまさせる。
「『10まんばりき』です」
「『マジカルシャイン』!!」
サイコパワーを受けて形を崩していく岩の柱に対してダイオウドウは、自身の巨体を活かしてタックル。これによって崩れた岩石たちが勢いよくブリムオンに向かって打ち出される。
これに対してこちらは、ブリムオンを中心に虹色の光を放出。飛んできた岩に対するバリアを貼るように展開し、その目的通りしっかりと防御しきる。
「ダイオウドウ、『ヘビーボンバー』です」
が、どうやら今の岩はこちらの視界と意識をよそに向けるためのものらしく、ブリムオンが岩に集中している間に飛び上がったダイオウドウが、その体重を持ってブリムオンを踏み潰そうとしてきていた。
(ここに来てシンプルに来ますか……案外、そういうのが困ったりするんですよね)
「ブリムオン!!『ムーンフォース』を発射!!」
「『アイアンヘッド』で弾きなさい」
足の遅いブリムオンではこの攻撃は避けられない。そう判断し、少しでも威力を落とすために、ニンフィアから貰った残り2つのムーンフォースをダイオウドウに向けて発射。これでダイオウドウの態勢を少しでも崩せたらという考えだったのだが、ここに来てまさかのダイオウドウが、ヘビーボンバーを構えながらアイアンヘッドを行うという器用な事をしてきた。
「君がフェアリーを得意なように、私もはがねが得意なんですよねぇ……忘れていませんか?」
落ちてきながら額を鈍色に染めたダイオウドウは、ムーンフォースに向かってこれを叩きつけ、2つの球をそれぞれ左右に弾き飛ばし、自身の落下エネルギーを落とすことなくブリムオンに突撃していった。
「くっ、『マジカルシャイン』です!!」
「リオッ!!」
ここまで接近を許してしまえばマジカルフレイムのチャージは間に合わず、サイコキネシスではダイオウドウの体重を逸らしきれない。かと言って、ぶんまわすで接近戦を挑めば間違いなく力で負けてしまうので、虹色の輝きで頑張って受け止める。
「リォ……ッ!!」
「パオオォォッ!!」
ぶつかり合う光と身体。
一瞬拮抗したと思われた2つの技は、しかしタイプ相性と体重差のせいで生まれたヘビーボンバーの高威力を前に、ブリムオンの光が徐々に弱くなっていく。
このまま行けば、押しつぶされるのも時間の問題だろう。
「これで詰み。ですね。早く諦めてはいかがかな?大丈夫。君が諦めても誰も不幸にはならない。ちょっと、犠牲になる人が増えるかもしれないだけで、その人たちだってガラルのために生を全うできるのですから、誇らしいでしょう?」
「……」
この状況を見て勝ちを確信した委員長がなにか喋ってくるが、今はそれどころでは無いし、おそらく聞いても意味の無いものだと思っているので無視。ぼくはひたすら、目の前で頑張り続けているブリムオンに視線を向け続けていた。
「はぁ……」
そんな態度をとっているぼくが面白くないのか、委員長はため息をひとつ。
「だんまりは寂しいねぇ……まぁ、会話をしてくれないのなら仕方がない。ダイオウドウ、トドメを」
「パオオオォォォッ!!」
委員長の合図をきっかけにさらに体重をかけてくるダイオウドウ。
既に勝っているというのに、こちらの心を折るために余分に力を込めて攻めてきた。
「……」
それでもぼくの態度は変わらない。
徐々に光を小さくしながら、それでも耐え続けているブリムオン。
相手からしたら負けが決まっているのに、ひたすら無言で耐え続ける無駄なことをしている姿に映っていることだろう。それが面白くない委員長の表情が、ここに来てようやく不満気なそれに変わり始める。その時、ついに場面は動いた。
「パォッ!?」
「……は?」
突如ダイオウドウの側面に打ち付けられたピンクの球。それがダイオウドウに直撃すると同時に爆発を起こし、ダイオウドウの身体から力が抜けた。
「『ぶんまわす』!!」
「リオッ!!」
この瞬間を待っていたこちらは、態勢を崩したダイオウドウの身体を、頭部から伸びている触手にて思いっきり殴打。
右から左に振り抜かれたその一撃は、ダイオウドウをこちらから見て左に吹き飛ばす。
「『ムーンフォース』!?なぜ!?その技はさっきダイオウドウが━━」
「飛ばされたのなら、跳ね返せばいいじゃないですか。好都合なことに、反射するものに困りはしませんから」
「まさか!?」
ぼくの言葉でなにかに気づいた委員長が慌てて周りに視線を回す。するとそこには、あちこちに
種は簡単。これはダイオウドウが作ったキョダイコウジンの残骸で、そこにダイバーンをぶつけることによって溶けだした金属の形が変形し、棘の状態から平べったい姿に変わっていた。これをサイコキネシスで周りに浮遊させることによって、簡易的な反射鏡として利用。今しがたダイオウドウを襲ったムーンフォースは、アイアンヘッドで弾かれた後、これらに当たることによって反射され、ダイオウドウの下に帰ってきたということだ。
「言ったでしょう?今のぼくは、ばあさんに全てを叩き込まれた最強のフェアリートレーナーなんです」
ここまで蓄積したダメージも相まって、吹き飛ばされたダイオウドウはもう満足に動けるかどうかも怪しい。
「忘れているのはあなたの方だ」
そのダイオウドウにトドメを刺すべく、ブリムオンがマジカルフレイムをチャージ。
「ぼくのことも、みんなのことも、……そして、ガラルのことも」
そしてチャージが終わると共に、ぼくが右腕を上から下に振り下ろすことでそれを合図とし、ブリムオンから輝く焔が解き放たれる。
「もう一度、最初から復習することをオススメしますよ」
ダイオウドウに直撃した焔は大きな爆発を発生させ、ダイオウドウを飲みこんだ。
「パ……ォ……」
その爆発が収まった場所には、目を回し、もう戦うことの出来ないダイオウドウの姿があった。
ビートVSローズ
勝者、ビート
ムーンフォース
まるで某シャボン玉みたいな形ですね。わざわざこんなことをしなくてもいいのでは?と思うかもしれませんが、残念ながらブリムオンはムーンフォースを覚えることが出来ません。いつかも言った気がしますが、どうしてなんでしょうか?