「ふぅ……勝てた……」
地面に倒れるダイオウドウの姿を見てほっと一息。
もちろん最初から負ける気は無かったのだが、いざこうして決着が着いたところを目にすると、身体に溜まっていた緊張が一気に抜けていくのを強く実感する。やはり、委員長相手というのは、自分が思っている以上に強いプレッシャーがあったらしい。
「え、ビート!?なんでこんな所に!?」
「ん?」
何とか手にすることが出来た勝利の余韻に少しだけ浸っているところに聞こえてくる新しい声。
この声を聞いて、一瞬相手側に援軍が来たのかと身構えそうになるものの、現れた人間が自分の知っている人たちだったため、すぐに警戒をといて言葉を返す。
「なんだ、あなたたちですか……一体何をしていたんですか?委員長ならもうぼくが倒しておきましたよ」
「ローズさんを……倒した?」
「……嘘は言ってなかとね」
驚いていたホップに言葉を返したところで、ぼくの言葉を信じられなかったらしいユウリとマリィは、このエネルギープラントの中心で倒れているダイオウドウとナットレイを見てようやく嘘では無いことを信じてくれたみたいで、そのことを確認したユウリたちはゆっくりと警戒を解く。が、その態度が少しだけ癪に触ったぼくは、不機嫌さを隠すことなく言葉を続ける。
「こんな所で嘘を吐くわけないでしょう?状況が状況故に心配するのは勝手ですが、ぼくの腕を甘く見ないでもらいたいね」
「お、おう……悪かったぞ……」
腕を組みながらそう言い放ったぼくに対して素直に謝罪を入れるホップ。
「……こう素直に謝罪されると、それはそれでなんか変な気分ですね」
「あ、いつものビートだ」
「このひねくれ具合がそうとね」
「もしかして喧嘩売られてます?」
ホップの態度にちょっと解釈違いを起こしていると、陰からユウリとマリィのチクチク言葉が聞こえてきたのでこれにも返答。何故か微笑ましそうにこちらを見ているその姿に、少しだけイラッとしてしまった。
「ふっふっふ……さすが、ですねぇ」
「「「っ!?」」」
そんな、同期による緊張感のまるでないやり取りをしているところに突如響くクラップ音。
地下施設故にやけに強く反響するその音の発生源は、言わずもがな委員長。ぼくたちを褒めるような言葉を落としながら、微笑むような表情とともにこちらを見つめてくる姿に、ぼく以外のメンバーはみんな、驚き半分、警戒半分と言った表情を浮かべて見つめる。
ちなみにぼくは、呆れた表情を浮かべている。
だって、どうせ聞いても意味の無い言葉が返ってきそうだから。
「深い夜をぬけて、新しい世代がこんな沢山この場所にたどり着くなんて……いやはや、我が愛しのガラルの未来は明るいですね」
「そのアンタが1番ガラルを壊しているくせに!!」
ぼくたち4人の姿を見て嬉しそうに言葉を落とした委員長に対して、マリィが吐き捨てるように言葉を返す。ホップとユウリも全面的にマリィに賛成らしく、言葉こそ出してはいないものの、表情はとても歪んでいる。
「これに関しては必要経費ですよ。ガラルのエネルギー問題は、すぐにでも解決しないといけない急務ですからね」
「必要経費……だって?」
そんなこちらの不満を知る由もないあちらは、さらに言葉を投げることによって、こちらにもっと不満を追加していく。その証拠に、ホップは今にも殴りかかりそうな程の怒りを放ちながら委員長の方を見ていた。
「なんで……」
「ん?」
そんな中、静かに響くユウリの言葉。
「なんで……こんなことをしたんですか……」
静かに怒り、けど冷静に言葉を紡ぐ彼女からは、とてつもない圧を感じる。
このぼくまでもが、それに一瞬飲まれてしまいかけたくらいには、それは強烈だった。
「単純ですよ。ジョウト地方にいる時渡りのポケモンの力で、滅んでしまうガラル地方を見たからです。未来にここは人の住まない廃墟になってしまうからです。こんな素晴らしいガラル地方が、そんな未来をたどるだなんて、あなたがたも嫌でしょう?」
だが委員長にとってはこの圧も、自身の夢の前には意味をなさない。
その証拠と言わんばかりに、委員長は一切臆することなく、ぼくがフリアと合流する前に話していた言葉をそのままユウリたちにぶつけていった。
最初こそはホップもマリィも半信半疑に聞いていたが、コスモッグというポケモンの名前が出てきたあたりから顔色が疑問から再び怒りに変わり、しかし未来のためという言葉を盾に次々と演説を行う委員長を前に、次第に表情を曇らせていく。
委員長の言葉は、間違っていないのではないか?
上に立つ人間ということだけあって、こういう時の口の回り方はとても上手い。
委員長が作り出す空気に、ホップもマリィも呑まれ始めていた。
(……ふん、くだらない言葉に惑わされて……仕方ないから一言くらい……)
しかし今はこんな所で時間を無駄にしている場合では無い。どうせ話を聞こうが聞くまいが、ぼくたちのやることに変化がある訳では無い。だから、ここいらで一言挟んで、みんなの意識を戻そうと口を開き……
「……委員長は、ガラル地方の何が好きなんですか?」
しかし、ぼくが何かを発する前に響いたユウリの声。
決して大きくは無い、しかしとてもはっきりと、芯の通ったそれが響いたことにより、一瞬ここにいる全員の時が止まる。
「……ん?」
それは委員長も同じだったようで、ユウリの雰囲気が急に変わったからか、不意をつかれたのか、はたまた、質問の意味をすぐに呑み込めなかったのか、時間をかけた上で、生返事しか返すことの出来なかった委員長は、今の質問の意図を聞くために、首を傾げながらユウリの方を見つめる。
一方でユウリは、今ので伝わっていないことに少しだけ残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに表情を戻し、再び委員長へと言葉を投げる。
「私はガラル地方が大好きです。とても愛しています。誇りに思っています」
「そうだろうそうだろう?」
次は何が言いたいのかしっかり伝わるように、ゆっくり、順序だてて喋るユウリと、そんなことなんか気にせず、とりあえず現時点でのユウリの言葉に満足感を得ている委員長。
その姿を見て、今度は悲しいものを見るような表情を浮かべたユウリが、言葉を続けた。
「この街で作られた歴史が、この街で出会った人たちが、この街で経験した出来事が、その全てがかけがえの無い宝物です」
「うんうん素晴らしい!!さすがはチャンピオンが推薦したトレーナーだよ!!君はガラルの誇るいいトレーナーだ!!やはりガラル地方で一番大切なのは、君のような人間なのさ!!ああ、君がチャンピオンリーグに残れなかったのが本当に残念だよ!!」
どんどん悲しみの色が濃くなるユウリと、反対にどんどん明るくなる委員長。その対比が酷く歪で……
(やっぱり、ユウリはそういうことを言いたいのですね)
ユウリの気持ちを最初から理解出来ていたぼくは、今の委員長が滑稽なピエロにしか見えなくなり始めており、未だに理解ができていないホップとマリィも、そんな2人の温度差を前に、薄々何かを勘づきはじめていた。
「じゃあ……ローズさん……」
「なんだい?」
そして長い前置きを終え、ユウリが再び同じ質問を繰り出した。
「あなたは、ガラル地方の何が好きなんですか?」
「そんなの決まっている!!全てさ!!歴史、建物、空気、景色……その全てが宝物で誇るべきものだ!!君もそういったじゃないか!!」
「はい……言いました。じゃあ、そのみんなが大好きなそれらは、誰が作ったんですか……?」
「そんなの、我々が誇るべきガラルの人間が……」
この質問に対して自信満々に答えていく委員長。しかし、あるところで急に委員長の言葉が止まり、そして時が止まった。
なぜなら、ユウリの伝えたい根幹の部分に気づいたから。
「私は研究者じゃありません。私は統治者じゃありません。私は……何も知らないただの子供です」
動きを止めてしまった委員長。その姿を見て、ようやく自分の質問の意味が伝わったと理解したユウリは、言葉を続けていく。
「けど、そんな私でもこの旅を通して色々知ったんです」
目を閉じ、胸に手を当て、今までの思い出を振り返るようにしながら、ユウリの口から言葉が紡がれる。
「ジムリーダーのみんなと出会って、バトルの楽しさを知りました。アオイたちと出会って、タマゴっていうポケモンの神秘を知りました。ソニアさんと出会って、ガラル地方の歴史を知りました。ホップ、マリィ、ビートと出会って、ライバルと高め合う楽しさを知りました。フリア、ヒカリ、ジュン……他の地方の人たちと出会って、ガラル地方との違いや、ガラル地方の誇れるところを沢山知りました。バドレックスやファイヤーたちと出会って、ガラル地方の知らなかったことや過去を、更に知ることが出来ました」
その言葉はやはり大きな言葉では無い。けど、すっと心に入ってくる、不思議な力があった。
「何かを知る度に私はガラル地方が好きになって、どんどん知りたいって思いました。そんな私の思考の変換点にはいつも、人とポケモンがいました」
どこまでも真っ直ぐで、純粋な言葉。
「そんな経験をしてきた私は、人の出会い。人の絆。人の交わり……それこそが、このガラル地方というものを作りあげた根幹だと思ったんです。少なくとも、今この場にいる私たちは、そう思いました」
この言葉について行くように、ホップとマリィも横に立ち、首を縦に振る。
その姿が、少し眩しい。
「人とポケモンがいないと、何も生まれない。勿論、建物や景色、雰囲気も大事です。けど、人とポケモンが居ないとそもそも始まりもしない。素人意見ですけど、私は……私たちはそう思いました。だからこそ……」
「……この地方を統べる、この地方が大好きな委員長には、いくらガラル地方の未来がかかっているとわかっていても……犠牲が出ていいなんて、必要経費だなんて……言って欲しくなかったです」
「っ!?」
全てを言い終えたユウリは、ようやく表情を元に戻した。
その姿は、まるで付き物が取れたかのようにスッキリしたものとなっており、とりあえずは言いたいことが言えたことに、ひとつの満足感を得たようだった。
「起きてしまったことは仕方ありません。ムゲンダイナは私たちが絶対に止めます。もう犠牲者を出さないために……だから、失礼します」
その言葉を最後に、ユウリとホップ、そしてマリィは身体を反転させ、この広い空間から出ていこうとする。おそらく、この場所の入口近くにあったエレベーターに乗って、屋上へと進むつもりなのだろう。
ぼくも、そんな彼女たちについて行こうとして、しかし少し立ち止まり、振り返る。
「……」
そこには、膝を着いて、俯いているローズ委員長の姿。
きっと委員長も色々考えたのだろう。
今回の事件だって、色々考えた末の結論だろうし、最初から犠牲者ありきの作戦なんて考えていなかったはずだ。けど、焦りやらなんやらのせいで、いつの間にか一番大事なことを忘れてしまっていた。
ユウリのおかげでそのことに気付けはしたものの、既にブラックナイトは始まっているし、この地方を代表するものとして、そんな簡単なことを忘れてしまっていたことそのものがとてもショックだったのだろう。
「だから言ったでしょう?復習をするべきだと。……その様子では、もう何も言わなくても良さそうですが……」
「……」
返答は無い。
恐らく、そんな余裕なんてないから。
だから、最後に一言だけ告げる。
「願わくば、ぼくを拾い上げてくれたあの頃のあなたに、戻って欲しいですね」
「……っ」
言葉を言い終えたと同時に、ぼくも足を進めていく。
もう振り返ったりはしない。
ここから先は委員長次第だから。
それに、まだブラックナイトは終わっていない。この夜を超えるために、今も屋上で激闘が繰り広げられているはずだ。その加勢に行くためにも、早く移動しなくてはならない。
「ビート!!早く行くぞ!!」
「わかってるよ」
ぼくよりも先に進んでいたみんなが振り返って待っており、代表してホップが声を上げて急かしてくる。
既に分かりきっていることを言われて少しだけ不満を感じたぼくは、素っ気なく返答しながら、ちょっとだけ早歩きでホップたちの下へ行く。
(やれやれ、少しは落ち着いて欲しいですね……)
既にエネルギープラントのでかい空間の外に出ており、細い通路から顔を出しているだけの彼らの所に、内心呆れながら合流したぼくは、今度はちゃんと足並みを揃えてエレベーターの方に歩こうとし……
「ペアッ!!」
「っ!?……なんですかこのポケモン……」
急に目の前に現れた大きなポケモンに、一気に警戒心をあげる。
「わわ!?ストップ!!この子は悪い子じゃないの!!」
ともすれば、今すぐにでもポケモンを呼び出して戦おうとしていたぼくを必死に止めるユウリは、早口でぼくにこのポケモンについての説明を始める。
「この子はほしぐもちゃん……コスモッグの家族みたいなの。そしてここにはそのコスモッグを探してきたみたいなんだけど……ビート、コスモッグがどこにいるか分からない?」
「コスモッグ……委員長が映像でブラックナイトを起こすときに一緒に掲げていたあのポケモンですね」
説明を受けてすぐに理解したぼくは、この施設に入ってからの記憶を思い出していく。が、ユウリの言うコスモッグというポケモンを目にした覚えは無い。しかし同時に、あの時の委員長が話していた場所の背景と似たような場所を目にした記憶は思い出した。
「コスモッグ本人を見てはいません。……が、おそらく委員長が中継の時に使ってた部屋は見ましたね。確か……あそこだったか……」
そうやって指を差した方向は、これからぼくたちが乗るエレベーターとは逆方向の道の先。
「ペアッ!!」
「あっ!?気をつけてね!!」
その指を追って、目的の部屋を見つけた見知らぬポケモンは、弾かれたようにそちらへと飛んでいった。
その背中に対して一言掛け終えたユウリは、ぼくの方に振り向いてお礼を言ってくる。
「ありがとうビート」
「お礼は結構ですよ。たまたま覚えていただけだし、そもそもまだあの部屋に残っているかも分かりませんからね」
「それでも……ありがとう」
真っ直ぐぼくの目を見つめながらお礼を言ってくるユウリ。その純粋さが妙にむず痒く、ついつい視線を逸らしてしまう。
「ああ、もう……調子が狂いますね……いいからさっさと行きますよ。こんな所で油を売っている余裕なんてないんですから」
ぼくらしくない。つくづくそう思ったぼくは、ユウリの視線から逃げるようにエレベーターの方へ歩き出し、少し乱暴にボタンを押す。
利用者がフリアたちしかいなかったせいか、未だに屋上にあることを証明するかのように灯してあった光を見るに、ぼくたちのいる地下まで来るにはそこそこの時間がかかりそうだった。
そうなれば、暇な時間を潰すために話しかけられるのは、ある意味では必然だ。
「しっかし、まさかビートまで来ているとはな。フリアとの試合、凄かったぞ」
「当たり前です。誰にものを言っているんですか?」
「その態度も相変わらずだな……負けてるのに」
「次はぼくが勝つので問題ありません。チャンピオンリーグに残れなかったあなたこそ、もっと努力するべきでは?」
「言われなくてもしてるぞ!!次勝ち上がるのはオレだからな!!」
繰り広げられるのはホップとの軽い言い合い。
傍から見れば仲の悪い人同士の言い合いに見えるが、ぼくとホップのやり取りなんてこれくらいがちょうどいい。お互いが気兼ねなく、こういう軽口が言い合えるというのも、ひとつの形ではないだろうか。
「でも、アラベスクタウンのことは確かに心配と。ポプラさんは大丈夫と?」
「あのばあさんのことなら気にしなくても大丈夫ですよ」
そんなぼくとホップのやり取りを聞いて、それでも心配が勝ってしまっているマリィは、不安そうな顔をしながらぼくに向かって質問を飛ばしてくる。しかし、ここ数ヵ月みっちりばあさんに鍛えられたぼくからすれば、そんな心配なんてするだけ無駄にしか思えなかった。
ぼくが返事をすると同時に電子音が響いて、エレベーターが到着した合図を奏でながら扉を開けてきたので、順番に乗車。業務用の役割も兼ねているのか、そこそこ大きい箱の中に乗り込んで、目的地のボタンを押し、扉が閉まるのを見ながら、ぼくはさっきの話の続きを口にする。
「あのばあさん、衰えたとか言いながら全然そんなことないんですよ。……そりゃ、現役の頃から比べたら確かに弱くはなっているのかもしれませんが……」
エレベーターが動き出す独特の重力変化を感じながら思い出すのは、ばあさんとのバトルで繰り出された数々の作戦と、あの杖やら動きやらでこちらの動きや能力を間接的に操る魔法のような動き。
魔女の異名通りのその手札の多さと奇妙さは、悔しいことに明確にぼくよりも強い点だ。未だにばあさんに勝ち星を取れていない点から見ても、正直あのばあさんがそんじょそこらのポケモンに負ける未来が見えない。
「底が知れなさすぎるんですよ。心配するだけ無駄です。寧ろ、負けてくれた方がこれから超えるための参考になってありがたいくらいですからね」
「……ふふ」
「……なんですか?」
「ううん、なんでもない」
きっと今も、涼しい顔をしながら、襲いかかってきている野生のポケモンたちを追い返していることだろう。
不気味な笑いをしながら無双をしているばあさんを思い浮かべながらそうやって話していると、急に小さな笑い声が聞こえ、そちらに視線を向ければ、口元を抑え、隠そうとはしているものの、それでも隠しきれてないほど笑いながら肩を震わせているユウリの姿。
その姿に少し不満を抱いたぼくは、若干睨むような視線で彼女を見る。が、当の本人はまるで気にした様子もなく、寧ろ笑顔すら携えながらこちらを見つめ、言葉を続ける。
「ただ……楽しそうに話すなぁって思って」
「え……?」
ユウリにそう言われ、右手を頬に持っていくと、確かに口角が少し上がっているのがわかった。
「っ!?」
そうやって自覚した瞬間、妙な恥ずかしさに襲われたぼくは、反射的に手で口を隠す。が、そんなことをしてしまえば、ぼくが今の状態を楽しんでいるということを逆に証明してしまう。当然それに気づいているユウリは、更に笑いながら言葉を続ける。
「やっぱり、今の生活が楽しいんでしょ?」
「……やかましいですよ」
「ほんと、変わったよね。いい方向に」
そっぽを向きながら言葉を返し、せめてもの抵抗をするものの、彼女には通じていないのか笑顔を崩す気が一切見えない。
「最初にあなたを見た時は、正直大嫌いだったけど……うん、今のあなたは、とても好印象かも」
「……全く、恥ずかしてもなくそういうことを……そういうのはフリアに言ったらどうですか?」
「なっ!?」
そこから更にこちらを辱めて来ようとしてきたので、すかさずこちらも反撃。相手をからかっていいのは、からかわれる覚悟のある人間だけである。
「けど、ユウリの言う通りほんと丸くなったとよね」
「だな。ポプラさんの所にお世話になってから、本当にとっつきやすくなったよな」
「だから、ぼくのことはいいと言っているでしょう……」
が、機能停止したユウリの代わりに今度はホップとマリィまでもがこちらに攻撃してくる。
この言葉によって、ただでさえムズムズしていたものがさらに大きくなった気がした。このままでは、このムズムズのせいでこの先に不調をきたす可能性があるので、さっさと意識を別の方へ向けさせる。
幸いにも、エレベーターはあと少しで屋上へとたどり着く時間になっている。
「いいから、さっさと気合入れてください。……そろそろですよ」
「わかってるって。だからこそ、こうやって会話してるんだ」
「そうと。……流石に緊張がすごかけんね。ほら、ユウリ!!」
「う、うん……もう大丈夫……」
なんて話しをしている間に、小さな電子音と共に屋上を表す表示のランプが灯る。
「いよいよ、だな」
「「「……」」」
ホップの言葉にみんなで頷きながら、ぼくたち4人全員が気持ちを切り替えてゆっくりと開く扉を見つめていく。
この先に待ち受ける最後の敵と、それと戦っている2人の下への道が、目の前に広がっていく。