【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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345話

「なんだよ……これ……」

「これが……ムゲンダイナの本気……?」

 

 ホップと私の口から思わず盛れる言葉。

 

 この言葉の向けられた先にいるのは、空中より向けられる巨大な2つの手。

 

 まるでこれが本来の姿とでも言わんばかりに堂々と宙に浮かぶその姿は、見ているだけでこちらを圧倒してくる。また、実際身体から溢れ出ている力は周りの物にも物理的反応を起こしており、先の戦いによって生まれた瓦礫たちが勝手に宙に浮かび上がり始めていた。

 

 さらに奇妙なことに、急に漂うダイマックスエネルギーが霧状に固まり始め、その霧がまるでプロジェクターのようにある映像を流し始める。

 

「これ……スパイクタウンと!?」

「アラベスクタウン……」

 

 その映像は、ガラル地方の色んな場所のリアルタイム中継。

 

 音声までは聞こえては来ないものの、ポプラさんとネズさんのバトル姿や、少し荒れたカンムリ雪原にヨロイ島の端っこ部分、果てはまだ無事とはいえ、奮闘しているブラッシータウンの周りの状況まで映し出されていた。

 

「本当に……どうなっているの……」

 

 サイコキネシスなどの技が発生していないのに浮かび出す瓦礫に、急に映し出されるガラル地方の各地。色々と意味のわからない現象が起こりすぎている現状に、頭の中がパニックになってしまう。

 

「しっかりしてください!!相手がどんなことをしようとも……いえ、こんな相手だからこそ、ぼくたちがするべき事は余計に変わらないはずです!!」

「「「っ!?」」」

 

 そんなパニックを追い払うのはビートの言葉。

 

 色々なことが急に起きてびっくりしてしまったけど、ビートの言う通り、こんな状況だからこそ、やらなくてはいけないことを見失ってはいけない。

 

 今このポケモンを止められるのは私たちしかいない。なら、こうやって混乱している場合じゃない。

 

「行きなさい、ギャロップ!!『サイコカッター』!!」

「頼むと!!ゾロアーク!!『あくのはどう』!!」

「行くぞ!!バイウールー!!『とっしん』!!」

「お願い!!ストリンダー!!『オーバードライブ』!!」

 

 意識が切り替わったところで、全員揃ってモンスターボールを投擲。中からポケモンを呼び出すと同時に、全員で一斉攻撃の指示を出した。

 

 が……

 

「……ッ!?」

「ゾ……ッ!?」

「ギャロップ!?」

「ゾロアーク!?どうしたと!?」

 

 指示を受け、1歩速く動き出したギャロップとゾロアークの動きがピタリと止まった。

 

 足の速い2人の動き出しが一瞬で止まったことに不自然さと驚きを感じた私は、慌ててバイウールーとストリンダーの方に視線を向ける。するとそこには、同じように動きを止めて困惑の表情を浮かべている2人の姿があった。

 

「これってもしかして……」

「うん。技が出てない……ううん、出せないようになってる!!」

 

 よくよく観察してみれば、ストリンダーたちの周りにダイマックスエネルギーの霧がまとわりついており、そこに力を吸われているのか、技が出せないようになっていた。

 

 

「「ギュアアアァァァッ!!」」

 

 

 技が出ずにつんのめってしまっている状態。そんな隙だらけの相手を見逃すはずなんてなく、その姿を確認したムゲンダイナは2人揃ってかえんほうしゃを発射。

 

 ただのかえんほうしゃでもあるにも関わらず、ダイマックスをし、姿も変わっているせいか、その規模はもはやだいもんじを……いや、ブラストバーンすら超えていた。これが2人分となっているのだから、その火力は私たちの想像以上のものとなっており、こんなものを受けてしまえば、ストリンダーたちは当然耐えられない。

 

 しかし、この赤い霧のせいでこちらは技を発動することができないため、そもそもこの技を防ぐ術を持たない。

 

「ッ!?マホホッ!!」

 

 それをいち早く理解したフリアのマホイップが、自分の判断ですぐさまクリームの壁を展開。技ではなく、あくまでも自分の持つ特徴を持って行われたこの行動は、いくら赤い霧に力を吸われようとも発動することは出来る。そのことに素早く気付いたマホイップによる現状出来うる最適解の行動は、しかしムゲンダイナの強力な攻撃を止められるほど強固なものではない。

 

「「「「っ!?」」」」

 

 マホイップのクリームによって多少は火力が下がったものの、そんなものはまるで関係ないとばかりに突き抜けてきた炎は、そのままギャロップたちを包み込み、近くにいる私たちの所まで熱気を届けてくる。

 

「みんなっ!!」

 

 その光景に思わず声をかけるものの、返ってくるものは何も無く、炎が収まったところで私たちが見たのは、やけどを負い、地面に倒れ、目を回しているストリンダーたちの姿。

 

「っ、ストリンダー、戻って」

「ごめん、バイウールー」

「……ギャロップ、戻りなさい」

「ゾロアーク、申し訳なかと」

 

 何もさせて貰えないまま倒されてしまったことに悔しさを感じながらポケモンを戻す私たちは、それと同時にどうすればいいのかという絶望感を植え付けられていく。

 

「マホ……ッ!!マホ……ッ!!」

「マホイップ、あなたのせいじゃないよ。だから気にしないで……?」

 

 その姿を見て、偶然巻き込まれることのなかったマホイップが、しかし自分がみんなを守ることが出来なかったということに責任を感じ、苦しそうな声をあげた。

 

 あんな攻撃をマホイップが1人で止められるわけがない。むしろ、あれだけの状況ですぐに反応して動くことが出来たこの子は褒められるべきだ。それはここにいるみんなが思っており、声に出してはいないものの、ホップやビートにマリィ、ギルガルドまでもがマホイップを労わるように視線を向け、そんな中で私は彼女の頭をそっと撫でた。

 

 けど、マホイップを慰める手は動いても、次のポケモンに進む手がうまく動かない。

 

(もし次のポケモンを出したとしても、さっきと同じように技が出せなくなったどうしよう……)

 

 そんな疑問が常に頭の中を動いているせいで、どうしたって動きには迷いが生まれてしまう。

 

(どうすれば……どうすれば……)

 

 この状況をどうやって打破するかを必死に考えては、どれも明確な解決になっていなさそうなので没にし、再び考えてという思考の沼にどんどんハマっていく。それでも何もしない訳には行かないので、私たちは次のポケモンである、ポットデス、サーナイト、カビゴン、レパルダスを繰り出す。しかし、やっぱり技が出ることはなく、みんなは混乱したまま棒立ちすることしかできていない。

 

(このままじゃあ、またみんなやられちゃう……)

 

「何をしているんですか。今こそ使う時でしょう?」

 

 そうやって追い込まれているところに聞こえてくるのは、こちらを責めるようなビートの声。

 

 一瞬何を言っているのか分からず、ビートのことをじっと見つめてしまう私たちだったけど、ビートの視線がある一点の所に注がれているのを理解し、その視線を辿る。

 

「「……あ」」

 

 その先にあるのは、私とホップの手に握られているくちたけんとくちたたて。

 

 まどろみのもりで拾った、おそらくこの夜を超えるためにキーアイテム。

 

 ビートの言う通り、ここで使わずして、いつ使うというのか。

 

「ホップ!!」

「ああ!!」

 

 顔を見合わせて頷いた私たちは、1歩前に出て、剣と盾を掲げて精一杯叫ぶ。

 

「お願い!!力を貸して!!」

「みんなを……ガラル地方を守らせてくれ!!」

 

 黒い夜に響く、私とホップの願いの叫び。

 

「……何も、起きないと?」

「……まさか、ここまで引っ張って本当にガラクタだったとでも言うつもりでは━━」

 

 

「ウルォーード!!」

「ウルゥーード!!」

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 叫び声をあげてすぐは何も起きず、その事に困惑の声を上げていたマリィとビート。が、2人が不満の言葉を言い終わるよりも先に、まるで私とホップの声に応えるように響き渡った2人のポケモンの遠吠え。

 

 遠くから聞こえたはずなのに、私たちの叫びよりも強く聞こえたその遠吠えの方向……まどろみのもりがある方向に視線を向ければ、そこから伸びてくる蒼と赤紫の光が、まっすぐこちらに飛んでくるのが目に入る。

 

 その光は、そのまま私たちの目の前に着地をし、同時に光をはじけさせ、その正体を露わにした。

 

 私の前に降り立ったのは、全身に数多もの古傷を作りながらも、それすらも美しいと思わせるようなスラリとした姿をし、シアン色の体毛と、三つ編みのツインテールのようになっている首毛、そして半分切れてしまっている左耳が特徴的な、四足獣のポケモン。

 

 そしてホップの前に降りたのは、同じく全身に古傷を刻みながらも、鮮やかな紅色の体毛に紺色の補色が映え、ワイルドさを感じさせるスタイルに、シアン色のポケモンと対をなすように、右耳を半分の位置で切られている四足獣のポケモン。

 

 ムゲンダイナという巨大なポケモンを前にして、一切の怯みを見せることすらなく佇むその姿は、身体の傷も相まって歴戦の戦士という言葉がとてもよく似合う。

 

「わわっ!?」

「え、なんだ!?」

 

 その姿に呆気にとられていたら、今度は私とホップの持っていた剣と盾がひとりでに反応し、勝手に宙に浮かび上がり、同時に剣は青色の、盾は赤色の光を宿しながら、さらに上空へと飛んでいく。そして、ある程度の高度まで到達したところで2つの道具はピタリと動きを止め、その身から発する光をさらに強化。もはや、光りすぎて剣も盾も、輪郭が見えなくなるのではないかと言うほど輝き出したところで、2つの道具はまるで磁石によって引かれ合い、合体。青と赤が混じり、紫色の大きな光球となり、完全に中の道具の姿が確認できなくなる。

 

「これは一体……」

「どうなると……?」

 

 そんな不思議な光景を目の当たりにし、驚きの声をあげることしか出来ないビートとマリィ。

 

 そこに私とホップを含めた4人の視線が注がれる中、紫色の光球は、シアン色のポケモンには青い光を、紅色のポケモンには赤紫色の光を注ぎ、2人のポケモンをそれぞれの色で包み込む。

 

 包み込まれた2人のポケモンは、先程の武器と同じように、光の中に身体を隠し、紫色の光と同じように宙に浮かび上がりながら、その中でとてつもなく大きな力を溜め込み始める。

 

 気づけば紫色の光球は消えており、中にあったはずの剣と盾は消失。一瞬どこに行ったのか探そうと考えたけど、もしかしたら目の前のポケモンに渡されたのではないかという考えに至った私はすぐさま捜索を辞め、光に包まれている2人のポケモンが再び姿を現してくれる瞬間をじっと待つことにした。

 

 時間にして数秒。しかし、数分にも感じるほど長い時間を経て、ようやくその光も収まり始めたところで、青と紅の光が弾け、光の中から生まれ変わったシアン色とマゼンタ色のポケモンが姿を現した。

 

 

「ウルォーード!!」

「ウルゥーード!!」

 

 

「っ!?……これが、剣の王と盾の王の姿……」

「凄いぞ……ラテラルタウンで見た石像まんまの姿だぞ……!!」

 

 先ほど私たちの前に現れた2人のポケモンが、剣と盾の力を受けて解放された、おそらく真の姿と思われるフォルム。

 

 青色のポケモンは黄金に輝く剣を口に咥え、顔には騎士の鎧、背中には金色の翼のような装飾、そして首元から伸びていたみつあみの毛は解かれてなびいた、神々しい姿に変化。そして紅色のポケモンは、全面煌めく盾状の装甲で覆い、体毛はマントの様にたなびかせているという、こちらもシアン色のポケモンに負けず劣らずの神々しい姿をもって、雄たけびをあげた。

 

「これが、英雄伝説のポケモン……」

「ザシアンとザマゼンタ……成程、中々の圧ですね……」

「ポッティ!!」

「ポットデス……?っ!?みんな!!」

 

 ザシアンとザマゼンタが雄たけびを上げている中、横にいるポットデスが嬉しそうな声をあげていたので、そちらに視線を向けてみれば、私が指示をしていないのにからをやぶるを行って、自身の能力を強化しているポットデスの姿があった。

 

 そう、ポットデスがからをやぶるを行った。それはつまり、今まで行うことが出来なかった技を使えるようになっているという事。

 

「技が使えているぞ!!」

「よく見れば、周りの赤い霧も薄くなっていると!!」

「ザシアンとザマゼンタが追い払って守ってくれている、と言ったところでしょうか。ともかく、これで闘えますね」

 

 ザシアンとザマゼンタのおかげでようやく抗う手段を得ることが出来た私たちは、改めてムゲンダイナ2人へと視線を向ける。

 

「こっちが攻撃できない状態で攻撃してきやがって……こっから反撃してやるから覚悟しろ!!」

「フリアとダンデさんの分、しっかり受けてもらうからね!!」

 

 

「「ギュアアアァァァッ!!」」

 

 

 ホップと一緒に声をあげながら対峙していると、あちらも呼応するかのように雄たけびを上げ、同時にかえんほうしゃを発射。先ほど私たちのポケモンを一発で仕留めてきた連携を再び行ってきた。

 

「ウルゥーード!!」

 

 いくら技が放てるようになったとしても、この強力な攻撃を跳ね返すのは簡単ではない。が、今のこちらには盾の王がおり、その盾の王であるザマゼンタが、雄たけびを上げながら自身の装甲を展開し、赤く発光。これにより、みんなを覆うシールドが生まれ、迫りくる炎をすべてシャットアウト。あれだけの火力を誇る攻撃が、ザマゼンタの行動ひとつで綺麗に掻き消えた。

 

「凄か……これが盾の王……」

 

「ウルォーード!!」

 

 炎が消えたところで、次に吠えるのは剣の王であるザシアン。

 

 口に咥えている黄金の剣に背中の装飾を付け加え、自身の身体から発せられたシアン色の光を注入。黄金に輝いていた剣は、そのサイズを二回りほど大きくし、そのうえで鮮やかに、しかし激しく輝く水色の巨大な刃に変化。それを構えたザシアンは、一瞬で姿を消したかと思えば、次の瞬間には、宙に浮かぶ瓦礫を足場に駆け回り、ムゲンダイナ2人の眼前に移動。

 

「速━━」

 

 その動きを前にホップが思わず声をあげるものの、その声をかき消すかのように、空中に両手で数えきれないほどの剣閃が出現。

 

 

「「ギュァッ!?」」

 

 

「━━すぎだろ!?」

 

 ホップが言葉を言い終わるころには、その剣閃すべてが大爆発を起こし、ムゲンダイナ2人の身体に大きな傷を作り出した。

 

「ウルゥーード!!」

 

 2人のムゲンダイナが怯んだ事により発生した大きな隙。これを確認したザマゼンタは、自身の装甲を再び展開し、全身に赤色のオーラを立ち昇らせると同時に、瞳にもオレンジ色の光を灯す。

 

 気合全開。

 

 傍から見ただけでも分かるくらい力をみなぎらせた彼は、そのまま全身の光をさらに強く発光させ、1つの赤色の流れ星となって色違いのムゲンダイナに突撃。ムゲンダイナに直撃すると同時に、ザシアンの行った攻撃と同じくらいの規模の爆発を発生させ、さらにダメージを追加させた。

 

「凄い……」

「何ぼさっとしているんですか。ぼくたちも続きますよ!!サーナイト!!『サイコキネシス』!!」

 

 伝説のポケモンの戦いぶりに見とれていたところに投げられるビートの声。それにはっとさせられた私たちは、慌てて通常色のムゲンダイナに狙いをつける。

 

 今はバトルの最中。私たちの邪魔をする霧を払ってくれたのだって、ザシアンたちが、私たちを戦力のひとつと考えてくれているからだ。気づけばマホイップも、ポットデスたちは勿論、ザシアンとザマゼンタにまでデコレーションしていたみたいで、今はザシアンの背中に乗って楽しそうな表情を見せているし、ギルガルドもいい加減暴れたいと思っているのか、最初からブレードフォルム状態で構えており、刀身に漆黒のオーラをまとい始めていた。

 

 準備が出来ていなかったのは、今の攻防に見とれていた私とホップとマリィの3人。だから、みんなに急いで追いつくために、すぐに指示を出す。

 

「ポットデス!!『シャドーボール』!!」

「レパルダス!!『あくのはどう』!!」

「カビゴン!!『ヘビーボンバー』!!」

「マッホッ!!」

「ドドドドドッ!!」

 

 ザマゼンタが色違いの方に攻撃を当ててくれたので、私たちは通常色の方を目掛けて攻撃を発射。

 

 私たち4人のポケモンの攻撃に加え、マホイップのマジカルシャインと、ギルガルドのつじぎりを合わせた6つの攻撃がまっすぐ突き進み、ザマゼンタの時ほどとまではいかないが、それでも十分な爆発とダメージが相手に叩き込まれたのを確認できた。

 

「よし!!効いてるぞ!!」

「この調子なら……」

「っ!?下がりなさい!!」

 

 このことに確かな手応えを感じ、士気を上げていくホップとマリィ。が、すぐさま嫌な予感を感じとったビートが退却の指示を出す。

 

 この言葉に一気に緊張感が走り、さっきまで浮かんでいた嬉しそうな表情は一瞬で消え、煙の中からでも伝わる圧力を前にすぐさま警戒態勢。

 

 

「「ギュアアアァァァッ!!」」

 

 

 しかし、そんなこちらの覚悟を吹き飛ばすかのごとく吠えたムゲンダイナは、2人同時にヘドロウェーブを発射。

 

 自身を中心に解き放たれた毒液の津波は、はがねタイプを持つギルガルドと、同じくはがねタイプを持っているらしいザシアンとザマゼンタ、そして、ザシアンの背中に乗っていたことが幸いして守って貰えたマホイップは避けることに成功したものの、私たちの手持ちである4人のポケモンは全員が被弾してしまい、一瞬で私たちの足元にまで吹き飛ばされてしまった。

 

「ポットデス!!……ありがとう」

「カビゴン……よくやったぞ」

「ごめん、レパルダス……」

「ご苦労様です、サーナイト」

 

 頑張って一矢報いてくれたみんなに一言、労いの言葉を掛けながらボールに戻し、改めて前を見る。するとそこには、あれだけの攻撃を受け、身体に傷を刻みながらも、未だにその大きな手をしっかり広げ、こちらに向けて次の技の準備を行っているムゲンダイナたちの姿。

 

「気を抜いていたわけじゃありませんが、やはりやられる時は一瞬ですね……ブリムオン!!」

「ほんのちょびっとの感情の揺れすら許してくれないぞ……ゴリランダー!!」

「そういう相手ってこととね……オーロンゲ!!」

「気合い入れなきゃ……だね……エースバーン!!」

 

 改めて、今私たちが相対している相手の巨大さを実感しながら次のポケモンを繰り出す。

 

 並んだのは、自分の手持ちでキョダイマックスをすることの出来るエースポケモン。とはいえ、この屋上という狭い場所でそんなことをすれば建物が崩れてしまう可能性があるため、残念ながらダイマックスを行うことは出来ない。しかし、それでもここ一番で最も信頼をしているエースポケモンに頼ると言うのは、精神的支柱になる。逆に言えば、この子たちが負けたら、残りのポケモンがいたとしても、心を折られる可能性があるという話でもあるのだけど……これだけの相手を前に、そんなリスクがどうのだなんて小さい話はしていられない。みんなも、覚悟を決めてここに望んでいるのだから。

 

 

「「ギュァ……」」

 

 

 そんな私たちの覚悟は、どうやら相手にも伝わっているらしく、相手も相手でエースバーンたちを倒せば、戦力が大きく減ることを本能で感じとり、赤紫のエネルギーを溜め始めた。

 

「来るよ!!」

 

 私の言葉を合図に構えるみんなと、エースバーンたちの前に立ち、抵抗しようとするザシアンとザマゼンタ、そしてマホイップとギルガルド。

 

 現状考えられる最強鉄壁の布陣にて、ムゲンダイナの攻撃に対して対策を整えた。

 

 

「「ギュアアアァァァッ!!」」

 

 

 それと同時に、ムゲンダイナの中指部分の先端より、強烈な光線が解き放たれる。

 

 ダイマックスする前にも行っていた、しかしその時よりもさらに威力が跳ね上がっているその攻撃。とはいえ、あくまでもドラゴンタイプの技だから、対処はまだ出来なくはない。故に耐性を持つザシアンたちが前に出て、この攻撃を弾こうと動き出したその時。

 

「カムゥ!!」

「え……?」

 

 こちらに飛んできた光線が、謎の斥力によってあさっての方向に飛んでいく。

 

 急に起きた出来事に、ムゲンダイナや私たちはもちろん、ザシアンたちまでもが驚いた表情を浮かべていた。

 

 ここにいる全員の視線を集める、急に現れた存在。それは、私たちが知っているポケモン。

 

「カムンパ!!クラウンパ!!」

「バシロォース!!」

「バクロォース!!」

 

「バドレックス!!ブリザポス!!レイスポス!!」

 

 それは、ガラル地方の南側にて、古くから祀られていた伝説のポケモン。

 

 剣の王と盾の王に続き、豊穣の王が、このバトルに参戦した瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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