【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

346 / 374
346話

「バドレックス!!来てくれたんだね!!」

「お前まで来てくれるのか!!最高だぞ!!」

「これでますます負ける気がしなくなってきたと!!」

「ばあさんから噂には聞いていましたが、これが豊穣の神……なるほど……」

 

 ヨが降り立ち、かの者たちから放たれていた光線を逸らしたところで向けられたユウリたちからの言葉。

 

 ヨの到着を喜び、ますますムゲンダイナへと立ち向かう気力を高めていく若き戦士たち。

 

 その姿を見て、ヨは強く思う。

 

(ああ、なんて強い輝きなのだ。ヨなんかよりも余程立派で、強いものたちである。それに比べてヨは……)

 

 視線を少し落とし、レイスポスに着いている手綱を見てみれば、その手はかすかに震えている。

 

 その震えは恐怖の証。

 

 豊穣の王だなんてもてはやされてはいるが、ヨは今でも、この掌のような化け物が怖くて怖くて仕方がない。許されるのであれば、今すぐこの場から逃げ出したくすらある。しかし、それでも……

 

(ヨは、もう友人を見捨てたくは無い……!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バドレックス……?」

 

 遡ること数十分ほど。

 

 まだヨがカンムリ雪原にてとぼとぼと歩いていた時。

 

 激しいひでりとあめが終わり、いつもどうりの雪景色となったカンムリ雪原にて、おそらくここでのバトルで勝利したのであろうシロナに見つかったヨは、しかし、ヨの今の姿を見て、会えたことの喜びより、何があったのかという疑問の色を強くした声で話しかけられる。

 

「そんなに辛そうな顔をしてどうしたのかしら?」

「どこか具合でも悪いのでしょうか?」

「それとも……もっと別の理由……?」

 

 シロナがヨに声をかけたことにより、周りのものたちもヨの存在に気づいて近づいてきたと同時に、コクランもカトレアもシロナと同じく、ヨの身を案じて言葉をなげかけてくれる。

 

 その事が嬉しくもあり、同時に心苦しくもある。

 

 こんなにも友が頑張っているというのに、ヨはまだくすぶっているということに。

 

「お!?いつぞやの頭ド・デケェポケモンじゃねぇ……てゅわわ〜ん!?」

 

 彼らの疑問に答えたい。しかし、このままではテレキネシスに精通しているカトレアにしか話が出来ないため、再びピオニーの身体を借りて、みんなに言葉を投げかける。

 

「3人とも、心遣い感謝する。ヨは大丈夫である。大丈夫ではある……のだが……」

 

 3人の疑問に対して、いざ言葉を返そうとすると、自然と声と身体が震えてしまう。

 

 もし、このみっともない出来事を話してしまえば、みんなはヨに愛想をつかしてしまうのではないか?そんな不安がずっと頭の中をぐるぐると巡る中、それでもここまで良くしてくれた人たちに、このまま何も話さないのはそれはそれでヨの心が許さなかった。

 

 せめて、友の前では誠実にいたいから。

 

「ヨはあのムゲンダイナに挑み、そして無様に負けたのだ……」

 

 1度口を開き、言葉にしてしまえば意外と止まらないもので、そこから語られるのはヨが敗北し、それからどのようにしてここで生きのびたのかという、ヨのみっともない話。

 

 豊穣の王と言っておきながら、人間が善意で差し伸べてくれた掌にすら怯え、まともに握手も出来ないこっけいな王の話。

 

「……以上がヨの話である」

「……なるほど、フリアが手を差し伸べた時に怯えていたのはそれが理由なのね」

「みっともないことにな……」

 

 シロナへと返答しながら、ズキリと痛む傷を受けた場所をそっとさする。

 

 既に完治しているはずなのに、それでも痛みを錯覚で感じてしまうくらいには、心にしっかりと刻み込まれたその傷。こちらの傷は、もう治ることは無いのだろうと本能が諦めてしまっている。

 

 シロナたちとは、ヨの力を取り戻す過程でたくさんのみっともない姿を見せてはいるが、その中でもトップクラスに見せたくなかった弱み。

 

 ただただ怖いから。

 

 みなが必死に戦い、このガラル地方を守っている中、1番動くべき王が私情で怯えて動けない。これほどまでにみっともないものが、どこにあろうか。

 

「本当に、申し訳ない……」

 

 ここまでして、それでもヨの身体は上手く動かない。その事実が余計に自分の惨めさを助長させてくる。

 

(ああ、ここまで見せてしまった……なら、もう……)

 

 こんな姿を見せられたら、自分なら失望する。当事者がそう思うほどなら、聞いている側はもっとだろう。

 

 今も、ヨを見ているであろう3人の表情を確認するのが怖く、俯くことしか出来ない。

 

 そんなヨの耳に、ざくざくざくと、雪を踏む音が聞こえてくる。

 

 恐らく、ヨの近くまで誰かが歩いて来ているのだろう。

 

 やけに聞き心地がよく、それでいて心に重くのしかかるその音は、数回聞こえてきたところで止み、ヨの近くまで来たことを伝える。そして、ヨの近くまで来たものが、腕を動かし、ヨの方へ伸ばしてくる気配を感じた。

 

「っ!!」

 

 その手で、ヨは何をされるのか。

 

 警戒のために目を瞑り、全身を強ばらせて、けどこれを受け入れる義務があると感じたヨは、これから来るであろう衝撃に備えてじっと待った。

 

 が、次の瞬間、ヨを襲った感覚は、全く予想できなかったものだった。

 

「ま、あなたの過去については、それとなく調べてはいたのだけどね。本人から聞いて、やはりあの話に間違いはなかったということがわかったわね」

「……は?」

 

 それは、頭を撫でられるというもの。

 

 寒さのせいで冷たく、しかし、触れられているところから広がる確かな暖かさを感じさせるそれは、間違いなく、今ヨが撫でられている事をしっかりと教えてくれた。

 

「知って……え……?」

 

 急に頭を撫でられたことと、ヨが隠したがっていたことの1部を既に知っていたことによるショックで、思考が止まり真っ白になる。が、そんなヨのことなんてお構い無しと、シロナは次々と言葉を放ってきた。

 

「あなたがどんな戦いをして、どんな目にあって、どんな傷を負ったかまでは分からない。けど、ここに住んでいた人たちは、あなたと握手をしようとした時、あなたが怯えてしまったことから、あなたが大きな傷を負っていることをみんなが理解した。そして同時に、そんな傷を負ってまで、自分たちの土地を守ってくれたということにも気付いた」

「っ!?」

 

 ヨに対して掌ではなく、拳をあてがうことで握手代わりとしてきたのは知っている。だが、当時の人間がそのように思っていたことは分からなかった。

 

 もしかしたら嘘なのではないか?

 

 失礼と知っておきながら、それでも反射的にそう思ってしまうくらいには、その言葉は素直に受け取れない。

 

「あなたについての文献は……本としては残っていない……でも……カンムリ雪原の至る所にある……遺跡のようなところで……みんなはあなたについての話を沢山刻んでいた……」

「ある場所では配下のポケモンに跨り、颯爽と駆け回っていたことを、ある場所では、民の生活のために豊穣の力で農作の手伝いしていたことを、そしてある場所では、民を守るために誰よりも前に立って戦っていたことを……あなたがしてくれた沢山のことに感謝をするかのように、色々な言葉が綴られていました」

 

 そんな反応をするヨに、さらに言葉を畳み掛けることで嫌でも意識を向けさせてくるカトレアとコクラン。

 

 その表情と声色はとても優しく、まるでヨの身体を包み込むようで。

 

「だが……」

 

 それでも未だに消えることの無い身体の震え。

 

 カトレアたちの言葉を信じていない訳では無い。が、それ以上に刻まれたトラウマがあまりにも大きすぎた。

 

 これだけの励ましを受けてもなお、ヨの身体は動かない。しかし、それでもシロナたちの慈愛の心は揺るがない。

 

「それだけ慕われた記録が残っているのだもの。きっと、ここに書かれているのは1部だけで、もっと沢山の事をあなたはしてあげたのでしょう?」

「なら……1つくらい欠点があっても何も思わない……あなただって王である以前に……1人のポケモンだもの……」

「ええ。バドレックス様には沢山の人が救われたのです。ならば1回くらい、頑張り屋である我らが王を守るために動いても問題は無いでしょう?」

「しかし……王であるヨが、前に出ずに戦わないというのは……」

 

 みんなから掛けられる言葉に、少しずつヨの心が解かされている。

 

「確かに王はみんなを導く先駆者。けど、そんな前を歩む王を支えるのは民の役目。まぁ、私たちはよそ者だから、正確にはあなたの民と言うわけではないけど……それならそれで、友達と言う対等な立場として、あなたを支えさせて欲しいわね」

「少しはわたくしたちを頼ってくださいませ。昔と比べて、今のあなたにはたくさんの仲間がいますので」

「それともあなたにとって……あたくしたちはそんなに信用無いかしら……?」

「……」

 

 どこまでも優しくヨを包み込む3人の言葉。それと同時に、頭の中でフリアたちを思い浮かべ、この状況で彼らはなんていうかを想像していみる。

 

(……きっと、彼女たちと同じことを言うのだろうな)

 

 強く、優しく、正義感溢れる彼らなら、きっと同じようにヨに言葉をかけて来るのだろう。その優しさと甘さにどこまでも頼ってしまいたくなる。だからこそ……

 

(だからこそ、その甘さに頼ってしまったら、こう言っている彼ら、彼女らの横に並び立てなくなる気がする……)

 

 ここで怯えて動けない方が許せない。

 

「……オヌシたちの気持ち、しかと伝わった」

「なら……」

「だが……だからこそ……ヨは余計に立ち上がらないといけないのである」

「バドレックス……」

 

 心配そうなシロナの顔を見ながら、ヨのわずかにしか残っていない自尊心を無理矢理起こして立ち上がる。

 

 心はとうに砕けてる。

 

 自信はとうに折られている。

 

 でも、最後の最後で譲れないものがあった。

 

「……フリアたちは、あそこで闘っておるのだな」

「……ええ」

 

 視線を向けている方向をじっと見れば、敵の姿こそ確認出来はしないけど、ここからでも感じとることができるくらいには強力な、いやな予感を感じることが出来た。

 

 それも、当時の時よりも2倍近く大きなものとなっており、その力を感じ取るだけでも、今しがた整えたはずの心をくじいてしまう程の圧力を感じてしまう。

 

 それでも、今あそこで頑張っている、自分を助けてくれた大切な友を放っておくことが出来なくなってしまっていた。

 

(不思議なものであるな……心は未だに立ち直っておらず、トラウマだって克服できていない。だと言うのに、さっきまでフリアたちを助けに行けなかったヨが、シロナたちの言葉だけで、心理状態はそのままなのに助けに行くことを一番に切り替えることが出来た……)

 

 ひでりとあめが繰り返し起きていた時はフリアたちにひたすら謝っていたはずなのに、こうして仲間の言葉を改めて受けると、なかなかどうして勇気が湧いてくる。

 

 この勇気ひとつだけで、フリアたちの下へ駆けつけようと思える。

 

「オヌシたちの気遣いの言葉……ちゃんとヨの心に届いた。感謝する」

「……その反応を見るに、やはり行かれるのですね」

「うむ。いまだに怯えは止まらぬが、怯えることが悪いことではないとわかったうえで、こんな励ましをくれるものの横に誇りをもって立ちたいのでな」

「バドレックス様の意志、しかと受け取りました」

「いくのなら止めないわ……その代わり……フリーズ村のことは任せて……」

「頼む。オヌシたちなら安心して任せられるのでな」

「それはこちらのセリフよ。あなたが助けに行くのなら、フリアたちを安心して任せられるわ」

 

 お互いの守りたいものを預け合い、自分たちが一番輝ける場所に向かって視線を向ける。

 

 シロナたちは、あのひでりとあめのポケモンが倒れたことによって落ち着きを取り戻し、再びフリーズ村に突撃を始めた野生のポケモンたちに。

 

 ヨは、未だに渦巻く嫌な予感があふれ出ている場所に。

 

 それぞれがこれから向かう戦場に視線を向け、ここで別れることとなる戦友に言葉を残す。

 

「では、行ってくる。ここは任せたのである!!」

「ええ、任せてちょうだい。あなたも、無理はしないで、絶対に帰ってきてちょうだいね?」

「勿論だ。ヨはこの地の王故、この地をずっと開けるわけにもいかぬのでな。必ず、帰ってくる。……レイスポス!!ブリザポス!!」

 

 シロナと言葉を交わし、レイスポスにまたがりながらブリザポスに指示を出し、駆け出す。

 

 未だに手は震えるが、その恐怖を乗り越えるのでもなく、しかし忘れるでもなく、背負ったまま……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ムゲンダイナ……久方ぶりであるな」

 

 放たれていた赤紫の光線を間一髪のところでそらしたヨは、久々にこうやって顔を突き合わせるムゲンダイナに対して声をかける。

 

 レイスポスのタヅナを握る手は更に震え、もはや気合を入れても抑えることが出来ないレベルとなっている。

 

(怖い……逃げたい……やはり、こやつは恐ろしい……!!)

 

 カンムリ雪原にて、シロナたちにあれだけ励ましてもらいながらもこう感じてしまうあたり、やはりまだトラウマは消えていない。

 

(だが、それでもヨはここに来たのだ!!それに、ずっと気になることがある)

 

 が、それ以上に、ヨが気になって仕方ないことが出来てしまったため、その震える手を隠すようにしながら、近くにいるユウリたちに質問を投げかける。

 

(ユウリよ!!フリアが見当たらないようだが、いったいどこにいるのだ?)

「え、えっと……バドレックス……?」

(……?どうしたのだユウリよ?早く質問の答えを……)

「フリアたちはムゲンダイナの攻撃によって屋上から吹き飛ばされ、今はここから落下している状態です」

「ビート?」

(なっ!?)

 

 この質問に対してユウリが困惑の表情を浮かべていたので、それが気になって更に質問を投げかけてみたが、やはり反応は芳しくなく……そこで返答をしてくれたのが、白髪をしたユウリたちと同い年くらい少年。

 

 名前も知らない、今日初めて出会ったものの言葉を受けたヨは、その内容がとても信じられないもので思わず声をあげてしまう。

 

「急にどうしたのビート?」

「どうしたもこうしたも、ぼくは単純にこのバドレックスとかいうポケモンがしてきた質問に返答をしただけで……いや、まさか……今の質問がユウリたちにはわかっていなかったのか?」

「オレたちには『かむんぱ、くらうんぱ』としか聞こえなかったけど……」

「もしかして、フリアとカトレアさんと同じで、ビートはバドレックスのテレパスが聞こえているんじゃなかと?」

「「それだ!!」」

(そういえば、今はヨの言葉を代弁してくれるものがおら……ッ!?ブリザポス!!『ブリザードランス』の準備だ!!)

 

 と、ここまで話してようやくユウリがヨの言葉に対する反応が悪い理由に気づき、同時にムゲンダイナから強烈な悪寒を感じた。

 

 視線を慌ててそちらに向ければ、ムゲンダイナたちはこちらに向けてヘドロウェーブを解き放つ準備をしており、この技に対して剣の王と盾の王が今まさに対処しようとしているところだった。

 

 それを確認したヨは、テレポートでレイスポスの上からブリザポスの上へと移動。同時に、ブリザードランスを準備し、すぐさま地面に突き立てるように発射。

 

 こちらに毒液が来ないように、氷壁のような形にすることでみんなを守る動きを取った。

 

 剣の王の斬撃と、盾の王の壁、そして氷の障壁によってすべての毒液をしっかりと受け止めたのを確認したヨは、これ以上の会話はあまりよろしくないと判断し、気になることだけを最小限で確認するために、白髪の少年に質問を少しだけする。

 

(結局フリアと、そのもう1人の人間というのは無事なのか!?)

「ヨノワールとリザードンが彼らの救助に向かっています。今頃は空中でキャッチして、安全なところに移動している所かと」

(心配はいらぬという事であるな!!ならあとは戦うだけである!!)

 

 一番気になるフリアの安否を確認できたところで、改めて視線を前に向ける。

 

 あのフリアが戦闘不能になるほどの敵。

 

 恐らくは、みんなをかばって被弾してしまったのであろうことはユウリたちの表情を見てみれば伝わって来る。

 

 その気持ちは痛いほどわかるし、ヨが最初からこの場にいたのなら、同じ気持ちようなことになっていたであろう。

 

(ヨがもっと速く駆け付けて入れれば……)

 

 同時に頭に浮かぶのは、ヨがくよくよしていたが故に起きたことに対する悔しさ。

 

 その悔しさが、この恐怖心を更に隠してくれる。

 

(レイスポス!!行くぞ!!)

「バクロォース!!」

 

 心に鞭を打って、テレポートでレイスポスに乗り換えながら次の技を準備する。

 

(フリアの分も、活躍するぞ!!)

 

 この場を離れてしまった友のために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ザシアン、ザマゼンタにバドレックスまで……本当に凄い構図だぞ……」

「ソニアさんとかシロナさんが見たら、飛んで喜びそうな場面だね……」

「そうじゃなくても十分興奮していると……」

「見とれている場合ですか、バドレックスもザシアンもザマゼンタも攻撃準備を整えています。ぼくたちも続きますよ!!」

 

 ビートの声に頷いた私たちは、全員で準備を整えて、前で構えているザシアンたちに続いて行く。

 

 ヘドロウェーブを防がれたムゲンダイナたちは、そろってかえんほうしゃを発射。これに対して、アストラルビットと斬撃を放つバドレックスとザシアンが相殺を起こし、大爆発。この煙の中を突き抜けたエースバーン、オーロンゲ、ゴリランダーと、私たちの近くで力を溜めて待っているブリムオンが同時に技を発射。

 

「『ブレイズキック』!!」

「『ソウルクラッシュ』!!」

「『ドラムアタック』!!」

「『サイコキネシス』!!」

 

 通常色のムゲンダイナめがけて突っ込む3人と1つの技。

 

 煙が目隠しになっていたおかげで相手の不意を突くことが出来たこの技たちは、真っすぐ突き進み……

 

 

「ギュアアアァァァッ!!」

 

 

 しかし、この攻撃を遮るように色違いのムゲンダイナから放たれる2発目のかえんほうしゃ。

 

 さっき2人同時に放ってきたときは、お互いの人差し指から放たれたものだったけど、どうやら今度は中指部分から発射してきたらしく、これを見るに指ひとつひとつから別の技を打てるみたいだ。

 

(そう言われてみれば、最初のヘドロウェーブは親指から打っていたっけ……)

 

 指1つ1つが独立して技を打てるというのならばかなり厄介だ。

 

 実際、今まさにそのせいでエースバーンたちに炎が迫っているのだから。

 

「ウルゥーード!!」

 

 この炎に対して、ザマゼンタが装甲を展開し、吠えながら突撃。

 

 全身に赤色のオーラを立ち昇らせながら炎と鍔迫り合いを始めたザマゼンタは、タイプ相性上若干苦しそうな表情を浮かべながら、それでもエースバーンたちを守るために炎を押し込み、そのまま色違いムゲンダイナの中指にぶつかって爆発。痛み分けと言う形で、お互いにダメージを刻み込んだ。

 

 この隙に、エースバーンたちの攻撃もムゲンダイナにしっかりと当たり、ダメージを確保。

 

 

「「ギュアアアァァァッ!!」」

 

 

 攻撃を受けたムゲンダイナは、このままでは押し切られることと、このバトルにおいては、時間を掛ければ自分たちが不利になってしまうことを悟り、叫び声をあげながら気合を入れた。

 

 ただの咆哮ではなく、周りに衝撃波を放ちながら行われたこの行動は、近くにいたエースバーン、ゴリランダー、オーロンゲ、ザシアン、そしてバドレックスたちを弾き、屋上付近まで押し戻す。

 

 

「ギュアッ!!」

 

 

 更に、こちらとの距離を開けるために自身たちの高度をぐんぐんと上げていくムゲンダイナたち。

 

「空にあがっていく……」

「いやな予感がすると……」

 

 その姿を見て、ふつふつと湧き上がる嫌な予感。

 

 思わず声を漏らすビートとマリィの言葉に内心で頷きながら空を見つめていくと、合計10あるムゲンダイナの指たちが、一斉に光り輝き始める。

 

 赤紫に光り始めたそれらはどんどんダイマックスエネルギーが集まっていく証。

 

 その様は、これが相手の切り札であることを物語っていた。

 

「……絶対にあれは止めなきゃだぞ」

「うん……ここが最後の踏ん張りどころだね……!!」

 

 夜明けへ向けての最終ラウンド。その最後のカウントダウンが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。