「青空って……こんなきれいだったんだな……」
「うん……見なくなって数時間……なんならいつも睡眠をとっている時間よりも短い時間のはずなのに、物凄く懐かしく感じると……」
「それほどまでに太陽の暖かさに安心感を感じていたという事なんでしょうね。ぼくには全くわかりませんが……」
「確かに、ビートはそういう感情には流されなさそうだよね……」
綺麗に澄み渡った青空を見ながら言葉を零すホップに続く私たち。
普段経験する夜の時間よりも短いはずなのに、もう何日も長い夜を歩んで来たかのような錯覚を感じていた私たちは、改めてこの太陽の光と言うものを享受して、その温かさと安心感に触れる。
さっきはあんなことを言ったビートも、その表情はどこか優しいものになっており、本心では違うんだろうなと言うことは言葉を発していないマリィとホップも感じ取っていた。
「マホッ!!」
「ドドッ!!」
そんな感傷に浸っているところに聞こえてきたのはマホイップとギルガルドの声。
「ありがとうマホイップ。みんなを援護してくれていたんだね」
「ギルガルド。お前はみんなをその盾で守ってくれていたんだな。ありがとう。誇りに思うよ」
そちらにつられて視線を向ければ、そこにはマホイップとギルガルドに対してお礼を言うフリアとダンデさんの姿があった。
どちらも主がいなくなって尚戦ってくれていたことに深く感謝しており、フリアはマホイップを抱きしめ、ダンデさんはギルガルドの盾をそっと撫で、自分がいない間にしてくれていた奮闘に対して最大限の労いを見せていた。
「本当に……みんなのおかげだ」
「ああ。やはり俺のポケモンは、最高のポケモンだ」
勿論、他にも戦ってくれた仲間たちのこともしっかりと労っており、マホイップとギルガルド以外に関しても、ボールの中で休んでいる子たちに声を掛けながらそっとボールを撫でている。撫でられたボールもカタカタと揺れているあたり、声を掛けられて嬉しそうにしていることがよく分かる。
「ユウリたちも……ありがとうね。みんなが来なかったら、きっと乗り越えられなかった」
「俺からもお礼を言わせてくれ。……まさか、あの日サルノリとヒバニーを手にしたばかりの2人と、ネズさんの妹にローズ委員長の推薦者が助けてくれるとはな」
私とホップを見ながら、しみじみとそう零すフリアとダンデさんの表情はなかなか感慨深そうなもので、そんな優しそうな表情でじっとこちらを見つめられると少しだけ恥ずかしさを感じる。
「それに……バドレックスにほしぐもちゃん……あと、英雄伝説のポケモンまで……」
一通り私たちを見て回ったフリアは、その視線を今度は伝説のポケモンたちへと向けていく。
レイスポスとブリザポスを率いるバドレックスに、ほしぐもちゃんとその保護者である夜のポケモン。そして、太陽の光を反射して輝く剣と盾を持つザシアンとザマゼンタ。
錚々たる面子を前に、しかし臆することなく前に出たフリアとダンデさんは、その全員に向かってゆっくりと頭を下げる。
「「助けてくれて、ありがとう!!」」
「カムンパ」
「リオォッ!!」
「ペアッ!!」
「ウルォーード!!」
「ウルゥーード!!」
頭を下げ、心からのお礼を述べる2人と、そんな2人に真正面から言葉を返す伝説たち。
特に、フリアと関わりが深いほしぐもちゃんとバドレックスは一際大きな声を発しており、バドレックスの声を何となく理解できるフリアはこの声を聴いて更に表情を緩める。
「ふふ、『ヨがいられるのはフリアたちのおかげ』だなんて……バドレックスだってちゃんと強いんだから、あんまり自分を卑下しちゃだめだよ」
「カムゥ……」
フリアから真っすぐぶつけられた言葉に思わずそっぽを向くバドレックス。そのやり取りが、より日常に戻ってきたんだということを認識させてくれた。
ようやく訪れた平和な時間。
「ギュ……ギュァァ……ッ!!」
しかし、この平和の時間はここにいる全員が認めているわけではない。
「ムゲンダイナ……」
朗らかな時間の中に響く、怨嗟に濡れた声。その主の方に目を向ければ、ダイマックスは解け、身体の至る所に傷を作りながらも、それでも未だに瞳と思われる部分に敵意を残しているムゲンダイナの姿があった。
彼はこんな状況になってなお、まだ戦うことをやめようとしない。
「ムゲンダイナ。もうブラックナイトは終わったの。だから諦めて━━」
「ギュアアアァァァッ!!」
「━━ムゲンダイナ……」
もう戦わなくていい。そう伝えるべく近づいて声をかけるものの、それを拒否するかのように未だに敵対心を燃やし続けるムゲンダイナ。
彼の隣で同じように倒れている色違いの方はだいぶ落ち着いてくれているのに、まるでその分も変わりに怒っているように見えるその姿は、どうしてそこまで頑ななのかという疑問と、どうすれば落ち着いてくれるのだろうという疑問を与えてくる。
「いったい、何がそんなに……」
「リオッ!!」
何故そんなに怒っているのか。それを聞こうともう一度声をかけたところで、ムゲンダイナに近づくひとつの影。
私と入れ替わるように前に出て来たのは、立派な姿に進化したほしぐもちゃんで、ここに来てすぐの時に私たちにかけた甘えるような雰囲気はどこにもなく、優しい雰囲気をまとって近づいていく。
「リオ……」
「……ギュオ!?」
「え?」
近づき、顔を見つめながら優しい声をかけたほしぐもちゃんに対するムゲンダイナの反応は驚愕。その感情の理由がよく分からなかった私は、思わず声を出しながら首を傾げた。すると、横にいるバドレックスがなにか反応を示す。
「カムカム、クランパ。カムゥンパ」
「……そういうことだったんだね」
「何とも変なめぐりあわせですね」
「ん?どうしたんだ?」
「バドレックスは、なんて言ってたと?」
何かを伝えようと口を動かしたバドレックスに対し、彼の言葉を理解できるフリアとビートが納得したような声を上げた。
その表情はどこかやるせなさを含んだものになっており、内容が気になったホップとマリィは、素直な疑問を投げかける。
「ムゲンダイナがこうなった理由はね……」
☆
気づいたら私は、知らない土地にいた。
隕石の中で眠り、宇宙を漂っていた私を襲った強い衝撃を合図に目を覚ませば、そこは緑溢れる豊かな大地と、人が住まう綺麗な建物群が見事なバランスで寄り添う豊かな場所。
人とポケモンが共存し、穏やかに過ごすその様は、宇宙空間でただ1人でいた私にはとても新鮮で、興味深いものとして映っていた。
その姿をもっと近くで感じてみたい。そんな興味心で近づいてみた私だったが、そんな私を待っていたのは悲鳴とたくさんの攻撃だった。
こちらに対して明らかな敵意を持ち、私を排除しようと攻撃を放つ人とポケモン。その勢いは凄まじく、その地にいた全ての存在が私に牙を向いてきた。
その結果、豊穣の王を筆頭に襲ってきた部隊こそ何とか押しのけることに成功はしたが、その後に続けて戦うこととなった剣の王と盾の王の部隊に私は敗北。再び永き眠りを過ごすことを余儀なくされてしまった。
なんでいきなりあんなに攻撃されたのだろうか。私はただ、知りたかっただけなのに。
眠りにつきながらそんなことを考えた私だったが、実はそれから眠っている間にその答え自体は出していた。
私が墜落したと同時に溢れ出てしまったダイマックスエネルギー。これが至る所に影響を出してしまったみたいで、空は曇り、温厚なポケモンは巨大化して暴走。私が望んで起こした訳では無いが、私がきっかけてかなり大きな変化が起きてしまった。
この変化を急に受け入れることが出来なかったみたいで、それが私を攻撃して来た理由らしい。
なるほどなと思った。
私が無意識のうちにやってしまっていた行動が、相手にとってはとても不都合な事だったみたいで、それがきっかけで、元凶である私に攻撃してきた。こう聞けば、ごくごく普通の理由ではある。
「次は、もっと平穏に話したいな」
この失敗は糧になる。同じミスをしないように、次に機会が訪れたのなら、その時はちゃんとしよう。
だが、そんな私の考えはあっさりと打ち破られる。
目が覚めた私をまちかまえたのは、色々な装置や管、コードが接続され、その中心にて動きを制限された自分の姿。
周りには白衣を着た人間が動き回っており、その姿からは敵意こそ感じはしなかったものの、他の感情すらも読み取ることは無かった。
無感情。
人間の言葉に、好きの反対は嫌いではなく無関心という言葉があるらしいが、その言葉を嫌という程感じた。
まるでこちらからのアプローチを気にする素振りを見せない。歩み寄ろうとこちらが動いても、相手がこれを拒否してくるのなら意味が無い。
そもそも対話が出来ないのだから。
そこからは昔よりもさらに無の時間。
話すことも無く、ひたすら何かを調べられる時間。
次第に私の心は凍っていき、考えることすら止めようとした。
「ぴゅぴゅい?」
そんな時だった。
こんな私に初めて友好的な声をかけてくれたのは。
「ぴゅぴゅい〜!!」
そのポケモンの名前はコスモッグと言うらしく、どうやら私と同じで研究対象としてここに捕まったらしい。
同じ立場のポケモンということで、私たちは自然と意気投合。コスモッグがまだまだ生まれて日が浅い子供と言うだけあり、精神年齢という点でどうしても話にギャップというものは出てくるものの、初めて他のポケモンと行うコミュニケーションと言うのは私の心に色を取り戻してくれた。
真っ白で何も無かった日々に彩りが戻り、楽しい時間を過ごせた。
(ああ、これを昔からできたなら……)
思わずそう思ってしまうほどには、その時間が楽しくて……だからこそ。
「ぴゅ……ぴゅいぃぃぃっ!!」
ある日を境に聞こえ始めた、私の初めての友達の悲鳴を聞いた私は、自分の力を抑えることが出来なかった。
人間が何を考えているかは知らないが、このままでは私の初めての友達に良くないことが起きてしまう。だから、その友達を逃がすために、なけなしの力を使って設備を攻撃。友達を逃がす時間と道を作り、コスモッグを逃がした。
これでまた1人にはなるが、それでもコスモッグは助けられる。
(せめて、安全な場所に逃げてくれ)
そんな小さな願いと共に、私は再び眠りについた。
しかし、次に私が目を覚ましたときに目に入ったのは、あの男が再びコスモッグを手にしているところだった。
「ぴゅい〜〜〜ッ!!」
そして再び耳に響く友達の声。
これを聞いて私は、完全に人を敵とみなした。
(私のたった1人の友達を傷つけるのは、もう許さない)
力を取り戻し、完全に自由となった私は、空に浮かび上がって見下ろしていく。
(前見た時と全く違う街並み……しかし、人の愚かさは変わらない……)
やることは決まった。
(もう私は容赦しない)
覚悟を決めた私は、あの時とは違い、明確な覚悟と敵意をもって、この地を見つめた。
☆
「……ムンパ」
「……以上が、ムゲンダイナが闘った理由みたい」
「そんななかで、あの穴から自分と同じ見た目と境遇をした仲間が急に現れたものだから、余計に敵意が増やされたみたいですね」
ムゲンダイナの言葉をバドレックスが受け取り、その言葉をフリアとビートが翻訳することによって、ようやく知ることの出来たムゲンダイナの過去と、ほしぐもちゃんとの関係性について。
今まで止めないといけない敵としか認識していなかっただけに、こうしてムゲンダイナ側の話を聞いてみると、どうしてもやるせない気分が生まれてしまう。
勿論、ムゲンダイナに非が無いわけじゃない。
この事件の元凶がローズさんにあると言っても、ムゲンダイナが力を振るった結果、各地でダイマックスが発生して、想像以上の被害が出てしまったのは疑いようのない事実だ。ポケモンにも法律が適応されてしまうのなら、相応の罰が下ることだろう。
けど、少なくとも私たちの手でそれを行う気力はなくなっていた。
「ムンパ……」
特にダメージを受けていたのはバドレックスで、さっきまでムゲンダイナに対して大きな感情を抱えていた彼は、この事情を知ると同時に物凄く後悔をしたような表情を浮かべていた。
一方でザシアンとザマゼンタは表情を1つも動かさない。
2人にしてみれば、自身が守るべきガラル地方を害した時点で、等しく敵だという事なのだろう。
どちらの思考も間違いではない。
人とのつながりを強く意識する優しいバドレックスと、この地を守ることを誇りに思っている気高きザシアンたちの心は、どちらも尊いものだ。
けど、私の心はどうしてもバドレックスの方に寄ってしまっていた。
「ムゲンダイナ……」
「ギュア……ッ!!」
ほしぐもちゃんとの再会によって、私が完全に敵ではないということは理解してくれているみたいだった。が、それでも今までの経験からか、私に対する……いや、人間に対する敵対心が完全に消えたわけではなく、未だに警戒の色を強くにじませながらこちらを見つめて来る。
そんな彼に対して、私は一瞬押されて足が止まりかける。
「……大丈夫。ユウリならいけるよ」
そんな背中をそっと支えながら押してくれるのはフリア。
背中に感じる暖かさと声を聴いて、落ち着きを取り戻した私はゆっくりと頷いて、振り返ることなく止まった足をまた前に動かして、ムゲンダイナの前にまで進んでいく。
「ムゲンダイナ」
「ギュ……」
覚悟が決まった私の姿を見て、今度はムゲンダイナの方が少し下がる。
未だに少しあるムゲンダイナと私たちの壁。それを乗り越えるかのように、一歩、また一歩と近づいて、ついにムゲンダイナに触れられる距離まで近づいた。そして……
「ごめんなさい!!」
「ギュ……ァ……?」
ムゲンダイナに対して私は、真っすぐ頭を下げた。
急な謝罪にムゲンダイナから呆気にとられたかのような声が聞こえ、そのことに対して伝説でもそんな声を出すんだなんてちょっと微笑みそうになったのを堪え、そのまま言葉を続ける。
「急に知らない場所に来たと思ったら攻撃されて、眠って起きたらまた変な事をされて……あなたが人間を見限る気持ちは、正直理解出来ちゃった。だから……人間を代表して、ごめんなさい」
ムゲンダイナがここまで受けてきたことに対する謝罪。
これで完全に許されるだなんて思っていないけど、それでもムゲンダイナに葉この言葉を送りたかった。
「あなたに対して、たくさん謝りたい。けど、その代わりに……もっと周りにも目を向けて欲しい」
だって、世の中には悪い人ばかりじゃないってことを知って欲しいから。
「今こうして、あなたの心を知った今、きっとあなたの友達になってくれる人はたくさんいる。……少なくとも、私たちはそうだから」
「ギュァ……」
出会いは最悪だったし、人間に対する印象はもっと悪くなっている。けど、この子がほしぐもちゃんをあれだけ大切に思っていたということは、心の奥は優しいままのはずなんだ。
まだ、間に合う。
「難しいかもしれない。けど、あと1回だけチャンスを下さい。……私たちが、あなたの仲間になるから」
頭を上げてまっすぐムゲンダイナを見つめながら、右手を伸ばして答えを待つ。
これで手を振り払われたのなら仕方ない。けど、まだ歩み寄ろうとしてくれているのであれば、やり直したい。
どの道このガラル地方は、エネルギーのほとんどをガラル粒子……ひいてはダイマックスエネルギーに頼ってしまっている。だから、ここでムゲンダイナに見限られてしまえば、このガラル地方はそう遠くないうちに衰退するだろう。
(あ……もしかして、ローズ委員長の見た未来って、ムゲンダイナと和解できなかった先の話……なのかな)
ここまで考えてふと頭をよぎったのは、ローズ委員長の見てきたという未来のガラル地方。
ムゲンダイナを道具として見続けて、彼に見限られてしまった、そんな未来。
もしこの仮説が当たっていたら、ローズ委員長の行動は全て裏目ということになる。それはそれでちょっと可哀想で。
(けど……今はどうでもいいかな)
ガラルの未来は確かに大事だ。けど、そんな事情は置いておいて、それ以上に、私は純粋に、このムゲンダイナというポケモンと友達になりたい。
この子の寂しさを、埋めてあげたい。
「ギュア……」
私の顔と手を交互に見て、まだ困惑の顔を浮かべるムゲンダイナ。
まだ、この手を取っていいものなのか、悩んでいるのだろう。
しかし、迷ってくれている時点でまだ勝機はある。
あと一押しあれば、きっと伝わってくれる。
「リオッ!!」
「ギュアッ!?」
そしてその最後のひと押しを、ほしぐもちゃんが優しく押してあげるかのように、ムゲンダイナの頬に自分の頬を擦り付け、スキンシップを取ることで行ってくれた。
そのさまが微笑ましくて、ついつい表情が緩む。
「ギュア……」
この行動により、空気がまたひとつ柔らかくなり、ムゲンダイナの警戒も徐々に解かれる。
まだ迷いはあるし、不安もある。けど、それでもムゲンダイナは……
「……ギュア」
「!!」
ゆっくりと、私の右手に自身の頭をこすり付けてくれた。
それは、私の提案に対する肯定とれる行動。
ムゲンダイナと人間が、共に1歩歩み寄った瞬間。
「ありがとう……ムゲンダイナ」
それが嬉しくて、私は右手だけじゃなく、左手も一緒にムゲンダイナに添えて優しく包み込む。
勿論ここはゴールじゃなくあくまでも始まり。ここからどうやってムゲンダイナと仲良くなるかが一番大変で、一番重要で、そして何より一番楽しみな瞬間だ。
(これからの時間、大事にしなくちゃ……だね)
「ギュオ」
「え?」
そうやって覚悟を決めながらゆっくりムゲンダイナを撫でていると、突如彼が声を上げながら横を見る。
その視線につられ、同じ方向を見れば、そこには色違いのムゲンダイナ。
「ギュア」
私たちのやり取りを見た彼は、嬉しそうな、しかしどこか悲しそうな顔を浮かべる。
「あなたも、私たちと友達に━━」
「ギュギュア」
その顔が見てられなかった私は、すかさず手を伸ばそうとするものの、色違いはこれを拒否。顔を上に向けてじっとし始めた。
「ペア……」
それと同時に夜のポケモンが声を上げると、空中に開き始めたウルトラホール。
「ああ、そっか……」
この穴を見て、私はすぐに察した。
色違いのムゲンダイナは本来、この世界のポケモンではなく、もしぐもちゃんによって呼び出された別世界のムゲンダイナだ。
騒動が終わって、帰る手段もここにある現状、もうこの子がこの場所に居続ける理由は無い。
お別れの時が、近い。
「……大丈夫だよ!!」
「ギュア?」
空に開いた穴を寂しそうに見つめるムゲンダイナ。
彼もまた、向こうの世界では孤独なのかもしれない。
だから、その孤独が少しでも軽くなるように言葉を送る。
「こっちのムゲンダイナはこうやって仲間ができた。なら、あなたにだってきっと仲間はできる!!もしそれでもダメなら、そっちの世界の私を頼って?……保証も約束もできないけど……それでも、向こうの私もあなたを友達として見てくれると思うから」
「ギュア……」
私の声をじっと聞き続けたムゲンダイナ。
返答は無い。けど、あの寂しげな表情が少し緩んだような気がしたあたり、少しは届いてくれたのかもしれない。
「ギュア!!」
心の中でなにかの整理をつけたらしいムゲンダイナは、一瞬だけ私たちに視線を向けて空へと飛翔。ウルトラホールに向かって、吸い込まれるように飛んで行った。
その行動には一切の迷いはなく、あっという間にムゲンダイナの姿が見えなくなる。
「……頑張ってね」
「ギュオ……」
消えていく穴を見つめながら、私は無意識のうちにそう言葉をこぼす。
ここまで沢山攻撃されて、裏切られた孤独な毒龍。
長い長い時間を経てようやく救われた1人と、まだまだ闇の中をさまよう1人。
けど、そんな闇の中でも道標になる光を、少しでもあげられたなら。
そう思った私は、色違いのムゲンダイナが消えていった方向へ、そっと祈りを捧げた。