「ムゲンダイナ……」
空に消えていったムゲンダイナを見送った私たちは、そのまま暫く空を見つめていた。
「あっちの世界で、仲間ができるといいな!!」
「きっと出来ると。最後に襲ってこなかったってことは、少なくとも、人と話そうとは思ってくれてるってことだからね」
「でないと困りますよ。ここまで命張っているんですから、それを無駄にして欲しくないですね」
「……うん、そうだね」
いつの間にか横に立っていたホップたちの言葉にそっと頷く。
ムゲンダイナが温厚な性格なら、いつかちゃんと報われるだろう。
「ペアッ!!」
「リオッ!!」
空を見つめ、センチな気分になっていたところで聞こえてくるのは、ほしぐもちゃんと夜のポケモンの声。その声につられてそちらを向けば、2人は力を漲らせながらさらに声を張り上げた。すると、空中の至る所にウルトラホールが出現。これを見た私たちは、また新しいポケモンが出てくるのかと身構える。
「成程、他のポケモンたちも返してあげるのか」
「これで伝説のポケモンたちは大丈夫そうだね」
が、ダンデさんとフリアは一切構えることなく、むしろ安心したような表情を浮かべていた。
2人の話を聞いてウルトラホールのひとつに視線を向けると、そこには確かに、穴に吸い込まれていくポケモンたちの姿を確認することができた。少なくとも、ナックルシティ入口で戦っていた緑の巨人のようなポケモンも吸い込まれているのが確認できたあたり、他の場所のことも気にしなくて大丈夫そうだ。
「リオ……」
「ほしぐもちゃん……?……あ……そっか」
沢山のポケモンが、本来居るべき場所へと帰っていく中、寂しそうな声を上げるほしぐもちゃん。
これを聞いて疑問に思った私は、首をちょっと傾げるものの、すぐに答えにたどり着いた。
ほしぐもちゃんたちは、元々あの穴の先の住人。今帰っていったムゲンダイナたちと同じく、ここがお家では無い。
つまり、帰らなくちゃいけない。
「お別れ……なんだな」
「……寂しくなるとね」
同じ答えにたどり着いたホップとマリィも、寂しそうな表情を浮かべながらほしぐもちゃんを見る。
ほしぐもちゃんと一緒にいた期間は半年もない。けど、毎日顔を合わせ、ずっと一緒に過ごしてきた大切な仲間だ。その思い出は貴重で濃密で、何にも変え難い宝物で。
「リオ……」
「ほしぐもちゃん……」
だから、急に訪れてしまったこの時間に、まだ心が追いつかない。
(でも……ちゃんと切り替えなきゃ……)
それでも、夜のポケモンがほしぐもちゃんを必死に探してきた姿を知っている私は、ちゃんとここでケジメをつける必要がある。その1歩を踏み出すために、わたしはほしぐもちゃんが登録されているモンスターボールを取りだした。
モンスターボールは、中に入ったポケモンが誰のポケモンなのかを登録するシステムがある。これがあるから、いわゆる『おや』と呼ばれる人を識別できるし、識別されているポケモンに他のボールが当たった時に、ボール側からそれを判断して弾かれるようにできている。が、それと同時に、ポケモンを逃がす時に登録を外す機能も備わっている。これを起動すれば中のポケモンは登録が外され、野生のポケモンという扱いに戻っていく。
もっといえば、この機能はボールが壊れても作動する。つまり、今ここでこのボールを砕けば、ほしぐもちゃんは野生のポケモンに逆戻りという訳だ。
「……」
本当はそんなことしたくない。けど、機能を作動させて登録を解除するだけだと、きっと私は未練を残す。だから、ほしぐもちゃんのボールはここで壊す。
そう決めた私は、震える手に鞭を打って、ゆっくりと手を広げ、ボールを手から離す。
落下していくボールは、そのまま地面に急降下。しかし、これだけでは壊れることは無いので、私は地面に落ちたと同時に正確に壊すために、右足をゆっくりとあげ……
「リオッ!!」
「え?」
ボールが地面につき、落ちたボールを私の右足が踏み砕こうとした瞬間、ほしぐもちゃんのサイコキネシスで移動したボールが私の右足を避けて急上昇。そのまま私の右手まで返ってきて、すっぽりと納まってしまった。
「ほしぐもちゃん……?」
「ユウリに持っていて欲しいんじゃないかな?」
「え?」
いきなりの出来事に追いつかないでいると、後ろからフリアの声が聞こえてきて、またもや同じような声で疑問を上げた。
「ほしぐもちゃんの気持ち、ちょっとはわかるから」
そう言いながらフリアの手に握られているのはモンスターボール。けどそれはただのボールではなく、フリアがいつもお守りと言って持っていた、中にポケモンがいないのに、登録記録だけは残っているボール。
「って、ユウリたちはまだ知らなかったよね。多分、まだいるはずだから、後で会わせてあげるね?」
「う、うん」
その中身と出会えるということに少しだけ楽しみという感情が生まれた。けど、今はその気持ちは一旦置いておいて、目の前のほしぐもちゃんと目を合わせる。
「ほしぐもちゃんは……持ってて欲しいの?」
「リオッ!!」
私の言葉に対して力強く返事をするほしぐもちゃん。その表情から寂しさは感じるものの、それと同じくらい真剣な色を帯びていた。
「でも……」
ほしぐもちゃんから頼まれたボールの保管。それは確かに、まだ覚悟を固めきれていない私にとってはありがたい提案ではあったけど、本当にそれでいいのかという疑問もある。
ここでお別れなのに、そんな優柔不断な気持ちでいいのか。
「きっとほしぐもちゃんは、またあたしたちに逢いに来たいだけと」
「また会いに……?でも、そんなことできるの?」
「できるも何も、ほしぐもちゃんたちはこの穴を自由に開けて行き来出来るんだろ?なら、会いたい時にこっちに来れるんじゃないか?」
「あ……そっか」
悩んでいる私に対して声をかけてくれるマリィとホップ。
2人は、なんでそんな当たり前なことで悩んでいるの?とでも言いたげに、さも当然かのように私の悩みを砕いていく。
「ほしぐもちゃんは……また逢いに来てくれる?」
「リオッ!!」
「わわっ!?……そっか、うん、ありがと」
私がそう聞けば、ほしぐもちゃんは嬉しそうに頬ずりをしてきたので、それが嬉しかった私は、急な出来事に驚きながらも、これを受け入れてほしぐもちゃんを撫でる。
また逢いに来てくれる。この言葉一つで、大分心が軽くなった。
「……ペア」
「リオ」
しばらくスキンシップしたところで、夜のポケモンから声がかかったのでほしぐもちゃんから離れる。
そろそろ時間だ。
「またね、ほしぐもちゃん」
「向こうでも元気でな!!」
「ちゃんとご飯だべるとよ」
「今度会う時は、また一緒に沢山遊ぼうね」
「リオッ!!」
ほしぐもちゃんと付き合いがある私、ホップ、マリィ、フリアの言葉を聞いて、嬉しそうに頷くほしぐもちゃんは、次にムゲンダイナの方へ顔を向ける。
「リオリオ」
「……ギュア」
目を合わせ、何かを喋っている2人からは、どんなやり取りをしているか知ることはできない。けど、どちらも穏やかな姿を見せているあたり、こちらも再開の約束をしている気がした。
「……ペアッ!!」
「リオッ!!」
そして十分なやり取りを終えたところで、夜のポケモンとほしぐもちゃんが同時に飛翔。宙を駆け、閉じ掛けのウルトラホールに向かって走っていく。
「リオ〜ッ!!」
声を上げながら飛んでいく2人に手を振って見送っていると、その姿が穴の中に消えていき、同時に空中の至る所にあったウルトラホール全てが消失。どうやら、こちらの世界に迷い込んだポケモンたちも全員送還することが出来たらしい。
「……行っちゃったね」
「だな」
私の呟きにホップが返す。
ほしぐもちゃんたちがいなくなって、また少し静かになった空間に風が流れる。
「ギュオ」
「ムゲンダイナ?」
そうやって感傷に浸っていると、私の腰に頭を軽く当てて声を上げるムゲンダイナ。
その姿からは何かを訴えているように感じ、どうしたのだろうと思いながら彼の視線を追っていくと、そこにはほしぐもちゃんのモンスターボールがあった。
「ゲットして欲しいんじゃないかな?」
「え……私が!?」
「うん」
この行動を見て答えを思いついたフリアが提案したのは、ムゲンダイナのゲット。
このことに驚いた私は、本当に?という意味を込めてムゲンダイナに視線を送ると、彼はゆっくりと首を縦に振る。
「で、でも……私がゲットしていいのかな?」
「友達になるって言ったのはユウリとよ?」
「そうだけど……」
別にあの言葉に偽りがあった訳では無い。ムゲンダイナとはちゃんと付き合っていきたいし、可能ならその願いを聞いてあげたい。しかし、ムゲンダイナのエネルギーはこのガラル地方にとってとても重要で、それをいち個人が持ってていいものかという疑問が浮かんでしまう。
これがダンデさんのような、後ろ盾もあって且つ、確かな実力者であるのならば何も問題は無いのだろうけど、私は何も無いただの子供だ。
きっとこの先、変な人に狙われる可能性も考慮すれば、私が守り切れるという自信がどうしても無い。
「大丈夫だ。その時は俺が守ろう」
「ダンデさん」
そんな私の背中を押してくれたのはダンデさん。
「こんなでも大人でチャンピオンだからな。成長するまでは、沢山頼ってくれ」
「いっその事、あなたがさっさとチャンピオンになればいいんですよ。そうすれば誰も文句を言わない」
頼もしい言葉を告げるダンデさんの横では、ビートがいつもの不遜な態度で、さも当然のように言葉を述べた。
「その方があなたにとって都合がいでしょう?地位も後ろ盾も手に入り、何よりも……横に立てますからね」
「っ!?」
大人を頼れというダンデさんに対して、お前が強くなれというビート。けど、その視線は私ではなくフリアの方に向けられており……
(この人は〜っ!!)
私の顔色が変わったのを確認したビートは、今度は挑発的な笑みを浮かべて私を見る。
「まぁ?次のチャンピオンはこのぼくが取ることが確定しているので?あなたがそれを達成することは当分未来の話になるでしょうがね?」
「そう言ってられるのも今のうちだから!!絶対私がチャンピオンになる!!」
ビートにかけられた発破と言うのがとてつもなく不本意だけど、彼の言う通りだった。
不安なら、私が強くなるしかない。
ダンデさんに頼ったって、いつかは自分の足で歩かないといけない。
なら、元々フリアと並ぶことを目標としていた私にとって、これは目標までの過程でしかならない。
「ムゲンダイナ!!」
そうと決まったらもう迷いは無い。
「絶対に、あなたを守れるくらい強くなるから!!だから、ついてきて!!」
「ギュオッ!!」
ほしぐもちゃんのボールと入れ替えるようにして新しく握ったモンスターボール。それをムゲンダイナに軽く当て、その中に吸い込んでいく。
カタカタと音を立てて揺れたボールは、ポンという軽快な音と共に静止。これを持って公認のパートナーとなった。
「……頑張ろうね。ムゲンダイナ」
私の言葉に返事をするかのように揺れたボール。
その意志を確かに受けとった私は、少し頬を緩めながら、腰のホルダーにつける。
これで、本当にブラックナイトは解決した。
「ウルォーード!!」
「ウルゥーード!!」
ムゲンダイナがボールに入ったところを見届けたところで、最後まで私たちを見守ってくれていたザシアンとザマゼンタが咆哮を上げ、身体から光を放ちながら空へと飛び出した。
どうやら、役目を終えたということで、元の場所に帰るらしい。
「ありがとうザシアン!!また会えたら会おうな!!」
「ザマゼンタも元気でいるとよ!!」
まどろみの森へと飛んでいく2つの光に、ホップとマリィの言葉と一緒に手を振る私たち。
彼女たちもまた、このガラル地方にために頑張ってくれた英雄だ。余裕があれば、またあの場所に行って、なにかお供え物をするのもいいかもしれない。
「カムンパ」
「バシロォース!!」
「バクロォース!!」
「あなたたちも、お疲れ様でした」
「シロナさんたちによろしくね」
ザシアンとザマゼンタが居なくなったところで、バドレックスもカンムリ雪原へ帰っていく。
その背中にフリアとビートが声をかけ、こちらもまたその背中が見えなくなるまで手を振った。
あれだけ沢山いた伝説のポケモンたちが、ついに全員退場した。
この屋上に流れるのは、さっきまで激闘が起きていたのが嘘のようなほど静かな空間で、爽やかな空をかける風が頬を撫でる。
「……終わったんだね」
私の言葉に対する返事は無い。けど、みんな同じことを思っているらしく、晴れやかな表情をしながら頷いた。
「さぁ、帰ろうか」
「「「「「はい!!」」」」」
静寂の時間をそっと打ち破ったダンデさんの言葉に頷いた私たちは、ゆっくりと、この屋上を後にした。
☆
「フリア!!みんな!!無事だったんだな!!」
「お〜い!!こうなったってことは!!ああなったってことだよな!!」
「それじゃ分からないでしょ、全く……とにかく、お疲れさま」
「コウキ!!ジュン!!ヒカリ!!」
屋上から下に降り、ナックルジムから外に出た私たちを出迎えたのは、コウキさんにジュン、ヒカリの3人。
その姿を確認したフリアは、嬉しそうな声を上げながらこの3人へと近づいていく。
「みんなも無事だったんだね」
「おうよ!!これくらい余裕だってんだ!!」
「とか言って、援軍がないとキツかったらしいじゃん?」
「そ、それはいいだろ!!ああもう、なんだってんだよ〜!!」
フリアの言葉に自信満々に返すジュンと、そこにちゃちゃを入れるヒカリといういつもの図。また触れることとなった日常の一コマに、ついついこちらも微笑みが零れる。
そんな中、コウキさんは少しだけ真面目な雰囲気を出しながら質問をしてくる。
「あの夜のポケモンはどうしたんだ?あの子のおかげで助かったところもあるから、お礼が言いたかったんだが……」
「あ、あの子は……」
この質問に対してフリアは、視線を空に向けることで返していき、この動作を見たコウキさん、ジュン、ヒカリも、一緒に空を見上げ、同時に何かを悟ったような表情を浮かべる。
「そう、ほしぐもちゃんと一緒に帰っちゃったのね」
「ってことは会えたってことだよな!!良かったぜ!!」
「ああ、元気にしているなら、それでいいよな」
若干の寂しさを混ぜた、しかし晴れやかな表情は、ほしぐもちゃんたちの合流を祝福しており、暗い感情は一切見えてなかった。
「とにかく、これで一件落着だな!!」
そんなちょっとしんみりした空気を壊すように声を上げるジュン。
普段は空気が読めないせっかち人間だなんて言われるけど、こういう時の切り替えの良さは純粋に見習いたい。……本人は何も考えていなさそうだけど。
「そうね。これでまたゆっくり過ごせる……」
「……と、言えればよかったんだけどね」
しかし、そんなジュンによって切り替えられた空気は、ヒカリとフリアの言葉によって再び重いものへと変えられる。
その理由は、今私たちがいる場所から見える周りの景色が物語っていた。
「これは流石に時間がかかりそうだな……」
「こればかりは仕方ありませんね。コツコツやっていくしかない」
ダンデさんとビートの言葉につられて周りを見渡せば、そこには今回の事件で被害を受けてしまった数々の破壊痕。
いくらみんなが身体を張って守ったとはいえ、そこには限度がある。実際、怪我人こそは少ないけど、色んなポケモンが暴れたことによって起きた地形や建物の破壊はちょっとシャレにならないレベルのものとなっており、これを直すだけでもかなりの時間がかかることが予想される。ナックルシティだけでこれなのだから、場所によってはここよりも酷い場所は全然あるかもしれない。
「これはチャンピオン戦は結構延期しないとダメかもな……」
「ですね……」
傷ついた街並みを見て言葉をこぼすダンデさんとフリア。
おそらく2人が1番楽しみにしていたであろう直接対決のイベントを、先送りにせざるを得ないというのがとても残念そうだ。
実際、観客である私たちも、少し残念に思っている。
「こればかりは仕方ない。早く再会できるように、頑張って街の復興を━━」
「ギュアアアァァァッ!!」
「ディアアアァァァッ!!」
「パルウウウゥゥゥッ!!」
「っ!?次はなんだ!?」
「この声……!!ギラティナ!!」
「ディアルガ!!」
「パルキア!!」
その残念な空気を払おうと、ダンデさんが声を上げた瞬間に、突如聞こえてくる叫び声。
急に聞こえたそれに警戒度をあげて身構えた私たちに対して、フリア、コウキさん、ヒカリの3人は、嬉しそうな声を上げながら、今の声の主を迎え入れた。
「フリア、その子たちは……」
「うん、さっき屋上でちょっと話した、ギラティナとディアルガとパルキア。シンオウ地方に伝わる伝説のポケモンだよ」
「これが、あのシンオウ神話の……」
「す、すごいぞ……初めて見たぞ……」
「本当に知り合いなんですね……」
「その反応、わかると〜」
声の主に驚きながらフリアに声をかければ、フリアはさも当然というように、神と呼ばれるポケモンたちを私に紹介してくれた。これにはさすがのダンデさんも驚いており、続けてホップとビートも唖然とした声をあげていた。
唯一このことを知っていたらしいマリィだけは、感慨深そうにしていたけど。
「みんなも頑張ってくれてありがとうね」
「本当に、来てくれて助かった」
「ガラル地方全人間の言葉を代表して礼を言うわ」
呆気にとられて動けない私たちに対して、本当に親しそうに話すフリアたちは、感謝の言葉を順番に伝える。しかし一方で、言葉を受け取ったギラティナたちは、少しだけ思案顔で周りを見渡した。
「ギラティナ?」
「どうしたんだディアルガ?」
「パルキア、何か気になることでもあるの?」
その様子に疑問を感じた3人が声をかけるものの、ギラティナたちは特に返事をすることなく、3人で顔を見合わせ、何かを話し込む。
「なぁ、どうなってるんだ?」
「うぅん……」
この状況にジュンが声を上げるけど、やっぱり分からないらしいフリアからは生返事が返ってくるだけ。
「ギュアアアァァァッ!!」
「ディアアアァァァッ!!」
「パルウウウゥゥゥッ!!」
「わっ!?」
なんてことをしていたら、突如ディアルガたちが咆哮を上げ、それぞれ全身に力を込めながら宙に浮き出した。
ディアルガは青色の、パルキアはピンク色の、そしてギラティナは黒色のオーラを纏い、ディアルガとパルキアはその力を解放。ギラティナはそのまま黒い力に飲み込まれていき、姿を消した。すると、空が絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜたかのような色に変色。ちょっと不気味な空間へと変わった。
「な、なんだ!?」
「何が起きてると!?」
「みんな……もしかして……!?」
急な展開に驚くホップとマリィの声を合図に、みんなで色んな方向に視線を向け、これから何が起きようとしているのか必死に把握しようとしていく。が、彼らが何をしようとしているのか検討が着いたらしいフリアを筆頭に、コウキさんとヒカリが、驚いたような、けど同時に、嬉しそうな表情を浮かべた。
(一体何が起きるの……?)
その言葉を紡ぐよりも先に、周りに変化が訪れる。
「うそ……」
その変化は、崩れた街並みがまるで逆再生をしているかのようにどんどん復元していくというもの。
「ディアルガが、建物が壊れる前の時間まで時を操って……」
「パルキアが、過去と今の空間を接続して……」
「ギラティナが、反転世界から結びつけて繋がりを強固にする……」
コウキさん、ヒカリ、フリアの順番で何が起きているのか説明してくれているけど、理解なんてぜんぜんできない。けど、唯一わかったのは、本来なら復興に年単位の時間がかかりそうな仕事を、ディアルガたちはものの数秒で終わらせてしまったということ。きっと、他の街でも同じことが起きているのだろう。
気付けば空の色は元に戻っており、壊れていた街並みは元通り。辺りからは、急に直った街並みに困惑する声が次々と湧き上がってくる。
「これが……神と呼ばれしポケモン……」
「すっ……げぇ……!!」
この出来事に、私とホップは思わず声を漏らす。
「……ありがとう。ディアルガ、パルキア、ギラティナ。ここまでしてもらって、本当にありがとう!!この恩は、一生忘れない!!」
「ギュアッ!!」
「ディアッ!!」
「パルッ!!」
ダンデさんの心からの感謝を受け取った3人……ううん、3柱は、声を上げて返事をした後、それぞれの仲間の元へと挨拶に行く。
「ありがとうギラティナ。また、何かあったら一緒に遊ぼう?」
「何から何まですまないなディアルガ。今度はゆっくり過ごそう」
「このお礼は絶対するわ。また時間がある時に来てちょうだい。パルキア」
「ギュアアアァァァッ!!」
「ディアアアァァァッ!!」
「パルウウウゥゥゥッ!!」
そして挨拶を終えた彼らは、全員そろって空に空いた穴へと身体を滑り込ませて消えていった。
「これが……神様の力なんだ……」
その姿を見送った私たちは、ただただ神様の力に、呆気に取られていた。