【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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第7章 チャンピオンタイトルマッチ
353話


 急遽決まったダンデさんとのチャンピオンマッチ。その知らせは驚くほどの速さで広がっていき、あの日ダンデさんと約束して別れ、お昼ご飯をみんなで食べに行ったときにはもうニュースとして広がっていた。そのあまりの速さに、ボクたち全員で驚いた表情をして固まってしまったのは今でも記憶に新しい。……いや、あれから全然日にちは経っていないのだけど。

 

 スタジアムの整備やら観客のチケットやらの話がどうなるのかは懸念事項ではあったものの、どうやらそのあたりの準備はブラックナイトが終わった次の日から進めていたらしく、あとは本人たちの了承を得るだけでいい状態になっていたのだとか。

 

 もっとも、その肝心の本人が謎の音信不通により、中々予定が決まっていなかったのだが。

 

 さすがにこのことにはダンデさんも焦ったらしいけど、ボクに断られることを見越して何日かの猶予を取っていたことが幸いしたみたいだ。本当に申し訳ない。

 

 さて、そんなこんなで普通ではありえないスピードで決まったチャンピオンマッチ。急に決まっただけあって、正直あまり観客は入らないのでは?と思ったものの、どうやらすでにチケットは完売。満席が約束されている状態で、むしろあんな事件が起きてしまったせいか、いろんなところでメンタルケアのための休みがとられているおかげで、時間に関しては余らしている人が多いらしく、また事件によって沈んでしまった気持ちを盛り上げるために一大イベントいうことで、普段は現地に行けない人や行かない人も、今回は行ってみようかな?と言う考えからくる人が多いらしい。

 

 テレビ番組も、他の番組をやっている暇がないのか、どのチャンネルもこの試合を中継するみたいだしね。

 

 そういう点では、今回の試合はガラル地方の歴代の試合を振り返っても、トップクラスの視聴率になりそうとのこと。

 

 うん、緊張するね。

 

「さて、身体の調子とかは大丈夫そうかな?」

 

 そんな緊張感を持った中での2日間は本当にあっという間だ。光陰矢の如しなんて言うけど、矢どころの話ではない。本当に気づけばもうバトルの日だ。

 

「いよいよだね!!」

「待ちに待った日だな!!」

「あたしたちも楽しみにしてたと!!」

 

 自身のコンディションを確認しながらシュートスタジアムへの道を歩いていると、一緒についてきてくれているユウリ、ホップ、マリィから声色だけでワクワクしているのが伝わって来る言葉を投げられる。特にユウリのテンションがとても高く、なんなら当事者であるボクよりもテンションと緊張が高いように見える。そこを指摘すれば、ユウリは何を言っているんだという表情でボクの方を見てきた。

 

「当り前だよ!!だってフリアとダンデさんのバトルだよ!?気になるに決まってる!!」

「だよなだよな!!仲のいい友達と、ガラル地方最強のチャンピオンの試合だぞ!!盛り上がるに決まっている!!」

 

 そして、そんなユウリの言葉に賛同するように声をあげるのがホップ。こちらも、ユウリ程ではないにしろ、中々のテンションを誇っていた。

 

「けど、ホップはいいと?お兄さんの応援しなくて?」

「ぐっ……そこをつかれると弱いぞ……」

 

 話しているうちにどんどんテンションが上がっているホップに対し、単純な疑問を投げかけるマリィ。この質問はさすがにホップにはクリティカルだったらしく、ホップは頭を抱えながらウンウンと唸り始めた。

 

「友達であるフリアは応援したいけど、後にアニキを越えたいと考えているオレ的にはアニキにも勝って欲しい……ぐぉぉ……どうすればいいんだ……!!」

「あ、あはは……えっと……頑張れ」

 

 上がっていたテンションが一気に下がって、面白いほど苦しんでいるホップに対して思わず苦笑い。けど、こればかりはホップの心次第なので気にせず前を見て歩く。すると、横のマリィから質問が飛んできた。

 

「実際、フリア的には勝率はどのくらいと?」

「そうだね~……」

 

 その内容は、このバトルに対する自信の確認。それに対する答えは、ボクの中では決まっている。

 

「勝てる可能性はあると思う。けど……割合で言えば、10%あれば良い方じゃない?」

「随分と消極的とね?」

「そこは仕方なくない?客観的に見てもこればかりは変わらないと思うよ?」

 

 これから戦うのはこの地方の最強のトレーナー……いや、全世界を含めてもトップのプレイヤーと言われている人だ。

 

 地方人の特性上、ストイックなせいで元々ポケモンバトルのレベルが高いと言われているガラル地方は、ジムリーダーの時点で他の地方の四天王クラスに強いと言われている。そんな精鋭ぞろいの地方で、さらにトップを張っているダンデさんは、全ての地方のチャンピオンを集めても、その中で一番を誇っている可能性が高い。そんな相手に、勝率なんて高いわけがないだろう。むしろ、勝てる可能性が少しはあるんじゃないかと思っている今のボクの方が、人によっては驕るなと言いたい結果の可能性すらある。

 

「でも、負ける気はないんだよね?」

「それは勿論。最初から負ける気で闘う人なんていないでしょ?」

 

 しかし、だからと言って諦めるのはもっと違う。ユウリに言われた通り、負ける気なんて一切ないし、なんならこのバトルは、コウキと再戦するための前哨戦にするつもりだ。

 

 コウキも見てくれている中、無様な戦いなんて見せられない。

 

「楽しみにしてる。フリアが勝って、チャンピオンになったところで、そのフリアに挑みたい」

「あはは、その約束を果たせるように頑張らないとね」

 

 高まっていく緊張感を程よくほぐしながらシュートスタジアムへの道を歩いていくボクたちは、スタジアムに近づくにつれて徐々に大きくなる人の声を聴きながら、人目を避けるようにして裏口の方へ。

 

 この騒がしさが、さらにボクたちのバトルの始まりを伝えて来る。

 

「そう言えばヒカリたちはどうしたと?」

「ヒカリたちは先に席について観戦準備をしているよ。ユウリたちと違って、ヒカリたちは関係者席でみれないからね。チケット予約も結構接戦だったとか」

「ダンデさんにいえば、準備くらいはしてくれそうなものだけど……」

「そこはヒカリたちから辞退したみたいだね。変なところで真面目と言うかなんというか……」

 

 マリィとユウリの質問に答え、ここにいない他のいつものメンバーのことに話ながら歩いていたら、気づけばもう裏口手前まで来ており、この扉を開けて少し歩けばもう控え室と言うところまで来た。

 

 ここからは、もうユウリたちもついてくることはできない。

 

「……よし!!決めたぞ!!今日は2人とも応援して、勝った方にオレが挑戦して勝つ!!そうすれば実質どちらにも勝った扱いに……」

「それはもうほぼ同じことをユウリが言ったと」

「うぐっ……」

 

 そんなギリギリの時間になってようやく考えのまとまったホップだけど、マリィの言う通り、それに似た考えはもうすでにユウリが出してしまっている。

 

 もっとも、ユウリはボクを応援する気満々みたいだけど。

 

「まぁまぁ、好きな方の応援で大丈夫だよ。ボクはボクなりに全力で頑張るからさ。しっかり見てくれればそれで十分だよ」

「うん、しっかり見てる。だから頑張ってね」

「挑戦者代表として、最高の試合を楽しみにしていると!!」」

「アニキは超強いけど、フリアも超強いからな!!どっちが勝っても悔いのないバトルを楽しみにしてるぞ!!」

 

 ここでお別れと言うことはユウリたちも理解しているので、ボクが扉に手を掛けた時点でみんなは激励の言葉を背中投げにかけてきた。これに対してボクも振り返り、小さくガッツポーズをとりながら答える。

 

「うん、絶対に勝ってみせるから、しっかり見ててね」

 

 その言葉を最後にし、ボクはドアの中に身体を滑り込ませ、後ろ手に扉を閉めた。

 

「……ふぅ」

 

 中に入ると同時に襲ってきたのは静寂。

 

 あれだけ騒がしかった外の声は一切聞こえなくなり、一気に寂しさが襲ってくる。そしてその寂しさは、さっきまでの会話のおかげでほぐすことができたはずの緊張を持ってきた。

 

「行こう」

 

 それでも試合開始時間は変わらない。遅れるわけにはいかないボクは、ゆっくりと歩みを進めながら、ボクに充てられている控え室へと向かっていく。

 

「フリア選手ですね。お待ちしていました。こちらへどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 控え室に辿り着けば、そこには準備をして待ってくれていたリーグスタッフの姿。あちらもボクの姿を確認すると同時に丁寧にお辞儀しながらドアを解放。ボクを中に案内し、入室したのを確認したと同時にゆっくりとドアを閉めた。

 

 中に入ってボクを待つのはまたもや静寂。

 

 誰も使っていないロッカーが並ぶだけの控室は、今までここに来て準備したどのタイミングよりも重い空気を内包している。

 

「……」

 

 シュートスタジアムに来て、マクワさん、セイボリーさん、ユウリ、ビート、ルリナさん、オニオンさん、キバナさんと、沢山の人と戦ってきた。

 

 どの戦いも大変で、とても記憶に残る激戦だった。

 

(ううん、このスタジアムだけじゃない。ここに来るまでに、ガラル地方で沢山の人と戦ってきた)

 

 その思い出が、これからバトルするために着替える必要のあるこの真っ白なユニフォームを見ると、頭の中をどんどんとめぐってあふれかえって来る。

 

 ボクの誕生日である、928の数字が刻まれたユニフォーム。

 

(これを着るのも……たぶん今回が最後……)

 

 ボクと一緒にずっと闘ってきてくれた大切な衣装。

 

 色は真っ白だけど、洗うだけでは取れない、刻み込まれた汚れと傷は、ここまでボクが歩んできた小さな足跡だ。

 

 それはとても小さくて、よく見なければわからないようなものだけど、その1つ1つがボクに少しずつ小さな勇気をくれる。

 

(大丈夫。ボクに才能はないけど、その分は努力で補ってきた。その証明はこの子たちがしてくれてる)

 

 その痕を順番に指でなぞったボクは、着替えるために服を脱いでロッカーを開ける。

 

 ロッカーの中に入れるのは、普段着である群青色のズボンに白のシャツと少し濃いめのグレーのスウェットパーカー、そして赤色のキャスケット帽子。それらと交代するように、先ほどまで持っていた白いユニフォームに身を包む。

 

 首からぶら下げるのはユウリからもらい、マクワさんに作ってもらったうしおのおこうのネックレス。そしてその上に、ボクのお気に入りの水色マフラーを巻いてぎゅっと一握り。一緒につけることの多い2つ故に、ほんのりおこうの香りが移ったマフラーは、その不思議な匂いでボクの心を落ち着ける。

 

「すぅ……ふぅ……」

 

 深呼吸を1つ。

 

 着替えも終わり、バトルで頑張ってもらうみんなもしっかりと腰のホルダーにつけた。

 

 みんなカタカタとボールを揺らしてくれているあたり、こちらも準備は万端と言ったところだろう。

 

「右腕のダイマックスバンドも準備よし。後は……待つだけ」

 

 バトル開始まで、もう数分もないだろう。

 

 目を閉じて椅子に座り、心を落ち着ける。そうやって待っていれば、あっという間に声がかかって来る。

 

「フリア選手。時間が来ました。よろしくお願いします」

「……はい」

 

 名前を呼ばれたので、返事をしながらゆっくり起立。

 

 控え室のドアを開け、シュートスタジアムのバトルコートがある道へと足を進めていく。

 

「……」

 

 控え室の扉からバトルコートまで続く道。

 

 もう何回も歩いた道は相変わらず真っ暗で、その出口であるバトルコートの入り口は真っ白に染まっており、そこからは沢山の声が聞こえて来る。

 

 一歩踏み出すたびに徐々に大きくなっていくその声が、ボクにこのバトルの注目度の高さを教えてくれる。

 

 そしてついに、ボクはバトルコートへの入り口を潜り抜けた。

 

 

『わあああああああああ!!!!』

 

 

「……凄い声援」

 

 聴くたびに驚かされる声援の大合唱。

 

 心も身体も、大地も大空も、ガラル地方全てを震わせていると感じるほどのこの声に、いちいち驚いていた過去が懐かしい。けど、流石にここまでくればこの声には慣れ、堂々と歩くことができる。

 

 快晴の下、少しずつバトルコートの中心に向かって歩くボクを待ち受けるのは、すでにバトルコートの中心で待っているダンデさん。

 

 ボクの姿を確認できたダンデさんは、それはもう嬉しそうな表情を浮かべながらこちらを見つめていた。

 

「お待たせしました。ダンデさん」

「ああ、フリア君。よく来てくれた」

 

 バトルコートの中心にて顔を合わせたボクたちは、お互いの目を見ながら挨拶を1つ。

 

 その瞳には、早く戦いたくてうずうずしているのがよく分かるほどの闘志を宿していた。

 

 恐らく、ボクも同じ目をしているのだろう。ボクの目を見たダンデさんは、笑顔をより強くする。

 

「「……」」

 

 いつもならここでリーグスタッフの人たちによるルール説明が入る。しかし今回はその説明がなく、観客の声だけが響く状態となっていた。

 

 今までにないパターン故、正直どうすればよく分からなかったけど、ボクが何かをするよりも速くダンデさんが口を開く。

 

「俺の試合はいつも満員になる。……けど、ここまでスタジアムが熱狂しているのは間違いなく初めての出来事だ」

 

 首元についてあるマイクから、ダンデさんの声が拾われてスタジアム中に響き渡る。

 

「ブラックナイトを乗り越えるために最前線で頑張ったのが君たちのことを知ってくれているのだろう。ザシアン、ザマゼンタ、そしてバドレックスと言う英雄たちと立ち向かい、ムゲンダイナを抑え、見事夜明けを手に入れた人たち。その1人である君のバトルを一目だけでも見ようという人が多いのかもしれないな」

「ボクだけの力じゃありませんけどね。みんなで乗り越えた夜です。だから、代表者と言われるとちょっと思うところはありますけどね」

 

 最後の方なんかは、ボクは塔から落とされて最後のいい所で復活しただけの存在だ。むしろ代表者と言うのであれば、ムゲンダイナと絆を繋いだユウリの方がふさわしい気もする。

 

「誰が主役と言う話ではないのさ。凄い人たちがいろんなところから集まって、1つの大きななことを成した。その中の1人に含まれている。だから見に来ているんだ。胸を張ると言い」

「……はい!」

 

 そんなちょっとモヤっとした考えを吹き飛ばすかのようなダンデさんの答えに、ボクは素直に首を縦に振る。すると、観客たちからダンデさんの言葉に続くようにお礼の声が聞こえて来る。

 

『ガラルを助けてくれてありがとうな!!』

『あなたたちのおかげで沢山の人が救われたよ!!』

『あなたたちは恩人よ!!』

『そんな恩人たちの本気のバトル、みたいに決まってるだろ!!』

 

「っ!!」

 

 感謝の声を聴いて、思わず頭を下げるボク。よくよく周りを見れば、ヒカリたちも周りの観客にお礼を言われている姿が確認出来た。

 

「このバトルは、そんな夜を越えてくれたみんなに感謝するためのバトルであり、そして未だに残っている傷を受け入れて乗り越えるためのバトルであり、ガラルの未来を変えるためのバトルだ!!」

 

 マイクを通して声をあげるダンデさん。

 

 ここにいるすべての人間が、その声に耳を傾ける。

 

「さあ勝負といこうか!!ガラルを守った英雄の1人とのバトル……俺の無敗記録を伸ばすのに不足はない!!」

 

 ダンデさんの言葉と共に、観客たちのボルテージは一気に跳ね上がる。

 

 速くバトルを見せてくれ。そうはやし立てる周りの空気に押され、ボクもダンデさんに言葉を返す。

 

「ボクだって、ここまで歩んできた足跡が無駄じゃないってことを示す絶好の場所……夢はこの先にある……だから、全力で勝たせてもらいます!!……コウキに挑むには、無敗のチャンピオンを倒すくらいの実績がないと頼りないですからね!!」

 

 前にも行ったダンデさんを前座扱いする宣言。

 

 人によっては怒りかねない発言だけど、バトルが大好きなガラル地方ではこの発言すらプロレスのような口上として映ってしまうらしく、チャンピオンを前に一切引かないその姿にむしろ盛り上がる。

 

 そんな熱を帯びたやり取りを最後に、ボクとダンデさんは背を向けて歩き出す。

 

 トレーナーが立つ場所に歩くたびに、神経が研ぎ澄まされて、周りの声が聞こえなくなる。

 

「……」

 

 そして定位置に着くころにはもう、ボクの視界には振り返った時に見えたダンデさんの姿しか映っていなかった。

 

 

「さぁフリア君!!ガラル地方の歴史に残る……いや、ガラルの未来を変える極上の決勝戦を始めよう!!チャンピオンタイムだ!!」

「勝負ですダンデさん!!ここまでの足跡を信じて、あなたを越えて、ボクは自分の夢である親友を追い越すための足掛かりにする!!」

 

 

チャンピオンの ダンデが

勝負を しかけてきた!

 

 

「いくぞギルガルド!!」

「いくよエルレイド!!」

「ドド!!」

「エルッ!!」

 

 バトル開始。

 

 お互いが勢い良く投げたボールからは、お互いの先鋒を務めるギルガルドとエルレイドが登場。姿を現すや否や、ギルガルドはシールドフォルムからブレードフォルムへ移行し、エルレイドは肘の刃を伸ばして抜刀。同時に前にダッシュし、それぞれの刃を構えた。

 

「『せいなるつるぎ』!!」

「『サイコカッター』!!」

 

 ギルガルドは白色に、エルレイドはピンク色に染めた自慢の刃を振りかぶり、ステージ中心で激突。甲高い金属音と衝撃をまき散らした2人は、そのまま鍔迫り合いに突入した。

 

「ドド……ッ!!」

「エル……ッ!!」

 

 バトル開始一秒未満。

 

 始まると同時にぶつかり合う2人の視線が、このバトルへの想いを如実に物語っている。

 

「引くなギルガルド!!」

「押し切ってエルレイド!!」

「ドドッ!!」

「エルッ!!」

 

 暫く鍔迫り合いを行っていた両者は、ボクとダンデさんの声を合図に刃を弾き合い、ほんの少しだけ間に距離を作る。が、その距離をすぐに詰めてお互いの攻撃をぶつけ合う。

 

 まず動いたのがギルガルドで、自身の身体を強く光らせながら、エルレイドを袈裟斬りするように刀を振るう。これに対してエルレイドは、ギルガルドの刃に垂直にぶつかるように左腕を左下から右上に振り上げて相殺。腰を入れて回転しながら振るうことによって、ギルガルドの身体を押しのけて相手に隙を作ったので、このまま追撃をするべく今度は右腕を右から左に振って水平斬りを放つ。

 

 これに対してギルガルドは左に手持った自身の盾を上から叩きつけることで軌道を下に逸らして、同時に反動で自分は少し浮き上がることで何とか回避。カウンターとして、ギルガルドはエルレイドの攻撃の軌跡をなぞるように剣を振るった。

 

 反撃として振るわれたこの攻撃に対してエルレイドは右足を振り上げてギルガルドを更に上空へ弾き、左腕でアッパーを放つようにしてサイコカッターを行い、これに迎え撃つようにギルガルドはせいなるつるぎを打ち下ろす。

 

 2回目となる2つの刃のぶつかり合い。しかし今度は明確にギルガルドの方に軍配が上がり、飛び上がったエルレイドが地面に撃ち落とされる結果となった。

 

「『シャドーボール』!!」

「ダッシュ!!」

 

 落ちたエルレイドに対してギルガルドはシャドーボールの雨を発射。降りそそぐ黒の球が次々と襲い掛かってきたので、1つでも被弾を減らすためにエルレイドは前にダッシュして攻撃範囲から回避。すぐに移動できたことによって被弾を無くすことが出来たエルレイドは、ある程度距離が離れたところで進路を右に曲げ、空中に浮かぶギルガルドを中心に時計回りを描いていく。

 

「『サイコカッター』!!」

 

 軌道に乗ったところで今度はエルレイドから反撃。同じ技だけど、最初と違って斬撃を飛ばすことによって、遠距離に対応した攻撃をもってシャドーボールと弾幕合戦。

 

 近接戦をしていた最初に対して、ガラッと変わって遠距離戦。金属音の代わりに爆発音が響き始めた戦場を前に、周りは固唾をのんで見守る。

 

 このままでは膠着状態で、そうなれば移動をしていないギルガルドの方が消費体力と言う面で有利。なので、ボクはすぐに頭の中で作戦を立て、ギルガルドに近づくプランを決行。

 

「『シャドーボール』に刺してお返し!!」

「むっ?」

 

 飛んできたシャドーボールに対して肘の刃を突きのように繰り出して、串焼き棒のように保持。これを数回行って、左右の腕に3つずつの黒球を確保したのを確認したと同時に、進行方向をギルガルドへ変更。

 

「『アクアカッター』!!」

 

 この状態で右腕を振るって水の斬撃を発生させ、シャドーボールを含んだ巨大な水の帯をギルガルドに向かって解き放つ。

 

「『キングシールド』!!」

 

 これを技で相殺するのは難しいと判断したギルガルドは、シールドフォームにチェンジしてキングシールドを発動。水と黒球を弾き、無傷でやり過ごす。

 

「『サイコカッター』!!」

「エルッ!!」

 

 が、守備に回るということはエルレイドの接近を許すということ。まだ左腕にシャドーボールを保持しているエルレイドは、この隙に接近して左腕によるエスパーとゴーストの合わせ技をもって襲い掛かる。

 

(この速度ならフォルムチェンジは……)

 

「間に合わない……そう思っているのなら甘いぜ!!ギルガルド!!ついでに相手の案も奪っちまおう!!『シャドーボール』と『せいなるつるぎ』だ!!」

 

 フォルムチェンジの隙をついた肉弾戦。しかし、これだけの速度で襲い掛かってもまだ遅いらしく、何なら自身の刃にシャドーボールをセットしたうえでせいなるつるぎを発動。強化されたお互いの斬撃が空中でぶつかり合い。激しい爆発音を奏でて、両者の距離を大きく空けることとなる。

 

「開幕からかっ飛ばすじゃないか、フリア君!!」

「……やっぱり一筋縄じゃ行かないか」

 

 爆煙が晴れ、その先で不敵に笑うダンデさん。

 

 戦闘が始まってここまでで、まだ1分も経ってないほどのハイテンポなバトル。しかし、これだけでダンデさんの強さは十分理解できた。

 

「さて……どうしよっか……」

 

 そう零すボクの表情は、多分ダンデさんと同じくらいいい笑顔を浮かべているのだろう。そんな気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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