「『サイコカッター』!!」
「『シャドーボール』!!」
「すぐさま『アクアカッター』!!」
ピンクの斬撃と黒の球がお互いの中心点でぶつかり合い、爆ぜ、煙を巻き上げる中、その中を突っ切りながら刃に水を溜め込むエルレイドは、煙を突き抜けると同時に斬撃を発射。煙を目隠しとして打ち出したこの攻撃は、ギルガルドにとっては不意を突く攻撃のはずだ。
「『せいなるつるぎ』!!」
しかし、それでも素早く反応したギルガルドは、剣を縦に振って水を切り裂き、無傷で突破。やはりこの程度では崩れない。
「エルレイド!!」
けどそんなことなんて百も承知。だからこそ、このうちにさらに距離を縮めたエルレイドは、両腕の刃を黒に染めながら懐に飛び込み、つじぎりを叩き込む態勢へと入り、致命打を与えようとする。
「っ!?下がってエルレイド!!」
「っ!?エル!!」
が、その攻撃がいよいよ当たるというところでエルレイドをバックさせ、距離をとる。
せっかく懐に入ったのになぜ下がったのかと言われると、その答えは今のギルガルドの状態にあった。
「いい反応だ。それに判断もいい。大体の人はここで力押しを選択するからな」
「『キングシールド』……本当に厄介だ……」
シールドフォルムのギルガルドが展開するハニカムシールド。
これはただ攻撃をガードするだけの技ではなく、触れた敵の攻撃力をダウンさせる効果も持つ特殊な守りだ。これでエルレイドが特殊技を主体としているのであれば別に攻撃をしても構いはしないのだけど、エルレイドは物理攻撃主体のポケモン。ダンデさん相手に1段階だって攻撃は落としたくない。
「くっ……ってやば!?エルレイド!!避けて!!」
「エルッ!!」
キングシールドについて考えていたところに飛んでくる鈍色の弾丸。いつの間にか放たれていたラスターカノンになんとか反応したエルレイドは、横に飛ぶことで何とか回避には成功したものの、その回避先を狙うようにさらに弾幕が置かれていた。
その用意周到さに遅れを取ったこちらは、3発ほど攻撃を受けはしたが、すぐさま立て直してせいなるつるぎを発動。飛んでくる弾丸を次々と切り裂いていく。
(速い……!!)
ギルガルド最大の特徴であるバトルスイッチ。
攻撃特化のブレードフォルムと、防御特化のシールドフォルムを、キングシールドと攻撃技を起点に切り替えて戦うそのスタイルは、状況に応じた幅広い戦力を取れる反面、相手にどんな動作を取ろうとしているのかを読まれやすい一面を持つ。そういった面では、相手の動きを観察して対処するのを得意とするボクにとっては、実はまだ戦いやすい相手ではある。が、それでもこうやって苦戦しているのにはわけがある。
それがバトルスイッチの速さ。
こちらが不意をついて、防御が間に合わないであろうタイミングで仕掛けているのに、ダンデさんの確認と判断、そしてギルガルドの行動が速すぎて奇襲が追いついていない。
これが普通の相手であれば間違いなく突破できている自信があるのに、現実は真逆の展開を行っている。やはりチャンピオンの名は伊達では無い。
「守りが硬す……エルレイド!!それはダメ!!」
「エルッ!?」
なんてことを考えていると、ラスターカノンの中に黒色の球が混じっているのを確認し、慌てて声を出すものの、エルレイドの反応が間に合わずに被弾。こうかばつぐんのダメージを受けることとなる。
(『ラスターカノン』を効率よく弾くために、かくとう技の『せいなるつるぎ』を使っているのを確認されてる!!)
鋼の弾丸を弾いているせいなるつるぎはかくとうタイプの技。この技を見たダンデさんは、ラスターカノンの弾幕の中に小さなシャドーボールも混在させた。これにより、ラスターカノンと同じように弾こうと振るわれた刃はすり抜けてしまい、シャドーボールだけがエルレイドに当たってしまうということになる。
ラスターカノンに紛れさせるために、大きさ自体を小さくしていたことと、エルレイドというポケモン自体が、特殊攻撃に対してはそこそこの耐久力を持っていたが故に、ダメージ自体は想像より受けてはいないものの、それでも大きなダメージに変わりは無い。しかも、ラスターカノンにシャドーボールが紛れていることがわかったということは、より注意して相手の攻撃に備える必要が出てきてしまう。
(攻めのテンポがいちいち速い!!追いつくのが精一杯……ううん、どんどん追いつけなくなっている!!)
なにかの攻撃をされ、その原理や狙い、対策を考えている間に、もう次の攻撃が始まってしまっている。こんなにもおいてけぼりを食らう展開は、シンオウ地方とガラル地方、2つを合わせても初めての経験だ。
(判断力も適応力も行動力も全部負けてる!!)
このままではダンデさんの速度に振り落とされ、そのまま負けてしまう。
圧倒的な実力差。
たった数分戦っただけなのに、嫌という程思い知らされる。
(けど、そんなこと分かってた!!)
しかしそれは諦める理由にはならない。
実力で劣っているのは前提条件だ。それに、差は確かにあるけど、まだ背中はボクの視界に入っている。
(追いつけ!!追い越せ!!思考を速めてちょっとでも迫れ!!そこまでして、ようやく針の穴を通すような作戦を通して勝ち目を作る!!)
「エルレイド!!弾いてダッシュ!!」
「エ……ルッ!!」
ボクの声を聞いたエルレイドは、両腕を振り上げ、1番近くのラスターカノンを上に打ち上げたところで前にダッシュ。
自分から前に走り出すことによって、弾幕が迫る速度がアップするせいで、さっきよりも被弾が増え始めるてしまう。しかし、既に体力差ができている以上、攻めなければいけないのはこちら側だ。焦って行動すればいい結果にはならないけど、待っていてもジリ貧になるだけ。
「『サイコカッター』!!」
「今度は反射か!!」
かとっていこれ以上被弾を増やしたくないのも事実。そこでこちらは、サイコエネルギーをまとった刃を、ラスターカノンを打ち返すように振るって、後続に続く弾幕にぶつけて相殺させることで、弾幕の密度の低下を狙う。
当然簡単に出来る技術では無いため、エルレイドにはとてつもない集中力と体力を使ってもらうことになるけど、こうでもしないとギルガルドに詰めることが出来ない。
飛んできた6つの弾丸を前に、1つ目を右の刃で打ち返して2つ目と3つ目の弾丸側面に反射させて回避し、4つ目をスライディングでくぐって5つ目に左腕をぶつけ……ようとして、これがシャドーボールなのを確認し、嫌な予感がしたので慌ててジャンプで回避。着弾前に爆発するように調整していたらしいシャドーボールは、エルレイドが飛び越えて着地したところでひとりでに爆発。刃で殴らなくて良かったと安堵するよりも早く、背中を爆風で押されて前に進まされたので、目の前から倍速で迫ってきた鈍色の弾を、腕をクロスして無理やり受止め、そのまま身体を右回転させることで何とか弾いて再びダッシュ。この時、サイコカッターの斬撃をいくつか飛ばすのも忘れない。
「いい動きだ。なら、これならどうかな?『シャドーボール』!!」
「ドドドッ!!」
「っ!?エルレイド!!地面に刃を突き立てて!!」
「エル……ッ!!」
弾幕を乗り切ったこちらを確認したギルガルドは、せいなるつるぎでサイコカッターの斬撃を相殺しながら、今度はシャドーボールの弾幕を発射。が、ただの弾幕ではなく、散弾のように放たれたそれは、その全てが先程エルレイドが受けたあの空中で勝手に起爆するタイプだと理解したボクは、肘の刃を地面に突き刺すように指示。
「振り上げて!!」
「エルッ!!」
その状態から腕を思いっきり振り上げることで、地面をめくりあげ、土石を飛ばしてシャドーボールの起爆を強制的に誘発。エルレイドに到達させる前に全て爆発させることで何とかこれを回避すると同時に、爆煙が起きたことによってできた死角を使ってさらに接近。さすがにこの対処法は予想外だったのか、何とか懐に入り込むことが出来た。
ここがチャンス。
「エルレイド!!『つじぎり』!!」
「エルッ!!」
入り込むと同時に右腕を漆黒に染めたエルレイドは、この機を絶対に逃さないために全力で攻撃を構えた。
しかし、こちらがここまで力を込めるということはそれだけの時間があるということ。そしてこれだけの時間があれば、ダンデさんが気づかないわけが無い。
「『キングシールド』」
「ドドッ!!」
こちらの姿を確認したギルガルドは、左手に持っている盾を前に突き出し、その盾の裏についている、刃を収めるところに自身の身体を突き立てようとする。
この行動を許せばまたハニカムシールドが展開される。そうなれば、もうここまで攻撃準備を整えたエルレイドは動きを止められず、このバリアに接触。攻撃は防がれ、さらに攻撃力を落とされることになるだろう。そうなればさらに戦況は苦しくなる。
相手に攻撃させたくなる状況を作り上げ、そのうえでいなして狩る。
攻めだけでなく守りも完璧なその行動に思わず拍手をしてしまいそうになる。
「そう来ると……思ってました!!」
「なに……?」
だが、完璧故にこのキングシールドだけは読むことが出来た。だからこそ、このタイミングに合わせるために必死に突撃したんだ。
「ドドッ!?」
「なっ!?ギルガルド!!」
シールドフォルムに移行しようとしたギルガルドを襲ったのは、空から落ちてきた鈍色の弾。それは自身が放ったはずのラスターカノンであり、それがなぜ空から落ちてきたのか理解出来なかったギルガルドの動きが一瞬固まってしまう。
その一瞬さえあれば、時間は十分。
「叩き込め!!」
「エ……ルッ!!」
右腕に溜め込んだあくタイプの力を一気に解放しながら駆け抜けたエルレイドは、ギルガルドの横を通り抜けながら真横に一閃。ある程度のところまで駆けたところでぴたっと止まったエルレイドは、右腕を左に振り抜いた姿勢から、刃に残っている黒いオーラを振り払う様な動作で右に戻す。
「ド……」
刃から黒いオーラが消え、いつもの緑色の刃が目に入ると同時に、ギルガルドは崩れ落ちた。
ブレードフォルム状態のギルガルドは、攻撃に特化する代わりに防御面が一気に頼りなくなる。そんな状態のギルガルドが、特性きれあじによって強化されたエルレイドの本気のつじぎりを耐えられる訳がない。
「ギルガルド、戦闘不能!!」
「はぁ、はぁ、よし!!」
まずは先手。ダンデさんの強力な先鋒を先に落とすことに成功した。
もっとも、こちらのエルレイドのかなり削られてしまったが。
「戻ってくれギルガルド。よく頑張ったな」
こちらが勝った余韻に浸りながらも、すぐさまエルレイドのコンディションの確認。その間にダンデさんも、ギルガルドを戻しながら次のボールを構える。
「やるなフリアくん。まさか天井の鉄骨で跳弾させるとは思わなかったよ」
そう言いながら空を見上げるダンデさんの視線の先には、シュートスタジアムの屋根を支える強固な鉄骨。
先程ボクが『振り上げて』と指示したタイミングで技を振るった時に、相手の攻撃を打ち上げたのはこの時間差攻撃を行うための布石だ。そしてさっきまで必死こいてギルガルドに近づいたのは、この攻撃に相手のキングシールドのタイミングを合わせる必要があったから。
今考えても無茶苦茶な作戦だ。時間が1秒でも遅れればアウトだし、この時に相手がキングシールドをしなくてもダメ。もっといえば、ギルガルドが気分で場所を少し変えてもアウト。そして、外してしまえばもう二度とこの作戦は行えない、まさに1回限りの分の悪い賭け。たとえダンデさんの記憶が消えて、もう一度この作戦を通せる状態になったとしても、もう二度とやりたくないほどの危ない橋渡り。
「こうでもしないと、勝てないと思ってますから」
しかし、実力がある以上必ずどこかで無理をしなくちゃいけない。
勝てない可能性が高いのなら、せめて自分から仕掛けて失敗したうえで後悔してやる。それくらいの気概がないとやってられない。
「ははは、英雄にそこまで思って貰えて光栄だな!!君の本気の思いを感じるよ。ならこちらも、尚のこと本気で挑まなくてはな!!ゴリランダー!!」
「グラァァァ!!」
「次はゴリランダーか」
ギルガルドから交代して出てきたのはゴリランダー。
登場すると同時に太鼓を地面に置き、演奏しながら吠えだした瞬間に、地面一帯に草原が生い茂っていく。
「エルレイド気をつけて!!『せいなるつるぎ』を構えて━━」
「『グラススライダー』」
「……え?」
この草原を見て1番警戒するべき技であるグラススライダーを見るために、予め防御行動を取ってもらうようにエルレイドに声をかけた。が、その返事はなく、気づけばエルレイドのいた場所にはゴリランダーがおり、同時にボクの後ろから何かがぶつかる音が聞こえてくる。
その音の正体を確認するべく、ゆっくり後ろを振り向けば、そこには壁にもたれ掛かりながら地面に腰をつけ、目を回しているエルレイドの姿。
「エルレイド、戦闘不能!!」
「いい速度だ。ゴリランダー!!」
「グラァァァ!!」
エルレイドが倒れたのを見たゴリランダーは、再び太鼓と雄叫びの音を響かせて自分を鼓舞。心做しか、このせいで地面の草原がさらに生い茂っているように見えた。
グラススライダーは、技単体で見ればそんなに強い技じゃない。威力そこそこの、くさタイプの物理技と言うだけのものだが、これをグラスフィールド下で行われると話は変わってくる。
文字通り、草原を滑るこの技は、地面がグラスフィールドの際はでんこうせっかなどのように、とてつもない速度を持って攻撃が可能。実際、これを行ったホップのゴリランダーの攻撃はかなりの機動力を持っていた。
それを知っていたが故に、こちらも最警戒技としており、構えを取って待っていた。
(……速すぎる)
しかし、そんなボクの想像を嘲笑うかのように行われた高速攻撃は、視認することすら許さずエルレイドを狙い撃ちしてきた。
「ありがとうエルレイド。ゆっくり休んでね」
エルレイドをボールに戻しながら、先程ゴリランダーが行った攻撃を頭の中で何回も再生する。
全てはあの攻撃をどうにかするため。
(……ダメだ。速度に関してはどうしたって勝てない)
けど、何度想像してもさっきの攻撃についていける自信が無い。
可能性のあるポケモンはうちだとインテレオンとヨノワールだけど、インテレオンはタイプ相性上出来れば出したくないし、ヨノワールを切るところはここじゃない。
(……うん、やっぱりこの子しかない!!)
「お願い、マホイップ!!」
「マホッ!!」
となれば、ボクの作戦はひとつしかない。その作戦を行ってくれるマホイップを次鋒に選択し、フィールドに呼び出す。
「む、ゴリランダー!!『グラススライダー』!!」
「グラッ!!」
ボクがマホイップを呼び出した理由をすぐさま理解したダンデさんは、なにかさせる前に倒すつもりでグラススライダーを再び指示。ゴリランダーの姿が消えた。
「マホイップ『とける』をしてそのままクリーム!!」
「マホッ!!」
対するこちらは、自身の身体を溶かして防御力をぐーんと上げながら、全身からクリームをどんどんと溢れ出させる。
「グラッ!!」
「マホッ!?」
と、ここまで準備したところでゴリランダーの攻撃が炸裂。マホイップの身体が、エルレイドの時と同じように大きく後ろに吹き飛ばされる。が、先程とは違ってマホイップは壁にぶつかると同時にその身体を壁の中……いや、正確には壁に付着しているクリームの中に入り込み、ゴリランダーとは別の方法で姿を視認できなくする。
「なるほど、最初から殴らせることが目的か」
「……」
クリームをたくさん放出しているところを殴られたことによって、至る所に散らばってクリームだらけになっている戦場を眺めるダンデさんが小さく呟いた。
ダンデさんの言う通り、ボクが考えた作戦はわざと攻撃を受けるというもの。
ゴリランダーの攻撃は現状だと速すぎて対処が不可能。早々にこの結論にたどり着いたボクは、逆転の発想を持って対処することにした。
それは相手の速度を落とすというもの。
芝生の上からクリームをかけてしまえば、グラスフィールドの効果は半減。そうなればグラススライダーの機動力も大きく下がる。しかしこれだと最初の一撃だけはどうやっても抑えられないので、そこはとけるで防御力をあげることで対処。
(どうやっても避けることが出来ないのなら、受けることを前提にした作戦で行く!!)
「『マジカルシャイン』!!」
「マッホ!!」
「太鼓で受けろ!!」
「グラッ!!」
クリームを溜めていたマホイップに触れたせいで、ゴリランダーの身体にもクリームが付着しており、そのせいで動きが若干鈍い。そこを狙って放たれたマジカルシャインはゴリランダーに真っ直ぐ飛んでいく。
これに対してダンデさんは避けることはせずに盾で防ぐことを選択。いくら動きが鈍いとはいえまだ避けられる範疇だ。なのに、わざわざ微量ながらもダメージを受ける方を選択したのは何故かと思ったけど、その疑問はすぐに解消された。
「ケアが完璧……」
「できる限り早めの除去。ポプラさんに手痛いダメージを受けたことがあるからね」
盾で攻撃を受けながら、しかし踏ん張ることはせずに流れに見を任せたゴリランダーは、ダメージを抑えながら後ろにとんで行く。
この衝撃により、ゴリランダーの身体からクリームが離れ、動きに自由が戻る。
クリームの除去。これがダンデさんの狙い。
「マホイップ!!もっと『マジカルシャイン』!!」
しかしゴリランダーが空中にいることに変わりは無い。まだ自由が完全に戻っていないうちに追撃を入れるため、すぐさま2発目のマジカルシャインを発射。
「さぁ反撃といこうか!!『ドラムアタック』!!」
しかし、その攻撃が当たる前に、飛ばされながらドラムを叩いたゴリランダーの力によって地面から根っこが生え、それがゴリランダーを掴んで上に持ち上げたことによって攻撃の軌道から脱出。更に、空中でもっと激しくドラムを叩くことによって、まるでアリアドスの巣のように根っこが縦横無尽に駆け回り、同時にその表面にうっすらと草原が生えていくのを確認する。
「マホイップ!!クリーム!!」
この戦法も見覚えがあり、それはホップがユウリとのバトルで見せた立体機動だ。
根っこに草原をはやすことで、根っこのレールを高速で滑って移動できるようになるこの技は、ゴリランダーにさらなる機動力を与えることとなる。
それを察したボクは、マホイップに指示を出してすかさずクリームを乱射。空中のレールの至る所にクリームを付着していく。
先程のギルガルドとエルレイドのバトルが、どちらが先に致命打を与えるかのバトルだったのに対して、今回はどちらが自分の陣地を作り上げるかの陣取り合戦のようなものになっていく。
草原が生えたところにすかさずクリームが掛けられ、そのクリームを吹き飛ばす、もしくは避けるように新しい根っこが作られるという形になっているその戦況は、時間が経てば経つほど死角が増え、情報量が積み重なっていく。
「ゴリランダー!!」
「グラッ!!」
そんな状況で先に手を打ったのはゴリランダー。
ドラムを強く叩くと、マホイップの周囲の地面に向かって突き刺さっていく複数の根が確認できた。その表面にも草が生え始めている当たり、これに乗ってくるということだろう。
「クリーム!!」
しかしこの程度ならマホイップで十分とめられる。
(さぁ、どう来る……)
「それは少し考えが甘いぜチャレンジャー!!『アクロバット』!!」
「グラッ!!」
「なっ!?」
レールにクリームを付着して安心していたボクたちを襲ってきたのは、根っこの側面を足場として、ピンボールのように跳ね回りながら飛んでくるゴリランダーの攻撃。
ホップVSユウリの試合で、ユウリ側がエースバーンで行っていたその攻撃方法は、グラススライダーばかりを意識してしまっていた……いや、意識させられるようにされていたボクにとっては予想外の行動であるせいで反応が遅れる。
「『とける』!!」
「遅い!!」
避けるのは無理なので、せめて防御を上げてダメージを減らそうと考えたけど、それすらも間に合わず、マホイップの身体に強烈な蹴りが叩き込まれ、大きく後ろに吹き飛ばされた。
「マ……ホッ!!」
(攻めと守りだけじゃなくて、こういう精神面の駆け引きも強いの、本当にきついな……)
大ダメージを受け、しかしそれでも声を上げながら立ち上がって前を見るマホイップの姿を確認しながら、ボクは必死に頭を働かせる。
相手の引き出しの豊富さを前に、歯を食いしばりながら。