【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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355話

「『アクロバット』!!」

「回避!!」

 

 マホイップの周りに張り巡らされた根の包囲網。これを起点に飛び回り、四方八方からマホイップを攻撃しようと画策。これに対してこちらは真正面から戦うのは不利と判断し、クリームの中を泳いで移動開始。ゴリランダーの動きに補足されないように、こちらも同じように動き回って的を散らしていく。

 

(落ち着け……大丈夫。この状況は思ったよりも悪くは無い)

 

 アクロバットを受けて吹き飛んでしまったマホイップを確認した後、少し動揺してしまっていた心を、ネックレスから香る匂いを吸い込み、落ち着けて考える。

 

 被弾回数が多くて、既に先手を取ったアドバンテージは無いに等しい状態だけど、こちらの動きは決して間違っている訳では無い。

 

 確かに、根っこのレールとグラススライダーによるコンボを意識しすぎていたのは事実だけど、この技を通してしまう方がもっとやばい。

 

 アクロバットによる高機動攻撃は確かにビックリはしたし、攻撃を受けてしまってはいるものの、アクロバットはあくまでもひこうタイプの技。故にゴリランダーの得意技では無いため、グラススライダーに比べれば威力はかなり落ちる。その証拠に、思いっきり攻撃を受けたマホイップには想像以上にダメージが入っておらず、まだまだ元気に動き回っているし、しっかり観察すれば、グラススライダーを行っていた時に比べてゴリランダーの動きは遅い。

 

 今も、根っこから跳ねて飛び蹴りを放ってきたゴリランダーに対して、ギリギリのところでクリームに潜って避けたマホイップは、ゴリランダーに向けてマジカルシャインを発射。ゴリランダーは、攻撃が外れたことによって殴ることになった木の根を操ることで、攻撃後の動けない時間でも自分の身体を動かして何とか回避を試みるものの、さすがに無茶だったみたいで、僅かに被弾しているのを確認することが出来た。

 

 このアクロバット戦法はあくまでもサブプランであり、グラススライダーが通用しない相手に対する苦し紛れの行動であることに変わりは無い。

 

(マホイップのクリームはちゃんと生きている!!自信を持って戦うんだ。心で負けたら絶対に勝てない!!)

 

 そう考えると心に少し余裕が出来たのを感じ、そんなボクの雰囲気がマホイップにも伝わったのか、少しだけ動きが良くなり始める。

 

「マホイップ!!こっちもクリームの巣を張るよ!!」

「マホッ!!」

 

 結果、縦横無尽に飛びまわるゴリランダーの動きを段々と補足することが出来た。

 

 それによって余裕が生まれたこちらは、マホイップにさらに領域を作ることを指示。グラスフィールドの存在のせいで一瞬忘れていたけど、空中にフィールドを作らせるという点ではマホイップだって得意だ。特に、今回のように空中にオブジェクトが沢山あれば、よりマホイップにとって有利に働く。

 

 それがこのクリームによる結界。

 

 他の場所でも行ったこの戦法は、マホイップが移動できる場所を2次元から3次元へと増やすことができ、一気に戦術が広がる。これでゴリランダーほどとは行かなくても、マホイップもかなりの速度で動けるようになる。

 

 それに、この結界は移動に使うだけでは終わらない。

 

「マホイップ!!そこ!!」

「マホッ!!」

「っ!!ゴリランダー!!」

「グラッ!!」

 

 いよいよアクロバットの軌道を読むことすらできるようになってきたこちらは、ゴリランダーが進む方向を予知して、その軌道線状にクリームのラインを作成。通ればクリームがまとわりつき、動きが鈍くなるように張ったこれに対して、ゴリランダーは自身の近くに無理やり一本の根っこを伸ばして、それを掴むことによって軌道を無理矢理変化。何とかクリームに引っかからないように動くことに成功はした。しかし、そうやって無理をすれば、他の動きに対してほころびが生じる。

 

「マホイップ!!『マジカルシャイン』!!」

「マホッ!!」

「盾だ!!」

 

 クリームを避けるために少し上に軌道が動いたゴリランダーの、さらに上を位置取ったマホイップがゴリランダーを叩き落とすかのようにマジカルシャインを打ち下ろす。

 

 空から降りそそぐ光に対して、背中の太鼓を前に突き出して盾代わりにして受け止めたゴリランダーは、しかし勢いを殺し切れずにそのまま地面に墜落。残念ながら落ちたところにクリームがたまっていなかったため、ゴリランダーにクリームの付着こそできなかったものの、それでもゴリランダーを落とすことは出来た。

 

「引っ張って!!」

「マホッ!!」

 

 ここで自身が張ったクリームの糸を思いっきり引っ張るマホイップ。すると、空中に張り巡らされたクリームが一気に収縮。その中心点にいるゴリランダーに向かってどんどんクリームが集まっていく。

 

「捕まえて!!」

「『ドラムアタック』!!」

 

 360°全方向から集まっていくクリームを前に、ゴリランダーが取った行動は演奏。太鼓を乱打し、周りから根っこを呼び出して自身を覆うように展開。まるで繭のように出来上がった根っこの球に向かって、クリームが次々と固まっていく。外から見れば、大きなクリーム球にしか見えないだろう。

 

(……これ、どうするんだろう?)

 

 木の根のおかげでクリームは当たっていないとはいえ、自身で作り上げた根っこの檻に自分で閉じこもってしまっているため、外に対してのアプローチが出来なくなっている。

 

 まぁ、木の根に閉じこもられて何もできないのはこっちも同じなんだけど……

 

 

「ゴリランダー!!派手に鳴らせ!!」

 

 

「グラアアアァァァ!!」

 

 

 なんて考えていると、ダンデさんが大声を上げてゴリランダーに指示。クリームの中から小さくゴリランダーの声が聞こえたかと思おうと、そこからさらに小さく太鼓の音が聞こえ始める。

 

 あの密室で演奏して何になるのか。それが気になってどうすればいいのか迷ったそのとき、フィールド全体に地響きが巻き起こる。

 

「な、なに!?」

「マホッ!?」

「マホイップ!!」

 

 その揺れに足を取られそうになったのを何とか踏ん張っていると、前からマホイップの悲鳴が上がる。それにつられて前を見れば、先ほどこちらがやったクリームの圧縮を、今度はあちらが木の根っこで行ってきていた。

 

 クリーム球を中心に、このフィールド上のありとあらゆるものが圧縮されていき、徐々に徐々にマホイップが中央に追いやられていく。

 

 このままでは、いくらクリームの中に潜れると言っても、クリームごと押しつぶされてしまう。

 

「マホイップ!!とにかく動きまくって!!」

「マ、マホッ!!」

 

 ボクの指示を聞いて、慌てて動き回る気配を感じさせるマホイップ。

 

 残念ながら、徐々に木の根が中心に集まっていく兼ね合い上、こちらからマホイップの姿を確認することはできないため、マホイップ自身の判断で切り抜けてもらう必要があるのだけど……

 

(マホイップが木の根っこの包囲網から出てくる気配がない……この様子だと、もう既に自身が通り抜けられるほどの隙間がないのか、はたまた、木の根が絡まりすぎて中身は想像以上の迷路になっているのか……)

 

「マホ……マホ……ッ!!」

 

 恐らく両方とも正解なのであろうボクの思考を証明するように、木の根の檻から聞こえてくるのはマホイップの困ったような声。

 

 もう逃げることはできないのだろう。そう判断したぼくは、マホイップに逃げるのをあきらめるような指示を出す。

 

「マホイップ!!木の根の中にあるクリームを全部自分の所に集めて!!その中に閉じこもって!!」

「マ、マホッ!!」

 

 ボクの言葉の意味を受け取ったマホイップは、返事を返しながら行動開始。木の根の檻の表面に塗られているクリームが動き出し、どんどん中に吸い込まれているあたり、マホイップがボクの指示通り動いてくれていることがわかる。

 

 きっとあの中では、木の根に包まれたゴリランダーと同じように、クリームの球に包まれてじっとしているマホイップを確認することができるだろう。そうなってしまえばいよいよ膠着状態だ。

 

(さて、うまくいけばいいんだけど……)

 

 膠着状態の先を考えている間に、徐々に地響きは鳴り止み始め、そして完全に揺れと音がぴたっと止まった。

 

 その時、バトルフィールドの中心にあるのは、1つの大きな球状に固まった木の根の塊のみ。

 

 この中にはクリームに籠ったマホイップと、木の根の中に籠ったゴリランダーがいるのだろうけど、お互いの姿は確認することが出来ず、そしてマホイップやゴリランダー自身も、周りがどうなっているかの確認をすることはできない。

 

 こうなってしまえば、例えこちらからの指示が通ったとしても、本人たちはどこを攻撃していいのかわからず行動することになってしまうため、きっと相手に致命打を与えることはできないだろう。攻撃をするのなら、それこそ全体を一気に攻撃できる何かでないといけない。

 

 例えば、今しがたゴリランダーがしようとしている攻撃のような、スケールの大きな攻撃を。

 

「ゴリランダー!!さらに押しつぶせ!!」

 

 ダンデさんの声が届いているのか、はたまた最初からそうするつもりだったのか、ダンデさんの声を皮切りに、一度ピタリと止まった木の根の動きが再び始動。その大きさがゆっくりとだけど小さくなっていき、どんどん内側に圧縮されていく。

 

 恐らく、自身を守っている木の根だけをそのままに、他のすべての木の根を圧縮しているのだろう。そうすれば、マホイップは最後にゴリランダーを守るものと、外から迫ってくるものにつぶされて行動不能になる。

 

 ゴリランダー自身は攻撃を受けないところに引きこもり、マホイップだけを着実に追い詰める完璧な作戦だ。

 

 クリームの圧縮で満足していたこちらをさらに上回るその攻撃。発想のスケールで負けているこちら側からは、もう防御しようの無い攻撃で、クリームで自分を守るようにしているのだって、ただの時間稼ぎにしかならないだろう。

 

 見た目が地味故に、周りから歓声こそ上がることはあまりなけど、しかし詰将棋のような完璧な進行絵お前ににテンションが下がることはなく、むしろダンデさんの作戦立ての上手さに感心している声が上がる。

 

(全く持って同意。本当に、こっちが上手く動けていると思っても簡単に上を行かれる……本当に差を押し付けられるなぁ……)

 

 今日何度目になるかわからない実力差の実感。けど、格上の相手と戦っているからこそ、こちらだって成長できることがある。

 

「さぁフリア君、君はここからどうする?このままだとマホイップは何もできずにつぶされてしまうぞ!!」

「わかってますよ。だから、もう手は打ってあります!!」

「……何をするつもりなのか、ぜひ見させて━━」

 

 ボクの返答に嬉しそうに言葉を返そうとするダンデさん。が、その言葉最後まで紡がれることはない。

 

 なぜなら、今しがたマホイップたちを押しつぶそうとしていた木の根が一気に炎に包まれていったから。

 

「なっ!?」

 

 いきなり轟々と燃え盛る焔は、静まりつつあった会場を一気に沸かせ、文字通りフィールドの温度を一気に爆上げする。

 

 発想のスケールで負けてしまったのなら、そのスケールを更に上書きしてやる。

 

「『マジカルフレイム』!!ここまで隠していたのか!!」

「奥の手は最後まで隠したいですから!!」

 

 ボクのマホイップはマジカルフレイムを覚えていた。けど、弱点をつけるのにその技を使わなかったのはいざという時の切り札とするため。

 

 ダンデさん程の知識力がなかったとしても、マホイップがマジカルフレイムを使えることなんてほとんどの人が知っていて当然だ。しかし、覚えられる技が4つまでしかない以上、他にも覚える候補のあるマホイップが、ここまでかたくなにマジカルフレイムを行わなかったら、今回は覚えさせていないのでは?と考えるのは自然だ。なんせ弱点を突ける大事な技だし、こちらはゴリランダーに対してマホイップを後出しで投げているのだから、むしろ使わない方がおかしい。後出しをするからには、対抗策があると考えるのが普通だからね。

 

 だからこそここまで隠したし、隠していたからこそこのピンチで最大の輝きを見せることができる。

 

 木の根に包まれたマホイップが、クリームの中からマジカルフレイムを精一杯発射することで、包まれていた木の根が一気に発火。木の根の中に取り込まれているマホイップとゴリランダーをまとめて燃やし尽くす勢いで、どんどん炎が成長していく。

 

「マホイップ!!どんどん『マジカルフレイム』を追加して!!」

 

 その成長を見てなお、マホイップに攻撃技を追加で指示。ただでさえ燃え上っているのにさらに炎を追加することによって、とんでもない勢いで燃え盛る炎は、どんどんその規模を大きくしていく。

 

「ハハハ!!スケールで負けたな!!」

「それはこっちのセリフです!!先に上回れたから、上回り返すしかなかったってだけですよ!!」

 

 炎を挟んで行われるその会話は、相手の表情を見ることはできないものの、言葉だけで笑顔を浮かべているのがよく分かる。

 

「しかしいいのかな?ここまで火力をあげてしまえば、マホイップもただでは済まないと思うが……」

「そのためのクリームです」

「……成程な」

 

 油分を含んではいるものの、それ以上に水分を置く含んでいるクリームは、温度は上がっても燃えることはない。自滅覚悟のこの火炎地獄だって、よくよく観察すればゴリランダーの方が受けるダメージが多く、我慢勝負となれば先に倒れるのはゴリランダーの方だ。

 

「ゴリランダー!!木の根を解除だ!!すべてを追い払え!!」

「グラァッ!!」

 

 それを理解したダンデさんは、ゴリランダーにこの木の根の檻を解除する指示を出す。

 

 ゴリランダーもこの灼熱地獄から速く逃げ出したかったらしく、聞こえていたのかわからないながらもすぐさま指示に従い、太鼓を乱打。すると、木の根が素早く解除され、いたるところに火のついた木屑が散らばっていく。

 

「マホッ!?」

 

 急に締め付けが無くなったことによって、ドロッとしたクリームの塊も外に投げ出され、その中にいたマホイップも変な子をあげながら飛び出してきた。

 

 燃える木屑が落ちていき、いたるところで炎が上がっているバトルフィールドの中心で、大きなやけどを負ったゴリランダーと、思いの他締め付けが強かったのか、これまでのダメージと合わせてかなりの傷を負ったマホイップが着地してお互いを見つめ合う。

 

「グラ……」

「マホ……」

 

 肩で息をしながらお互いを見つめる両者の間には、そんなに距離はない。一歩踏み出してしまえば、その時点でお互いの射程距離に入るだろう。となれば、近距離戦を得意とするゴリランダーの方が有利に聞こえるが、ゴリランダーの攻撃の起点である地面の草原はもうすべて燃やされているため存在せず、ゴリランダー自身やけどを負っているせいで火力は出せない。

 

 とはいえ、攻撃の被弾回数が多いのは間違いなくマホイップの方で、体力的に見ればマホイップの方が少なくはなっている。

 

 どちらにせよ、この2人の勝負の決着は、次の一撃にて着くこととなる。

 

「「……」」

 

 ぱちぱちと、木屑が燃える音だけが聞こえてくる戦場。

 

 ただ静かに、決着の時を待つ2人が、じっとお互いを見つめ続ける。

 

 そんな中、燃え尽きた一欠片の木屑が一際大きな音を立てて崩れ去った。

 

「ゴリランダー!!『アクロバット』!!」

「マホイップ!!『マジカルフレイム』!!」

 

 この音を合図に、ボクとダンデさんの指示が同時に発声。この声を聞いたゴリランダーは拳を構え、マホイップは掌に炎を作り出す。

 

「マホッ!!」

 

 先に動いたのはマホイップで、左手を前につきだすことによって、生み出した焔を真っ直ぐ発射。煌めく炎は寸分違わずゴリランダーの方に飛んでいく。

 

「ゴリランダー!!」

「グラアアアァァァッ!!」

 

 これに対してゴリランダーは、自身の体力が少ないのを覚悟の上で、避けることはせずに突っ切る選択を取る。

 

 右手に持ったバチを振り上げ、叩きつけるようにして焔にぶつけることによって、自身に火の粉をいくつか受けることにはなるが、自分が耐え切れるギリギリの所までマジカルフレイムの威力を殺し、その中を駆け抜けてきた。

 

「なっ!?」

「マホッ!?」

 

 ここに来てまさかの特攻。自身が受けてはいけないダメージをしっかり理解し、そのうえで避けることすらしないその行動は、完全にボクたちの意表を着く形となり、反応が遅れて動けない。

 

「グラッ!!」

 

 ゼロ距離まで近づいたゴリランダーが、勢いよく回し蹴りを放ち、マホイップの身体を貫いた。

 

「マホッ!?」

 

 体力が減っているところに突き刺さったゴリランダーの一撃。

 

 お腹に深々と突き刺さったその蹴りは、マホイップの体力を完全に削りきる。

 

 これでこちらのポケモンは2人倒れることとなり、不利状況へ……

 

「マ……ホ……ッ!!」

「グラッ!?」

「何!?」

 

 なる直前、マホイップの右手がゴリランダーに添えられる。

 

 まだ動けるマホイップの気力に驚きの声を上げるゴリランダーとダンデさん。その姿がどこかさっきのボクたちの姿に酷似していて、つい頬が緩みそうになる。

 

「マホイップ!!『マジカルフレイム』!!」

「マホ……ッ!!」

 

 そこをぐっと堪えたボクは、この機を逃さず最後の指示を出す。すると、マホイップが右手に力を集中させ、一気に発火。ゴリランダーの身体を、自身を巻き込みながら燃やし尽くす。

 

「グラァッ!!」

「ゴリランダー!!」

 

 これまでのダメージに、アクロバット後の隙が重なって動けないゴリランダーは、ただ声をあげることしか出来ず、そのまま地面に突っ伏して目を回す。

 

「マホ……」

 

 同時に、自分ごと燃やしたせいでダメージが返ってきてしまっているマホイップも、体力の限界が訪れてしまいそのままダウン。ゴリランダーの横に並んで、自身も目を回しながら突っ伏した。

 

 

「ゴリランダー、マホイップ、戦闘不能!!」

 

 

 ダブルノックアウト。

 

 2人の決着は、引き分けという形で落ち着くこととなる。

 

「戻れゴリランダー。……よく頑張ったな」

「ありがとうマホイップ。ゆっくり休んでね」

 

 お互い1歩も引かないバトルの結果に、会場がさらに響く中、しかしボクたちはその声に乱されることなく、いつも通りのテンションで、今しがた激闘をくりひろげた仲間に声をかけながらボールに戻していく。

 

 ボクもダンデさんも、集中しすぎて周りの声が聞こえていない。それほどまでに、お互いのことしか見えていない。

 

「ははっ、楽しいな……!!」

「はい、凄く……!!」

 

 ギリギリで、いつ離されてもおかしくない危険な綱渡り。けど、そんな危ない橋を渡り続けているはずなのに、この緊張感が楽しくて仕方がない。

 

 ダンデさんはダンデさんで、ピッタリ背中に着いてきてくるボクに、ちょっとした緊張感を感じてくれているのだろうか。だとすれば、尚のこと嬉しい。

 

(去年のボクが見たら、ひっくり返りそうだね……)

 

 過去のことを思い出して、少しだけ感傷に浸るけど、それをすぐに追い払って新しいボールを握りしめる。

 

 視線を前に向ければ、ダンデさんも同じようにボールを構えていた。

 

「行くぞドラパルト!!」

「頼むよブラッキー!!」

 

 ダブルノックダウンが起きて次の3番手同士のバトル。

 

 お互いが選んだポケモンは、ダンデさんがドラパルトでボクがブラッキー。

 

 タイプ相性だけで見るのならばこちらが有利ではあるけど、それだけで勝てるほど甘い相手では無い。

 

(さて、次はどうなるか……)

 

「ドラパルト!!『ドラゴンアロー』!!」

「っ!!ブラッキー『でんこうせっか』!!」

 

 相手の動きを見ようと思った瞬間、ドラパルトから2人のドラメシヤが発射され、ブラッキーに突撃してきた。

 

 これを見たこちらは慌ててでんこうせっかを開始。1人目のドラメシヤを右に飛んで交わし、2人目のドラメシヤはジャンプで回避。そのまま一気にドラパルトへ詰めたブラッキーは、右前脚を黒く染め、思い切り振り上げる。

 

「『イカサマ』!!」

「『10まんボルト』!!」

「っ!?」

 

 が、ブラッキーの攻撃が当たる瞬間に発電を起こしたドラパルトによって、ブラッキーが痺れながら後ろに弾かれた。

 

「そのまま維持だ」

「電気の鎧……」

 

 弾かれたブラッキーと入れ違いでドラメシアを回収したドラパルトは、そこから全身に電撃を維持し始める。

 

 それは彼を守る鎧となって、こちらの接近をシャットアウトする。

 

(また厄介な戦い方だ……)

 

 次鋒を超えて3番目。

 

 今回も簡単には行かなさそうな相手を前に、ボクは再び頭を回転させていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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