【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

357 / 374
357話

「ドラァッ!!」

 

 ステージの中心で吠えながら、自身の勝ちを宣言するドラパルト。その姿はまひで少しぎこちないものの、体力に関してはそこそこ残っているようで、程よい元気さを見せていた。

 

 そんな彼を見ながらボクはブラッキーにリターンレーザーを当ててボールに戻していく。

 

(『イカサマ』とか当ててるけど、攻撃を当てられた回数自体は結局そんなに多くなかったもんね……体力は思った以上に残っているってことか……)

 

 思った以上に元気なドラパルトを前に、少しだけ苦しさを感じるボク。

 

 今までは相打ちだったり、先行を取っていたりと、決してダンデさんの背中から離れなかった展開だったけど、ここに来て明確な差が生まれてしまったことに、少なくない焦りを感じそうになる。

 

 しかし、ここで焦っては勝てるものも勝てなくなる。なので、ボクは深呼吸しながらゆっくりと考える。

 

(落ち着け、ドラパルトの体力は確かに残っているけど、ブラッキーな残してくれたものは大きい)

 

 ドラパルトの神出鬼没な攻撃は、彼の素早さも相まってとても強力なものになっている。が、その行動に待ったをかけてくれたのがブラッキーのシンクロによって付与できたまひ。

 

 いくら10まんボルトを扱えるほど電気操作に長けているとはいっても、でんきタイプを持っていないドラパルトは状態異常のまひを防ぐまでにはいかない。現に今も、元気そうな声をあげていながら、どこか苦しそうな表情を浮かべている。

 

(まだ挽回は出来る。仕掛けるなら……この子だね)

 

「いくよモスノウ!!」

「フィッ!!」

 

 ブラッキーの残したものを引き継ぐべく、次にボクの下から飛び出していく4人目の仲間はモスノウ。

 

 こおりのりんぷんをまき散らしながら羽ばたく彼女は、自信満々に声をあげながら翅を広げる。

 

「モスノウか……厄介だが、行くしかないな!!ドラパルト!!『ゴーストダイブ』!!」

「『ちょうのまい』!!」

 

 こちらのポケモンを確認したダンデさんは、一瞬だけ嫌そうな表情を浮かべたものの、すぐさま笑顔に戻して指示を出す。

 

 これをしっかりと聞き届けたドラパルトは、首を軽く動かしながら再び異空間へダイブ。まひのせいでその動きも若干遅かったものの、特に問題はなく紫色の穴へすっと身体を滑り込ませていく。

 

 距離も空いているし、まひしているとはいえ元気なことに変わりのないドラパルトのこの行動を止めるのは難しいので、止める判断は最初から捨て、こちらは自分の力を育てることに専念。鱗粉をまき散らしながら華麗に舞を踊る彼女は、ドラパルトが準備をしてる間に自身の素早さと特攻、特防の3つを強化。来たるべき激戦に向けての準備を整える。

 

「『ドラゴンアロー』!!」

「『ぼうふう』を纏って回避!!」

 

 先に準備を整えたドラパルトが、モスノウの周囲に紫の穴を大量に展開。そこから2人のドラメシヤを発射させ、先ほどと同じようにモスノウを全方位から攻撃してくる。

 

 これに対してこちらは、モスノウにぼうふうを行うように指示。ドラパルトが電気の鎧をまとっていた作戦の風版を行い、自身を中心とした、反時計回りの小さな竜巻を起こす。

 

「「どらっ!?」」

 

 ちょうのまいで能力をあげているだけあって、風の鎧もしっかりと強くなっており、まひによって素早さが出せていないドラメシヤの攻撃ではこの防壁を突破することが出来ず、真っすぐモスノウを攻撃しているつもりでも、渦巻く風のせいでその進路を逸らされ、ドラメシヤの突撃がことごとく、モスノウから見て左側に動いて行く。

 

「ドラメシヤでは突破不足か……なら『10まんボルト』!!」

「来るよモスノウ!!」

 

 ドラメシヤでは攻撃が届かないと判断したダンデさんは、次に10まんボルトを指示。ドラメシヤと同じように、紫の穴の中から電気を放出し、モスノウに向かって電撃を飛ばしてくる。

 

 これに対してこちらは、特殊攻撃に対して強い特性のこおりのりんぷんをまき散らし、電気を弾きながら避けていく。

 

 穴から穴につながる電線をよけ、自身を直接狙ってくる攻撃は弾きながら逃げ、空中を踊るように飛行していくモスノウ。

 

 そんな彼女がある程度回避行動をとったところで、ダンデさんがさらなる動きを見せて来る。

 

「追い込みは完璧だな!!『ゴーストダイブ』!!」

 

 ダンデさんの指示を耳に入れたボクは、慌ててモスノウの近くに視線を向ける。すると、モスノウのすぐ近くに紫の穴が1つ確認出来た。

 

 おそらく、ドラメシヤや10まんボルトによる攻撃は全て誘導のためのブラフであり、本命はここからドラパルト自身が突撃を行うことなのだろう。実際、この攻撃が現状1番モスノウにダメージを与える方法だ。

 

(本当に組み立てが速い……けど、いい加減追いつけてきた気がする!!)

 

 あっちがドラパルトによる攻撃を主におくのなら、こっちだって考えていた作戦がある。

 

(時間は……20秒経過……ならいける!!)

 

「モスノウ!!『ぼうふう』解放!!」

「フィッ!!」

 

 ダンデさんが指示を出したのを聞いて、こちらも用意していた作戦を実行するべくモスノウに指示。これにより、モスノウは自身がまとっている鎧を思いっきり爆散。これによって、モスノウを中心に周囲に向かって強力な風が流れ始める。

 

「っ!?ドラパルト!!」

 

 この風を前に、ダンデさんが慌ててドラパルトの名前を呼ぶものの、ドラパルトはこの強風が穴に流れ込んできているせいで飛び出しが防がれてしまい、外に出てこれていないため返事ができず、声が返ってこない。

 

「モスノウ!!このまま『ぼうふう』を維持!!」

「フィィッ!!」

 

 ドラパルトが帰って来れていないのを確認できたボクは、この作戦が上手くいっていることを確信し、モスノウにさらに風を送り込むことを指示。すると、フィールド全体を覆う強風が発生し、離れているボクとダンデさんも踏ん張らないと立てないレベルの嵐が発生する。

 

「まさか!?ドラパルト!!急いで戻ってくるんだ!!」

 

 ここに来てようやくボクの狙いに気づいたダンデさんは、慌ててドラパルトに戻ることを指示。しかし、モスノウが放っている風が、ドラパルトの出口である全ての穴に向かって吹き込まれているせいで、どこからも出ることが出来ないでいた。

 

「『ゴーストダイブ』による異空間からの飛び出しは、30秒以内ならたしかにドラパルトの自由なんでしょう。けど、30秒が限界なのは絶対に変わらない。なら、30秒経つまでその異空間に閉じ込めてあげます!!」

 

 これがボクの考えた作戦。

 

 相手が自由なタイミングで外に出れたとしても限界時間が変わらないのなら、その限界が来るまで外に出られないように蓋をしてしまえばいい。そうすれば、何がなんでも30秒で外に出てくるのが確定するのだから。

 

「くっ、ドラメシヤたち!!頑張ってくれ!!」

 

 異空間に閉じ込められているドラパルトではモスノウにアプローチを仕掛けることが出来ない。そう判断したダンデさんは、ドラゴンアローによって外に出てきているドラメシヤにモスノウへの突撃を指示。穴を塞ぐことに集中している彼女は攻撃を避けるのが難しいため、この間に突撃して少しでも風を弱めたいという考え何だろう。実際、これをされるのが一番嫌だ。

 

「どらっ!」

「フィ……ッ!!」

 

 風を維持するモスノウに向かって突撃をするドラメシヤ。

 

 あまり集中を切らしたくないモスノウは、この突撃に対して回避行動を取る事はせず、気合で耐える選択をする。

 

 物理防御が高くはない彼女にとって、この攻撃は決して小さくは無い。が、攻撃が来ると分かって気合を入れていることと、ドラゴンアローによる速度が、発射されてから時間が経っていることに加え、モスノウが起こしている風が強すぎるのが原因で、ドラメシヤ側も強い突撃ができる状況では無くなっていた。

 

 結果、ドラメシヤたちの突撃は確かにモスノウにダメージを与えはしたものの、このぼうふうを止めるには至らない。

 

 そしてそのまま、運命の30秒が経過する。

 

「モスノウ!!『ぼうふう』ストップ!!」

 

 時間経過とともに風を止めるモスノウ。これにより、紫の穴に吹き抜ける風が止み、自由に出入りすることができるようになる。

 

 これで、時間いっぱい強制的に異空間に閉じ込められていたドラパルトを引きずり出す準備が整った。

 

 あとはドラパルトがどこから顔を出すかの問題だ。現状パッと見ただけでも20もの穴が空いており、その距離もなかなか離れている。

 

 本来ならモスノウから1番遠いところから顔を出すはずではあるけど、時間いっぱい閉じ込められた影響で、呼吸のために何がなんでもこちらに戻らなくてはいけない以上、わざわざ遠いところを選んで戻れるような余裕が無い可能性もあるので、遠いところの決め打ちはできない。

 

 ならどうするのか。

 

(どこからでるのか分からないのなら、()()()()()()!!)

 

「モスノウ!!全力で『ふぶき』!!」

「フィィッ!!」

「ドラパルト!!外に出ると同時に『10まんボルト』を纏って守るんだ!!」

 

 ボクの合図とともに上がるモスノウの声は、そのままフィールド全部を包む強烈なふぶきに変わって全てを無差別に攻撃する。

 

 一瞬で完成する白銀の世界に、時間制限が到達したことにより飛び出してきたドラパルトは目を見開き、驚いた表情を浮かべ、同時にこのままでは自分がやられることを察する。

 

 この未来を回避するために、ダンデさんの指示通り全身に電気を纏って防御を試みようとするが、まひによる痺れと、限界ギリギリまで異空間にいたことが災いして、上手く呼吸ができずに発電が一時的に不可能となり、モスノウの攻撃をもろに受けてしまう。

 

「ドラッ!?」

 

 こうかばつぐん。

 

 ただでさえ苦手なのに、ちょうのまいによってさらに強化されたこの一撃はドラパルトに致命的なダメージを与えた。

 

「ド……ラッ!!」

 

 それでも気合いで耐えようと必死に頑張るドラパルト。

 

 疲れもまひもダメージも、あらゆるバッドステータスを背負った上で耐えようとするその姿は本当に尊敬する。

 

 だからこそ、ここで完全に落とし切る。

 

「モスノウ!!追加で『ぼうふう』!!」

「フィィッ!!」

 

 白銀の世界にて更に追加される嵐。

 

 今までのフィールド全体を攻撃していたものとは違い、明確にドラパルトのみを狙って放たれたこの一撃は、今までの物とは比にならない威力となって突き進み、ドラパルトの全身を包み込む。

 

 再びドラパルトを襲う強力な攻撃のコンビネーション。

 

 今まで気合で何とかしていたドラパルトも、これほどの攻撃の波を前には耐え着ることが出来ずに、ついに墜落することとなる。

 

 

「ドラパルト、戦闘不能!!」

 

 

「よし、何とかなった……ナイスだよモスノウ!!」

「フィッ!!」

 

 強敵であったドラパルトを何とか乗り越えることが出来たことにほっと一安心。ふぶきとぼうふうを終えて、嬉しそうな声をあげながら空を舞うモスノウに向かって声を掛けながら、ボクは小さくガッツポーズをとる。

 

 ブラッキーの残してくれたもののおかげで、ドラパルトに大きく離される前に追いつくことが出来た。本当に感謝しかない。

 

「お疲れ様だ、ドラパルト。ゆっくり休んでくれ」

 

 こちらが何とかなったことにホッとしている間に、ドラパルトをボールに戻すダンデさん。その表情はともて安らいでおり、やられたことによる悔しさよりも、ドラパルトを突破した手腕に感心している様子だった。

 

「驚いたな。ここにきてまさかの力技とは」

「ここが通しどころだと思ったので」

「はは、『ここが』か……いや、違うんだろうな」

「……」

 

 ボクの言葉に対して、否定の言葉を続けながら次のボールを構えるダンデさん。

 

 その表情には、まだまだ余裕が浮かべられている。

 

(……ばれてるなぁ)

 

 その理由は、このモスノウが活躍できる場所がもう消えているから。

 

「さぁ、行くぞエースバーン!!」

「バァスッ!!」

 

 ボールから飛び出しながら声をあげるのは、ダンデさんの4番手を務めるエースバーン。

 

 彼の戦闘スタイルは、モスノウが苦手とするほのおタイプ且つ物理型。正直言って、勝てるビジョンは既に見えてこない。

 

 じゃあ下げればいいのではと思うかもしれないけど、残念ながらそうもいかない。と言うのも、ダンデさんの残りのポケモンに関わって来る。

 

(ゴリランダーがいた時点で何となく想像はしていたけど、今回のダンデさんの手持ちは絶対あの子たちだ。だとしたら、正直どうやってもモスノウが活躍できる場所はない……)

 

 ボクの予想が正しければ、残りのポケモンは全員モスノウに対して弱点を突いてくるか、モスノウの技が通りにくい相手ばかりだ。唯一1人だけ互角に戦えそうな子がいるにはいるけど、それでも良くて互角が限界。

 

(ごめんモスノウ。凄くきついと思うけど、ここで引くのは出来ない……)

 

「フィッ!!」

「モスノウ……うん、ありがとう。不利でも、諦めるわけにはいかないもんね!!」

 

 しかし、そんなことはモスノウも承知の上らしく、大の苦手とするエーズバーンを前にしても決して怯えた顔を見せることなく、むしろ逆に倒してやるという気概を見せながら前を向く。

 

(しっかりしろ。タイプ相性不利なんて何回も覆したんだから、今更怖気づくな)

 

 頬を軽く叩きながら気を引絞め、しっかり前を向く。

 

 不利マッチ上等だし、万が一負けたところでもまだ後ろには頼れる仲間が後2人控えている。

 

 絶望するのはまだはやい。

 

「モスノウ!!『ちょうのまい』!!」

「っ!!そうくるならいきなり行くぞ!!『かえんボール』!!」

 

 タイプ相性の差を少しでも埋めるべく、再びちょうのまいで能力を強化しようとするモスノウに対して、ダンデさんはいきなりかえんボールによる攻めを仕掛けて来る。

 

 宙に漂うこおりのりんぷんを溶かしながら真っすぐ飛んでくる火の玉に対して、ギリギリのところで舞を終えたモスノウは、自身の高度を上にあげることで回避。翅の下部分を掠ったことによって大きくバランスをくずしはしたものの、すぐさま態勢を整えたところで、空中からエースバーンを見下ろしながら構える。

 

(掠っただけでモスノウが墜落仕掛けた……やっぱり直撃一発で致命傷は間違いない……ここからは一撃も受けられない!!)

 

「『ぼうふう』!!」

「フィッ!!」

 

 改めて相手の火力の高さを確認したところで、細心の注意を払いながら攻撃を開始。さっきドラパルトに行ったものよりもさらに強力な嵐が、エースバーンに向かって飛んでいく。

 

「『でんこうせっか』!!」

「バスッ!!」

 

 これに対してエースバーンは、クラウチングスタートの態勢をとったと思ったら、ダンデさんの言葉を合図に一気に加速。

 

「更に『とびはねる』を合わせるぞ!!」

「バァスッ!!」

 

 モスノウから放たれた嵐を、逃げるのではなく迎え撃つようにダッシュしながら、更に地面を勢いよくふみしめた。

 

「フィ……」

「モスノウ!!『ぼうふう』を纏って!!」

「ッ!?」

 

 かと思った瞬間。エースバーンの姿は掻き消え、気づいたときには、空に飛んでいたはずのモスノウを、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()見つかった。

 

 でんこうせっかで素早さをあげ、その速度を維持したままとびはねるでこのスタジアム天井の鉄骨に着地。そこからさらに飛ぶことによって、モスノウを上から奇襲してきた。

 

 しかも特性リベロによるタイプ変更のおまけ付き。

 

 この攻撃に対する防御壁が何とか間に合ったおかげで、モスノウへのダメージは抑えることが出来が、攻撃の勢いまでは殺せておらず、そのまま地面付近まで一気に降ろされる。

 

「これで同じ土俵だな!!『かえんボール』!!」

「くっ、『ぼうふう』解放!!」

 

 地面付近まで落とされたところで、同じく地面に着地し、前髪を赤に染めたエースバーンから放たれるかえんボール。これを咄嗟に避けるのが難しいと判断したこちらは、風の鎧を解放して竜巻を発生させ、無理やり逸らす。

 

 なんとか相手の攻撃を回避したことに安心し、ここから反撃をしてやろうと構えるボクたち。が、そう構えた時にはもうエースバーンはどこにもおらず、ボクとモスノウの耳には、断続的に何かが爆発するかのような音が聞こえる。

 

「ほんと……速すぎ……」

 

 その音の正体は、でんこうせっかととびはねるの併用によって、空中を激しく飛び回るエースバーンの踏み込み音。

 

 文字通り空中を跳ね回って、フィールドを縦横無尽に駆け回るその姿は、速すぎて残像しか目に映らない。

 

(いくら素早さに自信が無いとはいえ、『ちょうのまい』を2回しているモスノウでも追いつけないなんて……)

 

 その圧倒的な速さを前に、目で追いかけるのがやっとなボクたちは、追いつくことを早々に諦めて、力にものを言わせる。

 

「モスノウ『ぼうふう』と『ふぶき』を合わせて!!」

「フィッ!!」

 

 ボクの言葉を合図に発生するのは、モスノウのいる位置を中心とした氷の台風。

 

 周囲全体を凍りつかせながら荒れ狂うその技は、辺り一面を無差別に攻撃。エースバーンがどこに居ようとも関係なくダメージを刻み込めるものとなっていた。

 

(しかも、エースバーンが『リベロ』なら、『とびはねる』を使っている今はひこうタイプ。つまり、今だけは『ふぶき』が弱点になる!!)

 

「エースバーン!!『かえんボール』!!」

「……さすがにそこは戻されちゃうか」

 

 本来弱点をつけない相手に、弱点で攻撃できる事実に少しテンションを上げ、しかし直ぐに戻されたことにちょっとガッカリする。しかし、こちらの判断は特に間違ってはいなかったわけで、エースバーンから放たれた攻撃は、風に巻き上げられて上空へと飛んでいく。

 

「くっ、さすがに威力が高いな!!」

 

(あの『かえんボール』を弾けた!!『ちょうのまい』を2回したことはやっぱり無駄じゃない!!)

 

 最警戒するべき技を弾くことが出来たと言うのは、こちらの心に大きなゆとりを作り出す。

 

 もしかしたら、想像以上にやれるのかもしれない。そんな期待が膨らみかける。

 

(落ち着け、こんな時こそ冷静に……)

 

 しかし、こんな時こそ焦らずにゆっくり動いていく。

 

 相手はあのダンデさんだ。諦めるところは諦めるけど、警戒をしすぎるのは悪いことじゃない。

 

「焦らずゆっくり追いつめる!!モスノウ!!『ぼうふう』と『ふぶき』を少しずつ━━」

「台風というのは、1番安全な場所は目の部分と言われている」

「……え?」

「そこは一切の風がなく、無風の状態らしいな?」

「……っ!?モスノウ!!上に『ぼうふう』!!」

 

 ゆっくり攻めて確実に落とす。そのルートを取ろうと指示を口に出した時、急にダンデさんが説明口調で喋りだす。

 

 これの意図が分からなかったボクは、首を1回傾げ掛け、しかし直ぐにその答えに気付き、慌ててモスノウに言葉を飛ばす。

 

「フィッ!?」

 

 が、こちらの行動は間に合わず、モスノウに着弾した()()()()()()()()()。モスノウにダメージが入ると同時に、技の主が被弾したことによって、氷の台風が消えていく。

 

 

「モスノウ、戦闘不能!!」

 

 

「……やられた」

 

 台風が消え、いつものフィールドに戻ったところで、バトルコートで倒れているモスノウを見ながら悔いていると、ダンデさんが一言漏らす。

 

「いやはや、モスノウのいる位置があの時と一緒で助かった」

「モスノウの位置……あっ!!」

 

 その言葉につられて今モスノウがいる場所を見れば、そこは()()()()()()()()()()()だった。

 

「そういう事か……」

 

 と同時に、ボクの視線は上にあるスタジアムの鉄骨に向けられた。

 

 モスノウを襲ったあのかえんボールは、上にある鉄骨を跳弾して飛んできたものだ。

 

 そのルートは、ボクがギルガルドのキングシールドを突破するのに使ったルートと全く一緒だった。

 

(最初に『でんこうせっか』と『とびはねる』を行ったのはあの場所でモスノウに台風を作らせるため。そして『ぼうふう』に向かって『かえんボール』を打ったのは、風で巻き上げてもらって、同じコースで攻撃を跳弾させるためのブラフ……モスノウの位置を確認したからこそ、狙ってきたんだ……)

 

「やはり君とのバトルは楽しい。俺の知らない戦法を見せてくれる!おかげで俺は、まだまだ強くなれる!!」

 

 獰猛な笑顔を浮かべながら、ダンデさんはこっちを見つめてくる。

 

「さぁ、これで終わりではないだろう?もっと見せてくれ!!」

 

 ガラルの王者の力が、明確にボクを追い詰めてくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。