【完結】ポケットモンスター 約束のためにもう一度   作:犬鼬

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358話

「ありがとう、戻ってモスノウ」

 

 目を回して倒れているモスノウにリターンレーザーを当て、ボールに戻しながら労いの言葉をかける。

 

 不利マッチにもかかわらず、ここまで抗ってくれたこの子は本当によく頑張った。

 

 本人的には満足いっていないかもしれないけど、それでもボクからは大きな賛辞を送りたい。

 

「ふぅ……」

 

 モスノウへの気持ちを一通り伝えたところで、そのボールを腰に戻して深呼吸。

 

(あと……2人……)

 

 ボクの残りポケモン数を数えながら、そのうちのひとつにそっと手を添えたボクは、相手をしっかりと見据えながら構えを取る。

 

 真正面には、本当に楽しそうな笑顔を浮かべるダンデさん。

 

 負けることなんて一切想像していない、真の王者の風格を放つその姿は、まさしく最強。

 

 そんな相手に遅れを取っているという最悪の状態。

 

「……よし」

 

 けど、こっちだってまだまだ、負ける気はしていない。

 

 頼れる仲間がまだ残っている。

 

「行くよ……インテレオン!!」

「レオッ!!」

 

 ボクの5番目のポケモンはインテレオン。

 

 このガラル地方に来て最初に仲間になったポケモンであり、そして何より、今目に前に立っているダンデさんから譲り受けたポケモンだ。

 

「はは、あの頃のメッソンがこんなにも立派になったか!!見るだけで伝わる。君がどれだけの成長をとげ、そしてトレーナーと強いつながりを作ったのかが!!」

「レオッ!!」

 

 立派なインテレオンを見て嬉しそうな声を上げるダンデさんと、その声に答えるように気合を入れるインテレオン。

 

 人とポケモンという垣根を越え、親子のような関係でもある2人は、この最高の場所で再会できたことを心から喜んでいる。

 

 その姿を見て、ボクの拳にも無意識に力が入る。

 

「だが、それでも負けてやる訳にはいかんな!!勝つのは俺だ!!」

「見せてやろうインテレオン!!君の育ての親に、強くなった君の姿を!!」

「『かえんボール』!!」

「『ねらいうち』!!」

 

 お互いの1番得意とする技を撃ち合うことによって、両者の戦いの火蓋が切って落とされる。

 

 迫っていく水の弾丸と炎の球は、バトルコートでぶつかると同時に大爆発。

 

「『きあいだめ』!!」

「『でんこうせっか』!!」

 

 かえんボールが水によって蒸発して生まれる多量の水蒸気を目隠しに使い、まずこちらが行ったのがきあいだめ。

 

 攻撃を確実に急所に当て、特性のひとつであるスナイパーを発生させやすくするための準備を整える。

 

 これに対してダンデさんは、この目隠しの中をつきぬけてインテレオンへ肉薄。きあいだめのために足を止めていたインテレオンの懐に一瞬でたどり着く。

 

「『とびひざげり』!!」

「『アクアブレイク』!!」

 

 懐まで来たエースバーンは、前髪をオレンジ色に染めながらインテレオンの前で左足を踏み込み、身体を右から左に捻りながら右膝を叩きつけてくる。

 

 これに対してこちらは、尻尾の先に水を纏い、迫ってくる膝の中心一点に向けて突き刺すように技を繰り出した。

 

 膝の面による内部破壊の一撃と、急所を貫く局所破壊の一撃同士のぶつかり合い。

 

 威力だけを見ればとびひざげりの方が上ではあるものの、膝の急所を的確に貫くアクアブレイクの打ち方が噛み合ったこともあって両者の攻撃は綺麗な相殺という形となり、空気の破裂する音と共に両者が後ろに弾かれた。

 

「『でんこうせっか』!!」

「走って!!」

 

 初期位置まで下げられた両者は、地面に足をつけると同時に再び前に走り出す。

 

 素の素早さはインテレオンの方が上ではあるが、技の効果によってそれよりも速く走り出したエースバーンの方が先に攻撃を構える。

 

「『とびはねる』!!」

 

 懐に潜り込んだエースバーンは、右足を思いっきり踏み込み、そこから両足でムーンサルトキックを放ちながら上空に飛んでいく。

 

 本来なら飛び上がるだけの予備動作でしかないものを、その動線上に相手を置くことで、飛び上がるという行為すらも攻撃へと変化したエースバーンの無駄のない動きは、しかし懐に入られた時点で覚悟していたインテレオンが、スウェーバックすることで蹴りを回避。そのまま飛び上がっていくエースバーンを見送った後、両手を銃の形にしてエースバーンに突きつける。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 スタジアム天井の鉄骨に着地したエースバーンに対して、水の弾丸による弾幕を展開。ひとつひとつが明確にエースバーンの急所を狙って突き進む。

 

「駆けろエースバーン!!」

 

 地面から打ち上がる雨を前に、エースバーンは怯むことなくジャンプ。ひとつでも当たれば大ダメージは必至な状況でも、冷静に技を見極めている彼は、雨と雨の隙間を縫うように鉄骨間を跳び回り、ある程度避けたところで真っすぐ地面に飛び出して着地。そこから更に地面を蹴り、インテレオンへと一気に距離を詰める。

 

「レオッ!!」

「バスッ!!」

 

 再び始まる2人のインファイト。

 

 まず動いたのはインテレオンで、迫ってくるエースバーンを狙撃しようと指を突き出した。が、インテレオンの狙撃より速く踏み込んだエースバーンが、右足を振り上げて、インテレオンの右腕をかちあげた。そこへさらに追撃を入れるべく、身体を反時計回りに回して、今度は左足のソバットキックを放つ。

 

 一方右腕を蹴られたインテレオンは、打ち上げられた右腕に逆らわずに、自分からもジャンプすることで少し身体を浮かせ、そのままバク宙を決めながら、左手だけで着地する。

 

 着地地点は、ソバットキックを繰り出すために伸ばされたエースバーンの左足。

 

「『アクアブレイク』!!」

「蹴り上げろ!!」

 

 エースバーンの足を地面に逆立ちしたインテレオンは、そこから右足に水を纏いながらかかと落としによるアクアブレイクを放つ。

 

 これを避けられないと判断したエースバーンは、伸ばした左足を振り上げることによって、インテレオンを空中へ打ち出して回避。これを受け入れるしかないインテレオンも、自分から左手に力を入れることでエースバーンの想像よりも高くジャンプした。

 

「『かえんボール』!!」

 

 空にいるインテレオンに回避行動は取れない。そう判断したエースバーンは、インテレオンに向けてかえんボールを発射。こうかいまひとつでも、空中であるのなら威力を殺せないと信じて技を放ってきた。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 これに対してインテレオンは、右手を突き出して狙い撃ちを発射し、かえんボールの中心に弾丸を叩き込む。

 

 かえんボールの中心を撃ち抜かれたせいで、かえんボールはその形を維持することが出来ずに爆散。黒い煙を起こして、周りに爆風を吹かせていく。

 

「バス……」

「『アクアブレイク』!!」

「ガードだ!!」

 

 この煙に紛れたインテレオンは、エースバーンが少し怯んでいる間に懐に着地。エースバーンの前でしゃがんだ状態から身体を時計回りに回しながら、水を纏った左足によるハイキックを繰り出す。

 

 いつの間にか目の前まで来たインテレオンの攻撃に、しかし何とか反応したエースバーンは力を込めた右腕を盾にしてこれを受け止める。

 

「レオッ!!」

「バスッ!?」

 

 しかし、インテレオンの攻撃はここで止まらず、エースバーンが右腕で防御したのを確認したと同時に、尻尾による刺突を繰り出していた。

 

 急なハイキックを守ることに意識を割きすぎたエースバーンは、この刺突を避けることが出来ずに被弾。お腹を襲う衝撃にしたがって大きく後ろに飛ばされる。

 

「『ねらいうち』!!」

「『でんこうせっか』!!」

 

 地面をバウンドしながら飛んでいくエースバーンに追撃をするべく、ねらいうちを連射するインテレオン。

 

 これを受けると敗北が確定するエースバーンは、転がりながらのなんとか態勢を整えてでんこうせっかへ移行。水の弾丸が着弾する直前にその場を何とか離れ、被弾を回避。

 

「『かえんボール』!!」

 

 水の弾丸を避けたところで、反撃をするべくかえんボールの準備を進めたエースバーンは、足に火をまといながら走り続け、途中で小石を蹴り上げた後に、こちらに向かって発射。燃え盛る3つの球が襲いかかってくる。

 

「これも『ねらいうち』!!」

「レオ……」

 

 急な反撃に対して、しかし一切焦ることの無いインテレオンは、目を閉じて指先を前に向け、3つの弾丸を素早く発射。その全てがかえんボールの中心を貫き、3つ全ての火球を爆散させる。

 

「『とびはねる』!!」

「バスッ!!」

 

 爆発と同時に巻き起こる、水蒸気を含んだ白い爆煙は、そのまま目隠しの効果を発揮する。

 

 これを確認したダンデさんは、この隙に近づいて攻撃するべく、とびはねるを指示。地面を強く踏み込んだエースバーンが、物凄い勢いで煙の中に突っ込み、同時にとびひざげりの構えを取る。

 

 それと同時に浮かび上がる、煙に包まれたインテレオンのシルエット。

 

「叩き込め!!」

「バスッ!!」

 

 とびはねるのスピードを維持したまま繰り出されるとびひざげりは、視認すら難しい速度を持って襲いかかっており、その姿は流れ星が落ちてきたかのようにも見えるほど。

 

 耐久には自信が無いインテレオンがこれを喰らえばひとたまりもない。だからこの攻撃を前にしてボクは指示を出す。

 

「構えて」

「……」

「……?」

 

 その内容は技でも行動でもなく、ただ一言こぼすだけ。

 

 この状況で出す言葉としては些か疑問の残る発言だったため、ダンデさんは少し首を傾げながらも、既に軌道に乗ったとびはねるの速度を変えることは不可能。カウンターの可能性を考慮したダンデさんは、警戒心を上げながら事の顛末を見届ける。

 

 そうこうしているうちに、シルエットの元まで到着したエースバーンは、そのまま膝を突き出してインテレオンへ突撃。

 

 前髪をオレンジ色にそめながら繰り出された強力な一撃は、真っ直ぐ陰へと突き刺さり……

 

「バスッ!?」

「なっ!?」

 

 バシャッという水音だけ奏でて、黒いシルエットを……否、水の塊を通り抜けた。

 

 攻撃が当たったと思ったら、なんの手応えもなく通過してしまったことに驚いたエースバーンは、そのまま勢い余って地面へと膝を突き立てる。

 

 膝が地面に突き刺さると同時に起きるのは大きな衝撃。それはとびひざげりの威力の高さを物語っており、同時にとびひざげりのペナルティの大きさを現していた。

 

 とびひざげりは強力な一撃を放てる分、外した際には自身の身体に大きな自傷ダメージを負うこととなるハイリスクハイリターンな技だ。

 

 そして今回、エースバーンは攻撃を外して地面に膝をぶつけてしまったため、そのハイリスクな部分を受けることになってしまう。

 

「バス……ッ!!」

「エースバーン!!周りを警戒するんだ!!」

 

 自傷ダメージに表情を歪めるエースバーンだが、ここで動きを止める訳にはいかないと判断したダンデさんは直ぐに周りを警戒するように指示。あちら側にとっては不幸中の幸いと言うべきか、地面に膝を突き立てた衝撃で、周りを覆っていた白い煙は全て吹き飛び、煙の中に隠れることが出来なくなった。

 

 これで煙に逃げたインテレオンを探すことが出来る。

 

「バス……?」

「……いない?」

 

 が、そこで待ち受けていた結果は、フィールドにたったひとりで立っているエースバーンの姿。

 

 肝心のインテレオンの姿はどこにもない。

 

「っ!!そういう事か!!エースバーン!!直ぐに走る準備を……」

「バス……ッ!?」

 

 ここまで来て、インテレオンが何をしたのか全て理解したダンデさんが、慌ててエースバーンに動くことを指示。これに頷くよりも速く動くことで返答を見せたエースバーンだったが、やはりとびひざげりを外した時の自傷が大きかったらしく、その動きが一瞬止まった。

 

「『ねらいうち』」

「……」

 

 その明確な隙を、うちのスナイパーは見逃さない。

 

 音もなく放たれた水の弾丸は、エースバーンの()()()()()()()()()()、エースバーンに莫大なダメージを与える。

 

 直前に行った技がとびひざげりだったため、リベロによってかくとうタイプに変わっているエースバーンにはこうかばつぐんでは通っていないものの、その分きあいだめを行っていたこともあり、特性スナイパーの効果も相まって、エースバーンに刻まれたダメージはとても大きい。

 

 そこにさっきの自傷ダメージも加わったとなれば、さすがのエースバーンも耐え切ることは出来ない。

 

「バ……ス……」

 

 

「エースバーン、戦闘不能!!」

 

 

「……見事」

 

 倒れゆくエースバーンの最後の声を聴きながら、ダンデさんは後ろを振り向いた。

 

「レオ……」

 

 そこには、水に濡れた人差し指を突き出したままのポーズで止まっている、身体の一部が背景に溶け込んでいるインテレオンの姿。

 

「『かえんボール』を水技で止めて水蒸気を発生。その水を身体に受けて、インテレオンの技術である透明化を使用し、同時に煙の中に水で自分の分身を作成。そちらに気を取られている間に、俺の死角である真後ろに移動して、そこからのスナイプ……煙がインテレオンの姿を消すためのものだと思っていたが、そう思わせること自体が、この煙を作った理由か」

「インテレオンの特性を知っているダンデさんの目を欺くには、これくらいはしないとですからね」

 

 正直、いつバレるかヒヤヒヤしながら戦っていた。

 

 インテレオンもエースバーンも、どちらも足の速いポケモンゆえにゲームスピードが速い。だからこそ、その速さで誤魔化せるうちに先手を取りたかったのだけど、どうやらその考えが上手く決まったみたいだ。

 

「お疲れ様だエースバーン。戻ってくれ」

 

 そしてその結果はとてつもなく大きい。

 

(追いつけた……!!)

 

 インテレオンの体力をかなり残した状態でエースバーンを突破できた。

 

 おかげで、離されていた背中がだいぶ近づいてきた。

 

(……けど、ここからはもっと大変だ)

 

 しかし、嬉しい気持ちは一瞬だけで、すぐさま心を引きしめる。

 

 何故なら、ここまでも充分に早かったゲームスピードが、ここから更に速くなるのだから。

 

「本当に強く育ったんだな。親冥利に尽きる。そうだろう?」

 

 エースバーンをボールに戻しながら、嬉しそうな声を上げるダンデさん。その右手には、ダンデさんの5人目の仲間が握られている。

 

「……レオッ!!」

 

 ダンデさんの握るボールを見たインテレオンは、ボクの目の前まで戻って来た後に、声を上げてやる気をみなぎらせる。

 

 ボクのメッソンは、ダンデさんから貰ったポケモンだ。そしてダンデさんは、これまでのバトルでゴリランダーとエースバーンを繰り出している。

 

 この2人は、ユウリとホップがダンデさんから貰ったヒバニーとサルノリの最終進化系だ。そして、先程の『親冥利に尽きる』と言うダンデさんの言葉。

 

 ここまで来れば、次のポケモンはあの子しかいない。

 

「けど、まだ子に負ける訳にはいかない。そうだろ!!」

 

 ダンデさんの声を聞いたハイパーボールが、ダンデさんの右手の中で大きく震える。

 

 これを確認したダンデさんは、獰猛な笑みを浮かべながらそのボールを投げた。

 

「さぁ行くぞインテレオン!!親の威厳を見せつけてやれ!!」

「レオォッ!!」

「……やっぱり、来た!!」

「レオ……ッ」

 

 中から飛び出してきたのはインテレオン。

 

 ボクの仲間である方のインテレオンに比べて一回り大きく見えるその姿と、先ほどのダンデさんの言葉からわかる通り、ボクのインテレオンの親であるダンデさんのインテレオンは、こちらを見つめて一瞬優しい色をした瞳を見せた後に、それをすぐさま鋭いものに変えて睨んできた。

 

 親として、子の成長は嬉しいものの、それはそれとしてこの戦いは負けるわけにはいかないという力強さと決意を感じるその様に、こちらも無意識のうちに力が入る。

 

「絶対超えるよインテレオン。キミの成長を見せつけるんだ!!」

「レオッ!!」

「「『ねらいうち』!!」」

 

 お互いの決意が固まったところで、両者同時にねらいうちを発射。右手人差し指の先から繰り出された水の弾丸は、両者の中心でぶつかり合い、強烈な音と水飛沫を巻き上げて大爆発を起こす。

 

 周りに飛び散った水は、離れているインテレオンたちに降り注ぎ、両者の姿を空気の中へと溶け込ませていった。

 

「「……」」

 

 インテレオンが消えたところで、ぱっと見は誰も存在しないバトルフィールドが完成。束の間の静寂が訪れた。

 

「『きあいだめ』」

 

 そんな静かな空間で先に動くのはダンデさん。

 

 ボクのインテレオンと同様に、特性のスナイパーを生かすためのきあいだめを行い、自身の集中力をあげていく。

 

 当然この間に音を立てるだなんて初歩的なミスは犯さない。

 

 静かに呼吸を整えて自身の集中力をあげていくその姿は、素人目ではどこにいるのか判断がつかない。

 

 が、あちらがプロであるのと同じで、こちらだってプロのスパイだ。

 

「『ねらいうち』!!」

 

 ボク自身は把握できないけど、同じ立場であるインテレオンなら把握できていると信じ、攻撃技を指示。すると、どこからともなく水の弾丸が飛来していく。

 

「『アクアブレイク』!!」

 

 その弾丸を目で追っていると、それがどこかに着弾するよりも先に真っ2つに切られて爆散。これによって、恐らく相手のインテレオンがいるのであろう場所を確認することが出来た。

 

(これでボクも指示が出しやすくなるはず!!)

 

「『ねらいうち』!!」

「え?」

 

 と思っていたら、ダンデさんの指示によって繰り出されたねらいうちは、先ほどボクのインテレオンのねらいうちが切り裂かれた場所からはかなりかけ離れたところから放たれていた。

 

 幸いこの攻撃をしっかりと察知していたらしいボクのインテレオンは、この攻撃をしっかりと避けてはいたみたいで、地面に着弾して大きな水飛沫を立てるにとどまる。が、この水飛沫が当たったところも、ボクのインテレオンがねらいうちを放ったところからは遠く離れており、このことから両者が攻撃を繰り出したと同時に、自分の場所を悟られないように移動をしているのだということがよく分かった。

 

 撃つと動く。そして動くと撃つ。

 

 漫画やアニメでよく見る、スナイパーのお手本とでもいうべき動きを高次元でこなしていく両者の姿を前に、ボクはさっきまでの考えを捨て去る。

 

(ここまで来たら、トレーナーであるボクたちの目なんてまるで役に立たない……状況把握はもうインテレオンに任せるしかない)

 

 相手の動きは勿論、自分のポケモンの動きすら把握できない。その証拠に、今の攻撃をきっかけにバトルフィールドには次々と水の弾丸が現れては着弾し、至る所で爆発と水飛沫をあげていた。

 

 ボクの近くに着弾したと思ったら次はバトルフィールドの壁に当たり、かと思えば次は天井の鉄骨、そしてボクとダンデさんの中間部分と、本当に見境なく起きるその爆発は、インテレオンが透明なまま高速で動き回りながら、相手の位置を攻撃しているという予想を立てることしかできない。

 

 実際、ダンデさんの視線もボクに固定されているあたり、ダンデさんでも把握できていないのだろう。

 

 インテレオンという種の特性と、インテレオンの高い素早さという2つの要素が極限にまで生かされたバトルフィールド。

 

 果たして、これを正確に把握できる人が何人いるのだろうか。

 

(このままじゃあ場は動かない。けど、場が動かないということは、先に倒れるのはこっちだ)

 

 完全な互角のバトルをしているということはスタミナバトルとなる。となれば、エースバーンと戦った後であるこちらの方がどうやってもスタミナは少ない。先にガス欠を起こすのはこちらだ。

 

(かといって、このハイスピードバトル……ボクから手を出せることなんて……)

 

 今も目に見えないのに水の弾だけが縦横無尽に駆け回るバトルフィールドを見て、自分に何ができるのかをじっくり考える。

 

 すると、あることが頭に思いうかぶ。

 

(……いや、もしかしたらこれなら……有利になるかはともかくとして、ボクにもインテレオンの動きが視認できるかも……?いやでも、ボクが視認できるということはダンデさんもできるようになるという事……)

 

 それは間違いなくこの状況を一変させる一手。しかし同時に、デメリットも抱えた一手。

 

(いや、このまま維持してしまえばそれこそ負け確定盤面だ。変えるためにも行動は大事!!)

 

「インテレオン!!場を動かすよ!!」

「ッ!!」

 

 しかし、それを考慮したうえで動いた方がいいと判断したボクは、インテレオンに変化の一手を指示。

 

「地面に『れいとうビーム』!!」

「レオッ!!」

「…ほう」

 

 同時に地面に突き刺さるのは氷の光線。

 

 地面に着弾したその攻撃は、ねらいうちによってまき散らされた水をすべて凍らせ、ステージの表情を一気に変える。

 

 現れるのはスケートリンクのような氷のステージ。

 

 想像通り出来上がったこのステージが、果たして吉と出えるか凶と出るか。

 

(さて……頑張ろっか!!)

 

 その結果を確認するために、ボクは気合を入れなおした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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